JP3572194B2 - 円筒型固体電解質燃料電池およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒型固体電解質燃料電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
円筒型固体電解質燃料電池の本体部の一般的な構造を図5に示す。
図5に示すように、多孔質体からなる基体管101の外周面上には、多孔質性の燃料極102が当該基体管101の軸心方向に沿って所定の間隔ごとに複数成膜されている。燃料極102上には、電解質103が各々成膜されている。電解質103上には、多孔質性の空気極104が各々成膜されている。空気極104と当該空気極104の一方側で隣り合う燃料極102との間には、インタコネクタ105がそれぞれ成膜されている。つまり、基体管101に成膜した燃料極102、電解質103、空気極104からなる各発電素子(単電池セル)をインタコネクタ105で電気的に直列に接続して本体部100が構成されているのである。
【0003】
このような本体部100は、図6に示すように、その両端側に端部集電膜111を溶射法により成膜された後、図7に示すように、当該両端に導電フェルトであるニッケルフェルト112を介してニッケル製の集電部材113,114をそれぞれ嵌合されることにより、集電部が設けられる。なお、図6中、114aは集電棒である。
【0004】
このようにして構成される固体電解質燃料電池においては、所定の温度環境下(900〜1000℃)で基体管101の内部に水素等の燃料ガスを流通させると共に、空気極104の外側に酸素や空気などの酸化ガスを流通させると、燃料ガスが基体管101および燃料極102を透過して電解質103に供給されると共に、酸化ガスが空気極104を透過して電解質103に供給され、これらガスを電解質103で電気化学的に反応させることにより、端部集電膜111からニッケルフェルト112を介して集電部材113,114により外部に電力を送り出すことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述したような円筒型固体電解質燃料電池においては、集電部110の端部集電膜111を溶射法により成膜していることから、装置が大がかりでメンテナンスに要する時間が多く、また、材料歩留が10〜20%程度と低いため、製造コストが高くなっていた。
【0006】
このようなことから、本発明は、低コストで製造することができる円筒型固体電解質燃料電池およびその製造方法を提供することを目的とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決するための、本発明による円筒型固体電解質燃料電池は、基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、前記本体部の両端側の内周面と端面と外周面とにそれぞれ成膜された端部集電膜と、前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材とを備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていることを特徴とする。
また、本発明による円筒型固体電解質燃料電池は、基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、前記本体部の両端側にそれぞれ成膜された端部集電膜と、前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材とを備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていると共に、当該端部集電膜が材料の異なる複数の層からなることを特徴とする。また、本発明による円筒型固体電解質燃料電池は、基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、前記本体部の両端側にそれぞれ成膜された端部集電膜と、前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材とを備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていると共に、前記集電部材の外周面が前記本体部の中央側ほど小径となるテーパ状をなしていることを特徴とする。
また、本発明による円筒型固体電解質燃料電池は、基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、前記本体部の両端側にそれぞれ成膜された端部集電膜と、前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材とを備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていると共に、前記本体部の端面に成膜された前記端部集電膜に前記導電フェルトを介して当接するフランジを前記集電部材が有していることを特徴とする。
また、本発明による円筒型固体電解質燃料電池は、基体管の外周面上に設けら れた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、前記本体部の両端側にそれぞれ成膜された端部集電膜と、前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材とを備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていると共に、前記集電部材の少なくとも前記端部集電膜と前記導電フェルトを介して当接する部分がバイメタルまたは水素吸蔵合金からなることを特徴とする。
【0008】
上述した円筒型固体電解質燃料電池において、前記端部集電膜が材料の異なる複数の層からなることを特徴とする。
【0009】
上述した円筒型固体電解質燃料電池において、前記集電部材の外周面が前記本体部の中央側ほど小径となるテーパ状をなしていることを特徴とする。
【0010】
上述した円筒型固体電解質燃料電池において、前記本体部の端面に成膜された前記端部集電膜に前記導電フェルトを介して当接するフランジを前記集電部材が有していることを特徴とする。
【0011】
上述した円筒型固体電解質燃料電池において、前記集電部材の少なくとも前記端部集電膜と前記導電フェルトを介して当接する部分がバイメタルまたは水素吸蔵合金からなることを特徴とする。
【0012】
また、前述した課題を解決するための、本発明による円筒型固体電解質燃料電池の製造方法は、基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部の両端側を、端部集電膜の構成材料からなるスラリ中にそれぞれ浸漬して焼成することにより、当該本体部の両端側の内周面と端面と外周面とに端部集電膜を成膜することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による円筒型固体電解質燃料電池およびその製造方法の実施の形態を図1を用いて説明する。なお、図1は、その製造方法の手順説明図である。なお、前述した従来の技術と同様な部分については、前述した従来の技術の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、その説明を省略する。
【0014】
図1(a)に示すように、NiO/YSZ(=40/60〜80/20)やNiO/MgAl2 O4 (=40/60〜80/20)などのような端部集電膜の構成材料となるセラミックスの粉体を容器1内で溶剤と混合することによりスラリ2を製造したら、当該スラリ2中に本体部100の端部を浸漬(不要な箇所にはテープ等を巻いてマスキングしておく。)し(図1(b))、当該本体部100をスラリ2から取り出し(図1(c))、他方の端部も上述と同様にしてスラリ2に浸漬した後、図1(d)に示すように、加熱器3で焼成(1250〜1450℃)することにより、当該本体部100の両端側に端部集電膜11を成膜する。
【0015】
次に、本体部100の両端に導電フェルトであるニッケルフェルト112を介してニッケル製の集電部材113,114をそれぞれ嵌合することにより、本体部100の両端側に集電部を設ける。
【0016】
つまり、スラリ焼成法により本体部100の両端側に端部集電膜11を成膜するようにしたのである。
【0017】
したがって、端部集電膜11を簡単でメンテナンスの容易な設備で大量生産することができると共に、端部集電膜11の材料歩留を80%以上とすることができるので、製造コストを大幅に下げることができる。
【0018】
なお、端部集電膜11は、その構成材料であるNiOが燃料ガスで還元されることにより、Niとなって導電性を有するようになる。ところが、端部集電膜11は、還元反応によりわずかに収縮し、接触不良となって欠陥を生じてしまう場合があった(発生率:約10%)。そこで、次のようにすることにより、接触不良を防止して接触抵抗の増加を抑えることがきる。
【0019】
(1)端部集電膜の複層化
端部集電膜11をNiO/YSZやNiO/MgAl2 O4 の層とNiOの層とを積層した二層構造とする等、材料の異なる複数の層からなることにより、接触不良を防止して接触抵抗の増加を抑えることができる。
【0020】
(2)集電部材のテーパ化
図2に示すように、本体部100の中央側ほど小径となるようにテーパ外周面23b,24bを有する集電部材23,24を用いることにより、ニッケルフェルト112を介して集電部材23,24を常に接触させることができ、接触不良を防止して接触抵抗の増加を抑えることができる。なお、図中、24aは集電棒である。
【0021】
(3)集電部材へのフランジ設置
図3に示すように、本体部100の端部側の内周面および端面に当接するようにニッケルフェルト32を設け、当該ニッケルフェルト32を介して基体管101の端面に当接するフランジ34bを設けた集電部材34を当該基体管101の当該端部に嵌合することにより、基体管101の内周面側だけでなく端面側とも接触させて接触面積の増加を図ることができ、接触不良を防止して接触抵抗の増加を抑えることができる。なお、図中、34aは集電棒である。
【0022】
(4)集電部材へのバイメタルや水素吸蔵合金の適用
異なる種類の金属を複数積層したバイメタル(任意の方向に伸縮可能)や水素吸蔵合金を集電部材の少なくともニッケルフェルトを介して端部集電膜11に接触する部分に適用することにより、集電部材のサイズを運転時に最も接触面積が大きくなるように設計しても、基体管101を損傷することなく集電部材を組み付けることができるようにし、運転時の集電部での接触不良を防止して接触抵抗の増加を抑えることができる。ただし、バイメタルや水素吸蔵合金は、使用上限温度が約200〜300℃であるため、図4に示すように、集電部材43,44を発電室200の外側に設けるように本体部100および集電棒44aなどのリードを長くして集電部材43,44を300℃以下の温度で維持できるようにする。なお、図中、45はシール部材、201は加熱器、202は上部ヘッダ、203は下部ヘッダ、204は断熱材である。
【0023】
【発明の効果】
本発明による円筒型固体電解質燃料電池は、基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、前記本体部の両端側にそれぞれ成膜された端部集電膜と、前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材とを備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていることから、端部集電膜が簡単でメンテナンスの容易な設備で大量生産できると共に、端部集電膜の材料歩留が大幅に向上するので、製造コストが大幅に低いものとなる。
【0024】
また、前記端部集電膜が材料の異なる複数の層からなるので、端部集電膜の接触不良を防止して接触抵抗の増加を抑えることができる。
【0025】
また、前記集電部材の外周面が前記本体部の中央側ほど小径となるテーパ状をなしているので、端部集電膜が収縮を生じても端部集電膜に導電フェルトを介して常に接触することができ、集電部での接触不良を防止して接触抵抗の増加を抑えることができる。
【0026】
また、前記本体部の端面に成膜された前記端部集電膜に前記導電フェルトを介して当接するフランジを前記集電部材が有しているので、本体部の内周面側だけでなく端面側とも接触させて接触面積の増加を図ることができ、集電部での接触不良を防止して接触抵抗の増加を抑えることができる。
【0027】
また、前記集電部材の少なくとも前記端部集電膜と前記導電フェルトを介して当接する部分がバイメタルまたは水素吸蔵合金からなるので、集電部材のサイズを運転時に最も接触面積が大きくなるように設計しても、基体管を損傷することなく集電部材を組み付けることができ、運転時の集電部での接触不良を防止して接触抵抗の増加を抑えることができる。
【0028】
また、本発明による円筒型固体電解質燃料電池の製造方法は、基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部の両端側を、端部集電膜の構成材料からなるスラリ中にそれぞれ浸漬して焼成することにより、当該本体部の両端側に端部集電膜を成膜するので、端部集電膜を簡単でメンテナンスの容易な設備で大量生産することができると共に、端部集電膜の材料歩留を大幅に向上させることができ、製造コストを大幅に下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による円筒型固体電解質燃料電池の製造方法の実施の形態の手順説明図である。
【図2】本発明による円筒型固体電解質燃料電池の他の実施の形態の概略構造図である。
【図3】本発明による円筒型固体電解質燃料電池のさらに他の実施の形態の要部の概略構造図である。
【図4】本発明による円筒型固体電解質燃料電池のさらに他の実施の形態の概略構造図である。
【図5】円筒型固体電解質燃料電池の本体部の一部を抽出した断面図である。
【図6】円筒型固体電解質燃料電池の端部集電膜の従来の製造方法の手順説明図である。
【図7】円筒型固体電解質燃料電池の概略構成図である。
【符号の説明】
1 容器
2 スラリ
3 加熱器
11 端部集電膜
23,24 集電部材
24a 集電棒
23b,24b テーパ外周面
32 ニッケルフェルト
34 集電部材
34a 集電棒
34b フランジ
43,44 集電部材
44a 集電棒
100 本体部
101 基体管
102 燃料極
103 電解質
104 空気極
105 インタコネクタ
111 端部集電膜
112 ニッケルフェルト
113,114 集電部材
114a 集電棒
Claims (16)
- 基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、
前記本体部の両端側の内周面と端面と外周面とにそれぞれ成膜された端部集電膜と、
前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材と
を備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、
前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されている
ことを特徴とする円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記端部集電膜が材料の異なる複数の層からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記集電部材の外周面が前記本体部の中央側ほど小径となるテーパ状をなしている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記本体部の端面に成膜された前記端部集電膜に前記導電フェルトを介して当接するフランジを前記集電部材が有している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記集電部材の少なくとも前記端部集電膜と前記導電フェルトを介して当接する部分がバイメタルまたは水素吸蔵合金からなる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、
前記本体部の両端側にそれぞれ成膜された端部集電膜と、
前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材と
を備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、
前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていると共に、
当該端部集電膜が材料の異なる複数の層からなる
ことを特徴とする円筒型固体電解質燃料電池。 - 基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、
前記本体部の両端側にそれぞれ成膜された端部集電膜と、
前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材と
を備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、
前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていると共に、
前記集電部材の外周面が前記本体部の中央側ほど小径となるテーパ状をなしている
ことを特徴とする円筒型固体電解質燃料電池。 - 基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、
前記本体部の両端側にそれぞれ成膜された端部集電膜と、
前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材と
を備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、
前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていると共に、
前記本体部の端面に成膜された前記端部集電膜に前記導電フェルトを介して当接するフランジを前記集電部材が有している
ことを特徴とする円筒型固体電解質燃料電池。 - 基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部と、
前記本体部の両端側にそれぞれ成膜された端部集電膜と、
前記端部集電膜に導電フェルトを介して接触するように前記本体部の両端にそれぞれ嵌合する集電部材と
を備えてなる円筒型固体電解質燃料電池であって、
前記端部集電膜がスラリ焼成法で成膜されていると共に、
前記集電部材の少なくとも前記端部集電膜と前記導電フェルトを介して当接する部分がバイメタルまたは水素吸蔵合金からなる
ことを特徴とする円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記端部集電膜が材料の異なる複数の層からなる
ことを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記集電部材の外周面が前記本体部の中央側ほど小径となるテーパ状をなしている
ことを特徴とする請求項8または9に記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記本体部の端面に成膜された前記端部集電膜に前記導電フェルトを介して当接するフランジを前記集電部材が有している
ことを特徴とする請求項9に記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記端部集電膜が材料の異なる複数の層からなる
ことを特徴とする請求項11または12に記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記集電部材の外周面が前記本体部の中央側ほど小径となるテーパ状をなしている
ことを特徴とする請求項12に記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 前記端部集電膜が材料の異なる複数の層からなる
ことを特徴とする請求項14に記載の円筒型固体電解質燃料電池。 - 基体管の外周面上に設けられた複数の発電素子をインタコネクタで接続した本体部の両端側を、端部集電膜の構成材料からなるスラリ中にそれぞれ浸漬して焼成することにより、当該本体部の両端側の内周面と端面と外周面とに端部集電膜を成膜する
ことを特徴とする円筒型固体電解質燃料電池の製造方法。
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