JP3577303B2 - シートベルト調整具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、三点式シートベルトの肩部の装着状態を調整するシートベルト調整具に関する。
【0002】
【従来の技術】
子供等の身長の低い乗員が自動車等に標準装備される三点式シートベルトを装着すると、肩部(乗員の上胴部に斜めに掛けられるベルト部)が乗員の顔面や首部などに掛かることがある。これは、大変不快であるとともに衝突事故が発生した時に本来の乗員拘束機能を発揮できないばかりか却って危険な事態を招くおそれがある。
【0003】
かかる問題を解決する手段として、例えば実開平6−37020号公報に記載される補助ベルトがある。この補助ベルトは、三点式シートベルトの肩部および腰部(乗員の腰部に掛けられるベルト部)に固定可能である固定具が両端に設けられているとともに長さ調整が可能とされている。そして、三点式シートベルトに対する固定位置や長さを適当に設定することにより、肩部を下方に引き下げて顔面や首部などに掛からないように調整することができるものである。しかしながら、上記補助ベルトには下記のような問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記補助ベルトの固定具は、肩部の傾斜角に合わせて角度が付けられているが、乗員が左右反対側のシートに着座した場合には、肩部の傾斜が左右逆になるため使用することができなくなる。
【0005】
また、補助ベルトを使用する乗員によって座高が異なるため、肩部の適正な傾斜角も異なってくる。そのため、補助ベルトと補助ベルトが取り付けられるシートベルトの交差角(図3中のθ1およびθ2)は乗員によって変化する。しかし、上記補助ベルトの両端の固定具はベルト本体部に対して固定されており交差角の変化に追従することができない。したがって、シートベルトが補助ベルトによって捩られ、乗員拘束機能が損なわれる可能性がある。なお、固定具の取り付け位置をずらして捩れを抑えることも考えられるが、乗員が固定具に接触して衝突時に却って危険な事態を招くおそれがある。
【0006】
さらに、上記補助具の固定具は櫛状に形成され、櫛歯に対してシートベルトをジグザグに係合することで、補助ベルトがシートベルトからずれないようにされている。したがって、固定具をシートベルトに係合させた状態でスライドさせることはできない。そのため、補助ベルトの取り付け位置の調整をスムーズに行うことができず、作業に相当時間を要するという不都合もある。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑みて、シートベルトの傾斜向きに関係なく使用でき、シートベルトの捩れが生じるようなことがなく、調整作業も容易かつ速やかに行うことができるシートベルト調整具を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明のシートベルト調整具は、三点式シートベルトの肩部および腰部の中間部を連結するように取り付けられることにより、前記肩部を下方に引き下げて、前記肩部の装着状態を調整するシートベルト調整具であって、長さ調節可能なベルト部と、該ベルト部の両端に取り付けられる揺動部と、該揺動部が揺動自在に軸支持されるとともに前記肩部または前記腰部に取り付けられる連結部とを有してなり、前記揺動部は前記肩部または前記腰部と前記ベルト部の交差角の変化に対応可能な方向に揺動し、前記連結部は、前記肩部または前記腰部に係合させられた状態で前記肩部または前記腰部に対してスライド可能な係合部と、該係合部を係合させた前記肩部または前記腰部に対して所望位置で固定させることができる固定部とを有してなり、前記係合部は断面コの字状のフックであり、コの字の対向する2面により前記肩部または前記腰部を両側から挟み込むように係合させられ、前記固定部は前記フックの対向する2面のいずれか1面を貫通するように設けられた締め付けネジであり、該締め付けネジをねじ込むことにより前記フックに係合された前記肩部または前記腰部を前記フック押し付けて固定することを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る発明のシートベルト調整具によれば、揺動部の揺動作用により、シートベルトの肩部の傾斜向きに関係なく、左右いずれのシートでも使用することができる。また、シートベルト調整具とシートベルトの交差角の変化も揺動部により吸収される。したがって、シートベルトの捩れを少なくすることができ、乗員拘束機能の低下を防ぐことができる。さらに、揺動部は連結部に軸支持されているので、両者の相対動きより異音(干渉音)が発生することはなく、車内の快適性は損なわれない。
【0010】
しかも、係合部をシートベルトに対してスライドさせることができるので、シートベルト調整具の連結部をシートベルトに取り付ける場合、シートベルトの肩部に対する装着状態を確認しながら、まずシートベルト上で係合部をスライドさせて位置決めを行い、その後は固定部を操作することにより固定するだけでよく作業が容易である。また、連結部は断面コの字状のフックにシートベルトを押し付ける締め付けネジを設けるだけで良いから、簡単に製作することができるものである。
【0011】
請求項2に係る発明のシートベルト調整具は、請求項1に係る発明のシートベルト調整具において、前記フックにおける前記締め付けネジにより前記肩部または前記腰部が押し付けられる面には、すべり止め部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明のシートベルト調整具によれば、請求項1に係る発明の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。衝突事故が発生したときに、すべり止め部によってシートベルトがロックされているため、フックの位置がずれにくく、初期の装着状態が維持されることとなり、乗員拘束機能の低下が防止される。
【0013】
請求項3に係る発明のシートベルト調整具は、請求項1または2に係る発明のシートベルト調整具において、シートベルトに取り付けた状態における前記フックの乗員に接触する部位には保護カバーが被されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明のシートベルト調整具によれば、請求項1または2に係る発明の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。フックの乗員に接触する部位が保護カバーで被われているので、衝突事故が発生したときに連結部が乗員に強く擦れるようなことがあっても、乗員がケガすることがない。
【0015】
請求項4に係る発明のシートベルト調整具は、請求項1から3のいずれかに係る発明のシートベルト調整具において、シートベルトに取り付けた状態における前記フックおよび前記揺動部の乗員に接触する面は、前記フックおよび前記揺動部の相互間において段差がないことを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明のシートベルト調整具によれば、請求項1から3に係る発明の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。衝突事故が発生したときに、乗員に対してフック部および揺動部が強く押し付けられることとなるが、前記フックおよび前記揺動部の接触する面は相互に段差がないため、均一に押し付けられることとなり、乗員が傷害を受けることがない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係るシートベルト調整具1を示した図で、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。図2は、図1におけるB−B断面を示した図であるが。シートベルト調整具1は、ベルト部2、ベルト部2の両端に取り付けられる揺動部3,3、および揺動部3,3が軸支持される連結部4,4を有してなる。
【0018】
ベルト部2は一定幅を有する偏平状の可撓性部材であり、その中間部に設けられたバックル21により長さ調節可能とされている。なお、ベルト部2は、衝突時に作用する引張り力によって容易に損傷しない程度の強度を有しており、例えば、シートベルトのウェビングと同じ材質のものが使用される。
【0019】
揺動部3は厚手の金属板から形成される板状部材であり、その一端にはベルト部2を挿通させた状態で固定するスリット31が形成されており、また片面側のほぼ中央部に断面円形のピン32が立設されている。なお、揺動部3には、ピン32が立設される面の裏面から樹脂製の保護カバー33が被されており、揺動部3の外周部のエッジが乗員あるいは乗員の衣服に接触したり、引っ掛ったりすることがないように処理されている。
【0020】
連結部4は、自動車シートベルトの肩部Sまたは腰部Wに係合させられた状態で、肩部Sまたは腰部Wに対してスライド可能な係合部としてのフック41と、フック41を係合させた肩部Sまたは腰部Wに対して所望の位置で固定させることができる固定部としての締め付けネジ42を有してなる。締め付けネジ42の頭部には、工具等を用いずに手で締め込むことができるように把持部42bが設けられている。
【0021】
フック41は厚手の金属板を断面コの字状に折り曲げることにより形成され、その対向する2面411,412により肩部Sまたは腰部Wの偏平面を両側から挟み込むように係合させられる。なお、フック41には、シートベルトに装着した状態における乗員側の面411の外周部に端部が丸められた樹脂製の保護カバー43が被されており、フック41の外周部のエッジが乗員に接触したり、引っ掛ったりすることがないように処理されている。
【0022】
コの字の対向する2面のうち1面411は他の一面412に対して長く形成されており、その端部には、内径がピン32の外径よりごく僅かに大きく、揺動部3のピン32が回転可能に軸支される丸穴411aが形成されている。ピン32は丸穴411aに挿入された状態で先端部32aが潰されて,丸穴411aから抜けないようにかしめられている。
【0023】
締め付けネジ42はフック41の短く形成された面412の中央部に設けられたネジ穴412aにねじ込まれている。フック41に肩部Sまたは腰部Wを係合させた状態で、締め付けネジ42を締め付けることにより、締め付けネジ42の先端部42aが肩部Sまたは腰部Wを相対する面411に押し付けて固定する。
【0024】
なお、フック41の面411には、図2に示されるように、締め付けネジ42により押し付け固定された肩部Sまたは腰部Wがフック41に対してずれないようにするすべり止め部411bが形成されている。すべり止め部411bはエッジ5aを有する樹脂製のエッジ板5が貼り付けられることにより形成される。エッジ5aは、フック41の肩部Sまたは腰部Wの長手方向へのずれを阻止するような形状、向きとされている。ここでは肩部Sまたは腰部Wの長手方向に対して直角に交差する方向に延びる直条エッジとなっている。
【0025】
上記した実施形態のシートベルト調整具は次のようにして使用される。図3は自動車の左側シート6用に設けられた三点式シートベルトにシートベルト調整具1を取り付けた状態を説明する図である。シートベルト調整具1を取り付けない状態において、肩部Sは2点鎖線で示されるように、自動車の側壁部に取り付けられたシートベルト挿通リング7からシート1の中央側下方のベルトアンカーに向けて直線的に延びている。
【0026】
これに対してシートベルト調整具1を取り付ける場合、まず乗員がシートに着座し自動車に装備されたシートベルトを装着する。次に、両端のフック41,41をシートベルトの肩部Sおよび腰部Wに、締め付けネジ42の把持部42bが外側に向くような状態でそれぞれ係合させる。このような向きとするのは、把持部42bのような突出物が乗員側に向けられていると、それが衝突事故の発生時に乗員の体に押し付けられて危険なためである。連結部4のフック41および揺動部3、さらに詳細には保護カバー33および43が乗員側に接触するが、これらの面は相互間で段差がないように処理されているので、乗員の体に強く押し付けられても傷害を受けることがない。
【0027】
フック41,41は肩部Sおよび腰部Wに対してスライドさせることができるので、肩部Sの乗員に対する装着状態を確認しながら、シートベルトに対する連結部4の位置決めを行うことができる。このスライド操作時にフック41が乗員や乗員の衣服に擦れるが、上述のとおり、保護カバー43の端部が丸められており引っ掛ったりする心配はない。その後は締め付けネジ42を締めこむことによりシートベルトの肩部Sおよび腰部Wを連結部4に対して固定させるだけでよい。連結部4の位置調整とあわせてバックル21によりベルト部2の長さを調整することにより、肩部Sを下方に引き下げ、実線で示されるように肩部Sの装着状態を調整して乗員の顔面や首部に掛からない高さに設定することで、シートベルト調整具1の取り付けが終了する。
【0028】
乗員の座高の違いにより生じるシートベルト調整具1と肩部Sおよび腰部Wの交差角θ1およびθ2の変化は、図4の矢印で示されるようにピン32を中心として揺動部3が揺動することにより吸収される。右側シート用に設けられた三点式シートベルトに取り付ける場合は、シートベルトの肩部の傾斜角が逆向きとなるが、揺動部3が逆向きに揺動することにより対応可能である。
【0029】
本実施形態では、連結部4の係合部はフック41により形成されていたが、例えばシートベルトが挿通される筒状部材に形成してもよい。また、連結部4の固定部は締め付けネジ42により形成されていたが、容易に緩まないクリップのようなものを用いるようにしてもよい。
【0030】
本実施形態では、すべり止め部411bはフック41の一面411に樹脂製のエッジ板5が貼り付けられることにより形成されていたが、エッジ板5は金属製であってもよく、溶着、熱カシメ等の方法により取り付けるようにしてもよい。もちろん、フック41をプレス加工等することにより、一体的に形成されるものであってもよい。また、すべり止め部411bは締め付けネジ42の先端部42aに設けるようにしてもよい。ただし、シートベルトがすべり止め部でこすられて傷つかないように、先端部42aに対してすべり止め部が空回りさせる等の工夫をしておく必要がある。
【0031】
本実施形態では、保護カバー33,43を設けたが、揺動部3およびフック41について外周部のエッジ取りが行われる等、乗員にケガをさせることがないように処理されていれば、必ずしも必要ではない。
【0032】
その他、本発明のシートベルト調整具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0033】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係るシートベルト調整具によれば、以下のような優れた効果を奏し得る。
【0034】
揺動部の揺動作用により、肩部の傾斜向きに関係なく、左右いずれのシートでも使用することができる。また、シートベルト調整具とシートベルトの交差角の変化も揺動部により吸収される。したがって、シートベルトの捩れを少なく、乗員拘束機能の低下を防ぐことができる。さらに、揺動部は連結部に軸支持されているので、両者の相対動きより異音(干渉音)が発生することはなく、車内の快適性は損なわれない。
【0035】
係合部をシートベルトに対してスライドさせることができるので、シートベルト調整具の連結部をシートベルトに取り付ける場合、シートベルトの肩部に対する装着状態を確認しながら、まずシートベルト上で係合部をスライドさせて位置決めを行い、その後は固定部を操作することにより固定するだけでよく作業が容易である。
【0036】
連結部は断面コの字状のフックにシートベルトを押し付ける締め付けネジを設けるだけで良いから、簡単に製作することができるものである。
【0037】
衝突事故が発生したときに、すべり止め部によってシートベルトがロックされているため、フックの位置がずれにくく、初期の装着状態が維持されることとなり、乗員拘束機能の低下が防止される。
【0038】
フックの乗員に接触する部位が保護カバーで被われているので、衝突事故が発生したときに連結部が乗員に強く擦れるようなことがあっても、乗員がケガするようなことがない。
【0039】
衝突事故が発生したときに、乗員に対してフック部および揺動部が強く押し付けられることとなるが、前記フックおよび前記揺動部の接触する面は相互に段差がないため、均一に押し付けられることとなり、乗員が傷害を受けることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るシートベルト調整具1を示した図で、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【図2】図1におけるB−B断面を示した図である。
【図3】自動車用シートベルトにシートベルト調整具を取り付けた状態を説明する図である。
【図4】図3における肩ベルトS回りの拡大図である。
【符号の説明】
1 シートベルト調整具
2 ベルト部
3 揺動部
4 連結部
θ1,θ2 交差角
Claims (4)
- 三点式シートベルトの肩部および腰部の中間部を連結するように取り付けられることにより、前記肩部を下方に引き下げて、前記肩部の装着状態を調整するシートベルト調整具であって、
長さ調節可能なベルト部と、該ベルト部の両端に取り付けられる揺動部と、該揺動部が揺動自在に軸支持されるとともに前記肩部または前記腰部に取り付けられる連結部とを有してなり、
前記揺動部は前記肩部または前記腰部と前記ベルト部の交差角の変化に対応可能な方向に揺動し、
前記連結部は、前記肩部または前記腰部に係合させられた状態で前記肩部または前記腰部に対してスライド可能な係合部と、該係合部を係合させた前記肩部または前記腰部に対して所望位置で固定させることができる固定部とを有してなり、
前記係合部は断面コの字状のフックであり、コの字の対向する2面により前記肩部または前記腰部を両側から挟み込むように係合させられ、前記固定部は前記フックの対向する2面のいずれか1面を貫通するように設けられた締め付けネジであり、該締め付けネジをねじ込むことにより前記フックに係合された前記肩部または前記腰部を前記フック押し付けて固定することを特徴とするシートベルト調整具。 - 前記フックにおける前記締め付けネジにより前記肩部または前記腰部が押し付けられる面には、すべり止め部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト調整具。
- シートベルトに取り付けた状態における前記フックの乗員に接触する部位には保護カバーが被されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシートベルト調整具。
- シートベルトに取り付けた状態における前記フックおよび前記揺動部の乗員に接触する面は、前記フックおよび前記揺動部の相互間において段差がないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシートベルト調整具。
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