JP3581945B2 - 表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はフッ素系樹脂積層体及びその製造方法に関する。詳しくはプラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂層を塗布することにより積層してなるフッ素系樹脂積層体と、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂層を積層してなるフッ素系樹脂積層体は、主にテープ状にして銅等の導体に巻かれ、モータ用コイル、ケーブルあるいは航空機用電線等に使用される。この積層体にはプラスチックフィルムとフッ素系樹脂層の各種厚みの組合せにより種々のものがあり、例えば、25μm厚のプラスチックフィルムの片面又は両面に、2.5μm〜25μmまでの厚みのフッ素系樹脂層を積層したものが主に使用されている。
【0003】
通常、プラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂層を積層してなるフッ素系樹脂積層体は、フッ素系樹脂のフィルム(シート)とプラスチックフィルムをラミネート法によりフッ素系樹脂積層体を得る方法と、フッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)をプラスチックフィルムに塗布して乾燥させた後、この樹脂層をキュアして硬化させる塗布法により製造されている。
【0004】
かかるフッ素系樹脂層の製造方法としては、樹脂層が10μm未満の厚みのフッ素系樹脂積層体、例えば、2.5μm厚のフッ素系樹脂積層体の場合は、通常、フッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を塗布する塗布法により製造されている。
【0005】
しかし、塗布法では、塗布方法の工夫が必要であり、その製造技術的に困難となる。また、これらの工夫により塗布自体が可能となったとしても、最終的に積層したフッ素系樹脂層表面に著しいクラックが発生するという問題があり、特に厚みが厚いもの、例えば10μm以上の厚みのフッ素系樹脂層を積層させる場合には、顕著であった。そして、このようなクラックのある積層体はテープに加工した後、導体に巻き付けてヒートシールする際に、このクラックのためにボイドが発生し、その部分で放電が発生しやすくなる等の電気絶縁性に問題がある。
【0006】
そのため、一般には、フッ素系樹脂積層体は、塗布法ではなく、フッ素系樹脂のフィルムをラミネートするラミネート法により製造される方が品質上優れていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ラミネート法によりフッ素系樹脂積層体を製造する場合、フッ素フィルムの価格がディスパージョンよりも高いことや、ラミネート時のシワ防止のための対策が煩雑であること等から、塗布法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明者らは、上記従来の問題点を解決し、プラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布することにより得られ、かつ外観上の問題が生じない、フッ素系樹脂積層体とその製造方法を提供することを目的に鋭意研究を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の要旨とするところは、プラスチックフィルムと、その片面又は両面にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布することにより形成された厚さ10μm以上のフッ素系樹脂層とから構成され、前記フッ素系樹脂層表面にクラックがないことにある。
【0010】
また、本発明に係る表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の他の要旨とするところは、プラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布して乾燥させた後、熱処理炉にて、その雰囲気温度を、熱風オーブンでは450℃以上、遠赤オーブンでは400℃以上にしてキュアすることによりフッ素系樹脂を積層してなり、前記フッ素系樹脂層表面にクラックがないことにある。
【0011】
また、前記フッ素系樹脂ディスパージョンの主成分がテトラフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン樹脂共重合体のうち1種又は2種以上からなることにある。
【0012】
また、前記プラスチックフィルムの熱分解温度が400℃以上であることにある。
【0013】
また、前記プラスチックフィルムがポリイミドフィルムであることにある。
【0014】
本発明に係る表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法の要旨とするところは、プラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布して乾燥させた後、熱処理炉にて、その雰囲気温度を、熱風オーブンでは450℃以上、遠赤オーブンでは400℃以上にしてキュアすることによりフッ素系樹脂を積層してなり、前記フッ素系樹脂層表面にクラックがないことにある。
【0015】
また、本発明に係る表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法の他の要旨とするところは、前記フッ素系樹脂層の厚さを10μm以上となすことにある。
【0016】
本発明に係る表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法の更に他の要旨とするところは、プラスチックフィルムの片面または両面に有機溶剤を添加したフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布して乾燥させた後、熱処理炉にてキュアすることによりフッ素系樹脂層を形成することにある。
【0017】
本発明に係る表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法の更に他の要旨とするところは、前記フッ素系樹脂層の厚さを10μm以上となすことにある。
【0018】
また、前記ディスパージョンの有機溶剤の添加量は全フッ素系樹脂固形分に対して0.01%〜80%であることにある。
【0019】
また、前記有機溶剤の沸点は、60℃以上であることにある。
【0020】
また、前記熱処理炉における雰囲気温度が、熱風オーブンでは350℃以上、遠赤オーブンでは300℃以上であることにある。
【0021】
さらに、前記フッ素系樹脂ディスパージョンの濃度が30%以上であることにある。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体は、プラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布することにより、フッ素系樹脂層を形成したものであり、塗布により得ているにもかかわらず、得られる積層体表面には激しいクラックは見られず、外観上問題なく実現できるものであり、フッ素系樹脂積層体を容易に作成することができる。
【0023】
具体的には、本発明の製造方法を実施するには、例えば、図1に示すような装置10を用いることができる。この装置10は、プラスチックフィルム12を繰り出すためのフィルム繰出し装置14と、完成した積層体を巻き取るためのフィルム巻取り装置16と、フィルム表面にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布するためのコーターロール18、ドクタナイフ20及び液槽22と、フッ素系樹脂ディスパージョンが塗布されたフィルム表面を乾燥させてキュアするための熱処理炉24から構成されている。そして、熱処理炉24は、乾燥室26と加熱室28からなり、加熱室28には、熱風により加熱する熱風オーブンや、遠赤外線により加熱する遠赤オーブンなどがある。なお、符号30はフィルムを良好に走行させるためのフリーロールである。
【0024】
そして、プラスチックフィルム12をフィルム繰出し装置14からフィルム巻取り装置16へ走行させる過程で、コーターロール18により、フッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を塗布した後、乾燥室26にて乾燥させる。この際の塗布・乾燥条件としては、特に制限されるものではなく経験的に適宜設定すればよい。具体的には、例えば、コーターロール18としてクラビアロール80番を用い、ラインスピード1m/min 、コーターロール周速度200rpmという条件で特に最終的に10μm以上の樹脂層を良好に塗布することができる。また、乾燥条件としては、例えば100℃で2分間乾燥させるという条件が設定される。
【0025】
ここで、用いられるフッ素系樹脂についても特に限定されないが、テトラフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサンフルオロプロピレン樹脂共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン樹脂共重合体等が好ましく、1種類で用いても、2種類以上で用いてもよい。特にはテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を主成分とするものが好ましく、塗布方式に応じた粘度・濃度のディスパージョンに調整して用いられる。
【0026】
ここで、本発明の製造方法において、用いられるフッ素系樹脂ディスパージョンの濃度・粘度の設定が重要であり、濃度が30%を超える、好ましくは35%以上のフッ素系樹脂ディスパージョンにより、特に10μm以上の樹脂層を良好に塗布することができる。
【0027】
ところで、本発明において用いられるプラスチックフィルムとしては特に限定されるものではないが、キュア温度を高温で行う必要から、フィルムの熱分解温度が400℃以上であることが好ましく、ポリイミドフィルムを例示することができ、たとえば、化1
【化1】
に示す一般式に代表されるようなポリイミドフィルムが好ましく用いられる。
上記一般式(1)で表されるポリイミドフィルムは、著しく優れた耐熱性、長期耐熱性、難燃性、耐化学薬品性を有し、さらに、広い温度範囲において優れた機械的電気的特性を有することが広く知られている。
【0028】
また、樹脂層の塗布厚みをコントロールするためには、フッ素系樹脂ディスパージョンの濃度の他、粘度・塗布方法などについても考慮する必要があるが、液粘度については塗布方式に応じて適宜調整される。
【0029】
フッ素系樹脂ディスパージョンにおいては一般に市販されているものは、フッ素系樹脂固形分が30%〜60%のものが多く、そのディスパージョンの粘度は10センチポイズ程度と低く、そのままでは基材に塗布した際にディスパージョンが流れてしまい、うまく塗布することができない。そこで、フッ素系樹脂ディスパージョンに適度な粘度をもたすためにディスパージョンへ増粘剤を添加する必要がある。増粘剤としては、本実施例ではグッドリッチ製のカーボポール934を使用したが、特に上記の増粘剤に限定されることはない。
【0030】
なお、上記調整されたフッ素系樹脂ディスパージョンの塗布方法については、上述したようなグラビア方式の他にも、例えばリバースロール、エアドクタ、ブレードなどの方式があり、どのような方式を用いてもよいが、採用する塗布方式に最適な液粘度、濃度に調整した塗布液が用いられる。
【0031】
その後、樹脂層を塗布して乾燥させた後は、該樹脂層を加熱室28でキュアして硬化させるのであるが、上記条件を最適化すること、すなわちキュア温度と、キュア時間の設定が重要であり、なかでもキュア温度を高温で行うことにより、外観上問題のないフッ素系樹脂積層体を作製することができるのである。この加熱室28は、熱風オーブンもしくは遠赤オーブンでも良い。しかし、フッ素系樹脂又はプラスチックフィルムの熱分解温度以上で長時間キュアを行うと、それぞれの樹脂の熱劣化に伴う特性の低下、例えばヒートーシール強度の低下等が懸念されるので、キュア温度、キュア時間の上限に注意を払うことも重要である。キュア温度、キュア時間についてはフッ素系樹脂やプラスチックフィルムの熱分解温度に応じて適宜設定されるが、具体的には、加熱室28における、雰囲気温度は、熱風オーブンでは、450℃以上、遠赤オーブンでは400℃以上が好ましい。また、キュア時間は、キュア温度400℃では、1〜10分、好ましくは1〜5分、更に好ましくは1〜3分、また、キュア温度450℃では、0.5〜5分、好ましくは0.5〜3分、更に好ましくは0.5〜1分である。例えば、熱分解温度が450℃のフッ素系樹脂を、熱分解温度が590℃のプラスチックフィルムの片面又は両面に積層させる場合であれば、450℃では1〜3分、更に高温の480℃では0.5〜1分とするのが好ましい。
【0032】
また、この濃度調整したディスパージョンに、さらに、有機溶剤を添加することにより、本発明に係るフッ素系樹脂積層体をクラックが発生することなく製造することができる。有機溶剤は、その添加量はフッ素系樹脂固形分に対し、0.01%〜80%、好ましくは、0.05%〜50%であること、更に好ましくは0.1%〜35%の範囲であることが好ましい。また、有機溶剤の沸点は60℃以上であること、好ましくは80℃以上、更に好ましくは100℃以上であることが好ましく、かかる有機溶剤を添加したディスパージョンを用いることにより特に最終的に10μm以上の樹脂層を良好に塗布することができる。
【0033】
本発明に用いられる有機溶剤については特に限定されないが、具体的には、エタノール、DMF、NMP、グリセリンなどの水溶性のものを単独または2種以上の組合せにより用いられる。これらの沸点は、60℃以上、好ましくは80℃以上更に好ましくは100℃以上であることが好ましい。
【0034】
これらの高沸点有機溶剤を添加することにより、ディスパージョン中の蒸発成分に対し、蒸発する温度の幅をもたせることができ、その結果、乾燥後の状態においてFEP層表面のクラックの発生をかなり制御することができると推測される。さらに、乾燥後FEP層表面にクラックの発生が抑制されているために比較的低温でキュアすることができる利点がある。なお、沸点が低い有機溶剤においては、上記の効果は現れない。
【0035】
また、フッ素系樹脂ディスパージョンに有機溶剤を添加する場合は、この加熱室28のキュア温度は、有機溶剤を添加しない場合に比較し、適切な温度範囲は広く設定することができ、熱風オーブンの場合は350℃以上であること、好ましくは400℃以上であること、また、遠赤オーブンの場合は300℃以上であること、好ましくは350℃以上であること、更に好ましくは400℃以上である。また、有機溶剤を添加しない場合のキュアに要する時間と同じキュア時間で、50℃低い温度でキュアすることができる。従って、有機溶剤を添加しない場合に比較して低い温度において、同様の短時間において、キュアすることができる。なお、前記有機溶剤を添加しない場合と同様の温度条件でキュアすることによっても、本発明に係るフッ素系樹脂積層体をクラックが発生することなく製造することができるのである。キュア温度が高すぎると、フッ素系樹脂より有毒なガスが発生することがあり、低温で、しかも短時間でキュアできることが望ましい。
【0036】
本発明は、従来の概念からは発想し難い塗布によるフッ素系樹脂積層体の製造、特には10μm厚以上のフッ素系樹脂積層体の製造を可能としたのである。詳しくは、フッ素系樹脂ディスパージョンの濃度管理の処理条件を適性化し、フッ素系樹脂ディスパージョンを塗布することにより、またキュア温度をより高温で行うことにより、あるいは有機溶剤を添加することにより比較的低温でキュアすることを可能として、クラックの発生を抑制して特に10μm以上のフッ素系樹脂積層体を得るものである。かかる製造方法により、目視では積層体が濁ったように見えることなく、激しいクラックのないフッ素系樹脂積層体を作製することができるのである。なお、顕微鏡観察では、表面が濁ったように見える積層体には全体に線状の傷が見られ、激しいクラックのあることが確認されるが、本発明の製造方法により得られた積層体には、そのような傷はほとんど見られず、顕微鏡レベルにおいてもクラックはほとんどないことが確認された。従って、外観が非常に良好であり、電気絶縁性等の品質も良好である。
【0037】
以上のように本発明によれば、厚み2μm以上の、好ましくは、5μm以上、更に好ましくは、10μm以上のフッ素系樹脂積層体が、クラックの発生の抑止効果が顕著に顕れ、外観上及び品質上良好なものとして得られる。
【0038】
また、本発明はフッ素系樹脂フィルムに比べて安価なフッ素系樹脂ディスパージョンを用いて塗布により製造するものであり、更にはラミネート法に比べて塗布工程のラインスピードアップが容易であるために製造の高効率化が可能である。さらには、濃度調整したフッ素系樹脂ディスパージョンに有機溶剤をさらに添加することにより、クラックの発生を防止し、比較的低温においてもフッ素系樹脂積層体を製造することができる。その結果、本発明の製造方法により得られたフッ素系樹脂積層体は、従来のラミネート法により得られた積層体に比べ、大幅にコストダウンすることができる。
【0039】
以上、本発明に係るフッ素系樹脂積層体の製造方法の実施の形態の1例を説明したが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。上記実施例の他に、フッ素系樹脂ディスパージョンを繰り返し塗布・乾燥させてフィルム表面にフッ素系樹脂を特には10μm以上の厚みに形成し、外観上問題なく上述したようにキュアして硬化させるようにしてもよい。具体的には、フッ素系樹脂ディスパージョンを1回塗布・乾燥、2回目の塗布・乾燥の後、キュアする方法と、1回塗布後乾燥、キュアし、2回目塗布後乾燥し、再度キュアする方法があり、3種類以上のフッ素系樹脂ディスパージョンを用いる場合は、上記の2種の方法の組合せも可能である。なお、同種類のディスパージョンを数回に分けて塗布することも可能である。
【0040】
また、上述のようにフィルムの片面に樹脂層を有する積層体ではなく、フィルムの両面に樹脂層を有する積層体を製造してもよい。この場合には、例えば、フィルムの両面同時にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布して乾燥させた後、あるいは片面ずつ塗布して乾燥させた後、両面同時にキュアすればよい。また、上述したように片面に樹脂層を有する積層体を得た後、次いで、同様にして他の片面に樹脂層を形成する等、その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0041】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中に使用されている有機溶剤の沸点は、NMP:202℃、DMF:153℃、アセトン:56℃、メタノール:64.5℃、グリセリン:290℃である。
【0042】
【実施例1】
純水を54.0g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を0.50g計量し、混合機にて15分間攪拌した。次いで、アンモニア水(25〜28wt%)を0.90g添加し、引き続き混合機にて2分間攪拌した。その後、フッ素系樹脂ディスパージョンとしてテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を水分散したもの(ダイキン社製ND−1)を100g添加して15分間攪拌し、樹脂濃度35%、粘度23.0ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。なお、FEPの熱分解温度は480℃である。
【0043】
そして、図1に示すような装置により、上記得られたフッ素系樹脂ディスパージョンをFEP層が固形分で12.5μmになるように、25μm厚のポリイミドフィルム(商品名アピカル25AH;鐘淵化学工業株式会社製(熱分解温度580℃以上))の片面に塗布して乾燥させ、次いで、熱風オーブンにて雰囲気温度450℃で3分間キュアを行い、12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。なお、装置の仕様及び塗布・乾燥条件については、コーターロールにグラビアロール80番を用い、ラインスピードを1m/min 、コーターロール周速を200rpmとし、乾燥条件は100℃,2分とした。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表1にまとめた。
【0044】
【表1】
【0045】
【実施例2】
純水を6.0g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を0.27g、アンモニア水(25〜28wt%)を0.48gとした以外は、実施例1と同様にして樹脂濃度50%、粘度50.0ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例1と同様の条件で12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表1にまとめた。
【0046】
【実施例3】
実施例2と同様のフッ素系樹脂ディスパージョン(樹脂濃度50%)を用い、実施例1と同条件にて塗布、乾燥を行った後、熱風オーブンにて雰囲気温度480℃で0.5分間キュアを行い、12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表1にまとめた。
【0047】
【実施例4】
フッ素系樹脂ディスパージョンの塗布厚みを変更し5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作成する以外は実施例1と同様にして作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表1にまとめた。
【0048】
【比較例1】
純水を76.7g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を0.62g、アンモニア水(25〜28wt%)を1.11gとした以外は、実施例1と同様にして樹脂濃度30%、粘度20.0ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例1と同様の条件で12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められる激しいクラックが発生していた。この処理条件とクラックの有無について表1にまとめた。
【0049】
【比較例2】
純水を19.0g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を0.20g、アンモニア水(25〜28wt%)を0.36gとした以外は、実施例1と同様にして樹脂濃度45%、粘度10.0ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例1と同条件にて塗布、乾燥を行った後、熱風オーブンにて雰囲気温度400℃で5分間キュアを行い、12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められる激しいクラックが発生していた。この処理条件とクラックの有無について表1にまとめた。
【0050】
【比較例3】
実施例2と同様のフッ素系樹脂ディスパージョン(樹脂濃度50%)を用い、実施例2と同条件にて塗布、乾燥を行った後、熱風オーブンにて雰囲気温度400℃で5分間キュアを行い、12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められる激しいクラックが発生していた。この処理条件とクラックの有無について表1にまとめた。
【0051】
【実施例5】
実施例1と同様のフッ素系樹脂ディスパージョン(樹脂濃度35%)を用い、実施例1と同条件にて塗布、乾燥を行った後、遠赤オーブンにて雰囲気温度400℃で5分間キュアを行い、12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表2にまとめた。
【0052】
【表2】
【0053】
【実施例6】
実施例2と同様のフッ素系樹脂ディスパージョン(樹脂濃度50%)を用い、実施例1と同条件にて塗布、乾燥を行った後、遠赤オーブンにて雰囲気温度450℃で1分間キュアを行い、12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表2にまとめた。
【0054】
【実施例7】
実施例2と同様のフッ素系樹脂ディスパージョン(樹脂濃度50%)を用い、実施例1と同条件にて塗布、乾燥を行った後、遠赤オーブンにて雰囲気温度480℃で0.5分間キュアを行い、12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表2にまとめた。
【0055】
【比較例4】
純水を32.5g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を0.40g、アンモニア水(25〜28wt%)を0.72gとした以外は、実施例1と同様にして樹脂濃度40%、粘度19.0ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例1と同条件にて塗布、乾燥を行った後、遠赤オーブンにて雰囲気温度350℃で5分間キュアを行い、12.5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められる激しいクラックが発生していた。この処理条件とクラックの有無について表2にまとめた。
【0056】
【実施例8】
純水を617.5g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を5.32g計量し、混合機にて30分間攪拌した。次いで、アンモニア水(25〜28wt%)を9.50g添加し、引き続き混合機にて3分間攪拌した。その後、フッ素系樹脂ディスパージョンとしてテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を水分散したもの(ダイキン社製ND−1)を1900g添加し、DMFを50.5g添加して15分攪拌し、フッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%5.0%、樹脂濃度40%、粘度2〜3ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。なお、FEPの熱分解温度は480℃である。
【0057】
そして、図1に示すような装置により、上記得られたフッ素系樹脂ディスパージョンをFEP層が固形分で15μmになるように、25μm厚のポリイミドフィルム(商品名アピカル25AH;鐘淵化学工業株式会社製(熱分解温度580℃以上))の片面に塗布して乾燥(100℃−1分間)させ、次いで、熱風オーブンにて雰囲気温度400℃で3分間キュアを行い、15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。なお、装置の仕様及び塗布・乾燥条件については、コーターロールにグラビアロール80番を用い、ラインスピードを1m/min 、コーターロール周速を200rpmとし、乾燥条件は100℃,2分とした。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0058】
【表3】
【0059】
【実施例9】
DMF添加量を177.3gとした以外は、実施例8と同様にしてフッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%17.3%、樹脂濃度40%、2〜2.5ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用いて、実施例8と同様の条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0060】
【実施例10】
NMP添加量を50.5gとした以外は、実施例8と同様にしてフッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%5.0%、樹脂濃度40%、2〜3ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用いて、実施例8と同様の条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0061】
【実施例11】
NMP添加量を177.3gとした以外は、実施例8と同様にしてフッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%17.3%、樹脂濃度40%、2〜2.5ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用いて、実施例8と同様の条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0062】
【実施例12】
グリセリン添加量を50.5gとした以外は、実施例8と同様にしてフッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%5.0%、樹脂濃度40%、2〜3ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用いて、実施例8と同様の条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0063】
【実施例13】
グリセリン添加量を177.3gとした以外は、実施例8と同様にしてフッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%17.3%、樹脂濃度40%、2〜2.5ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用いて、実施例8と同様の条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0064】
【比較例5】
有機溶媒を添加しないこと以外は、実施例8と同様にして樹脂濃度40%、粘度3〜4ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同様の条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められる激しいクラックが発生していた。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0065】
【比較例6】
純水を60.0g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を18.5gを計量、混合機にて30分攪拌した。ついでアンモニア水(25〜28wt%)を33g添加し、引き続き3分攪拌した。その後、フッ素系樹脂ディスパージョンとしてテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロエチレン共重合体(FEP)を水分散したもの(ダイキン社製ND−1)を1000g添加して30分攪拌し、樹脂濃度50%、粘度60〜70ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められる激しいクラックが発生していた。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0066】
【比較例7】
純水を767.0g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を6.2gを計量、混合機にて30分攪拌した。ついでアンモニア水(25〜28wt%)を11.1g添加し、引き続き3分攪拌した。その後、フッ素系樹脂ディスパージョンとしてテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロエチレン共重合体(FEP)を水分散したもの(ダイキン社製ND−1)を1000g添加して30分攪拌し、樹脂濃度30%、粘度10ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められる激しいクラックが発生していた。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0067】
【比較例8】
純水を440.0g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を1.45gを計量、混合機にて30分攪拌した。ついでアンモニア水(25〜28wt%)を2.61g添加し、引き続き3分攪拌した。その後、フッ素系樹脂ディスパージョンとしてテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロエチレン共重合体(FEP)を水分散したもの(ダイキン社製ND−1)を100g添加して30分攪拌し、樹脂濃度10%、粘度6〜7ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められる激しいクラックが発生していた。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0068】
【比較例9】
有機溶媒を添加しないこと以外は、実施例8と同様にして樹脂濃度40%、粘度3〜4ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同条件で5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は濁ったように見え、そのフッ素樹系脂層表面には目視で認められるクラックが若干発生していた。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0069】
【参照例1】
アセトン添加量50.5gとした以外は、実施例8と同様にして、フッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%5%、樹脂濃度40%、2〜2.5ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョンを得た。得られた(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同様の条件で15μmのフッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は若干濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められるクラックが若干発生していた。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0070】
【参照例2】
アセトン添加量177.3gとした以外は、実施例8と同様にして、フッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%17.3%、樹脂濃度40%、2〜2.5ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョンを得た。得られた(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は若干濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められるクラックが若干発生していた。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0071】
【参照例3】
メタノール添加量50.5gとした以外は、実施例8と同様にして、フッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%5.0%、樹脂濃度40%、2〜2.5ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョンを得た。得られた(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は若干濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められるクラックが若干発生していた。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0072】
【参照例4】
メタノール添加量を177.3gとした以外は、実施例8と同様にして、フッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%17.3%、樹脂濃度40%、2〜2.5ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョンを得た。得られた(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は若干濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には目視で認められるクラックが若干発生していた。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0073】
【実施例14】
DMF添加量を177.3gとした以外は、実施例8と同様にして、フッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%17.3%、樹脂濃度40%、2〜2.5ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同条件で25μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体は若干濁ったように見え、そのフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0074】
【実施例15】
純水を440.0g、カーボポール934(グッドリッチ製,粘度調整剤)を1.45g計量し、混合機にて30分攪拌した。ついでアンモニア水(25〜28wt%)を2.61g添加し、引き続き3分攪拌した。その後、フッ素系樹脂ディスパージョンとしてテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロエチレン共重合体(FEP)を水分散したもの(ダイキン社製ND−1)を100g添加して30分攪拌し、DMFを2.7g添加して15分攪拌し、フッ素系樹脂固形分に対する有機溶剤重量%5.0%、樹脂濃度10%、粘度6〜7ポイズのフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を得た。得られたフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、実施例8と同条件で15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0075】
【実施例16】
フッ素系樹脂ディスパージョンの塗布厚みを変更し5μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作成する以外は実施例8と同様にして作製した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表3にまとめた。
【0076】
【実施例17】
実施例8と同様に合成したフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、乾燥条件を100℃、1分とし、さらに、熱風オーブンにて450℃、3分間キュアを行い、15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作成した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表4にまとめた。
【0077】
【表4】
【0078】
【実施例18】
実施例9と同様に合成したフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、乾燥条件を100℃、1分とし、さらに、熱風オーブンにて450℃、3分間キュアを行い、15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作成した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表4にまとめた。
【0079】
【実施例19】
実施例8と同様に合成したフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、乾燥条件を100℃、1分とし、さらに、遠赤オーブンにて400℃、3分間キュアを行い、15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作成した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表4にまとめた。
【0080】
【実施例20】
実施例9と同様に合成したフッ素系樹脂ディスパージョンを用い、乾燥条件を100℃、1分とし、さらに、遠赤オーブンにて400℃、3分間キュアを行い、15μm厚の片面フッ素系樹脂積層体を作成した。完成した積層体のフッ素系樹脂層表面には、目視でクラックは認められなかった。この処理条件とクラックの有無について表4にまとめた。
【0081】
以上、実施例1〜7及び比較例1〜4によって、クラックのない積層体を得るためには、フッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)の樹脂濃度が30%を越え、好ましくは35%以上であり、かつキュア温度を、熱風オーブンでは450℃以上、遠赤オーブンでは400℃以上とすることが重要であること、また、キュア温度を高くすると、キュア時間が短くてもクラックのない積層体が得られることがわかる。なお、高温でキュアすることによる樹脂の熱劣化に伴う特性の低下を鑑みると、キュア時間は短い方が好ましいと考えられる。また、実施例8〜20及び比較例5〜9によって、有機溶剤を添加する系においては、有機溶剤を添加することにより、高温でキュア処理しなくともクラックの発生を抑制する効果があること、さらに有機溶剤の沸点がより高い方がクラックの発生がないことがわかる。また、実施例17〜24によって、有機溶剤を添加し、かつ高温でキュアすることによってもマッドクラックのないフッ素系樹脂積層体を得られることがわかる。
【0082】
【発明の効果】
以上のように、本発明はプラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂層を形成した積層体の製造方法において、塗布法による製造を実現したものであり、フッ素系樹脂フィルムに比べて安価なフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布することにより積層体が得られるため、従来のラミネート法に比べて低コストでの作製が可能となる。詳しくは、濃度調整したフッ素系樹脂ディスパージョン(塗布液)を塗布・乾燥した後、高温にてキュアすることにより、あるいは、濃度調整したディスパージョンに有機溶剤を添加し、塗布・乾燥した後、キュアすることにより、フッ素系樹脂層表面にクラックのほとんどない外観に優れた積層体を得ることができ、本発明の製造方法により得られたフッ素系樹脂積層体は、電線絶縁として使用する場合などにおいて優れた電気信頼性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフッ素系樹脂積層体の製造方法を実施するための装置を示した説明図である。
【符号の説明】
10;フッ素系樹脂積層体製造装置
12;プラスチックフィルム
14;フィルム繰出し装置
16;フィルム巻取り装置
18;コーターロール
24;熱処理炉
26;乾燥室
28;加熱室(熱風オーブン又は遠赤オーブン)
Claims (13)
- プラスチックフィルムと、その片面又は両面にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布することにより形成された厚さ10μm以上のフッ素系樹脂層とから構成され、前記フッ素系樹脂層表面にクラックがないことを特徴とする表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体。
- プラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布して乾燥させた後、熱処理炉にて、その雰囲気温度を、熱風オーブンでは450℃以上、遠赤オーブンでは400℃以上にしてキュアすることによりフッ素系樹脂を積層してなる、前記フッ素系樹脂層表面にクラックがないことを特徴とする表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体。
- 前記フッ素系樹脂層の主成分が、テトラフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン樹脂共重合体のうち1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体。
- 前記プラスチックフィルムの熱分解温度が400℃以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体。
- 前記プラスチックフィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体。
- プラスチックフィルムの片面又は両面にフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布して乾燥させた後、熱処理炉にて、その雰囲気温度を、熱風オーブンでは450℃以上、遠赤オーブンでは400℃以上にしてキュアすることによりフッ素系樹脂を積層してなる、前記フッ素系樹脂層表面にクラックがないことを特徴とする表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法。
- 前記フッ素系樹脂層の厚さを10μm以上となすことを特徴とする請求項6に記載する表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法。
- プラスチックフィルムの片面または両面に有機溶剤を添加したフッ素系樹脂ディスパージョンを塗布して乾燥させた後、熱処理炉にてキュアすることによりフッ素系樹脂層を形成することを特徴とする表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法。
- 前記フッ素系樹脂層の厚さを10μm以上となすことを特徴とする請求項8に記載する表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法。
- 前記ディスパージョンの有機溶剤の添加量は全フッ素系樹脂固形分に対して0.01%〜80%であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載する表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法。
- 前記有機溶剤の沸点は、60℃以上であることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載する表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法。
- 前記熱処理炉における雰囲気温度が、熱風オーブンでは350℃以上、遠赤オーブンでは300℃以上であることを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれかに記載する表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法。
- 前記フッ素系樹脂ディスパージョンの濃度が30%以上であることを特徴とする請求項6乃至請求項12のいずれかに記載する表面性の改良されたフッ素系樹脂積層体の製造方法。
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