JP3579711B2 - ガン細胞増殖抑制剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガン細胞増殖抑制剤に関するものである。本明細書では、本発明において利用する特定のタンパク質をコードする遺伝子について、必要に応じ、「遺伝子Any-RF」と略称することもある。
【0002】
【従来の技術】
地球上には100万種ともいわれる程の多種類で多様な昆虫があらゆる環境で強かに、そして力強く生育している。熱帯から、温帯、針葉樹林、氷雪地、砂漠、さらには湖沼地に至るまで地球のほぼ全域の環境に昆虫は適応しながら生存している。こうした現象は、昆虫があらゆる環境の中で強かに生き、あるいは生き残るべく多様な機能特性を獲得しているからに他ならない。我々が昆虫から学ぶべきものは多い。昆虫の機能特性として挙げられるのは、生体防御機構や、成長・発育制御機構、広範な物質分解、生産機能、鋭い感覚機能、行動調節機構、脳・神経機構、媒介機能、あるいは環境適応能等である。こうした昆虫が持つ環境適応的でかつ省エネルギー的な機能を解析することにより、将来的には、最先端の創造的な新しいテクノロジー構築に役立つ貴重な情報が得られる。
【0003】
昆虫の持つ機能を解析して、昆虫由来で多様な機能性を持つ生理活性物質を高度に利用する技術を開発することは極めて興味深い研究課題である。昆虫から単離し、そして構造決定した生理活性物質は、高品質のかつ新規な製品に対する農業分野での技術開発や医薬品分野での技術開発のための応用研究の対象として重要な意義を持っている。
【0004】
昆虫由来で、いわゆる生体防御物質として知られている抗菌性ペプチドは150種類以上にもおよび、それらの多くが単離され、構造決定されている。本明細書では、生体細胞の細胞制御機能、例えばガン細胞の増殖抑制機能、すなわち抗腫瘍機能または抗ガン機能を持つ昆虫由来の新規生理活性物質であるタンパク質を対象とするため、以下、昆虫由来の細胞増殖抑制機能物質を中心に記述することにする。
【0005】
昆虫由来の抗ガン性物質には、例えばセクロピンと呼ばれるペプチドがある。セクロピア蚕から単離され、構造決定されたものであり、その構造決定後、類似の構造を持った物質が多くの昆虫から単離され、同定されている。こうした研究解析はごく最近の研究成果によるものである。セクロピンは、リンパ腫や白血病の培養細胞に対して抗腫瘍作用があると報告されている(Moore et al., 1994)。セクロピンの遺伝子がヒトの膀胱ガン由来の培養細胞に遺伝子組換えされ、その細胞をヌードマウスに注射した結果、腫瘍細胞の成長が抑制(抗ガン性)されることが実証されている(Winder et al., 1998)。
【0006】
また、モンシロチョウの蛹から単離された98kDaの高分子タンパク質は、ヒトの胃ガン細胞(TMK−1)のようなガン細胞に対して強い細胞毒性(細胞毒性とは、最終的に細胞死を誘導し、その結果抗ガン性があることを意味している)を有し、ガン細胞の増殖を抑制し、最終的にはアポトーシス(細胞死)を誘発する特異的な生理活性を示すことが報告されており、このタンパク質はピエリシン(pierisin)と命名されている(Koyama et al, Jpn. J. Cancer Res., 87, 1259−1262, 1996; Kono et al., 1997; Watanabe et al., 1998)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
昆虫由来で抗腫瘍活性を持つ新規物質発見の歴史は短く、新規物質に関する知見は少ない。
【0008】
上記したような昆虫由来の腫瘍細胞成長抑制物質またはガン細胞増殖抑制物質としてこれまで報告のあるセクロピア蚕からの単離タンパク質(セクロピン)やモンシロチョウの蛹からの単離タンパク質(ピエリシン)は、約4kDaとか98kDaの高分子量のものである。これら既知の生理活性物質は、ガンの生細胞において細胞死を誘導することによりガン細胞を効率的に減少させるが、ガン細胞周期のステージを確実に変化させ、ガン細胞を一旦休止状態にさせることは不可能であるという問題がある。また、セクロピンが、ヒトのガン細胞の増殖を抑制させ得ることが報告されているとしても、実用的な視点からすると、生体に適用した場合、高分子量のタンパク質は生体内で抗原抗体反応を起こすので、セクロピン等を生体に対して使用することは困難であるという問題がある。そこで、ガン細胞の増殖阻害物質に関して、昆虫由来の生理活性物質であり、ガン細胞の増殖抑制機能のような生体細胞の細胞制御機能を持ち、しかも生体に投与した際には、抗原抗体反応を起こさない生理活性物質の出現が強く望まれてきた。
【0009】
本発明は、ガン細胞の増殖抑制機能を持ち、生体内で抗原抗体反応を起こさない生理活性物質を有効成分とするガン細胞の増殖抑制剤を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、同一出願人の先の出願(特願平11−152273号;特許第3023790号)において、前幼虫休眠タイプの天蚕、マイマイガ、ウスバシロチョウ、オビカレハ、カシワマイマイ等の鱗翅目昆虫および直翅目昆虫を中心とした40種以上の広範な昆虫(これらの前幼虫休眠タイプの昆虫としては、梅谷与七郎、蚕の越冬卵より見たる昆虫の卵態越冬現象、蚕糸試験場報告、12:393−481(1946)およびUmetani Y., Studies on embryonic hibernation and diapause in insects, Proc. Jpn. Acad., 26, 1−9 (1950)に記載されている)に特異的かつ効率的に作用する休眠制御活性を有する生理活性物質に関する発明について明らかにしたが、その後の研究推進により、この生理活性物質が生体細胞の効率的な制御活性、例えば、ガン細胞の効率的な増殖抑制活性を有するものであることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。すなわち、先願発明における遺伝子Any−RFは、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列、Asp−Ile−Leu−Arg−Glyを有し、C末端がアミド化されており、分子量が570.959であるタンパク質をコードするものであり、本発明者らはこの生理活性物質がガン細胞の増殖を効率的に抑制すること、ひいては生体細胞を効率的に制御する活性を有することを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
本発明の生体細胞のガン細胞の増殖抑制剤は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列、Asp-Ile-Leu-Arg-Glyを有し、C末端がアミド化されており、分子量が570.959であるペプチドを有効成分として含有するものである。本発明の有効成分である生理活性物質は、上記のように、N末端より5番目までのアミノ酸配列がAsp-Ile-Leu-Arg-Glyであって、C末端が遊離酸化された化合物ではなく、アミド化されているものである。この有効成分は、例えば、天蚕前幼虫体等のような鱗翅目昆虫の前幼虫体を粉砕したものをメタノール:水:酢酸からなる酸メタノール液に加え、乳鉢内で摩砕後、遠心処理し、得られた上清をHPLCシステムに導入することにより単離・精製して得ることもできるし、または公知のペプチド合成装置を用いて公知の方法に従って調製することもできる。
また、このペプチドは生体細胞の細胞周期を制御し、ガン細胞の増殖を抑制する。
【0012】
また、本発明の生体細胞のガン細胞増殖抑制剤は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からN末端のAspを欠いたアミノ酸配列、Ile-Leu-Arg-Glyを有し、C末端がアミド化されており、分子量が456.58であるペプチドを有効成分として含有するものであってもよい。このペプチドは生体細胞の細胞周期を制御し、ガン細胞の増殖を抑制する。
【0013】
本発明における生理活性物質は、例えばガンの生細胞を効率的に減少させることができ、ガン細胞周期のステージを確実に変化させ、ガン細胞を一旦休止状態にさせる方向へと移行させることが可能である。こうした機能を持つ生理活性物質は有効なガン細胞増殖抑制剤として用いられ、ひいては抗ガン剤として実用化できる可能性がある。従来の抗ガン剤が持つ正常細胞への悪影響(細胞死)問題を解消し、静止期にある多くの正常細胞へは影響がなく、増殖細胞だけを抑制するという優れた働きを持つ。また、この生理活性物質は、生体細胞の細胞制御因子(cell regulator)として細胞増殖を可逆的に制御できるものであり、例えばガン細胞の増殖を効率的に抑制でき、しかもアミノ酸5個から成る低分子量のペンタペプチドであり、生物界では新規物質である。さらに、この生理活性物質は、上記セクロピンあるいはピエリシンとは構造上の類似性は全く無く、しかも、例えばマウスの肝ガン細胞等の増殖を効率的に抑制すると同時に、ガン細胞を抑制するメカニズムについても従来技術には無い特徴ある抑制機構を示す。すなわち、細胞周期を改変する特徴を有し、細胞増殖を可逆的に制御することが可能である。また、細胞周期のメカニズムを解明する上でも有用な生理活性物質である。
【0014】
一般に、タンパク質は、実際に生体に適用する場合、その分子量が大きいと、生体内で抗原抗体反応を起こすので、大きな障害となる。蚕由来のセクロピンは分子量が約4kDaであり、また、モンシロチョウ由来のピエリシンは98kDaであるので、生体に投与すると抗原抗体反応が起こり易い。これに対し、本発明における天蚕由来の生理活性物質は、0.571959kDaと低分子量のペンタペプチドであるので、生体に投与しても抗原抗体反応が起こり難いという特徴を有している。従って、抗ガン活性という特異的な機能を有しているこのペプチドは、そのままでも種々の動物に直接投与できる。高等動物においても、本ペプチドのように短い低分子のペプチドは抗原とはなり難いので、該ペプチドの生体外からの投与によって、抗ガン機能を発揮させることができるという特徴を持っている。
【0015】
さらに、本発明におけるペプチドは、抗原抗体反応を起こすことがなく、しかも細胞増殖抑制効果をもち、かつ新しい医薬、または抗ガン剤開発のリード化合物としても有望である。しかも、ガン細胞の生細胞を増加させることのない機能を保つ(図2、図3、および図4)とともに、生存するガン細胞に対して、ガン細胞の周期ステージを変化させ、細胞増殖を一旦休止状態にさせるという大きな特徴を持っている。この点において従来の如何なる抗ガン剤の作用機序とも異なっている。すなわち、本発明の生理活性物質は、DNA複製期に相当するS期間を減少させ、静止期のG0ならびに第1期に符合するG1期を延長させる機能を持つ。かくして、本発明の生理活性物質はガン細胞の増殖を効率的に阻害する。これに対し、セクロピンにしろピエリシンにしろ、生細胞を減少せしめることによりガン細胞の増殖を抑制する機能を持ち、細胞死(アポトーシス)を引き起こすことによりガン細胞の増殖を阻害しているに過ぎない。
【0016】
一般に、細胞周期においてはG0期とG1期が最も長い時間を要するといわれている。その両ステージを増大するように作用する本発明における生理活性物質は、従来報告されている昆虫由来のガン細胞抑制効果物質とは根本的に異なっている。従来のものはアポトーシス(細胞死)に伴う核の凝縮や断片化を誘導し、その結果、生細胞数を減少せしめるものである。しかし、本発明の生理活性物質の機能は、細胞周期のG0とG1を増大しS期を減少させ、その結果、生細胞の細胞周期が長時間となり、最終的には増殖抑制をすることにある。従って、本発明の生理活性物質は、ガン細胞増殖において細胞死を誘導するのではなく、細胞周期を制御し細胞の増殖を抑制することで細胞数が増えないように作用している。
【0017】
本発明における生理活性物質は、先願発明で述べたように、生理活性機能の一つとして、天蚕前幼虫の休眠を長く維持するように作用する。一般に生物の休眠とは、細胞の増殖が停止し低エネルギー状態を維持することが特徴と考えられている。従って、この物質の機能を多面的に応用する一例として、哺乳類のガン細胞増殖を制御する目的においても活用できる。さらに、多くの生物細胞の増殖を抑えることが予想され、細胞レベル・個体レベルの長期保存剤の開発にも利用できる。
【0018】
本発明における遺伝子Any−RFを有する低分子量のペプチドは、副作用を伴なわずに効率的にガン細胞の増殖を阻害する機能を持ち、マウスの肝ガン細胞の増殖を抑制することから、ヒトの子宮ガン、肝臓ガン、肺ガン、胃ガン、乳ガン等の細胞増殖を効率的に抑制し、ひいては生体細胞の細胞制御を効率的に行う蓋然性が極めて高い。
【0019】
以上述べたように、本発明により、昆虫内分泌学上従来全く知られていない物質で、生体細胞の細胞制御因子である生理活性物質が始めて明らかになった。
【0020】
また、上記アミノ酸配列Asp−Ile−Leu−Arg−Glyに対する塩基配列として5’−GAY−ATH−YTN−MGN−GGN−3’が考えられる。
【0021】
本発明においてガン細胞増殖制御剤(ガン細胞増殖抑制剤)とするためには、通常の薬剤と同様に、公知の各種添加剤、賦形剤等を通常の方法で配合し、所定の薬剤とすればよい。本発明の細胞制御剤としての有効量は、一般に50〜350mg/kgであり、好ましくは100〜200mg/kgであり、その投与方法は、生体内に投与できる方法であれば手段を選ばない。例えば、経口投与でも、静脈注射でも、腹腔内投与等でもよい。
【0022】
本発明において用いる上記生理活性物質であるペプチドは、従来のセクロピンやピエリシンと比べて、生体内での副作用がほとんどなく、また、急性毒性も観測されなかった。すなわち、ラットとマウスとに対して、それぞれ体重1kg当たり0.5gの本発明のペプチドを経口及び経皮の2通りの方法で投与し、所定の方法で毒性試験を行ったところ、いずれの動物にも痙攣や嘔吐のような急性毒性は観測されなかった。さらに、毒性試験後の各動物の生殖器官の精巣を摘出して、その組織について顕微鏡により観察したが、異常性は認められなかった。また、本発明のペプチドは、低分子量のペンタペプチドであるため、安全性からみても抗原抗体反応は起こり難い。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記先願発明において、本発明で用いる生理活性物質が昆虫の休眠を維持する機能のあることを明らかにした。本発明の内容を詳細に記述するのに先立って、話の流れを容易にするため、先願発明の概要を先ず繰り返し説明する。
【0024】
先ず、生理活性物質の単離された天蚕について述べる。天蚕(正式和名:ヤママユ、学名:Antheraea yamamai Guerin−Meneville)は、わが国を原産地とし、江戸時代から飼育の記録があり長い歴史を持つこと、最近人工飼料が開発されて幼虫の飼育が容易であること、農家段階で一般的に飼育されていることから、飼育に関する情報が多く、しかも入手が容易であると共に、年1回発生し、卵で越年する。家蚕(カイコ)幼虫が専ら桑の葉を食べるのに対して、天蚕はクヌギ、コナラ、カシワ、アベマキ等の葉を食べる。養蚕農家が家蚕幼虫を飼育するのに対して、野生の天蚕幼虫は、自然状態で生育する。天蚕種の孵化率は低く、繭糸から絹糸となる割合(糸歩)は極めて少ない。また、繭糸をとる作業が困難であるため希少価値としての意義がある。天蚕絹糸1kgの価格が20万円とも30万円ともいわれ、絹のダイヤモンドと呼ばれるほど希少価値があるのはこのためである。野蚕である柞蚕絹糸の配合率が増加した絹織物では糸の滑りが抑えられ、縫目の滑脱抵抗が改善できるため好んで用いられる。そのため、将来、大型絹糸昆虫である天蚕を利用した分野の発展が大いに期待される。従って、天蚕由来の各種機能を持つ生理活性物質の単離や構造決定の重要性はますます高まっている。
【0025】
先願発明では、先ず、天蚕の前幼虫の休眠中幼虫、休眠覚醒幼虫、死亡幼虫の個体数および休眠覚醒率を調べた。天蚕の前幼虫の休眠中幼虫に蒸留水を注射してもほぼすべての天蚕の前幼虫は休眠覚醒状態にあった。しかしながら、ペプチドAsp−Ilu−Leu−Arg−Gly−NH2を100ピコモル/0.05μlの量で、天蚕前幼虫に1回注射した場合に比べ、2回注射した場合には休眠覚醒率を53.3%から30%まで減少でき、さらに3回注射した場合にはさらに13.3%まで減少させることができた。これにより、先願発明における生理活性物質は、昆虫の休眠を維持する因子であると結論付けた。このようにして、天蚕由来で休眠制御活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、およびその機能が明らかとなった。
【0026】
天蚕由来の上記生理活性物質では、休眠維持の機能以外の効果は全く分かっていなかったが、本発明により、ガン細胞の増殖抑制機能のような生体細胞制御機能を持つ物質であることがはじめて明らかとなった。この物質は、それ自体が生体細胞の細胞制御剤として有用であることに加え、将来的にはガン治療薬を含めた新規医薬品開発のためのリード化合物として重要となるものと考えられる。
【0027】
上記したようにガン細胞の増殖を抑制する機能を持つペプチドのアミノ酸配列構造は、Asp−Ile−Leu−Arg−Gly−NHである。このペンタペプチドは、コンピューターサーチ(BLASTおよびFASTA)によっても既知のものが無く、生物界においては新規な抗ガン機能を持つペプチドである。これを、Antheraea yamamai−Repressive Factor(略称Any−RF)と命名した。5個のアミノ酸のC末端がアミド化されている本ペプチドは、フリーの存在様式として、生物界では本発明が完成されるまで見出されていなかったが、いくつかの生物タンパク質のアミノ酸配列の中には、同じ−−−Asp−Ile−Leu−Agr−Gly−−−の配列がみられる。例えば、コンピューターサーチによれば、イーストの仮説22.1KDタンパク質(193個のアミノ酸)の166〜170番までの配列、ヒトの白血病阻止因子前駆体(202個のアミノ酸)の142〜146番までの配列が同じである。しかし、この部分のアミノ酸配列の機能についてはまったく明らかにされていない。すなわち、アミノ酸配列が同じでも、本ペプチドのように、N末端とC末端の間に介在し、C末端がアミド化してフリーの存在様式で生理機能を有するものは、まったく見出されていない。
【0028】
ガン細胞の増殖の場合、その周期ステージは、通常の細胞増殖と同様、基本的な細胞周期に依存するが、そのチェックポイント制御系に異常が発生することで細胞増殖が進行しつづける(ここで、チェックポイント制御系とは、細胞周期にミスが発生し、破滅的な遺伝的損傷が細胞に起こるのを防ぐシステムを意味するものであり、こうした機能を利用すれば細胞周期を制御できる)。これとは逆に、成長分化し終えた細胞においては、G0期(静止期)で細胞分裂は起こらない。一般的に、成長過程の細胞は次のような細胞周期ステージを展開する。すなわち、G0期(静止期)からG1期(DNA複製決定期)へと進み、次いで、S期(DNA複製期)を経て、G2期(有糸分裂準備期)からM期(細胞分裂期)へと進行する(本明細書中では、G2/M期と略記)。その後、再びG0期へと進むか、またはG0期を経ないで直接G1期(DNA複製決定期)(本明細書中では、G0/G1期と略記)へと進むこともある。
【0029】
本発明の生理活性物質は、ガン細胞数を増加させない機能を保つとともに、生存するガン細胞の周期ステージを大きく変化させる点に大きな特徴があり、DNA複製期に相当するS期を減少させ、静止期のG0およびDNA複製決定期に符合するG1期を延長させる機能を持つ。かくして、本発明の生理活性物質がガン細胞の増殖を効率的に阻害することになる。本発明における天蚕由来の生理活性物質がガン細胞の増殖を効果的に阻害することは、上記のように特定のガン細胞周期ステージに特異的に効果を現すことからも明らかである。
【0030】
本発明によるガン細胞の増殖を抑制する生理活性物質は、休眠中の天蚕前幼虫から、図1に示す方法に従って単離・構造決定できる。単離、精製の概略は以下の通りである。
【0031】
産卵後1ヶ月以内の天蚕の休眠中の卵から前幼虫を摘出し、直ちに液体窒素で凍結し、その後は使用まで−80℃で保存した。約1,500頭(約6g)の前幼虫に10倍容の酸メタノール液(例えば、メタノール:水:酢酸=90:9:1(容量%))を加え、乳鉢内で摩砕後、10,000gで30分間遠心処理してその上清を得た。この操作を3回繰り返し、合わせた上清を遠心バポライザーで濃縮した。濃縮液を100℃で10分間熱処理し、10,000gで15分間遠心処理した。かくして得られた上清に、上清の最終濃度が80%になるように冷アセトンを添加し、10,000gで15分間遠心処理して沈殿物を得た。この沈殿物を水に溶解し、フィルター(ミリポア社のミリポアフィルター(SLLH RO4 NL、0.5μm)を通したものを逆相カラムによる高速液体クロマトグラフィで2回溶出処理し、最後に混合分離モードカラムによる高速液体クロマトグラフィで溶出処理し、単離精製物を得た。 この単離方法における最初の逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)では、カラムとしてTSKgel ODS−80Ts(東ソー株式会社製)を使用し、2回目のRP−HPLCシステムでも同じカラムを使用した。3回目の逆相とイオン交換モードを備えたカラムによるHPLCシステムでは、RSpak NN−614カラム(昭和電工株式会社製)を使用した。いずれのシステムでも、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液(容量%)にアセトニトリルを添加しながら、アセトニトリルの濃度(%)勾配を変化させ、その濃度勾配を利用しながら活性画分を溶出した。吸光度は220nmで測定し、流速は1ml/分または0.5ml/分とした。
【0032】
酸メタノール液に酢酸を用いる理由は、次の通りである。この抽出法は他の昆虫のペプチドホルモンを抽出する際にも使用されており、酢酸を添加することによって、90%以上のプロテアーゼ活性を抑制し、ペプチドの分解を抑えることができる。酸メタノール液としては、メタノール:水:酢酸=90:9:1(容量%)が最適であるが、この範囲に特に限定されるわけではない。
【0033】
前幼虫の取り出し方としては、上記したように産卵後1ヶ月以内の休眠卵を用いるとベストであるが、その理由は次の通りである。産卵後約10日から休眠開始して20日以内は、休眠の深度が強いと考えられるが、一般に昆虫の休眠は、さらに時間が経過すれば浅くなるためである。本発明において、天蚕の前幼虫1,500頭より最終的に得られるホルモン様物質である生理活性物質は、僅か21.4μgというかなりの少量である。ところが、天蚕は、カイコと比較して完全な人工飼料も開発されておらず、産卵技術も困難であることから、1卵当たり5〜20円という高価格になる。従って、天蚕を用いて本発明における生理活性物質を調製するには効率的、経済的に引き合わない。
【0034】
上記単離精製物の構造は次のようにして決定された。すなわち、単離精製物のN末端アミノ酸配列を、ペプチドシークエンサーのG1000A(ヒューレットパッカード(Hewlett Packard)社製)によって解析した。その結果、アミノ酸配列は、Asp−Ile−Leu−Agr−Glyであることが確認された。次いで、該物質について、そのC末端がアミド化(−NH)されているのか、または遊離酸化(−COOH)されているのかを調べるため、この単離精製物を質量分析計により分析した。なお、上記アミノ酸配列を有するペプチドであって、C末端がアミド化されているものと遊離酸化されているものとを下記のペプチドの合成方法に従って製造し、これを対照として用いた。MALDI−TOF MS (Matrix−Assisted Laser Desorption Ionization−Time−of−Flight 質量分析計) (Voyager PerSeptive Biosystems社製)を用い、単離精製物質および合成ペプチドを、それぞれ、0.5μl宛この質量分析計のサンプルプレート穴に注入し、等量のマトリックス(0.1%TFA水溶液とアセトニトリルとを50:50(容量%)の割合で混合したものの中にα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を飽和せしめたもの)と混合した。乾燥後、陽イオン化マトリックスとして分子量を決定した。単離精製物においては571.858と572.846とに大きな2つのピークが認められ、生体内においては両タイプのアミノ酸配列が存在しているものと考えられたが、以下の実施例で検討したようにC末端がアミド化されたものが細胞制御活性を有するものである。また、合成Asp−Ile−Leu−Agr−Gly−NHでは571.959に最大ピークが認められ、そして合成Asp−Ile−Leu−Agr−Gly−COOHでは573.045に最大ピークが認められた。かくして、本発明の生理活性物質は、571.959の分子量を有するペンタペプチドである。
【0035】
上記ペンタペプチドは、天蚕の前幼虫態休眠だけではなく、他の昆虫の幼虫期や蛹休眠期で発見される可能性もある。昆虫ホルモンでは、昆虫種が異なり、ステージが異なれば、同じ構造物質でも異なる機能を有することがあるからである。すなわち、昆虫の休眠は、天蚕の場合のように前幼虫態休眠するだけではなく、カイコのように胚子休眠する種、ヨトウのように幼虫休眠する種、サクサンやモンシロチョウのように蛹休眠する種、そしてナミテントウやハムシ類のように成虫休眠する種等に分類されている。あらゆる休眠形態からでも本発明における生理活性物質は単離できると当然に予想され得る。従って、同じペンタペプチドならびにその関連物質は、多くの昆虫種から、ガン細胞増殖抑制因子のような細胞制御因子として同定できる。該ペンタペプチドは、このような多くの昆虫種の個体全体から、図1に示した方法に従って、上記した天蚕前幼虫と同じ方法で抽出できる。直接体液から抽出する場合には、幼虫体の脚等の生体組織の一部を切開することで体液を流出せしめ、図1のメタノール:水:酢酸=90:1:1の水の部分を体液に置き換えることで調製した90%酸メタノール液を氷冷中で混合し、その後、図1に従って抽出するとよい。
【0036】
一般に、ホルモン様物質の抽出で重要な要因となるのは、高い回収率を得るために原材料として何を選ぶかという点および効率よく分離するためにカラム樹脂として何を選ぶかという点であるが、合成できればそれに越したことはない。しかるに、上記したように、本発明における生理活性物質のアミノ酸配列は判明しているので、この配列を持つ生理活性物質は、既存のアミノ酸合成装置を用いて、従来の方法で経済的に、効率的に合成できる。
【0037】
本発明におけるペプチドは、5個のアミノ酸からなるオリゴペプチドの一種であって、低分子量のペプチドであるため、昆虫以外の生物種においては抗原とはなり難いという特徴を持ち、昆虫等から分離・精製されたペプチドでも合成されたペプチドでも有効な効果を発揮できる。脊椎動物の免疫グロブリンによる抗原抗体反応では、生体外から侵入するのが低分子のオリゴペプチドであれば抗原とはならないからである。さらに、合成ペプチドによる生体外からの投与によって、可能性のある機能について簡易に試験研究できるという特徴もある。
【0038】
本発明における生理活性物質は、天蚕の前幼虫から単離・精製できるが、天蚕で前幼虫以外のステージまたは天蚕以外の昆虫で、例えば、同じステージで休眠する昆虫類や他のステージ(天蚕の場合)で、また、サクサンやクスサンのような他の野蚕でも、当該生理活性物質を単離できる可能性はある。
【0039】
本発明における抗ガン機能を保つ生理活性物質は、ラットの肝ガン細胞の増殖を抑制することから、ヒトの肝ガン、胃ガン、肺ガン、乳ガン等あらゆるガン細胞に対して増殖抑制効果を発揮する可能性が高い。
【0040】
【実施例】
次に、本発明を実施例および比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下の実施例では、単離ペプチドと同じ配列構造を有する合成ペプチドを用いて各種試験を行った。
(1)ペプチドの合成
本発明におけるガン細胞増殖抑制物質は天蚕幼虫由来の新規な物質であり、構造的にはたった5個のアミノ酸からできている。従って、ペプチド合成法により多量に製造することが可能である。ペプチド合成装置(PSSM−8、(株)島津製作所製)を用いて、通常の方法によってペプチドAsp−Ile−Leu−Arg−Gly−NH(DILRG−NHまたはRF−NHと称す)およびAsp−Ile−Leu−Arg−Gly−COOH(DILRG−COOHまたはRF−COOHと称す)を合成した。精製は逆相カラム ULTRON VX−ODS(20mm×250mm、信和化工(株)製)をHPLCのシステム(LC−10A、(株)島津製作所)に接続して行った。溶出は、8ml/分の流速で、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)の存在下でアセトニトリルの濃度勾配(0〜5分は1〜5%、5〜35分は5〜60%)を用いて行い、活性画分を溶出せしめた、吸光度は220nmで測定した。精製したペプチドは、サンプルプレート上で等量のマトリックス(50%アセトニトリル/0.1%TFAα−CHCAを飽和させたもの)と混合した後乾燥させ、MALDI−TOF MS(Voyager PerSepive Biosystems社製)によって純度を確認した。
【0041】
上記の方法に従って、DILRG−NH(純度:95%以上、HPLCとTOF−MSで検定)およびDILRG−COOH(純度:95%以上、HPLCとTOF−MSで検定)の2種類を合成し、以下の実施例で用いた。
(2)細胞と培地組成
ラット肝ガン細胞(dRLh84)を用い、この細胞の培養には、4mMグルタミン、50U/mlペニシリン、100μg/mlカナマシンが含有された10%ウシ新生児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を使用した。上記細胞について、37℃で5%COを含む湿潤環境下で細胞培養を行った。
(3)ガン細胞の増殖抑制アッセイ
100mmのデイッシュ(一般的にはシャーレ)に生育している細胞の古い培地を除いてPBS(−)(リン酸生理緩衝液からCaイオンとMgイオンを除去したもの)で1回洗浄した。10%トリプシン液1.5mlを加え、均一となるように静かにディッシュ全体に行きわたらせた後に、1mlを除いて37℃で5分間保温し、顕微鏡で細胞が底から剥がれているのを確認した。次いで、新しいDEME培地を9.5ml加え、ピペッテイングにより細胞を1個1個バラバラにして浮遊させた。この浮遊液を1/20希釈率で100mmのデイッシュ(総量は10ml)に植え込み、これをインキュベーターに入れ、24時間培養した。所定の濃度になるように各ディッシュにそれぞれのペプチドを添加して37℃で培養し、24時間および48時間経過後の時点で血球計算板を用いて細胞数を計測し、細胞増殖抑制機能を検討した。
(4)形態的観察
各ペプチドで処理した細胞を遠心分離により回収した後、これに100μlの1/2PBS(−)を加え懸濁せしめた。次ぎに、カルノア固定液を2滴加えて懸濁させ、カルノア固定液を1ml加え重層した。この重層液を静かに撹拌し、室温で5分間静置した後遠心分離(4,000rpm、5分)し、上清を除いて、少量のカルノア固定液を添加し懸濁せしめた。この懸濁液をスライドガラス上に1滴滴下し風乾した。さらに、細胞上に固定液1滴を滴下し、再び風乾した。これにギムザ染色液を重層し、30分間室温で染色したのち水洗し、風乾後封入を行った。顕微鏡下で核の変化を観察した。
(5)フローサイトメトリー(FACS)解析
各ペプチドで処理した細胞を70%エタノールで4℃で4時間固定した。固定した細胞をPBS(−)で洗浄後、2mg/mlのRNaseAを用いて37℃で30分間処理し、RNAを分解した。その後、ヨウ化プロピジウム(25μg/ml)により30分以上染色し、ナイロンメッシュを用いて濾過した。フローサイトメーター(Becton Dickinson社製、FACSVANTAGE)により10,000個の細胞の蛍光強度(細胞あたりのDNA含量)を解析した。
(実施例1)ペンタペプチドによるラット肝ガン細胞(dRLh84)の増殖抑制効果:ガン細胞の増殖に及ぼすペンタペプチドの抑制効果を次のようにして調べた。ガン細胞としては、比較的簡単に入手し易く、しかも細胞培養が容易であるラット肝ガン細胞(dRLh84)を用いた。本発明の生理活性物質(RF−NH)とガン細胞増殖の関係を明らかにするために、対照区として、細胞培地にPBS(−)を添加したもの、実験区として、細胞培地に上記C末端がアミド化されているタイプのRF−NHおよびC末端が遊離酸化されているRF−COOHを、それぞれ、200μg/ml添加したものを用いて培養を行った。培養細胞数を3〜5×10個に調整し、所定量の各ペプチドを添加しまたは添加しないで、5%COの存在下、37℃で培養した。培養後24時間後と48時間後の培養液について、ガン細胞の形態的な観察を倒立顕微鏡下で直接行った。この顕微鏡写真を図2に示す。
【0042】
図2に示したように、RF−NHを添加した実験区では、24時間後および48時間後とも、培養開始時点(0時間)の細胞数と比較しても増加はほとんどなく、しかも48時間後には細胞の形態が紡錘形から丸形に変化していた。このような細胞の形態変化は、細胞分裂活動の状態から分裂活動の停止状態へと変化したことを意味する。一方、対照区およびRF−COOHを添加した実験区では、24時間後および48時間後とも、培養開始時点の細胞数と比較して極めて顕著に増加していた。図2の結果は、本発明における生理活性物質を培養細胞に添加することによって、ラットのガン細胞の増殖が形態的に抑制されることを意味している。
(実施例2)ペンタペプチド濃度によるラット肝ガン細胞(dRLh84)の増殖抑制効果:
3×10個のdRLh84細胞に対し所定の濃度(0、50、100、200μg/ml)となるようにペプチド(DILRG−NHまたはDILRG−COOH)を細胞培地に添加し、5%CO存在下、37℃で40時間培養した。その後トリパンブルーで処理し生細胞数を計測した。得られた結果を図3に示す。
【0043】
図3に見るとおり、実験区のRF−COOHの場合、200μg/mlの高濃度でも生細胞数は14.6×10個のレベルで増殖活性にほとんど変化は認められない。しかし、 RF−NH添加区では、50μg/ml濃度から生細胞数は顕著に減少し、200μg/mlの高濃度では対照区の約半分の生細胞数に当たる7.7×10個のレベルまで減少した。図3から、実施例1において形態的に観察したRF−NHによるガン細胞増殖抑制が生細胞数の減少と符合することがわかる。また、本発明における生理活性物質でC末端をアミド化したペプチドには、顕著なガン細胞の増殖抑制効果があるが、C末端が遊離酸化されているタイプのペプチドにおいては抑制効果がまったく発現しなかったことがわかる。
(実施例3)ラット肝ガン細胞(dRLh84)増殖能力と培養時間との関係:
実施例1と2の結果から、昆虫の生理活性物質がラット肝ガン細胞の増殖を抑制することが明らかになったので、さらに、本発明の生理活性物質を用いガン細胞の増殖能力と培養時間との関係を検討するために、培養時間を延長して培養を行った。培養法としては、実施例2と同様の方法で行った。培養時間は72時間まで延長し、対照区としてはPBS(−)を使用し、また、実験区としては、3×10個の細胞に対し濃度が200μg/mlとなるようにペプチド(DILRG−NH)を細胞培地に添加し、5%CO存在下、37℃で24、48、72時間それぞれ培養した。その後、トリパンブルーで処理し生細胞数を計測した。得られた結果を図4に示す。
【0044】
図4に見るとおり、細胞数が、対照区では培養後72時間まで培養時間が増すに従って急激に増殖し、生細胞数が3×10個から60×10個まで20倍以上にも増大した。一方、実験区では72時間の間に細胞数が3×10個から8×10個と2.7倍の増加を示したに過ぎなかった。この結果は、本発明の生理活性物質がガン細胞増殖能力を7.5分の1レベルに抑制することを意味するものである。すなわち、本発明の生理活性物質は、ガン細胞増殖能を、かなりのレベルで抑制する効果を発揮していることが明らかである。
【0045】
次いで、上記ペプチド添加培地の培養後48時間の培養液から培養細胞だけを新鮮な培地に移し変えて、上記と同じ培養条件で培養し、その後のガン細胞の増殖量変化を調べた。その結果、増殖が一旦抑制されていたガン細胞は、対照区のPBS(−)添加の場合と同様に急速に増殖を開始した。従って、このことは、ガン細胞抑制のためには本発明のペプチドの存在が常時不可欠であること、さらに、このペプチドによりあらゆる生物の細胞増殖を可逆的に制御できることを示唆するものである。
(実施例4)ペプチド添加による細胞周期変化の解析:
実施例1、2、および3(図2、3、および4)により、本発明の生理活性物質がラットガン細胞の増殖能力を抑制することは実証できた。次に、その抑制のメカニズムを検討することにした。濃度が200μg/mlとなるようにペプチド(DILRG−NH)を実施例1と同じ条件で培地に添加して、培養し、48時間培養した細胞をエタノール固定後、ヨウ化プロピジウム染色を行った。また、対照区としてPBS(−)を添加したものについても同様に処理した。細胞のDNA含量をフローサイトメーターを用いて解析した。得られた結果を図5に示す。なお、この目的のために、フローサイトメトリー解析を使用するが、この方法は、DNA結合性の蛍光色素であるヨウ化プロジウムで染色して、DNA含量を測定するものであり、細胞周期制御の解析が可能となる。すなわち、生物細胞は分裂しながらG0/G1、S(DNA複製期)、そしてM期(細胞分裂期)へと周期変化を起こしながら増殖するが、図5は個々のガン細胞のDNA量をフローサイトメーターを用いて測定し、解析したものである。図5に示したように、PBS(−)添加の対照区(図5(A))とRF−NH添加の実験区(図5(B))における細胞周期変化によれば、ペプチド添加および無添加により、ラット肝ガン細胞周期への影響パターンが異なることが推測された。
【0046】
次ぎに、図5で見られたパターンを詳細に計測した。G0/G1期では、DNA量は2nであるのに対し、M期では2倍の4nとなる。図5の解析で2nのDNA量は360に、そして4nのDNAはDNA量は700に対応したピークまたは幅広いピークに対応する。図5に示す細胞周期変化の解析パターンがG0/G1、S、M期に特色のあるピークの線型結合からなると仮定し、それぞれの成分に分割することにより各ステージの細胞の割合が求められる。得られた結果を表1に掲げる。
【0047】
【表1】
Figure 0003579711
【0048】
表1に示したように、細胞周期ステージのG2(有糸分裂準備期)とM期(細胞分裂期)(表中では、G2/M期に符合)の細胞割合は、対照区が11.92%、実験区が12.10%であり、両者ともほとんど変わらないが、G0期(静止期)とG1期(DNA複製決定期)(表中では、G0/G1期と符合)の細胞割合は、対照区が50.53%であるのに対し、実験区が66.07%であり、対照区より3割以上多かった。また、S期(DNA複製期)の場合は逆に、対照区の37.55%に対し、実験区は21.84%であり、対照区より4割以上少なかった。従って、この結果は、本発明の生理活性物質が細胞周期のG0とG1の両ステージを増大させるように作用し、それによってS期が少なくなり、生細胞数の増殖が抑制されたことを実証するものである。
(実施例5)本発明の生理活性物質の構造と細胞増殖抑制効果の関係:
実施例1、2、および3の結果から、昆虫の生理活性物質がラット肝ガン細胞に対して増殖抑制効果を有すること明らかにすることができた。さらに、実施例4の結果から、そのメカニズムとして細胞周期を制御することで細胞増殖の抑制を発現することを示すことができた。そこで、この物質の5個のアミノ酸配列のどの部分が構造的に不可欠であるか検討することにした。培養法としては、実施例1と同様の方法で行ったが、対照区としては、PBS(−)と、棘皮動物から昆虫および哺乳類までにわたって広範に存在する4個のアミノ酸から構成され、C末端がアミド化されているFMRF−NHとをそれぞれ使用した。実験区としては、2.6×10個の細胞に対して濃度が200μg/mlとなるように完全合成ペプチド(DILRG−NH)またはN末端のアスパラギン酸を欠いた不完全合成ペプチド(ILRG−NH)を細胞培地に添加したものを使用した。対照区と実験区のそれぞれについて、5%CO存在下、37℃で48時間培養した。その後、トリパンブルーで処理し生細胞数を計測した。得られた結果を図6に示す。
【0049】
図6に示したように、対照区のPBS(−)やFMRF−NHでは、生細胞数は19.1〜19.7×10個のレベルであり、完全合成ペプチドの場合には7.7×10個であり、細胞数で1桁異なる増殖抑制が確認された。しかし、N末端を欠いた不完全合成ペプチドの場合には8.4×10個と完全合成ペプチドよりはやや増殖細胞数が多いが、十分な増殖抑制効果が認められた。従って、増殖抑制効果を発現するペプチドとしては、C末端がアミド化されていると共に、休眠制御物質のN末端のアスパラギン酸を欠いたILRGでも効果的であることを明らかにすることができた。この結果は、4個から5個のアミノ酸配列をリード化合物としながら将来強力な細胞増殖抑制剤を開発するためにも重要な情報となり得る。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、有効成分としての生理活性物質であるペプチドは、5個のアミノ酸からなるペンタペプチド(分子量570.595)、又は4個のアミノ酸からなるペプチド(分子量456.58)であるため、生体に投与しても抗原抗体反応が起こり難く、しかも抗ガン活性という特異的な機能を有している。このペプチドそのままでも種々の動物に直接投与できる。ヒトだけでなく、家畜等の高等動物においても、本ペプチドのように短い低分子のペプチドは抗原とはなり難いので、該ペプチドの生体外からの投与によって、抗ガン機能を発揮させることができるという利点を持っている。さらに本発明におけるペプチドは、抗原抗体反応を起こすことのない細胞増殖抑制効果のある新しい医薬剤となり得る。本発明における遺伝子Any−RFを有する低分子量のペプチドは、副作用を伴なわずに効率的にガン細胞の増殖を阻害する機能を持ち、ヒトの子宮ガン、肝臓ガン、肺ガン、胃ガン、乳ガン等の細胞増殖を効率的に抑制し、ひいては生体細胞の細胞制御を効率的に行うことができる。従来の抗ガン剤が持つ正常細胞への悪影響(細胞死)問題を解消し、静止期にある多くの正常細胞へは影響なく、増殖細胞だけを抑制するという優れた働きを持つ。
【0051】
蚕由来のセクロピンは分子量が約4kDa、モンシロチョウ由来のピエリシンは98kDaであるのに対し、本発明における生理活性物質は、0.571959kDaという低分子量であることから、前記二つのものと比較して、抗原抗体反応が起こり難いのであり、抗ガン剤開発のリード化合物としても有望なものである。しかも、ガン細胞の生細胞を増加させない機能を保つ(図2、図3、および図4)とともに、生存するガン細胞に対して、ガン細胞の周期ステージを変化させ、一旦休止状態にさせる点に大きな特徴がある。この点において従来の如何なる抗ガン剤の作用機序とも異なっており、医薬品として実用化できる。すなわち、本発明の生理活性物質は、DNA複製期に相当するS期間を減少させ、静止期のG0ならびに第1期に符合するG1期を延長させる機能を持つ。かくして、本発明の生理活性物質はガン細胞の増殖を効率的に阻害する。
【0052】
これに対し、セクロピンにしろピエリシンにしろ、生細胞を減少せしめることによりガン細胞の増殖を抑制する機能を持ち、細胞死(アポトーシス)を引き起こすことによりガン細胞の増殖を阻害するに過ぎない。
【0053】
一般に、細胞周期においてはG0期とG1期が最も長い時間を要するといわれている。その両ステージを増大するように作用する本発明における生理活性物質は、従来報告されている昆虫由来のガン細胞抑制効果物質とは根本的に異なっている。従来のものはアポトーシス(細胞死)に伴う核の凝縮や断片化を誘導し、その結果、生細胞数を減少せしめるものである。しかし、本発明の生理活性物質の機能は、細胞周期のG0とG1を増大しS期を減少させ、その結果、生細胞の細胞周期が長時間となり、最終的には増殖抑制をすることにある。従って、本発明の生理活性物質は、ガン細胞増殖において細胞死を誘導するのではなく、細胞周期を制御し細胞の増殖を抑制することで細胞数が増えないように作用している。
【0054】
本発明の生理活性物質は、先願発明で述べたように、生理活性機能の一つとして、天蚕前幼虫の休眠を長く維持するように作用する。一般に生物の休眠とは、細胞の増殖が停止し低エネルギー状態を維持することが特徴と考えられている。従って、この物質の機能を多面的に応用する一例として、哺乳類のガン細胞増殖を制御する目的においても活用できる。さらに、多くの生物細胞の増殖を抑えると考えられるので、細胞レベル・個体レベルの長期保存剤としても利用できる。
【0055】
【配列表】
Figure 0003579711
Figure 0003579711

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における生理活性物質の単離、精製プロセスを示すフローシート。
【図2】DILRG−NHまたはDILRG−COOHによるラット肝ガン細胞(dRLh84)の形態学的変化と増殖抑制を示す顕微鏡写真。
【図3】DILRG−NHまたはDILRG−COOHによるラット肝ガン細胞(dRLh84)の増殖抑制効果を、濃度と生細胞数との関係で示すグラフ。
【図4】DILRG−NHまたはPBS(−)によるラット肝ガン細胞(dRLh84)の増殖抑制効果を、培養時間と生細胞数との関係で示すグラフ。
【図5】(A)PBS(−)を添加した場合のラット肝ガン細胞(dRLh84)の細胞周期変化を示すスペクトル(対照区)。
(B)RF−NHを添加した場合のラット肝ガン細胞(dRLh84)の細胞周期変化を示すスペクトル(実験区)。
【図6】DILRG−NHによるラット肝がん細胞(dRLh84)の増殖抑制効果を、他の物質による増殖抑制効果と比較して示すグラフ。

Claims (5)

  1. 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列、Asp-Ile-Leu-Arg-Glyを有し、C末端がアミド化されており、分子量が570.959であるペプチドを有効成分として含有することを特徴とするガン細胞増殖抑制剤
  2. 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列、 Asp-Ile-Leu-Arg-Gly を有し、C末端がアミド化されており、分子量が570.959であるペプチドを有効成分として含有し、このペプチドが生体細胞の細胞周期を制御し、ガン細胞の増殖を抑制することを特徴とするガン細胞増殖抑制剤
  3. 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からN末端の Asp を欠いたアミノ酸配列、 Ile-Leu-Arg-Gly を有し、C末端がアミド化されており、分子量が456.58であるペプチドを有効成分として含有することを特徴とするガン細胞増殖抑制剤
  4. 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からN末端のAspを欠いたアミノ酸配列、Ile-Leu-Arg-Glyを有し、C末端がアミド化されており、分子量が456.58であるペプチドを有効成分として含有し、このペプチドが生体細胞の細胞周期を制御し、ガン細胞の増殖を抑制することを特徴とするガン細胞増殖抑制剤
  5. 前記ペプチドが天蚕の前幼虫由来のものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガン細胞増殖抑制剤
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Seong et al. Analysis of transgenic silkworms producing insulin-like growth factor-I in Bombyx mori

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