JP3573569B2 - 生分解性湿式不織布及びその製造方法 - Google Patents

生分解性湿式不織布及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療・衛生材、生活用資材あるいは一般産業資材など、生分解性能が要望される幅広い用途に好適な生分解性湿式不織布及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、漁業や農業、土木用として用いられる産業資材用繊維としては、強度および耐候性の優れたものが要求されており、主としてポリアミド、ポリエステル、ビニロン、ポリオレフィン等からなるものが使用されている。しかし、これらの繊維は自己分解性がなく、使用後、海や山野に放置すると種々の公害を引き起こし、また、使用後、焼却や埋め立てあるいは回収再生による処理には多大の費用を要するという問題がある。また、使い捨ておむつ、使い捨ておしぼりや生理用ナプキンについても経済性から主としてポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維が使用されているが、これらは自然分解性に乏しいため、使用後は焼却されているのが現状である。このような問題を解決する方法として、生分解性能を有する素材を用いることが考えられる。
【0003】
生分解性能を有する不織布としては、例えば乾式法あるいは溶液浸漬法により得られるビスコース短繊維不織布、湿式法により得られるキュプラレーヨン長繊維不織布やビスコースレーヨン長繊維不織布、キチンやコラーゲンのような天然物の化学繊維からなる不織布、コットンからなるスパンレース不織布等が知られている。しかしながら、これらの生分解性不織布は機械的強度が低くかつ親水性であるため吸水・湿潤の時の機械的強度の低下が著しい。しかも一般的にこれらは自然分解速度が比較的遅く、ごみ埋立地のように十分に土壌と接触することの少ない場合には数年間もその形態をとどめている場合が多い。また、これらの不織布は素材自体が非熱可塑性であることから、熱接着性や熱成形性を有さず、その加工や用途において一部に制限を受けるという問題があった。
【0004】
さらに、例えば使い捨ておむつ等のように、用途によっては、さらに吸水性を具備することが必要となる場合があるが、これらの性能を兼ね備えた不織布は得られていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の問題を解決し、良好な生分解性能を備え、かつ実用に供し得るだけの優れた機械的特性を有するとともに、熱接着性を具備し、さらに必要に応じて吸水性をも発揮し得る生分解性湿式不織布及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記問題を解決するため、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
(1)短繊維ウエブが熱処理によって形態保持されてなり、前記短繊維ウエブが多葉型複合短繊維が分散された状態で形成され、前記多葉型複合短繊維は生分解性を有する第1の脂肪族ポリエステルからなる高融点成分とこの高融点成分よりも融点の低い生分解性を有する第2の脂肪族ポリエステルからなる低融点成分とから形成され、この多葉型複合短繊維の繊維横断面において、低融点成分が芯部を形成し、高融点成分が前記低融点成分の円周方向に独立した突起部を複数形成し、しかも低融点成分は高融点成分によって分断されることなく連続しており、かつ、多葉型複合短繊維を形成する高融点成分及び低融点成分はともに繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出してなることを要旨とする生分解性湿式不織布。
【0007】
(2)短繊維ウエブが熱処理によって形態保持されてなり、前記短繊維ウエブが多葉型複合短繊維とセルロース系短繊維とが混在した状態で分散されて形成され、前記多葉型複合短繊維は生分解性を有する第1の脂肪族ポリエステルからなる高融点成分とこの高融点成分よりも融点の低い生分解性を有する第2の脂肪族ポリエステルからなる低融点成分とから形成され、この多葉型複合短繊維の繊維横断面において、低融点成分が芯部を形成し、高融点成分が前記低融点成分の円周方向に独立した突起部を複数形成し、しかも低融点成分は高融点成分によって分断されることなく連続しており、かつ、多葉型複合短繊維を形成する高融点成分及び低融点成分はともに繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出してなることを要旨とする生分解性湿式不織布。
【0008】
(3)生分解性を有する第1の脂肪族ポリエステルからなる高融点成分とこの高融点成分よりも融点の低い生分解性を有する第2の脂肪族ポリエステルからなる低融点成分とを用い、繊維横断面において低融点成分が芯部を形成し、繊維横断面において高融点成分が前記低融点成分の円周方向に独立した突起部を複数形成し、しかも繊維横断面において前記低融点成分は高融点成分によって分断されることなく連続しており、高融点成分及び低融点成分がともに繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出するような多葉型複合断面となる紡糸口金を介して溶融紡糸し、次いで延伸し、この延伸糸条を所定長に切断して多葉型複合短繊維を得、この多葉型複合短繊維を抄造により短繊維ウエブとなし、次いで得られた短繊維ウエブに熱処理を施すことにより構成繊維間を熱融着させて形態を保持させることを要旨とする生分解性湿式不織布の製造方法。
【0009】
(4)生分解性を有する第1の脂肪族ポリエステルからなる高融点成分とこの高融点成分よりも融点の低い生分解性を有する第2の脂肪族ポリエステルからなる低融点成分とを用い、繊維横断面において低融点成分が芯部を形成し、繊維横断面において高融点成分が前記低融点成分の円周方向に独立した突起部を複数形成し、しかも繊維横断面において前記低融点成分は高融点成分によって分断されることなく連続しており、高融点成分及び低融点成分がともに繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出するような多葉型複合断面となる紡糸口金を介して溶融紡糸し、次いで延伸し、この延伸糸条を所定長に切断して多葉型複合短繊維を得、この多葉型複合短繊維とセルロース系短繊維とを混合して抄造により短繊維ウエブとなし、次いで得られた短繊維ウエブに熱処理を施すことにより構成繊維間を熱融着させて形態を保持させることを要旨とする生分解性湿式不織布の製造方法。
【0010】
以上のように、本発明の生分解性湿式不織布は、熱処理によって形態保持された短繊維ウエブからなるので、実用に供し得るだけの強力を備えたものである。しかも、この短繊維ウエブの構成繊維である多葉型複合短繊維は、繊維横断面において生分解性には劣るが冷却性および可紡性、延伸性に優れる高融点成分を細分化して繊維外周部に位置させ、冷却性及び可紡性、延伸性には劣るが生分解性能に優れる低融点成分を中央部に位置させたものであるので、冷却性、可紡性、延伸性及び生分解性能のいずれにも優れる不織布を得ることができる。
【0011】
また、本発明の生分解性湿式不織布のうち、セルロース系短繊維を含有するものについては、特に吸水性に富むものでもある。
また、本発明の生分解性湿式不織布の構成成分は全て生分解性を有する素材であるため、不織布として優れた生分解性能を発揮することができる。
【0012】
さらに、本発明の生分解性湿式不織布は、抄造装置にて形成される短繊維ウエブから形成されるので、均一性に富み、しかも簡易に効率良く製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の生分解性湿式不織布は多葉型複合短繊維によって構成されるものである。
【0014】
本発明において適用される多葉型複合短繊維は、生分解性を有する第1の脂肪族ポリエステルからなる高融点成分とこの高融点成分よりも融点の低い生分解性を有する第2の脂肪族ポリエステルからなる低融点成分とから形成される複合短繊維である。
【0015】
高融点成分及び低融点成分を構成する第1及び第2の生分解性脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸のようなポリ(α−ヒドロキシ酸)またはこれらを構成する繰り返し単位要素による共重合体が挙げられる。また、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−プロピオラクトン)のようなポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)が、さらに、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシカプロエート、ポリ−3−ヒドロキシヘプタノエート、ポリ−3−ヒドロキシオクタノエートのようなポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)及びこれらを構成する繰り返し単位要素とポリ−3−ヒドロキシバリレートやポリ−4−ヒドロキシブチレートを構成する繰り返し単位要素との共重合体が挙げられる。また、ジオールとジカルボン酸の縮重合体からなるものとして、例えば、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼテート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレートまたはこれらを構成する繰り返し単位要素による共重合体が挙げられる。また、以上の脂肪族ポリエステルを複数ブレンドして用いることもできる。以上の脂肪族ポリエステルのなかでは、製糸性及び生分解性能の観点から、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートならびにポリブチレンアジペートが特に好ましく、さらに特に、ブチレンサクシネートを主繰り返し単位としてこれにエチレンサクシネートあるいはブチレンアジペートを共重合せしめた共重合ポリエステルが好適である。本発明においては、以上の脂肪族ポリエステルの中から選択された2種の重合体のうち、融点が高い方の重合体を高融点成分、融点が低い方の重合体を低融点成分とする。特に、このとき、高融点成分として融点が100℃以上である重合体を用いることが、紡出糸条の冷却性、延伸性等の点から好ましい。
【0016】
本発明においては、特に、高融点成分として、ポリブチレンサクシネートを用い、低融点成分として、ブチレンサクシネートの共重合量比が70〜90モル%となるようにブチレンサクシネートにエチレンサクシネートあるいはブチレンアジペートを共重合せしめた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。ブチレンサクシネートの共重合量比が70モル%未満であると、生分解性能には優れるものの、紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性に劣り、目的とする短繊維が得られない傾向となる。逆に、90モル%を超えると、紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性には優れるものの、生分解性能に劣り本発明の目的とするものではない。
【0017】
なお、本発明において、高融点成分及び低融点成分に適用される前述の脂肪族ポリエステルは、数平均分子量が約20,000以上、好ましくは40,000以上、さらに好ましくは60,000以上のものが、製糸性及び得られる糸条の特性の点で良い。また、重合度を高めるために少量のジイソシアネートやテトラカルボン酸二無水物などで鎖延長したものでも良い。
【0018】
また、本発明においては、前述の高融点成分及び低融点成分の両方またはいずれか一方に、必要に応じて、例えば艶消し剤、顔料、光安定剤、酸化防止剤、結晶核剤等を本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができる。
【0019】
また、本発明において、高融点成分及び低融点成分の粘度は特に限定しないが、高融点成分の粘度が低融点成分の粘度より高い方が好ましい。これは、一般に熱可塑性樹脂の複合紡糸においては低粘度成分が高粘度成分を被覆しようとする力が働くことに起因する。すなわち、本発明においては、高融点成分を高粘度にすることにより円周方向において高融点成分にて形成される突起部を独立させやすく、延いては異形度を上げ、冷却性を向上させるのにも好適となる。
【0020】
従って、本発明で適用する重合体のメルトフローレート値(以降、MFR値と記す)は、高融点成分が5〜50g/10分であり、低融点成分が10〜70g/10分であることが好ましい。但し、本発明におけるMFR値は、ASTM−D−1238(E)記載の方法に準じて測定したものである。高融点成分のMFR値が5g/10分未満及び/または低融点成分のMFR値が10g/10分未満であると、あまりにも高粘度であるため、紡出糸条の細化がスムーズに行われず操業性を損なう結果となり、しかも得られる繊維は太繊度で均斉度に劣るものとなるため得られる不織布の柔軟性を損なうこととなる。逆に、高融点成分のMFR値が50g/10分及び/または低融点成分のMFR値が70g/10分を超えると、あまりにも低粘度であるため、複合断面が不安定となるばかりか、紡糸工程において糸切れが発生し操業性を損なうとともに、得られる繊維糸条の均整度が劣り、延いては不織布の強力に斑が生じることとなる不織布の機械的特性が劣る結果となる。これらの理由により、高融点成分のMFR値は10〜45g/10分、低融点成分のMFR値は15〜65g/10分であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明において多葉型複合断面とは、例えば図1に示すように、繊維横断面において、低融点成分2が芯部を形成し、高融点成分1が前記低融点成分2の円周方向に独立した突起部を複数形成し、しかも低融点成分2は高融点成分1によって分断されることなく連続しており、かつ高融点成分1及び低融点成分2がともに繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出している断面をいう。多葉型複合断面においては、高融点成分1が芯部を形成する低融点成分2の円周方向に個々に独立した突起部を複数形成していること、すなわち低融点成分2が高融点成分1によって分断されることなく連続していることは、優れた生分解性能を維持させるのに必要である。たとえば、高融点成分1が円周方向に独立せずに結合した状態(いわゆる異形芯鞘型複合断面)では、高融点成分1が分解した後に芯部の低融点成分2が分解し始めるのであるから、不織布としての生分解性能には劣る結果となるのである。また、高融点成分1及び低融点成分2のいずれもが繊維軸方向に連続することは、繊維横断面の安定性、製糸性及び繊維の機械的特性を向上させるために必要である。さらに、高融点成分1及び低融点成分2が繊維表面において交互に露出していることは、紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性、さらに生分解性能の促進、制御のために必要である。本発明においては、このような多葉型複合断面を有する短繊維を適用することにより、たとえば低融点成分2が紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性に劣る重合体であっても、突起部に配設する高融点成分1により糸条間の凝集が防止され紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性を向上させることができる。また、高融点成分1が生分解性能に劣る重合体であっても、芯部に配設された低融点成分2の生分解性能が優れるため、経時的に高融点成分1が小片として取り残された状態となる。そして、この小片の繊度は極めて細いことから、不織布としての生分解性能には優れる結果となるのである。
【0022】
本発明に適用される複合短繊維の繊維横断面において、個々に独立した高融点成分のセグメントの配設形態は、前記の繊維横断面形状を満足するものであれば制限はないが、高融点成分の各セグメントが繊維横断面の外周上に各々等間隔に位置していることが好ましい。高融点成分の各セグメントが繊維横断面の外周上に各々片寄りをもって位置する場合においては、紡糸工程において紡出糸条がニーリングを発生し易くなる。さらに、高融点成分の各セグメントは、全て同じ割合で低融点成分のなかに埋没するように配設されていることが好ましい。高融点成分の各セグメントが各々異なる割合で低融点成分のなかに埋没するような場合においては、繊維横断面形状の安定性を損なうこととなる。また、高融点成分の各セグメントがどのような割合で低融点成分のなかに埋没するように配設されているかについては、たとえば、図2に示すように、高融点成分1の各セグメントの中心3が低融点成分2の円周より外側にあるような配設形態、すなわち高融点成分1の円周占有率が大きい場合から、図3に示すように、高融点成分1の各セグメントの中心3が低融点成分2の円周より内側にあるような配設形態、すなわち低融点成分2の円周占有率が大きい場合まで、任意の形態を適用できるが、少なくとも、高融点成分1の各セグメントが製糸・製反工程において剥離しない程度に低融点成分2と重なり合っていること、ならびに低融点成分2が内部に埋没した高融点成分1によって分断されていないことが必要である。繊維横断面形状の安定性を考慮すると、たとえば、図1に示すように、高融点成分1の各セグメントの中心3が低融点成分2の円周上にあるような配設形態が良い。
【0023】
本発明に適用される複合短繊維は、高融点成分/低融点成分の複合比が1/3〜3/1(重量比)であることが好ましい。複合比がこの範囲を外れると紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性と生分解性能とを併せて満足することができず、さらに、繊維横断面形状の不安定さを誘発するため好ましくない。例えば、高融点成分/低融点成分の複合比が1/3未満であると、生分解性能には優れるものの、紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性には劣る結果となる。逆に、高融点成分/低融点成分の複合比が3/1を超えると、紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性には優れるものの、生分解性能には劣る結果となる。この理由により、さらに好ましくは1/2.5〜2.5/1(重量比)が良い。さらに例えば、高融点成分が生分解性能に劣る重合体であれば、低融点成分の複合比を上げることにより生分解速度を促進させることができる。
【0024】
本発明に適用される複合短繊維は、繊維横断面において高融点成分の突起部数の合計が4以上であることが好ましい。高融点成分の突起部数の合計が4未満であると、紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性に劣ることとなる。すなわち、本発明においては、高融点成分の円周方向に占める割合が大きいほど、紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性には優れる結果となる。従って、突起部数の合計が4未満であると、低融点成分の円周占有率が大きくなるため冷却性及び可紡性、延伸性に劣ることとなるのである。これを回避するために、高融点成分の複合比を上げると、個々に独立した高融点成分の各セグメント繊度、すなわち繊維横断面において高融点成分が占める最小構成単位部分の繊度が大きくなるのであるから、必然的に不織布の生分解性能には劣ることとなる。一方、高融点成分の突起部数の合計があまりにも多すぎると、高融点成分の各セグメントを個々に独立させることが困難となる。従って、これらの理由により、高融点成分の突起部数の合計は、さらに好ましくは5〜10であるのが良い。
【0025】
本発明に適用される複合短繊維においては、高融点成分の個々に独立した各セグメント繊度が0.05〜2デニールであることが好ましい。高融点成分の各セグメント繊度が0.05デニール未満であると、生産量の低下及び繊維横断面形状の不安定化等の理由により好ましくない。逆に、高融点成分の各セグメント繊度が2デニールを超えると、紡出糸条の冷却性及び可紡性、延伸性に劣るとともに生分解性能にも劣る結果となる。これらの理由により、高融点成分の各セグメント繊度は、さらに好ましくは0.1〜1デニールであるのが良い。
【0026】
また、高融点成分の各セグメント繊度と同様に、高融点成分と低融点成分とから構成される複合短繊維の単糸繊度が1.5〜10デニールであることが好ましい。1.5デニール未満であると、紡糸口金の複雑化、製糸工程における糸切れの増大、生産量の低下及び繊維横断面形状の不安定さなどを招くため好ましくない。逆に、10デニールを超えると紡出糸条の冷却性に劣るとともに生分解性能にも劣る結果となる。この理由により、さらに好ましくは2〜8デニールが良い。
【0027】
本発明においては、必要に応じて前記多葉型複合短繊維にセルロース系短繊維を混合して抄造することもできる。これにより、湿潤時の強力低下や嵩高性の低下を回避しながら、本発明の不織布に優れた吸水性を具備させることができると同時に、コスト面でも有利となる。
【0028】
本発明に適用されるセルロース系短繊維としては、特に制限はないが、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、麻パルプ、コットン、ラミー、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、および溶剤紡糸されたレーヨン繊維であるリヨセルから選択されるいずれかであることが好ましい。本発明に適用されるセルロース系短繊維は後述する抄紙法によりウエブとされるのであるが、抄造工程においてこれら繊維の繊維長は20mm以下であることが好ましい。従って、特に所定の繊維長に切断することが困難なコットン繊維、麻繊維等においては、これらの繊維からなる織・編物から得られる反毛繊維を用いると、比較的繊維長の短い繊維となり、しかも製造コストを安価にできる点で好ましい。
【0029】
生分解性能を有する多葉型複合短繊維とセルロース系短繊維との混合比率は、70/30〜30/70重量%であることが好ましい。セルロース系短繊維が30重量%未満であると、不織布の機械的特性には優れるものの、吸水性に劣り用途が限定されることとなる。逆に、セルロース系短繊維が70重量%を超えると、吸水性には優れるものの、熱接着性を有する脂肪族ポリエステルからなる複合短繊維の繊維量が少ないものとなり、機械的特性に劣る実用性に乏しいものとなる。
【0030】
本発明の生分解性湿式不織布は、前述の多葉型複合短繊維および必要に応じセルロース系短繊維にて形成される短繊維ウエブからなるものである。ここで、短繊維ウエブは、後述するように、いわゆる抄紙法により抄造したものである。すなわち、水等の液体を媒体として繊維を分散させる方法により形成されるものである。従って、本発明の不織布は、空気中にて繊維を分散して形成される乾式不織布に比べてより均一性の高いものとなる。
【0031】
特に、多葉型複合短繊維とセルロース系短繊維とが混在した状態で分散されて短繊維ウエブが形成されている場合、多葉型複合短繊維とセルロース系短繊維とはできる限り均一に混合されていることが、短繊維ウエブを効率良く一体化するうえで好ましいのであるが、本発明においては短繊維ウエブが、抄造により形成されるので、均一性の高い、ひいては機械的強力にも優れる不織布を得ることができる。また、本発明の生分解性湿式不織布は、前記短繊維ウエブが熱処理によって形態保持されてなるものである。ここで、熱処理とは、抄造によって形成された短繊維ウエブを乾燥させると同時に、ウエブの構成繊維間を熱融着させる処理をいう。これにより、本発明の不織布は、実用に耐えうるだけの強力で一体化され、優れた機械的強力を発揮することができるのである。
【0032】
次に、本発明の生分解性湿式不織布の製造方法について説明する。
まず、通常の複合紡糸装置及び延伸装置を用いて、前述の多葉型複合短繊維を製造する。すなわち、前述の重合体を好適材料とした高融点成分と低融点成分とを溶融して個別計量し、これを好ましくは前述の複合比にて、多葉型複合断面を形成可能な複合紡糸口金を介して紡出し、紡出糸条を例えば冷却空気流などを用いた公知の冷却装置にて冷却する。次いで、引取ロールにて未延伸糸として捲きとり、この未延伸糸を周速の異なる延伸ロール間で所定の延伸倍率で延伸を行う。得られた延伸糸を所定長に切断して短繊維を得る。なお、上述したのは、二工程法であるが、一工程法、即ち未延伸糸を一旦捲き取ることなく連続して延伸するいわゆるスピンドロー法で短繊維を得ることもできる。
【0033】
また、本発明においては、用いる重合体、特に構成成分のうちの少なくとも低融点成分中に結晶核剤を添加することが好ましい。これにより、溶融紡糸の際に固化しにくい低結晶性の重合体であっても、紡出糸条の冷却性を向上させることができ、紡出糸条間に密着が発生するのを防止することができるのである。結晶核剤の添加は重合工程あるいは溶融工程で行うが、その際、得られる糸の機械的性能及び均整度を向上させるため、できる限り均一分散させておくことが好ましい。また、ここで、結晶核剤としては、粉末状の無機物で、かつ溶融液に溶解したりするものでなければ特に制限をうけないが、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、窒化ホウ素、シリカゲル、酸化マグネシウムまたはこれらの混合物が好適に用いられる。
【0034】
溶融紡糸の際の紡糸温度は、高融点成分および低融点成分として使用する重合体の組成や重合度により異なるが、通常、170〜250℃とすることが好ましい。紡糸温度が170℃未満では溶融押出しが困難であり、250℃を超えると熱分解が顕著となり、高強度の繊維を得ることが困難となる。
【0035】
延伸工程において、延伸ロール個数及び延伸温度は適宜選択すれば良い。たとえば、太繊度を延伸する場合には延伸ロール個数を多くし、さらに熱延伸することも必要である。また、全延伸倍率は、目的とする繊維の要求性能に応じて適宜選択すれば良いが、一定の引張強力を維持するには、2.0〜4.5倍に延伸することが好ましい。
【0036】
延伸糸を切断するに際しては、続く抄造による短繊維ウエブの形成工程を勘案すると、繊維長3〜20mm、好ましくは5〜15mmとするのが良い。
次いで、公知の抄紙機を用いて、得られた多葉型複合短繊維を抄造により短繊維ウエブとなす。ここで、抄造とは、多葉型複合短繊維を水等の液体中に一括して投入して均一に分散させ、これを網上に流し脱水してウエブを形成することをいう。そして、脱水した抄造物に、公知の熱処理装置を用いて熱処理を施して短繊維ウエブを乾燥させると同時に、短繊維ウエブの構成繊維間を熱融着させ、生分解性湿式不織布を得るのである。
【0037】
抄造を行うに際し、抄造濃度、すなわち短繊維材料の濃度は、得ようとする不織布の目付けに応じて適宜選択すれば良い。すなわち、抄造濃度が低ければ低目付けの不織布が得られ、抄造回数を増加させることにより均一な不織布が得られることとなる。一方、抄造濃度が高ければ高目付けの不織布を得ることが可能となる。これらを考慮して、生産速度に見合った濃度を選定することが好ましい。
【0038】
なお、分散工程、抄造工程において、適宜、表面活性剤、分散剤、増粘剤等を添加すると、一層均一な短繊維の分散あるいは均一な抄造が可能となり、均一性が高く機械的強力にも優れた不織布が得られることとなり好適である。
【0039】
熱処理を施すに際しては、ヤンキードライヤーやフラットカレンダー等の熱処理装置を用いる方法のほか、熱風ドライヤー、サクションドライヤー等で熱処理した後にプレスロールを用いる方法を採用することもできる。この熱処理によって、多葉型複合短繊維の芯部に配された低融点成分が熱融解して接着成分となり、短繊維ウエブを一体化することができるのである。
【0040】
また、熱処理の際の処理温度は、多葉型複合短繊維を構成する重合体の中で最も低い融点をもつ重合体の融点よりも高く、最も高い融点をもつ重合体の融点よりも低い温度とすることが好ましい。処理温度がこの範囲よりも低すぎる温度であると、短繊維ウエブが熱接着できず、不織布として実用的な強力を得ることができない。逆に、処理温度がこの範囲よりも高すぎる温度であると、短繊維が全融してドライヤーからの剥離が困難であったり、不織布形態を保持しなくなるという問題が発生する。また、ヤンキードライヤー、フラットカレンダー、プレスロール等で熱圧着するときの線圧としては、0.1〜20kg/cmを選択することが良い。線圧が0.1kg/cm未満であるとロール上での不織布のスベリが生じ、熱接着斑を生じたり、不織布表面に毛羽の発生や、異様な光沢斑が発生し、均一な不織布が得られにくくなる。逆に、線圧が20kg/cmを超えると不織布がフィルム化し、好ましくない。
【0041】
前記のロールの材質はスチールロールとスチールロール、あるいはスチールロールとゴムロール、コットンロール、樹脂ロールのいずれかとを組み合わせて用いれば良い。スチールロールは、テフロン樹脂等をコーティングするとロールへの付着物が少なく剥離も容易となるので好ましい。ゴムロール、コットンロールを用いた場合は不織布表面の異様な光沢を防止できるので好ましい。
【0042】
本発明において、短繊維ウエブの構成繊維として多葉型複合短繊維に加えてセルロース系短繊維を混合する場合、抄造工程において、多葉型複合短繊維とセルロース系短繊維とを水等の液体中に一括して投入し、混在させた状態で均一に分散させ、前述と同様にこれを網上に流し脱水してウエブを形成すると良い。
【0043】
なお、本発明において、セルロース系繊維は、針葉樹、広葉樹等を原料として製造された市販の板状パルプや、亜麻、大麻、ちょ麻、マニラ麻等から製造された市販の板状麻パルプ等を用いると良い。
【0044】
【実施例】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0045】
実施例において、各物性値の測定は次の方法により実施した。
【0046】
・メルトフローレート値(g/10分):ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて温度190℃で測定した。(以降、MFR値と記す)
【0047】
・融点(℃):示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製;DSC−2型)を用い、試料重量を5mg、昇温速度を20℃/分として測定して得た融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
【0048】
・目付け(g/m ):標準状態の試料から試料長が10cm、試料幅が10cmの試料片10点を作成し平衡水分にした後、各試料片の重量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、目付け(g/m )とした。
【0049】
・引張強力(kg/5cm幅)および伸度(%):JIS−L−1096Aに記載の方法に準じて測定した。すなわち、試料長が15cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、試料片毎に不織布の縦方向について、定速伸張型引張り試験機(東洋ボールドウイン社製;テンシロンUTM−4−1−100)を用いて、引張り速度2cm/分で伸張し、得られた切断時荷重値の平均値を引張強力(kg/5cm幅)とした。また、同時に得られた切断時伸長率(%)の平均値を伸度(%)とした。
【0050】
・圧縮剛軟度(g/(g/m )):試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片5点を作成し、各試料片毎に横方向に曲げて円筒状物とし、各々その端部を接合したものを圧縮剛軟度測定試料とした。次いで、各測定試料毎にその軸方向について、定速伸長型引張試験機(東洋ボールドウイン社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、圧縮速度5cm/分で圧縮し、得られた最大荷重値(g)を目付け(g/m )で割った値を圧縮剛軟度(g/(g/m ))とした。なお、この圧縮剛軟度とは、値が小さいほど柔軟性が優れることを意味するものである。
【0051】
・吸水性(mm/10分):JIS−L−1096に記載のバイレック法に準じて測定した。すなわち、試料長が20cm、試料幅が2.5cmの試料片5点を作成し、各試料片を20±2℃の蒸留水を入れた水槽上の一定の高さに支えた水平棒上にピンで留めて吊す。試料片の下端を一線に並べて水平棒を下げ、試料片の下端の1cmがちょうど水に浸かるようにする。10分間放置後の水の上昇した高さ(mm)を測り、その平均値を吸水性(mm/10分)とした。
【0052】
・生分解性能:不織布を土中に埋設し、6ヶ月後に取り出し、不織布がその形態を保持していない場合、あるいは、その形態を保持していても強力が埋設前の強力初期値に対して50%以下に低下している場合、生分解性能が良好であるとし、強力が埋設前の強力初期値に対して50%を超える場合、生分解性能が不良であると評価した。
【0053】
実施例1
高融点成分として、MFR値が25g/10分で融点が114℃のポリブチレンサクシネートを、低融点成分として、MFR値が25g/10分で融点が102℃のブチレンサクシネート/エチレンサクシネート=80/20モル%の共重合ポリエステルを用いて、多葉型複合短繊維よりなる不織布を製造した。すなわち、前記高融点成分および低融点成分を個別のエクストルーダ型溶融押出し機を用いて、温度180℃で溶融し、多葉型複合紡糸口金を介して、単孔吐出量=0.90g/分、複合比(高融点成分/低融点成分)=1/1(重量比)の条件下にて溶融紡糸した。この紡出糸条を冷却装置にて冷却した後で、引取りロールにて引取り速度が800m/分で引取り、未延伸糸条を得た。得られた未延伸糸糸条を複数本引き揃え、延伸処理を施し、単糸繊度が3.0デニールの延伸糸を得た。延伸処理に際しては、3組のロール群からなる2段延伸機を用い、それぞれの組のロール群のロールの表面温度を50℃とし、延伸倍率を3.7倍とした。この延伸糸に、水中における分散効果を有する油脂成分を付与した後、繊維長10mmに裁断し、多葉型複合短繊維を得た。
【0054】
次いで、得られた多葉型複合短繊維2.5gをパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000r.p.m.にて1分間撹拌後、これを抄紙機(熊谷理機工業製;角型シートマシン)に移し、増粘剤としてポリアクリルアマイドを5ppm滴下した後に、付帯の撹拌羽根にて余分な水分を脱水し、その後、表面温度105℃、熱処理時間100秒、プレス線圧1kg/cmの条件の回転乾燥機(熊谷理機工業製;卓上型ヤンキードライヤー)にて熱処理を施し、目付け40g/mの湿式不織布を得た。製造条件、操業性、不織布物性を表1に示す。
【0055】
実施例2
実施例1で得られたのと同一の多葉型複合短繊維1.75gと、木綿晒し綿の織物より得られた反毛繊維(平均繊度=1.8デニール、平均繊維長=12.4mm)0.75gとをパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し(多葉型複合短繊維/木綿晒し綿=70/30重量%)、3000r.p.m.にて1分間撹拌後、これを抄紙機(熊谷理機工業製;角型シートマシン)に移し、増粘剤としてポリアクリルアマイドを5ppm滴下した後に、付帯の撹拌羽根にて余分な水分を脱水し、その後、表面温度105℃、熱処理時間100秒、プレス線圧1kg/cmの条件の回転乾燥機(熊谷理機工業製;卓上型ヤンキードライヤー)にて熱処理を施し、目付け40g/m の湿式不織布を得た。製造条件、操業性、不織布物性を表1に示す。
【0056】
実施例3
実施例1で得られたのと同一の多葉型複合短繊維1.25gと、木綿晒し綿の織物より得られた反毛繊維(平均繊度=1.8デニール、平均繊維長=12.4mm)1.25gとをパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入(多葉型複合短繊維/木綿晒し綿=50/50重量%)したこと以外は実施例2と同様にして、目付け40g/m の湿式不織布を得た。製造条件、操業性、不織布物性を表1に示す。
【0057】
実施例4
実施例1で得られたのと同一の多葉型複合短繊維0.75gと、木綿晒し綿の織物より得られた反毛繊維(平均繊度=1.8デニール、平均繊維長=12.4mm)1.75gとをパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入(多葉型複合短繊維/木綿晒し綿=30/70重量%)したこと以外は実施例2と同様にして、目付け40g/m の湿式不織布を得た。製造条件、操業性、不織布物性を表1に示す。
【0058】
実施例5
木綿晒し綿の織物より得られた反毛繊維に変えて、ビスコースレーヨンを用いたこと以外は実施例3と同様にして、目付け40g/m の湿式不織布を得た。製造条件、操業性、不織布物性を表2に示す。
【0059】
実施例6
低融点成分として、MFR値が25g/10分で融点が107℃のブチレンサクシネート/エチレンサクシネート=90/10モル%の共重合ポリエステルを用いたこと以外は実施例1と同様にして多葉型複合短繊維を得、この多葉型複合短繊維1.25gと、木綿晒し綿の織物より得られた反毛繊維(平均繊度=1.8デニール、平均繊維長=12.4mm)1.24gとをパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入(多葉型複合短繊維/木綿晒し綿=50/50重量%)したこと以外は実施例2と同様にして、目付け40g/m の湿式不織布を得た。製造条件、操業性、不織布物性を表2に示す。
【0060】
実施例7
低融点成分として、MFR値が25g/10分で融点が92 ℃のブチレンサクシネート/エチレンサクシネート=70/30モル%の共重合ポリエステルを用いたこと以外は実施例1と同様にして多葉型複合短繊維を得、この多葉型複合短繊維1.25gと、木綿晒し綿の織物より得られた反毛繊維(平均繊度=1.8デニール、平均繊維長=12.4mm)1.25gとをパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入(多葉型複合短繊維/木綿晒し綿=50/50重量%)したこと以外は実施例2と同様にして、目付け40g/m の湿式不織布を得た。製造条件、操業性、不織布物性を表2に示す。
【0061】
比較例1
実施例1の多葉型複合短繊維と同様の条件にて製造したブチレンサクシネート/エチレンサクシネートの共重合ポリエステルを用いた単相型短繊維を用いて、セルロース系短繊維と混合することなく、実施例1と同様に短繊維ウエブを作成し、表面温度100℃、熱処理時間100秒、プレス線圧1kg/cmの条件にて熱処理し、目付け40g/m の湿式不織布を得た。製造条件、操業性、不織布物性を表2に示す。
【0062】
比較例2
実施例1の多葉型複合短繊維と同様の条件にて製造したブチレンサクシネート/エチレンサクシネートの共重合ポリエステルからなる単相型短繊維と木綿晒し綿とを用いたこと以外は実施例3と同様にして湿式不織布を得た。製造条件、操業性、不織布物性を表2に示す。
【0063】
【表1】
Figure 0003573569
【0064】
【表2】
Figure 0003573569
【0065】
表1および表2から明らかなように、実施例1で得られた不織布は、実用に供し得るだけの充分な強力および柔軟性を有し、しかも嵩高性に富むものであった。また、この不織布は、良好な生分解性能を具備したものであった。
【0066】
実施例2〜7で得られた不織布は、いずれもセルロース系短繊維を含有しているので、実用に供し得るだけの充分な強力および柔軟性を有するとともに、優れた吸水性を具備し、しかも嵩高性に富むものであった。また、これらの不織布は、いずれも良好な生分解性能を具備したものであった。
【0067】
比較例1および比較例2はいずれも、単相型断面の短繊維からなる短繊維ウエブを適用しているので、得られた不織布は生分解性能に乏しいものであった。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な生分解性能を備え、かつ実用に供し得るだけの優れた機械的特性を有するとともに、熱接着性を具備し、さらに必要に応じて吸水性をも発揮し得る生分解性湿式不織布及びその製造方法を提供することができる。
【0069】
本発明の生分解性湿式不織布は、生活用資材、衛生材、廃棄物処理材、ワイピングクロス、漁業用資材、農業資材、土木用資材等の各素材として好適である。しかも、この生分解性湿式不織布は、使用後微生物が存在する環境(土中又は水中)に放置しておけば一定期間後に生分解されるので特別な廃棄物処理を必要とせず、自然環境保護の観点からも有益であり、あるいは、例えば堆肥化して肥料とするなど再利用を図ることもできるため資源の再利用の観点からも有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にもとづく生分解性湿式不織布を得るための複合短繊維の断面構造の一例を示す図である。
【図2】本発明にもとづく生分解性湿式不織布を得るための複合短繊維の断面構造の他の例を示す図である。
【図3】本発明にもとづく生分解性湿式不織布を得るための複合短繊維の断面構造のさらに他の例を示す図である。
【符号の説明】
1 高融点成分
2 低融点成分

Claims (8)

  1. 短繊維ウエブが熱処理によって形態保持されてなり、前記短繊維ウエブが多葉型複合短繊維が分散された状態で形成され、前記多葉型複合短繊維は生分解性を有する第1の脂肪族ポリエステルからなる高融点成分とこの高融点成分よりも融点の低い生分解性を有する第2の脂肪族ポリエステルからなる低融点成分とから形成され、この多葉型複合短繊維の繊維横断面において、低融点成分が芯部を形成し、高融点成分が前記低融点成分の円周方向に独立した突起部を複数形成し、しかも低融点成分は高融点成分によって分断されることなく連続しており、かつ、多葉型複合短繊維を形成する高融点成分及び低融点成分はともに繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出してなることを特徴とする生分解性湿式不織布。
  2. 短繊維ウエブが熱処理によって形態保持されてなり、前記短繊維ウエブが多葉型複合短繊維とセルロース系短繊維とが混在した状態で分散されて形成され、前記多葉型複合短繊維は生分解性を有する第1の脂肪族ポリエステルからなる高融点成分とこの高融点成分よりも融点の低い生分解性を有する第2の脂肪族ポリエステルからなる低融点成分とから形成され、この多葉型複合短繊維の繊維横断面において、低融点成分が芯部を形成し、高融点成分が前記低融点成分の円周方向に独立した突起部を複数形成し、しかも低融点成分は高融点成分によって分断されることなく連続しており、かつ、多葉型複合短繊維を形成する高融点成分及び低融点成分はともに繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出してなることを特徴とする生分解性湿式不織布。
  3. セルロース系短繊維が、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、麻パルプ、コットン、ラミー、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、および溶剤紡糸されたレーヨン繊維であるリヨセルから選択されるいずれかであることを特徴とする請求項2記載の生分解性湿式不織布。
  4. 多葉型複合短繊維とセルロース系短繊維との混合比率が70/30〜30/70(重量%)であることを特徴とする請求項2または3記載の生分解性湿式不織布。
  5. 高融点成分が、ポリブチレンサクシネートであり、低融点成分が、ブチレンサクシネートの共重合量比が70〜90モル%となるようにブチレンサクシネートにエチレンサクシネートあるいはブチレンアジペートを共重合せしめた共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の生分解性湿式不織布。
  6. 生分解性を有する第1の脂肪族ポリエステルからなる高融点成分とこの高融点成分よりも融点の低い生分解性を有する第2の脂肪族ポリエステルからなる低融点成分とを用い、繊維横断面において低融点成分が芯部を形成し、繊維横断面において高融点成分が前記低融点成分の円周方向に独立した突起部を複数形成し、しかも繊維横断面において前記低融点成分は高融点成分によって分断されることなく連続しており、高融点成分及び低融点成分がともに繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出するような多葉型複合断面となる紡糸口金を介して溶融紡糸し、次いで延伸し、この延伸糸条を所定長に切断して多葉型複合短繊維を得、この多葉型複合短繊維を抄造により短繊維ウエブとなし、次いで得られた短繊維ウエブに熱処理を施すことにより構成繊維間を熱融着させて形態を保持させることを特徴とする生分解性湿式不織布の製造方法。
  7. 生分解性を有する第1の脂肪族ポリエステルからなる高融点成分とこの高融点成分よりも融点の低い生分解性を有する第2の脂肪族ポリエステルからなる低融点成分とを用い、繊維横断面において低融点成分が芯部を形成し、繊維横断面において高融点成分が前記低融点成分の円周方向に独立した突起部を複数形成し、しかも繊維横断面において前記低融点成分は高融点成分によって分断されることなく連続しており、高融点成分及び低融点成分がともに繊維軸方向に連続するとともに繊維表面において交互に露出するような多葉型複合断面となる紡糸口金を介して溶融紡糸し、次いで延伸し、この延伸糸条を所定長に切断して多葉型複合短繊維を得、この多葉型複合短繊維とセルロース系短繊維とを混合して抄造により短繊維ウエブとなし、次いで得られた短繊維ウエブに熱処理を施すことにより構成繊維間を熱融着させて形態を保持させることを特徴とする生分解性湿式不織布の製造方法。
  8. 多葉型複合短繊維を構成する重合体のうち、最も高い融点を有する重合体の融点よりも低く、最も低い融点を有する重合体の融点よりも高い温度にて、短繊維ウエブに熱処理を施すことを特徴とする請求項6または7記載の生分解性湿式不織布の製造方法。
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