JP3581094B2 - 残価予測システム及びその方法、並びにコンピュータ上で動作する残価予測プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、対象物の将来における残価の変動を予測する技術に関する。特に、対象物が複数の属性値を取り得る属性を備えている場合に有効な予測技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来において、財物を実際に購入する代わりに借り受けて使用するリース方式(レンタル方式を含む)が知られている。リース方式を利用した場合、財物の維持・管理などをリース会社に任せることができ、また初期費用も購入する場合に比べて低額ですむなど、利用者にとってメリットも多い。そのため、今日では、車や大型機械など多種多様な財物に関してリース方式が導入されてきている。
【0003】
車などを対象としたリース方式では、リース開始時にリース期間経過後における財物の残価を想定し、かかる想定残価に基づきリース料を算出する枠組みを取る場合が多い。このような想定残価をベースとする枠組みは、例えば財物を担保として融資を行う場合の融資額の決定や、車両保険の設計など、リース方式以外においても採用することができる。
【0004】
想定残価の算出方法としては、財物の耐用年数を基準とした減価償却方式が知られている。減価償却方式には定額法と定率法があり、例えば財物が車の場合は以下の式により想定残価(将来における時価)が算出されることになる。
定率法:想定残価=取得価額×(1−0.319)経過年数
定額法:想定残価=取得価額−(取得価額×(1−1/10)×0.166×経過年数)
ここで、リース開始時に設定した想定残価と、実際にリース期間が経過した時点における残価とは通常一致しない場合が多く、想定残価より実際の残価の方が低額の場合、その差額はリース会社の損失となってしまう。
【0005】
そこで、経時的に価値が減少していく財物を対象として、財物の将来における残価の変動に起因する損失を補償する方法として、残価保証保険というスキームが考えられる。残価保証保険とは、将来のある特定した時点において、残価が想定した価格より下落している場合に、原則として、差額(=想定した価格−実際の残価)が保険金として支払われる保険である。
【0006】
このような残価保証保険において、複数の財物を同時にリースする場合、これら複数の財物をまとめて一つのグループを形成し、グループ単位で残価保証保険の対象とする考え方がある。このようなグループはプールと呼ばれる。この場合、残価保証保険は、プール内のトータル残価が一定水準より下落した場合に発動されることになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
リース、担保融資等の金融関係、保険等の分野で必要とされるのは、当該財物を継続して利用する場合の価値ではなく、中古品として処分した場合の交換価値の把握であることから、減価償却という会計的手法による将来価値の予測は、この目的には適合しておらず、正確な予測が不可能であった。この予測精度の低さのため、保険事業者等は採算割れを避けるために、財物の将来価値を低めに割り引いて評価せざるを得なかった。
【0008】
そこで、本発明は、中古品として処分した場合における交換価値という観点から、対象物の将来における残価を精度よく予測する技術を提供することを第1の目的とする。
【0009】
かかる第1の目的を達成すべく、(1)同一カテゴリに分類される財物の取引データを収集する、(2)各取引データより、取引時の経年期間及び残価(中古価格)を抽出する、(3)抽出したデータ群(経年期間、残価)に対し関数近似を行う、(4)近似関数に基づいて所定将来の残価を予測する、という残価予測手順を考える。予測した残価に基づき残価保証保険の設計をする場合は、更に、(5)予測残価に基づいて残価保証保険を設計する(保険料を算出する)、という手順を追加する。
【0010】
かかる手順において、近似関数の予測精度を上げるためには、同傾向を示すデータが同一カテゴリに分類されるようにカテゴリを設定する必要がある。特に、対象となる財物が残価に大きな影響を与え得る属性を備えている場合、そのような属性に関しては、属性値ごとにカテゴリを設定することが望ましい。
【0011】
しかし、属性値ごとにカテゴリを細分化すると、同一カテゴリに属する取引データ数が少なくなり、逆に近似関数の信頼性が大きく低下してしまうという問題が生じることになる。
【0012】
例えば、中古車市場においては、同一車種であっても、車色、グレードといった車が備える属性によって残価が大きく変わってくる場合がある。そのため、車色やグレードを考慮せずに「車種」のみをカテゴリとして設定して近似関数を求めたとしても、適切な残価を予測することはできない。
【0013】
一方、車には多種多様の車色やグレードが存在するため、車色やグレードまで考慮してカテゴリを設定すると、カテゴリによっては取引データ数をほとんど収集できなくなってしまう。
【0014】
そこで、本発明は、対象となる財物が残価に大きな影響を与え得る属性を備えている場合、その属性に関し、細分化によるデータ減少を起こすことなく、同傾向を示すデータに基づいて、精度よく残価を予測することができる技術を提供することを第2の目的とする。
【0015】
ところで、一定数のプールを形成して残価保証を行う場合、プール内における属性の構成比(属性値の出現比)は保険の発動に直接的に影響を与えることになる。例えば、車を対象として同一台数のプールを形成した場合、残価の高い車色やグレードの車が多く占める場合における保険発動率と、残価の低い車色やグレードの車が多く占める場合における保険発動率とでは、大きく異なってくると考えられる。
【0016】
更に、プール形成数が異なる場合、属性の構成比のばらつきも異なってくることになる。例えば、プール形成数が多い場合、実際に観測される構成比のばらつき(分散)は小さくなり、平均的な構成比を取る場合が多くなる。一方、プール形成数が少ない場合、観測される構成比のばらつきは大きくなり、偏った構成比を取る割合が増加する。このことは、プール形成数の大小にかかわらず常に同じ構成比を固定的に用いて保険を設計したのでは、構成比のばらつきが考慮されないため、適切な保険が設計できないことを意味する。
【0017】
そこで、本発明は、対象となる財物が残価に影響を与える属性を備えている場合であって、一定数の財物をまとめてプールを形成し、プール単位で残価保証保険を設計する場合に、プール内の属性の構成比、更にはプール形成数に依存する属性の構成比のばらつきをも考慮して、残価保証保険の保険料を算出する技術を提供することを第3の目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の残価予測システムは、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースと、前記中古価格データベースに記憶する残価と経過期間の対応関係に基づき、所定将来における予測残価を算出し記憶する予測残価算出手段と、を備え、前記予測残価算出手段は、前記中古価格データベースに記憶されている取引データについて、該取引データに含まれる対象物の残価を、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に基づき補正して、当該対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、代表属性値を取ると擬制することを「標準化」と呼ぶ。)の残価を算出し、かかる標準化された残価と該取引データに含まれる経過期間に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出し記憶する標準予測残価算出手段と、前記標準化された予測残価に対し、残価を予測したい対象物が備える属性に対応する修正を施して非標準化された予測残価を求め記憶する非標準化予測残価算出手段と、を備えることを特徴とする。また本発明の残価予測システムは、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースと、前記中古価格データベースに記憶する残価と経過期間の対応関係に基づき、所定将来における予測残価を算出し記憶する予測残価算出手段と、を備え、前記予測残価算出手段は、対象物が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、代表属性値を取ると擬制することを「標準化」と呼ぶ。)の、所定将来における予測残価(以下、「標準化された予測残価」と呼ぶ。)を算出し記憶する標準予測残価算出手段と、記憶手段に記憶する属性の構成比に基づいて、対象物が備える属性の属性値を確率的に選択し、前記標準化された予測残価に対し前記選択した属性値に対応する修正を施して非標準化された予測残価を求め記憶する非標準予測残価算出手段と、を備えることを特徴とする。
好適には、前記標準予測残価算出手段は、前記中古価格データベースに記憶さ れている取引データについて、該取引データに含まれる対象物の残価を、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に基づき補正して、標準化された残価を算出する標準化機能と、前記標準化された残価と該取引データに含まれる経過期間に基づき、標準化された予測残価の期待値を算出する関数(以下、「予測関数」と呼ぶ。)を求める機能と、前記予測関数に基づき所定将来における標準化された予測残価の期待値を算出する機能と、を備えることを特徴とする。
また好適には、前記標準予測残価算出手段は、記憶手段に記憶する対象物の残価を、該対象物の所定属性の属性値に基づき補正して、標準化された残価を算出する標準化機能と、前記標準化された残価と該対象物の経過期間に基づき、標準化された予測残価の期待値を算出する関数(以下、「予測関数」と呼ぶ。)を求める機能と、前記標準化された残価に基づき、前記予測関数まわりの分散を求める機能と、前記予測関数に基づき所定将来における標準化された予測残価の期待値を算出する機能と、(平均値、分散)=(前記算出した期待値、前記求めた分散)となる分布に基づいて標本値を発生させ、標準化された予測残価として記憶する機能と、を備えることを特徴とする。
また本発明の残価予測システムは、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースと、対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための標準化情報を記憶する第1の記憶手段と、標準化した対象物の属性が所定の属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「非標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための非標準化情報を記憶する第2の記憶手段と、前記中古価格データベースに記憶されている取引データを読み出し、前記第1の記憶手段を参照して、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に対応する標準化情報を取得し、前記取得した標準化情報に基づいて該取引データに含まれる対象物の残価を修正して、標準化された残価を算出する標準化手段と、前記標準化された残価と該取引データに含まれる経過期間に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する標準予測残価算出手段と、前 記第2の記憶手段を参照して、残価を予測したい対象物が備える属性に対応する非標準化情報を取得し、前記取得した非標準化情報に基づいて前記標準化された予測残価を修正して、非標準化された予測残価を求める非標準予測残価算出手段と、を備えることを特徴とする。
また本発明の残価予測システムは、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースと、対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための標準化情報を記憶する第1の記憶手段と、標準化した対象物の属性が所定の属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「非標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための非標準化情報を記憶する第2の記憶手段と、前記中古価格データベースに記憶されている取引データを読み出し、前記第1の記憶手段を参照して、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に対応する標準化情報を取得し、前記取得した標準化情報に基づいて該取引データに含まれる対象物の残価を修正して、標準化された残価を算出する標準化手段と、前記標準化された残価と該取引データに含まれる経過期間に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する標準予測残価算出手段と、記憶手段に記憶する属性の構成比に基づいて、対象物が備える属性の属性値を確率的に選択し、前記第2の記憶手段を参照して、前記選択した属性値に対応する非標準化情報を取得し、前記取得した非標準化情報に基づいて前記標準化された予測残価を修正して、非標準化された予測残価を求める非標準予測残価算出手段と、を備えることを特徴とする。
好適には、前記標準予測残価算出手段は、(取引データに含まれる経過期間、該取引データに対応する前記標準化された残価)の各値を含むデータ群に対して所定の関数を当てはめ、所定時点における標準化された予測残価を算出する予測モデル関数を生成する手段と、前記生成された予測モデル関数に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する手段と、を備えることを特徴とする。好適には、前記対象物は車であり、前記属性は車色、グレードのうち少なくと もいずれかを含むことを特徴とする。
本発明の予測モデル関数生成システムは、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースと、対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための標準化情報を記憶する第1の記憶手段と、前記中古価格データベースに記憶されている取引データを読み出し、前記第1の記憶手段を参照して、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に対応する標準化情報を取得し、前記取得した標準化情報に基づいて該取引データに含まれる対象物の残価を修正して、標準化された残価を算出する標準化手段と、(取引データに含まれる経過期間、該取引データに対応する前記標準化された残価)の各値を含むデータ群に対して所定の関数を当てはめ、所定時点における標準化された予測残価を算出する予測モデル関数を生成する手段と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の残価予測方法は、残価予測手段が、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースを参照し、対象物の残価と経過期間の対応関係を求め、関数記憶手段に記憶する工程と、入力手段が、ユーザから所定の将来時点を受け付ける工程と、残価予測手段が、前記関数記憶手段を参照して前記対応関係を読み出し、該対応関係に基づいて前記受け付けた所定の将来時点における予測残価を算出する予測残価算出工程と、を備え、前記対応関係を求める工程は、残価予測手段が、前記中古価格データベースに記憶されている取引データを読み出し、前記読み出した取引データに含まれる対象物の残価を、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に基づき補正して、当該対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、代表属性値を取ると擬制することを「標準化」と呼ぶ。)の残価を算出し、かかる標準化された残価と前記読み出した取引データに含まれる経過期間の対応関係を求める工程を備え、前記予測残価算出工程は、残価予測手段が、前記関数記憶手段を参照して前記対応関係を読み出し、該対応関係に基づいて前記受け付けた所定の将来時点における標準化された予測残価を算出し記憶する標準予測残価算出工程と、前記標準化された予測残価に対し、残価を予測したい対象物が備える属性に対応する修正を施して非標準化された予測残価を求め記憶する非標準化予測残価算出工程と、を備えることを特徴とする。
また本発明の残価予測方法は、残価予測手段が、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースを参照し、対象物の残価と経過期間の対応関係を求め、関数記憶手段に記憶する工程と、入力手段が、ユーザから所定の将来時点を受け付ける工程と、残価予測手段が、前記関数記憶手段を参照して前記対応関係を読み出し、該対応関係に基づいて前記受け付けた所定の将来時点における予測残価を算出する予測残価算出工程と、を備え、前記予測残価算 出工程は、残価予測手段が、前記関数記憶手段に記憶する前記対応関係に基づいて、対象物が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、代表属性値を取ると擬制することを「標準化」と呼ぶ。)の、前記受け付けた所定の将来時点における標準化された予測残価(以下、「標準化された予測残価」と呼ぶ。)を算出し記憶する標準予測残価算出工程と、記憶手段に記憶する属性の構成比に基づいて、対象物が備える属性の属性値を確率的に選択し、前記標準化された予測残価に対し前記選択した属性値に対応する修正を施して非標準化された予測残価を求め記憶する非標準予測残価算出工程と、を備えることを特徴とする。
好適には、前記標準予測残価算出工程は、残価予測手段が、前記中古価格データベースに記憶されている取引データについて、該取引データに含まれる対象物の残価を、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に基づき補正して、標準化された残価を算出する標準化工程と、前記標準化された残価と該取引データに含まれる経過期間に基づき、標準化された予測残価の期待値を算出する関数(以下、「予測関数」と呼ぶ。)を求める工程と、前記予測関数に基づき前記受け付けた所定の将来時点における標準化された予測残価の期待値を算出する工程と、を備えることを特徴とする。
また好適には、前記標準予測残価算出工程は、残価予測手段が、記憶手段に記憶する対象物の残価を、該対象物の所定属性の属性値に基づき補正して、標準化された残価を算出する標準化工程と、前記標準化された残価と該対象物の経過期間に基づき、標準化された予測残価の期待値を算出する関数(以下、「予測関数」と呼ぶ。)を求める工程と、前記標準化された残価に基づき、前記予測関数まわりの分散を求める工程と、前記予測関数に基づき前記受け付けた所定の将来時点における標準化された予測残価の期待値を算出する工程と、(平均値、分散)=(前記算出した期待値、前記求めた分散)となる分布に基づいて標本値を発生させ、標準化された予測残価として記憶する工程と、を備えることを特徴とする。
また本発明の残価予測方法は、標準化手段が、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む 取引データを記憶する中古価格データベースを参照して取引データを読み出し、対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための標準化情報を記憶する第1の記憶手段を参照して、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に対応する標準化情報を取得し、前記取得した標準化情報に基づいて該取引データに含まれる対象物の残価を修正して、標準化された残価を算出する工程と、標準予測残価算出手段が、前記標準化された残価と該取引データに含まれる経過期間に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する工程と、非標準予測残価算出手段が、標準化した対象物の属性が所定の属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「非標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための非標準化情報を記憶する第2の記憶手段を参照して、残価を予測したい対象物が備える属性に対応する非標準化情報を取得し、前記取得した非標準化情報に基づいて前記標準化された予測残価を修正して、非標準化された予測残価を求める工程と、を備えることを特徴とする。
また本発明の残価予測方法は、標準化手段が、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースを参照して取引データを読み出し、対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための標準化情報を記憶する第1の記憶手段を参照して、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に対応する標準化情報を取得し、前記取得した標準化情報に基づいて該取引データに含まれる対象物の残価を修正して、標準化された残価を算出する工程と、標準予測残価算出手段が、前記標準化された残価と該取引データに含まれる経過期間に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する工程と、非標準予測残価算出手段が、記憶手段に記憶する属性の構成比に基づいて、対象物が備える属性の属性値を確率的に選択し、標準化した対象物の属性が所定の属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「非標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための非標準化情報を記憶する第2の記憶手段を参照して 、前記選択した属性値に対応する非標準化情報を取得し、前記取得した非標準化情報に基づいて前記標準化された予測残価を修正して、非標準化された予測残価を求める工程と、を備えることを特徴とする。
好適には、前記標準予測残価算出手段が、(取引データに含まれる経過期間、該取引データに対応する前記標準化された残価)の各値を含むデータ群に対して所定の関数を当てはめ、所定時点における標準化された予測残価を算出する予測モデル関数を生成する工程と、前記生成された予測モデル関数に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する工程と、を備えることを特徴とする。好適には、前記対象物は車であり、前記属性は車色、グレードのうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
また本発明の予測モデル関数生成方法は、標準化手段が、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースを参照して取引データを読み出し、対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための標準化情報を記憶する第1の記憶手段を参照して、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に対応する標準化情報を取得し、前記取得した標準化情報に基づいて該取引データに含まれる対象物の残価を修正して、標準化された残価を算出する工程と、予測モデル関数を求める手段が、(取引データに含まれる経過期間、該取引データに対応する前記標準化された残価)の各値を含むデータ群に対して所定の関数を当てはめ、所定時点における標準化された予測残価を算出する予測モデル関数を生成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0035】
本発明のプログラムは、本発明の残価予測方法、又は保険料算出方法の各工程をコンピュータ上で実行させることを特徴とする。本発明のプログラムは、CD−ROM、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じてコンピュータにインストールまたはロードすることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下に本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態である保険料算出システムの構成をあらわすブロック図である。図1に示すように、本保険料算出システム1は、関数記憶手段10と、分散記憶手段11と、構成比記憶手段12と、非標準化情報記憶手段13と、制御手段14とを含んで構成される。
【0037】
ここで、本発明による保険設計システムは上記の各手段を備えていれば足り、物理的には保険料算出用に専用化したシステム、あるいは汎用の情報処理装置のいずれでもよい。例えば、処理装置と入力手段と記憶手段と出力手段とを備えた一般的な構成の情報処理装置において、本発明の保険料算出方法における各工程を規定したソフトウェアプログラムを起動することにより、本発明の保険料算出システムを実現することができる。なお、前記専用化したシステム又は情報処理装置は、単一のコンピュータにより構成されるものであっても、ネットワーク上に分散した複数のコンピュータにより構成されるものであってもよい。
【0038】
本発明において、どのような財物を残価保証保険の対象物とするかは設計に応じて定めることができる。以下、本実施形態では、車を残価保証保険の対象物とした場合を例として説明を行う。
【0039】
関数記憶手段10は、車種ごとに、車色やグレードについて標準化されたデータに基づく予測モデル関数を記憶している(より具体的には、関数を構成するパラメータを記憶している)。
【0040】
予測モデル関数とは、経時情報(例えば、新車として販売されてから経過した期間)を入力とし、入力された経時情報に対応する予測残価率を出力する関数である。このような関数は、例えば、残価情報を保持する中古車価格データベース20に基づいて求めることができる。
【0041】
中古車価格データベース20は、中古車市場における取引データを複数記憶しており、各取引データには、少なくとも、(車種、車色、グレード、経年期間(経過年数)、残価率(又は残価))の各値が含まれている。すなわち、中古車価格データベース20は残価データベースとして機能する。
【0042】
残価率に代えて、中古車価格と新車価格を含んでいてもよい。この場合、制御手段14は、各取引データについて、中古車価格データベース20から中古車価格と新車価格を読み出し、(残価率=中古車価格/新車価格)に従って残価率を求め、経年期間に対応づけてシステム内に記憶する処理を実行する。
【0043】
このように、中古車価格データベース20を参照して、実際に中古車市場において流通する中古車の残価率を用いて予測モデル関数を求めるように構成することで、中古品として処分した場合の交換価値が適切に反映された残価を予測することができる予測モデル関数を求めることが可能となる。
【0044】
なお、中古車価格データベース20は、本保険料算出システム1の一部として備えるように構成してもよいし、外部の情報処理装置として構成してもよい。
【0045】
ここで、予測モデル関数は、単純には、入力された経時情報に対応する取引データの残価率の平均値を出力する関数として構成することもできるが、標準化されたデータに基づいて予測モデル関数を求めることにより、より予測精度を向上させることができる。以下、標準化されたデータに基づく予測モデル関数を求める手法について説明する。
【0046】
まず中古車価格データベース20より、同一車種の中古車について、(車色、グレード、経年期間、残価率)の各値を含むデータ群100を抽出する。次に、データ群100に対し、各データの車色、グレードに応じて標準化を行い、(経年期間、修正残価率)の各値を含む、標準化されたデータ群101を得る。そして、標準化されたデータ群101に対して、例えば指数関数を当てはめて、予測モデル関数102を求める(図2参照)。指数関数等の当てはめには、各種の非線型最小2乗法のアルゴリズムを用いることができる。
【0047】
ここで、データを「標準化」するとは、財物が備える属性に関して代表的な属性値を定めておき、各データが代表属性値を取ると擬制した場合の修正残価率を求めることをいう。
【0048】
かかる標準化は、カテゴリを属性値ごとに細分化することによって同一カテゴリに同傾向を示すデータを集約させるのではなく、全データが代表属性値を取ると擬制することによって同一カテゴリに同傾向を示すデータを集約させているため、細分化によるデータ減少を起こすことなく、データ群101の全データを用いて予測モデル関数を求めることができる。
【0049】
上記予測モデル関数を求める処理を制御手段14において実行し、得られた予測モデル関数を関数記憶手段10に記憶するように構成してもよい。この場合、本保険料算出システム1は、標準化する際に用いる標準化情報を記憶する。かかる標準化情報は、各車種の各車色、各グレードについて用意され、例えば、残価率に対する乗算係数、又は加減項として構成することができる。
【0050】
乗算係数として構成する場合、修正残価率=残価率×乗算係数の式に従い、標準化を行う。例えば、車色、グレードともに標準化情報を乗算係数として構成した場合であれば、前記式は、修正残価率=残価率×車色の乗算係数×グレードの乗算係数となる。一方、加減項として構成する場合、修正残価率=残価率+加減項の式に従い、標準化を行う。乗算係数とするかは加減項とするかは、設計に応じて車色、グレードごとに定めることができる。
【0051】
前記乗算係数としては、例えば、車種ごとに、(代表車色の平均残価率/各車色の平均残価率)、(代表グレードの平均残価率/各グレードの平均残価率)を算出して用いることができる。また、前記加減項としては、車種ごとに、(代表車色の平均残価率−各車色の平均残価率)、(代表グレードの平均残価率−各グレードの平均残価率)を算出して用いることができる。各平均残価率は、中古車価格データベース20の各データに基づいて算出する。なお、代表車色や代表グレードは車種ごとに設計に応じて予め定めておけばよい。
【0052】
分散記憶手段11は、車種ごとに、予測モデル関数まわりの分散(以下、「予測モデル分散」と呼ぶ。)を記憶している。
【0053】
図2に示すように、データ群101は、予測モデル関数102上に完全には乗らず、関数のまわりに所定の分布103を形成している。予測モデル分散は、前記分布の分散であり、例えば、予測モデル関数102を求める過程で得られた残差2乗和をデータ群101のデータ数で除算することにより求めることができる。
【0054】
構成比記憶手段12は、車種ごとに、その車種において採用されている各車色の構成比、その車種において採用されている各グレードの構成比を記憶している。
構成比は、例えば、データ群100に占める各色、各グレードの台数をカウントし、データ群100のデータ数に対する割合を求めることにより、算出できる。構成比を百分率で表した場合の例を図3に示す。かかる例では、車色は、黒、白、赤の3色を取り、50%、30%、20%の構成比となっている。また、グレードは、ツーリスト、グランド、スポーツの3タイプを取り、40%、30%、30%となっている。
非標準化情報記憶手段13は、車種ごとに、車色、グレードに対応させた非標準化情報を記憶している。上述したように、予測モデル関数は、車色やグレードに関して標準化されたデータに基づいて求めた関数(標準化モデル)となっているため、各車色やグレードごとに細分化して求めた場合の予測モデル関数(細分化モデル)とは必ずしも一致しない。非標準化情報は、このような標準化モデルと細分化モデルのずれを修正するための情報であり、例えば、標準化モデルに基づき得られた予測残価率に対する加減項、又は乗算係数として構成することができる。
【0055】
非標準化情報を加減項として構成する場合、データ群101を各車色、各グレードごとに分類し、かかる分類したデータ群に対し、(各データの残価率−各データの経年情報を入力とした場合の予測モデル関数の出力値)の期待値を算出して用いることができる。また、乗算係数として構成する場合、分類したデータ群に対し、(各データの残価率/各データの経年情報を入力とした場合の予測モデル関数の出力値)の期待値を算出して用いることができる。
【0056】
図4に非標準化情報の例を示す。かかる例では、車色については乗算係数として構成されており、それぞれ、黒、白、赤に対して1.0、1.2、0.7となっている。また、非標準化情報は、グレードに関しては加減項として構成されており、それぞれ、ツーリスト、グランド、スポーツに対して−3%、+5%、−1%となっている。ただし、それぞれの非標準化情報を加減項とするか乗算係数とするかは設計に応じて定めればよい。
【0057】
なお、非標準化情報を標準化情報に基づいて定めてもよい。例えば、標準化情報が乗算係数で構成されている場合、(1/標準化情報)を非標準化情報の乗算係数として用いることができる。また、標準化情報が加減項として構成されている場合、(−標準化情報)を非標準化情報の加減項として用いることができる。
【0058】
本実施形態では、予測モデル関数、予測モデル分散、構成比、非標準化情報ごとにそれぞれ記憶手段を設ける構成として説明しているが、いずれの記憶手段も車種ごとに情報を記憶しておくデータ構造となっているため、車種をキーとして検索可能な一つのデータベースに各情報を格納して記憶する構成としてもよい。なお、記憶手段に記憶されるデータの検索・管理には、リレーショナルデーターベース等の従来のデーターベース技術を用いることができる。
【0059】
制御手段14は、入力手段(図示せず)を介してユーザから種々の入力を受け付け、標準残価率算出処理、非標準残価率算出処理、平均補償額算出処理、保険料算出処理等を実行し、処理結果を出力手段(図示せず)を介してユーザに出力する。ユーザから入力を受け付ける場合、例えば、表示装置に入力用画面を表示し、対話形式によってユーザに必要な情報を入力させるように構成することが望ましい。
【0060】
図1では、制御手段14において実行される上記の各処理をそれぞれ機能手段としてとらえて図示している。以下、各処理について説明する。なお、各処理のステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して実行することができる。
【0061】
(標準予測残価率算出処理)
標準予測残価率算出処理とは、所定将来における、全車色、全グレードに関して標準化された予測残価率を算出する処理である。以下、図5に示すフローチャートに基づいて、標準予測残価率算出処理を詳しく説明する。
【0062】
ステップS100において、ユーザから車種、及び経過年数を受け付ける。
【0063】
ステップS101において、関数記憶手段10を参照して、受け付けた車種に対応する予測モデル関数を読み出す。また、分散記憶手段11を参照して、受け付けた車種に対応する予測モデル分散を読み出す。
ステップS102において、前記受け付けた経過年数を入力として、前記読み出した予測モデル関数の出力を算出し、標準予測残価率期待値として記憶する。
【0064】
ステップS103において、(平均値、分散)=(標準予測残価率期待値、前記読み出した予測モデル分散)となる正規分布に従う標本値を発生させて、標準化された予測残価率(標準予測残価率)として記憶する。かかる標本値の発生には周知の数値計算ライブラリを用いることができるが、以下のようにして発生させてもよい。まず、0〜1までの範囲で乱数rを発生させる。次に、
となるxを標本値として求める。
このように、予測モデル関数の出力値をそのまま用いるのではなく、出力値を期待値(平均値)とする正規分布に従って標本値を発生させ、かかる標本値を標準予測残価率として用いるように構成しているため、予測モデル関数まわりのばらつきを考慮して標準予測残価率を算出することができる。
【0065】
(非標準予想残価率算出処理)
非標準予測残価率算出処理とは、プール内の属性の構成比がプール形成数に応じたばらつきを持つように、属性値を確率的に選択し、選択した属性値に応じて標準予測残価率に修正を施して、非標準化された予測残価率を算出する処理である。ここで、予測残価率を「非標準化」するとは、代表属性値をベースにした標準予測残価率(すなわち、標準化モデルに基づき得られた予測残価率)に基づいて、標準化プロセスとは逆に、個々の属性値を取ると擬制した場合の修正残価率を求めることをいう。以下、図6に示すフローチャートに基づいて、非標準予測残価率算出処理を詳しく説明する。
【0066】
ステップS200において、ユーザからプールを形成する台数(プール形成数)Hを受け付ける。なお、標準予測残価率算出処理においてプール形成数を受けつけて記憶しておくように構成してもよい。
【0067】
ステップS201において、ループ変数iに1をセットする。
【0068】
ステップS202において、構成比記憶手段12を参照して、標準予測残価率算出処理で受け付けた車種に対応する車色及びグレードの構成比を読み出す。
【0069】
ステップS203において、各属性値を選択する確率が構成比に応じた確率となるように設定し、かかる確率に従って車色及びグレードを選択する。図3の例では、構成比が百分率で表されているため、かかる百分率がそのまま属性値を選択する確率として用いることができる。以下、車色として「白」、グレードとして「グランド」が選択されたとして説明を続ける。
【0070】
ステップS204において、非標準化情報記憶手段13を参照して、前記受け付けた車種について、車色の非標準化情報、及びグレードの非標準化情報を読み出す。図4の例では、車色については「白」の場合の1.2が、グレードについては「グランド」の+5%が読み出されることになる。
【0071】
ステップS205において、標準予測残価率算出処理で算出した標準予測残価率を読み出し、かかる標準予測残価率に対し前記読み出した各非標準化情報に基づいて修正を施して、非標準化された予測残価率を算出して記憶する。例えば、標準予測残価率を50%として、車色が「白」、グレードが「グランド」の場合の修正を施すと、非標準化された予測残価率は以下のようになる。なお、車色とグレードのいずれについて先に修正を施すかは設計に応じて定めればよい。
車色による修正を先に行う場合 :50%×1.2+5%=65%
グレードによる修正を先に行う場合:(50%+5%)×1.2=66%
ステップS206において、iに1を加算する。
【0072】
ステップS207において、i≦Hである場合はステップS203に戻り、そうでない場合は処理を終了する。
【0073】
このように、非標準予測残価率算出処理において確率的に車色及びグレードを選択するようにしているため、プール内の車色やグレードの構成比は固定されず、プール形成数に応じたばらつきを持つことになる。すなわち、プール形成数が多い場合は構成比のばらつきは小さくなり、プール形成数が少ない場合は構成比のばらつきは大きくなる。
【0074】
なお、本保険料算出システム1における、関数記憶手段10と、分散記憶手段11と、構成比記憶手段12と、非標準化情報記憶手段13と、標準予測残価率算出処理、非標準予測残価率算出処理を実行する制御手段14を備える構成を、本発明の残価予測方法を実施する残価予測システムとすることもできる(図7参照)。更に、前記残価予測システムにおいて、上述した予測モデル関数を求める処理を実施するように構成してもよい。このとき、中古車価格データベース20は、本残価予測システムの一部として備えるように構成してもよいし、外部の情報処理装置として構成してもよい。
【0075】
(平均補償額算出処理)
平均補償額算出処理とは、複数の非標準化された予測残価率に基づいて、プール単位での平均補償額を算出する処理である。ここで、補償額とは、残価保証保険が発動した場合に補償される額である。以下、図8に示すフローチャートに基づいて、平均補償額算出処理を詳しく説明する。
ステップS300において、ユーザから基準残価(トリガー残価)を受け付ける。基準残価は、残価保証保険が発動する水準を示す値であり、残価が基準残価を下回った場合に保険が発動することになる。ただし、後述するように本実施形態ではプール単位で保険の発動を決定するように構成している。
なお、標準残価率算出処理、非標準残価率算出処理において基準残価を受けつけて記憶しておくように構成してもよい。
【0076】
ステップS301において、非標準残価率算出処理において算出した、プール形成数分の非標準化された予測残価率を読み出す。
【0077】
ステップS302において、各前記読み出した各非標準化された予測残価率について、前記受け付けた基準残価から減算し、差分値を算出する。そして、プール形成数分の差分値に基づいて平均値を算出して、平均補償額として記憶する。なお、非標準化された予測残価率の平均値を算出し、これを基準残価から減算して平均補償額を算出してもよい。
【0078】
ステップS303において、ステップS302で求めた平均補償額が負値となっている場合、保険は発動されないため、平均補償額を0に補正する。
【0079】
本実施形態では、プール単位で保険の発動を決定するように構成すべく、個々の予測残価率が基準残価よりプラスとなる場合とマイナスとなる場合をプール内で相殺して、平均補償額を求めている。なお、図6におけるHを1とすれば、プール形成数を1、すなわちプールを形成せず1台単位での保険引受けを行う場合の補償額を、平均補償額として算出することができる。
【0080】
(保険料算出処理)
保険料算出処理とは、平均補償額に基づいて所定の保険料算出ロジックにより保険料を算出する処理である。保険料算出ロジックとしては、標準予測残価率算出処理、非標準予測残価率算出処理、平均補償額算出処理を、複数セット(例えば1万セット〜10万セット)繰り返すことにより、複数の平均補償額を求め、かかる複数の平均補償額の平均値に対し、例えば、推定誤差に対する安全率調整を行い、また経費率・利潤率等を付加することにより保険料を算出する。一例を挙げれば、平均補償額xに対する安全率(割増率)をy、保険料全体に占める経費率及び利潤率の合計をzとすれば、保険料=x×(1+y)/(1−z)という計算式で保険料を算出することができる。なお、算出された保険料は、出力手段を介してテキストやグラフ、音声などによりユーザに提示される。
【0081】
(変形例)
財物によっては、取引を行う時期も、残価に影響を与える要因となり得る。例えば車を対象とした場合、中古車業者の決算時期、消費者のボーナス時期、年度の切り替わりなど様々な季節要因の影響を受け、同一車種(同一車色、同一グレード)かつ同一経過年数の車であっても、取引する月によって残価が異なってくる場合がある。更に、例えば1月を取引月とする車の残価が標準的な残価より高額であった場合、翌月である2月を取引月とする車の残価も高額になりやすいというように、過去の残価に対し正相関を示す傾向がある。そこで、本変形例では、取引を行う時期を月単位で場合分けし、取引を行う月の影響を考慮して月ごとに予測残価率を求めるように構成する。
【0082】
図9に示すように、本変形例は、第1実施形態の構成に加え、更に、自己相関情報記憶手段15を備えている。以下、第1実施形態と異なる構成・動作について説明する。
【0083】
関数記憶手段10は、第1実施形態と同様に、車種ごとに、車色やグレードについて標準化されたデータに基づく予測モデル関数を記憶するが、更に、月ごとの修正パラメータを記憶している。
【0084】
月ごとの修正パラメータとは、予測モデル関数の出力に対して、月ごとの残価の変動を反映させるためのパラメータであり、例えば、予測モデル関数の出力に対する乗算係数として構成することができる。
【0085】
予測モデル関数及び月ごとの修正パラメータは、例えば中古車価格データベース20に基づいて求めることができる。ただし、各取引データには、少なくとも、(車種、車色、グレード、経年期間、残価率、売買取引月)の各値が含まれているとする。
【0086】
予測モデル関数及び月ごとの修正パラメータを求めるためには、まず中古車価格データベース20より、同一車種の中古車について、(車色、グレード、経年期間、残価率、売買取引月)の各値を含むデータ群を抽出する。次に、かかるデータ群に対し、各データの車色、グレードに応じて標準化を行い、(経年期間、修正残価率、X1、・・・、X12)の各値を含む、標準化されたデータ群を得る。ここで、X1、・・・、X12は、1月から12月までに対応するダミー変数であり、売買取引月に該当するダミー変数のみ1を取り、それ以外の場合は0を取るように設定される。
【0087】
そして、標準化されたデータ群に対して、例えば指数関数α×exp(−β×経年期間)/(S1×X1+S2×X2+・・・+S12×X12)を当てはめる。(α、β)が予測モデル関数を構成するパラメータであり、S1、・・・、S12が各月の修正パラメータである。指数関数等の当てはめには、各種の非線型最小2乗法のアルゴリズムを用いることができる。なお、最小2乗法を用い当てはめる際には、S1+S2+・・・+S12=12という条件などを制約条件として用いることが必要となる。
【0088】
自己相関情報記憶手段15は、車種ごとに、前月の標準予測残価率と該前月の標準予測残価率期待値の差と、当月の標準予測残価率と当月の標準予測残価率期待値との差の相関の程度を示す自己相関パラメータρ(0≦ρ≦1)を記憶している。なお、ρを、過去の複数月における前記差と、当月における前記差の相関の程度を示すように構成してもよい。
【0089】
制御手段14は、各処理は原則として第1実施形態と同様であるが、標準予測残価率算出処理については図10に示すフローチャートのように、非標準予測残価率算出処理については図11に示すフローチャートのように変形して実行する。また、平均補償額算出処理では、1月から12月までの非標準化された予測残価率を読み出して平均補償額を算出する。
(標準予測残価率算出処理)
ステップS100からS102までは第1実施形態と同様である。
ステップS103において、自己相関情報記憶手段15を参照して、受け付けた車種に対応する自己相関パラメータρを読み出す。
ステップS104において、月パラメータjに1をセットする。
ステップS105において、(平均値、分散)=(0、1)となる正規分布に従う乱数を発生させる。
ステップS106において、j=1の場合はステップS107に進み、そうでない場合はステップS108に進む。
ステップS107において、前記発生させた乱数を標準予測残価率算出用乱数として記憶し、ステップS110に進む。
ステップS108において、前月((j−1)で示される月)の標準予測残価率算出用乱数を読み出す。
ステップS109において、前記発生させた乱数及び前記読み出した前月の標準予測残価率算出用乱数に対し、前記読み出した自己相関パラメータρに基づいて当月(jで示される月)の標準予測残価率算出用乱数を算出する。ここで当月の標準予測残価率算出用乱数の算出には、例えば以下の式を用いることができる。当月の標準予測残価率算出用乱数
=(前月の標準予測残価率算出用乱数)×ρ+(発生させた乱数)×(1−ρ2)1/2
ステップS110において、関数記憶手段10を参照して、月ごとの修正パラメータSjを読み出す。そして、標準予測残価率期待値及び前記読み出した予測モデル分散及び当月の標準予測残価率算出用乱数に基づいて当月(jで示される月)の標準予測残価率を算出し、記憶する。ここで当月の標準予測残価率の算出には、例えば以下の式を用いることができる。
当月の標準予測残価率=
(標準予測残価率期待値)/Sj+(当月の標準予測残価率算出用乱数)×(予測モデル分散)1/2
ステップS109及びステップS110の式のもとでは、ρが1に近づく程、当月の標準予測残価率算出用乱数は前月の標準予測残価率算出用乱数に近づくため、ρの値を調整することで、前月の残価率の傾向(例えば、標準予測残価率期待値より高額、又は低額になる傾向)に相関関係を持たせて、当月の標準予測残価率を算出することができる。
ステップS111において、jに1を加算する。
ステップS112において、j≦12の場合、ステップS105に戻る。そうでない場合は処理を終了する。
【0090】
(非標準予測残価率算出処理)
ステップS400において、ユーザから各月のプール形成数Hj(jは月を示す)を受け付ける。なお、例えば1月は100台、2月は150台というように、前記受け付けるプール形成数が月ごとに異なっていてもよい。
【0091】
ここで、各月のプール形成数の比が得られている場合は、ユーザから年間プール形成数を受け付けて、これを前記プール形成数の比に基づいて各月に振り分けることにより、各月のプール形成数Hjを定めるように構成してもよい。このとき、車色やグレードと同様に、月を選択する確率が前記プール形成数の比に応じた確率となるように設定し、かかる確率に従って月を選択して振り分けるように構成してもよい。
【0092】
ステップS401において、月パラメータjに1をセットする。
【0093】
ステップS402において、ループ変数iに1をセットする。
【0094】
ステップS403において、構成比記憶手段12を参照して、標準予測残価率算出処理で受け付けた車種に対応する車色及びグレードの構成比を読み出す。
【0095】
ステップS404において、各属性値を選択する確率が構成比に応じた確率となるように設定し、かかる確率に従って車色及びグレードを選択する。
【0096】
ステップS405において、非標準化情報記憶手段13を参照して、前記受け付けた車種について、車色の非標準化情報、及びグレードの非標準化情報を読み出す。
【0097】
ステップS406において、標準予測残価率算出処理で算出した当月(jで示される月)に対応する標準予測残価率を読み出し、かかる標準予測残価率に対し前記読み出した各非標準化情報に基づいて修正を施して、非標準化された予測残価率を算出して記憶する。
【0098】
ステップS407において、iに1を加算する。
【0099】
ステップS408において、i≦Hjである場合はステップS404に戻り、そうでない場合はステップS409に進む。
【0100】
ステップS409において、jに1を加算する。
【0101】
ステップS410において、j≦12である場合はステップS402に戻る。そうでない場合は処理を終了する。
【0102】
本変形例の構成によれば、取引月の違いに基づく影響を修正して、また、前月との相関を考慮して、各月の予測残価率を算出することができる。かかる各月の予測残価率に基づいて平均補償額を算出することにより、季節による残価の変動を反映させて保険料を算出することができる。
【0103】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、保険料算出プログラム、又は残価予測プログラムを記録した記録媒体を備える。この記録媒体はCD−ROM、磁気ディスク、半導体メモリその他の記録媒体であってよく、ネットワークを介して流通する場合も含む。
【0104】
保険料算出プログラムは記録媒体からデータ処理装置に読み込まれ、データ処理装置の動作を制御する。データ処理装置は保険料算出プログラムの制御により、標準予測残価率算出処理、非標準予測残価率算出処理、平均補償額算出処理、保険料算出処理等を実行する。すなわち、図1又は図9における保険料算出システムによる処理と同一の処理を実行する。
【0105】
残価予測プログラムは記録媒体からデータ処理装置に読み込まれ、データ処理装置の動作を制御する。データ処理装置は残価予測プログラムの制御により、標準予測残価率算出処理、非標準予測残価率算出処理等を実行する。すなわち、図7における残価予測システムによる処理と同一の処理を実行する。更に、予測モデル関数を求める処理を実行するように構成してもよい。
【0106】
(その他)
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。例えば、残価=当初価格×残価率という関係に基づいて、残価率を残価に変換することができるため、上記実施形態において、「予測残価率」を「予測残価」に置き換えても、本発明を同様に実行することができる。
【0107】
また、上記実施形態では、標本値を発生させる分布として正規分布を用いているが、過去のデータから推定される分布であれば、正規分布以外の分布を用いて標本値を発生させるように構成してもよい。例えば、対数正規分布等の分布を用いたり、過去の誤差分布をブートストラップ法で当てはめるといったことが考えられる。
【0108】
また、本発明の残価予測方法及び残価予測システムは、予測残価を用いたリース料率の算定方法・算定システムや、自動車等の担保融資における担保価値の算定方法・算定システムや、車両保険等の保険設計方法・設計システムなど、予測残価を用いる種々の情報処理方法・情報処理システムに適用することができる。
【0109】
【発明の効果】
本発明は、過去に発売された同種財物の現時点における中古市場の流通価格を用いて、当該財物の将来における中古価格(残価)を予測することによって、中古品として処分した場合の将来の交換価値を把握することができ、従来の減価償却法よりも精度の高い予測が可能となる。
【0110】
また、本発明は、標準化することによって、すなわち、各データが代表属性値を取ると擬制することによって、同一カテゴリに同傾向を示すデータを集約させているため、カテゴリを細分化した場合に生じるデータ減少を起こすことなく、同傾向を示すデータに基づいて、精度よく残価を予測することができる。
【0111】
また、本発明は、一定数の財物をまとめてプールを形成し、プール単位で残価保証保険を設計する場合に、属性の構成比に基づいて属性値を確率的に選択する構成としているため、プール内の属性の構成比、更にはプール形成数に依存する属性の構成比のばらつきをも考慮して、残価保証保険の保険料を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態である保険料算出システムの構成を示すブロック図である。
【図2】予測モデル関数を説明するための図である。
【図3】構成比の例を説明するための図である。
【図4】非標準化情報の例を説明するための図である。
【図5】標準予測残価率算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】非標準予測残価率算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の残価予測システムの構成を示すブロック図である。
【図8】平均補償額算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第1の実施形態の変形例の構成を示すブロック図である。
【図10】変形例における標準予測残価率算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】変形例における非標準予測残価率算出処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 保険料算出システム
10 関数記憶手段
11 分散記憶手段
12 構成比記憶手段
13 非標準化情報記憶手段
14 制御手段
15 自己相関情報記憶手段
20 中古車価格データベース
Claims (7)
- 対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースと、
対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための標準化情報を記憶する第1の記憶手段と、
標準化した対象物の属性が所定の属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「非標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための非標準化情報を記憶する第2の記憶手段と、
前記中古価格データベースに記憶されている取引データを読み出し、前記第1の記憶手段を参照して、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に対応する標準化情報を取得し、前記取得した標準化情報に基づいて該取引データに含まれる対象物の残価を修正して、標準化された残価を算出する標準化手段と、
前記標準化された残価と該取引データに含まれる経過期間に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する標準予測残価算出手段と、
記憶手段に記憶する属性の構成比に基づいて、対象物が備える属性の属性値を確率的に選択し、前記第2の記憶手段を参照して、前記選択した属性値に対応する非標準化情報を取得し、前記取得した非標準化情報に基づいて前記標準化された予測残価を修正して、非標準化された予測残価を求める非標準予測残価算出手段と、を備えることを特徴とする残価予測システム。 - 前記標準予測残価算出手段は、
(取引データに含まれる経過期間、該取引データに対応する前記標準化された残価)の各値を含むデータ群に対して所定の関数を当てはめ、所定時点における標準化された予測残価を算出する予測モデル関数を生成する手段と、
前記生成された予測モデル関数に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載の残価予測システム。 - 前記対象物は車であり、前記属性は車色、グレードのうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の残価予測システム。
- 標準化手段が、対象物の中古流通価格又は中古流通価格の新品価格に対する比率(以下、中古流通価格とその新品価格に対する比率を総称して「残価」と呼ぶ)、対象物の属性、及び対象物の経過期間を含む取引データを記憶する中古価格データベースを参照して取引データを読み出し、対象物の属性が代表属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための標準化情報を記憶する第1の記憶手段を参照して、該取引データに含まれる対象物の所定属性の属性値に対応する標準化情報を取得し、前記取得した標準化情報に基づいて該取引データに含まれる対象物の残価を修正して、標準化された残価を算出する工程と、
標準予測残価算出手段が、前記標準化された残価と該取引データに含まれる経過期間に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する工程と、
非標準予測残価算出手段が、記憶手段に記憶する属性の構成比に基づいて、対象物が備える属性の属性値を確率的に選択し、標準化した対象物の属性が所定の属性値を取ると擬制した場合(以下、このように擬制することを「非標準化」と呼ぶ。)における残価を算出するための非標準化情報を記憶する第2の記憶手段を参照して、前記選択した属性値に対応する非標準化情報を取得し、前記取得した非標準化情報に基づいて前記標準化された予測残価を修正して、非標準化された予測残価を求める工程と、を備えることを特徴とする残価予測方法。 - 前記標準予測残価算出手段が、
(取引データに含まれる経過期間、該取引データに対応する前記標準化された残価)の各値を含むデータ群に対して所定の関数を当てはめ、所定時点における標準化された予測残価を算出する予測モデル関数を生成する工程と、
前記生成された予測モデル関数に基づき所定将来における標準化された予測残価を算出する工程と、を備えることを特徴とする請求項4記載の残価予測方法。 - 前記対象物は車であり、前記属性は車色、グレードのうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項4又は5記載の残価予測方法。
- 請求項4乃至6のいずれか1項に記載の残価予測方法をコンピュータで実行させるための残価予測プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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