JP3578866B2 - B含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法 - Google Patents
B含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法 Download PDFInfo
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【産業上の利用分野】
本発明は、核燃料貯蔵容器や核燃料移送容器の構造材として使用されるB含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
中性子吸収断面積が大きいBを含むステンレス鋼は、核燃料貯蔵容器や核燃料移送容器の構造材として使用されている。B含有ステンレス鋼の溶接に際しては、材料の溶接性に有害なBの影響を抑制するため、一般的にBを含まない溶接材料が使用されてきた。しかし、溶接時の母材希釈によって母材中のBが溶接金属中に溶け込み、溶接割れが発生し易い。この溶接割れは、溶接金属中に溶け込んだBがFe,Cr等と低融点の共晶を形成し、凝固時の収縮応力によって共晶部分が開口することに起因するものと考えられている。
溶接割れを防止する手段として、特開平5−69186号公報では逆にBを含む溶接材料、すなわちB:0.4〜0.7重量%,S:0.015重量%以下,P:0.035重量%以下のオーステナイト系ステンレス溶接棒を使用することを紹介している。この提案では、溶接材料にBを添加することにより多量に生成させた低融点の共晶を最終凝固部で開口する割れ部に充填させ、溶接割れを防止することを狙っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
B含有ステンレス鋼は、製造性に劣る難加工性材料であり、溶接棒にまで加工することが難しい。しかも、溶接金属中にB量が増加するため、耐食性に有効な固溶Crが硼化物として消費され、耐食性の低下を引き起こす原因となる。そこで、特開平7−268564号公報では、B添加に起因する耐食性の低下をMo添加で補い、溶接割れ及び耐食性を確保している。しかし、高価なMoが含まれることから、溶接材料も高価で、経済的な面から使用に制約を受けている。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、フラックスからCr分を補充することにより、通常のB無添加の溶接棒等を使用しても耐食性の劣化を防止してB含有オーステナイト系ステンレス鋼を溶接することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のB含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法は、その目的を達成するため、0.4〜1.5重量%のBを含むオーステナイト系ステンレス鋼を溶接する際、溶接棒,溶接芯線又はバンドアーク鋼帯として、溶融凝固時の金属組織におけるδフェライト量が少なくとも3体積%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼を用いるとともに、溶接用フラックスとして、式(1)を満足するCrを含ませたフラックスを使用することを特徴とする。
Cr≧0.22×B×a ・・・・(1)
Cr:フラックス中のCr含有量(重量%)
B :母材中のB含有量(重量%)
a :希釈率(%)
【0005】
本発明の溶接材料で溶接されるオーステナイト系ステンレス鋼は、たとえばC:0.01〜0.08重量%,Si:0.10〜1.0重量%,Mn:0.8〜2.5重量%,P:0.01〜0.08重量%,S:0.001〜0.03重量%,B:0.4〜1.5重量%,Ni:8〜15重量%,Cr:16〜25重量%,残部Feの組成をもっている。
また、溶接棒,溶接芯線,バンドアーク鋼帯等としてのオーステナイト系ステンレス鋼は、凝固ままのときのδフェライト量が3体積%以上,好ましくは5〜15体積%となるように成分調整されている。たとえば、C:0.03〜0.10重量%,Si:0.3〜1.0重量%,Mn:0.5〜2.0重量%,P:0.01〜0.08重量%,S:0.001〜0.03重量%,Ni:7〜12重量%,Cr:16〜22重量%,残部Feの組成を持っている。
溶接用フラックスとしては、必要量のCr分が溶接金属に補給されるように、たとえばCaF2 :8〜11重量%,Al2 O3 :25〜30重量%,SiO2 :20〜25重量%,MgO:15〜20重量%,Na2 O:1〜4重量%,Mn:0.5〜3重量%,Cr:0〜10重量%の組成に調整される。
【0006】
【作用】
Bを含まない従来の溶接材料でB含有ステンレス鋼を溶接すると、溶接時に母材が溶融し、約15〜35重量%の母材成分が溶接金属中に入ってくる。B含有ステンレス鋼のB含有量は数%以下であるため、溶接金属中に入ってくるB量は微量であるものの、溶接金属が凝固するときに最終凝固部に凝集して低融点の共晶となる。この共晶は、周囲が凝固を完了しても融液状態で残留し、このときに周囲の凝固収縮歪みが加わると開口し、割れを発生させるものと推察される。
本発明者等は、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接割れの一般的な防止手段である凝固ままのときのδフェライト量を増加させた溶接材料を使用して、1.1重量%のBを添加したオーステナイト系ステンレス鋼を溶接し、形成されたビード,すなわち溶接金属の割れを調査した。その結果、B無添加の母材では、凝固ままでのδフェライト量が多い溶接材料ほど溶接割れが減少するのに対し、1.1重量%のBを添加したオーステナイト系ステンレス鋼を母材とする場合にはB無添加の母材ほどには溶接割れの低減がみられなかった。
【0007】
そこで、溶接金属のδフェライト量を測定したところ、B無添加の母材ではほぼ溶接材料の凝固ままのときのδフェライト量を示すのに対し、1.1重量%B添加の母材ではδフェライト量が著しく減少していた。δフェライトの減少は、B添加の母材が溶接金属に溶け合い、(Fe,Cr)2 B,Cr2 B等の硼化物を生成し、溶接金属中の有効Cr量が減少するためと推察される。
次いで、母材による希釈率が変わるように母材中のB量及び溶接時の溶接方法を変更し、溶接金属中のδフェライト量の変化を調査した。その結果、図1に示すように母材中のB量が多いほど且つ希釈率が高いほど、溶接金属中のδフェライト量が減少することを見い出した。
【0008】
このような前提で、有効Crの減少分を補うために種々の量のCrを添加したフラックスを使用し、溶接金属中のδフェライト量を変化させ、このδフェライト量と溶接割れとの関係を調査した。そして、溶接母材上に溶接材料を用いて溶接した後で溶接金属表面に生じた割れ個数を指数化した溶接割れ指数でδフェライト量を整理したところ、両者の間には図2に示す関係が成立していた。すなわち、溶接金属中のδフェライト量の増加に伴って溶接割れが低減し、δフェライト量が3体積%以上になるとほぼ溶接割れが防止されることを解明した。これは、Bによる消費の結果として不足するCr分をフラックスから補うことにより、溶接割れが防止されるものと推察される。また、Bにより消費されるCr分がフラックスから補われるため、耐食性に有効なCr量が確保され、耐食性の低下も同時に防止される。
【0009】
そこで、B含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接割れを防止するため、有効Cr量を補うのに必要なフラックス中のCr濃度を次のようにして求めた。溶接まま溶接金属組織のδフェライト量を3体積%以上とするように、少なくとも凝固組織のδフェライト量を3体積%含有する溶接棒,溶接芯線等を使用し、溶接方法及び溶接条件の変更により希釈率を種々変更し、母材中のB量と溶接割れ防止に有効なフラックス中のCr量との関係を調査した。その結果、前掲した式(1)が得られた。なお、必要以上にCr量を増加しても、フラックスの製造コストが高くなるだけである。また、溶接金属中のδフェライトが増大しすぎると、却って溶接割れが発生し易くなる。したがって、Cr量の上限は、0.22×B×a+5%に設定することが好ましい。
【0010】
【実施例】
0.4〜1.5重量%のBを含有するオーステナイト系ステンレス鋼の溶接に際し、厚み0.4mm,幅50mm,凝固組織のδフェライト量5体積%の鋼種SUS304,308Lをバンドアーク鋼帯として使用し、溶接電流720A,溶接電圧25V,溶接速度24cm/分でサブマージドアーク溶接した。フラックスとしては、本発明で規定した式(1)を満足するCr量を含むフラックスと、式(1)から外れるCr量を含むフラックスとを使用した。
形成された溶接金属について、希釈率,溶接割れ,耐食性等を調査した。表1の調査結果にみられるように、本発明に従った溶接材料を使用した場合、溶接割れが防止されると共に耐食性に優れた溶接部が得られた。他方、比較例では、溶接金属中のδフェライト量が不足しており、溶接割れが検出された。なお、表における希釈率は、溶接後の溶接金属中のB量の分析値と母材中のB量分析値との比、すなわち次式で定義される。
希釈率(%)=(溶接金属中のB含有量/母材中のB含有量)×100
溶接金属中のδフェライト量は、フェライトメータで測定することにより求めた。溶接割れの有無は、溶接後の溶接部を浸透探傷試験で評価した。耐食性は、JIS D0201に規定されているキャス試験を72時間行い、発銹性で評価した。その結果、SUS304と同等の優れた耐発銹性を示した。
【0011】
【0012】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の溶接方法においては、フラックスからCrが溶接金属に補給されるように、フラックスとして所定量のCrを含むものを使用するとともに、溶接棒,溶接芯線又はバンドアーク鋼帯として特定のオーステナイト系ステンレス鋼を用いることにより、溶接金属に所定量のδフェライトが確保され、耐溶接割れ性に優れたB含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部が形成される。また、Bを含まない溶接棒,溶接芯線,バンドアーク鋼帯等が使用されるため、Bによる有効Crの消費が低減され、溶接部の耐食性も確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】母材中のB量及び希釈率aが溶接金属中のδフェライト量に及ぼす影響
【図2】溶接割れ指数と溶接金属中のδフェライト量との関係
Claims (1)
- 0.4〜1.5重量%のBを含むオーステナイト系ステンレス鋼を溶接する際、溶接棒,溶接芯線又はバンドアーク鋼帯として、溶融凝固時の金属組織におけるδフェライト量が少なくとも3体積%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼を用いるとともに、溶接用フラックスとして、式(1)を満足するCrを含ませたフラックスを使用することを特徴とするB含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
Cr≧0.22×B×a ・・・・(1)
Cr:フラックス中のCr含有量(重量%)
B :母材中のB含有量(重量%)
a :希釈率(%)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP10388696A JP3578866B2 (ja) | 1996-03-29 | 1996-03-29 | B含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP10388696A JP3578866B2 (ja) | 1996-03-29 | 1996-03-29 | B含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法 |
Publications (2)
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JPH09267191A JPH09267191A (ja) | 1997-10-14 |
JP3578866B2 true JP3578866B2 (ja) | 2004-10-20 |
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ID=14365923
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP10388696A Expired - Lifetime JP3578866B2 (ja) | 1996-03-29 | 1996-03-29 | B含有オーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法 |
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EP2199420B1 (en) * | 2007-10-04 | 2013-05-22 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Austenitic stainless steel |
US20150010425A1 (en) | 2007-10-04 | 2015-01-08 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Austenitic stainless steel |
-
1996
- 1996-03-29 JP JP10388696A patent/JP3578866B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH09267191A (ja) | 1997-10-14 |
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