JP3574843B2 - 安全機構付きリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池に関し、特に、安全性に優れたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
通信機器、情報関連機器の分野では、携帯電話、ノートパソコン等の小型化に伴い、高エネルギー密度であるという理由から、リチウム二次電池が既に実用化され、広く普及するに至っている。一方、自動車の分野でも、大気汚染や二酸化炭素の増加等の環境問題により、電気自動車の早期実用化が望まれており、この電気自動車用電源として、リチウム二次電池を用いることも検討されている。
【0003】
リチウム二次電池は、他の二次電池と異なり、電解液に有機溶媒を用いていることから、安全対策に充分配慮しなけばならない。例えば、充電装置の故障等により通常充電時において管理される充電終止電圧以上に過充電された場合、電池温度の異常上昇、電解液の分解等の現象が生じ、電池機能の低下を招くことになる。また、さらに過充電が進んだり、急速充電された場合にあっては、負極表面に、金属リチウムのデンドライトが析出し、セパレータを突き破って内部短絡が生じる等、さらに異常な高温状態となる。電池内部温度が百数十℃になると、正極活物質であるLiCoO2等のリチウム遷移金属複合酸化物が酸素脱離反応を起こす等の熱暴走状態に陥り、電池の損傷等、その危険性はさらに増大する。
【0004】
リチウム二次電池の過充電時等の場合の安全対策に関する技術として、例えば、特開平11−7931号公報に示すように、温度スイッチを設け、電池温度が所定温度に達したときにその温度スイッチを閉じることで正極端子と負極端子との間を短絡させ、蓄電要素に蓄えられたエネルギをジュール発熱によって消費させるという技術等が存在する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特開平11−7931号公報に記載された技術では、正極端子と負極端子との間を単に短絡させるだけであるため、短絡回路内において発熱抵抗となり得るのはほとんどが蓄電要素の内部抵抗であり、蓄電要素そのものがジュール発熱することになる。また、短絡回路は、電池容器内に存在することから、電池外への放熱性に乏しいものとなっている。したがって、上記技術を採用する場合、ときによっては電池内部の温度上昇をさらに助長することにもなりかねない。
【0006】
本発明は、蓄電要素に蓄えられたエネルギをジュール発熱によって消費させる態様の安全機構における上記問題を解決するためになされたものであり、電池外への放熱効果を高めることで、過充電等による異常温度上昇の際の安全性の高いコンパクトなリチウム二次電池を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の安全機構付きリチウム二次電池は、正極および負極を含み電池反応を行う蓄電要素と、該蓄電要素を密封する電池容器と、該電池容器に付設され前記蓄電要素に導通する正極端子および負極端子と、前記電池容器の内部の温度に応じ開閉し設定温度を超える場合に閉じるスイッチと、経路の一部に前記電池容器の一部からなる抵抗体と該電池容器の外部に存在する抵抗体を有し前記温度スイッチが閉じた場合に前記正極端子と前記負極端子とを導通する導通回路と、を備え、かつ前記導通回路の抵抗値Rは、定格容量が1Ah以上10Ah以下の条件下において、次式(1)で表される値であることを特徴とする。
E x /250≦R≦E c /(I 0 ×10) ・・・(1)
E x :過充電時の最高到達電圧
E c :通常充電時において管理される
充電終止電圧
I 0 :電池の定格容量を定電流で1時間で
充電する場合の電流値
【0008】
つまり、本発明の安全機構付きリチウム二次電池は、過充電等による異常温度上昇の際に正極端子と負極端子とを導通させることで蓄電要素に蓄えられたエネルギをジュール発熱によって消費させる態様の安全機構を有するリチウム二次電池であって、導通回路内に電池容器の一部からなる抵抗体と電池容器の外部に存在する抵抗体とが設置された態様のリチウム二次電池である。ジュール発熱を電池容器の一部及び電池容器外の位置に存在する抵抗体に行わせることで、放熱性に優れ、過充電等による異常温度上昇の際によりコンパクトで安全性の高いリチウム二次電池となる。
【0009】
なお、電気自動車用電源等の大型二次電池とする場合、一般に、リチウム二次電池は直列に組み合わされた組電池として用いられる。本発明の安全機構付きリチウム二次電池をそのような組電池として使用した場合、そのうちの一部のリチウム二次電池の上記安全機構が機能したときには、そのリチウム二次電池の正極端子と負極端子とが導通するため、組電池内にそのリチウム二次電池を迂回するバイパスが形成されることになり、組電池自体の機能低下を効果的に抑制することもできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の安全機構付きリチウム二次電池の基本的実施形態およびそれを採用した上での応用的実施形態を、以下に詳しく説明する。なお、必要に応じ、それらの実施形態については対応する請求項の番号を付すものとする。
【0011】
本発明の安全機構付きリチウム二次電池の基本的実施形態は、正極および負極を含み電池反応を行う蓄電要素と、該蓄電要素を密封する電池容器と、該電池容器に付設され前記蓄電要素に導通する正極端子および負極端子と、前記電池容器の内部の温度に応じ開閉し設定温度を超える場合に閉じるスイッチと、経路の一部に前記電池容器の一部からなる抵抗体と該電池容器の外部に存在する抵抗体を有し前記温度スイッチが閉じた場合に前記正極端子と前記負極端子とを導通する導通回路と、を備え、かつ前記導通回路の抵抗値Rは、定格容量が1Ah以上10Ah以下の条件下において、次式(1)で表される値であることを特徴とする。
E x /250≦R≦E c /(I 0 ×10) ・・・(1)
E x :過充電時の最高到達電圧
E c :通常充電時において管理される
充電終止電圧
I 0 :電池の定格容量を定電流で1時間で
充電する場合の電流値
【0012】
蓄電要素は、正極および負極とを含んで構成されるものであり、その形態を特に限定するものではなく、既に公知のリチウム二次電池の蓄電要素に従えばよい。例えば、シート状の正極および負極をその間にセパレータを介装して幾重にも積層あるいは捲回して、いわゆる電極体とするものである。
【0013】
正極は、リチウムイオンを吸蔵・離脱できる正極活物質に導電材および結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、アルミニウム等の金属箔製の集電体表面に塗布乾燥することで正極合材層を形成させて作製することができる。また、必要に応じて電極密度を高めるべくその正極合材層を圧縮してもよい。
【0014】
正極活物質には、4V級の電池が構成できるものとして、基本組成をLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等とするリチウム遷移金属複合酸化物粉状体を用いることができる。導電材は、正極の電気伝導性を確保するためのものであり、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質粉状体の1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着剤は、活物質粒子を繋ぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。これら活物質、導電材、結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
【0015】
負極は、金属リチウム、リチウム合金等を用いることができる。また、デンドライトの析出の危険性を回避すべく、正極同様、リチウムイオンを吸蔵・離脱できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔製の集電体の表面に塗布乾燥することで負極合材層を形成させて作製することが望ましい。この場合、正極同様、必要に応じて電極密度を高めるべくその負極合材層を圧縮してもよい。
【0016】
その場合の負極活物質には、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。負極結着剤としては、正極同様、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等を、これら活物質および結着剤を分散させる溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
【0017】
上記シート状の正極とシート状の負極とを積層して電極体を形成させるが、正極と負極との間には、正極と負極とを分離し電解液を保持する機能を果たすセパレータを挟装する。セパレータには、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を用いることができる。
【0018】
電極の積層方式には、大きく分けて2種の方式があり、その1つは、ほぼ同じ大きさの正極および負極を、交互に幾重にも重畳するように積層させるものであり、一般的に角型電池に用いられる積層方式である。またもう1つは、長い帯状の正極および負極をそれぞれ1枚ずつ用い、これらを対向させてロール状に捲回する方式のものであり、一般的に円筒型電池に用いられる積層方式である。本発明の安全機構付きリチウム二次電池では、いずれの積層方式の蓄電要素であってもよい。
【0019】
電池容器は、上記蓄電要素を外気から遮断するための容器であり、上記蓄電要素と非水電解液とが密閉収納される。電池容器は、充分な機械的強度があり、非水電解液に腐食されず、また、電池反応に対して電気化学的安定性のあるものであればよく、一般のリチウム二次電池の構成に従えばよい。例えば、ステンレス鋼、ニッケルめっきを施した鋼、アルミニウム合金、銅合金、硬質樹脂等から、あるいはこれらを組み合わせて形成することができる。また、その形状、大きさ等も、角型、円筒型等、上記蓄電要素の形状、大きさ等に応じ種々のものとすることができる。
【0020】
なお、電池容器には、安全弁を付設することが望ましい。安全弁は、電池が異常高温となった場合等に電解液が分解する等した際に、電池内の圧力が異常に高圧になるのを未然に防止する機能を果たすものである。その構成は特に限定するものではなく、一般のリチウム二次電池に付設されているものの構成に従えばよい。例えば、アルミニウム等の金属箔等からなり所定圧で破断するもの、ゴム等の栓状であって所定圧で抜出するもの等、種々の構成のものを採用することができる。
【0021】
上記蓄電要素とともに上記電池容器に密閉収納される非水電解液は、電解質としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解させたものである。その構成を特に限定するものでなく、既に公知の構成に従えばよい。例えば、リチウム塩としては、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等を用いることができ、有機溶媒には、非プロトン性の有機溶媒、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等を用いることができる。
【0022】
正極端子および負極端子は、上記電池容器に付設され、それぞれ上記蓄電要素を構成する正極および負極にリード等を介して導通し、蓄電要素の外部端子の機能を果たすものである。正極端子および負極端子は、その構成を特に限定するものでなく、一般のリチウム二次電池の構成に従えばよい。
【0023】
温度スイッチは、電池容器内部の温度に応じ開閉し、電池容器の内部の温度がある温度を超える場合に閉じ、後に説明する正極端子と負極端子とを導通する導通回路を導通させる機能を果たすものである。
【0024】
温度スイッチは、種々の構成の手段が採用でき、例えば、感熱応動片、感熱膨張材料、感熱変態材料等の手段の他、温度検知するための温度センサと、そのセンサからの信号を処理し開閉信号を出力する処理回路と、処理回路からの出力に応じ導通回路を開閉する開閉器とを含んで構成されるような手段であってもよい。
【0025】
これらの中でも、温度スイッチは、感熱応動片を含むように構成することが望ましい(請求項2に対応)。感熱応動片とは、温度に応じ形状が変化する帯状の比較的小さな部材を意味し、いわゆるバイメタル、トリメタル等のサーモスタットメタル、あるいは形状記憶合金等が該当する。このような感熱応動片を用いた温度スイッチは、電池内部あるいは電池外部に比較的簡単に組み込むことができ、また、高度な電子機器を必要としないことから、安価なものとなる。バイメタルを用いる場合は、Fe−Ni系合金とCu−Zn合金とを貼り合わせたもの等用いることができる。感熱応動片を採用する場合、温度スイッチは、電池内部の温度が上昇し所定の温度に達したときにその接点が当接するように構成すればよい。
【0026】
温度スイッチに感熱応動片を採用する場合、その感熱応動片は正極端子、前記負極端子、前記電池容器のいずれかに接触していることが望ましい(請求項3に対応)。正極端子、負極端子は導電体つまり金属製である。また、電池容器についても、一般的には金属製である。したがって、このような電池の構成要素は、熱伝導性が良好である。感熱応動片がこのような構成要素に接しているばあい、電池内部の熱が感熱応動片に伝わりやすく、電池内部の温度の変化に対する温度スイッチの即応性が良好となる。なお、感熱応動片は、電池内部に付設することがさらに望ましい。上記構成要素からの熱伝導だけでなく、上記蓄電要素からの輻射により感熱するため、さらに即応性が良好となる。
【0027】
導通回路は、上記温度スイッチが閉じることにより正極端子と負極端子とを導通するように形成される導通経路である。本発明の安全機構付きリチウム二次電池では、この導通回路の一部に、つまり経路の途中に電池容器の一部からなる抵抗体と上記電池容器の外部に存在する抵抗体の2種類の抵抗体を有することを特徴とする。
【0028】
抵抗体は、ジュール発熱をさせるためのものであり、例えば、カンタル線(耐熱高抵抗線)、MoSi2、チタン合金、クロム合金等種々のものを用いることができる。これら抵抗体の一端を正極端子あるいは負極端子の一方と接続し、他端を上記温度スイッチと電池容器を介して正極端子あるいは負極端子の他方と接続するようにして上記導通回路を構成させればよい。また抵抗体の配設箇所は、特に限定するものでなく、所望の箇所に配設すればよい。なお、この外部の抵抗体のジュール発熱が電池内部を加熱しないように配慮するのが望ましく、例えば、電池容器から離隔して設置する、あるいは、断熱材等を介在させて電池容器に付設する等するのがよい。
【0029】
なお、本発明の安全機構付きリチウム二次電池では、上記電池容器を上記導通回路の一部とする。上述したように、電池容器は金属製のものを使用することができる。金属製の電池容器はそれ自体が導電性があり、導通回路の一部とすることにより、上記抵抗体と正極端子あるいは負極端子との間の接続を簡略化でき、電池自体をコンパクトなものとすることができる。
【0030】
上記抵抗体によって効果的に蓄電要素に蓄電されたエネルギーをジュール発熱させるためには、その導通回路の抵抗値Rを、次式(1)で表される値とする(請求項1に対応)。
【0031】
E x /250≦R≦E c /(I 0 ×10) ・・・(1)
なお、ここでEcは通常充電時において管理される充電終止電圧を表す。例えば、LiCoO2等のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とし炭素材料を負極活物質とするリチウム二次電池の場合、電池の異常な性能劣化を引き起こさずに可逆的に充放電可能な範囲として、通常の充放電は電池電圧が3.0〜4.2Vの間で管理される。つまり、その場合においてはEcは4.2Vとなる。
【0032】
また、I0は電池の定格容量を定電流で1時間で充電する場合の電流値を表す。定格容量とは、上記可逆的に充放電可能な電池電圧範囲での充放電容量を表す。例えば、電池電圧が3.0〜4.2Vとなる範囲の容量に相当する容量をI0(Ah)とした場合、定電流で1時間で充電するときは、その電流値はI0(A)となる。つまり、1時間率充電における電流値(いわゆる1C)を意味する。
【0033】
上記式(1)の導出根拠を説明すれば次のようになる。図1に、本発明の安全機構付きリチウム二次電池を充電装置で過充電する場合の回路を概念的に示す。本リチウム二次電池は、発電要素10と並列に接続される導通回路60を有している。蓄電要素10は、その電圧がE(V)であり、また、抵抗値r(Ω)となる内部抵抗を有している。導通回路60は、温度スイッチ50と、抵抗体61とが直列に接続されており、その抵抗値がR(Ω)となっている。ちなみに、導通回路60の抵抗値Rのうち、抵抗体61を除く他の部分の抵抗値は抵抗体61の抵抗値に比べて充分小さく、ジュール発熱のほとんどが抵抗体61によってなされる。なお、本図は過充電状態であり、電池内部の温度が設定温度を超えているとすることから、スイッチ50は閉じた状態となっている。充電装置からの電流I1は、導通回路60を流れる電流I2と蓄電要素10を流れるI3とに分岐されるものとする。なお、充電装置2は、回路電圧に略等しい電圧でもって充電する方式の充電装置である。
【0034】
以上の条件の下では次式が成立する。
【0035】
I2R=rI3+E
I1=I2+I3
これを整理すると、
I3=(I1R−E)/(r+R)
ここで、Rに対してrは充分小さく、r+R≒Rとなることから、
I3=I1−E/R
となる。
【0036】
ここで、I3>0の場合に、蓄電要素10は充電され、I3<0の場合に、蓄電要素10は放電することになる。つまり、
I1>E/R :充電
I1<E/R :放電
となる。
【0037】
電池の定格容量をI0とすれば、リチウム二次電池の過充電では1時間率充電における電流の10倍程度の電流(いわゆる10C)が流れることを想定する必要がある。したがって、I1=I0×10となることを想定する必要がある。また、Eが少なくとも通常充電時において管理される充電終止電圧であるEcとなるまで充電する必要があることから、
I0×10<Ec/R
すなわち、本発明の安全機構付きリチウム二次電池では、境界となる値まで含め、導通回路の抵抗値Rは、
R≦Ec/(I0×10)
となることが計算により明らかとなる。ちなみに、例えば、定格容量が6.5Ahで、充電終止電圧が4.2Vで管理されるリチウム二次電池の場合は、導通回路の抵抗体の抵抗値は約65mΩ以下とすることが解る。
【0038】
また、定格容量が1Ah以上10Ah以下のリチウム二次電池である場合には、導通回路の抵抗値Rは、
E x /250≦R≦E c /(I 0 ×10) ・・・(1)
となる(請求項1に対応)。ここで、Exは過充電時の最高到達電圧を表し、そのリチウム二次電池が過充電された場合にあっても、安全に復帰できる限度の電圧を意味する。
【0039】
導通回路の一部が電池容器となる場合、導通回路の抵抗値Rが小さくなると電池容器の有する抵抗値も無視できなくなる。つまり、導通回路の抵抗値Rが小さい場合、電池容器もジュール発熱し、極端なときはかえって電池内部の温度上昇を助長することになる。実験によって確認されたことであるが、定格容量が1Ah以上10Ah以下のリチウム二次電池の場合、電池容器を流れる電流を250A以下に制限することが好ましい。この制限電流値と上記過充電時の最高到達電圧Exとから、導通回路の抵抗値Rが上記式(1)に示す範囲となることが解る。ちなみに、過充電時の最高到達電圧が4.9Vとなるリチウム二次電池にあっては、導通回路の抵抗体の抵抗値は約20mΩ以上とすることが望ましい。
【0040】
以上、本発明の安全機構付きリチウム二次電池の実施形態について説明したが、上記実施形態は一実施形態にすぎず、本発明の安全機構付きリチウム二次電池は、上記実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0041】
【実施例】
上記実施形態に基づく本発明の安全機構付きリチウム二次電池を作製し、過充電試験を行い、本発明の安全機構付きリチウム二次電池の安全性を評価した。以下に、実施例として説明する。
【0042】
〈作製した安全機構付きリチウム二次電池〉
作製した安全機構付きリチウム二次電池を図2に示す。リチウム二次電池1は、蓄電要素10と、蓄電要素10を非水電解液とともに密封する電池容器20と、電池容器20に付設され蓄電要素10に導通する正極端子30および負極端子40と、電池容器20の内部の温度に応じ開閉し設定温度を超える場合に閉じる温度スイッチ50と、温度スイッチ50が閉じた場合に正極端子30と負極端子40とを導通する導通回路60とから構成されている。
【0043】
蓄電要素10は、シート状の正極11とシート状の負極12とをセパレータ13を挟装し捲回芯14を中心に捲回したロール状電極体となっている。ちなみに、正極11は、アルミニウム箔集電体の両面に活物質としてリチウムマンガン複合酸化物を含む正極合材層を形成してなり、130mm×2800mmの電極面積をもつ。負極12は、銅箔箔集電体の両面に活物質として黒鉛を含む負極合材層を形成してなり、134mm×2900mmの電極面積をもつ。セパレータ13は、多孔質ポリエチレン製シートからなる。捲回芯14は、正極端子側に位置するアルミニウム合金製のアルミ捲回芯部14aとアルミ捲回芯部14aに同軸的に螺合連結され負極端子側に位置する樹脂製の樹脂捲回芯部14bとからなる。電池容器20は、SUS304製、外径35mmφ、肉厚0.3mmの筒状の製電池容器本体21と、電池容器本体21の両端にそれぞれ溶接にて接合されたSUS304製、板厚2mmの円盤状の正極側蓋部22および負極側蓋部23とからなる。正極側蓋部22および負極側蓋部23にはそれぞれ電池容器20の内部圧力が所定圧を超える場合に開弁する安全弁24が付設されており(正極側蓋部22は図示していない)、また、負極側蓋部23には、さらに電解液注入口25が設けられ、電解液注入口25を封口する注入孔栓26が螺合して取付けられている。
【0044】
正極端子30は、アルミニウム合金製で、集電部30aと、ボルト状の外部端子部30bとからなり、集電部30aは、捲回芯14のアルミ捲回芯部14aに螺合連結され、また、外部端子部30bは、先端を電池外部に突出する状態で電池容器20の正極側蓋部22に設けられた正極端子取付穴22aに、ガスケット31を介し、ワッシャ32、ナット33によって付設されており、電池容器20とは絶縁されている。集電部30aには正極11より延出する帯状の正極リード11aがその周囲に接合され、正極端子30と蓄電要素10の正極11との導通が確保されている。
【0045】
負極端子40は、銅合金製で、集電部40aと、ボルト状の外部端子部40bとからなり、集電部40aは、捲回芯14の樹脂捲回芯部14bに螺合連結され、また、外部端子部40bは、先端を電池外部に突出する状態で電池容器20の負極側蓋部23に設けられた負極端子取付穴23aに、ガスケット41を介し、ワッシャ42、ナット43によって付設されており、電池容器20とは絶縁されている。集電部40aには負極12より延出する帯状の負極リード12aがその周囲に接合され、負極端子40と蓄電要素10の負極12との導通が確保されている。
【0046】
温度スイッチ50は、主に、感熱応動片であるバイメタル51(図3に左方から見た図を示す)と、バイメタル51が当接する当接金具52とからなる。バイメタル51は、電池容器20の正極側蓋部22に接するように取付けられ、ガスケット31を介することで、温度スイッチ50が開いている状態にあっては正極端子30と絶縁されている。当接金具52は、概ねコの字に曲げられた帯状の金属板であり、正極端子30の外部端子部30bにナット53によって付設されており正極端子30との導通が確保されている。
【0047】
図2に示す状態の温度スイッチ50は、開いた状態である。バイメタル51は、正極側蓋部22に接する面側がFe−Ni合金からなる低膨張側となり、その反対面側が、Cu−Zn合金からなる高膨張側となっている。そして、過充電等により蓄電要素が異常発熱し、電池容器20の内部の温度が過度に上昇した場合、その温度上昇を感知して変形し、図4に示すように、その先端が開いて当接金具52に当接する。この状態が、温度スイッチ50が閉じた状態である。
【0048】
リチウム二次電池1は、明確に図示していないが、リチウム電池本体から離隔し位置に直径2mmφのカンタル線からなる抵抗体61を有し、抵抗体61は、両端がそれぞれ負極端子40と電池容器20の負極端子側に接続されている。したがって、温度スイッチ50が閉じた状態にあっては、正極端子30と負極端子40とは、電池容器22および抵抗体61を介し接続されることになる。正極端子30から温度スイッチ50、電池容器20、抵抗体61を経由して負極端子40までの電気的接続経路が、導通回路60となる。
【0049】
以上、作製した安全機構付きリチウム二次電池の構成を説明したが、本リチウム二次電池は、通常放電終止電圧3.0Vから充電終止電圧4.2Vの間で管理されて充放電されるものであり、その場合の電池の定格容量は、約6.5Ahである。なお、温度スイッチ50は電池容器20の表面温度が75℃で閉じるように調整した。
【0050】
〈過充電試験1〉
上記作製した安全機構付きリチウム二次電池に対して過充電試験を行った。以下にその試験条件および試験結果を説明する。試験に供したリチウム二次電池は、上記導通回路60に存在する上記抵抗体61の抵抗値を調整し、上記温度スイッチ50が閉じた場合において、導通回路60の抵抗値が65mΩとなるようにしたリチウム二次電池である。
【0051】
そのリチウム二次電池に、図2に示すように充電装置2を取り付け、まず、リチウム二次電池を室温(約25℃)下で電池電圧4.2V(満充電状態)まで充電した。次いで、このリチウム二次電池を10Aの定電流(約1.5C)で過充電させ、時間の経過に伴う電池容器の表面温度、電池電圧、充電装置から流れる充電流値をモニタリングした。この過充電試験の結果を図5に示す。
【0052】
図5が示すように、時間の経過に関わらず充電電流は充電装置から略同じ値で流れ続けている。これに対し試験初期の過充電域においては、時間の経過とともに電池電圧は上昇し続け、また、電池表面温度は上昇し続ける。約27分後、電池表面温度が75℃に達したとき、温度スイッチが閉じ、導通回路が形成され以後エネルギ放出域に入る。ちなみに、温度スイッチが閉じる直前においては、電池電圧は4.9Vまで上昇した。
【0053】
温度スイッチが閉じた後も、電池表面温度は110℃まで上昇し続けるものの、約10分後にピークに至り、以後徐々に常温に向かって低下した。しかし、電池電圧は、温度スイッチが閉じた直後から、下降し続け、約18分後に通常の放電終止電圧である3.0Vに達し、その後、放電制御していないことから、電池電圧が約0.65Vの平衡状態に至った。なお、試験初期の75℃の時点で温度スイッチが閉じた際に、スイッチ内のバイメタル51と当接金具52の接触部が熱溶着状態となったため、電池温度が低下し75℃以下となっても再び温度スイッチが開くことはなかった。したがって、電池電圧約0.65Vの平衡状態に至るまで、電池への充電は行われていない。
【0054】
以上の結果から、本安全機構付きリチウム二次電池は、過充電時にその安全機構が効果的に機能し、蓄電要素に蓄えられたエネルギを効率よく電池外部にジュール熱として放出して沈静化し、電池の熱暴走を効果的に防止できることのできるリチウム二次電池であることが確認できる。
【0055】
〈過充電試験2〉
上記作製した安全機構付きリチウム二次電池の抵抗体を変更し、導通回路の抵抗値を15〜95mΩ範囲で数種類のリチウム二次電池とした。それらのリチウム二次電池を、充電電流が65A(約10C)の定電流で行う過充電試験に供した。試験結果として、導通回路の抵抗値と試験終了時の電池電圧、温度スイッチが閉じた直後の放電電流、および電池の最終状態との関係を、図6に示す。なお、試験終了時の電池電圧とは、熱暴走する場合は蓄電要素の内部短絡直前の電池電圧、熱暴走せずに開弁する場合は開弁直前の電池電圧、開弁せずに沈静化する場合は温度スイッチが閉じてから40分後の電池電圧とし、最終状態は、安全弁が開弁せずに沈静化に至るものを◎、安全弁が開弁して沈静化したものを○、熱暴走状態に至ったものを●とした。
【0056】
図6から判るように、導通回路の抵抗値が20mΩ未満のものは、導通回路を流れる放電電流が大きく、つまり、導通回路となる電池容器での発熱が電池容器内の温度上昇を助長する結果となり、熱暴走状態に陥ることが確認できた。また、導通回路の抵抗値が65mΩを超えるものは、放電初期の放電電流が小さく、蓄電エネルギの抵抗消費に時間がかかるため、熱暴走状態に陥ることが確認できる。
【0057】
これに対し、上記実施形態で説明した望ましい範囲の抵抗値の導通回路が形成されたリチウム二次電池では、熱暴走状態に至らずに沈静化することで、安全性の高いリチウム二次電池となる。なお、安全弁の開弁に至らないより安全性の高いリチウム二次電池は、導通回路の抵抗値が50mΩ以上60mΩ以下であることから、この条件の下では、導通回路の抵抗値Rが一般式で
Ex/100≦R≦0.93Ec/(I0×10)
の範囲にあるものと考えられる。
【0058】
〈過充電試験3〉
上記作製した安全機構付きリチウム二次電池を、その導通回路が電池容器とならないように改造し、かつ、その導通回路の抵抗値を10〜100mΩ範囲で数種類のリチウム二次電池を作製した。それらのリチウム二次電池を、上記過充電試験2と同条件の過充電試験に供した。試験結果として、導通回路の抵抗値と試験終了時の電池電圧および電池の最終状態との関係を、図7に示す。なお、上記過充電試験2の場合と同様、試験終了時の電池電圧とは、熱暴走する場合は蓄電要素の内部短絡直前の電池電圧、熱暴走せずに開弁する場合は開弁直前の電池電圧、開弁せずに沈静化する場合は温度スイッチが閉じてから40分後の電池電圧とし、最終状態は、安全弁が開弁せずに沈静化に至るものを◎、安全弁が開弁して沈静化したものを○、熱暴走状態に至ったものを●とした。
【0059】
図7から判るように、上記過充電試験2の場合と同様、導通回路の抵抗値が65mΩを超えるものは、熱暴走状態に陥り、65mΩのものは、開弁して沈静化し、60mΩ以下のものは開弁せずに沈静化し安全性がより高いことが確認できる。ただし、上記過充電試験2の場合と異なり、電池容器を導通回路としないことから、導通回路の抵抗値が10mΩの場合でも、開弁せずに沈静化することが確認できる。
【0060】
〈温度スイッチの形態変更〉
上記作製した安全機構付きリチウム二次電池の温度スイッチとは形態の異なる温度スイッチをも作製し、その温度スイッチが正常に働くか否かを確認した。その一つの形態は、図8に概念的に示すものであり、上記のものと同一形状のバイメタルを電池容器内に付設したものである。また、もう一つの形態は、図9に概念的に示すものであり、バイメタルの形状を変え、略円盤状のジャンピングディスクとしたものである。いずれの温度スイッチも良好な即応性を示したことから、温度スイッチの形態についても種々の選択が可能であることが確認できる。
【0061】
【発明の効果】
本発明は、過充電等による異常温度上昇の際に正極端子と負極端子とを導通させることで蓄電要素に蓄えられたエネルギをジュール発熱によって消費させる態様の安全機構を有するリチウム二次電池であって、導通回路内に電池容器の一部を抵抗体とすると共に容器外部の抵抗体を設けたものである。この結果、本発明の安全機構付きリチウム二次電池は、ジュール発熱を電池容器自体と外部の位置に存在する抵抗体に行わせることで、放熱性に優れ、過充電等による異常温度上昇の際により安全性の高いコンパクトなリチウム二次電池となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の安全機構付きリチウム二次電池を充電装置で過充電する場合の回路を概念的に示す。
【図2】実施例として作製した安全機構付きリチウム二次電池を示す。
【図3】図2に示すバイメタルを左方から見た図を示す。
【図4】図2に示すバイメタルが変形し、温度スイッチが閉じた状態を示す。
【図5】10Aの定電流で行う過充電試験の結果として、時間の経過に伴う電池容器の表面温度、電池電圧、充電装置から流れる充電流値の変化を示す。
【図6】65Aの定電流で行う過充電試験の試験結果として、導通回路の抵抗値と試験終了時の電池電圧、温度スイッチが閉じた直後の放電電流、および電池の最終状態との関係を示す。
【図7】電池容器を導通回路とせずに65Aの定電流で行う過充電試験の試験結果として、導通回路の抵抗値と試験終了時の電池電圧および電池の最終状態との関係を示す。
【図8】温度スイッチの形態変更例として、バイメタルを電池容器内に付設したものを概念的に示す。
【図9】温度スイッチの形態変更例として、バイメタルの形状を変え円盤状のジャンピングディスクとしたものを概念的に示す。
【符号の説明】
1:安全機構付きリチウム二次電池
10:蓄電要素
20:電池容器
30:正極端子
40:負極端子
50:温度スイッチ
51:バイメタル(感熱応動片)
60:導通回路
61:抵抗体
Claims (3)
- 正極および負極を含み電池反応を行う蓄電要素と、
該蓄電要素を密封する電池容器と、
該電池容器に付設され前記蓄電要素に導通する正極端子および負極端子と、
前記電池容器の内部の温度に応じ開閉し設定温度を超える場合に閉じる温度スイッチと、
経路の一部に前記電池容器の一部からなる抵抗体と該電池容器の外部に存在する抵抗体を有し前記温度スイッチが閉じた場合に前記正極端子と前記負極端子とを導通する導通回路と、を備え、
かつ前記導通回路の抵抗値Rは、定格容量が1Ah以上10Ah以下の条件下において、次式(1)で表される値である安全機構付きリチウム二次電池。
E x /250≦R≦E c /(I 0 ×10) ・・・(1)
E x :過充電時の最高到達電圧
E c :通常充電時において管理される
充電終止電圧
I 0 :電池の定格容量を定電流で1時間で
充電する場合の電流値 - 前記温度スイッチは、感熱応動片を含んでなる請求項1に記載の安全機構付きリチウム二次電池。
- 前記感熱応動片は、前記正極端子、前記負極端子、前記電池容器のいずれかに接触している請求項2に記載の安全機構付きリチウム二次電池。
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