JP3581502B2 - 光検出装置の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光電変換素子と薄膜トランジスタを同一基板上に形成する光検出装置の製造方法に関し、特に、ファクシミリ、デジタル複写機、スキャナーなどに利用される1次元及び2次元の画像読取装置、更には、X線やγ線などの放射線を蛍光板により可視光等に変換し、この変換光を読み取る光検出装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ファクシミリ、デジタル複写機、或いは、放射線検出装置などの読み取り系としては縮小光学系とCCD型センサーを用いた読み取り系が用いられている。しかしながら、近年、非晶質シリコン(以下、a−Si膜と略記)に代表される光電変換半導体材料の開発により、光電変換素子を大面積基板に形成し、情報源と等倍の光学系で読み取る密着型センサーの開発が進み実用化されつつある。
【0003】
特に、a−Si膜は光電変換材料としてでなく、スイッチTFTの半導体材料としても用いることが出来るので光電変換素子の半導体層とスイッチTFTの半導体層とを同時に形成できる利点がある。
【0004】
従来のa−Si膜を用いた光センサーの代表的な例として、PIN型光センサーの模式的断面図を図7に示す。図7において、101はガラス基板、102は下部電極、103はp型半導体層(以下p層と略記)、104は真性半導体層(以下i層と略記)、105はn型半導体層(以下n層と略記)、106は透明電極である。
【0005】
次に、本光センサーの概略回路図を図8に示す。図8において、110はPIN型光センサー、111は電源、112は電流アンプなどの検出器を示している。光センサー110において、Cで示された方向は図8の透明電極106側であり、Aで示された方向は下部電極102側である。電源111はA側に対してC側に正の電圧が加わる様に設定されている。
【0006】
以下に、本PIN型光センサーの基本動作を図7及び図8を用いて概説する。
【0007】
図7に示される様に、矢印で示された方向から光が入射すると、i層104において、入射光は光電変換され、電子とホールを生成する。i層104には電源111により電界が印加されているため、電子はC側、即ち、n層105を通過して透明電極106に移動し、ホールはA側、即ち、下部電極102に移動する。つまり、光センサー110に光電流が流れたことになる。
【0008】
また、光入射がない場合は、i層104では、電子もホールも発生せず、また、透明電極106内のホールはn層105がホールの注入阻止層として働き、下部電極102内の電子はp層103が電子の阻止層として機能する。その結果、電子・ホール共に移動できず電流は流れない。この様に、光入射の有無で回路を流れる電流が変化する。これを図8の検出器112で検出すれば光センサーとして動作する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のPIN型光センサーでは高S/N比、低コストの光検出装置を実現するのは困難である。以下、その理由について説明する。
【0010】
第1の理由は、PIN型光センサーでは、p層及びn層の注入阻止層が必要なところにある。
【0011】
図7のPIN型光センサーでは、注入阻止層であるn層105は電子を透明電極106に導くと同時にホールがi層104に注入するのを阻止する特性が必要である。どちらかの特性を逸すれば光電流が低下したり、光入射が無い場合の電流(以下暗電流と記す)が発生、増加することになりS/N比の低下の原因になる。
【0012】
通常、この特性を向上させるため、i層104やn層105の膜質、即ち、成膜条件や、特に、作成後の熱処理条件などの諸条件の最適化を図る必要がある。
【0013】
一方、p層103においても、電子、ホールは逆ではあるが、ホールを下部電極102に導くと同時に、電子がi層104に注入するのを阻止する特性が必要であり、n層105と同様にi層104やp層103の各条件の最適化が必要である。言い換えれば、一般には、n層の最適化とp層の最適化の条件は同一でなく、両者の条件を同時に満足させるのは不可能である。
【0014】
つまり、同一光センサー内にp層及びn層の注入阻止層が必要なことは高S/N比の光センサーの形成を困難にする、と言い換えられる。
【0015】
第2の理由を図9を用いて説明する。図9はスイッチTFTの模式的断面図である。このTFTは光検出装置を形成する上で制御部の一部として利用される。図中、101はガラス基板、102は下部電極、107は絶縁膜、104はi層、105はn層、160は上部電極である。
【0016】
次に、作成法を順を追って説明する。本スイッチTFTは、ガラス基板101上にゲート電極Gとして機能する下部電極102、ゲート絶縁膜107、i層104、n層105、ソース・ドレイン電極(以下S・Dと略記)として機能する上部電極160を順次成膜し、上部電極160をエッチングしてソース・ドレイン電極を形成し、その後、n層105を除去してチャネル部170を構成したものである。スイッチTFTの特性は、ゲート絶縁膜107とi層104の界面状態に敏感であるため、通常、作製法上は真空を破らず連続成膜するのが常識である。
【0017】
ここで、従来のPIN型光センサーをこのスイッチTFTと同一基板に作成する場合、この層構成がコストアップや特性の低下を引き起こす。この理由は、図7に示した従来の光センサーの構成が、基板側から、電極、p層、i層、n層、電極という構成に対して、図9に示したように、スイッチTFTは、基板側から、電極、絶縁層、i層、n層、電極という構成であり、両者の層構成が異なるからである。つまり、これは同一プロセスで光センサー、スイッチTFTを同時に作成できないことを示している。即ち、必要な領域に必要な層を形成するため、成膜・フォトリソ工程などが繰り返される複雑なプロセスとなるため、歩留りの低下、コストアップと言った問題を生じる結果になる。
【0018】
例えば、製造プロセスを簡略化するために、PIN型光センサーとスイッチTFTのi層、n層を共通化する場合、少なくとも、ゲート絶縁層及びp層を連続して成膜し、スイッチTFT部のp層を除去し、その後、i層、n層を連続成膜することが可能である。しかし、スイッチTFTの重要なゲート絶縁膜とi層の界面、また、PIN型光センサーのp層とi層の界面が、そのために汚染され、特性の劣化やS/N比の低下を引き起こす結果となる。
【0019】
また、PIN型光センサーより生成された電荷や電流の積分値を得るのに必要となる容量素子(以下コンデンサーと記す)を従来の光センサーと同一の構成でリークの少ない良好な特性のものを作成するのは困難である。コンデンサーは2枚の電極間に電荷を蓄積するため電極間の中間層には必ず電子とホールの移動を阻止する層が必要であるのに対し、従来のPIN型光センサーの層構成では、電極間に半導体層のみ利用しているため、リークの少ない良好なコンデンサーを作製できない欠点がある。
【0020】
この様に、光検出装置を構成する上で重要な素子であるスイッチTFTやコンデンサーを製造する上で、プロセス的に、又は、特性的に整合性がとれないことは、必然的に工程が複雑となり、歩留まりの低下となる。
【0021】
特に、複数の光センサーを1次元、若しくは、2次元に多数配置し、この光信号を順次検出する光検出装置を、低コスト、高性能多機能な装置として実現するには重大な問題となる。
【0022】
[発明の目的]
本発明の課題
(目的)は、S/N比が高く、特性が安定している光電変換素子とスイッチTFTとを同一プロセスで形成することが可能な光検出装置の製造方法を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、絶縁基板上に、第1の電極層、絶縁層、光電変換半導体層、該半導体層へのキャリア注入阻止層、第2の電極層とから構成されるMIS型光電変換素子とし、また、第1の電極層、絶縁層、半導体層、該半導体層へのオーミックコンタクト層、第2の電極層とから構成されるスイッチTFTとから成る光検出器の簡略化された製造方法を提供することにより、高S/N比、低価格の光検出装置を実現することができる。
【0024】
また、上述のような上部電極を有する光電変換素子と、ソース・ドレイン電極を有する薄膜トランジスタを、基板上に一体的に形成する光検出装置の製造方法において、前記光電変換素子の上部電極と薄膜トランジスタのソース・ドレイン電極とを含む電極層を成膜した後、前記薄膜トランジスタのソース・ドレイン電極の形成と、チャネル部の少なくともオーミックコンタクト層の除去とを、同一のマスクで行う工程と、他のマスクにより、上記光電変換素子の上部電極を形成する工程と、を有することを特徴とする光検出装置の製造方法により、従来、光電変換素子の上部電極及びTFTのソース・ドレイン電極の第2の電極層のマスクパターンとTFTチャネル部を含めたオーミックコンタクト層除去部のマスクパターンとが異なるため、上述の第2の電極層のパターニングに次いで、TFTチャネル部のオーミックコンタクト層除去部のパターニングを行なう従来の方法に比べて、ソース・ドレイン電極を形成するためのマスクと、そのチャネル部のオーミックコンタクト層を除去するためのマスクとが、同じマスクパターンであるため、アライメントずれを考慮して、特にTFT部のソース・ドレイン電極の幅のマージンが不要になり、TFTの小型化、開口率の向上も可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
[実施例1]
本実施例では、2次元光検出装置の第1の作成方法について工程順に説明する。図1(a)〜図1(g)に各工程で作成される模式的断面図を示し、また、図2(a)〜図2(e)に各工程で使用されるマスクパターンを示す。
【0026】
第1工程では、図1(a)に示す如く、ガラス基板21上(日本電気硝子製OA−2)にCr薄膜1000Åをスパッタリング法により成膜し、その後、フォトリソグラフィー法により、図2(a)に示した第1のマスクを用いて、スイッチTFTのゲート電極22及び光センサーの下部電極23を形成する。
【0027】
第2工程では、図1(b)に示す如く、プラズマCVD法によりスイッチTFTのゲート絶縁膜としてSiN膜24を3000Å、光センサーの光電変換層及びスイッチTFTの半導体層としてa−Si膜25を5000Å、光センサーのキャリア注入阻止層及びスイッチTFTのオーミックコンタクト層としてn膜26を1000Å連続成膜する。
【0028】
第3工程では、図1(c)に示す如く、コンタクトホールを形成する。フォトリソグラフィー法により、図2(b)に示した第2のマスクを用いて、所定のパターンを形成し、CDE法により加工する。
【0029】
第4工程では、図1(d)に示す如く、Al薄膜27を1μ、スパッタリング法により成膜する。
第5工程では、フォトリソグラフィー法により、図2(c)に示した第3のマスクを用いて、スイッチTFTのソース・ドレイン電極27を形成する。その後、引き続き、同一マスクで、RIE法により、スイッチTFTチャネル部のn膜26を1000Åとa−Si膜25を200Å程度エッチングする。
【0030】
工程では、図1(e)に示す如くフォトリソグラフィー法により、図2(d)に示した第4のマスクを用いて、光センサーの上部電極28を形成する。
【0031】
工程では、図1(f)に示す如く、フォトリソグラフィー法により、図2(e)に示した第5のマスクを用いて、所定のパターンを形成し、RIE法によりn膜26、a−Si膜25、SiN膜24を同時にエッチングし、素子間分離する。
【0032】
工程では、図1(g)に示す如く、パッシベーション膜29としてSiN膜をプラズマCVD法により成膜した後、第6のマスク(不図示)を用いて、所定のパターンに形成し、配線引出し部(不図示)などの不必要な部分をRIE法によりエッチングする。
【0033】
この様にして作成された光検出器の模式的平面図を図3に示す。図3において、11はMIS型センサー部、12はスイッチTFT部、13は信号配線、14はゲート配線、15はセンサー上部電極配線である。
【0034】
[実施例2]
第2の実施例では、本光検出装置と、X線などの放射線を可視光へ変換する蛍光板などとを用いたX線検出装置の製造方法について説明する。
【0035】
第1工程から第工程までは、実施例1と同様である。以下に、第工程以降の製造方法について述べる。
【0036】
工程では、図4(a)に示す如く、パッシベーション膜としてSiN膜29をプラズマCVD法により成膜した後、遮光膜として赤色フィルター30を図5に示した第6のマスクを用いて、スイッチTFT部等の所定のパターンに形成する。
【0037】
工程では、配線引出し部(不図示)などの不必要な部分をマスキングし、保護膜として、ポリイミド樹脂(不図示)を塗布、形成し、このポリイミド樹脂をマスクにしてRIE法によりSiN膜29をエッチングする。
【0038】
10工程では、図4(b)に示す如く、エポキシなどの接着剤32を介して、蛍光板33を貼り合わせる。
【0039】
[実施例3]
第3の実施例は、実施例1における第工程と第工程の順序を入れ替えた製造方法である。
【0040】
第4工程では、図6(a)に示す如く、Al薄膜1μをスパッタリング法により成膜する。
第5工程では、フォトリソグラフィー法により、実施例1における第4のマスクを用いて、光センサーの上部電極28を形成する。
【0041】
工程では、図6(b)に示す如くフォトリソグラフィー法により、実施例1における第3のマスクを用いて、スイッチTFTのソース・ドレイン電極27を形成する。その後、引き続き、同一のマスクで、RIE法により、スイッチTFTチャネル部のn膜26を1000Åとa−Si膜25を200Å程度エッチングする。
【0042】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、光電変換素子とスイッチTFTとからなる光検出装置において、光電変換素子を第1の電極層、絶縁層、光電変換半導体層、該半導体層へのキャリア注入阻止層、第2の電極層とから構成することにより、スイッチTFTと同一、簡略なプロセスで製造可能となり、S/N比の高い、低コストの光検出装置を実現することが可能となる。
【0043】
また、TFTのソース・ドレイン電極を形成するためのマスクと、そのチャネル部のオーミックコンタクト層を除去するためのマスクとが、同じマスクであり、マスクを交換する必要がないため、アライメントずれが出ない。このため、特性の優れたトランジスタを、小型に、寸法精度良く実現することができ、かつ、高開口率の光検出装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(g)は、本発明の実施例1の各工程での模式的断面図。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の実施例1の各工程で用いるマスクの平面図。
【図3】本発明の実施例1の模式的平面図。
【図4】(a)〜(b)は、本発明の実施例2の各工程での模式的断面図。
【図5】本発明の実施例2に用いるマスクの平面図。
【図6】(a)〜(b)は、本発明の実施例3の各工程での模式的断面図。
【図7】従来例のPIN型光センサの構造を示す模式断面図。
【図8】光センサの概略回路図。
【図9】スイッチTFTの模式断面図。
【符号の説明】
11 MIS型光センサー
12 スイッチTFT
13 信号配線
14 ゲート配線
15 センサー上部配線
21,101 ガラス基板
22,23,102 下部電極
24,29,107 絶縁膜
25,104 真性半導体層
26,105 n型半導体層
27,160 ソース・ドレイン電極
28 MIS型光センサー上部電極
30 赤色フィルター
32 接着剤
33 蛍光板
103 p型半導体層
106 透明電極
170 スイッチTFTチャネル部
110 PIN型光センサー
111 電源
112 検出器

Claims (9)

  1. 上部電極を有する光電変換素子と、ソース・ドレイン電極を有する薄膜トランジスタを、基板上に一体的に形成する光検出装置の製造方法において、
    前記光電変換素子の上部電極と薄膜トランジスタのソース・ドレイン電極とを含む電極層を成膜した後、前記薄膜トランジスタのソース・ドレイン電極の形成と、チャネル部の少なくともオーミックコンタクト層の除去とを、同一のマスクで行う工程と、
    他のマスクにより、上記光電変換素子の上部電極を形成する工程と、
    を有することを特徴とする光検出装置の製造方法。
  2. 少なくとも、光電変換素子と薄膜トランジスタとを一体的に形成する光検出装置の製造方法において、
    第1のマスクにより、第1の電極層を形成する第1の工程と、
    絶縁層及び半導体層及びn型半導体層を順次積層する第2の工程と、
    第2のマスクにより、コンタクトホールを形成する第3の工程と、
    少なくとも前記薄膜トランジスタのソース・ドレイン電極と前記光電変換素子の上部電極を含む第2の電極層を成膜する第4の工程と、
    第3のマスクによりチャネル部となる領域の前記第2の電極層を除去して前記ソース・ドレイン電極を形成した後、該ソース・ドレインの電極間のn型半導体層を除去して前記チャネル部を形成する第5の工程と、
    少なくとも前記チャネル部となる領域を覆う第4のマスクにより、前記第2の電極層から前記光電変換素子の上部電極を形成する第6の工程と、
    第5のマスクにより、素子間分離を行う第7の工程と、
    を有することを特徴とする光検出装置の製造方法。
  3. 前記光電変換素子は、第1の電極層と第1の絶縁層と第1の半導体層と該半導体層へのキャリア注入阻止層と第2の電極層とから構成されたMIS型光電変換素子であり、前記薄膜トランジスタは、第3の電極と第2の絶縁層と第2の半導体層と該第2の半導体層へのオーミックコンタクト層と第4の電極層とから構成されていることを特徴とする請求項2記載の光検出装置の製造方法。
  4. 前記第1の半導体層と前記第2の半導体層は、同時に形成され、非晶質シリコン膜であることを特徴とする請求項3記載の光検出装置の製造方法。
  5. 前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層は、同時に形成され、非晶質シリコン窒化膜であることを特徴とする請求項3記載の光検出装置の製造方法。
  6. 前記キャリア注入阻止層と前記オーミックコンタクト層は、同時に形成され、n型非晶質シリコン膜であることを特徴とする請求項3記載の光検出装置の製造方法。
  7. 上記第の工程の後、上記第の工程を行うことを特徴とする請求項2記載の光検出装置の製造方法。
  8. 上記第1から第の工程をその順序で行うことを特徴とする請求項2記載の光検出装置の製造方法。
  9. 更に、放射線を可視光に変換する蛍光板を貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項2記載の光検出装置の製造方法。
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