JP3574771B2 - 大正琴の鍵レバーの取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、大正琴、特に大正琴の鍵レバーの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
大正琴は、筝を簡易にした楽器であり、たとえば5弦琴に複数の鍵を取り付けたものである。鍵は、胴の表面板の上方に配置された天板の前側に複数並べられており、鍵レバーにより保持されている。鍵レバーは、天板に対して上下動可能に取り付けられている。複数の鍵のうち所望の鍵を操作すると、指板の隣り合うフレット間で、鍵レバーにより弦が指板に押し付けられ、弦の振動長さが調節されるようになっている。そして、鍵から手を離すと鍵レバーが上方に復帰する。
【0003】
このように、鍵レバーを天板に復帰可能に取り付ける構造として、たとえば図6に示すものがある。
図6を参照して、具体的に説明する。天板9の下面9a側には、長手のレバー支持ブロック15が固定配置されていて、このレバー支持ブロック15の下面15bに回動軸となる通し棒18が固定されている。レバー支持ブロック15の下面15bには、前後方向に延びる幅の薄い溝19が複数(図6では、1つのみ図示)形成されている。この溝19は、鍵レバー11を取り付け、かつ、回動させるためのスペースを区画するものであり、その底部19aがたとえば天板9の下面9aとほぼ面一にされている。鍵レバー11は、軸受部14が通し棒18と係合することにより回動可能とされており、ねじりコイルばね20により、復帰方向の回動習性が与えられている。具体的には、このねじりコイルばね20は、その一端側の脚21が鍵レバー11の後端部11aに係止されているとともに、他端側の脚23が天板9に位置決めされている。
【0004】
他端側の脚23の位置決めは、たとえば、天板9の下面9aに形成された位置決め用の小孔31に曲げ縁32を嵌め、下方から覆った押さえ部材33を天板9に固定することにより達成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来の方式では、ねじりコイルばね20の他端側の脚23の位置決めのために、▲1▼天板9の下面9aに位置決め用の小孔31を設ける▲2▼天板9の下面9aに仮止め用の両面テープを貼る▲3▼ねじりコイルばね20の他端側の脚23の曲げ縁32を位置決め用の小孔31へ挿入し、両面テープで仮止めする▲4▼他端側の脚23を押さえ部材33で下方から覆い、押さえ部材を天板9にタッカー止めにより固定する等の工程が必要であり、その作業が煩雑となってしまう。したがって、上記従来の取付構造では、部品点数および作業行程が多くなってしまうというという不具合があった。
【0006】
そこで、この発明は、部品点数および工程数の削減を図ることができる大正琴の鍵レバーの取付構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記課題を解決するための請求項1記載の発明は、操作すべき複数の鍵を保持するための板状の鍵レバーを大正琴の天板に取り付ける取付構造であって、上記天板の下面側に固定される弦が張られた方向に長手の部材であって、固定支持された回動軸を中心として、鍵レバーを回動自在に支持するとともに、下面に、上記鍵レバーを上記回転軸に取り付け、かつ、回動させるためのスペースを区画する、上記弦が張られた方向と交差する前後方向に延びる溝が形成されたレバー支持ブロックと、一対の脚を備えた鍵レバー復帰用のねじりコイルばねであって、一端側の脚は、上記鍵レバーの後端部に係止されており、他端側の脚は、上記天板の下面に圧接されているとともに、上記溝を介して上記レバー支持ブロックの前面および後面の2箇所に係合する係合部を先端部に備えたねじりコイルばねとを含むことを特徴とする大正琴の鍵レバー取付構造である。
【0008】
請求項1記載の発明の構成によれば、他端側の脚の先端部に設けられた係合部が2箇所において、レバー支持ブロックの前面および後面に係合する。他端側の脚は、前後方向の2箇所において係合が達成されているとともに、全体として天板の下面に圧接されている。これにより、ねじりコイルばねの他端側の脚の前後方向への位置決めが達成される。
また、ねじりコイルばねの他端側の脚の係合部が溝を介してレバー支持ブロックに係合しているので、ねじりコイルばねの他端側の脚の左右方向への位置決めが確実に達成されていることとなる。
【0009】
これにより、他の部材を用いることなく、ねじりコイルばねを取り付けるだけで、他端側の脚を、天板に対して良好に位置決めすることができる。
このため、他端側の脚を位置決めするために従来必要であった押さえ部材を設ける必要がない。これにより、部品点数の低減を図ることができコストダウンを図ることができる。また、煩雑であったねじりコイルばねの他端側の脚を天板に位置決めするための工程が必要とならない。このため、工程数の削減を図ることができる。
【0010】
請求項2記載の大正琴の鍵レバーの取付構造は、請求項1記載の大正琴の鍵レバーの取付構造において、上記溝の底部は、上記天板の下面よりも一段低くされるとともに、上記レバー支持ブロックの前面から後面まで上記天板の下面と平行に延びたものであって、上記係合部は、下方に凸の略コの字形状を有していて、上記溝の底部に嵌められて、上記支持ブロックの前面および後面と係合していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明の構成によれば、簡単な構成で係合を行うことができる。つまり、鍵レバーを取り付け、回動させるための溝で、他端側の脚の位置決めをを行うので、他の部材を何ら必要としない。これによって、コストダウン等を図ることができる。
また、請求項3記載の発明は、操作すべき複数の鍵を保持するための板状の鍵レバーを大正琴の天板に取り付ける取付構造であって、上部が、上記天板の下面側に形成された固定用溝に嵌められつつ、天板に固定される弦が張られた方向に長手の部材であって、固定支持された回動軸を中心として、鍵レバーを回動自在に支持するとともに、下面に、上記鍵レバーを上記回転軸に取り付け、かつ、回動させるためのスペースを区画する、上記弦が張られた方向と交差する前後方向に延びる溝が形成されたレバー支持ブロックと、一対の脚を備えた鍵レバー復帰用のねじりコイルばねであって、一端側の脚は、上記鍵レバーの後端部に係止されており、他端側の脚は、天板の下面に圧接されているとともに、その先端部に上記溝を介して上記レバー支持ブロックの少なくとも一部と2箇所において係合する係合部を備えたねじりコイルばねとを含み、上記溝の底部は、上記天板の下面よりも一段高くされたものであって、上記係合部は、上方に凸の略コの字形状を有していて、上記固定用溝に嵌められて、上記固定用溝の前面および後面と係合していることを特徴とする大正琴の鍵レバーの取付構造である。
【0012】
請求項3記載の発明の構成によれば、係合部が固定用溝の前面および後面に係合する。この状態においては、ねじりコイルばねの他端側の脚は、前後方向の2箇所において係合が達成されているとともに、全体として天板の下面に圧接されている。これにより、ねじりコイルばねの他端側の脚の前後方向への位置決めが達成される。
また、ねじりコイルばねの他端側の脚の係合部が溝を介してレバー支持ブロックに係合しているので、ねじりコイルばねの他端側の脚の左右方向への位置決めが確実に達成されることとなる。
【0013】
これにより、他の部材を用いることなく、ねじりコイルばねを取り付けるだけで、他端側の脚を、天板に対して良好に位置決めすることができる。
このため、他端側の脚を位置決めするために従来必要であった押さえ部材を設ける必要がなく、部品点数の低減を図ることができコストダウンを図ることができる。また、煩雑であったねじりコイルばねの他端側の脚を天板に位置決めするための工程が必要とならない。このため、工程数の削減を図ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下には、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図6で説明した部材と同等の部材については同一の参照符号を付すこととする。
図1は、この発明の一実施形態にかかる鍵レバー取付構造が適用された大正琴1の概略構成を示す平面図である。大正琴1は、表面板3Aを含む略箱状の胴3を備えている。胴3は長手のものであり、その上方にはたとえば5本の弦4が長手方向に並列に張られている。各弦4は、駒6によって受けられている。
【0015】
胴3の表面板3A上には指板7が配置されており、指板7の上面には前後方向に延びる複数のフレット8が取り付けられている。表面板3Aの上方には、表面板3Aの一部を覆う天板9が配置されていて、天板9の前端部には複数の鍵10が並べられている。各鍵10は、天板9に上下動可能に支持された鍵レバー11により保持されている。鍵10が操作されると指板7の隣り合うフレット8間で、鍵レバー11が弦4を指板7に押し付けることにより、弦4の振動長さが調節される。
【0016】
各弦4の振動は、駒6によって胴3の表面板3Aに伝達される。表面板3Aの振動によって発生した表面板3Aの裏の空気振動は、胴3の内部で共鳴され、大きな音として、表面板3Aの駒6と指板7との間に形成された響穴12から外へ出される。すなわち、複数の鍵のうち所望の鍵10が操作された状態で、弦4が図示しないピック等で弾かれることにより、任意の音程の音が響穴12から出される。
【0017】
図2は、図1の切断線A−Aで切った断面図である。
鍵レバー11は、前後方向に延びる金属製の板部材であり、その端面が上方または下方を向くように配置されている。鍵レバー11の後端寄りには、軸受部14が形成されている。軸受部14は、前後方向に長い長孔からなり後方が開放している。また、鍵レバー11の後端部11aには上方に向かって突出する係合突起13が形成されている。
【0018】
天板9の下面9a側には、弦4が張られた方向(図1で示す左右方向)に長手のレバー支持ブロック15が固定配置されている。具体的には、天板9の下面9aには弦4が張られた方向に延びる固定用溝16が形成されていて、固定用溝16にレバー支持ブロック15の上部15aを嵌めた状態で、レバー支持ブロック15が天板9に固定されている。レバー支持ブロック15は、たとえばその断面形状が略正方形とされた木製のものであり、その下面15bには長手方向に延びる取付け溝17が形成されている。取付け溝17に丸棒からなる通し棒18が固定されている。
【0019】
この通し棒18には、鍵レバー11の軸受部14が係合されている。また、レバー支持ブロック15の下面15bには、前後方向に延びる幅の薄い溝19が前面15cから後面15dにわたって複数(図2では一つのみ図示)形成されている。この溝19は、各鍵レバー11を、通し棒18に取り付け、また、通し棒18を回動軸として回動させるためのスペースである。この溝19の底部19aは、天板9の下面9aよりも一段低くされているとともに、天板9の下面9aと平行に、前面15cから後面15dにわたって延びている。こうして、鍵レバー11は、レバー支持ブロック15によって回動自在に支持されている。
【0020】
また、天板9の下面9aの前側辺には、弦4の張られた方向に延びるフェルト25が貼られている。このフェルト25は、鍵レバー11の上方への回動を規制するためのものである。
鍵レバー11には、ねじりコイルばね20によって復帰方向の回動習性が付与されている。具体的には、ねじりコイルばね20は、互いに離反する方向に付勢された一端側の脚21と他端側の脚23とを備えている。一端側の脚21にはフック22が形成されている。このフック22が鍵レバー11の係合突起13に引っ掛けられることにより、一端側の脚21が鍵レバーの後端部11aに係止されている。また、他端側の脚23は、天板9に対して位置決めされている。
【0021】
この実施形態の特徴は、他端側の脚23の天板9への位置決め構造にある。
他端側の脚23の先端部23aには、溝19の底部19aに嵌められた係合部24が形成されている。係合部24は、下側に凸となる略コの字形状である。具体的には、この係合部24は、他端側の脚23の途中部23bから斜め下方に向かって曲げられた垂下片26と、垂下片26の先端26aから曲げられ、他端側の脚23の途中部23bと平行に延びる連結片27と、連結片27の先端27bから垂直に立ち上がった立上げ片28とを備えている。連結片27の長さは、レバー支持ブロック15の幅とほぼ等しくされている。そして、溝19の底部19aに嵌められた状態で、垂下片26はレバー支持ブロック15の後面15dに係合し、立上げ片28はレバー支持ブロック15の前面15cに係合している。
【0022】
ところで、その一端側の脚21と他端側の脚23とが互いに離反する方向に付勢されているので、他端側の脚23が天板9の下面9aに圧接されている。
つまり、係合部24で2箇所の係合が達成されているとともに、この係合部24が全体として天板9の下面9aに圧接されているので、ねじりコイルばね20の他端側の脚23の前後方向への抜止めが達成される。
また、ねじりコイルばね20の他端側の脚23が溝19の底部19aに嵌められているので、他端側の脚23の左右方向への位置決めが確実に達成されている。
【0023】
これにより、他の部材を用いることなく、ねじりコイルばね20を取り付けるだけで、ねじりコイルばね20の他端側の脚23を、天板9に対して良好に位置決めすることができる。
このため、他端側の脚23を位置決めするために従来必要であった押さえ部材を設ける必要がなく、部品点数の低減を図ることができ、コストダウンを図ることができる。
【0024】
また、従来煩雑となっていたねじりコイルばね20の他端側の脚23を天板9に位置決めするための工程が必要とならない。このため、工程数の削減を図ることもできる。
なお、他端側の脚23の係合部は、上述のものに限られない。
図3に示すように、溝19の底部19aの長さがレバー支持ブロック15の幅よりも小さくされている場合には、係合部24Aの連結片27Aの長さを、この溝19の底部19aの長さと略等しくすることができる。
【0025】
また、上述の実施形態では、ねじりコイルばね20の他端側の脚23の係合部24,24Aが略コの字状となる構成について説明したが、たとえば図4に示すように、溝19の底部19aに後方に向かう上り傾斜が付けられている場合には、係合部44をこれに噛み合うような略L字形状のものとすることができる。具体的には、係合部44は、斜め片46と斜め片46の先端46aから上方へと立ち上がる立上げ部48とを備えている。そして、斜め部46は傾斜が付けられた底部19aと係合し、立上げ部48はレバー支持ブロック15の前面15cと係合する。
【0026】
さらに図5に示すように、溝19の底部19aが天板9の下面9aよりも上方に位置する場合には、上方に凸の略コの字形状の係合部54を用いることもできる。具体的には、この係合部54は、他端側の脚23の途中部23bから垂直に立ち上がった立上げ片56と、立上げ片56の先端56aから垂直に曲げられ、他端側の脚23の途中部23bと平行に延びる連結片57と、連結片57の先端57aから垂直に垂下した垂下片58とを備えている。そして、立上げ片56が固定用溝16の後面16bに係合し、垂下片58が固定用溝16の前面16aと係合する。
【0027】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態にかかる鍵レバーの取付構造が適用された大正琴の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1の切断線A−Aで切った断面図である。
【図3】この発明の他の実施形態を示す要部断面図である。
【図4】この発明の他の実施形態を示す要部断面図である。
【図5】この発明の他の実施形態を示す要部断面図である。
【図6】従来の大正琴の鍵レバーの取付構造を説明するための図である。
【符号の説明】
1 大正琴
9 天板
9a 下面
11 鍵レバー
15 レバー支持ブロック
16 固定用溝
19 溝
19a 下端
20 ねじりコイルばね
21 一端側の脚
23 他端側の脚
24 係合部
Claims (3)
- 操作すべき複数の鍵を保持するための板状の鍵レバーを大正琴の天板に取り付ける取付構造であって、
上記天板の下面側に固定される弦が張られた方向に長手の部材であって、固定支持された回動軸を中心として、鍵レバーを回動自在に支持するとともに、下面に、上記鍵レバーを上記回転軸に取り付け、かつ、回動させるためのスペースを区画する、上記弦が張られた方向と交差する前後方向に延びる溝が形成されたレバー支持ブロックと、
一対の脚を備えた鍵レバー復帰用のねじりコイルばねであって、一端側の脚は、上記鍵レバーの後端部に係止されており、他端側の脚は、上記天板の下面に圧接されているとともに、上記溝を介して上記レバー支持ブロックの前面および後面の2箇所に係合する係合部を先端部に備えたねじりコイルばねとを含むことを特徴とする大正琴の鍵レバー取付構造。 - 上記溝の底部は、上記天板の下面よりも一段低くされるとともに、上記レバー支持ブロックの前面から後面まで上記天板の下面と平行に延びたものであって、
上記係合部は、下方に凸の略コの字形状を有していて、上記溝の底部に嵌められて、上記支持ブロックの前面および後面と係合していることを特徴とする請求項1記載の大正琴の鍵レバーの取付構造。 - 操作すべき複数の鍵を保持するための板状の鍵レバーを大正琴の天板に取り付ける取付構造であって、
上部が、上記天板の下面側に形成された固定用溝に嵌められつつ、天板に固定される弦が張られた方向に長手の部材であって、固定支持された回動軸を中心として、鍵レバーを回動自在に支持するとともに、下面に、上記鍵レバーを上記回転軸に取り付け、かつ、回動させるためのスペースを区画する、上記弦が張られた方向と交差する前後方向に延びる溝が形成されたレバー支持ブロックと、
一対の脚を備えた鍵レバー復帰用のねじりコイルばねであって、一端側の脚は、上記鍵レバーの後端部に係止されており、他端側の脚は、天板の下面に圧接されているとともに、その先端部に上記溝を介して上記レバー支持ブロックの少なくとも一部と2箇所において係合する係合部を備えたねじりコイルばねとを含み、
上記溝の底部は、上記天板の下面よりも一段高くされたものであって、
上記係合部は、上方に凸の略コの字形状を有していて、上記固定用溝に嵌められて、上記固定用溝の前面および後面と係合していることを特徴とする大正琴の鍵レバーの取付構造。
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