JP3578625B2 - グランドパッキン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バルブ等の機器のスタフィンボックス内に装填し、バルブステムからの流体の漏れを防止する等のために使用されるグランドパッキンの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、バルブステムあるいは回転軸(以下、軸と称する)からの漏れを防止するために使用するパッキンとしては、石綿繊維やカーボン繊維等の耐熱繊維を八編み、袋編みあるいは格子編み等に編組し、潤滑剤等を含浸させるか表面処理を行うかした、いわゆる編組パッキンが多く使用されていた。かかる編組パッキンは、耐熱性・耐薬品性・耐磨耗性等が優れているために現在でも広く使用されているが、近時、環境問題に対する意識の高まり等から微少な漏れも問題とされるようになり、シール性の良い膨張黒鉛を主原料として用いるパッキン(以下、膨張黒鉛系パッキンと称する)が使用されるようになってきた。
【0003】
前記膨張黒鉛系パッキンには種々のタイプがあるが、最も一般的なものは、テープモールド式といわれ、膨張黒鉛製シートを所定の幅にスリットして得たテープ状素材を成形用金型内に渦巻き状または同心円状に配置した後、これを縦方向に加圧成形して得られたリング状グランドパッキンである。
【0004】
別の成形方法としては、ラミネート式といわれ、膨張黒鉛製シートをリング状に打ち抜いたリング状素材を成形用金型内に所定枚数積層し、これを縦方向に加圧成形して得られたリング状グランドパッキンである。
【0005】
また、構造が別の膨張黒鉛系パッキンとしては、膨張黒鉛製シートを所定の幅にスリットして得たテープ状素材にテープ状の金網を一緒に渦巻き状に巻き込み加圧成形したタイプや、膨張黒鉛製シートを所定の幅にスリットして得たテープ状素材を積層した後、周囲を金属線で被覆したタイプ等、パッキンの取り出し性や補強性を高めたものもある。
【0006】
さらに別の構造の膨張黒鉛系グランドパッキンとしては、膨張黒鉛製シートを所定の幅にスリットして得たテープ状素材の周囲を補強繊維で袋編みする等の方法で膨張黒鉛と補強繊維とを複合させた編み糸を作り、これを八編み、袋編みあるいは格子編み等に編組して紐状態を構成することで様々な軸径に合わせて所定の長さに切断して使用できるようにしタイプのものも最近使われるようになってきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような膨張黒鉛系パッキンは、石綿等の編組パッキンに比べて、シール性は格段に優れているものの、鱗片状の膨張黒鉛粉末が金属からなる相手軸材に対して付着し易い傾向があり、その使用により軸の摺動抵抗が増加するという問題があった。例えば、既存のプラントで使用されているバルブのパッキンを編組パッキンから膨張黒鉛系パッキンに変更しようとする際に、摺動抵抗が増加し軸が回らなくなることがあり、これを防ぐために、金属製のスリーブを用いて膨張黒鉛系パッキンの使用量を少なくする必要があり、操作が煩雑であることが指摘されていた。
【0008】
この対策として、膨張黒鉛系パッキンに潤滑剤を含浸あるいは表面処理することがあり、潤滑剤としてはタービン油等の鉱油系潤滑剤やシリコーンオイル、フッ素オイル、パラフィンワックス等が使用されている。しかし、これらの潤滑剤は、量が少ないと効果がなく、量が多いとパッキンがフローして隙間からはみ出し応力緩和が大きくなるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、以上の問題点に鑑みてなされたもので、摺動抵抗の小さい膨張黒鉛系パッキンを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、膨張黒鉛単体あるいは膨張黒鉛と金属線等補強繊維を複合させた膨張黒鉛系パッキンであって、保湿剤が加えられた潤滑剤が含有されており、潤滑剤が鉱物系潤滑剤、オイル系潤滑剤、またはエマルジョンタイプの潤滑剤であることを特徴とするグランドパッキンである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において潤滑剤がパラフィンであることを特徴とするグランドパッキンである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態としては、例えば膨張黒鉛製シートを所定の幅にスリットして得たテープ状素材を成形用金型内に渦巻き状に配置した後、これを縦方向に加圧成形してリング状の膨張黒鉛系グランドパッキンを作成し、これを潤滑剤に保湿剤を加えた液の中に含浸させることにより、所定量の潤滑剤と保湿剤を付着させたグランドパッキンがある。なお、潤滑剤の含有量は同種の通常グランドパッキンにおける含有量と同じでよく、また保湿剤の含有量は、グランドパッキンに対して0.1 重量%以上ないと効果がみられなかった。
【0013】
本発明のグランドパッキンに用いられる保湿剤とは、大気中の水分を吸湿する特性のあるもの、およびパッキン表面の水分の蒸発を防ぐ性質のあるものであり、代表的な保湿剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールのほか、合成ヘクトライト、グリシン、セリン、ソリュブルコラーゲン、ポリペプタイド、カルボキシメチルデキストラン、ヒアルロン酸ソーダ、コンドロイチン硫酸ソーダ、ベタイン、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム(PCA−Na)、L−プロリン、プロデュウ100、ポリペプチド等がある。
【0014】
また、本発明のグランドパッキンに用いられる潤滑剤としては、タービン油などの鉱油系潤滑剤やシリコーンオイル、フッ素オイル、パラフィンワックス等のオイル系潤滑剤、シリコーンエマルジョン、パラフィンエマルジョン等のエマルジョンタイプの潤滑剤を用いることができるが、エマルジョンタイプの潤滑剤が最も好ましい。
【0015】
【作用】
本発明者らは、シール性の良い膨張黒鉛系パッキンの摺動抵抗を小さくするために潤滑剤について検討を行い、膨張黒鉛系パッキンにパラフィンのエマルジョンを含浸させることにより、良好なシール性を維持しながら摺動抵抗が低減することを見いだした(特願平9−191807)。
【0016】
ところが、このうなパラフィンエマルジョンを含浸した膨張黒鉛系パッキンでも軸の摺動抵抗が大きい場合があり、原因について調査すると、膨張黒鉛系パッキンは従来の石綿等の編組パッキンと異なり、大気中の湿度が低い時に軸の摺動抵抗が増加することが判った。
【0017】
そこで本発明者らは、さらに鋭意検討を行った結果、シール性の良い膨張黒鉛系パッキンの摺動抵抗を小さく保つために、膨張黒鉛系パッキンに潤滑剤と保湿剤を含有させることにより、良好なシール性を維持しながら摺動抵抗が湿度に影響されることなく低く保たれることを見いだした。
【0018】
この保湿剤が摺動抵抗を低く保つ理由は、保湿剤によってパッキン表面に付着する微量の水分がパッキンの潤滑性能を向上させるのではないかと推測しており、特にエマルジョン系の潤滑剤を用いる場合は微量の水分により潤滑剤の流動性が高くなるため、著しく効果があるものと思われる。
【0019】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0020】
実施例1
図1に示すように、厚さ0.38mm,密度1.0 g/cm3 の膨張黒鉛製シート10を16mm幅にスリットしたテープを渦巻き状に巻回し、これをクランクプレスで加圧成形したテープモールド式グランドパッキンAを、固形分濃度が20%になるように調整したパラフィンエマルジョンのパラックス40K−3(東邦化学工業(株)製、商品名)と濃度が50%になるように調整したエチレングリコールの溶液中に浸漬し、60℃で乾燥させ、1 重量%のパラフィンと0.2 重量%のエチレンングリコールが含まれるリング状(内径26mm,外径42mm、高さ8 mm)のグランドパッキンを得た。
【0021】
実施例2
まず図2に示すように、厚さ0.60mm膨張黒鉛製シート11を5.2 mm幅にスリットし、その周囲を厚さ0.08mmのステンレス線12で袋編みした編み糸13をつくる。次に図3に示すように、編み糸13の16本と中芯材14を用いて紐状体15となする。そして図4に示すように、この紐状体15をリング状に圧縮成形加工して編組紐状体式グランドパッキンBを製作し、上記パラフィンエマルジョンとエチレンングリコールの混合溶液中に浸漬し、60℃で乾燥させ、5 重量%のパラフィンと2 重量%のエチレンングリコールが含まれるリング状(内径26mm,外径42mm、高さ8 mm)のグランドパッキンを得た。
【0022】
実施例3
上記グランドパッキンAを、固形分濃度が20%になるように調整したパラフィンエマルジョンと濃度が50%になるように調整したグリセリン溶液中に浸漬し、60℃で乾燥させ、1 重量%のパラフィンと0.2 重量%のグリセリンが含まれるリング状(内径26mm,外径42mm、高さ8 mm)のグランドパッキンを得た。
【0023】
実施例4
上記グランドパッキンBを、実施例3で用いたパラフィンエマルジョンとグリセリン混合溶液中に浸漬し、60℃で乾燥させ、5 重量%のパラフィンと2 重量%のグリセリンが含まれるリング状(内径26mm,外径42mm、高さ8 mm)のグランドパッキンを得た。
【0024】
実施例5
上記グランドパッキンAを、固形分濃度が20%になるように調整したパラフィンエマルジョンと濃度が2 %になるように調整した合成ヘクトライトのラポナイト(日本シリカ工業(株)製、商品名)溶液中に浸漬し、60℃で乾燥させ、1重量%のパラフィンと0.3 重量%の合成ヘクトライトが含まれるリング状(内径26mm,外径42mm、高さ8 mm)のグランドパッキンを得た。
【0025】
比較例1
上記グランドパッキンAを、固形分濃度が20%になるように調整したパラフィンエマルジョン溶液中に浸漬し、60℃で乾燥させ、1量%のパラフィンが含まれるリング状(内径26mm,外径42mm、高さ8 mm)のグランドパッキンを得た。
【0026】
比較例2
上記グランドパッキンBを、固形分濃度が20%になるように調整したパラフィンエマルジョン溶液中に浸漬し、60℃で乾燥させ、5 重量%のパラフィンが含まれるリング状(内径26mm,外径42mm、高さ8 mm)のグランドパッキンを得た。
【0027】
上記実施例1〜5および比較例1〜2のリング状グランドパッキンPを湿度0 %のデシケータ中に入れ、10日間放置した後の試料を、図5に示す出願人規格の試験機1(ステム径26mm、スタフィンボックス内径42mm、スタフィンボックス深さ150 mm)にそれぞれ6 リング装着して面圧500 kgf/cm2 で締め付け、この試験機1の軸トルクを測定した。なお、図5において、2は軸、3はパッキン抑え、4は締め付けボルト、5はランタンリング、6はガス加圧口、7はガス出口である。
【0028】
実施例1〜5と比較例1〜2の軸トルクの値を表1に示す。
【0029】
表1に示す如く、本発明による実施例1〜5で得られた膨張黒鉛系グランドパッンは、比較例1〜2のグランドパッキンに比べて軸トルクの値が小さいことが判った。
【0030】
なお、今回の実施例はいずれもグランドパッキンを成形した後で保湿剤を含浸したが、あらかじめ保湿剤で処理した膨張黒鉛粉末あるいは膨張黒鉛製テープを用いてグランドパッキンを製造しても同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による膨張黒鉛系グランドパッキンによれば、従来の膨張黒鉛系グランドパッキンと比較して、摺動抵抗が小さく、かつその潤滑効果が大気中の湿度で影響されず、また、膨張黒鉛の特性である良好なシール性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明実施例1のリング状グランドパッキンを半分に裁断したものの斜視図である。
【図2】図2は本発明実施例2における紐状体を製作するための編み糸の端面図である。
【図3】図3は本発明実施例2のグランドパッキンを製作するための紐状体の斜視図である。
【図4】図4は本発明実施例2のリング状グランドパッキンの斜視図である。
【図5】図5はグランドパッキン試験機を示す断面図である。
【符号の説明】
A,B,P グランドパッキン
1 試験機
2 軸
3 パッキン抑え
4 締め付けボルト
5 ランタンリング
6 ガス加圧口
7 ガス出口
10,11 膨張黒鉛製シート
12 ステンレス線
13 編み糸
14 中芯材
15 紐状体
Claims (2)
- 膨張黒鉛単体あるいは膨張黒鉛と金属線等補強繊維を複合させた膨張黒鉛系パッキンであって、保湿剤が加えられた潤滑剤が含有されており、潤滑剤が鉱物系潤滑剤、オイル系潤滑剤、またはエマルジョンタイプの潤滑剤であることを特徴とするグランドパッキン。
- 潤滑剤がパラフィンであることを特徴とするグランドパッキン。
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---|---|---|---|
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JPH11279531A JPH11279531A (ja) | 1999-10-12 |
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