JP3579054B2 - ミスト低減性オーブン洗浄剤 - Google Patents

Description

発明の分野
この発明は、調理ユニットから頑固な汚れを除去するのに使用できる水性アルカリ性洗浄剤、および床や壁部のような硬質表面の汚れの除去に使用できる水性酸性洗浄剤に関する。特に本発明は、調理ユニット、例えばガスもしくは電気で加熱されるオーブン、電子レンジおよびトースターオーブン等に付着する頑固な汚れにエーロゾルもしくはポンプスプレーの形態で適用できる水性アルカリ性組成物に関する。「オーブン」という用語には、オーブン、深い揚げ鍋、グリルおよびフードが含まれる。
発明の背景
酸性またはアルカリ性の硬質表面用洗浄組成物は一般家庭や各種施設における種々の表面に付着する頑固な汚れを除去するために多年にわたって使用されている。この種の汚れには無機質の汚れのほか、有機質、例えば脂肪、油、タンパク質および炭水化物等に由来する汚れが含まれており、これらの汚れは種々の表面、例えばセラミック表面、ステンレススチール表面、コンクリート表面、タイル表面および調理用金属表面に堆積する。一般的な無機固形分には水道水の硬度成分に起因する不溶性物質、即ち、実質上不溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等が含まれる。この種の無機塩類は、除去困難な多量の汚れ堆積物を形成する有機残渣と結合する場合がある。このような汚れは見苦しいだけでなく、黒焦げまたは焼けついた残渣の大きな堆積物になるか、または広範囲にわたって不溶性のセッケンスカム（soap scum）もしくは硬い堆積物を形成する。このような汚れは、特定の環境下においては食品または汚染されやすい物質や表面を汚染する微生物の増殖を促進する。
多種多様な表面上に一般的に存在する有機物を主体とする頑固な汚れもしくは有機物／無機物を主体とする頑固な汚れを除去するために多数の洗浄剤組成物が開発されている。特に有用なものの一つとして、加圧エーロゾル装置またはポンプスプレー装置から送出される水性のアルカリ性洗浄剤が挙げられる。この種の洗浄剤は多種多様な表面を洗浄するのに非常に有用である。何故ならば、該噴霧型液状洗浄剤をスプレーを用いて直立表面、頭上の表面、傾斜表面または複雑な曲面もしくは入り組んだ面を有する表面へ送給してこれらの表面を該洗浄剤で実質上完全に被覆することができるからである。塩基性の無機質汚れを除去するための噴霧型の酸性洗浄剤も知られており、一般的に使用されるようになっている。
この種の噴霧型洗浄剤を用いる場合の重要な問題は、噴霧過程中に発生する微細なエーロゾルと空中浮遊ミストに関するものである。水性液は噴射作用またはポンプ作用によって噴霧に変換されるが、該噴霧には微細なエーロゾルまたはミストが随伴する。送出された噴霧は被処理表面上に到達して該表面上に残留するが、エーロゾルは大気中に浮遊する。
強酸性または強塩基性の洗浄成分を含有する微細なエーロゾルまたはミスト形態のこの種の水性組成物はユーザーに呼吸器疾患をもたらす。一般的な噴霧型洗浄剤によって発生する刺激性エーロゾルに接触する大部分の人々は、この種の微細なエーロゾルまたはミストを吸い込むと非常に激しく抑えきれない息詰まり反応を示す。このような息詰まり反応は洗浄剤の種々の利用分野においてその洗浄効率を低減させ、刺激に対して敏感な人の場合には、喘息の発作、呼吸器損傷またはその他の不快な障害や損傷をもたらす。
この息詰まり反応をある程度軽減させるために強アルカリ性または強酸性洗浄成分の配合量を少なくした製品も提供されている。また、強苛性アルカリを弱アルカリ性塩基、例えば重炭酸塩等あるいは溶剤類で置き換える試みもなされている。洗浄成分のこのような低濃度化または置換により、洗浄剤の使用時の洗浄活性や洗浄効率が低下する場合が多い。
クロッティ（Crotty）らによる米国特許第3,664,210号明細書には、焦げて焼きついた食品や油脂を調理用器具類表面から除去するのに有効なアルカリ性洗浄であって、アルカリ金属水酸化物を主成分として洗浄用水性基剤中に含有する洗浄が開示されている。アイゼン（Eisen）による米国特許第3,779,933号明細書には、クレーと有機増粘剤を含有する水性のアルカリ金属洗浄組成物が記載されている。ムカイ（Mukai）らによる米国特許第3,813,343号明細書には、アミンもしくはアンモニアとジメチルスルホキシド溶剤を含有するオーブン洗浄剤組成物およびその他の組成物が教示されている。ワイズ（Wise）らによる米国特許第3,829,387号明細書には、水酸化ナトリウム、クレー増粘剤および溶剤を主成分として水性基剤中に含有する洗浄用苛性アルカリ組成物が開示されている。ジラーストーン（Dillarstone）らによる米国特許第4,214,915号明細書およびカナダ国特許第1,523,491号明細書には、水性洗浄剤中に塩基として炭酸ナトリウム重炭酸ナトリウムを配合したオーブン洗浄剤組成物が開示されている。カルショー（Culshaw）による米国特許第4,676,920号明細書には、界面活性剤、研磨剤および溶剤を含有する汚れ除去用粘性研磨組成物が記載されている。デ・ブッザカリニ（De Buzzaccarini）による米国特許第4,767,563号明細書には、硬質表面上の汚れ除去用組成物であって、溶剤、研磨剤および界面活性剤を含有する液状で研磨性のある洗浄剤組成物が開示されている。コックレル（Cockrell、Jr.）による米国特許第4,877,691号（国際出願PCT/US/91/05092号）明細書には、オーブンを前処理するための組成物であって、該組成物層上に形成される焼きついた硬質汚れの除去を容易にするための組成物が記載されている。ダイモンド（Dimond）らによるカナダ国特許第1,047,903号明細書には、実質的に水性の基剤中にベントナイト、増粘剤および少量の水酸化ナトリウムを含有するオーブン洗浄剤組成物が教示されている。ジルベスター（Silvester）によるカナダ国特許第1,211,674号明細書には、水性組成物中にアルカリとして重炭酸ナトリウムを、溶剤としてグリセロールを、また、増粘剤としてクレーを配合した改良されたオーブン洗浄剤が開示されている。さらに、フランネリー（Flannery）による英国特許第2,019,876号明細書には、重炭酸ナトリウムを含有するエーロゾルタイプのオーブン洗浄剤が記載されている。
酸性またはアルカリ性の硬質表面洗浄剤、特にアルカリ性のオーブン洗浄剤の改良を試みるに際して、従来技術が当業者に教示したところは、息詰まり反応を軽減させるためには水酸化ナトリウムの使用濃度を低減させる方向で実験することであった。弱アルカリ性洗浄剤の場合には、水酸化ナトリウムの代わりにアンモニアまたは有機塩基が使用されている。他の無機化合物、例えば、炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムも水酸化ナトリウムの代わりに使用されている。有機界面活性剤を含有する弱アルカリ性洗浄剤の洗剤特性を高めるために、溶剤として種々のグリコール類やエーテル類またはジメチルスルホキシドが用いられている。
上述のように、従来技術は息詰まり反応を軽減させるために水酸化ナトリウムの代替物の開発に終始していたのであり、従来の洗浄剤によってもたらされる息詰まり反応がエーロゾルの粒径に関係しているということは全く認識していなかった。このため、エーロゾルの粒径を調整するような配合処方によって呼吸器疾患や息詰まり反応を低減させようとする試みは従来は全くなされていなかったのである。
発明の概要
本発明は次のことを究明した。即ち、噴霧されたときに平均粒径が約170μｍ以上、好ましくは約200μｍ以上の空中浮遊エーロゾルまたはミストが形成されるように強酸性または強塩基性の噴霧型の水性洗浄剤組成物を配合処方することによって、この種の洗浄剤組成物による息詰まり性をなくすことができる。本発明による組成物は微細なエーロゾルはほとんどまたは全く発生させない。平均粒径が200μｍより大きな空中浮遊エーロゾル微粒子の濃度は呼吸器障害をもたらすには十分な濃度ではない。噴霧ノズルのなかには、微粒子状の空中浮遊エーロゾルを比較的多量に発生させるものもある。液状組成物の大部分は、被処理表面と接触して該表面上に残留する広範囲にわたる吹付堆積物として存在し、該液状組成物のほんの一部が空中に浮遊するエーロゾルまたはミストになる。このようなエーロゾルまたはミストの粒径は、前述のように、噴霧作用中に形成されるミストに関するものであり、被処理表面上に接触残留する吹付堆積物に関するものではない。噴霧操作中に形成される噴霧パターンには粒径が小さなものから大きなものにわたる一連の噴霧粒子が含まれており、これらの噴霧粒子は空中には浮遊せず、被処理表面上へ直接移動して該表面上に残留する。本発明においては、被処理表面上に残留する噴霧物は問題としない。本発明において何よりもまず問題となるのは、微粒子状のエーロゾルまたはミストの形態を有し噴霧後少なくとも５秒間、一般的には30秒間〜10分間にわたって空中を浮遊または浮動する噴霧物である。
本発明による改良された組成物は強酸または強塩基、有機界面活性剤、有機ポリマー増粘剤および種々の他の有用な任意成分を含む水性物質を含有する。本発明による洗浄剤は、一般的に入手し得る耐圧容器、エーロゾルバルブおよびエーロゾル噴射剤を用いて加圧エーロゾル噴霧ユニットに充填することができる。本発明による洗浄剤は、ポンプ噴霧ヘッドと適当な容器を用いるポンプ噴霧フォーマットとして使用することもできる。本発明による洗浄剤は一般的には、頑固な無機質および／または有機質の汚れが付着した硬質表面に適用される。この種の汚れには焼けつくか、または炭化した食物残渣が含まれる。水道水に含まれる実質上不溶性の硬度成分に起因する汚れが付着した他の表面も適用対象となる。本発明による改良された洗浄用組成物は増粘剤と共に洗浄性成分を特有の配合処方で併有するので、この種の汚れを速やかに除去する。しかもこの場合、呼吸器疾患をもたらすようなミストやエーロゾルが使用中に形成されることはない。この出願において、「エーロゾル」および「ミスト」という用語は、洗浄現場を包囲する大気中に少なくとも５秒間（一般的には30秒間〜10分間）浮遊もしくは分散できる洗浄用組成物を含む微粒子の空中浮遊分散系を意味する。この種のミストの吸入によって引き起こされる呼吸器疾患または無意識的な息詰まり反応は、洗浄性成分の刺激能に応じて、エーロゾルまたはミストの粒径に反比例することが判明した。刺激性が強い強酸性物質または強塩基性物質の刺激性は、平均粒径が約200μｍ以下になると増大し、また、刺激性の少ない成分は、平均粒径が約170μｍ以下になると刺激性がより高くなることも判明した。しかしながら、噴霧可能な組成物は、噴霧によって生成するエーロゾルまたはミストの平均粒径が200μｍ、好ましくは210μｍ以上に保持されると、その刺激性は悪くとも穏やかなものとなる。
発明の詳細な説明
本発明による噴霧可能な水性洗浄剤組成物は一般的には強酸または強塩基と共に、有機界面活性剤および有効な有機増粘剤を含有するが、さらに所望により以下に例示する種々の他の任意成分を含有していてもよい。
強塩基
本発明による液状の水性洗浄剤組成物は強塩基性物質または有機もしくは無機のアルカリ源を含有する。本発明においては、塩基性物としても知られているアルカリ源は、水性系に添加したときに系のpHを約７よりも大きくするような組成物である。有機アルカリ源としては含窒素強塩基、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリプロパノールアミン等を用いる場合が多い。液状のモノアルカノールアミン化合物を用いる一つの利点はこれら化合物の溶剤特性に関する。十分な量のモノエタノールアミンやモノプロパノールアミン等を用いることによって十分なアルカリ性が得られるだけでなく、本発明において用いる他の成分と相俟った十分な溶解力が得られる。アルカリ源は無機アルカリを含有していてもよい。本発明による噴霧型の洗浄剤に配合する無機アルカリ成分は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから誘導するのが好ましく、これらの水酸化物は液状（約10〜60重量％水溶液）または固体状（粉末、フレークまたはペレット）のいずれの形態で用いてもよい。好ましい形態のアルカリ金属塩基としては、約50重量％の水酸化ナトリウム水溶液または種々の粒径や形状を有する固体状のものが市販されている。その他の無機アルカリ源としては可溶性珪酸塩（例えば、メタ珪酸ナトリウム）および可溶性燐酸塩等が例示されている。
強塩基は組成物中に約１〜約20重量％（強塩基がアルカリ金属水酸化物の場合）または約１〜約15重量％（強塩基が、（ｉ）アルカリ金属水酸化物および（ii）モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたはこれらの混合物を含む有機塩基との混合物を含む場合）含まれていてもよい。強塩基は前述の有機塩基、アルカリ金属水酸化物のような無機塩基またはこれらの任意の混合物を含んでいてもよい。このような混合物を用いる場合、アルカリ金属水酸化物と有機塩基の使用割合は、例えば、後者１重量部あたり前者約１〜約10重量部にしてもよく、また、アルカリ金属水酸化物とモノエタノールアミンとの使用割合は、例えば、後者１重量部あたり前者約１〜５重量部にしてもよい。
強酸
本発明による水性洗浄剤組成物は一次洗浄剤として、一般的には強酸または強酸と弱酸である酸性成分を含有し、酸性成分が強酸の場合、該組成物は強酸を約１〜20重量％含有する。本発明において酸性物質は水性系へ添加されて該系のpHを約７よりも小さくする成分である。本発明による水性洗浄剤に配合できる強酸としては、水溶液中で実質的解離するもの、例えば、塩酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸および硝酸等が挙げられる。有機または無機の弱酸も本発明による酸性洗浄剤の成分として用いてもよい。弱酸は、これを本発明による洗浄剤組成物を調製するのに有効な濃度範囲内において室温で水中に溶解させたときに、酸カチオンからのプロトンの一次解離段階が実質的に完結しないような酸である。このような無機酸は弱電解質とも呼ばれている。このような用語はコルトッフ（I.M.Koltoff）らによる教科書「定量無機分析」［マクミラン社発行（1952年、第３版）、第34頁〜第37頁］において用いられている。最も一般的に市販されている有機または無機の弱酸は本発明において使用できる。このような有機または無機の弱酸としては、燐酸、スルファミン酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、クエン酸、安息香酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸およびフマル酸等が例示される。用途によっては、強酸と弱酸との混合物または弱有機酸と弱無機酸を強酸と混合した混合物を用いることによって洗浄効率が驚くほど高くなることが判明した。この種の酸性洗浄剤は塩基性の有機質汚れや無機質汚れの洗浄に最も有効である。酸性洗浄剤を用いて洗浄される最も一般的な汚れには、洗浄用組成物によって沈澱する水道水中の硬度成分に起因する汚れおよびカルシウム、マグネシウム、鉄およびマンガン等の硬度成分の存在下で沈澱する食物に起因する汚れ等が例示される。このような汚れには、乳製品残渣、セッケンスカム、ケン化脂肪酸または水道水中の二価硬度成分と結合して沈澱物または汚れを形成する他の溶解性が不十分な有機アニオン種等が含まれる。
界面活性剤
本発明による水性洗浄剤組成物は有機界面活性剤成分を含有する。アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤または両性界面活性剤が使用できる。組成物中の界面活性剤の含有量は、アルカリ性組成物の場合、例えばアミンオキシドカチオン界面活性剤と両性界面活性剤を併用するときは、前者を約0.01〜約５重量％として後者を約0.018〜約５重量％とし、また、酸性組成物の場合は約１〜約20重量％（界面活性剤が有機界面活性剤の場合）にしてもよい。本発明による水性組成物に配合し得るアニオン界面活性剤は、大きな親油基と強アニオン基を有する界面活性剤である。この種のアニオン界面活性剤は一般的には、スルホン酸基、硫酸基、燐酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基から成る群から選択されるアニオン基を有しており、このようなアニオン基は中和されると、好ましくはアルカリ金属、アンモニウムおよびアルカノールアミン（例えば、ナトリウム、アンモニウムまたはトリエタノールアミン等）から成る群から選択されるカチオンを有するスルホネート、スルフェート、ホスフェートまたはカルボキシレートを生成する。有効なスルホネートまたはスルフェートアニオン界面活性剤としては次のものが例示される：アルキルベンゼンスルホネート、ナトリウムキシレンスルホネート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、線状ナトリウムトリデシルベンゼンスルホネート、カリウムオクチルデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムラウリルスルフェート、ナトリウムパルミチルスルフェート、ナトリウムココアルキルスルフェートおよびナトリウムオレフィンスルホネート。
ノニオン界面活性剤は水性媒体に溶解したときに電荷を有さない。ノニオン界面活性剤の親水性は水分子との水素結合によって付与される。このようなノニオン界面活性剤は一般的には疎水性部分と結合したポリオキシエチレン基の大きなセグメントを有する分子またはポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンのセグメントを有する化合物である。ポリオキシエチレン界面活性剤は一般的には、脂肪族アルコール、アルキルフェノールおよび脂肪酸の塩基触媒の存在下でのエトキシル化によって製造される。ポリオキシエチレンブロックコポリマーは一般的には、プロピレンオキシドの大きなセグメントと結合したエチレンオキシドの大きなセグメントを有する分子である。このようなノニオン界面活性剤は当該分野においては周知である。
親油性部分およびアミノ基もしくは第四含窒素基を有するカチオン基は界面活性剤分子に界面活性剤特性を付与する。カチオン界面活性剤はその名称が含意するように、含窒素親水性部分は水性媒体中で解離すると正に荷電する。可溶性の界面活性剤分子の場合、低分子量アルキル基またはヒドロキシアルキル基を導入することによってその溶解性やその他の界面活性特性を高めることができる。カチオン界面活性剤は本発明による酸性または塩基性の組成物中に配合することができる。一群の好ましい界面活性剤は含酸素アミン化合物、例えばアミンオキシド等である。好ましい一群のカチオン界面活性剤には第三アミンオキシド界面活性剤が含まれる。第三アミンオキシド界面活性剤は一般的にはアミンオキシド（Ｎ→Ｏ）に結合した３個のアルキル基を有する。通常は、アルキル基は２個の低級（C_1-4）アルキル基と１個の高級（C_6-24）アルキル基を含むか、あるいは、２個の高級アルキル基と１個の低級アルキル基を含む。さらに、このような低級アルキル基は親水性基、例えば、ヒドロキシル基、アミン基またはカルボキシル基等によって置換されたアルキル基を含んでいてもよい。本発明に用いるのに好ましいアミンオキシドとしてはジメチルセチルアミンオキシド、ジメチルラウリルアミンオキシド、ジメチルミリスチルアミンオキシド、ジメチルステアリルアミンオキシド、ジエチルココアミンオキシド、ジメチルデシルアミンオキシドおよびこれらの任意の混合物が例示される。
両性界面活性剤も本発明においては有用である。両性界面活性剤はその分子構造中に酸性の親水性部分と塩基性の親水性部分を有する。これらのイオン性官能基はアニオン界面活性剤またはカチオン界面活性剤に関して先に例示したアニオン基またはカチオン基のいずれであってもよい。手短に言えば、アニオン基にはカルボキシレート基、スルフェート基、スルホネート基およびホスホネート基等が含まれ、一方、カチオン基としては一般的にはアミン窒素含有基が例示される。多くの両性界面活性剤は親水性を高めるエーテルオキシドまたはヒドロキシル基を有する。本発明において用いるのに好ましい両性界面活性剤には、カチオン性アミノ基とアニオン性カルボキシレート基またはスルフェート基を併有する両性界面活性剤が含まれる。有用な界面活性剤としては、スルホベタイン、Ｎ−ココ3,3−アミノプロピオン酸およびそのナトリウム塩、ｎ−タロー−３−アミノ−ジプロピオン酸二ナトリウム塩、1,1−ビス（カルボキシメチル）−２−ウンデシル−２−イミダゾリニウムヒドロキシド二ナトリウム塩、ココアミノ酪酸、ココアミノプロピオン酸、ココアミドカルボキシグリシネートおよびココベタイン等が例示される。本発明による組成物に配合するのに好適な両性界面活性剤にはココアミドプロピルベタインおよびココアミノエチルベタインが含まれる。
相溶性水性溶剤
本発明による洗浄剤には相溶性溶剤を配合することができる。適当な溶剤は、本発明による使用濃度で調製される洗浄用水性組成物に可溶性である。好ましい可溶性溶剤としては低級アルカノール、低級アルキルエーテルおよび低級アルキルグリコールエーテル等が例示される。このような成分は穏やかで快いにおいのある無色の液体で、優れた溶剤およびカップリング剤であって、一般的には本発明による洗浄用水性組成物と混和する。この種の有用な溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよび混合エチレン−プロピレングリコールエーテル等が例示される。グリコールエーテルには低級アルキル（C_1-8アルキル）エーテル、たとえば、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテル等が含まれる。洗浄剤の溶解力はモノアルカノールアミンを用いることによって高められる。
増粘剤または粘度調製剤
本発明による組成物には、該組成物に揺変性（チキソトロープ性）、即ち、非撹乱状態（剪断モード）において高粘度を保持するが、剪断力を印加すると粘度が実質状可逆的に低減し、剪断作用がなくなると元の粘度に復帰する性質を付与する成分の存在を必要とする。該組成物はこのような特性を有するために、スプレーヘッドを通して使用に供することができる。噴射剤の使用によってエーロゾル容器から噴霧される組成物は、噴射剤の圧力の影響下で送給管からエーロゾルのスプレーヘッド内へ圧送されるときに剪断作用を受けるか、またはポンプ作用スプレー内の組成物にはポンプ作用による剪断力が印加される。いずれの場合も、組成物の粘度は、汚染表面へ組成物を塗布するために用いる噴霧装置を使用して十分な量の組成物が塗布できる程度まで低下させなければならない。しかしながら、汚染表面上に塗布された組成物の粘度は、該組成物が該汚染表面上に保持されるのに十分高い粘度でなければならない。好ましくは、洗浄性成分が被処理表面上に十分な濃度で供給されると硬化した汚れまたは焼けついた汚れの剥離除去を可能にするのに十分な量の塗布層が形成されるように組成物を該表面上に塗布する。垂直表面上または傾斜表面上の汚れと組成物が接触している間は、増粘剤は組成物中の他の成分と共に、該組成物の重力による滴下、落下またはその他の運動を妨げる。組成物の配合処方は、組成物の粘度が十分な量の組成物皮膜と汚れが少なくとも１分間、好ましくは５分間もしくはそれ以上の時間にわたって接触するのに十分な粘度になるようにしておこなう。
当該分野においては種々の有機増粘剤が周知である。本発明に用いるのに好ましい増粘剤は動植物源から誘導される天然ポリマーまたはガムである。この種の増粘剤は多くの場合、十分な増粘能を有する大きな多糖分子である。
十分な溶解性を有する有機増粘剤、例えば有機ポリマー増粘剤等を用いて本発明による組成物に揺変性を付与してもよい。組成物中の有機増粘剤の一般的な含有量は、塩基性組成物の場合は約0.01〜約５重量％（有機増粘剤が有機ポリマー増粘剤の場合）または約0.01〜約２重量％（有機増粘剤が架橋キサンタン増粘剤の場合）であり、また、酸性組成物の場合は約0.01〜約10重量％（有機増粘剤がポリビニルアルコール増粘剤の場合）である。好ましい増粘剤は容易な除去を可能にするのに十分な水溶性を有するものである。本発明による水性組成物に配合する可溶性有機増粘剤としては次のものが例示される：カルボキシル化ビニルポリマー（例えば、ポリアクリル酸およびそのナトリウム塩）、ジエタノールアミド、ココ−ジエタノールアミド、ココ−モノエタノールアミド、ステアリック−ジエタノールアミド、エトキシル化セルロース、ヒドロキシエチルスチリルアミド、オレイック−ジエタノールアミド、ステアリック−モノエタノールアミド、セチルアルコールステロールアルコール、ポリアクリルアミド増粘剤、エタノールグリコールジステアレート、キサンタン組成物、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン生成物、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース並びに十分な水溶性を有する他の類似の水性増粘剤。本発明によるアルカリ性組成物に配合するのに好ましい増粘剤は、メルック（Merck）社のケルコ部門（Kelco Division）から次の商品名で販売されているキサンタン増粘剤である：「KELTROL」、「KELZAN AR」、「KELZAN D35」、「KELZAN Ｓ」および「KELZAN XZ」等。この種のキサンタンポリマーは高い水溶性と大きな増粘力を有するので好ましい。本発明による組成物は、水性洗浄剤または強くない水性洗浄剤組成物にキサンタン増粘剤を低濃度で配合することによって、十分な水溶性または水分散性を有する組成物として調製することができる。本発明による酸性組成物に配合するのに好ましい増粘剤には、ポリビニルアルコール増粘剤が含まれる。ポリビニルアルコール増粘剤としては、約20,000以上の分子量を有するポリビニルアルコールまたは約87％以上の加水分解度を有するポリビニルアルコールが挙げられる。最も好ましい増粘剤はOH官能基から98.5モル％以上のアセテートが脱離した完全加水分解ポリビニルアルコールである。無機のアルカリ性洗浄剤用の好ましい増粘剤にはキサンタンガム誘導体が含まれる。キサンタンはキサントモナス・カンペストラス（xanthomonas campestras）の細胞外の多糖である。キサンタンはコーンシュガーまたは他のコーンスイトナー副生成物の発酵によって調製される。キサンタンはポリベーター（１→４）−Ｄ−グルコピラノシル主鎖を有しており、該主鎖はセルロースの主鎖に類似する。キサンタンガムおよびその誘導体は新規で顕著なレオロジー特性を示す。低濃度のガムは比較的高い粘度を有しているので、経済的な利用が可能となる。キサンタンガム溶液は高い擬似塑性を示す。即ち、該溶液の広い濃度範囲にわたって、一般的には瞬間可逆的なものとして理解されている急激な剪断減粘（shear thinning）が発生する。非剪断物はpHや広範囲の温度に左右されない粘度を有する。好ましいキサンタンには架橋キサンタンが含まれる。キサンタンポリマーは大きな多糖分子のヒドロキシル官能基に対して反応性を有する既知の種々の共有結合的反応性架橋剤または２価、３価または多価金属イオンを用いて架橋することができる。このような架橋キサンタンゲルは米国特許第4,782,902号明細書に開示されており、該明細書の記載内容も本願明細書の一部を成すものである。適当なキサンタン用架橋剤には金属カチオン、例えば、Al³⁺、Fe³⁺、Sb³⁺、Zr⁴⁺および他の遷移金属カチオン等が含まれる。既知の有機架橋剤を用いてもよい。本発明において用いるのに好ましい架橋キサンタンはメルック社のケルコ部門から販売されている「KELZAN AR」である。「KELZAN AR」は、噴霧されたときに大きな粒径を有するミストまたはエーロゾルを発生する揺変性洗浄剤の調製を可能にする。
金属イオン封鎖剤
本発明による増粘組成物には１種または２種以上の有機または無機の金属イオン封鎖剤を配合することができる。使用し得る有機金属イオン封鎖剤としてはクエン酸、ニトリロ三酢酸（NTA）のアルカリ金属塩、EDTA、グルコン酸のアルカリ金属塩および高分子電解質（例えば、ポリアクリル酸）等が例示される。最も好ましい金属イオン封鎖剤はグルコン酸ナトリウムのような有機金属イオン封鎖剤であるが、これはこの種の金属イオン封鎖剤が配合する塩基と良好な相溶性を示すからである。
本発明による増粘洗浄用組成物には、金属イオン封鎖特性を有する水溶性の有機ホスホン酸を有効量配合することができる。この種の好ましいホスホン酸には、少なくとも１個はホスホン酸基である少なくとも２個のアニオン形成性基を有する低分子量化合物が含まれる。このような有用なホスホン酸としてはモノホスホン酸、ジホスホン酸、トリホスホン酸およびテトラホスホン酸等が例示されるが、これらのホスホン酸は、アルカリ性条件下でアニオンを形成し得る基、例えばカルボキシル基、ヒドロキシル基および基等を有していてもよい。特に好ましいホスホン酸は次式で表されるものである：
R₁N［CH₂PO₃H₂］_２
または
R₂C（PO₃H₂）₂OH
式中、R₁は−［（低級）アルキレン］Ｎ［CH₂PO₃H₂］_２または第三のCH₂PO₃H₂基を示し、R₂はC₁〜C₆アルキル基から成る群から選択される基を示す。
ホスホン酸は低分子量のホスホノポリカルボン酸、例えば、約２〜４個のカルボキシル基と約１〜３個のホスホン酸基を有するホスホノポリカルボン酸であってもよい。この種の酸としては、１−ホスホノ−１−メチルコハク酸、ホスホノコハク酸および２−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等が例示される。
その他の有機ホスホン酸としては次のものが例示される：
（ｉ）モンサント工業薬品会社（Monsanto Industrial Chemicals Co.）［セント・ルイス、ミズリー］から［Dequest（登録商標）2010］（50％水溶液）として市販されている１−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸［CH₃C（PO₃H₂）₂OH］、
（ii）モンサント工業薬品会社から［Dequest 2000］（50％水溶液）として市販されているアミノ［トリ（メチレンホスホン酸）］（Ｎ［CH₂PO₃H₂］_３）、
（iii）モンサント工業薬品会社から［Dequest 2041］（固形分90％の酸）として市販されているエチレンジアミン［テトラ（メチレン−ホスホン酸）］、および
（iv）モーベイ化学社（Mobay Chemical Corporation）の無機薬品部門（ピッツバーグ、ペンシルバニア）から［Bayhibit AM］（45〜50％水溶液）として市販されている２−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸。
上記のホスホン酸は水溶性の酸性塩（特に、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩）、アンモニウム塩または炭素原子数２〜３のアルキロール基を有するアルキロールアミン塩（例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩およびトリエタノールアミン塩）等として用いてもよい。所望により、上記のホスホン酸またはこれらの酸性塩等は任意の混合物として使用してもよい。その他の有用なホスホン酸は米国特許第4,051,058号明細書に記載されており、これらの記載内容も本願明細書の一部を成すものである。
本発明による組成物には、最終使用条件下での洗浄溶液を調整する水溶性アクリルポリマーを配合することができる。この種のポリマーとしてはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー、加水分解されたポリアクリルアミド、加水分解されたポリメタクリルアミド、加水分解されたアクリルアミド−メタクリルアミドコポリマー、加水分解されたポリアクリロニトリル、加水分解されたポリメタクリロニトリル、加水分解されたアクリロニトリル−メタクリロニトリルコポリマーおよびこれらの任意の混合物が例示される。これらのポリマーの水溶性の塩もしくは部分塩、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩のようなアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等を用いてもよい。この種のポリマーの重量平均分子量は約500〜約15,000、好ましくは750〜10,000である。好ましいこの種のポリマーとしては、1,000〜6,000の重量平均分子量を有するポリアクリル酸の部分ナトリウム塩およびナトリウムポリアクリレート等が例示される。これらのポリマーは市販されており、これらの調製法は当該分野においては周知である。
本発明による洗浄剤溶液に配合するのに有用な市販の水質調整用ポリアクリレート溶液としては次のものが例示される：
（ｉ）コロイズ社（Colloids,Inc.）［ニューアーク、ニュージャーシー］から（Colloid（登録商標）207」として市販されているナトリウムポリアクリレート溶液、
（ii）アルコ化学社（Alco Chemical Corp.）［チャタヌーガ、テネシー］から「Aquatreat（登録商標）AR−602−Ａ」として市販されているポリアクリル酸溶液、
（iii）グッドリッチ社（B.F.Goodrich Co.）から「Goodrite（登録商標）Ｋ−700トリーズ」として市販されているポリアクリル酸溶液（固形分50〜65％）およびナトリウムポリアクリレートの粉末（分子量2,100〜6,000）と溶液（固形分45％）、および
（iv）ローム・アンド・ハース社（Rohm and Haas）から「Acrysol（登録商標）」として市販されているポリアクリル酸のナトリウム塩または部分ナトリウム塩（分子量1000〜4500）の溶液。
本発明による洗浄用組成物には複合燐酸塩のような金属イオン封鎖剤、例えば、トリポリ燐酸ナトリウム、ヘキサメタ燐酸ナトリウムおよびこれらの混合物等を配合することもできる。硬度成分封鎖剤としての縮合燐酸ナトリウム等の燐酸塩は硬水軟化剤、洗浄剤および洗剤ビルダーとしても機能する。線状および環状の縮合燐酸のアルカリ金属（Ｍ）塩におけるM₂O:P₂O₅のモル比は一般に約1:1〜2:1またはこれよりも大きい。この種の代表的な好ましいポリ燐酸塩としてはトリポリ燐酸ナトリウム、ヘキサメタ燐酸ナトリウム、メタ燐酸ナトリウムおよびこれらに対応するカリウム塩並びにこれらの任意の混合物が例示される。上記の燐酸塩の粒径は特に限定的ではなく、微粉末状または粒状の市販品のいずれを用いてもよい。
トリポリ燐酸ナトリウムは入手が容易で、安価であり、また高い洗浄力を有するので無機の硬度成分封鎖剤として好ましいものである。トリポリ燐酸ナトリウムはカルシウムカチオンおよび／またはマグネシウムカチオンを封鎖して水を軟水にする。この燐酸塩は硬質表面からの汚れの除去に寄与し、汚れを懸濁液中に保持する。また、トリポリ燐酸ナトリウムは一般的な表面の材質をほとんど腐食せず、しかも他の水質調整剤に比べて安価である。トリポリ燐酸ナトリウムの水に対する溶解度は比較的低いので（約14重量％）、その濃度は溶解度以外の方法によって高めなければならない。この種の燐酸塩の代表的なものとしてはアルカリ性の縮合燐酸塩（即ち、ポリ燐酸塩）、例えば、ピロ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸カリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、トリポリ燐酸カリウム、ヘキサメタ燐酸ナトリウムおよびヘキサメタ燐酸カリウム等が挙げられる。
金属保護剤
本発明による組成物には含鉄金属の腐食を防止する金属保護剤を配合することができる。この種の金属保護剤としてはグルコン酸ナトリウムおよびナトリウムグルコヘプトネート等が例示される。組成物中の金属保護剤の含有量は約0.01〜約５重量％である。
前述の成分のほかに、本発明による組成物には、硬質表面を洗浄するためのアジュバントを配合してもよい。このようなアジュバントとしては発泡促進剤、発泡抑制剤（必要に応じて用いる）、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、香料、着色剤、真珠光沢付与剤、ビルダー塩、補助溶剤およびその他の周知の有用なアジュバント等が例示される。
本発明による組成物は一般的には加圧エーロゾルスプレーまたはエーロゾルポンプスプレーを用いて汚れた表面上に塗布される。加圧エーロゾル方式の場合、本発明による組成物はエーロゾル噴射剤と共に金属製高圧容器内に充填する。一般的な噴射剤としては低級アルカン類（例えば、プロパンやブタン）、亜酸化窒素、二酸化炭素および種々のフルオロカーボン類が例示される。加圧エーロゾル容器は一般的にはスプレーヘッド、バルブおよび浸漬管を具備しており、該浸漬管が容器の反対側の端部まで延びているので、容器中の全内容物は噴射剤の作用によって使用に供される。バルブが開放されると（減圧下）、液状内容物は噴射剤の圧力によって浸漬管を経てエーロゾルのスプレーヘッドまで圧送され、スプレーヘッドの出口に達すると、汚染表面に向けられたエーロゾルバルブの形態に応じた噴霧パターンを形成する。エーロゾル容器、浸漬管、噴射剤およびスプレーバルブは周知であり、市販されている。ポンプスプレー装置は一般に容器、スプレーヘッド、バルブ、ポンプおよび浸漬管を具備する。ポンプの作動により、本発明による組成物が充填されたシリンダー内においてピストンが運動する。このピストンの運動により、該組成物はエーロゾルバルブを経て汚染表面へ向けて噴霧され、該表面上に付着する。ピストンが最大工程に達すると、ピストンはスプリングの作用によって元の位置へ復帰するが、ピストンのこの運動により、バルブの開口部を経て追加量の噴霧用組成物がシリンダー内へ充填される。ピストンがシリンダー内を再び移動するとバルブが閉鎖し、シリンダー内からの液状組成物の流出は防止される。このポンプスプレーによって、十分な量の組成物が汚染表面上に送給される。
本発明による組成物は、一般的に入手し得る容器と混合装置を使用して前述の各種成分を混合することによって調製される。本発明による組成物の好ましい調製法は、撹拌式製造容器内へ所定量の脱イオン水を導入し、次いで、本発明による組成物に揺変性を付与する有機増粘剤を導入して該増粘剤を完全に溶解させた後、他の成分を任意の順序で添加して調製する方法である。
以下の実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明の最良の実施態様を含む。
実 施 例
A.洗浄力
以下の配合組成物の洗浄力をフード・グリル汚れ試験またはクリスコ（Crisco）試験によって調べた。
フード・グリル汚れ試験
この試験は、施設用のフード、オーブンおよびグリルから重合化油を除去する洗浄剤の洗浄力を調べる摸擬試験である。
コーンオイル［マゾラ（Mazola）社製］2.5gをステンレス鋼製シート（35.5cm×35.5cm;14インチ×14インチ）上に均一に塗布する。このシートを200℃で３時間加熱する。この加熱処理により、コーンオイルは重合して頑固なワニス様の黄色膜になる。
組成物の洗浄力は標準的な配合組成物と比較して測定する。被験組成物または標準組成物をスポイトを用いて重合化膜上に1g載せる。この操作は室温でおこなう。組成物による膜の弛みに要する時間を測定する。「膜の弛み」は、膜にしわが寄り、ステンレス鋼製シート表面から膜が水道水によって除去されるようになるまで膨れ上がることを意味する。
クリスコ試験
この試験は、施設用キッチンの硬質表面から付着直後の重合化していない油脂を除去する洗浄剤の洗浄力を調べる摸擬試験である。純植物性ショートニング（クリスコ社製）1gを実験室用フードのガラス戸（25.5cm×25.5cm;10インチ×10インチ）上に均一に塗布する。
組成物の洗浄力は標準的な組成物と比較して測定する。被験組成物はアッファ・スプレー（Affa Sprayer）No.5910BAを用いて汚れ上に噴霧した。５台のスプレーを「ドミノ」方式で使用する。５台目のスプレーからの噴霧が終了後、組成物を汚れと１分間接触させ、次いで払拭する。汚れの払拭はスコット（Scott）社製の実験室用ソフト・コート・ワイプ（Soft Cote Wipe）を用いる。払拭後、硬質表面への噴霧をさらに一回おこない、次いで新しいワイプを用いて該表面を払拭する。洗浄剤の効力は最初の噴霧と各々の払拭から１分以内に測定する。満足すべき組成物はこの１分以内に汚れを乳化させて遊離させ、払拭後には硬質表面上に油脂を残存させないものであり、特に、２回目の払拭後の表面を清浄化し、汚れの筋を残さないような組成物である。
実施例１
撹拌装置を備えた適当な大きさの金属製容器内に脱イオン水3071.4g入れた。メルック社のケルコ部門の市販品である架橋キサンタンガム「KELZAN AR」7.57gを該容器内の水に撹拌下で添加した。均一な「KELZAN AR」溶液が形成された後、水酸化ナトリウムの50重量％水溶液340.65gを上記の増粘水中にゆっくりと添加し、次いで、ココアミドプロピル−ベタイン（30％）75.7gおよびナトリウムラウリルエーテルスルホネート（60重量％水溶液）18.92gを添加した。溶液が均一になるまで撹拌した後、グルコン酸ナトリウム60.56gを添加し、次いでC_10-12アルキルジメチルアミンオキシド（30％）18.9gを加え、さらに、ｄ−リモネン香料5.67gおよびブチルセロソルブ185.46gを添加した。得られた溶液に混合染料0.12gを添加した。
得られた組成物（Ｉ）の洗浄力を一般的な脂肪性汚れの除去について調べた。ガラス表面上の10インチ×10インチ（25.5cm×25.5cm）の領域にクリスコ社製のショートニング1gを塗布した。組成物（Ｉ）を50重量％に希釈した後、ショートニングの上記塗布部に噴霧したところ、該汚れは除去され、ガラス表面は清浄化された。この組成物を前述のフード・グリル汚れ試験に供したところ、該汚れは３分25秒間で100％除去された。組成物（Ｉ）は未希釈の場合も、50重量％に希釈した場合も、噴霧時に息を詰まらせるようなミストは発生しなかった。本発明による組成物の噴霧試験においては、スプレーヘッドとしてはアッファスプレーNo.5910BAを用いた。このスプレーヘッドを選択した理由は、強アルカリ性または強酸性の洗浄用組成物を該スプレーヘッドから噴霧したときに最も刺激性の強い噴霧物が発生することが知られているからである。このスプレーヘッドを用いて得られる刺激性のミストまたはエーロゾルの低減化は、一層悪い条件下においても該組成物が刺激性のミストまたはエーロゾルの発生量を低減させるという重要な証拠である。
実施例２
実施例１の手順に準拠し、以下の配合処方によって３種の組成物を調製した。

組成物2Bを50重量％に希釈した試料をクリスコ試験に供したところ、100％の洗浄力を示した。
また、組成物2Bと2Cをフード・グリル汚れ試験に供したところ、次の結果が得られた。

実施例１および２で得られたデータは、本発明による組成物の洗浄力を例証するものである。クリスコ試験およびフード・グリル汚れ試験のいずれにおいても、調理環境下において一般的に問題となる汚れは本発明による洗浄用組成物を用いることによって実質上完全に迅速に除去された。ミストの発生量を低減させる本発明による組成物は洗浄力の低下をもたらすことなく、呼吸器に対する適合性を改良する。
B.苛性アルカリ性組成物の粒径分析と表面張力
粒径分析用組成物をエーロゾルスプレー（アッファスプレー、No.5910BA）を用いてマルベルン機器社（Malvern Instruments）製粒径測定器（INDP型）内へ送給した。
表面張力はドゥ・ノイ環（Du Nouy ring）を備えたクルス（Kruss）Ｄ−12型自動張力計を用いて25℃で測定した。
被験組成物の刺激作用は、粒径分析に用いたスプレーと同じエーロゾルスプレーを用いて該組成物を実験室用シンク内へ噴霧し、該シンク上の空気を吸い込む被験者の感じる刺激度を０〜５段階で記録することによって評価した（「０」は刺激を感じない場合であり、「５」は強い刺激を感じる場合である）。
実施例３
実施例１の手順に準拠して、以下の配合処方によって３種の苛性アルカリ性組成物を調製した。

試験結果は次の通りである。

組成物3Aの刺激作用は「１」であり、刺激作用は完全には除去されていないが、かなり低減しており、増粘剤を配合しない類似の組成物3Cに比べて実質的に改良されている。同様に、「KELZAN AR」は配合するが、界面活性剤を配合しないで調製した組成物3Bの刺激作用も「１」であった。「KELZAN AR」を配合しないが界面活性剤を配合して調製した組成物3Cの刺激作用は「５」であった。表面張力と刺激性との間には関連性はみられない。即ち、組成物3Cは低い表面張力を示すが、その刺激性は非常に強く、一方、類似の表面張力を示す組成物3Aは非常に弱い刺激性しか示さず、また、組成物3Bは刺激性は弱いが、表面張力は高い。刺激作用の程度はミストの粒径と関連する。刺激性の強い組成物3Cの平均粒径は107.9μｍであるが、刺激性の弱い組成物3Aおよび3Bの平均粒径はそれぞれ206.5μｍおよび212.1μｍである。「KELZAN AR」が小水滴を保持することによって、空気中に浮遊して刺激性をもたらす微細なミストを低減させるものと考えられる。
C.酸性組成物の粒径分析と表面張力の測定
実施例４
実施例１の手順に準拠して、以下の配合処方によって４種の組成物を調製した。

試験結果は次の通りである。

ポリビニルアルコールを0.3％または0.5％配合した組成物4Aおよび4Bの刺激性は「０」である。この場合も、刺激性はミストの粒径と関係があり、表面張力とは関連性がない。組成物4Cを用いたときの粒径分析の結果は、界面活性剤とポリビニルアルコールとの併用によって平均粒径が増大することを示す。
上記のデータが示すところによれば、平均粒径が200μｍよりも大きくなると刺激性ミストは大幅に低減する。上記の全てのデータは刺激性が極めて強いことが知られている濃厚組成物を用いて得られたものである。
以上のデータによって実証されたように、有効洗浄成分としての強アルカリ性または強酸の成分を他の洗浄剤成分と共に増粘水性組成物中に配合することによって調製される本発明による組成物は優れた汚れ除去特性を有する。また、本発明による組成物を噴霧装置を用いて噴霧したときに発生するミストまたエーロゾルの刺激作用は、噴霧されたミストまたはエーロゾルの平均粒径が200μｍよりも大きくなるときには実質的に除去されることも判明した。本発明による増粘組成物はこのような微粒子状エーロゾルまたはミストを発生するように配合されても洗浄力は失うことはない。
本発明の権利は以下の請求の範囲にある。

Claims (3)

1. 下記の成分（ａ）〜（ｄ）を含有する揺変性の噴霧可能な強アルカリ性洗浄剤組成物であって、17 0μｍ以上の平均粒径を有する空中浮遊エーロゾルが噴 霧時に形成されるように配合される強アルカリ性洗浄剤組成物：
   （ａ）有効洗浄量のアルカリ金属水酸化物、
   （ｂ）有効量の有機界面活性剤、
   （ｃ）有効増粘量の有機増粘剤および
   （ｄ）水。
2. アルカリ金属水酸化物を１〜20重量％含有する請求項１記載の組成物。
3. 下記の成分（ａ）〜（ｅ）を含有する強アルカリ性の噴霧可能なオーブン洗浄剤組成物であって、170μｍ以上の平均粒径を有する空中浮遊エーロゾルが 噴霧時に形成されるように配合されるオーブン洗浄剤組成物：
   （ａ）（ｉ）アルカリ金属水酸化物および（ii）モノエタノールアキン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたはこれらの任意の混合物を含む有機塩基との混合物を含む強塩基１〜15重量％、
   （ｂ）含鉄金属用腐食抑制剤0.1〜５重量％、
   （ｃ）架橋キサンタン増粘剤0.01〜２重量％、
   （ｄ）カチオン界面活性剤0.01〜５重量％、および
   （ｅ）両性界面活性剤0.018〜５重量％。