JP3574396B2 - 燐酸カルシウムセメント、その用途および製造方法 - Google Patents

燐酸カルシウムセメント、その用途および製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は燐酸カルシウムセメント、その用途およびその製造方法に関し、特に歯および骨補綴に用いられる迅速に硬化(setting)する燐酸カルシウムセメント、その組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燐酸カルシウムセメント(calcium phosphate cement 以下CPCと略す)は歯および骨補綴に移植又は充填材料として広範に採用されていて、その詳しい技術は多くの特許公報に見られる。例えば、USP 4,959,104; 5,092,888; 5,180,426; 5,262,166; 5,336,264; 5,525,148; 5,053,212; 5,149,368; 5,342,441; 5,503,164; 5,542,973; 5,545,254; 5,695,729 and 5,814,681などが挙げられる。
【0003】
一般に、先行技術の燐酸カルシウムセメントには下記の欠点がある:1)添加剤に要求される生物活性が比較的乏しい;2)製造方法が複雑である;3)CPCの硬化時間又は操作時間が不適切で、調整しにくい;4)水、血液又は体液において望む形に硬化することができない;及び5)CPC硬化後の開始力が低い等が挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は燐酸カルシウムセメントを提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、粒子の表面にウィスカを有する粒子からなる燐酸カルシウムセメントを提供することにある。
【0006】
本発明の又一つの目的は、燐酸カルシウムセメントの製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、燐酸カルシウムセメントを用いて患者の骨又は歯の欠損を治療に供する組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する為、本発明により製造された燐酸カルシウムセメントは、粒子径が0.05〜100μmの燐酸カルシウムセメントであり、該燐酸カルシウム粒子の表面に幅1〜100nm、長さ1〜1000nmのウィスカを有する。
【0009】
燐酸カルシウムセメント粒子の直径、ウィスカの幅及び/又は長さを調節することにより、本発明の発明者らは種々な目的の要求に合うよう、本発明の燐酸カルシウムセメントの操作時間及び/又は硬化時間を調節することができ、且つ、本発明の燐酸カルシウムセメントは硬化が迅速で、水又は水溶液に分散しない。
【0010】
本発明の目的は、表面に成長した幅1〜100nm、長さ1〜1000nmのウィスカを有する粒子径が0.05〜100μmである燐酸カルシウム粒子の燐酸カルシウムセメントを有することを特徴とする燐酸カルシウムセメント、によって達成される。
【0011】
また、本発明の目的は、燐酸カルシウムの粉末又は小片を湿潤剤と混合し、該燐酸カルシウムの粉末又は小片の表面におけるウィスカの成長を制御処理により制御することを特徴とする燐酸カルシウムセメントの製造方法、によって達成される。
【0012】
さらに、本発明の目的は、(i)表面に成長した幅1〜100nm、長さ1〜1000nmのウィスカを有する粒子径が0.2〜80μmである燐酸カルシウム粒子の燐酸カルシウムセメントおよび(ii)硬化促進剤を含む水溶液とを含むことを特徴とする歯の充填用または骨補綴用の組成物、によって達成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の燐酸カルシウムセメントの好ましい製造方法には、燐酸カルシウムの粉末又は小片を湿潤剤と混合し、該燐酸カルシウムの粉末又は小片の表面におけるウィスカの成長を制御処理により制御することが含まれる。
【0014】
本発明の燐酸カルシウムの粉末又は小片に適用される燐酸カルシウムは、全て公知の燐酸カルシウムであり、例えば燐酸二水素カルシウム、燐酸二水素カルシウム水和物、酸性ピロ燐酸カルシウム、無水燐酸水素カルシウム、燐酸水素カルシウム水和物、ピロ燐酸カルシウム、三燐酸カルシウム、ポリ燐酸カルシウム、メタ燐酸カルシウム、無水三燐酸カルシウム、三燐酸カルシウム水和物、燐灰石、ヒドロキシ燐灰石、それらの混合物およびそれらの付加物が挙げられる。いい換えれば、燐酸カルシウムの粉末および小片の形状に限定はなく、球形でもよく、不規則形でもよい、又それらの結晶構造は、単一結晶、多結晶、混合結晶、半結晶又は無定形でもよい。
【0015】
燐酸カルシウムセメントの製造方法は、好ましくは更に制御処理で得られた生成物を燐酸カルシウム粒子の直径が0.05から100μmに粉 (grind)する工程が含まれる。
該ウィスカの1〜100nm、長さ1〜1000nmである
【0016】
該制御処理は真空処理、有機溶媒処理、マイクロウェーブ処理、加熱処理又は他の処理で、該燐酸カルシウムの粉末又は小片の表面にあるウィスカの成長を制御できる。
【0017】
該湿潤剤は、燐酸カルシウムの粉末又は小片を加湿するのに用いられ、好ましくは燐酸または燐酸塩を含む希釈水溶液である。燐酸カルシウムの粉末又は小片と混合する湿潤剤の量は、一般的には全ての燐酸カルシウムの粉末又は小片を実質的に十分加湿すべきであるが、該制御処理が有機溶媒処理の場合、水和性有機溶媒を湿潤剤と燐酸カルシウムの粉末又は小片に加えて次の工程に使われるペーストにしているので必ずしも必要ではない。
【0018】
好ましくは、該湿潤剤が燐酸または燐酸塩を0.02mM〜3000mM、好ましくは0.05〜2000mM、更に好ましくは0.1mM〜1000mMの範囲を含む希釈水溶液である。
【0019】
本発明の燐酸カルシウムセメントの製造方法は、好ましくは該燐酸カルシウムの粉末又は小片を燐酸又は燐酸塩を0.1mM〜1000mM含む希釈水溶液に浸してから、下記の工程を行う:(a)該浸して得られた燐酸カルシウムの粉末又は小片を30〜1600℃以上の温度で乾燥する加熱処理、(b)該浸して得られた燐酸カルシウムの粉末又は小片を真空で乾燥する真空処理、又は(c)該浸して得られた燐酸カルシウムの粉末又は小片をマイクロウェーブで加熱するマイクロェーブ処理。好ましくは、(a),(b)又は(c)処理の前に該浸して得られた燐酸カルシウムの粉末又は小片を充分混合して均一な混合物にする。
【0020】
また、本発明の燐酸カルシウムセメントの製造方法は、該燐酸カルシウムの粉末又は小片を燐酸又は燐酸塩を0.1mM〜1000mM含む希釈水溶液と混合し、この燐酸カルシウムの粉末又は小片と湿潤剤との混合物を水和性有機溶媒で混合する有機溶媒処理を行い、得られた混合物を真空で乾燥することもできる。好ましくは、該有機溶媒処理を攪拌しながら行う、より好ましくは、該有機溶媒処理を行う前に該燐酸又は燐酸塩を0.1mM〜1000mM含む希釈水溶液と燐酸カルシウムの粉末又は小片を充分混合する。
【0021】
好ましくは、本発明の燐酸カルシウムセメントの該燐酸カルシウム粒子は、直径が0.2から80μmで、より好ましくは0.5から50μmである。
【0022】
ウィスカの幅はウィスカの横断面直径の平均値であ
【0023】
好ましくは、該ウィスカの幅が2〜70nmで、長さが5〜800nm,より好ましくは長さが10〜700nmである。
【0024】
好ましくは、該燐酸カルシウム粒子では、カルシウム対燐酸のモル比が0.5〜2.5で、より好ましくは0.8〜2.3、最も好ましくは1.0〜2.2の範囲である。
【0025】
本発明の燐酸カルシウムセメントは生物許容性で、それより作られたペーストは水に非分散性であり、操作時間が数分〜数時間で、硬化時間も数分〜数時間である。従って、本発明の燐酸カルシウムセメントは、ペーストにして水、血液又は体液と接触すべきであり、歯または骨補綴に移植又は充填材料として非常に適する。特に、本発明の燐酸カルシウムセメントは補綴に移植又は充填材料として直接骨の欠損又は空洞に用いられる。
【0026】
また、本発明は、(i)表面に成長した幅1〜100nm、長さ1〜1000nmのウィスカを有する粒子径が0.2〜80μmである燐酸カルシウム粒子の燐酸カルシウムセメントおよび(ii)硬化促進剤を含む水溶液とを含むことを特徴とする歯の充填用または骨補綴用の組成物を提供できる。
【0027】
本発明の燐酸カルシウムセメントと硬化促進剤を含む水溶液との混合比は特定されてないが、硬化促進剤を含む水溶液の量は本発明の燐酸カルシウムセメントを実質上加湿するに充分混合すべきである。骨の欠損又は空洞にペーストを注入又は埋め込んだ時、唾液又は体液から更に水分が供給される。勿論、該硬化促進剤を含む水溶液中の硬化促進剤の含有量は、混合される該硬化促進剤を含む水溶液より高く調整すべきである。本発明の組成物において、(i)成分と(ii)成分との割合は、(i)成分の1gに対して(ii)成分を0.1ml〜10ml、好ましくは0.15ml〜1.0mlの範囲が望ましい。両成分の量がこの範囲にあると(ii)成分の量が(i)成分を湿潤させるために充分であるのでペーストを形成できる。しかし、(ii)成分の量がこの範囲を越えると、ペーストとはならず懸濁液となってしまい好ましくない。
【0028】
本発明の組成物において、該燐酸カルシウムセメントは更に成長因子、骨形態蛋白質又は製薬担体を含み、又は該硬化促進剤を含む水溶液は更に成長因子、骨形態蛋白質又は製薬担体を含む。
【0029】
該硬化促進剤を含む水溶液は、燐酸塩、カルシウム塩及びフッ化物など燐酸カルシウムを固化できる全ての公知化合物又は組成物を含む水溶液であり、燐酸イオン、カルシウムイオン、フッ素イオン、又は燐酸イオンとフッ素イオンを硬化促進剤とする水溶液である。
【0030】
該硬化促進剤を含む水溶液中の硬化促進剤の含有量は特に限定されてないが、1mM〜3M,特に10mM〜1Mが好ましい。
【0031】
さらに、本発明は上記組成物を利用して骨又は歯に欠損がある患者の治療方法を提供する。それには本発明の燐酸カルシウムセメントと硬化促進剤を含む水溶液とを混合してペーストを形成し、該患者の骨の欠損又は空洞に該ペーストを入れる、又は該ペーストを成形させ、得られた形成ペーストを該患者の骨の欠損又は空洞に該ペーストを埋め込む。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。ただし、それによって本発明をそれらの実施例のみに限定するものではない。
【0033】
(実施例1:加熱処理)
5gのCa(HPO・HO粉末と1.6mlの25mM燐酸水溶液とを混合し、1分攪拌して、50℃のオーブンで15分乾燥し、得られた乾燥混合物をオーブンから取り出し、微粒子になるまで20分機械で粉砕した。1gの微粒子と0.4mlの燐酸塩水溶液(1.0M,pH=6.0)とを混合し、得られたペーストを30秒毎にテストし、操作時間と硬化時間を測定した。硬化時間はペーストの表面に荷重1/4ポンドで直径1mmのピンを1mmの深さまで挿入するのに要する時間で、操作時間はペーストの粘度が攪拌できなくなるまでの時間を示す。本実施例のペーストの操作時間は30分で、硬化時間は1時間である。
【0034】
ペーストは成形後、直ちに相対的大量の脱イオン水に浸し、ペーストは脱イオン水に分散しないことが観察された。
【0035】
(実施例2:真空処理)
5gのCaHPO(DCPA)粉末と1.2mlの25mM燐酸水溶液とを混合し、1分攪拌して、真空で30分乾燥し、得られた乾燥混合物を微粒子になるまで20分機械で粉砕した。1gの微粒子と0.4mlの燐酸塩水溶液(1.0M,pH=6.0)とを混合し、得られたペーストを30秒毎にテストし、操作時間と硬化時間を測定した。本実施例のペーストの操作時間は20.5分で、硬化時間は24分である。
【0036】
ペーストは成形後、直ちに相対的大量の脱イオン水に浸し、ペーストは脱イン水に分散しないことが観察された。
【0037】
(実施例3:有機溶媒処理)
5gのCaHPO(DCPA)粉末と1.6mlの25mM燐酸水溶液とを混合し、1分攪拌して、1.6mlのアセトンを加え、攪拌しペーストに形成した後真空で1時間乾燥し、得られた乾燥混合物を微粒子になるまで20分機械で粉砕した。1gの微粒子と0.4mlの燐酸塩水溶液(1.0M,pH=6.0)とを混合し、得られたペーストを30秒毎にテストし、操作時間と硬化時間を測定した。本実施例のペーストの操作時間は20.0分で、硬化時間は22.0分である。
【0038】
ペーストは成形後、直ちに相対的大量の脱イオン水に浸し、ペーストは脱イオン水に分散しないことが観察された。
【0039】
(実施例4:マイクロウェーブ処理)
CaHPO(DCPA)とCa(POO(TTCP)の1:1モル比混合粉末3gと2.0mlの25mM燐酸水溶液とを混合し、5分攪拌して、電子レンジにおいて低出力で5分加熱し、得られた乾燥混合物を微粒子になるまで20分機械で粉砕した。1gの微粒子と0.42mlの燐酸塩水溶液(1.0M,pH=6.0)とを混合し、得られたペーストを30秒毎にテストし、操作時間と硬化時間を測定した。本実施例のペーストの操作時間は2.0分で、硬化時間は4.5分である。
【0040】
ペーストは成形後、直ちに相対的大量の脱イオン水に浸し、ペーストは脱イオン水に分散しないことが観察された。
【0041】
(実施例5:加熱処理)
CaHPO(DCPA)とCa(POO(TTCP)の1:1モル比混合粉末5gと1.6mlの25mM燐酸水溶液とを混合し、1分攪拌して、500℃高温オーブンにおいて5分加熱し、得られた乾燥混合物を微粒子になるまで20分機械で粉砕した。1gの微粒子と0.4mlの燐酸塩水溶液(1.0M,pH=6.0)とを混合し、得られたペーストを30秒毎にテストし、操作時間と硬化時間を測定した。本実施例のペーストの操作時間は1.5分で、硬化時間は2.5分である。
【0042】
ペーストは成形後、直ちに相対的大量の脱イオン水に浸し、ペーストは脱イオン水に分散しないことが観察された。
【0043】
(実施例6:加熱処理)
CaHPO(DCPA)とCa(POO(TTCP)の1:1モル比混合粉末5gと1.6mlの25mM燐酸水溶液とを混合し、1分攪拌して、1000℃高温オーブンにおいて1分加熱し、得られた乾燥混合物を微粒子になるまで20分機械で粉砕した。1gの微粒子と0.4mlの燐酸塩水溶液(1.0M,pH=6.0)とを混合し、得られたペーストを30秒毎にテストし、操作時間と硬化時間を測定した。本実施例のペーストの操作時間は31分で、硬化時間は35分である。
【0044】
(実施例7−11)
実施例1におけるCa(HPO・HOをCaHPO(DCPA)とCa(POO(TTCP)の1:1モル比混合粉末5gに替え、25mM燐酸水溶液はpH1.96の希燐酸水溶液に替え、実施例1と同じ工程を行う。加熱処理の条件及び性能は表1の通りである。
【0045】
(比較例1)
CaHPO(DCPA)とCa(POO(TTCP)の1:1モル比混合粉末1gと0.4mlのpH1.96希燐酸水溶液を混合し、得られたペーストを30秒毎にテストし、操作時間と硬化時間を測定した。本比較例のペーストは1時間内に硬化しなかった。その性能は表1の通りである。
【0046】
(実施例12)
実施例2におけるCaHPO(DCPA)をCaHPO(DCPA)とCa(POO(TTCP)の1:1モル比混合粉末に替え、25mM燐酸水溶液はpH1.96の希燐酸水溶液に替え、実施例2と同じ工程を行う。その性能は表1の通りである。
【0047】
(実施例13)
実施例3におけるCaHPO(DCPA)をCaHPO(DCPA)とCa(POO(TTCP)の1:1モル比混合粉末に替え、25mM燐酸水溶液はpH1.96の希燐酸水溶液に替え、実施3と同じ工程を行う。その性能は表1の通りである。
【0048】
(実施例14)
実施例4における25mM燐酸水溶液はpH1.96の希燐酸水溶液に替え、実施例4と同じ工程を行う。その性能は表1の通りである。
【0049】
【表1】
Figure 0003574396
【0050】
比較例1及び実施例7で調製されたペーストを、調製後3、10、30秒後に注射筒から水に注入させた。その結果は、それぞれ図5〜7及び図8〜10の通りである。図5〜6から、比較例1で製造されたペーストは水に分散する。これに反し、実施例7で製造されたペーストは、水に分散しない(図8〜10参照)。
【0051】
比較例1及び実施例7のペーストからそれぞれ形成された二つの柱を水中に放置した。図11〜13は柱を水に浸して5,20及び60秒後の写真であり、比較例1のペーストから形成された左柱は崩壊したが、実施例7のペーストから形成された右柱は殆ど変わらない。
【0052】
図5〜13の結果を纏めると、本発明の燐酸カルシウムセメントは、変形した歯又は骨の空洞内に直接注射又はブロックに成形した後、植入できる。
【0053】
実施例7で製造された燐酸カルシウムセメントの二つのサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、図14、15の両TEM図は、燐酸カルシウムセメントの種々の直径を有する燐酸カルシウム粒子上にウィスカがあることを示す。
【0054】
実施例6で製造された燐酸カルシウムセメントを粒径分析器(Sald−2001,島津)で測定した粒径分布を図1に示す。図1中の曲線より、実施例6で製造した燐酸カルシウムセメントの粒径は約0.47〜93.49μmである。図2は実施例6で製造された燐酸カルシウムセメントの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。さらに、実施例6で製造された燐酸カルシウムセメントの表面上のウィスカの長さと幅をTEM(JXA−840,JEOL Co.,日本)で直接測定し、結果はそれぞれ図3、4に示す。実施例6で製造された燐酸カルシウムセメントの表面上のウィスカの長さと幅は、それぞれ1から625nmと1から65nmである。
【0055】
(実施例15−19)
表2に示す燐酸カルシウム粉末及び湿潤溶液を用いて、実施例7と同じ工程を行った。その性能は表2の通りである。
【0056】
【表2】
Figure 0003574396
【0057】
*TCP:無水燐酸三カルシウム、
TTCP+DCPA:TTCPとDCPAの1:1モル比混合粉末、
TTCP+DCPA+TCP:TTCP+DCPAとTCPの1:1質量比混合粉末、
DCPA+TCP:DCPAとTCPの1:2モル比混合粉末。
【0058】
(比較例2−6)
表2に示される燐酸カルシウム粉末及び湿潤溶液を用いて、比較例1と同じ工程を行った。その性能は表2の通りである。
【0059】
(実施例20−31)
表3に示される種々のpHの湿潤溶液を用いて、実施例7と同じ工程を行った。その性能は表3の通りである。
【0060】
(比較例7−14)
表3に挙げられた種々のpHの湿潤溶液を用いて、比較例1と同じ工程を行った。その性能は表3の通りである。
【0061】
【表3】
Figure 0003574396
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、迅速に硬化し、水または水溶液に分散しない燐酸カルシウムセメントを提供できる。さらに、該セメントの操作時間および硬化時間は、燐酸カルシウムセメント粒子の直径、ウィスカまたは微結晶の幅、長さを調節することにより、調整できる。
【0063】
本発明の方法によれば、簡単な方法により上記の特性を有する燐酸カルシウムセメントが得られる。
【0064】
本発明の組成物によれば、歯の充填用または骨の補綴用の組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例6により製造された燐酸カルシウムセメント(CPC)の粒子分布を正常化粒子量(%)対粒子径(μm)でプロットしたグラフである。
【図2】本発明の実施例6により製造された燐酸カルシウムセメント(CPC)の電子顕微鏡走査図(SEM)である。
【図3】本発明の実施例6により製造された燐酸カルシウムセメント(CPC)を透過型電子顕微鏡(TEM)により直接測定した燐酸カルシウムセメント粒子の表面におけるウィスカの長さの分布を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例6により製造された燐酸カルシウムセメント(CPC)を透過型電子顕微鏡(TEM)により直接測定した燐酸カルシウムセメント粒子の表面におけるウィスカの幅の分布を示すグラフである。
【図5】従来のCPCペーストが形成された3秒後に注射筒で水に注入された従来のCPCペーストの写真を示す。
【図6】従来のCPCペーストが形成された10秒後に注射筒で水に注入された従来のCPCペーストの写真を示す。
【図7】従来のCPCペーストが形成された30秒後に注射筒で水に注入された従来のCPCペーストの写真を示す。
【図8】本発明の実施例7でCPCペーストが形成された3秒後に注射筒で水に注入された本発明のCPCペーストの写真を示す。
【図9】本発明の実施例7でCPCペーストが形成された10秒後に注射筒で水に注入された本発明のCPCペーストの写真を示す。
【図10】本発明の実施例7でCPCペーストが形成された30秒後に注射筒で水に注入された本発明のCPCペーストの写真を示す。
【図11】従来のCPCペースト及び本発明の実施例7で製造されたCPCペーストをそれぞれ形成した両柱を水に浸して5秒後の写真を示す。
【図12】従来のCPCペースト及び本発明の実施例7で製造されたCPCペーストをそれぞれ形成した両柱を水に浸して20秒後の写真を示す。
【図13】従来のCPCペースト及び本発明の実施例7で製造されたCPCペーストをそれぞれ形成した両柱を水に浸して60秒後の写真を示す。
【図14】実施例7で製造された本発明の燐酸カルシウムセメントのTEM顕微鏡写真を示す。
【図15】実施例7で製造された本発明の燐酸カルシウムセメントのTEM顕微鏡写真を示す。

Claims (29)

  1. 表面に成長した幅1〜100nm、長さ1〜1000nmのウィスカを有する粒子径が0.05〜100μmである燐酸カルシウム粒子の燐酸カルシウムセメントを有することを特徴とする燐酸カルシウムセメント。
  2. 上記燐酸カルシウム粒子の粒子径が0.2〜80μmである請求項1記載の燐酸カルシウムセメント。
  3. 上記ウィスカは幅2〜70nm、長さ5〜800nmである請求項1記載の燐酸カルシウムセメント。
  4. 上記燐酸カルシウム粒子の粒子径が0.5〜50μmである請求項3記載の燐酸カルシウムセメント。
  5. 上記ウィスカは長さ10〜700nmである請求項4記載の燐酸カルシウムセメント。
  6. 上記燐酸カルシウム粒子におけるカルシウム対燐酸のモル比が0.5〜2.5である請求項3,4または5記載の燐酸カルシウムセメント。
  7. 上記燐酸カルシウム粒子におけるカルシウム対燐酸のモル比が0.8〜2.3である請求項4または5記載の燐酸カルシウムセメント。
  8. 上記燐酸カルシウム粒子におけるカルシウム対燐酸のモル比が1.0〜2.2である請求項4または5記載の燐酸カルシウムセメント。
  9. (i)表面に成長した幅1〜100nm、長さ1〜1000nmのウィスカを有する粒子径が0.2〜80μmである燐酸カルシウム粒子の燐酸カルシウムセメントおよび(ii)硬化促進剤を含む水溶液とを含むことを特徴とする歯の充填用または骨補綴用の組成物。
  10. 該硬化促進剤を含む水溶液は、燐酸イオン、カルシウムイオン、フッ素イオン、又は燐酸イオンとフッ素イオンを硬化促進剤とする水溶液である請求項9記載の組成物。
  11. 該硬化促進剤を含む水溶液中の硬化促進剤の含有量が1mM〜3Mである請求項10記載の組成物。
  12. 該硬化促進剤を含む水溶液中の硬化促進剤の含有量が10mM〜1Mである請求項11記載の組成物。
  13. 上記燐酸カルシウム粒子の表面に幅2〜70nm、長さ5〜800nmのウィスカを有する粒子径が0.2〜80μmである請求項9記載の組成物。
  14. 上記燐酸カルシウム粒子の表面に長さ10〜700nmのウィスカを有する粒子径が0.5〜50μmである請求項13記載の組成物。
  15. 上記燐酸カルシウム粒子におけるカルシウム対燐酸のモル比が0.5〜2.5である請求項13または14記載の組成物。
  16. 上記燐酸カルシウム粒子におけるカルシウム対燐酸のモル比が0.8〜2.3である請求項15記載の組成物。
  17. 上記燐酸カルシウム粒子におけるカルシウム対燐酸のモル比が1.0〜2.2である請求項16記載の組成物。
  18. 燐酸カルシウムの粉末又は小片を湿潤剤と混合し、該燐酸カルシウムの粉末又は小片の表面におけるウィスカの成長を制御処理により制御することを特徴とする燐酸カルシウムセメントの製造方法。
  19. 表面に幅1〜100nm、長さ1〜1000nmのウィスカを有する燐酸カルシウム粒子の粒子径が0.05〜100μmである請求項18記載の製造方法。
  20. 表面に幅2〜70nm、長さ5〜800nmのウィスカを有する燐酸カルシウム粒子の粒子径が0.2〜80μmである請求項19記載の製造方法。
  21. 表面に長さ10〜700nmのウィスカを有する燐酸カルシウム粒子の粒子径が0.5〜50μmである請求項20記載の製造方法。
  22. 上記湿潤剤が燐酸又は燐酸塩を0.02〜3000mM含む水溶液である請求項18記載の製造方法。
  23. 上記湿潤剤が燐酸又は燐酸塩を0.05〜2000mM含む水溶液である請求項22記載の製造方法。
  24. 上記湿潤剤が燐酸又は燐酸塩を0.1〜1000mM含む水溶液である請求項23記載の製造方法。
  25. 上記制御処理が真空処理、有機溶媒処理、マイクロウェーブ処理又は加熱処理である請求項18,22,23または24記載の製造方法。
  26. 上記燐酸カルシウムの粉末又は小片を湿潤剤に浸し、該制御処理は浸して得られた燐酸カルシウムの粉末又は小片を30〜1600℃の範囲の温度で乾燥する加熱処理である請求項25記載の製造方法。
  27. 上記燐酸カルシウムの粉末又は小片を湿潤剤に浸し、該制御処理は浸して得られた燐酸カルシウムの粉末又は小片をマイクロウェーブで加熱するマイクロウェーブ処理である請求項25記載の製造方法。
  28. 上記燐酸カルシウム粒子におけるカルシウム対燐酸のモル比が0.5〜2.5である請求項19記載の製造方法。
  29. 上記燐酸カルシウムセメントは更に成長因子、骨形態蛋白質又は製薬担体を含む請求項9または10記載の組成物。
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