JP3577834B2 - ガス絶縁誘導電器巻線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガス絶縁の変圧器またはリアクトルの巻線に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、大都市の地下変電所は、その防災上の観点から不燃性の電気機器を採用することが推奨され、変圧器やリアクトルなどの誘導電器もそのガス絶縁化が進められている。
図8は、従来のガス絶縁誘導電器巻線の構成を示す片側断面図である。巻線6が、金属シートに絶縁フイルムを重ねた状態で軸9を中心にして巻回されたものからなる。巻線6は、絶縁円筒よりなる巻枠2に巻回され、巻線6の内周面と外周面とに接してそれぞれリード3、4が配されている。リード3、4は、巻線6の最内周(巻き始め端)、最外周(巻き終わり端)の金属シートにそれぞれ半田付けされるとともに、図8の上部へ引き出され巻線6の端子となる。また、巻枠2の内径側と、リード4の外径側とにそれぞれ導電性の材料よりなる静電シールド1、5が取り付けられている。
【0003】
図9は、図8のE−E断面図である。静電シールド1、5は、それぞれ周回方向の一部に絶縁間隙材14、13を介装され、静電シールド1は、リード3とともにねじ7を介して巻枠2に固定されている。一方、静電シールド5は、リード4に半田付けされている。巻線6と巻枠2の間隙、および巻線6と静電シールド5との間隙には、それぞれ絶縁フイルム11、10が巻かれている。
【0004】
図9において、静電シールド1、5は、巻線6の端部の電界集中を緩和させ、相手の巻線や設置構造物との絶縁距離を縮小するためのものである。また、静電シールド1、5が周回方向の一部で切断されているのは、静電シールド1、5に環状電流が流れるのを防止するためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したような従来の装置は、部品点数が多いという問題があった。また、金属シートにリードを半田付けするには、細心の注意が必要であった。
すなわち、図8において、巻枠2は、巻線6を巻回するときは必要であるが、巻回後は不要な部品である。巻枠2と静電シールド1とを共通化することができれば、不要な部品を減らすことができる。また、金属シートの厚さは、数十μmと非常に薄く、この金属シートにリード3、4を半田付けする際、両者の熱容量に大きな差があり細心の注意を払う必要がある。金属シートの熱容量が極端に小さいので、どうしても金属シート側が過熱ぎみになり、金属シートが損傷しがちであった。そのために、金属シートへの半田付け作業は、熟練が必要であるとともに時間が非常に多くかかっていた。
【0006】
この発明の目的は、装置の部品点数を減らすことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明によれば、絶縁ガスが封入された密閉容器内に収納され、金属シートに絶縁フイルムが重ねられた状態で巻枠に同軸に巻回されるとともに金属シートの巻き始め端と巻き終わり端からリードが引き出され、前記巻き始め側の内周面に静電シールドが設けられてなるガス絶縁誘導電器巻線において、静電シールドを巻枠にすると良い。それによって、巻枠と静電シールドとを共通にすることができ、装置の部品点数が減る。
【0008】
また、かかる構成において、静電シールドを最内周側の1ターンとしても良い。それによって、静電シールドを巻線の一部として利用することができ、巻線の外径寸法が減る。
また、かかる構成において、金属シートの巻き始め側と巻き終わり側とが、それぞれ金属シートの中間部より厚く形成されてなるとともに前記中間部と連続的に繋がれてなるものとしてもよい。金属シートの中間部の厚さが数十μmと非常に薄くても、金属シートの巻き始め側と巻き終わり側とを半田付けに支障のない厚さにしておけば、金属シートの端部をリード、あるいは静電シールドへ半田付けしても、金属シートが損傷を受けることがない。半田付けに支障のない厚さは500μm程度であり、金属シートの製造工場にて金属シートをシート状に引き抜くときに予めその厚さが連続的に変わるように成形しておき、その後は、金属シート同士の接合工程がないようにしておく。例えば、金属シートの中間部の厚さを数十μmにし、巻き始め側と巻き終わり側の厚さを400ないし600μmにしておく。金属シートの長さは、巻線の仕様によって予め決まっているので、その仕様に合わせて成形される。巻き終わり側の厚くなったシート部を予め多少長めにしておけば、巻線作業時に丁度リードの出る所で金属シートを切断すると言う微調整が可能になる。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明は、金属シートに絶縁フイルムが重ねられた状態で巻枠に同軸に巻回されるとともに絶縁ガスが封入された密閉容器内に収納され、内周側に静電シールドが設けられてなるガス絶縁誘導電器巻線において、静電シールドを巻枠にする構成である。
【0010】
以下、この発明を実施例に基づいて説明する。図1は、この発明の実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の構成を示す片側断面図である。静電シールド15が円筒状に形成され、この静電シールド15を巻枠として巻線6が巻回されている。図2は、図1のA−A断面図である。静電シールド15にリード3がねじ16で固定されている。図1および図2のその他の構成は、それぞれ図8および図9の従来の構成と同じである。従来と同じ部分には同一参照符号を付け、詳細な説明をここで繰り返すことは省略する。
【0011】
図1において、静電シールド15を巻枠にすることで、装置の部品点数が減る。すなわち、図8では、静電シールド1と巻枠2との二点が必要であったのが、図1では、静電シールド15だけで済ますことができ、装置のコストダウンが可能になる。
図3は、この発明の異なる実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の構成を示す断面図である。図2の構成と異なる部分は、静電シールド17が、絶縁間隙材14のところで切断されたものからなり、静電シールド17の一方側の円周端にリード18が固定されている点である。このリード18から静電シールド17が給電を受け、静電シールド17を時計回りに一周した後に巻線6に給電される。その他は、図2の構成と同じである。
【0012】
図4は、図3のB部拡大断面図であり、巻線6の巻き始め端付近の構成を示す図である。静電シールド17の一方側の円周端17Aにリード18が半田付けされ、静電シールド17の他方側の円周端17Bに金属シート20の端部が半田付けされている。金属シート20は、絶縁フイルム21に重ねられた状態で巻枠である静電シールド17に幾重にも巻回され巻線が形成される。静電シールド17が巻線6の巻き始め側の1ターンとなるので、その分、巻線6の外径寸法が減り、ガス絶縁誘導電器全体が縮小される。
【0013】
図5は、この発明のさらに異なる実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の巻き始め付近の構成を示す拡大断面図であり、図2のC部拡大断面図に対応する。シート部20Aは、金属シートの巻き始め側であり500μm厚さである。一方、シート部20Bは25μm厚さであり、巻き終わる側まで同様にして巻回されておる。シート部20Aは、厚さ変更部23を介してシート部20Bと繋がっている。この厚さ変更部23は、金属シートの製造工場にて金属シートをシート状に引き抜くときに予めその厚さが連続的に変わるようにされた部分であり、シート部20Aと20B同士の接合工程がないようになっている。シート部20Aの一方端は、リード3に半田付けされ、シート部20Aと20Bとは、絶縁フイルム21に重ねられた状態で時計回りに幾重にも巻回されている。シート部20Aが、半田付けに支障のない厚さなので、リード3に半田付けされても金属シートが過熱によって損傷を受けることがない。
【0014】
図6は、この発明のさらに異なる実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の巻き終わり付近の構成を示す拡大断面図であり、図2のD部拡大断面図に対応する。25μm厚さのシート材20Bが、絶縁フイルム21に重ねられた状態で幾重にも時計回りに巻回された後、厚さ変更部25を介して500μm厚さのシート部20Cと繋がっている。このシート部20Cは、時計回りに一周した後、リード4に半田付けされている。前述と同様に、シート部20Bと20Cは、厚さ変更部25を介して予め金属シートの製造工場において成形される。シート部20Cは実際より多少長く製作しておき、巻線作業時に丁度、リード4のある所でシート部20Cを切断すると言う微調整が行われる。上記の構成によって、シート部20Cが、半田付けに支障のない厚さなので、リード4に半田付けされても金属シートが過熱によって損傷を受けることがない。
【0015】
図7は、この発明のさらに異なる実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の巻き始め付近の構成を示す拡大断面図であり、図3のB部拡大断面図に対応する。シート部20Dは金属シートの巻き始め側であり500μm厚さである。一方、シート部20Bは25μm厚さであり、巻き終わり側まで同様にして巻回されている。シート部20Dは、厚さ変更部24を介してシート部20Bと繋がっている。その他は、図4と同じである。この構成もシート部20Dが半田付けに支障のない厚さなので、静電シールドの一方端17Bに半田付けされても金属シートが損傷を受けることがない。
【0016】
なお、図5ないし図7におけるシート部20Bは、巻き始め部および巻き終わり部以外の部分であり、金属シート20の大部分を占める。上記の各実施例においてはシート部20Bの厚さを25μmとしているが、一般にシート部20Bとしては十数μmないし百数十μmの厚さのものが使用されており、この範囲の厚さのものについて、本発明は適用可能である。また、図5や図6、図7では、シート部20A、20C、20Dの厚さは、半田付けに支障のない厚さ以上であれば良く、少なくとも400μm以上あればよい。また、厚さ変更部は、図5や図6、図7ではシート部が1ターンした位置に設けられてあるが、必ずしも1ターンの位置とする必要はなく、半ターンとか、4分の1ターンの位置であっても良い。
【0017】
また、上記の各実施例における金属シート20と静電シールド5,15,17は、いずれもアルミニウム材で形成されている。なお、金属シート20と静電シールド5,15,17の材料は、アルミニウム材に限定されるものではないが、アルミニウム材で形成した場合は、他の材料、例えば銅で形成した場合に比べて、アルミニウム材は軽量であるため、巻線を軽量化することができる。
【0018】
また、上記の図4および図7で示される各実施例では、静電シールド17の片方の円周端17Bに金属シート20の端部が接合される構成としたが、静電シールド17の材料および金属シート20の材料として、同じ材料、例えばアルミニウム材を選定した場合には、静電シールド17と金属シート20とを一体にして構成することができる。すなわち、例えば、一枚のアルミニウム板等の金属板を用意し、このアルミニウム板の内、静電シールド17に相当する部分の円筒形への曲げ加工を行うとともに、金属シート20に相当する部分を薄く引き延ばしてシート状に加工する。一枚の金属板を前記のように加工することにより、静電シールド17と金属シート20とが一体となった構成とすることができ、両者の接合が不要となる。
【0019】
【発明の効果】
この発明は前述のように、静電シールドを巻枠にすることによって、装置の部品点数が減り、コストが低減される。
また、かかる構成において、静電シールドを最内周側の1ターンとすることによって、巻線の外径寸法が減りガス絶縁誘導電器全体が縮小される。
【0020】
また、かかる構成において、金属シートの巻き始め側と巻き終わり側とが、それぞれ金属シートの中間部より厚く形成されてなるとともに前記中間部と連続的に繋がれる。これによって、金属シートに半田付けが行われても、金属シートがが損傷を受けることがなく、作業時間の短縮が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】この発明の異なる実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の構成を示す断面図
【図4】図3のB部拡大断面図
【図5】この発明のさらに異なる実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の巻き始め付近の構成を示す拡大断面図
【図6】この発明のさらに異なる実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の巻き終わり付近の構成を示す拡大断面図
【図7】この発明のさらに異なる実施例にかかるガス絶縁誘導電器巻線の巻き始め付近の構成を示す拡大断面図
【図8】従来のガス絶縁誘導電器巻線の構成を示す片側断面図
【図9】図8のE−E断面図
【符号の説明】
5,15,17:静電シールド、3,4,18:リード、6:巻線、20:金属シート、21:絶縁フイルム
Claims (3)
- 絶縁ガスが封入された密閉容器内に収納され、金属シートに絶縁フイルムが重ねられた状態で巻枠に同軸に巻回されるとともに金属シートの巻き始め端と巻き終わり端からリードが引き出され、前記巻き始め側の内周面に静電シールドが設けられてなるガス絶縁誘導電器巻線において、静電シールドを巻枠にすることを特徴とするガス絶縁誘導電器巻線。
- 請求項1に記載のものにおいて、静電シールドを最内周側の1ターンとするガス絶縁誘導電器巻線。
- 請求項1または2に記載のものにおいて、金属シートの巻き始め側と巻き終わり側とが、それぞれ金属シートの中間部より厚く形成されてなるとともに前記中間部と連続的に繋がれてなることを特徴とするガス絶縁誘導電器巻線。
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JP12117596A JP3577834B2 (ja) | 1996-05-16 | 1996-05-16 | ガス絶縁誘導電器巻線 |
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1996
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