ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、
(i )PD値の測定に際して用いられるノーズブロックが、その不使用時においてレンズ度数等の測定作業の邪魔にならない状態に退避位置せしめられて、測定作業性の向上やノーズブロックの損傷防止等が効果的に達成され得ると共に、
(ii)PD値の測定に際して、ノーズピースを越えて左右に移動させる際にも眼鏡を上方に大きく持ち上げることが必要とされなくなって、容易に測定することが出来て眼鏡レンズの損傷も効果的に防止され得る、
新規な構造のレンズメーターを提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
(本発明の態様1)
本発明の態様1は、測定対象である眼鏡レンズが載置されるノーズピースを筐体の前方に備えていると共に、略鉛直な案内面を前面に有するレンズテーブルを該筐体から該ノーズピースに向かって突出/引込方向に移動可能に備えており、該眼鏡レンズが装着された眼鏡の上縁部または下縁部を該レンズテーブルの該案内面に当接させて位置決めした状態下で、該眼鏡レンズを該ノーズピースの上に載置して、該ノーズピースを通じて測定用光束を該眼鏡レンズに透過させることにより該眼鏡レンズのレンズ度数等を測定するようにしたレンズメーターにおいて、前記レンズテーブルの下方に配設されて該レンズテーブルに沿って左右方向で前記ノーズピースを越えて直線的に移動可能とされたスライドアームと、該スライドアームの該レンズテーブル上での移動距離を測定するための測定手段を設けると共に、該スライドアームの前方端部にノーズブロックを装着し、該ノーズブロックが該スライドアームから前方に向かって突出する突出位置に保持されるようにして、該突出位置に保持された該ノーズブロックの下方から眼鏡をあてがうことにより該ノーズブロックが該眼鏡の鼻当て付近に上方から嵌まり合って左右方向で係合せしめられると共に、該眼鏡の持ち上げ方向への変位が該ノーズブロックの該突出位置から上方に向かう回動作動を伴って許容されて該ノーズブロックの上方への回動変位により該ノーズピースを上方に回避して当接することなく左右方向への移動が許容されるようにする一方、該ノーズブロックの下方から該眼鏡を取り除いた状態で突出位置に保持された該ノーズブロックに対して外力を及ぼすことにより該ノーズブロックを強制的に下方に回動せしめて該スライドアームの前方端部から下方に向かって垂れ下がった垂下位置に導いて保持せしめることが出来るようにしたことを特徴とするレンズメーターを、特徴とする。
このような本態様に従う構造とされたレンズメーターにおいては、PD値の測定に際して、ノーズブロックの下端縁部がレンズテーブルの下端縁部付近で支持されて、上方に向かって回動可能に配設されることとなる。このように、従来構造の上端縁部で吊り下げ支持せしめたノーズブロックとは反対に、本態様ではノーズブロックが下端縁部で立ち上がり支持されていることから、眼鏡の鼻当て等をノーズブロックの下側から入り込ませて係合させることが出来るのであり、それにより、ノーズブロックより下方に眼鏡が位置せしめられることとなる。
それ故、PD値の測定に際してノーズブロックをノーズピースを越えて左右に移動させる場合にも、眼鏡をそれ程大きく持ち上げなくてもノーズブロックのノーズピースに対する干渉を回避することが可能となる。従って、ノーズピースの上方に押付ピン等が配設されていても、そのような部材に対する眼鏡の当接が容易に回避され得ることとなり、PD値の測定に際しての眼鏡の損傷が有利に防止され得るのである。
また、本態様に従う構造とされたレンズメーターにおいてノーズブロックを使用しない場合には、ノーズブロックを下方に回動させることによりノーズブロックがレンズテーブルの前面を下方に外れて、ノーズピースよりも下方の領域に退避位置せしめられることとなる。それ故、例えばレンズ度数等の測定に際して、レンズテーブルの前面を眼鏡の位置決め等のために自由に使用することが出来ると共に、ノーズピースに対して上方から導かれて載置される眼鏡や、ノーズピース上から上方に向かって取り除かれる眼鏡に対して、かかるノーズブロックが干渉したりして邪魔になることがなく、作業領域が有利に確保され得ると共に、ノーズブロックへの手指等の打ち当たりに起因する損傷も効果的に防止されるのである。
加えて、眼鏡レンズをノーズピース上に載置して目的とする測定位置を測定光束上に位置決めするに際しては、一般に、作業者(検者)はノーズピース上を斜め上方から覗き込んで作業することとなるが、その際、ノーズピースよりも下方に退避して位置せしめられたノーズブロックは、作業者とノーズピースとの間から完全に外れてしまうことから、作業者が上方の如何なる場所から覗き込んだとしても、その測定領域への視線がノーズブロックで遮られるようなことがなく、作業領域に存在する眼鏡レンズや眼鏡フレームに対する視認性が安定して有利に確保され得るのである。
(本発明の態様2)
本発明の態様2は、前記態様1に係るレンズメータにおいて、前記ノーズブロックを前記突出位置となる下方に向かって付勢する付勢手段を設けたことを、特徴とする。
本態様に従う構造とされたレンズメーターにおいては、ノーズブロックの下方からあてがうように重ね合わされて係合せしめられる眼鏡の鼻当て等に対する該ノーズブロックの係合状態が、付勢手段による付勢力を利用して一層有利に保持され得る。なお、付勢手段としては、例えば板ばねやコイルスプリング等が採用可能である。尤も、前記態様1に記載のレンズメータでは、このような付勢手段は必ずしも必要でなく、例えばノーズブロックが、重力の作用に基づいて立ち上げ状態から下方(突出位置側)に回動せしめられることを利用して、ノーズブロックの鼻当て等に対する係合状態が保持されるようにすることも可能である。
(本発明の態様3)
本発明の態様3は、前記態様1又は2に係るレンズメーターにおいて、前記ノーズブロックが前記突出位置に保持された際に、該ノーズブロックが、水平面よりも所定量だけ斜め上方に向かって傾斜して前方に突出するようになっていることを、特徴とする。
このような本態様に従う構造とされたレンズメーターにおいては、PD値を測定するに際して、眼鏡の鼻当て等をノーズブロックの下方に重ね合わせて係合状態とするに際して、ノーズブロックの前方から眼鏡を差し入れることが容易となって、眼鏡をノーズブロックに係合させてからPD値を測定する一連の操作を一層容易に行うことが可能となる。
(本発明の態様4)
本発明の態様4は、前記態様1乃至3の何れかに係るレンズメーターであって、前記筐体の前壁面において、前記レンズテーブルを、その引込位置において収容するための収容凹部が形成されており、該収容凹部に該レンズテーブルが収容位置せしめられた状態下で、前記ノーズブロックが前記垂下位置において該収容凹部の開口部の下方に位置して前記筐体の前壁面に略沿うようにして垂れ下がって位置せしめられるようになっていることを、特徴とする。
このような本態様に従う構造とされたレンズメーターおいては、レンズテーブルを使用しない測定時や、或いはレンズメータの搬送時や収納時において、レンズテーブルを、筐体の前壁面から余り突出しない状態或いは実質的に突出しない状態に収納することが出来る。その際、ノーズブロックが収容凹部の外側に位置せしめられることから、ノーズブロックが邪魔になることなく、レンズテーブルの多くの部分、好適にはその全体を、収容凹部に対して収容させることが出来るのである。また、レンズテーブルの収容凹部への収容状態下で、ノーズブロックが筐体前壁面に沿って配設されることから、例えば上述の如きレンズテーブルを使用しない測定時や、或いはレンズメータの搬送時や収納時等において、ノーズブロックが邪魔になることがなく、その損傷等も有利に回避され得る。
(本発明の態様5)
本発明の態様5は、前記態様1乃至4の何れかに係るレンズメーターにおいて、前記回動アームを前記突出位置から上方に向かって回動させて立上位置とすることにより、該ノーズブロックが前記レンズテーブルの前記案内面に略沿って位置せしめられるようにすると共に、該ノーズブロックを該レンズテーブルに対して係止して該立上位置に保持せしめるロック機構を設けたことを、特徴とする。
このような本態様に従う構造とされたレンズメーターにおいては、例えば、レンズテーブルを使用しない測定時や、或いはレンズメータの搬送時や収納時において、ノーズブロックをレンズテーブルの前面に重ね合わせて立ち上がった状態を退避状態として保持せしめることが可能となる。従って、このようにレンズテーブルの前面に沿って立ち上がった退避状態と、上述の如きレンズテーブルの下端縁部から垂れ下がった退避状態とを、測定時の条件や検者の好み、或いは搬送時や収納時の条件等に応じて選択的に採用することが出来る。
(本発明の態様6)
本発明の態様6は、前記態様1乃至5の何れかに係るレンズメーターにおいて、前記スライドアームの前方端部に対して、該スライドアームの移動方向に延びる第一の回動軸回りで回動可能に回動アームを装着せしめて、該回動アームが該第一の回動軸回りで上側回動位置と下側回動位置とにそれぞれ位置決め保持されるようにすると共に、該回動アームの先端部分に対して、該第一の回動軸と平行な第二の回動軸回りで回動可能に前記ノーズブロックを装着し、該回動アームを該上側回動位置に保持せしめた状態下で該ノーズブロックが前記突出位置から上方に向かって該第二の回動軸回りで回動変位せしめられるようにする一方、該回動アームを該下側回動位置まで回動させることによって、突出位置とされていた該ノーズブロックが前記垂下位置に導かれるようにした請求項1乃至5の何れかに記載のレンズメーター。
本態様に従う構造とされたレンズメーターにおいては、第一の回動軸回りでの回動アームの回動作動の特性と第二の回動軸回りでのノーズブロックの回動作動の特性を各別に設定することによって、前述の如きノーズブロックの突出位置から上方への比較的に自由な回動作動と、該ノーズブロックの突出位置から垂下位置への制限的な回動作動とを、容易に且つ有利に設定することが可能となる。例えば、第一の回動軸回りでの回動アームの回動作動を摩擦力や適当な係止手段によって制限すると共に、第二の回動軸回りでのノーズブロックの回動作動が容易に許容されるようにすることにより、回動アームを上側回動位置に対して固定的に保持せしめた状態下では、ノーズブロックがPD値の測定に有利に利用され得る状態が発現される一方、回動アームを下側回動位置に対して固定的に保持せしめた状態下では、ノーズブロックがそれを使用しない測定等に邪魔にならない退避位置に有利に保持され得る状態が発現されることとなる。
なお、本態様において、前記態様2に係る付勢手段は、第二の回動軸回りでノーズブロックを下方(突出位置)に向かって付勢する付勢手段によって構成され得る。また、本態様においては、回動アームを上側回動位置と下側回動位置とにそれぞれ位置決め保持するために、例えば回動アームの第一の回動軸回りでの摩擦抵抗を利用することも可能であるが、その他、例えば回動アームを、前記第一の回動軸回りで前記上側回動位置と前記下側回動位置との少なくとも一方の回動位置に対して節度感をもって保持せしめる節度機構が好適に採用される。かかる節度機構としては、例えば、回動アームとスライドアームの間に、凹凸等の離脱可能な係止部を設けたり、ばね手段を利用して回動アームを何れかの回動位置に対して選択的に弾性保持せしめる弾性保持機構(例えば、周知のバインダクリップにおける両操作部の弾性位置決め機構等を適用できる)を設けたりすることによって実現可能である。このように回動アームを上下の回動位置に保持せしめるための特別な手段を採用することにより、回動アームが不必要に回動してしまうことを防止することが出来ると共に、回動アームの回動位置を正確に設定することが出来るのであり、それによって、ノーズブロックを、それが利用されるPD値の測定位置と、それが利用されない退避位置とに、より確実に導いて保持せしめることが出来るのである。
(本発明の態様7)
本発明の態様7は、前記態様6に係るレンズメーターにおいて、前記第一の回動軸および前記第二の回動軸が、何れも、前記レンズテーブルの前記案内面と略同じかそれより前方に位置せしめられていることを、特徴とする。
このような本態様に従う構造とされたレンズメーターにおいては、回動アームやノーズブロックの第一及び第二の回動軸回りの回動作動がレンズテーブルへの干渉による問題を伴うことなく十分に広い角度範囲に亘って有利に実現され得る。特に、本態様は、前記態様4と組み合わせて好適に採用されることとなり、それによって、レンズテーブルを収容凹部に対して略完全に収容せしめた状態下でも、ノーズブロックを筐体の前壁面に近接して沿うようにして下方に垂下させて退避位置せしめることが可能となる。
(本発明の態様8)
本発明の態様8は、前記態様1乃至5の何れかに係るレンズメーターにおいて、前記スライドアームの前方端部に対して、該スライドアームの移動方向に延びる直接支持軸回りで回動可能に前記ノーズブロックを装着すると共に、該直接支持軸回りでの該ノーズブロックの回動抵抗を所定角度範囲で異ならせることにより、該ノーズブロックが前記突出位置に保持されてそこから上方に向かって立ち上がる方向には小摩擦抵抗で容易に回動変位せしめられるようにする一方、該ノーズブロックが該突出位置から下方に垂れ下がる方向には大摩擦抵抗で回動変位せしめられ難くして、該突出位置に保持された該ノーズブロックに外力を及ぼして強制的に下方に回動させることによって該ノーズブロックを前記垂下位置に導くことが出来るようにしたことを、特徴とする。
本態様に従う構造とされたレンズメーターにおいては、単一の支持軸回りでのノーズブロックの回動機構によって、PD値の測定に際して利用可能なノーズブロックの突出状態と、ノーズブロックを使用しない状態下でのノーズブロックの退避状態とを、選択的に提供することの出来る前述の如き本発明が、簡単な構造をもって有利に実現可能となる。即ち、ノーズブロックが突出位置から上方に向かう比較的自由な回動作動に基づいて、ノーズブロックを利用しての前述の如きPD値の測定が有利に実施可能とされる一方、ノーズブロックの突出位置から下方への回動が制限されていることにより、ノーズブロックを、PD値の測定に利用される突出状態と、測定に利用されない退避状態とに、それぞれ有利に位置決め保持することが出来るのである。
なお、本態様において、前記態様2に係る付勢手段は、直接支持軸回りでノーズブロックを下方(突出位置)に向かって付勢する付勢手段によって構成され得るが、この付勢手段は、ノーズブロックを突出位置よりも下方にまで回動させてしまわないように、かかる付勢手段による付勢力の大きさが摩擦抵抗を考慮して設定される。
また、本態様においては、ノーズブロックを手指で押し下げた際に、ノーズブロックが垂下位置にまで回動せしめられたことを知覚認識させたり、ノーズブロックを垂下位置に一層安定して位置決め保持せしめること等を目的として、例えば、ノーズブロックを垂下位置に係止させて位置決めする凹凸係止機構をスライドアームとノーズブロックの間に設けたり、或いは、ノーズブロックの直接支持軸回りでの回動摩擦抵抗を垂下位置においてだけ小さくすることなどによって節度機構を付与するようにしても良い。
(本発明の態様9)
本発明の態様9は、前記態様8に係るレンズメーターであって、前記スライドアームと前記ノーズブロックの一方において、前記直接支持軸回りで周方向に延びる円弧状の摩擦面を形成すると共に、それらスライドアームとノーズブロックの他方において、該直接支持軸回りの該ノーズブロックの回動に際して該摩擦面に摺接する摺接面を形成し、該摩擦面の該直接支持軸回りにおける曲率半径を周方向の所定角度範囲で異ならせて、該摩擦面に対する該摺接面の摺動抵抗を、該ノーズブロックの該直接支持軸回りの回動位置に応じて異ならせたことを、特徴とする。
このような本態様においては、スライドアームの突出位置から上方への小摩擦抵抗下での回動作動と、突出位置から下方への大摩擦抵抗下での回動作動とが、何れも、連続して周方向に延びる一つの摩擦面によって、簡単な構造で優に実現され得るのであり、構造の更なる簡略化が達成され得る。なお、本態様において、好ましくは、ノーズブロックの一軸回りの回動に際して互いに摺接して摩擦抵抗を生ずる摩擦面と摺接面が、直接支持軸の長手方向両端部分に位置して一対形成されることとなり、それによって、ノーズブロックの回動作動の安定化が図られ得る。
(本発明の態様10)
本発明の態様10は、前記態様8又は9に係るノーズブロックにおいて、前記直接支持軸が、前記レンズテーブルの前記案内面と略同じか前方に位置せしめられていることを、特徴とする。
本態様においては、ノーズブロックの直接支持軸回りでの回動作動に際して、ノーズブロックのレンズテーブルへの干渉が有利に回避され得るのであり、特に本態様を前記態様4と組み合わせて採用することにより、レンズテーブルを収容凹部に対して略完全に収容せしめた状態下でも、ノーズブロックを筐体の前壁面に近接して沿うようにして下方に垂下させて退避位置せしめることが可能となる。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたレンズメーターにおいては、レンズテーブルの下方に配設されたスライドアームでノーズブロックが支持されて、PD値の測定に際してノーズブロックが突出位置から立上方向に回動可能とされており、眼鏡をノーズブロックの下側から入り込ませて係合させるようになっていることから、ノーズブロックをノーズピースを越えて左右に移動させる場合にも、眼鏡をそれ程大きく持ち上げなくてもノーズブロックがノーズピースの上方に大きく退避されてノーズピースへの干渉が有利に回避され得るのであり、ノーズピースの上方に配設された他部材に対する眼鏡レンズの干渉に起因する損傷が効果的に防止され得る。
また、本発明に従う構造とされたレンズメーターにおいては、ノーズブロックを使用しない場合に、ノーズブロックがレンズテーブルの前面を下方に外れて、ノーズピースよりも下方の領域に退避位置せしめられることから、例えばレンズ度数等の測定に際して、レンズテーブルの前面や、レンズテーブルおよびノーズピースより上方に位置する作業空間を、ノーズブロックで邪魔されることなく自由に大きく使用することが可能となって、測定作業が容易となると共に、ノーズブロックへの手指等の打ち当たりに起因する損傷も効果的に防止され得るのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明の一実施形態であるレンズメーター10の全体概略が示されている。このレンズメーター10は、略竪形ボックス状の筐体12を備えている。この筐体12の前面側は、下部に比して上部が前方に突き出しており、庇状に突き出したこの上部14によって下部前面には全体的に大きく凹んだ測定用スペース16が形成されている。また、突出せしめられた上部14の突出前面には、測定状態や測定結果を表示する液晶表示画面18が設けられていると共に、液晶表示画面18の下方には、各種の操作ボタン20が配設されている。
また、上述の測定用スペース16には、幅方向中央部分において上下方向に離隔して対向位置する光路用凸部22,24が前方に突出形成されている。そして、下側の光路用突部24の突出上面には、略円筒形状で上方に向かって突出するノーズピース26が突設されている。本実施形態では、筐体12の内部に収容された発光源から導かれた測定光束が、上側の光路用凸部22内から鉛直下方に向かって投射されて、測定用スペース16を通って、ノーズピース26の先端面に開口する入射窓から筐体12内に入射され、筐体12内に収容配置された受光素子によってかかる測定用光束が受光されるようになっている。即ち、ノーズピース26上に測定用光束によるレンズ度数等の測定ポイントが形成されているのである。
更にまた、上側の光路用凸部22には、ノーズピース26に向かって下方に突出するレンズ押え28が鉛直上下方向に移動可能に装着されており、印点レバー30の回転及び上下操作に基づいて、かかる印点レバー30を含む印点部が上下方向に駆動可能とされている。また、レンズ押え28には、下方に向かって突出する複数本(本実施形態では3本)のレンズ押えピン32が固定されている。そして、レンズ押え28を下方に変位させることにより、複数本の押えピン32が下方に向かって一体的に降下変位せしめられるようになっている。
これにより、本実施形態では、ノーズピース26上に眼鏡レンズを載置せしめて、そのレンズ度数等の光学特性の測定点をノーズピース26上に位置決めした状態下で、レンズ押え28を下方に変位せしめることにより、ノーズピース26上に載置された被検レンズを複数本のレンズ押えピン32でノーズピース26上に押し付けて位置固定に保持せしめ得るようにされている。
さらに、筐体12において測定用スペース16を形成する下部前面には、レンズテーブル34が配設されている。このレンズテーブル34は、筐体12において水平となる幅方向の略全長に亘って延びる長手ブロック状を有しており、前面が略鉛直で平坦な案内面36とされている。そして、かかるレンズテーブル34は、ノーズピース26よりも奥方(筐体12側)に位置せしめられており、測定用光束の後方に控え位置せしめられている。また、かかる状態下で、印点レバー30を含む印点部を下方に駆動変位させることにより、図示しない内蔵の印点手段によって被検レンズの所定位置に印点を記すことが出来るようになっている。
また、図2に示されているように、レンズテーブル34には、その背後から奥方に突出して筐体12内に延びる駆動ロッド38が複数本設けられている。そして、図面上には明示されていないが、筐体12内に設置されたラック・ピニオン機構や歯車機構等により、筐体12の側面に突設された調節レバー40の回動操作力が、これらの駆動ロッド38を介して、レンズテーブル34に及ぼすことにより、レンズテーブル34を、全体として筐体12の前後方向に駆動変位させて、案内面36を鉛直に保ちつつノーズピース26に対して接近/離隔方向で位置調節することが出来るようになっている。
更にまた、筐体12の前面には、高さ方向の中間部分を水平方向に延びる溝状の収容凹部42が形成されている。この収容凹部42は、ノーズピース26の奥方に位置しており、収容凹部42の底面から、レンズテーブル34の駆動ロッド38が突出せしめられている。そして、レンズテーブル34を最奥方に位置せしめることにより、レンズテーブル34が収容凹部42に入り込んで殆ど突出しない状態で収容位置せしめられるようになっている。即ち、測定用スペース16を形成する筐体12の下部前面は、収容凹部42を挟んで上部前面44と下部前面46に分離されており、これら上下前面44,46が略鉛直に広がる同一面とされていると共に、レンズテーブル34の案内面36も、その収容状態下では、上下前面44,46と略面一となるようにされているのである。
さらに、レンズテーブル34には、その案内面36上に突出し得る状態で、ノーズブロック48が組み付けられている。このノーズブロック48は、全体として略矩形のプレート形状を有しており、下端縁部において、水平方向に延びる回動軸回りに回動可能に支持されていると共に、レンズテーブル34に沿って左右方向に変位可能とされている。
詳細には、図3に詳細が示されているように、レンズテーブル34には、その奥方から下方を回り込んで案内面36よりも下方で且つ前方に僅かに突出した位置まで延び出すスライドアーム50が設けられている。このスライドアーム50が、レンズテーブル34の内部において長手方向に配設されたガイドレール52で案内支持されることにより、水平方向に自由にスライド変位可能とされている。また、ガイドレール52上でのスライドアーム50の位置がエンコーダ等の位置センサで検出されるようになっており、スライドアーム50の移動距離も計測可能とされている。
このことから、本実施形態では、かかる位置センサとその検出信号の演算手段(図示せず)によって、スライドアーム50のレンズテーブル34上での移動距離を測定するための測定手段が構成されている。なお、スライドアーム50の左右方向における移動距離の測定手段は、エンコーダ等に限定されるものでなく、例えば、レンズテーブル34上で左右方向に目盛を固定表示すると共に、スライドアーム50に目印を設けて、この目印がレンズテーブル34上の目盛と合致する位置を目視することにより、検者が自身で測定するものさし構造によって、かかる測定手段を構成することも可能である。或いは、かかるスライドアーム50の移動距離の測定手段として、例えば特許文献1(特開平8−271378号公報)や特許文献3(特許第3434941号公報)に記載されているように、左右方向に配設した直線抵抗体上でのスライドアーム50の位置を電気抵抗値に基づいて検出するようにした電気的な距離検出器を利用することもできる。
また、スライドアーム50の前端縁部には、レンズテーブル34の案内面36よりも下方で且つ前方に僅かに突出した位置において水平方向に延びる第一の回動軸54が設けられており、この第一の回動軸54回りで回動可能な状態で、回動アーム56が、スライドアーム50に対して連結支持されている。
かかる回動アーム56は、数mm〜15mm程度の比較的に短い突出長さを有しており、図4に示されているように、第一の回動軸54から前方〜上方に向かって突出して、略90度かそれを少し越える程度の角度範囲内で首振り状に回動可能とされている。特に、本実施形態では、図3に示されているように略上方に向かって立ち上がる上向位置と、図4に示されているように前方より僅かに下方に向かって傾斜して突出する下向位置との両位置に跨がって回動可能とされている。しかも、回動アーム56の第一の回動軸54回りの回動に際しては、回動アーム56と第一の回動軸54またはスライドアーム50との間における摺接抵抗(摩擦抵抗)が発揮されて、回動アーム56が上向位置や下向位置において回動位置が安定して固定的に設定されるようになっている。なお、回動アーム56の上向位置への保持は、そのような摺接抵抗による他、例えば、相対的に回動変位せしめられる回動アーム56とスライドアーム50の摺接面間において、それらの一方に凹部を設けると共に他方に凸部を設けて、凹部に対する凸部の嵌まり込みによる節度機構により、回動アーム56が適当な回動位置、例えば上向位置と下向位置の二つの回動位置に対して、それぞれ節度感をもって保持され得るような構成などを採用することも可能である。
なお、かかる節度機構に代えて、例えば、スライドアーム50と回動アーム56の間に、板ばね等の付勢手段を装着せしめて、回動アームが回動方向の中間に位置せしめられた場合には、上向位置と下向位置の何れかに付勢されて導かれ、それらの何れかの位置に弾性的に保持されるようにしても良い。或いはまた、回動アーム56を上向位置に保持せしめるだけの凹凸等の節度機構を設けて、下向位置への保持は、重力を利用して行うようになっていても良い。何れにしても、回動アーム56は、上述の上向位置と下向位置において、それぞれ、位置決め保持されるようになっている。
さらに、この回動アーム56の突出先端部分には、第一の回動軸と平行に延びる第二の回動軸58が設けられており、この第二の回動軸58回りで回動可能な状態で、ノーズブロック48が、回動アーム56に対して連結支持されている。かかるノーズブロック48は、略平板形状を呈しており、5〜20mm程度の幅寸法と10〜35mm程度の長さ寸法とされて、僅かに突出方向に向かって拡幅すると共に、その前面側の両側縁部には面取形状のテーパが付されており、後述するように、下方からあてがわれる眼鏡の鼻当てに対して安定して係合し得るようになっている。そして、このノーズブロック48は、図3に示されているように、第二の回動軸58から更に外方に突出せしめられており、第二の回動軸58が上向位置に保持された状態下で、かかるノーズブロック48は、水平方向よりも僅かに斜め上方に向かって傾斜した前方への突出位置(図3中の実線図示位置)と、略鉛直上方に向かって立ち上がる立上位置(図3中の仮想線図示位置)との間に亘る角度範囲内で首振り状に回動可能とされている。
特に、本実施形態では、第二の回動軸58に付勢手段としてのコイル状のトーションスプリング60が外挿されており、このトーションスプリング60の各一方の端部が回動アーム56とノーズブロック48に係止されることにより、ノーズブロック48には、回動アーム56に対して、常時、図3中の左回りの付勢力が及ぼされている。そして、この付勢力によって、回動アーム56が上向位置に保持せしめられた状態下で、ノーズブロック48が突出位置に弾性的に保持されるようになっていると共に、かかる状態下でノーズブロック48を上方に持ち上げることにより、ノーズブロック48が、常に下方への回動付勢力を付与された状態で、第二の回動軸58回りで任意の回動位置に回動変位せしめられるようになっている。これにより、後述するように、下方からあてがわれる眼鏡の鼻当てに対する係合状態が安定して保持され得ると共に、眼鏡を上方に持ち上げることによって、その鼻当てに係合されたノーズブロック48が任意の角度だけ、第二の回動軸58回りに回動せしめられて上方に持ち上げられるようになっている。
なお、ノーズブロック48を、第二の回動軸58回りで下方に向かって付勢する付勢手段は、必ずしも設ける必要がなく、例えば重力を利用して、ノーズブロック48が突出位置に付勢されて導かれるように構成しても良い。
また、回動アーム56が上向位置に保持せしめられた状態下で突出位置に保持せしめられたノーズブロック48は、回動アーム56が下向位置に回動位置せしめられた場合に、図4〜6に示されている如く、略鉛直下方に向かって垂れ下がる垂下位置に導かれるように、回動アーム56およびノーズブロック48における第一及び第二の回動軸54,58回りの回動位置が設定されている。
さらに、レンズテーブル34には、長手方向中央を外れた位置において、奥方から上方を回り込んで案内面36の上側から前方に僅かに突出する位置まで延び出すカギ形のロックストッパ61が固設されている。そして、図3に仮想線で示されていると共に、図7にも示されているように、回動アーム56を上向位置としてノーズブロック48を立上位置まで回動させることにより、ノーズブロック48の上端角部をロックストッパ61に係止させて、該ノーズブロック48をトーションスプリング60による付勢力に抗して立上位置に保持せしめることが出来るようになっている。即ち、このようにしてノーズブロック48を、レンズテーブル34の案内面36に近接して沿わせて立ち上がる状態で位置決め保持せしめることにより、例えば、レンズメーター10の搬送時などにおいて、ノーズブロック48の損傷を防止することが出来るのである。
特に、本実施形態では、第一及び第二の回動軸54,58がレンズテーブル34の案内面36より前方に位置せしめられていることから、上述の如く垂下位置に保持されたノーズブロック48がレンズテーブル34の案内面36よりも前方に位置せしめられるようになっている。これにより、図4〜6に示されているように、垂下位置に保持されたノーズブロック48が邪魔をすることなく、レンズテーブル34の全体を収容凹部42に収容せしめることが可能となっている。また、そのようなレンズテーブル34の収容状態下では、垂下位置に保持されたノーズブロック48が、筐体12における収容凹部42の開口下縁部から筐体12の前壁面に近接して沿うように位置せしめられるようになっている。
また、ノーズブロック48は、眼鏡のPD値(光軸間距離)の測定に用いられるものであることから、使用しない状況では、レンズテーブル34の案内面36を下方に外れて、垂下位置に保持され得るようになっている。即ち、垂下位置のノーズブロック48は、ノーズピース26より上方に形成された測定用光束の領域から下方に外れて、且つレンズテーブル34の案内面36からも完全に外れて退避位置せしめられるようになっている。しかも、かかる退避位置では、レンズテーブル34の案内面36からの前方への突出量が、十分に小さくなるように、レンズテーブル34の略下方に垂下するように位置せしめられている。
而して、このような構造とされたレンズメーター10を用いることにより、眼鏡フレームに組み付けられた左右眼鏡レンズのレンズ度数等の光学特性やPD値を、容易に且つ有利に測定することが出来るのである。
具体的には、例えばPD値を測定するに際しては、先ず、図8に示されているように、調節レバー40を操作してレンズテーブル34を適当量だけ突出せしめた状態下で、かかるレンズテーブル34の案内面36に対して、眼鏡62の左右枠下端の外周面を当てることで、眼鏡62の全体を安定位置決めする。その際、眼鏡62に設けられた左右一対の鼻当て或いはその付近をノーズブロック48の下側に入り込ませて、ノーズブロック48を下方から押し上げるようにして、ノーズブロック48を左右一対の鼻当てで左右から挟んだ状態で、該ノーズブロック48を眼鏡62に対して左右方向に相対的に位置決めする。
そして、かかる状態下で必要に応じて調節レバー40を操作してレンズテーブル34を前後方向に突出/引込変位せしめると共に、眼鏡62の全体をレンズテーブル34の案内面36に沿って左右方向に変位せしめることにより、右眼鏡レンズ64をノーズピース26上で変位させて、ノーズピース26の開口部から投射される測定用光束の光軸が右眼鏡レンズ64の測定の目標位置である光学中心に合致するように位置合わせする。なお、この光学的な位置合わせに際しては、例えば、液晶表示画面18において、右眼鏡レンズ64上での現在の測定ポイントと目標位置である光学中心が併せて表示されることにより操作を視覚的に補助せしめるようにすることが望ましい。そのような測定補助の作動は、例えば特開2000−266639号公報等に記載された公知の技術であることから、ここでは詳細な説明を省略する。
そして、ノーズピース26への載置状態で右眼鏡レンズ64の光学中心に測定用光束の光軸を合致させたら、その状態下で、ノーズブロック48の左右方向の位置を、前述のスライドアーム50の位置を検出する位置センサによって検出して、記憶手段に記憶しておく。
続いて、図9に示されているように、レンズテーブル34の位置をそのままにして、眼鏡62の全体を左右方向に動かして、図10に示されているように、左眼鏡レンズ66をノーズピース26上に位置せしめる。かかる操作は、眼鏡62の全体を少し持ち上げて行うことにより、左右眼鏡レンズ64,66のノーズピース26への擦れを回避するようにして行う。
また、この際、ノーズブロック48は、眼鏡62における左右一対の鼻当ての間に挟み込まれたまま、眼鏡62と一体的に移動せしめられることとなる。なお、かかるノーズブロック48は、眼鏡62の鼻当てで上方に押し上げられていることに加えて、眼鏡62がノーズピース26より更に少し上に持ち上げられることから、その前方への突出位置から第二の回動軸58回りで立ち上げ方向に所定量だけ回動せしめられることとなり、それによって、ノーズブロック48は、ノーズピース26を上方へ逃げるようにして干渉を回避せしめられて、ノーズピース26を越えて左右方向に移動し得るようになっている。
その後、左眼鏡レンズ66をノーズピース26上に載置して、前述の右眼鏡レンズ64の場合と同様に、その光学中心を測定用光束の光軸に合致させたら、その際のノーズブロック48の左右方向の位置を、スライドアーム50の位置を検出する位置センサによって検出して、記憶手段に記憶する。そして、右眼鏡レンズ64の位置決め時に記憶されたノーズブロック48の位置データと、左眼鏡レンズ66の位置決め時に記憶されたノーズブロック48の位置データから、左右の眼鏡レンズ64,66の光軸間距離(PD値)を演算手段で算出する。なお、求められたPD値は、例えば、前述の液晶表示画面18に表示される。
また一方、眼鏡62の眼鏡レンズ64,66における球面レンズ度数や円柱レンズ度数,加入度数,円柱軸角度等の光学特性を測定するに際しては、前述のPD値の測定と同様にレンズテーブル34を利用して眼鏡62に基準方向を与えた状態で、左右の何れかの眼鏡レンズ64,66をノーズピース26上に載置せしめて、レンズテーブル34の案内面36に沿って眼鏡62を左右に変位させて、測定位置を測定用光束の光軸に合わせた状態下で、測定光束を用いた光学的な測定機構によって測定が行われることとなる。なお、このような測定光学系は、例えば特開2000−266639号公報等に開示された周知のものが任意に採用され得るものであることから、ここでは詳細な説明を省略する。
このような光学特性の測定において、前述のPD値の測定と異なるところは、ノーズブロック48の使用が必ずしも必要ないことである。従って、光学特性の測定に際しては、図5に示されているように、ノーズブロック48を下方に押し下げてレンズテーブル34の下方に位置せしめられた第一の回動軸54よりも下方に垂下した状態となるまで回動させてかかる垂下位置に保持して、筐体12の下部前面46に沿うように位置せしめるようにされる。
これにより、ノーズブロック48は、レンズテーブル34の案内面36から完全に外れた退避されると共に、測定用光束の光路が形成され且つ被検レンズである左右の眼鏡レンズ64,66が位置せしめられるノーズピース26よりも上方の測定用領域から、完全に外れた位置に退避せしめられることとなる。それ故、かくの如く退避位置に保持されたノーズブロック48は、測定のための操作や、特にノーズピース26に対して上方から眼鏡62を導いて載置すると共に、ノーズピース26から上方に眼鏡62を外して退去せしめる操作にも、悪影響を及ぼすことがなく、良好な作業性が確保され得るのである。加えて、ノーズブロック48は、ノーズピース26よりも下方に退避位置せしめられることから、ノーズピース26上に載置される眼鏡レンズ64,66の位置を斜め上方から覗き込むように確認等する検者の視線が、ノーズブロック48の存在によって遮られたり、邪魔になったりすることが全く無いのであり、操作の間隔も非常に優れたものとなるのである。
さらに、PD値の測定に際しても、ノーズブロック48が下端縁部で回動可能に支持されており、その下方に眼鏡62を入り込ませて係合させるようになっていることから、図9に示されているように、ノーズブロック48をノーズピース26を越えて左右に移動させる場合にも、眼鏡62をそれ程大きく持ち上げなくても、眼鏡62の上側に載置状態とされたノーズブロック48が眼鏡62よりも大きく、ノーズピース26上に退避せしめられて、ノーズピース26に対する干渉が回避され得ることとなる。従って、ノーズピース26の上方に配設されて、レンズ度数等の測定に際して眼鏡レンズ64,66をノーズピース26上に押し付け保持せしめるレンズ押えピン32等に対して、眼鏡が干渉してしまうことが有利に回避され得ることとなり、PD値の測定に際しての眼鏡レンズ64,66の損傷、即ち眼鏡レンズ64,66の表面コーティング材の剥離等の問題が有利に防止され得るのである。
特に、本実施形態のノーズブロック48は、突出方向先端側に行くに従って幅広となる形状とされていることから、眼鏡62を持ち上げた際にノーズブロック48の眼鏡62に対する係合位置が、ノーズブロック48の幅広の先端側に移動せしめられることに伴って、ノーズブロック48が一層大きく上方に跳ね上げられるようにして、ノーズピース26から退避変位せしめられるようになっている。
次に、図11〜13には、本発明の第二の実施形態としてのレンズメーターが示されている。なお、本実施形態では、前述の第一の実施形態としてのレンズメーター10に比して、スライドアーム50によるノーズブロック48の支持構造についての別態様を例示するものであることから、ノーズブロック48の支持構造に関する要部だけを拡大図示して説明すると共に、図中、第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、レンズテーブル34の下方に配設された板状のスライドアーム50の前方先端部が上方に向かって屈曲して立ち上がった竪板部72とされており、この竪板部72が、レンズテーブル34の下方から案内面36の前方に回り込んで位置せしめられている。また、竪板部72の左右両側には、前方に向かって突出する一対の支持片74,74が一体形成されている。そして、これら左右一対の支持片74,74の間に跨がって円形ロッド状の直接支持軸76が配設されており、かかる直接支持軸76が、レンズテーブル34の案内面36の下部前方に位置して該案内面36と平行に水平方向に延びるようにして支持せしめられている。
さらに、直接支持軸76の軸方向両端部は、一対の支持片74,74から両外方に突出せしめられており、それら両側の突出先端部に対して、ノーズブロック48の下端部が連結されて支持せしめられている。即ち、ノーズブロック48の下端部には、左右両側から一対の脚部78,78が突出して一体形成されており、これら両脚部78,78が、スライドアーム50に突設された一対の支持片74,74に対して各外側から重ね合わされていると共に、両脚部78,78に貫設された挿通孔80,80に対して直接支持軸76が挿通されている。これにより、ノーズブロック48は、直接支持軸76の回りで回動可能に支持されている。なお、直接支持軸76は、支持片74,74と脚部78,78の少なくとも一方に対して回動可能とされることによって、ノーズブロック48の回動変位が許容されるようになっていれば良い。
また、各支持片74は、竪板部72から突出した先端部分が、直接支持軸76の中心軸回りで周方向に延びる略半円形状の外周面とされており、この外周面によって円弧状の摩擦面82が構成されている。ここにおいて、摩擦面82の曲率半径が周方向で部分的に異ならされており、上側の略半周部分が小径の円弧外周面82aとされている一方、下側の略半周部分が大径の円弧外周面82bとされている。なお、大径の円弧外周面82bには、竪板部72に近接する基端部において切欠状に小径とされた位置決め用凹部84が形成されている。
一方、ノーズブロック48の各脚部78には、内側面に突出して支持片74に向かって延びる摺接突部86が一体形成されている。この摺接突部86の先端部分は、半円状にまるめられて支持片74の外周面(摩擦面)82に対して、径方向外方から対向位置せしめられている。そして、ノーズブロック48が直接支持軸76回りで回動せしめられることにより、摺接突部86の半円状の先端面88が、支持片74の摩擦面82上を周方向に移動して摺接するようになっており、かかる摺接によって、ノーズブロック48の直接支持軸76の回りの回動に対する摩擦抵抗が発揮されるようになっている。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、摺接突部86の先端面88によって摺接面が構成されている。
特に、本実施形態では、直接支持軸76の中心軸からの径方向における摺接突部86の先端面88の離隔距離が、支持片74における小径の円弧外周面82aの曲率半径と略同じか僅かに大きく設定されていると共に、支持片74における大径の円弧外周面82bの曲率半径よりも小さく設定されている。これにより、ノーズブロック48が回動せしめられた際、その回動位置に応じて、摺接突部86の先端面88が、支持片74の小径の円弧外周面82aには殆ど当接しないが、支持片74の大径の円弧外周面82bには当接したままの状態で摺動せしめられるようになっている。
この結果、ノーズブロック48は、図11及び図12に実線で示された突出位置から上方に向かっては、摺接突部86の先端面88が支持片74の小径の円弧外周面82a上を移動することによって、小さな抵抗で容易に回動せしめられるようになっている。一方、かかる突出位置から図11に仮想線で示されると共に図13に実線で示された垂下位置までは、摺接突部86の先端面88が支持片74の大径の円弧外周面82b上を当接しつつ移動することから、手指で下方への外力を加えることによってはじめて大きな抵抗下で回動せしめられるようになっているのである。なお、ノーズブロック48を垂下位置まで回動させると、摺接突部86の先端面88が、支持片74に形成された位置決め用凹部84に嵌まり合うことにより、かかる垂下位置への位置決め保持が為されるようになっている。
従って、このようなノーズブロック48の支持構造を備えた本実施形態のレンズメーターにおいても、前記実施形態と同様に、ノーズブロック48を突出位置に配設せしめた状態下でPD値の測定を有利に行うことが出来ると共に、かかる突出位置から下方に向けてノーズブロック48を回動させることにより、かかるノーズブロック48を下方に垂れ下がった退避位置にまで速やかに導いて保持せしめることが出来るのであり、前述の第一の実施形態と同様な効果が、何れも有効に発揮され得ることとなるのである。
なお、本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、図11中に3点鎖線で示されている如く、ノーズブロック48を突出位置から上方に回動させてレンズテーブル34の案内面36に沿うように立ち上げた立上位置において、かかるノーズブロック48の先端部をロックストッパ61に係止させて保持せしめることができるようになっている。
また、図示はされていないが、ノーズブロック48を立上位置から突出位置に向けて付勢するコイルスプリング等の付勢手段を組み付けることも可能である。更にまた、ノーズブロック48の回動中心軸である直接支持軸76は、レンズテーブル34の案内面36上を下方に外れた位置に設けるようにしても良い。また、本実施形態とは反対に、直接支持軸76の中心軸回りに広がる円弧状の摩擦面をノーズブロック48側に形成する一方、該摩擦面に対して摺接する摺接面をスライドアーム50側に形成することも可能である。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
例えば、スライドアーム50や回動アーム56,ノーズブロック48の具体的形状や大きさは、何等限定されるものでなく、適用対象となる眼鏡の形状や構造,大きさ等を考慮して適宜に設定されるものである。
また、ノーズブロック48をレンズテーブル34の案内面36上に重ね併せた状態で係止して保持せしめるロックストッパ61による係止機構や、レンズテーブル34を収容せしめる収容凹部42による収容構造などは、本発明において必ずしも必要でない。
さらに、前記実施形態では、眼鏡の右レンズ64から始めて次に左レンズ66をノーズピース26上に載置する操作手順を説明したが、左右レンズの順序は何れでも良い。
また、前述の説明から明らかなように、前述の第一の実施形態では回動アーム56やノーズブロック48の第一及び第二の回動軸54,58回りの回動が、また第二の実施形態ではノーズブロック48の直接支持軸76回りの回動が、何れも、レンズテーブル34上におけるスライドアーム50の位置如何に拘わらずに可能とされており、それによって、左右方向の任意の位置で、ノーズブロック48を垂下位置まで回動させて保持せしめることが出来るようになっていたが、ノーズブロック48を垂下位置にまで回動せしめることの出来る位置を、レンズテーブル34上で限定的に設定しても良い。
さらに、レンズテーブル34が、その収容凹部42への収容状態下で多少前方に突出せしめられる構造である場合や、レンズテーブル34の収容凹部42への収容状態下ではノーズブロック48を垂下位置に導くことがない場合などにおいては、第一の実施形態における第一の回動軸54や第二の実施形態における直接支持軸76を、レンズテーブル34の案内面36よりも奥方に設定位置せしめるようにしても良い。このように、第一の回動軸や直接支持軸を、レンズテーブル34の案内面36よりも奥方に設定位置させることにより、ノーズブロック48が、その垂下位置において、レンズテーブル34の下方に隠れるようにして退避位置せしめられるようにすることも可能となる。