JP3577595B1 - 部材着脱装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の誘導加熱抜き取り装置では、加熱用コイルに加えて抜き取り機構が必要なため、必然的に装置全体の大きさが大きくなってしまい、またこの抜き取りのための動力を外部から供給する必要があった。また、焼き嵌めのための装置も抜き取り装置とは別に用意する必要があった。
【解決手段】
非磁性金属よりなるリング3を軸1に固定し、コイル4を部材2に固定した後、コイル4により動磁界を発生させ、リング3とコイル4の間に働く誘導反発力を利用して、部材2を軸1より抜き取る。また、このリング3とコイル4の位置関係を交換するだけで、部材2の軸1への焼き嵌めにも利用できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、部材を、車軸等に対して着脱するための装置に関する。
軌道車輌などのシャフトに嵌合された軸受や動輪用電動機のシャフトに嵌合された油止めカラーなどの部材は、定期点検などのためにシャフトから抜き取られる。このような部材の抜き取りにおいて、嵌合されている部材の外周に配置されたコイルに交流電流を流し、該部材に交流磁界を印加し、誘導過熱して膨張させ、油圧などを動力とした抜き取り機構で抜き取る装置と方法が提案されている(特許文献1,2,3参照)。また、同様にシャフト等に対して、誘導加熱して膨張させた部材を焼き嵌めするための装置も提案されている(特許文献4,5参照)。
従来の誘導加熱抜き取り装置では、加熱用コイルに加えて、別途抜き取り機構が必要なため、必然的に装置全体の大きさが大きくなってしまい、またこの抜き取り機構を稼動させるための動力を外部から供給する必要があった。また、焼き嵌めのための装置は、抜き取り装置とは別に用意する必要があった。
特開平8−150524号公報 特開平11−294465号公報 特開2002−46032号公報 特開平7−245177号公報 特開2004−58176号公報
本発明は、このような実情に鑑み、従来の装置を小型化、簡略化し、それに加えて抜き取り、焼き嵌め双方に利用可能な装置を提供することを課題としている。
上記に示した課題の解決のために、本願発明は誘導加熱のためにコイルより発生させる磁界を、部材の着脱のための動力源としても利用している。一般的に、非磁性の導体に動磁界を印加すると導体は磁界に対して反発しようとする挙動を示す。本願発明では、この反発力を着脱のための動力として利用する。この手法により、他に着脱のための機構および動力源が不要となり、従来の装置をより小型化、簡略化することが可能である。
より具体的には、本発明の部材着脱装置は、部材を、強磁性体よりなる軸に対して着脱する部材着脱装置であって、非磁性金属からなるリングと、リングに隣接配置された磁界発生用のコイルと、軸が前記リングの内部を貫通するようにリングを配置した際に、部材移動方向におけるリングと軸との位置関係を保つための第一の固定手段と、軸がコイルの内部を貫通し、かつリングの部材移動方向側の側面にコイルが隣接して位置するようにコイルを配置した際に、部材移動方向におけるコイルと部材との位置関係を保つための第二の固定手段と、コイルに動磁界を発生させるための励磁用電源とを備え、コイルを励磁用電源により励磁して、コイルとリングとの間に生じる磁気的反発力により、部材を移動せしめ軸に対して着脱する。
この装置構成によれば、コイルに通電し動磁界を発生させた際に、コイルにより発生した磁束が軸を磁路として、リング内部を通ることにより、リングに渦電流が生じ、この渦電流と磁界との相互作用により、コイルとリングが反発する。リングと軸、およびコイルと部材とは、それぞれ部材移動方向において固定関係にあるため、この反発力が軸に対する部材の位置を移動せしめ、軸に対する部材の着脱を可能とする。また、この非磁性金属のリングは、特に円形である必要はなく、楕円形または角型等でもよい。ただし、軸の外周を渦電流が流れうるような形状、すなわち電磁気学的なリングである必要がある。また、部材の移動する方向は、コイルとリングとの位置関係に依存し、部材を移動させたい方向のリング側面にコイルを配置すればよい。
また、上述したコイルとリング、及び、軸と部材における固定関係を変更しても同様の効果を得られる。すなわち、前記リングの固定対象を前記軸ではなく前記部材とし、前記コイルの固定対象を前記部材ではなく前記軸とした構成においても、コイルとリング間の反発力は有効に作用し同様の着脱効果を得られる。
また、コイルと部材またはリングと部材とを固定する手段は、部材を引っ掛けることが可能な爪を有すれば十分である。
また、コイルにより発生する動磁界は、実用上、交流磁界またはパルス磁界が望ましい。
また、部材の誘導加熱のためには、前記コイルは前記部材の外周上に位置することが望ましいが、着脱にあたり前記部材の誘導過熱が特に必要でない場合はこの限りではない。
また、側壁にスリットが設けられた強磁性体よりなる円筒状の磁気遮蔽体を、その中心軸を前記コイルの中心軸と同じくするようにコイルの内側に固定して配し、前記磁気遮蔽体が、その部材移動方向の端部が前記部材の近傍に位置し、他端部が前記軸の端部近傍に位置する構造を有せば、前記磁気遮蔽体の内部においては磁界が減少し、端部において磁界が強まるため、軸部分は加熱されることなく、前記部材のみを局所的に加熱することが可能である。なお側壁のスリットは磁気遮蔽体自体が渦電流により加熱してしまうのを防ぐためのものである。
また、前記励磁用電源が、コイルに通電する電流量を時間の経過に従い次第に増加させていく機能を有せば、初期通電時における反発力の衝撃を和らげることができる。
本発明によれば、装置の基本的な構成要素は、コイルと非磁性金属であるリングおよびコイルを励磁するための電源があればよく、着脱のための他の動力源および機構を必要としない。これは、従来の装置の大幅な小型化および簡略化が可能であることを意味している。また、リングとコイルの相対位置の移動のみで、部材へ加わる力の方向を反転させることが可能であり、部材の抜き取り、焼き嵌め双方の作業に用いることが可能である。
以下に本願発明を実施するための最良の形態を本願発明の一例として図面に基づいて説明する。図2に着脱の対象となる部材および軸を斜視図で示す。対象としては、軌道車輌の車軸と軸受を想定している。一般的に軌道車輌の車軸(軸1)は磁性体(炭素鋼、ステンレス等)よりなる円柱であり、焼き嵌めのためのテーパーおよび段がついている。本願図面においてはこのテーパー部をやや誇張して作図している。また部材2は円筒形の金属製軸受であり、その内径は軸の部材嵌め込み部における外径より、やや小さくなるよう加工されている。
図3,4に部材着脱装置の構成を示す。図3は斜視図、図4は斜視断面図である。装置は基本的に非磁性金属よりなるリング3と励磁用のコイル4からなる。リング3は高い電気伝導率の材料を用いるとより強い反発力が得られるため、その材料は銅、アルミ等がよい。ただし、重量を考慮すると作業性の面からアルミが適していると思われる。また、リング3の外径は、コイル4と同程度の大きさであればよく、またその厚さは、磁界の周波数、材料の導電率より定まる「皮相厚さ」の2倍程度あればよい。例えばリング3の材料がアルミであり、50Hzの交流磁界を用いるとすれば、20mm程度の厚さでよい。またリング3の内周部には、軸1の外周に固定するための固定手段としてクランプ6が設けられている。
リング3の外周部には2本の丸棒5がリング正面に垂直に4本取り付けられている。この丸棒5はコイル4に設けられた丸穴に挿入されている。コイル4はこの丸棒2をガイドとして、リング3と中心軸をほぼ同じくしながら、リング3との距離を自由に可変できるようになっている。なお、この丸棒5は、装置の利便性を増すために設けられているもので、必ずしも必要ではない。また、コイル4には部材2を引っ掛けるための爪7が取り付けられている。爪7はコイル内周に向けて伸縮自在な構造となっている。また、コイル4には、図示しない磁場のON・OFF用スイッチと電源ケーブルが備え付けられている。また、電源ケーブルの先はこれも図示しない励磁用の電源とつながっている。励磁用の電源は、50Hzの正弦波交流電流を徐々にその振幅を増しながら供給する機能を有している。図5にその電流波形を示す。
図1,6に部材の抜き取り時における本装置の利用形態を図示する。図6は斜視図、図1は斜視断面図である。リング3の内部に軸1を貫通させ、同様にコイル4の内部にも軸1を貫通させる。次にコイル4を部材2のほぼ外周上に位置するよう配置する。配置したのち爪8を部材2が引っかかる程度に伸ばす。次にリング3とコイル4との距離を適度に調節する。この距離が短いと磁界発生時に生じる反発力は強くなり、逆に長いと反発力は弱くなる。常に同じ反発力でよい場合は、適度なスペーサーをコイル4とリング3の間に入れると良い。距離が決まったところで、クランプ6でリング3を軸1に固定する。
セッティングが終わり次第、コイル4に通電を開始する。コイル4により発生した磁界により、部材2が誘導加熱され膨張するとともに、コイル4とリング3との反発力によりコイル4に抜き取り方向の力が加わる。十分部材2が加熱され膨張すると、コイル4とともに部材2が抜き取り方向へ移動する。
図7,8に部材の焼き嵌め時における本装置の利用形態を図示する。図7は斜視図、図8は斜視断面図である。焼き嵌め時には、抜き取り時とは逆の方向で装置を軸に設置し、同様にコイル4を部材2のほぼ外周上に位置するように配置し、爪7を部材2に引っ掛け、リング3とコイル4の距離を適度に調節した後、リング3を軸1に固定する。そして、抜き取り時と同様にコイルに通電し部材2を誘導過熱するとともに、焼き嵌め方向へと押し込む。
図9、10に局所誘導加熱を行う場合の本装置の利用形態を図示する。図9は斜視図、図10は斜視断面図である。極力軸1を加熱せず、部材2のみを加熱したい場合は、側面にスリットを設けた円筒状の磁気遮蔽体8を用いる。その材料は鉄などの強磁性体とする。この磁気遮蔽体8をコイル4の内径に入れ、コイル4に固定する。その際、磁気遮蔽体8の片方の端部は部材2の近傍に位置するようにし、反対側の端部は軸1の端部近傍に位置するようにする。こうすることにより、磁気遮蔽体8内部では磁界が減少し、部材2近傍では磁界が増大し、結果的に部材2のみを選別的に加熱することが可能となる。
以下に実際に製作された装置の概略を同ケースの実施形態図である図2を用いて示す。コイル4は、銅線を185ターン巻回した内径100mm、外径224mmのコイルとした。またリング3は外径230mm厚さ20mmのアルミのリングとした。また、磁気遮蔽体8として、側壁にスリットを入れた直径90mm、長さ87mmのSS400のパイプを使用した。コイル内部に磁気遮蔽体8を入れた場合と入れない場合で、どのように磁界分布が変化するかを図11にグラフで示す。本グラフにおいて横軸は、コイル中心軸を座標軸とし、磁気遮蔽体8の端部位置を原点OとしたX座標を示し(詳しくは図6を参照)、縦軸は磁界の強度である。この磁界分布の測定においてコイルに流した電流は20A(実効値)であり、また、破線で示された曲線(C,D)は、磁気遮蔽体8を用いない状態での磁界分布、実線で示された曲線(A,B)は磁気遮蔽体8を用いた状態での磁界分布である。また、B,Dはコイル中心軸上での値であり、A,Cはコイル中心軸から40mm離れた位置における値である。コイル内部に配置した磁気遮蔽体8によって、その端部において磁界が増大し、内部において抑制される様子がこのグラフから読み取ることができる。
実際に軌道車輌に用いられる動輪用電動機のシャフト(軸1)に対する油止めカラー(部材2)の抜き取り実験を行った。シャフト径はおよそ80mmであり、シャフトおよびカラーの材質はモリブデン鋼であった。部材が小さく印加磁界の局所化が必要であったため、あらかじめ磁気遮蔽体8を装着して実験を行った。コイル4を部材2のおよそ外周に設置し、爪7を部材2に引っ掛け、リング3をコイル4から40mm程度のところで軸1に固定した。その後、電源周波数50Hzの商用電源により電圧400V、最大電流180Aでコイル4に通電した。その際、電流の振幅が約5秒で最大となるよう電源の時定数を設定した。その結果、通電後30秒程度で、カラーは選択的に200℃以上に加熱され膨張し、なおかつ、コイル4とリング3との間の反発力により、他に動力を加えることなくコイル4とともに軸1から、ゆっくり引き抜かれることが確認出来た。この際のリング3とコイル4との間の反発力は200N程度であった。また、抜き取られた部材に変形および損傷は確認されなかった。
本実施例により、従来技術と比較してはるかに小型化、簡易化された本願発明によっても、従来技術と同様の効果があることが確認できた。
部材抜き取り時の装置利用形態斜視断面図 軸および部材の斜視図 部材着脱装置の斜視図 部材着脱装置の斜視断面図 電流波形グラフ 部材抜き取り時の装置利用形態斜視図 部材焼き嵌め時の装置利用形態斜視図 部材焼き嵌め時の装置利用形態斜視断面図 局所誘導加熱時の装置利用形態斜視図 局所誘導加熱時の装置利用形態斜視断面図 磁気遮蔽体による磁界分布の変化
符号の説明
1 軸
2 部材
3 リング
4 コイル
5 丸棒
6 クランプ
7 爪
8 磁気遮蔽体

Claims (9)

  1. 部材を、強磁性体よりなる軸に対して着脱する部材着脱装置であって、
    非磁性金属からなるリングと、
    前記リングに隣接配置された磁界発生用のコイルと、
    前記軸が前記リングの内部を貫通するように前記リングを配置した際に、部材移動方向における前記リングと前記軸との位置関係を保つための第一の固定手段と、
    前記軸が前記コイルの内部を貫通し、かつ前記リングの部材移動方向側の側面に前記コイルが隣接して位置するように前記コイルを配置した際に、部材移動方向における前記コイルと前記部材との位置関係を保つための第二の固定手段と、
    前記コイルに動磁界を発生させるための励磁用電源とを備え、
    前記コイルを前記励磁用電源により励磁して、前記コイルと前記リングとの間に生じる磁気的反発力により、前記部材を移動せしめ前記軸に対して着脱する部材着脱装置。
  2. 部材を、強磁性体よりなる軸に対して着脱するための装置であって、
    非磁性金属からなるリングと、
    前記リングに隣接配置された磁界発生用のコイルと、
    前記軸が前記コイルの内部を貫通するように前記コイルを配置した際に、部材移動方向における前記コイルと前記軸との位置関係を保つための第三の固定手段と、
    前記軸が前記リングの内部を貫通し、かつ前記コイルの部材移動方向とは反対側の側面に前記リングが隣接して位置するように前記リングを配置した際に、部材移動方向における前記リングと前記部材との位置関係を保つための第四の固定手段と、
    前記コイルに動磁界を発生させるための励磁用電源とを備え、
    前記コイルを前記励磁用電源により励磁して、前記コイルと前記リングとの間に生じる磁気的反発力により、前記部材を移動せしめ前記軸に対して着脱する部材着脱装置。
  3. 前記第二の固定手段は、前記部材を引っ掛ける爪を有する、請求項1記載の部材着脱装置。
  4. 前記第四の固定手段は、前記部材を引っ掛ける爪を有する、請求項2記載の部材着脱装置。
  5. 前記コイルが発生する磁界は、交流磁界である、請求項1から4記載の部材着脱装置。
  6. 前記コイルが発生する磁界は、パルス磁界である、請求項1から4記載の部材着脱装置。
  7. 前記部材は導電体であり、前記コイルは前記部材の外周上に配置され、前記コイルを前記励磁用電源により励磁して、前記部材を誘導加熱し、前記コイルと前記リングとの間に生じる磁気的反発力により、前記部材を前記軸に対して着脱する請求項1から5記載の部材着脱装置。
  8. 側壁にスリットが設けられた強磁性体よりなる円筒状の磁気遮蔽体が、その中心軸を前記コイルの中心軸と同じくするようにコイルの内側に固定して配されており、
    前記磁気遮蔽体は、その部材移動方向の端部が前記部材の近傍に位置し、他端部が前記軸の端部近傍に位置する構造を有し、
    前記コイルを励磁することによって、前記部材を選択的に誘導加熱する、請求項6記載の部材着脱装置。
  9. 前記励磁用電源は、前記コイルに通電する電流量を時間の経過に従い、ある一定値に達するまで、次第に増加させていく機能を有する、請求項1及び2記載の部材着脱装置。
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