JP3572945B2 - 溶融めっき装置のシンクロール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、金属帯の溶融めっき処理においてめっき槽内で金属帯を案内する、シンクロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼帯などの金属帯を対象とする、溶融亜鉛めっきに代表される溶融めっき処理は、図1に示すように、めっき槽1内に、スナウト2を介して導かれた、例えば鋼帯3を、めっき槽1の内部に配置したシンクロール4に巻き回して、めっき槽1内から引き上げられる間に、行われるのが基本である。
【0003】
この溶融めっき処理、例えば溶融亜鉛めっき処理では、めっき槽1内の亜鉛めっき浴を通過する鋼帯3から鉄が溶出し、この鉄が浴の亜鉛と反応して化合物が生成し、この化合物がめっき槽1の底部に徐々に沈殿し、いわゆるドロス5となる。このドロス5は、溶融めっき処理中に上方に巻き上がって鋼帯4に付着し、プレス成形時の外観不良、凹凸性不良をまねくことになる。
【0004】
このドロスの巻き上げに関して、実公平5−38045号公報では、シンクロールの下に遮蔽板を取り付け、鋼板の走行に伴う随伴流によるドロスの巻き上げを防止する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この遮蔽板によっても、鋼帯へのドロスの付着を十分に抑制することができず、さらなる改善が求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、めっき槽の底部に沈殿したドロスの上方への巻き上がりを有利に抑制する、新規な構造のシンクロールを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、ドロスの巻き上がりの原因を鋼板の随伴流とする、実公平5−38045号公報に開示の技術では、ドロスの巻き上げを抑制することが不十分であることから、ドロスの巻き上がりについて詳細に検討したところ、ドロスの巻き上げは、走行鋼板の随伴流ではなく、ロール端面の回転に起因して発生する随伴流が支配的であることがわかった。本発明は、この知見に由来するものである。
【0008】
すなわち、本発明のシンクロールの構造は、次の通りである。
(1)ロール胴とロール軸との間のロール端面に、ロール胴の輪郭線に対して95〜135°の角度で傾く傾斜面を有することを特徴とする溶融めっき装置のシンクロール。
【0009】
(2)ロール胴とロール端面との境界部分に、曲率半径が10mm以上の曲線による輪郭の曲面を有することを特徴とする溶融めっき装置のシンクロール。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明では、上記したように、ドロスの巻き上がる主原因がシンクロールの特に端面で発生する随伴流であることから、図2〜4に示すように、シンクロールの端面の形状を工夫した。
【0011】
すなわち、図2に示すシンクロール6は、ロール胴6aとロール軸6bとの間のロール端面6cを、ロール胴6aの輪郭線に対して鈍角αで傾く傾斜面とした例である。一方、図3に示すシンクロール7は、図2に示したシンクロール6と同様に、ロール胴7aの輪郭線に対して鈍角αで傾く傾斜面7cをロール端面に形成したものであるが、該傾斜面7cを、図2に示したシンクロール6のようにロール軸まで連続させることなく、ロール端面に部分的に形成し、残りの部分はロール軸7bと直交する垂直面7dとした例である。
【0012】
ここで、図2および図3に示したシンクロールにおいて、ロール端面に設けた傾斜面のロール胴の輪郭線に対する角度αは、95〜135°、より好ましくは105〜135°とすることが、肝要である。なぜなら、角度αが95°未満では、ドロスの巻き上げを抑制する効果に乏しくなり、一方135°をこえると、とりわけ図5に示すロール軸方向の随伴流Zの発生を抑制することが難しくなり、さらにロール胴に必要な長さを付与するためにロール軸長を長くする必要が生じて、設備コストを増加することになるためである。
【0013】
なお、図3に示したシンクロール7では、ロール端面の部分に傾斜面7cを形成してあるが、この傾斜面7cの長さが少ないと、ドロスの巻き上げを抑制することが難しくなるから、傾斜面7cのロール径方向の長さtを、ロール径Rの1/20以上、より好ましくは1/10以上は確保することが推奨される。
【0014】
また、図4に示すシンクロール8は、ロール胴8aおよびロール軸8bに対して、在来のシンクロールと同様、垂直の交わるロール端面8cにおいて、ロール胴6aとの境界部分に、曲率半径rの曲面8dを形成した例である。
【0015】
ここで、曲面8dの曲率半径rは、ドロスの巻き上げを確実に抑制するために、10mm以上、より好ましくは20mm以上とすることが肝要である。
【0016】
なお、図2または図3に示したように、ロール端面に傾斜面を設けた上で、図4に示したように、ロール端面とロール胴との境界部分に曲面を形成することも有効である。
【0017】
【実施例】
図6に示す、めっき槽1内に、ハウジング9を介してめっき槽1の底部から1200mmの高さにシンクロールを配置した実験装置を用いて、1200mm幅の鋼帯3に、走行速度:100m/min の下に溶融亜鉛めっき処理を施すに当たり、シンクロールとして図2〜4に示したシンクロールをそれぞれ適用した。ここで、シンクロールは、ロール径700mmおよび有効胴長1800mmを基本として、それぞれ傾斜面の角度αや曲面の曲率半径rを種々に変更したものを用いた。
【0018】
また、比較として、図7に示す在来のシンクロール4を基本寸法を同じにして用いた場合、そして該シンクロール4の下部に、図8に示すように、ロール全長と同じ長さの遮蔽板10を配置した場合について、同様のめっき処理を行った。
【0019】
かくして得られるめっき鋼帯において、1m当たりのドロス付着数を調査した結果について、図9に示す。なお、ドロス付着数は、0.5 m角に分割しためっき鋼帯をプレスしたのち砥石がけ検査し、目視確認できた欠陥数をカウントした。
【0020】
【発明の効果】
本発明のシンクロールを用いることによって、めっき槽の底部に沈殿したドロスの上方への巻き上がりは確実に抑制されるため、欠陥がなくかつ耐食性に優れる被膜の被覆を可能とした、溶融めっき処理を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融めっき処理を示す模式図である。
【図2】本発明のシンクロールを示す図である。
【図3】本発明のシンクロールを示す図である。
【図4】本発明のシンクロールを示す図である。
【図5】シンクロールまわりに生じる随伴流を示す図である。
【図6】実験に用いためっき装置を示す模式図である。
【図7】従来のシンクロールを示す図である。
【図8】シンクロール下に配置した遮蔽板を示す図である。
【図9】製品でのドロスの付着数を示す図である。
【符号の説明】
1 めっき槽
2 スナウト
3 鋼帯
4 シンクロール
5 ドロス
6 シンクロール
6c ロール端面
7 シンクロール
7c 傾斜面
8 シンクロール
8c 曲面
9 ハウジング
10 遮蔽板

Claims (2)

  1. ロール胴とロール軸との間のロール端面に、ロール胴の輪郭線に対して95〜135°の角度で傾く傾斜面を有することを特徴とする溶融めっき装置のシンクロール。
  2. ロール胴とロール端面との境界部分に、曲率半径が10mm以上の曲線による輪郭の曲面を有することを特徴とする溶融めっき装置のシンクロール。
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