JP3572062B2 - カンチレバーおよび光ビーム調整装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カンチレバーおよび光ビーム調整装置に関し、より詳細には、基板上に配置された光導波路の光路を制御するための溝に挿入可能に配置されたミラーを移動するカンチレバーおよびこれらを有する光ビーム調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光路間に設けられた溝に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で構築された微小ミラーを出し入れすることにより、光路を切り替えたり、光の透過量を調整する光ビーム調整装置が知られている。
【0003】
図4に、従来の光ビーム調整装置の構成を示す。図4(a)は、溝部分を拡大して示した上面図である。コア層とクラッド層とからなる2つの光導波路11,12の交点に、光導波路を横断する溝13が設けられている。溝13には、カンチレバーに取り付けられた、ミラー14が挿入されている。
【0004】
図4(b)は、A−A’の断面図である。基板15上に光導波路を構成する下部クラッド層16と、コア層17とを順次堆積し、フォトリソグラフィで光導波路11,12を形成する。下部クラッド層16とコア層17とを上部クラッド層18で覆い、光導波路が完成する。溝13は、コア層17と下部クラッド層16の一部とを削除して設けられている。溝13の上部には、先端部にミラー14が取り付けられたカンチレバー19が設置されている。カンチレバー19は、図4の右方を固定端(図示しない)とし、ミラー14が固定されている部分を自由端とする片持ち梁となっている。
【0005】
カンチレバー19は、導電性の配線パターン20を有している。配線パターン20に印加電圧を加えることで、静電力によりカンチレバー19の自由端が上下動する。印加電圧を制御することにより、ミラー14は、溝13の深さ方向、すなわち光導波路の光軸の垂直方向に移動することができる。
【0006】
このようにして、ミラー14の位置により、光導波路11bから入射した光ビームが、ミラー14により遮断される遮断状態と、光導波路11bから入射した光ビームが、そのまま光導波路11aに進む透過状態とが実現される。遮断状態において、光導波路11bから入射した光ビームは、ミラー14で反射して、光導波路12bに進む。
【0007】
互いに平行なm本の光導波路と互いに平行なn本の光導波路とを交差させ、それぞれの交差位置に光ビーム調整装置を配置すれば、、m×nのマトリクス型光スイッチを構成することができる。また、ミラー14の位置により、光導波路11bから入射した光ビームを、一部を遮断し、残りを透過すれば、減衰量を可変することができる光ビーム調整装置となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
カンチレバー19には、機械的強度を有し、複数の配線パターンを相互に絶縁することができる窒化シリコンなどの絶縁材料が用いられている。また、配線パターン20には、高伝導材料であるアルミニウムが配線材料として用いられている。すなわち、カンチレバー19は、線膨張係数が異なる2つの材料が積層された構造になっている。
【0009】
従って、周囲温度の変動により、2つの材料の間に伸張差が生じ、バイメタル効果による反りや歪みが、カンチレバー19に生ずる。カンチレバー19の反りや変形により、溝13内のミラー14の位置が変動し、スイッチング動作や可変減衰動作に支障をきたすという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、周囲温度の変動に対して安定に動作するカンチレバーおよび光ビーム調整装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光を導波する光路の一部または全部を遮断する溝に挿入可能に配置されたミラーを上下に移動させるカンチレバーにおいて、前記ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させ、前記電気配線と線膨張係数が等しい材料からなるダミーの電気配線が、前記電気配線が配設された面と反対の面に配置され、前記電気配線の配線パターンと前記ダミーの電気配線の配線パターンとが鏡面対称に配置され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、光を導波する光路の一部または全部を遮断する溝に挿入可能に配置されたミラーを上下に移動させるカンチレバーにおいて、前記ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させ、前記電気配線が配設された面と反対の面に、前記電気配線と線膨張係数が等しい絶縁材料が積層され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、基板上に配置された光導波路と、該光導波路の光路の一部または全部を遮断する溝とを有する導波路型の光ビーム調整装置において、前記溝に挿入可能に配置されたミラーと、該ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させるカンチレバーとを備え、該カンチレバーは、前記電気配線と線膨張係数が等しい材料からなるダミーの電気配線が、前記電気配線が配設された面と反対の面に配置され、前記電気配線の配線パターンと前記ダミーの電気配線の配線パターンとが鏡面対称に配置され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の発明は、基板上に配置された光ファイバと、該光ファィバの光路の一部または全部を遮断するように設けられたスリットとを有する光ビーム調整装置において、前記スリットに挿入可能に配置されたミラーと、該ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させるカンチレバーとを備え、該カンチレバーは、前記電気配線と線膨張係数が等しい材料からなるダミーの電気配線が、前記電気配線が配設された面と反対の面に配置され、前記電気配線の配線パターンと前記ダミーの電気配線の配線パターンとが鏡面対称に配置され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とする。
【0019】
請求項に記載の発明は、基板上に配置された光導波路と、該光導波路の光路の一部または全部を遮断する溝とを有する導波路型の光ビーム調整装置において、前記溝に挿入可能に配置されたミラーと、該ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させるカンチレバーとを備え、該カンチレバーは、前記電気配線が配設された面と反対の面に、前記電気配線と線膨張係数が等しい絶縁材料が積層され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、基板上に配置された光ファイバと、該光ファィバの光路の一部または全部を遮断するように設けられたスリットとを有する光ビーム調整装置において、前記スリットに挿入可能に配置されたミラーと、該ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させるカンチレバーとを備え、該カンチレバーは、前記電気配線が配設された面と反対の面に、前記電気配線と線膨張係数が等しい絶縁材料が積層され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1に、本発明の一実施形態にかかる光ビーム調整装置の構成を示す。図1(a)は、溝部分を拡大して示した上面図である。コア層とクラッド層とからなる2つの光導波路21,22の交点に、光導波路を横断する溝23が設けられている。溝23には、カンチレバーに取り付けられた、ミラー24が挿入されている。本実施形態では、光導波路21,22として、コア/クラッドの比屈折率差Δ=0.45%、矩形コアの断面寸法7μmの石英系導波路を用いた。
【0021】
図1(b)は、A−A’の断面図である。基板25上に光導波路を構成する下部クラッド層26と、コア層27とを順次堆積し、フォトリソグラフィで光導波路21,22を形成する。下部クラッド層26とコア層27とを上部クラッド層28で覆い、光導波路が完成する。溝23は、コア層27と下部クラッド層26の一部とを削除して設けられている。溝23の上部には、先端部にミラー24が取り付けられたカンチレバー29が設置されている。カンチレバー29は、図1の右方を固定端(図示しない)とし、ミラー24が固定されている部分を自由端とする片持ち梁となっている。
【0022】
光ビーム調整装置を光スイッチとして動作させる場合には、ミラー24の位置により、光導波路21bから入射した光ビームが、ミラー24により遮断される遮断状態と、光導波路21bから入射した光ビームが、そのまま光導波路21aに進む透過状態とが実現される。遮断状態において、光導波路21bから入射した光ビームは、ミラー24で反射して、光導波路22bに進む。
【0023】
ミラー24の寸法は、溝23に進入または退避に要する時間、すなわちスイッチング速度の観点から小さい方が望ましい。一方で、クラッド領域に染み出した伝播光の広がりを完全に遮断するために、ある程度の大きさを必要とする。上述した石英系導波路においては、光ビームを遮断するミラー24の最小サイズは、40μm×40μmである。また、ミラー24の上下動の移動幅は、設定誤差を勘案して50μmである。このとき、カンチレバー29の腕の長さは、ミラー24の移動幅の10倍以上として、500μmである。
【0024】
図2に、本発明の第1の実施形態にかかるカンチレバーの構成を示す。図2(a)は、カンチレバー29の下面図であり、ミラー24が固定され、配線パターン30aが設けられている。図2(b)は、X−X’の断面図である。カンチレバー29の上面には、ダミーの配線パターン30bが設けられている。図2(c)は、Y−Y’の断面図である。配線パターン30aとダミーの配線パターン30bとは、対称線Z−Z’に対して鏡面対称となるように設けられている。従って、カンチレバー29は、上面と下面とが温度変動に対して等しく伸張するので、反りや変形を生ずることがない。
【0025】
図3に、本発明の第2の実施形態にかかるカンチレバーの構成を示す。図3(a)は、カンチレバー29の下面図であり、ミラー24が固定され、配線パターン30aが設けられている。図3(b)は、X−X’の断面図である。カンチレバー29の上面には、ダミーの配線パターン30bが設けられている。図3(c)は、Y−Y’の断面図である。配線パターン30aとダミーの配線パターン30bとは、点Pに対して点対称となるように設けられている。カンチレバー29は、温度変動に対してY−Y’方向にねじれが生じるが、ミラー24の上下動の方向に反りや変形を生ずることがない。
【0026】
本実施形態においては、カンチレバー29の上面と下面とに配線パターン30a,30bを設けて、伸張差が生じないようにした。例えば、硬度や温度係数の異なる窒化シリコンなどの絶縁材料を、複数層重ねてカンチレバーを作成し、上面と下面とにおいて伸張差が生じないようにしてもよい。同様に、異なる材料または形状を組み合わせてカンチレバーを作成し、対称線Z−Z’に対して鏡面対称としたり、点Pに対して点対称とすることもできる。
【0027】
従来例と本実施形態との比較結果について説明する。図4に示した従来の光ビーム調整装置において、カンチレバー19を窒化シリコンで、配線パターン20をアルミニウムで作成した。カンチレバー19の腕の長さは500μm、厚さは1μmである。配線パターン20の厚さも1μmである。カンチレバー19と配線パターン20との線膨張係数の違いから、常温付近で、約20×10−6/degの伸張差が生じる。カンチレバー19の先端の反りを計算すると、常温付近で、10℃の温度変化により、約25μmの反りが生ずる。
【0028】
一方、ミラー14が溝13内に挿入され、光導波路11を遮断した状態で、3dBの減衰が生ずるようにした。このとき、ミラー14の設定位置が±0.2μm変化すると、減衰量は±0.1dB変化する。従って、常温付近で、1℃の温度変化により、約2.5μmの反りが生ずるから、減衰量はおよそ±1dB変化することになる。
【0029】
図1に示した本実施形態にかかる光ビーム調整装置において、カンチレバー29を窒化シリコンで、配線パターン30a,30bをアルミニウムで作成した。カンチレバー29の腕の長さは500μm、厚さは1μmである。配線パターン30a,30bの厚さは1μmであり、図3に示したパターンを設けた。このとき常温付近では、ほとんど伸張差が生じないので、減衰量に変化を与えるような反りも生じない。
【0030】
本実施形態にかかる光ビーム調整装置においては、コア層とクラッド層とからなる石英系導波路を用いたが、例えば、光ファィバを基板上に配列した構造を用いることもできる。具体的には、エッチングまたは切削加工により、シリコン基板上に、光ファイバを載置するV字溝を形成し、光ファィバを配列する。基板には、ガラス、セラミックス、樹脂などを用いることができ、石英系導波路に比較して安価に光ビーム調整装置を作製することができる。
【0031】
また、本実施形態にかかるカンチレバーは、一端で支持される片持ち梁に限られず、中央部にミラーを固定して、両端を支持する2点支持梁、または4点を支持する十字梁などを適用することもできる。
【0032】
本実施形態によれば、導波路に設けられた溝に、ミラーを挿入する光スイッチ、光減衰器などの光ビーム調整装置において、周囲温度の変動に対して、ミラーを安定に動作させることができる。従って、温度制御に要する熱変換素子を光ビーム調整装置に搭載したり、光ビーム調整装置を設置する室内の温度制御を不要にすることができ、装置の小型化、運用の省力化を図ることができる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電気配線と線膨張係数が等しい材料を用いて、下面と上面とで伸張差を生じないようにカンチレバーを構成したので、周囲温度の変動に対して、安定してミラーを動作させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光ビーム調整装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるカンチレバーの構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかるカンチレバーの構成を示す図である。
【図4】従来の光ビーム調整装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
11,12,21,22 光導波路
13,23 溝
14,24 ミラー
15,25 基板
16,26 下部クラッド層
17,27 コア層
18,28 上部クラッド層
19,29 カンチレバー
20,30a,30b 配線パターン

Claims (6)

  1. 光を導波する光路の一部または全部を遮断する溝に挿入可能に配置されたミラーを上下に移動させるカンチレバーにおいて、
    前記ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させ、
    前記電気配線と線膨張係数が等しい材料からなるダミーの電気配線が、前記電気配線が配設された面と反対の面に配置され、前記電気配線の配線パターンと前記ダミーの電気配線の配線パターンとが鏡面対称に配置され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とするカンチレバー。
  2. 光を導波する光路の一部または全部を遮断する溝に挿入可能に配置されたミラーを上下に移動させるカンチレバーにおいて、
    前記ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させ、
    前記電気配線が配設された面と反対の面に、前記電気配線と線膨張係数が等しい絶縁材料が積層され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とするカンチレバー。
  3. 基板上に配置された光導波路と、該光導波路の光路の一部または全部を遮断する溝とを有する導波路型の光ビーム調整装置において、
    前記溝に挿入可能に配置されたミラーと、
    該ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させるカンチレバーとを備え、
    該カンチレバーは、前記電気配線と線膨張係数が等しい材料からなるダミーの電気配線が、前記電気配線が配設された面と反対の面に配置され、前記電気配線の配線パターンと前記ダミーの電気配線の配線パターンとが鏡面対称に配置され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とする光ビーム調整装置。
  4. 基板上に配置された光ファイバと、該光ファィバの光路の一部または全部を遮断するように設けられたスリットとを有する光ビーム調整装置において、
    前記スリットに挿入可能に配置されたミラーと、
    該ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させるカンチレバーとを備え、
    該カンチレバーは、前記電気配線と線膨張係数が等しい材料からなるダミーの電気配線が、前記電気配線が配設された面と反対の面に配置され、前記電気配線の配線パターンと前記ダミーの電気配線の配線パターンとが鏡面対称に配置され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とする光ビーム調整装置。
  5. 基板上に配置された光導波路と、該光導波路の光路の一部または全部を遮断する溝とを有する導波路型の光ビーム調整装置において、
    前記溝に挿入可能に配置されたミラーと、
    該ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させるカンチレバーとを備え、
    カンチレバーは、前記電気配線が配設された面と反対の面に、前記電気配線と線膨張係数が等しい絶縁材料が積層され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とするカンチレバー。
  6. 基板上に配置された光ファイバと、該光ファィバの光路の一部または全部を遮断するように設けられたスリットとを有する光ビーム調整装置において、
    前記スリットに挿入可能に配置されたミラーと、
    該ミラーを一方の面に支持し、該一方の面に配設された電気配線に電圧を印加することにより前記ミラーを上下に移動させるカンチレバーとを備え、
    該カンチレバーは、前記電気配線が配設された面と反対の面に、前記電気配線と線膨張係数が等しい絶縁材料が積層され、前記一方の面と前記反対の面とで伸張差を生じないように構成されたことを特徴とするカンチレバー。
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