JP3575854B2 - シリコン単結晶ウエーハの洗浄方法および洗浄装置 - Google Patents

シリコン単結晶ウエーハの洗浄方法および洗浄装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体デバイスを製造するための素材となるシリコン単結晶ウエーハ(以下、ウエーハと略記する)の洗浄方法と洗浄装置に係り、特にウエーハの洗浄において面荒れ等を起こさず、しかも工程の短縮を可能とする洗浄方法と洗浄装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの集積度は、年次を追うごとに高密度化する一方であり、それに伴ない、半導体デバイスを製造する環境を高度のクリーン状態で管理することや、その素材となるウエーハを清浄にすることが、益々重要になっている。
ウエーハ洗浄の主たる目的は、その表面に付着しているパーティクルや金属不純物、有機物、表面被膜(自然酸化膜、表面吸着物質)などの汚染物質を除去することにより、半導体デバイス製造時のトラブルを無くし、その製造歩留りを高めると共に、デバイスとしての信頼性を向上させるためである。
【0003】
従来、ウエーハの洗浄方法として最も良く知られている方法に、米国RCA社のKern氏等が1960年代に開発したRCA洗浄法がある。
この方式による洗浄の代表的なシーケンスは、第1段で、アンモニア/過酸化水素/水(NH OH/H /H O)をベースとするSC−1(RCA Standard Clean−1)洗浄液によってパーティクルや有機物を除去し、第2段では、塩酸/過酸化水素/水(HCl/H /H O)をベースとするSC−2洗浄液により、金属汚染物を除去する組み合わせを基本とし、これに表面被膜を除去するための弗化水素/水(HF/H O)によるDHF(Dilute HF )洗浄が組み合わされることもある。
【0004】
なお、別の方法として、上記SC−2洗浄液の代わりに特開平3−120719号公報においては、弗化水素/過酸化水素/水(HF/H /H O)を使用することが提案されている。ただし、この洗浄液によれば、金属不純物と表面被膜を同時に除去することができても、パーティクルを満足すべき水準まで除去することはできないものとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このRCA洗浄法におけるSC−1洗浄液は、同洗浄液中のアンモニアのエッチング作用を利用して、ウエーハ表面のパーティクルや有機物を除去しようとするものである。
【0006】
しかしながら、CZ法により引き上げられるシリコン単結晶のインゴット中には、その成長中に導入されるアズグロウン(As−grown)欠陥と呼ばれる結晶欠陥が存在し、ウエーハ表面部に存在するこの欠陥のエッチング速度は、無欠陥部分と比較し相対的に速いため、欠陥部分のエッチングが選択的に進行し、ウエーハ表面に微細な窪み(ピット)を発生する。
【0007】
このピットは、ウエーハ表面に存在するパーティクルを、レーザー光照射による散乱光(輝点)を測定するパーティクルカウンターで計測しようとするとき、ピットによる散乱光も同時に検出してしまい、真のパーティクル数を測定することはできないという弊害を生じる。したがって、このようなピットをCOP(Crystal Originated Particle )と称している。
【0008】
このCOPは、半導体デバイスのゲート酸化膜の電気的耐圧特性を劣化させるとも云われ、半導体デバイスがより高密度化しようとする趨勢にあって、これまでは問題にされなかったCOP対策も重要な解決すべき課題となっている。
【0009】
また、SC−1洗浄液は、Cuのようにアンモニアと錯体を形成しやすい金属に対しては除去効果が高いが、概して酸を利用する洗浄液に比べ、金属不純物に対する洗浄力は劣っている。
【0010】
他方、SC−2洗浄液は、パーティクルや有機物に対する洗浄力は弱いが、金属不純物に対する洗浄効果は優れている。しかし、薬液中に存在する過酸化水素のために、ウエーハ表面にシリコンの酸化膜が形成され、そのため金属不純物の濃度が高い場合には、その効果が弱まると云われている。
このようにRCA法を代表とする従来の洗浄法は、先ずその一工程中で使用するアンモニアそのものに起因する問題点が存在するほか、それぞれで洗浄目的や効果の異なる3〜4種類の洗浄液を組み合わせて使用するため、必然的に洗浄のための工程が長くなり、多数段の装置と薬液を使用しなければならないという問題があった。
【0011】
したがって、このような問題点を解決するために様々の研究がなされており、前記SC−2洗浄液の代わりに弗化水素/過酸化水素/水洗浄液を使用する提案も、その一例であると見られるが、この場合、パーティクルや有機物に対する洗浄効果は、まだ満足すべきものとは云えなかった。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、本発明のシリコン単結晶ウエーハの洗浄方法は、シリコン単結晶ウエーハが浸漬される弗化水素を含む洗浄液を収容するための容器が、ステンレス材表面に湿式法または乾式法による酸化不動態処理を施した薄板材料からなり、その容器が振動板として作動するよう、当該容器の外側に超音波振動子を直接接触せしめるか、または該容器の外側で接触する、水、油、有機溶剤のような液状の媒体を介し、超音波振動子の超音波を該容器に作用させて洗浄するように構成させたシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置を用いて洗浄することを特徴とする。
前記酸化不動態処理が、電解研磨後、硝酸のような酸化性の酸で処理する湿式法により行なわれるシリコン単結晶ウエーハの洗浄方法を特徴としている。
更に、前記酸化不動態処理が、ステンレスの表面層にCr 、またはCr とNiOを主成分とする層となるように改質する乾式法により行なわれることが好ましい。
また、前記乾式法が、鏡面仕上げされたステンレス薄板を400〜500℃でドライ酸化した後、300〜400℃で水素還元処理が行なわれるシリコン単結晶ウエーハの洗浄方法を特徴としている。
更に、前記乾式法が、鏡面仕上げされたステンレス薄板を400〜500℃でドライ酸化した後、300〜400℃で水素還元処理行ない、更にArガス雰囲気下で500℃の熱処理行なうことがより好ましい。
更にまた、前記乾式法が、電解研磨されたステンレス表面を、酸素1ppm、水素10%を含むAr雰囲気中で500℃の熱処理が行なわれることがより好ましい。
【0013】
本発明は、シリコン単結晶ウエーハが浸漬される洗浄液を収容するための容器の外側に超音波振動子を直接接触せしめ、該超音波振動子の密着部分が、ステンレス材表面に弗化不動態処理を施した薄板材料からなり、該容器の他の部分を耐弗酸性のある樹脂材料、または該樹脂材料でライニングされた構造とし、超音波振動子の超音波を該容器に作用させて洗浄するように構成させたシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置である。
更に本発明は、シリコン単結晶ウエーハが浸漬される洗浄液を収容するための容器が、ステンレス材表面を弗化不動態処理法で施された薄板材料からなり、その容器が振動板として作動するよう、当該容器の外側に超音波振動子を直接接触せしめるか、または該容器の外側で接触する、水、油、有機溶剤のような液状の媒体を介し、超音波振動子の超音波を該容器に作用させて洗浄するように構成させたことを特徴とするシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置である。
また、本発明は、シリコン単結晶ウエーハが浸漬される洗浄液を収容するための容器の外側に超音波振動子を直接接触せしめ、該超音波振動子の密着部分のみを、ステンレス材表面を弗化不動態処理法で施された薄板材料からなり、該容器の他の部分を耐弗酸性のある樹脂材料、または該樹脂材料でライニングされた構造とし、超音波振動子の超音波を該容器に作用させて洗浄するように構成させたシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置である。
前記弗化不動態処理法が、ステンレス薄板の表面にFeF 膜を形成させることにより行なわれる単結晶ウエーハの洗浄装置を特徴としている。
更に、前記弗化不動態処理法が、鏡面仕上げされたステンレス薄板の表面を、100%の弗素ガス中で200〜400℃で熱処理が行なわれることがより好ましい。
また、前記弗化不動態処理法が、鏡面仕上げされたステンレス薄板の表面を、100%の弗素ガス中で200〜400℃で熱処理を行ない、更に不活性ガス雰囲気下で300〜500℃の熱処理が行なわれることがより好ましい。
更に、上記したこれらのシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置を用いて、シリコン単結晶ウエーハの洗浄を行なうシリコンウエーハの洗浄方法を特徴としている。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
弗化水素/水(DHF)、または弗化水素/過酸化水素/水(DHF/H )からなる洗浄液を使用する洗浄方法は、前記引例の特開平3−120719号公報によっても公知である。
しかし、同公報による洗浄は、その従来の技術や実施例の記載にもある通り、単にDHF、またはDHF/H で洗浄することを述べているのみで、本発明のようにこれに超音波を作用させることについては一切触れていない。その理由は、従来の弗化水素を含む水溶液で半導体基板を処理する時の容器の材質は、弗素樹脂系を代表とするプラスチック材であることが前提になっているからであると推測される。
事実、弗化水素を含む水溶液に対して安定した、しかも経済的な要件をも満たす容器の材質として、弗素樹脂を代表とするプラスチック材以外のものは考えにくい。
また、DHFによる洗浄は、シリコン酸化膜の除去を目的としているが、単にDHF処理したのみの表面は、疎水化されると同時に活性化し、その後にパーティクルが付着しやすくなる問題のあることが知られている。
【0015】
これに対し、本発明者等は従来のSC−1やSC−2等の洗浄において、洗浄液中に超音波を作用せしめるとパーティクル除去の効果が高まるとの経験から、弗化水素/水、または弗化水素/過酸化水素/水による洗浄の場合にも、超音波を印加するとパーティクル除去の効果が得られることを想定し、その可能性について種々検討を重ねた結果、本発明を完成させたものである。
【0016】
ところで、図4は従来の、たとえばSC−1洗浄に超音波を印加させる装置の一例を示している。同図において、基台100上には二重構造の洗浄槽101,102が配設され、同内側洗浄槽101にはウエーハWを保持したカセット103が、洗浄液104中に浸漬されている。洗浄液供給管106からは、新鮮な洗浄液が供給され、内側洗浄槽101より外側洗浄槽102に溢れ出した洗浄液104は、洗浄液排出管107より排出される。この状態で超音波発振器110からケーブル111、およびリード板112を通して複数個の振動子113に、一例として800kHzの高周波を与えると振動板114が振動し、洗浄液に約800kHzの超音波が印加される。
この振動板114の材質として、ここでは薄いステンレスまたはタンタル製の薄板が使用されているが、従来の弗化水素を含まない洗浄液の場合は、このような振動板でも問題は生じない。
【0017】
しかし、本発明の場合のように弗化水素を含む洗浄液を使用すると、前記材質では振動板114が直ちに腐食し始め、使用できなくなる。そこでまず考えられたのは、振動板114の材質を弗素樹脂のようなプラスチック材にするか、または内側の洗浄槽101を弗素樹脂のようなプラスチック材とし、その容器の一部(底部外側)に振動子113を密接させる方法である。しかし、これを実際に試験してみるとプラスチック材は超音波を遮断してしまい、本発明の目的に向かないことが判明した。
【0018】
次に、プラスチック材(ここでは弗素樹脂)の厚さを薄くしてみたが、超音波振動子を取り付けるための接着剤に適当なものがない。しかも、弗素樹脂は、その表面が多孔質であり、汚れやパーティクルが微細な穴に入って新たな汚染源となりやすい。
そこで、別のプラスチック材として、ポリプロピレンや塩化ビニル樹脂等も検討したが、いずれもその厚さを薄くすると機械的な強度に問題が生じ、しかも数10℃の洗浄液を使用するとき、その変形が著しくなる。
そこで本発明者等は、耐弗酸性があり、しかも超音波を無駄なく洗浄液に伝播する材料を検討した結果、本発明のように、弗化水素を含む洗浄液を収容する容器の、少なくとも内側表面に対して不動態化処理を施したステンレス薄板からなる容器(槽)を使用すれば上記目的を達成することが可能であることを見出し、本発明に到達したものである。
【0019】
ここで、印加される超音波は、最低100kHz以上でPZT振動子による出力が可能な3MHzまでの適用が可能であり、実用的には800kHzまたは1600kHz辺りのものが採用される。
このような装置を使用し、弗化水素/水、または弗化水素/過酸化水素/水からなる洗浄液でウエーハの洗浄を行なった結果、これらの洗浄液による金属不純物や表面被膜を除去する効果の外、超音波を印加することにより、パーティクルや有機物も除去する効果のあることが確認された。
【0020】
すなわち、本発明によれば、従来のRCA洗浄の場合のように、SC−1とSC−2、場合によりDHF洗浄を加える2〜3段階洗浄を、1〜2段階に短縮して行うことが可能になる。
また、この超音波を印加することの外、陰イオン表面活性剤を加えることによって、パーティクルを除去する効果が更に高められることが確認された。
その理由は、弗化水素/水または弗化水素/過酸化水素/水で構成される洗浄液中に、陰イオン表面活性剤を添加すると、パーティクルとシリコンウエーハ表面が同極性のζ電位を示し、電気的に反発するためであると考えられる。
【0021】
なお、本発明の洗浄方法を実施するに当たって使用する洗浄液を満たす容器、あるいは超音波を媒介する振動板の材料としては、その表面に対し、不動態化処理として、湿式法または乾式法による酸化不動態処理、あるいは弗化不動態処理を施したステンレス薄板が加工も容易であり、比較的に安価な材料である点で好ましく採用される。
【0022】
この不動態化処理の第一の方法である酸化不動態処理法としては、ステンレス薄板の表面に電解研磨を施し、加工変質層がないように鏡面仕上げをした後、硝酸のような酸化性の酸で処理する湿式法が挙げられる。
しかし、耐蝕性をより向上させるには、ステンレスの表面層にCr 、またはCr とNiOを主成分とする層となるように改質する乾式法による方が有利である。
この乾式法によれば、鏡面仕上げされたステンレス薄板を400〜500℃でドライ酸化するだけでは、その表面の95%以上がFe で構成され、そのままでは耐蝕性能に期待は持てないが、次に300〜400℃で水素還元処理を行うと、このFe は水素によって選択的にエッチングされ、Cr のリッチ層が表面に形成されることによって耐蝕性が付与される。この効果は、引き続き超高純度のArガス雰囲気下で500℃で10時間の熱処理を行なえば、更に高まり、表面層の80〜90%がCr 層に変化する。
【0023】
また、電解研磨されたステンレス表面を、酸素1ppm+水素10%を含むAr雰囲気中で500℃の熱処理を行えば、その表面にCr とNiOの層が形成され、耐蝕性は一層向上する。
【0024】
不動態化処理の第二の方法である弗化不動態処理は、本発明を実施する上で、更に有望な方法である。
この方法は、電解研磨を施し加工変質層や自然酸化膜がないように鏡面仕上げされたステンレス薄板の表面を、100%の弗素ガス中で200〜400℃で数分〜数10分の弗素化処理を施し、その表面にFeF 膜を形成させることにより行われる。
この膜は、次いで不活性ガス雰囲気下で300〜500℃の熱処理を施すことによって、更に安定化する。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
(試験例)
まず、本発明の実施にあたって使用される洗浄液の効果について、その試験結果を表1により説明する。
【0026】
【表1】
Figure 0003575854
【0027】
従来法1は、SC−1洗浄のみを行なった後、純水リンスしたウエーハについて、従来法2と3は、従来法1の処理を受けたウエーハを異なる濃度のSC−2洗浄液で洗浄した後、純水リンスしたウエーハについて、その表面の不純物分析を行なったものである。
同じく試験例1と2は、異なる濃度のDHFで洗浄した後に純水リンスしたウエーハ、試験例3と4は、異なる濃度のDHF/H で洗浄した後に純水リンスしたウエーハについて、その表面の不純物分析を行なったものである。
【0028】
なお、この試験では、後述のパーティクル測定におけるCOPの影響を排除するために、一般にCOPの発生の全くないFZ法によって製造した直径150mmのノンドープシリコンウエーハを使用した。各洗浄液による処理条件は60℃/3分とし、純水リンスは常温(25℃)で行なった。
また、表面分析は、前記洗浄処理後のウエーハを希弗酸で洗浄した液について、ICP質量分析法で測定した。
その結果を表1でみると、従来法におけるSC−1洗浄のみのウエーハの金属不純物濃度は高いが、従来法2と3、および試験例1〜4における洗浄の効果は、ほぼ同水準にあることが解る。なお、N.D.はE8(10 )以下の検出限界とされる表面不純物濃度である。
【0029】
参考例1)
表2は、前記試験用に使用したものと同様のウエーハ3枚単位に対し、同じく前記試験例1〜4で使用した各洗浄液による洗浄処理を、超音波の印加なしに行なった場合(比較例)と、800kHzの超音波を印加しながら洗浄した場合(参考例)について、ウエーハ表面におけるパーティクル除去の効果を調べたものである。
【0030】
【表2】
Figure 0003575854
【0031】
このパーティクル測定は、パーティクルカウンター (LS−6030) により行われ、測定された3枚のウエーハ表面についての平均値(箇数)である。なお、この洗浄は、図3で模式的に示される装置により行なった。
結果として、ウエーハ表面に付着するパーティクルは超音波の作用によって、約1/2から1/3に低減していることが解る。
【0032】
参考例2)
前記試験例で使用したものと同様のウエーハ3枚単位について、同一の洗浄条件により、表1の試験例1で使用したDHF(HF=0.5重量%)に各種の表面活性剤を添加した場合と、さらにこれに超音波を印加させた場合の効果について試験した。
なお、表面活性剤の添加量は一律0.2%とし、装置は同じく図3によるものを使用した。
【0033】
その結果は表3のウエーハ表面のパーティクル箇数の各平均値で示されるとおり、陰イオン表面活性剤について、著しくパーティクル除去の効果のあることが認められた。ここで共通していることは、いずれも、シリコンウエーハ表面における界面動電位(ζ電位)は負の値を示していることで、その効果は、試験された表面活性剤の種類の如何を問わず共通の現象となっている。しかもその効果は、超音波を印加することによって一層高まることが確認された。
なお、上記で用いられる陰イオン表面活性剤としては、負のζ電位を呈するものであればよく、例えばステアリン酸ソーダのほか、アルキル硫酸エステルナトリウム、オレフィン硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の一般的なものを用いればよい。
また、試験例3で使用したDHF/H (HF=0.5重量%、H =2.0重量%)について同様の試験を行なったところ、表3とほぼ同一の結果が得られた。
【0034】
【表3】
Figure 0003575854
【0035】
実施例1
図1および図2は、本発明の方法を実施するに当たって使用される洗浄装置の要部を説明する概略図である。
図1において、1は本発明が適用される弗酸含有の洗浄液4が貯留される洗浄槽であり、その材質は、洗浄液4が接する洗浄槽1の内面、またはその内外両面に対して不動態化処理が施されたステンレス材からなっている。その不動態化処理は、湿式または乾式法による酸化不動態処理によるか、または弗化不動態処理によるか、いずれであっても良い。ただし、本発明が適用される高い周波数領域(100kHz以上)の超音波の伝播性や、洗浄槽としての強度を考慮する時、その厚さは、0.1mm以上で1mm以下であることが望ましい。そうして洗浄槽1の外側の一部分(図1では容器1の底部)には洗浄液4に超音波を付与するための振動子13が密着状態で接着されている。
【0036】
Wは、洗浄処理を施されるウエーハであり、3はウエーハWを洗浄液4中で保持するためのカセットである。このカセット3は、複数枚のウエーハを保持する洗浄用バスケット型のものであってもよいし、単枚でウエーハを保持する型のものであっても良い。また、その材質は耐弗酸性のある弗素樹脂やポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂等で良いが、数10℃の熱水で洗浄する時は熱的、機械的変形の少ない弗素樹脂材料が適当である。しかしながら、この場合、弗素樹脂そのものが汚れ易くて、逆にウエーハの汚染源となることがあるので、その清浄状態を保つための管理に留意する必要がある。
このような状態で超音波発振器10からケーブル11、リード板12、振動子13を通して高周波を与えると、洗浄槽1の振動子密着部分が図2における振動板14と同等に機能し、洗浄槽1中のウエーハWに超音波が作用する。
【0037】
図2は、図1における振動子13の密着部分のみに、不動態化処理を施したステンレス薄板を振動板14として機能させた構造の洗浄槽1であって、同洗浄槽の他の部分は耐弗酸性のある樹脂材料、または同樹脂材料でライニングされた構造の洗浄槽1で構成される。
また、従来法の例として説明した図4の装置において、その振動板114に相当する部分のみを不動態化処理を施したステンレス材に置き換えれば本発明を実施することができる。このような装置によれば洗浄液を入れ替えながらウエーハ洗浄を行なうことができる。
【0038】
実施例2
図3は、本発明の洗浄装置の別の実施態様を示す装置の要部を説明する概略図である。
この装置によれば、不動態化処理を施されたステンレス材からなる洗浄槽1は、特に耐弗酸性が要求されない通常の金属材料、またはプラスチック材からなる外側容器2内に保持される。洗浄槽1内には洗浄されるウエーハWと、それを保持するカセット3が洗浄液4中に浸漬されており、それぞれの部材等に対する条件は、実施例の場合と同様である。
【0039】
外側容器2内には、超音波を伝播する媒体となる流体5が満たされている。この流体は通常の水であっても良いし、非揮発性の加熱媒体を兼ねた油状物質であっも良い。ただし、外側容器2の底部は振動板14として作動するように、通常のステンレス、またはタンタルの薄板で構成されることが要件であって、該容器の周壁部は底部と同一材料とするか、前述のような任意の材料とするかについて特に制限は無い。なお、前記底部の振動板14には、超音波振動子13が密着状態で接着されている。
【0040】
この装置において、超音波発振器10からケーブル11、リード板12、振動子13を通して高周波を発振すると、外側容器2の振動子13の密着部分が振動板14として機能し、同容器中の流体5を超音波の媒体とし、洗浄槽1を通して同槽中のウエーハWに超音波が作用する。
【0041】
この装置の特長は、洗浄槽1が消耗した場合の交換が容易である外、超音波振動板14における材料の寸法的制限を緩和すると共に、媒体となる流体5を通して洗浄槽1のほぼ全表面に超音波を印加させることが可能になる。また、比較的に小容量の洗浄槽と洗浄液の組み合わせを単位とした洗浄槽の出し入れによる処理や、単一の外側容器中で、複数の洗浄槽を配置する等の設備装置としての融通性が増すという効果が得られる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の洗浄方法によれば、シリコン単結晶ウエーハの洗浄において、金属不純物や表面被膜を除去する効果はあったが、パーティクル等の異物を除去する効果の薄かった、弗化水素/水や、弗化水素/過酸化水素/水系の洗浄液において、これに陰イオン表面活性剤を添加すると共に、さらに100kHz以上で3MHz以下の超音波を作用させることによりパーティクル除去の効果を上げることができる。
【0043】
しかも、この効果によって、従来の2〜3種以上の薬液による洗浄工程を1〜2種と、短縮させることが可能である。
また、従来の洗浄方法の主流であるアルカリ系洗浄液で問題となっていた結晶欠陥に起因するウエーハ表面のCOP問題を解消することもできる。
さらに、本発明の洗浄装置によれば、従来より弗酸系の洗浄液に対して超音波を併用させる適当な装置が無かった問題が解決され、そのことによって、上記洗浄方法を実用化することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置の一例を示す概要説明図。
【図2】本発明のシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置の他の一例を示す概要説明図。
【図3】本発明のシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置のさらに他の一例を示す概要説明図。
【図4】従来のシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置の一例を示す概要説明図。
【符号の説明】
1…洗浄槽 100…基台
2…外側容器 101…内側洗浄槽
3…カセット 102…外側洗浄槽
4…洗浄液 103…カセット
5…流体 104…洗浄液
10…超音波発振器 106…供給管
11…ケーブル 107…排出管
12…リード板 110…超音波発振器
13…振動子 111…ケーブル
14…振動板 112…リード板
W…ウエーハ 113…振動子
114…振動板

Claims (13)

  1. シリコン単結晶ウエーハが浸漬される弗化水素を含む洗浄液を収容するための容器が、ステンレス材表面に湿式法または乾式法による酸化不動態処理を施した薄板材料からなり、その容器が振動板として作動するよう、当該容器の外側に超音波振動子を直接接触せしめるか、または該容器の外側で接触する、水、油、有機溶剤のような液状の媒体を介し、超音波振動子の超音波を該容器に作用させて洗浄するように構成させたシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置を用いて洗浄することを特徴とするシリコン単結晶ウエーハの洗浄方法。
  2. 前記酸化不動態処理が、電解研磨後、硝酸のような酸化性の酸で処理する湿式法により行なわれる請求項1に記載のシリコン単結晶ウエーハの洗浄方法。
  3. 前記酸化不動態処理が、ステンレスの表面層にCr 、またはCr とNiOを主成分とする層となるように改質する乾式法により行なわれる請求項1に記載のシリコン単結晶ウエーハの洗浄方法。
  4. 前記乾式法が、鏡面仕上げされたステンレス薄板を400〜500℃でドライ酸化した後、300〜400℃で水素還元処理が行なわれる請求項3に記載のシリコン単結晶ウエーハの洗浄方法。
  5. 前記乾式法が、鏡面仕上げされたステンレス薄板を400〜500℃でドライ酸化した後、300〜400℃で水素還元処理を行ない、更にArガス雰囲気下で500℃の熱処理が行なわれる請求項4に記載のシリコン単結晶ウエーハの洗浄方法。
  6. 前記乾式法が、電解研磨されたステンレス表面を、酸素1ppm、水素10%を含むAr雰囲気中で500℃の熱処理が行なわれる請求項5に記載のシリコン単結晶ウエーハの洗浄方法。
  7. シリコン単結晶ウエーハが浸漬される洗浄液を収容するための容器の外側に超音波振動子を直接接触せしめ、該超音波振動子の密着部分が、ステンレス材表面に湿式法または乾式法による酸化不動態処理を施した薄板材料からなり、該容器の他の部分を耐弗酸性のある樹脂材料、または該樹脂材料でライニングされた構造とし、超音波振動子の超音波を該容器に作用させて洗浄するよ うに構成させたことを特徴とするシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置。
  8. シリコン単結晶ウエーハが浸漬される洗浄液を収容するための容器が、ステンレス材表面に弗化不動態処理を施した薄板材料からなり、その容器が振動板として作動するよう、当該容器の外側に超音波振動子を直接接触せしめるか、または該容器の外側で接触する、水、油、有機溶剤のような液状の媒体を介し、超音波振動子の超音波を該容器に作用させて洗浄するように構成させたことを特徴とするシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置。
  9. シリコン単結晶ウエーハが浸漬される洗浄液を収容するための容器の外側に超音波振動子を直接接触せしめ、該超音波振動子の密着部分が、ステンレス材表面に弗化不動態処理を施した薄板材料からなり、該容器の他の部分を耐弗酸性のある樹脂材料、または該樹脂材料でライニングされた構造とし、超音波振動子の超音波を該容器に作用させて洗浄するように構成させたことを特徴とするシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置。
  10. 前記弗化不動態処理が、ステンレス薄板の表面にFeF 膜を形成させることにより行なわれる請求項8または9に記載のシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置。
  11. 前記弗化不動態処理が、鏡面仕上げされたステンレス薄板の表面を、100%の弗素ガス中で200〜400℃で熱処理が行なわれる請求項10に記載のシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置。
  12. 前記弗化不動態処理が、鏡面仕上げされたステンレス薄板の表面を、100%の弗素ガス中で200〜400℃で熱処理を行ない、更に不活性ガス雰囲気下で300〜500℃の熱処理が行なわれる請求項11に記載のシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置。
  13. 請求項〜12に記載されたシリコン単結晶ウエーハの洗浄装置を用いて、シリコン単結晶ウエーハの洗浄を行なうことを特徴とするシリコンウエーハの洗浄方法。
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