JP3577866B2 - 導電性反射防止フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスプレイの表示画面表面に設けられた偏光フィルムなどの上に適用される導電性反射防止フィルムの係り、特に可視光の反射防止性能に優れ、かつ、反射防止層中の層間の密着性の良い、下地となるハードコート層に対する応力の小さな反射防止フィルムであり、かつ電磁波遮蔽機能を有する導電性反射防止フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディスプレイの多くは、室内外問わず、外光が入射するような環境下で使用され、この入射光は、ディスプレイ内部において正反射され光源の虚像を表面上に再生したり、表示光に混合して表示品質を低下させる。
【0003】
これらを防止するため、表示画面上に凹凸を設け、乱反射させたり、本発明のような高屈折率と低屈折率の材料を交互にn×dにおけるnを均一に積層して構成される反射防止膜が利用されている。
【0004】
さらに近年、表示画面の駆動回路から、あるいは表示画面を通して回路中への電磁波の侵入が問題となり、人体への影響あるいは機械の誤作動の原因となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、乱反射させる方法では、ディスプレイ上の画像がぼやけて見えたりして、反射防止膜に比べると十分であるとは言えない。さらに、通常の厚さ方向に対してnの値の均一な積層体では界面においても強固な材料である屈折率の高い材料を用いなければならないゆえに、脆性が強く応力が大きく、それにより作成した層ではのみならず、フィルム基材との密着性ならびに硬さの緩和のために設けたハードコート層との応力の差による耐性の劣化が生じ、クラックが発生し、品質の低下を招くことがある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、可視光の反射防止性能に優れ、かつ、反射防止層中の層間の密着性の良い、下地となるハードコート層に対する応力の小さい反射防止フィルムであり、かつ電磁波遮蔽機能を有する導電性反射防止フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、フィルム上に、順次、ハードコート層、屈折率が異なり、かつ、少なくとも1層以上の導電性を有する無機化合物を積層した反射防止層、防汚層を積層した反射防止フィルムであり、各々の無機化合物層の光学膜厚(屈折率と形状膜厚が一定の場合n(屈折率)×d(形状膜厚)と規定される値であり、微小区間のnとdの積を膜厚分だけ積算した値)において、導電性を有する無機化合物の層以外の無機化合物層の厚さ方向のnの値が不均一であり、かつ両端部分の屈折率が、中央部分の屈折率より低い事ことを特徴とする反射防止フィルムである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明を前提とし、無機化合物を積層した反射防止層中の導電性を有する無機化合物からなる層以外の高屈折率(n>1.9)材料が酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化錫のいずれかであることを特徴とする導電性反射防止フィルムである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明を前提とし、無機化合物を積層した反射防止層中の導電性を有する無機化合物を有する無機化合物からなる層以外の層の低屈折率(n<1.6)材料が、酸化珪素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムの何れかであることを特徴とする導電性反射防止フィルムである。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明を前提とし、導電性を有する無機化合物が、酸化インジウムを主材料とする透明導電性材料あるいは酸化錫を主材料とする透明導電性材料あるいは酸化亜鉛を主材料とする透明導電性材料であることを特徴とする導電性反射防止フィルムである。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1および4記載の発明を前提とし、導電性を有する無機化合物がスパッタリングにより成膜されていることを特徴とする導電性反射防止フィルムである。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明を前提とし、ハードコート層が、光散乱性を有することを特徴とする導電性反射防止フィルムである。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明を前提とし、無機化合物を積層した反射防止層の層数が2層以上であることを特徴とする導電性反射防止フィルムである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の導電性反射防止フィルムの一例を図1に示し、詳細に説明する。
【0016】
この実施の形態に係る反射防止フィルムは、図1に示すように基材2、ハードコート層3、反射防止層4、防汚層5から構成されている。さらに41は高屈折率材料層、42は低屈折率材料層、43は透明導電性材料層である。
【0017】
尚、41、42の屈折率は図2に示すように不均一となっており、∫ndx(但し、積分区間は膜の両面間(x=0からd迄))と規定される値である光学膜厚としては一定の値を取るように設計されている。43の屈折率に関しては、電磁波遮蔽機能を持たせるためには均一の方が好ましい。本発明の主眼とする密着性に関しては、透明導電性が均一であっても、その材料層の表裏ともに不均一な層より構成されているので影響はない。
【0018】
本発明におけるハードコート層3は、透明性があり、基材の屈折率とその屈折率が等しいことが望ましいが、厚さが5μm以上あれば、層である必要はない。また、材質としては密着性、硬さなどの要求する性能を満たすものであれば、いかなるものでも良く、またいかなる硬化方法であっても良いが、主として紫外線硬化型のアクリル樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0019】
さらに、光を散乱させるための材料は、ハードコート剤への透明粉末が好ましく、その透明材料として、例えば、透明顔料が利用でき、このような透明顔料としては、酸化チタン、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等の無機化合物、硫酸バリウム等の無機塩、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等のフッ化物等が挙げられる。また、上記透明粉末として、ポリジビニルベンゼン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂粉末、これらの樹脂から構成される中空のビーズあるいはこれらの樹脂またはその中空ビーズ表面に表面処理を施した粉末などを利用することもできる。このような透明粉末樹脂は、上記透明樹脂層中で適当な大きさの平均粒径を有する物であれば良く、好ましくは〜3μm程度が望ましい。これらは基材に対して平滑に、かつ、均一に塗布されるものであり、その方法は、いかなる方法であっても構わない。
【0020】
本発明における基材2は、透明なプラスチックフィルムであれば良く、目的に応じて適時、選択されるものである。ディスプレイの表面に使用するのであれば、複屈折のないものが要求され、例えば、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリメチルアクリレート等が挙げられるが、ポリエチレンテレフタレート等汎用性のあるフィルムであっても構わない。その厚さは用途に応じて選定されるものである。
【0021】
本発明における防汚層5は、本発明の反射防止層4を保護し、かつ、防汚性能を高めるものであり、性能の要求を満たすものであれば、いかなる材料であっても構わない。また、いかなる方法で層を形成しても構わない。厚さは反射防止層4の機能を阻害しないように設定しなければならず、好ましくは、20nm以下、更に好ましくは10nm以下である。材料としては、疎水基を有する化合物が良く、例としてはパーフルオロシラン、フルオロカーボン等が挙げられ、材料に応じて、蒸着、スパッタリング等の物理気相析出法、CVDのような化学気相析出法を用いることができる。
【0022】
本発明における、反射防止層4は、高屈折率材料41と低屈折率材料42を交互に所定の光学膜厚で積層させることにより機能を発現するものである。
なお、一般の定義では屈折率と形状膜厚が一定と仮定した場合のn(屈折率)×d(形状膜厚)と規定される値であるが、本発明の場合は一定ではない為に、∫ndx(但し、積分区間は膜の両面間(x=0からd迄))と規定される値である。
高屈折率材料41とは、n>1.9のものであり、低屈折率材料42とは、n<1.6のものである。層数は1層でも必要条件を満たすものであれば良いが、反射率が0.5%となる可視領域での波長が狭く、2層以上積層させることにより反射率防止効果のある波長領域を広げることができ、4〜5層が好ましい。材料は請求項2あるいは請求項3において、限定しているが、材料間の密着性、即ち層間での応力の緩和(相殺)できるものであれば、これ以外の材料であっても構わない。
【0023】
本発明を実施させる、即ち、nを不均一にするための成膜方法としては、成膜粒子を基材に対して、斜入射できる方法が好ましく、nの値の入射角度依存性を利用して成膜できる方法が好ましい。さらには導入ガスの量によってもnを変えることができる。すなわち、スパッタリング方法よりも蒸着法の方がより好ましく、その際、適時、反応性蒸着あるいはプラズマやイオンビーム等によるアシスト蒸着を施しても構わない。さらには、ガス組成を適当に変化させたCVD方であっても構わず、フィルム基材にダメージを与えることなく、目的の性能を達することができるものであれば、いかなる成膜方法であっても構わない。
【0024】
本発明における透明導電性材料層は、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛を主材料とした透明導電性材料であり、これらに少量の金属あるいは半導体を添加したものである。酸化インジウムに対しては錫をドープしたいわゆるITOが知られており、酸化錫に対してはアンチモン、酸化亜鉛に対してはアルミニウムなどが知られている。電磁波遮蔽機能に関しては、以下の式に示されるように、透明導電性の材料の層の抵抗値と遮蔽機能との間に関係がある。
電磁波遮蔽効果(dB)=20×log(Ei/Et) (1)
ここで、(1)式中、Eiは電磁波遮蔽材料に入射した電磁波の電界強度、Etはこの電磁波遮蔽材料を透過した電界強度である。従って、本発明における抵抗値は100Ω/□以下であることが望ましい。さらに好ましくは、50Ω/□以下であることが望ましい。
【0025】
本発明において、透明導電性材料層の形成にスパッタリング法を使用するのは、粒径をより小さくし、粒子同志の界面を少なくして抵抗値を下げるためである。スパッタリング法以外ではCVD法も適当であるが、膜の厚さの制御方法に問題あり、さらには蒸着法においては、基材がプラスチックであることより高温に曝すことができず、低抵抗化が困難である。スパッタリング法においてはいかなる方法でも良く、反応性スパッタリングでも通常のスパッタリングでも、マグネトロンを使用しようとも、直流でも交流でも、それらを重畳させようとも構わない。
【0026】
【実施例】
高屈折率材料41として、二酸化チタンを使用し、低屈折率材料42として、二酸化珪素を、導電性材料43としてITO(酸化錫5重量%)を使用した。41および42に関しては蒸着法により、43に関しては直流マグネトロンスパッタリング法により作成した。基材2にはトリアセチルセルロースを使用し、ハードコート層3として、紫外線硬化型のアクリル樹脂を使用し、マイクログラビアコートした。二酸化チタン、ITOを各1層、二酸化珪素を2層、次に示すnd値で形成した。
Figure 0003577866
SiO およびTiO について、図2に示すようにnを調整し、不均一とした。これらの膜は、プラズマアシスト蒸着法により形成する際の、粒子の基材への入射角を変化させて、不均一とした。防汚層としてパーフルオロシランをCVD法により5nm程度形成した。
【0027】
この導電性反射防止フィルムの可視スペクトルを図3に示す。550nmにおける反射率は0.5%であった。さらに60℃、相対湿度90%の雰囲気下に放置したところ、外観および性能の変化のみならず、クラックの発生も認められなかった。さらに本発明において作成したITOの抵抗値は80Ω/□であり、電磁波遮蔽効果を測定したところ、−20dBであった。
【0028】
比較として、入射角を一定として成膜した場合には、同様にして放置したところ、クラックが生じた。
【0029】
【発明の効果】
請求項1から7によれば、導電性反射防止フィルムが屈折率の異なる各々の無機化合物層の光学膜厚において、その層の厚さ方向のnの値が斜入射あるいはガス供給量あるいは成膜方法を工夫する結果として、不均一であることにより、優れた耐性、応力緩和などを有する。図2、3中の他の層との界面の部分が応力緩和、密着性を強固にするように働き、効果を大にしている。
【0030】
低抵抗値の透明導電性の材料の層を設けることにより電磁波遮蔽効果も付与でき、反射防止効果と電磁波遮蔽効果を有し、かつ上記のような特徴を有する従来にない導電性反射防止フィルムである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る導電性反射防止フィルムの断面図
【図2】本発明の実施の形態に係る部分の断面図
【図3】本発明の実施の一例のスペクトル
【符号の説明】
1…導電性反射防止フィルム 2…基材 3…ハードコート層
4…導電性反射防止層 41…高屈折率材料層 42…低屈折率材料層
43…透明導電材料層 5…防汚層

Claims (7)

  1. フィルム上に、順次、ハードコート層、屈折率が異なり、かつ、少なくとも1層以上の導電性を有する無機化合物を積層した反射防止層、防汚層を積層した反射防止フィルムであり、各々の無機化合物層の光学膜厚(屈折率と形状膜厚が一定の場合n(屈折率)×d(形状膜厚)と規定される値であり、微小区間のnとdの積を膜厚分だけ積算した値)において、導電性を有する無機化合物の層以外の無機化合物層の厚さ方向のnの値が不均一であり、かつ両端部分の屈折率が、中央部分の屈折率より低い事ことを特徴とする反射防止フィルム。
  2. 上記無機化合物を積層した反射防止層中の導電性を有する無機化合物からなる層以外の高屈折率(n>1.9)材料が二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化錫のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の導電性反射防止フィルム。
  3. 上記無機化合物を積層した反射防止層中の導電性を有する無機化合物を有する無機化合物からなる層以外の層の低屈折率(n<1.6)材料が、二酸化珪素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の導電性反射防止フィルム。
  4. 上記導電性を有する無機化合物が、酸化インジウムを主材料とする透明導電性材料あるいは酸化錫を主材料とする透明導電性材料あるいは酸化亜鉛を主材料とする透明導電性材料であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
  5. 上記導電性を有する無機化合物がスパッタリングにより成膜されていることを特徴とする請求項1および4何れかに記載の導電性反射防止フィルム。
  6. 上記ハードコート層が、光散乱性を有することを特徴とする請求項1記載の導電性反射防止フィルム。
  7. 上記無機化合物を積層した反射防止層の層数が2層以上であることを特徴とする請求項1記載の導電性反射防止フィルム。
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