JP3580782B2 - 清澄なコーヒー抽出方法及び清澄なコーヒー抽出機 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、清澄なコーヒー抽出方法及び清澄なコーヒー抽出機に関し、詳しくは、比較的多量のコーヒーの抽出を可能にする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
比較的多量のコーヒーの抽出を行う技術として、特開昭53‐15983号公報に示されるものが存在し、この従来の技術は複数の抽出塔に対して抽出媒体を流動させる順序を切換えることで、高濃度の抽出液を連続的に採取できるよう構成したものである。又、この従来の技術では抽出塔を構成する外筒に対して、下端にストレーナを備えた内筒を挿入する構造を有しており、このストレーナが、円筒状の多孔板と、これに嵌合する円筒状のろ過体と、底蓋等とを備えて構成され、このストレーナの内部に固体原料を充填し、加熱水を注入することにより多孔板や、ろ過体を透過した抽出液を外筒下部の流出口から流出させるよう構成してある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
コーヒーを考えるに、コーヒーは飲料であると同時に嗜好品であるので、カップ内に注がれた状態での見た目も重要である。特に、混濁したものは味が良好であっても見た目から敬遠されることも多く清澄なコーヒーが望まれている。
【0004】
しかしながら、従来例のように抽出塔を用いて多量のコーヒーの製造することを考えると、連続的に生産することに重点が置かれ、清澄な状態での抽出を行うことに考慮が払われていないものであった。この傾向は公報番号を上げた技術に限らず従来から一般的に言えることである。このことから、従来の技術で抽出したコーヒーを清澄なものにするため、抽出されたコーヒーを再度濾過することも行われていた。そして、このように再度濾過を行うものでは濾過のためのプロセスを必要とするばかりで無く、コスト上昇も招くものとなっている。
【0005】
又、コーヒーが清澄でない状態(例えば混濁した状態)に陥る理由の大きい要因として、コーヒー材料に含まれる微粒子の多くが抽出液中に分散することが知られている。そこで、抽出液中にコーヒー材料の微粒子が混入しないように、濾材のメッシュを小さくすることが考えられるが、濾材のメッシュをあまりに小さくし過ぎると目詰まりが発生しやすいばかりで無く、濾過に時間を要するものとなり現実的では無い。
【0006】
更に、出願人による実験結果から、濾材のメッシュを単純に小さくしただけでは、濁りを良好に解消することができないことも分かった。その理由は、図4に示すように、例えば、下部にだけ濾材15を配置し、その上面に粉砕されたコーヒー材料Mを投入した状態(a)で熱湯を供給した場合には、(b)に示すように、コーヒー材料Mの大きい粒子が液面近くまで浮き上がり、小さい粒子ほど、下層に位置する現象(分級現象)が起きる。このような現象が起きた状態で抽出液を濾材の下方に流動させて抽出液の取出しを行った場合には濾材15近くに存在する小さい粒子の多くが濾材15を通過するものとなり抽出液に混入する。このような理由から濾材のメッシュだけでは濁りを解消できないのである。
【0007】
本発明の目的は、濾材に対してコーヒー材料の微粒子が通過し難い条件を作り出すことによって濁りの無い清澄なコーヒー抽出方法、及び、濁りの無い清澄なコーヒー抽出機を合理的に構成する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る清澄なコーヒー抽出方法の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
カラムに備えた下部濾材の上面に粉砕されたコーヒー材料を位置させ、このコーヒー材料が自然に堆積した状態における上面と略一致する位置、あるいは、この上面から上方に設定距離だけ離間する位置に設定して上部濾材を配置し、この上部濾材を超える位置までカラム内に熱水、あるいは、冷水を注入して抽出を行い、このように抽出した抽出液を下部濾材より下方位置から取出し、ここで、上部濾材は保持部材を有しており、当該保持部材がカラムの本体に形成された段状部の上面に対して自重で接することにより、上部濾材が段状部の上面位置に保持される点にある。
【0009】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、熱水、あるいは、冷水が注入された後には、粒子の流動に伴う分級作用が上部濾材に抑制されることによりコーヒー材料に含まれる大きい粒子が水面近くまで浮き上がることが無く、これより小さい粒子が大きく移動することもない。つまり、この抽出時にはコーヒー材料に含まれる小さい微粒子は、それより大きい粒子に接触することにより移動し難い状況にあるので、この微粒子だけが下部濾材の近くに集中する現象を抑制するものとなる。そして、この状況で下部濾材の下方に向けて抽出液を移動させる形態で取出しても抽出液に含まれる微粒子の量を極めて少なくできるのである。その結果、メッシュの小さい濾材を用いずとも、又、抽出されたコーヒーの2次的な濾過処理を行わずとも清澄なコーヒーの抽出を行える抽出方法が得られた。
【0010】
特に、この抽出の処理の流れを説明すると図3に示すように、カラム5内の下部濾材15の上面に粉砕されたコーヒー材料Mを先ず投入する(a)。尚、同図に示すコーヒー材料Mは粒径の大きいものと粒径の小さい微粒子とが混じり合ったものとなっている。そして、このコーヒー材料Mの上面に接する程度の位置に上部濾材16を配置し(b)、この後に、注水を行って上部濾材16の上方に達するまでカラム内を水で満たして抽出を行った場合には、前述のように微粒子が下層に集中することが無く、この後に、下部濾材15の下方から抽出液を取り出しても清澄なものとなる(c)。つまり、抽出が行われる際には、上部濾材16と下部濾材とによってコーヒー材料Mの流動が抑制されているので、コーヒー材料Mに含まれる大きい粒径のものと、粒径の小さい微粒子とが混合状態に維持され、抽出液の中に含まれる微粒子の量を少なくできることが分かる。これとは逆に、上部濾材16を用いずに抽出を行った場合には図4(a)、(b)に示すように、コーヒー材料Mに含まれる大きい粒子が液面近くまで浮き上がり、粒子が小さいものほど下層になる分級現象が発生し、下層の微粒子が濾材16を通過しやすいことも分かる。
【0011】
本発明の請求項2に係る清澄なコーヒー抽出方法の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項1記載の清澄なコーヒー抽出方法において、前記上部濾材の位置を、コーヒー材料の体積の0.9倍に対応する位置と、コーヒー材料の体積の1.5倍に対応する位置との間の領域内に設定してある点にある。
【0012】
〔作用・効果〕
上記特徴における0.9と1.5との数値の根拠は図11に示す実験結果に基づくものである。同図に示すように、下部濾材15に対する上部濾材16の位置を変更して同図に示す項目についてチェックしたところ、抽出水に対する非接触箇所、クラック形成の有無、水中における分級現象の有無、抽出時間夫々に対する総合的評価からすると、上部濾材16の位置を、コーヒー材料Mの体積の0.9倍、つまり、コーヒー材料Mを僅かに圧縮することになる位置と、このコーヒー材料Mの容積の1.5倍の体積、つまり、コーヒー材料Mの上方に僅かな空間を形成することになる位置との間の領域内において有効であることが分かった。その結果、抽出したコーヒーが清澄で抽出にも無理がないものとなった。
【0013】
尚、図中の「非接触箇所」とは抽出時にコーヒー材料中に水と接触しなかった箇所のことであり、「クラック形成の有無」とは抽出時にコーヒー材料に大きい間隙が形成される等の理由によって通過する水の流速が急激に変化する現象の有無であり、「水中における分級現象の有無」とは前述したようにコーヒー材料に含まれる大きい粒子が浮き上がり、小さい粒子が下層に滞留する現象の有無である。
【0014】
本発明の請求項3に係る清澄なコーヒー抽出方法の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項1又は3項に記載の清澄なコーヒー抽出方法において、前記抽出時においては、熱水、あるいは、冷水の注入も、抽出した抽出液の取出しも行わないホールド状態を設定時間以上継続させる点にある。
【0015】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、ホールド状態において抽出時にコーヒー材料を運動させないのでコーヒー材料に含まれる微粒子を下部濾材の側に移動させ難くしながら、コーヒー材料中のコーヒー成分の抽出を可能にする。その結果、抽出されたコーヒー成分を清澄な状態を維持できた。
【0016】
本発明の請求項4に係る清澄なコーヒー抽出機の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
内部の下部位置に下部濾材を配置し、内部において下部濾材より上方位置に開閉自在、あるいは、着脱自在に上部濾材を配置するカラムを備えると共に、下部濾材の上面に粉砕されたコーヒー材料を投入した後に、コーヒー材料が自然に堆積した状態における上面に略一致する位置、あるいは、コーヒー材料の上面から上方に設定距離だけ離間する位置への前記上部濾材の配置を許す配置手段を備え、この配置の後にカラム内に熱水、あるいは、冷水を供給する水供給手段と、この水で抽出された抽出液を下部濾材の下方位置から取出す取出し手段とを備えており、ここで、上部濾材は保持部材を有しており、当該保持部材がカラムの本体に形成された段状部の上面に対して自重で接することにより、上部濾材が段状部の上面位置に保持される点にある。
【0017】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、カラムに対して配置手段によって上部濾材を配置でき、水供給手段によってカラム内に熱水、あるいは、冷水の供給を行え、下部濾材の下方からの取出し手段がコーヒーを取出し得るものとなる。そして、請求項1の〔作用・効果〕に記載したように、コーヒー材料に含まれる小さい微粒子が、それより大きい粒子に接触することにより移動し難い状況を作り出し、この微粒子だけが下部濾材の近くに集中する現象を抑制し、この状況で下部濾材の下方に向けて抽出液を移動させる形態で取出してもコーヒーに含まれる微粒子の量を極めて少なくできるものになる。その結果、抽出時の水供給、コーヒーの取出しを容易に行えるばかりでなく、メッシュの小さい濾材を用いずとも、清澄なコーヒーの抽出を行える抽出機が合理的に構成されたのである。
【0018】
本発明の請求項5に係る清澄なコーヒー抽出機の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項4記載の清澄なコーヒー抽出機において、前記上部濾材の位置を、下部濾材の上面にコーヒー材料を投入した後に、コーヒー材料の体積の0.9倍に対応する位置と、コーヒー材料の体積の1.5倍に対応する位置との間の領域内に設定してある点にある。
【0019】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、請求項2の〔作用・効果〕に記載したように、実験結果から有効な位置に上部濾材を配置することが可能となる。その結果、抽出したコーヒーが清澄で抽出にも無理がない。
【0020】
本発明の請求項6に係る清澄なコーヒー抽出機の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項4又は5に記載の清澄なコーヒー抽出機において、上部濾材を超える位置までカラム内に熱水、あるいは、冷水の注入を行って抽出を開始した後には、設定時間以上経過した後に抽出口から抽出液の取出しを行わせる制御装置を備えている点にある。
【0021】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、請求項3の〔作用・効果〕に記載したものと同様に、抽出時にコーヒー材料を運動させないのでコーヒー材料に含まれる微粒子を下部濾材の側に移動させ難くしながら、コーヒー材料中のコーヒー成分の抽出を可能にする制御を制御装置によって行える。その結果、コーヒー成分を充分に抽出したものでありながら清澄な状態を維持する自動制御が可能となった。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1、及び、図2に示すように、縦向き姿勢となる筒状のカラムハウジング1の上端に上部開口1Aを形成すると共に、この開口1Aに対してクランプ2Aの操作で着脱自在となる蓋体2を備え、このカラムハウジング1の上部に熱水(冷水でも良い)の供給部3を形成し、下端に抽出液の取出し部4を形成し、又、このカラムハウジング1に嵌め込まれるカラム本体5の下端近くに抽出用のコーヒー材料Mを貯留する抽出部Eを配置してある。前記熱水の供給部3に対して熱水タンク8から熱水を供給する供給管路9を形成し、この供給管路9に電磁式の供給弁FV(水供給手段の一例)を備え、前記取出し部4から抽出液(コーヒー)を貯留タンク10送る抽出管路11を形成し、この抽出管路11に電磁式の抽出弁EV(取出し手段の一例)を備え、更に、熱水タンク8の温度制御と、供給弁FV、及び、抽出弁EVを制御する制御装置Cを備えてコーヒー抽出装置が構成されている。
【0023】
前記制御装置Cはマイクロプロセッサーを備え、コントロールパネルCPからの入力された信号に基づいて任意の処理を行うよう構成され、熱水タンク8の熱水の温度を計測する温度センサSからの信号が入力し、熱水タンク8のヒータ8Hを制御する電力制御部12に制御信号を出力し、供給弁FV、及び、抽出弁EVに制御信号を出力する信号系を備えている。
【0024】
前記抽出部Eは、カラム本体5にの下端位置に備えた下部濾材15と、この下部濾材15より上方位置でカラム本体5の内部に着脱自在に備えられる上部濾材16とを備えて構成されている。又、上部濾材16の位置を、下部濾材15の上面に粉砕されたコーヒー材料Mを投入した際において、このコーヒー材料Mが自然に堆積した状態における上面と略一致する位置にセットしてある。下部濾材15は300メッシュに設定され、リング状の保持部材15Aに外周を支持された状態でカラム本体5の下端位置に固設されている。上部濾材16は300メッシュに設定され、リング状の保持部材16Aに外周を支持され、中央位置にロッド材で成る係合部材16Bを備えている。
【0025】
又、上部濾材16の位置は、作用の項で説明したように、下部濾材15の上面に粉砕されたコーヒー材料Mを投入した際において、このコーヒー材料Mの体積の0.9倍に対応する位置と、コーヒー材料の体積の1.5倍に対応する位置との間の領域(0.9〜1.5倍)内の何れかの位置が有効であるが、好ましくは、コーヒー材料Mが自然に堆積した状態における上面と略一致する位置、つまり、コーヒー材料Mの体積の1.0倍の位置と、このコーヒー材料の体積の1.46倍に対応する示す位置との間の領域(1.0〜1.46倍)内にあることが望ましい。尚、下部濾材15は80メッシュ程度のものを使用しても実用上差し支えない。
【0026】
そして、この上部濾材16は、その保持部材16Aをカラム本体5に形成された段状部5Aとの上面に対して自重で接することにより、その位置に保持(固定)される。つまり、この上部濾材16は下部濾材15の上面に対してコーヒー材料Mを投入した後には、カラム本体5の内部に落とし込むだけで図1に示す位置に保持されるものとなっている。そして、この上部濾材16を取り外す場合には係合部材16Bに棒状部材等の先端に備えた鉤状物を係合させ、引き上げる操作を行うことによって取り外せるものとなっている。
【0027】
又、制御装置Cは図5のフローチャート、及び、図6に模式的に示す「抽出処理」のうち抽出工程を自動的に行うことで清澄なコーヒーの抽出を行えるようプログラムがセットされている。
【0028】
つまり、その工程(「抽出処理」)では、カラム本体5の抽出部Eに粉砕されたコーヒー材料Mを投入する作業を行い、このコーヒー材料Mの上面に接する位置に上部濾材16を配置し、このカラム本体5をカラムハウジング1内にセットし、上部開口1Aを蓋体2で閉塞する(#01〜#04ステップ)。この工程は作業者が行うものであり、予備工程と称する。この予備工程は図6において(a)〜(c)に対応する。
【0029】
前述のように予備工程が終了すると、前記コントロールパネルCPから処理開始の情報を入力することにより、供給弁FVを開放操作して必要とする量の熱水をカラムハウジング1内に供給(加水)して、上部濾材16上方でカラムハウジング1の上部に近いレベルLに達するまで熱水を満たす。このように熱水が供給されると同時にタイマ(ソフトウエアで構成されている)を作動させて時間経過の計測を開始する。この時間はコーヒー材料Mや熱水の温度に基づいて設定されるものであり、1回抽出の場合にはタイマの設定時間が6分〜7分程度に設定される。そして、このように設定された時間が経過するまで熱水の供給も抽出液の取出しも行わず静粛なホールド状態を維持してコーヒーの抽出を行い、この時間が経過した時点で、制御装置Cが抽出弁EVを開放して抽出液(コーヒー)を貯留タンク10に取出すものとなっている(#05〜#08ステップ)。この抽出工程は図6において(d)〜(f)に対応する。
【0030】
このように上部濾材16を備えた状態で抽出を行う点が本発明の特徴であるが、本発明の有効性を示す資料として、この上部濾材16を備えずに同様の処理によって抽出を行った抽出液との濁りの比較結果を図7に示した。つまり、この濁りの比較は、上部濾材16を備えた状態で抽出した抽出液と、上部濾材16を用いずに抽出した抽出液とを純水で希釈することによって液濃度(BRIX)の値を等しくした状態で、分光光度計を用いて720nm(ナノメータ)の波長における吸光度によって濁りを判別したものであり、同図から判るように、何れの波長においても上部濾材16を備えた状態で抽出した抽出液の濁りが少ないことが読み取れる。なお、420nm(ナノメータ)の波長における吸光度によって褐色度を判別した結果、コーヒー本来の褐色度には影響を与えていないことが読みとれる。
【0031】
前述したように抽出を行う際には、加水(熱水を注入)した状態で設定された時間だけ熱水を流動させないようにホールドする処理が採用されているが、熱水の加水を複数回行い、この注入の後にもホールドを行うことの有効性を示す資料を以下に示す。この資料は図8のように、上部濾材16を備えた状態と、上部濾材16を備えない状態とにおいて、3度の加水で抽出を行ったもの(抽出工程1)と、1度の加水で抽出を行ったもの(抽出工程2)との濁りを比較できるものにしている。濁りの判別を行うための手法は前述した図7のものと変わるところが無いが、同図において「収率」とはコーヒー材料Mの重量を100とした場合において抽出液に含まれる成分の重量を示している。同図から判るように、上部濾材16を備えた状態で抽出した抽出液の方が、上部濾材16を備えないものと比較して濁りが少なく、収率が高いことが読み取れ、又、抽出工程1と、抽出工程2との比較では、720nm(ナノメータ)において抽出工程1における抽出液の濁りが少なく、かつ、高い収率が得られることが読み取れる。
【0032】
又、本発明の構成の抽出装置では、上部濾材16を備えることにより、下部濾材15のメッシュを小さくすることも可能であり、その有効性を示す資料を以下に示す。この資料は図9のように、下部濾材15に300メッシュ(MESH)のものと、80メッシュ(MESH)のものとを用いたものにおいて、300メッシュ(MESH)の上部濾材16を配置した場合と配置しない場合での抽出液の濁りを比較できるものにしている。濁りの判別を行うための手法は前述した図7のものと変わるところが無く、図中に示す抽出工程と、抽出条件に基づいている。同図から判るように何れの波長においても上部濾材16を備えた状態で抽出した抽出液の方が、上部濾材16を備えないものと比較して濁りが少なく、収率が高いことが読み取れ、又、下部濾材15に80メッシュのものを用いても数値的には大きい差を生じないことが読み取れる。
【0033】
本発明の構成の抽出装置では、上部濾材16を備えることにより、抽出液に含まれる油脂成分を少なくして、期間経過に伴って表面に油脂が浮上する現象を解消できるものにしており、その資料を以下に示す。図10に示すように、この資料から読み取れるように、上部濾材16を備えて抽出を行った抽出液は、25°Cの環境で25日を経過した後にも油脂がほとんど浮上しないことが読み取れる。
【0034】
このように、本発明は、上部濾材を、その位置を設定して備えるだけの改良によって抽出液に対する微粒子の混入を少なくして濁りのない清澄なコーヒーを抽出できるものとなったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】コーヒー抽出機の構成図
【図2】上部濾材の支持構造を示す斜視図
【図3】本発明の抽出時のコーヒー材料の状態を順次示す模式図
【図4】従来の抽出時のコーヒー材料の状態を順次示す模式図
【図5】抽出処理のフローチャート
【図6】抽出処理の流れを順次示す模式図
【図7】抽出液の濁りの数値で表した図
【図8】抽出時にホールドを行う処理での濁りを数値で表した図
【図9】下部濾材のメッシュを変更して行った抽出液の濁りを数値で表した図
【図10】抽出液の油脂成分浮上を数値で表した図
【図11】上部濾材の位置の評価を示す図
【符号の説明】
5 カラム
15 下部濾材
16 上部濾材
M コーヒー材料
FV 水供給手段
FE 取出し手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、清澄なコーヒー抽出方法及び清澄なコーヒー抽出機に関し、詳しくは、比較的多量のコーヒーの抽出を可能にする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
比較的多量のコーヒーの抽出を行う技術として、特開昭53‐15983号公報に示されるものが存在し、この従来の技術は複数の抽出塔に対して抽出媒体を流動させる順序を切換えることで、高濃度の抽出液を連続的に採取できるよう構成したものである。又、この従来の技術では抽出塔を構成する外筒に対して、下端にストレーナを備えた内筒を挿入する構造を有しており、このストレーナが、円筒状の多孔板と、これに嵌合する円筒状のろ過体と、底蓋等とを備えて構成され、このストレーナの内部に固体原料を充填し、加熱水を注入することにより多孔板や、ろ過体を透過した抽出液を外筒下部の流出口から流出させるよう構成してある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
コーヒーを考えるに、コーヒーは飲料であると同時に嗜好品であるので、カップ内に注がれた状態での見た目も重要である。特に、混濁したものは味が良好であっても見た目から敬遠されることも多く清澄なコーヒーが望まれている。
【0004】
しかしながら、従来例のように抽出塔を用いて多量のコーヒーの製造することを考えると、連続的に生産することに重点が置かれ、清澄な状態での抽出を行うことに考慮が払われていないものであった。この傾向は公報番号を上げた技術に限らず従来から一般的に言えることである。このことから、従来の技術で抽出したコーヒーを清澄なものにするため、抽出されたコーヒーを再度濾過することも行われていた。そして、このように再度濾過を行うものでは濾過のためのプロセスを必要とするばかりで無く、コスト上昇も招くものとなっている。
【0005】
又、コーヒーが清澄でない状態(例えば混濁した状態)に陥る理由の大きい要因として、コーヒー材料に含まれる微粒子の多くが抽出液中に分散することが知られている。そこで、抽出液中にコーヒー材料の微粒子が混入しないように、濾材のメッシュを小さくすることが考えられるが、濾材のメッシュをあまりに小さくし過ぎると目詰まりが発生しやすいばかりで無く、濾過に時間を要するものとなり現実的では無い。
【0006】
更に、出願人による実験結果から、濾材のメッシュを単純に小さくしただけでは、濁りを良好に解消することができないことも分かった。その理由は、図4に示すように、例えば、下部にだけ濾材15を配置し、その上面に粉砕されたコーヒー材料Mを投入した状態(a)で熱湯を供給した場合には、(b)に示すように、コーヒー材料Mの大きい粒子が液面近くまで浮き上がり、小さい粒子ほど、下層に位置する現象(分級現象)が起きる。このような現象が起きた状態で抽出液を濾材の下方に流動させて抽出液の取出しを行った場合には濾材15近くに存在する小さい粒子の多くが濾材15を通過するものとなり抽出液に混入する。このような理由から濾材のメッシュだけでは濁りを解消できないのである。
【0007】
本発明の目的は、濾材に対してコーヒー材料の微粒子が通過し難い条件を作り出すことによって濁りの無い清澄なコーヒー抽出方法、及び、濁りの無い清澄なコーヒー抽出機を合理的に構成する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る清澄なコーヒー抽出方法の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
カラムに備えた下部濾材の上面に粉砕されたコーヒー材料を位置させ、このコーヒー材料が自然に堆積した状態における上面と略一致する位置、あるいは、この上面から上方に設定距離だけ離間する位置に設定して上部濾材を配置し、この上部濾材を超える位置までカラム内に熱水、あるいは、冷水を注入して抽出を行い、このように抽出した抽出液を下部濾材より下方位置から取出し、ここで、上部濾材は保持部材を有しており、当該保持部材がカラムの本体に形成された段状部の上面に対して自重で接することにより、上部濾材が段状部の上面位置に保持される点にある。
【0009】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、熱水、あるいは、冷水が注入された後には、粒子の流動に伴う分級作用が上部濾材に抑制されることによりコーヒー材料に含まれる大きい粒子が水面近くまで浮き上がることが無く、これより小さい粒子が大きく移動することもない。つまり、この抽出時にはコーヒー材料に含まれる小さい微粒子は、それより大きい粒子に接触することにより移動し難い状況にあるので、この微粒子だけが下部濾材の近くに集中する現象を抑制するものとなる。そして、この状況で下部濾材の下方に向けて抽出液を移動させる形態で取出しても抽出液に含まれる微粒子の量を極めて少なくできるのである。その結果、メッシュの小さい濾材を用いずとも、又、抽出されたコーヒーの2次的な濾過処理を行わずとも清澄なコーヒーの抽出を行える抽出方法が得られた。
【0010】
特に、この抽出の処理の流れを説明すると図3に示すように、カラム5内の下部濾材15の上面に粉砕されたコーヒー材料Mを先ず投入する(a)。尚、同図に示すコーヒー材料Mは粒径の大きいものと粒径の小さい微粒子とが混じり合ったものとなっている。そして、このコーヒー材料Mの上面に接する程度の位置に上部濾材16を配置し(b)、この後に、注水を行って上部濾材16の上方に達するまでカラム内を水で満たして抽出を行った場合には、前述のように微粒子が下層に集中することが無く、この後に、下部濾材15の下方から抽出液を取り出しても清澄なものとなる(c)。つまり、抽出が行われる際には、上部濾材16と下部濾材とによってコーヒー材料Mの流動が抑制されているので、コーヒー材料Mに含まれる大きい粒径のものと、粒径の小さい微粒子とが混合状態に維持され、抽出液の中に含まれる微粒子の量を少なくできることが分かる。これとは逆に、上部濾材16を用いずに抽出を行った場合には図4(a)、(b)に示すように、コーヒー材料Mに含まれる大きい粒子が液面近くまで浮き上がり、粒子が小さいものほど下層になる分級現象が発生し、下層の微粒子が濾材16を通過しやすいことも分かる。
【0011】
本発明の請求項2に係る清澄なコーヒー抽出方法の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項1記載の清澄なコーヒー抽出方法において、前記上部濾材の位置を、コーヒー材料の体積の0.9倍に対応する位置と、コーヒー材料の体積の1.5倍に対応する位置との間の領域内に設定してある点にある。
【0012】
〔作用・効果〕
上記特徴における0.9と1.5との数値の根拠は図11に示す実験結果に基づくものである。同図に示すように、下部濾材15に対する上部濾材16の位置を変更して同図に示す項目についてチェックしたところ、抽出水に対する非接触箇所、クラック形成の有無、水中における分級現象の有無、抽出時間夫々に対する総合的評価からすると、上部濾材16の位置を、コーヒー材料Mの体積の0.9倍、つまり、コーヒー材料Mを僅かに圧縮することになる位置と、このコーヒー材料Mの容積の1.5倍の体積、つまり、コーヒー材料Mの上方に僅かな空間を形成することになる位置との間の領域内において有効であることが分かった。その結果、抽出したコーヒーが清澄で抽出にも無理がないものとなった。
【0013】
尚、図中の「非接触箇所」とは抽出時にコーヒー材料中に水と接触しなかった箇所のことであり、「クラック形成の有無」とは抽出時にコーヒー材料に大きい間隙が形成される等の理由によって通過する水の流速が急激に変化する現象の有無であり、「水中における分級現象の有無」とは前述したようにコーヒー材料に含まれる大きい粒子が浮き上がり、小さい粒子が下層に滞留する現象の有無である。
【0014】
本発明の請求項3に係る清澄なコーヒー抽出方法の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項1又は3項に記載の清澄なコーヒー抽出方法において、前記抽出時においては、熱水、あるいは、冷水の注入も、抽出した抽出液の取出しも行わないホールド状態を設定時間以上継続させる点にある。
【0015】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、ホールド状態において抽出時にコーヒー材料を運動させないのでコーヒー材料に含まれる微粒子を下部濾材の側に移動させ難くしながら、コーヒー材料中のコーヒー成分の抽出を可能にする。その結果、抽出されたコーヒー成分を清澄な状態を維持できた。
【0016】
本発明の請求項4に係る清澄なコーヒー抽出機の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
内部の下部位置に下部濾材を配置し、内部において下部濾材より上方位置に開閉自在、あるいは、着脱自在に上部濾材を配置するカラムを備えると共に、下部濾材の上面に粉砕されたコーヒー材料を投入した後に、コーヒー材料が自然に堆積した状態における上面に略一致する位置、あるいは、コーヒー材料の上面から上方に設定距離だけ離間する位置への前記上部濾材の配置を許す配置手段を備え、この配置の後にカラム内に熱水、あるいは、冷水を供給する水供給手段と、この水で抽出された抽出液を下部濾材の下方位置から取出す取出し手段とを備えており、ここで、上部濾材は保持部材を有しており、当該保持部材がカラムの本体に形成された段状部の上面に対して自重で接することにより、上部濾材が段状部の上面位置に保持される点にある。
【0017】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、カラムに対して配置手段によって上部濾材を配置でき、水供給手段によってカラム内に熱水、あるいは、冷水の供給を行え、下部濾材の下方からの取出し手段がコーヒーを取出し得るものとなる。そして、請求項1の〔作用・効果〕に記載したように、コーヒー材料に含まれる小さい微粒子が、それより大きい粒子に接触することにより移動し難い状況を作り出し、この微粒子だけが下部濾材の近くに集中する現象を抑制し、この状況で下部濾材の下方に向けて抽出液を移動させる形態で取出してもコーヒーに含まれる微粒子の量を極めて少なくできるものになる。その結果、抽出時の水供給、コーヒーの取出しを容易に行えるばかりでなく、メッシュの小さい濾材を用いずとも、清澄なコーヒーの抽出を行える抽出機が合理的に構成されたのである。
【0018】
本発明の請求項5に係る清澄なコーヒー抽出機の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項4記載の清澄なコーヒー抽出機において、前記上部濾材の位置を、下部濾材の上面にコーヒー材料を投入した後に、コーヒー材料の体積の0.9倍に対応する位置と、コーヒー材料の体積の1.5倍に対応する位置との間の領域内に設定してある点にある。
【0019】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、請求項2の〔作用・効果〕に記載したように、実験結果から有効な位置に上部濾材を配置することが可能となる。その結果、抽出したコーヒーが清澄で抽出にも無理がない。
【0020】
本発明の請求項6に係る清澄なコーヒー抽出機の特徴、作用・効果は次の通りである。
〔特徴〕
請求項4又は5に記載の清澄なコーヒー抽出機において、上部濾材を超える位置までカラム内に熱水、あるいは、冷水の注入を行って抽出を開始した後には、設定時間以上経過した後に抽出口から抽出液の取出しを行わせる制御装置を備えている点にある。
【0021】
〔作用・効果〕
上記特徴によると、請求項3の〔作用・効果〕に記載したものと同様に、抽出時にコーヒー材料を運動させないのでコーヒー材料に含まれる微粒子を下部濾材の側に移動させ難くしながら、コーヒー材料中のコーヒー成分の抽出を可能にする制御を制御装置によって行える。その結果、コーヒー成分を充分に抽出したものでありながら清澄な状態を維持する自動制御が可能となった。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1、及び、図2に示すように、縦向き姿勢となる筒状のカラムハウジング1の上端に上部開口1Aを形成すると共に、この開口1Aに対してクランプ2Aの操作で着脱自在となる蓋体2を備え、このカラムハウジング1の上部に熱水(冷水でも良い)の供給部3を形成し、下端に抽出液の取出し部4を形成し、又、このカラムハウジング1に嵌め込まれるカラム本体5の下端近くに抽出用のコーヒー材料Mを貯留する抽出部Eを配置してある。前記熱水の供給部3に対して熱水タンク8から熱水を供給する供給管路9を形成し、この供給管路9に電磁式の供給弁FV(水供給手段の一例)を備え、前記取出し部4から抽出液(コーヒー)を貯留タンク10送る抽出管路11を形成し、この抽出管路11に電磁式の抽出弁EV(取出し手段の一例)を備え、更に、熱水タンク8の温度制御と、供給弁FV、及び、抽出弁EVを制御する制御装置Cを備えてコーヒー抽出装置が構成されている。
【0023】
前記制御装置Cはマイクロプロセッサーを備え、コントロールパネルCPからの入力された信号に基づいて任意の処理を行うよう構成され、熱水タンク8の熱水の温度を計測する温度センサSからの信号が入力し、熱水タンク8のヒータ8Hを制御する電力制御部12に制御信号を出力し、供給弁FV、及び、抽出弁EVに制御信号を出力する信号系を備えている。
【0024】
前記抽出部Eは、カラム本体5にの下端位置に備えた下部濾材15と、この下部濾材15より上方位置でカラム本体5の内部に着脱自在に備えられる上部濾材16とを備えて構成されている。又、上部濾材16の位置を、下部濾材15の上面に粉砕されたコーヒー材料Mを投入した際において、このコーヒー材料Mが自然に堆積した状態における上面と略一致する位置にセットしてある。下部濾材15は300メッシュに設定され、リング状の保持部材15Aに外周を支持された状態でカラム本体5の下端位置に固設されている。上部濾材16は300メッシュに設定され、リング状の保持部材16Aに外周を支持され、中央位置にロッド材で成る係合部材16Bを備えている。
【0025】
又、上部濾材16の位置は、作用の項で説明したように、下部濾材15の上面に粉砕されたコーヒー材料Mを投入した際において、このコーヒー材料Mの体積の0.9倍に対応する位置と、コーヒー材料の体積の1.5倍に対応する位置との間の領域(0.9〜1.5倍)内の何れかの位置が有効であるが、好ましくは、コーヒー材料Mが自然に堆積した状態における上面と略一致する位置、つまり、コーヒー材料Mの体積の1.0倍の位置と、このコーヒー材料の体積の1.46倍に対応する示す位置との間の領域(1.0〜1.46倍)内にあることが望ましい。尚、下部濾材15は80メッシュ程度のものを使用しても実用上差し支えない。
【0026】
そして、この上部濾材16は、その保持部材16Aをカラム本体5に形成された段状部5Aとの上面に対して自重で接することにより、その位置に保持(固定)される。つまり、この上部濾材16は下部濾材15の上面に対してコーヒー材料Mを投入した後には、カラム本体5の内部に落とし込むだけで図1に示す位置に保持されるものとなっている。そして、この上部濾材16を取り外す場合には係合部材16Bに棒状部材等の先端に備えた鉤状物を係合させ、引き上げる操作を行うことによって取り外せるものとなっている。
【0027】
又、制御装置Cは図5のフローチャート、及び、図6に模式的に示す「抽出処理」のうち抽出工程を自動的に行うことで清澄なコーヒーの抽出を行えるようプログラムがセットされている。
【0028】
つまり、その工程(「抽出処理」)では、カラム本体5の抽出部Eに粉砕されたコーヒー材料Mを投入する作業を行い、このコーヒー材料Mの上面に接する位置に上部濾材16を配置し、このカラム本体5をカラムハウジング1内にセットし、上部開口1Aを蓋体2で閉塞する(#01〜#04ステップ)。この工程は作業者が行うものであり、予備工程と称する。この予備工程は図6において(a)〜(c)に対応する。
【0029】
前述のように予備工程が終了すると、前記コントロールパネルCPから処理開始の情報を入力することにより、供給弁FVを開放操作して必要とする量の熱水をカラムハウジング1内に供給(加水)して、上部濾材16上方でカラムハウジング1の上部に近いレベルLに達するまで熱水を満たす。このように熱水が供給されると同時にタイマ(ソフトウエアで構成されている)を作動させて時間経過の計測を開始する。この時間はコーヒー材料Mや熱水の温度に基づいて設定されるものであり、1回抽出の場合にはタイマの設定時間が6分〜7分程度に設定される。そして、このように設定された時間が経過するまで熱水の供給も抽出液の取出しも行わず静粛なホールド状態を維持してコーヒーの抽出を行い、この時間が経過した時点で、制御装置Cが抽出弁EVを開放して抽出液(コーヒー)を貯留タンク10に取出すものとなっている(#05〜#08ステップ)。この抽出工程は図6において(d)〜(f)に対応する。
【0030】
このように上部濾材16を備えた状態で抽出を行う点が本発明の特徴であるが、本発明の有効性を示す資料として、この上部濾材16を備えずに同様の処理によって抽出を行った抽出液との濁りの比較結果を図7に示した。つまり、この濁りの比較は、上部濾材16を備えた状態で抽出した抽出液と、上部濾材16を用いずに抽出した抽出液とを純水で希釈することによって液濃度(BRIX)の値を等しくした状態で、分光光度計を用いて720nm(ナノメータ)の波長における吸光度によって濁りを判別したものであり、同図から判るように、何れの波長においても上部濾材16を備えた状態で抽出した抽出液の濁りが少ないことが読み取れる。なお、420nm(ナノメータ)の波長における吸光度によって褐色度を判別した結果、コーヒー本来の褐色度には影響を与えていないことが読みとれる。
【0031】
前述したように抽出を行う際には、加水(熱水を注入)した状態で設定された時間だけ熱水を流動させないようにホールドする処理が採用されているが、熱水の加水を複数回行い、この注入の後にもホールドを行うことの有効性を示す資料を以下に示す。この資料は図8のように、上部濾材16を備えた状態と、上部濾材16を備えない状態とにおいて、3度の加水で抽出を行ったもの(抽出工程1)と、1度の加水で抽出を行ったもの(抽出工程2)との濁りを比較できるものにしている。濁りの判別を行うための手法は前述した図7のものと変わるところが無いが、同図において「収率」とはコーヒー材料Mの重量を100とした場合において抽出液に含まれる成分の重量を示している。同図から判るように、上部濾材16を備えた状態で抽出した抽出液の方が、上部濾材16を備えないものと比較して濁りが少なく、収率が高いことが読み取れ、又、抽出工程1と、抽出工程2との比較では、720nm(ナノメータ)において抽出工程1における抽出液の濁りが少なく、かつ、高い収率が得られることが読み取れる。
【0032】
又、本発明の構成の抽出装置では、上部濾材16を備えることにより、下部濾材15のメッシュを小さくすることも可能であり、その有効性を示す資料を以下に示す。この資料は図9のように、下部濾材15に300メッシュ(MESH)のものと、80メッシュ(MESH)のものとを用いたものにおいて、300メッシュ(MESH)の上部濾材16を配置した場合と配置しない場合での抽出液の濁りを比較できるものにしている。濁りの判別を行うための手法は前述した図7のものと変わるところが無く、図中に示す抽出工程と、抽出条件に基づいている。同図から判るように何れの波長においても上部濾材16を備えた状態で抽出した抽出液の方が、上部濾材16を備えないものと比較して濁りが少なく、収率が高いことが読み取れ、又、下部濾材15に80メッシュのものを用いても数値的には大きい差を生じないことが読み取れる。
【0033】
本発明の構成の抽出装置では、上部濾材16を備えることにより、抽出液に含まれる油脂成分を少なくして、期間経過に伴って表面に油脂が浮上する現象を解消できるものにしており、その資料を以下に示す。図10に示すように、この資料から読み取れるように、上部濾材16を備えて抽出を行った抽出液は、25°Cの環境で25日を経過した後にも油脂がほとんど浮上しないことが読み取れる。
【0034】
このように、本発明は、上部濾材を、その位置を設定して備えるだけの改良によって抽出液に対する微粒子の混入を少なくして濁りのない清澄なコーヒーを抽出できるものとなったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】コーヒー抽出機の構成図
【図2】上部濾材の支持構造を示す斜視図
【図3】本発明の抽出時のコーヒー材料の状態を順次示す模式図
【図4】従来の抽出時のコーヒー材料の状態を順次示す模式図
【図5】抽出処理のフローチャート
【図6】抽出処理の流れを順次示す模式図
【図7】抽出液の濁りの数値で表した図
【図8】抽出時にホールドを行う処理での濁りを数値で表した図
【図9】下部濾材のメッシュを変更して行った抽出液の濁りを数値で表した図
【図10】抽出液の油脂成分浮上を数値で表した図
【図11】上部濾材の位置の評価を示す図
【符号の説明】
5 カラム
15 下部濾材
16 上部濾材
M コーヒー材料
FV 水供給手段
FE 取出し手段
Claims (6)
- カラムに備えた下部濾材の上面に粉砕されたコーヒー材料を位置させ、このコーヒー材料が自然に堆積した状態における上面と略一致する位置、あるいは、この上面から上方に設定距離だけ離間する位置に設定して上部濾材を配置し、この上部濾材を超える位置までカラム内に熱水、あるいは、冷水を注入して抽出を行い、このように抽出した抽出液を下部濾材より下方位置から取出す清澄なコーヒー抽出方法であって、
ここで、前記上部濾材は保持部材を有しており、当該保持部材が前記カラムの本体に形成された段状部の上面に対して自重で接することにより、前記上部濾材が前記段状部の前記上面位置に保持される清澄なコーヒー抽出方法。 - 前記上部濾材の位置を、コーヒー材料の体積の0.9倍に対応する位置と、コーヒー材料の体積の1.5倍に対応する位置との間の領域内に設定してある請求項1記載の清澄なコーヒー抽出方法。
- 前記抽出時においては、熱水、あるいは、冷水の注入も、抽出した抽出液の取出しも行わないホールド状態を設定時間以上継続させる請求項1又は2記載の清澄なコーヒー抽出方法。
- 内部の下部位置に下部濾材を配置し、内部において下部濾材より上方位置に開閉自在、あるいは、着脱自在に上部濾材を配置するカラムを備えると共に、下部濾材の上面に粉砕されたコーヒー材料を投入した後に、コーヒー材料が自然に堆積した状態における上面に略一致する位置、あるいは、コーヒー材料の上面から上方に設定距離だけ離間する位置への前記上部濾材の配置を許す配置手段を備え、この配置の後にカラム内に熱水、あるいは、冷水を供給する水供給手段と、この水で抽出された抽出液を下部濾材の下方位置から取出す取出し手段とを備えている清澄なコーヒー抽出機であって、
ここで、前記上部濾材は保持部材を有しており、当該保持部材が前記カラムの本体に形成された段状部の上面に対して自重で接することにより、前記上部濾材が前記段状部の前記上面位置に保持される清澄なコーヒー抽出機。 - 前記上部濾材の位置を、下部濾材の上面にコーヒー材料を投入した後に、コーヒー材料の体積の0.9倍に対応する位置と、コーヒー材料の体積の1.5倍に対応する位置との間の領域内に設定してある請求項4記載の清澄なコーヒー抽出機。
- 上部濾材を超える位置までカラム内に熱水、あるいは、冷水の注入を行って抽出を開始した後には、設定時間以上経過した後に抽出口から抽出液の取出しを行わせる制御装置を備えている請求項4又は5記載の清澄なコーヒー抽出機。
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