JP3570101B2 - タンディッシュの無酸化保熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は連続鋳造(以下、単に連鋳とも記す)用のタンディッシュを繰り返し使用するために、当該タンディッシュを無酸化状態で保熱する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶鋼を取鍋から受け取って鋳型へ分配するタンディッシュは、それ自体が発熱体を持たないため、使用に際しては、別途に加熱手段で加熱して、鋳込み可能な温度を確保する必要がある。また、複数台のタンディッシュを交換しながら連続して鋳造を行う(以下、連・連鋳とも記す)場合には、例えば鋼種が変更されるようなときに、待機中のタンディッシュと交換し、それまで使用されていたものは次の再使用時まで待機させるといったようなタンディッシュの使用法があるが、このように待機中のタンディッシュについても、少なくとも使用に供する前に同じく鋳込み可能な温度への加熱が必要となる。
【0003】
このようにタンディッシュを加熱する場合、従来一般には、タンディッシュの予熱カバーに設けたガスバーナを加熱手段として用い、このガスバーナに、例えばコークスガスのような燃料ガスとその理論必要量の110〜120%の燃焼空気とを混合したものを送給し、これを当該ガスバーナ内で燃焼させて当該タンディッシュ内面を1200〜1300度℃に加熱するようにしている。
【0004】
ところが、この場合、高温のタンディッシュ中に多量のO2 が投入されるため、先の使用(前チャージ)による残鋼・残滓が次チャージ時の予熱の際に酸化されてFeOやFe3 O4 等の酸化鉄が生成される。この生成され残存する酸化鉄のO成分は、次チャージ時の鋼中成分のAlと反応してAl2 O3 が生成され、その結果、硬質なAl2 O3 が下工程においてホットヘゲ・フクレ等の品質欠陥を招く要因となる。
【0005】
このような、所謂FeOピックアップを抑制防止する技術の確立が求められて、現在では種々の提案がなされている。その一例として、例えば特開平4−22567号公報には、予熱用ガスバーナに供給する燃焼空気量を、供給される燃料ガス量の理論必要量の70〜100%とすることにより、タンディッシュ内の雰囲気酸素濃度を従来より低くして残鋼の酸化を抑制防止するというタンディッシュ予熱方法が開示されている。
【0006】
また、特開平2−37949号公報には、前述のようなタンディッシュ内の予熱終了に伴い、燃料ガス及び燃焼空気の送給を停止すると同時に不活性ガスであるArでバーナ内に残留しているこれらの残留成分や燃焼排ガスの残留分を払い出して(パージして)、必要に応じて燃料ガス及び燃焼空気を前記予熱カバー内で燃焼せしめ、もって当該タンディッシュ内を短時間でArでパージすることにより残鋼の酸化を抑制防止するタンディッシュ内のガス置換技術が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平4−22567号公報、特開平2−37949号公報に記載されるタンディッシュの加熱方法そのものは、何れもタンディッシュの使用に際して、それを鋳込み可能な温度まで加熱する手段として、空気と混合した燃料ガスを当該タンディッシュ内で燃焼させて、その内壁を1200〜1300℃に保熱又は加熱することを前提としている。ここで、例えば前記特開平4−22567号公報では、燃焼空気の送給量を、燃料ガス送給量の70〜100%まで抑制しているが、このような高温下では、残存するO2 成分及び生成される燃焼排ガス中の酸化性成分であるCO2 やH2 OのO成分が残鋼と結合して酸化鉄が生成されてしまい、残鋼の酸化そのものは十分に抑制できないという問題がある。
【0008】
これを極力抑制するため、前記特開平2−37949号公報に記載されるタンディッシュの加熱方法では、予熱終了後に、わざわざ不活性ガスであるArをタンディッシュ内に吹き込んで燃料ガスと残留酸素とをパージし、これにより非酸化雰囲気に置換するという方法をとっている。しかし、例え不活性ガスのパージ方法を改善して前記予熱終了後のガス置換完了までの所要時間を多少ならず短縮できたとしても、この不活性ガスパージによりタンディッシュ内壁温度が低下して熱損失が生じてしまうし、また加熱中の過剰酸素による残滓の酸化までもは防止できないという問題がある。
【0009】
これに対して、前記特開平4−22567号公報に記載されるタンディッシュの加熱方法では、予熱ガスバーナへの空気量を理論必要量以下にすることにより、不活性ガスパージを行わずに残鋼の酸化を抑制するものであるから、前者のような問題は生じないとしても、前述のような燃焼排ガスによる当該タンディッシュ内の残鋼の酸化を完全に防止するためにはバーナに供給される燃焼空気量を、燃料ガスの理論空気量の50%以下にする必要がある。ところが、このように燃焼空気の供給量を極端に低減してしまうと、燃焼時のO2 不足による不完全燃焼という問題が発生し、加熱コストがかかると共に、未燃ガスの処置に防爆やCO中毒対策等の安全上の問題が生じる。
【0010】
本発明は、これらの諸問題に鑑みて開発されたものであり、例えば複数台の蓄熱式予熱器を交互に切り替えて不活性ガスを高温に加熱し、これをタンディッシュ内に送給して当該タンディッシュ内を効率的に無酸化状態で保熱するタンディッシュの無酸化保熱装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、本発明のうち請求項1に係るタンディッシュの無酸化保熱装置は、内壁に残鋼を生じたタンディッシュを再使用するにあたり、当該タンディッシュに接続された複数の蓄熱式予熱器のうちの何れかから加熱した不活性ガスを当該タンディッシュ内に投入し、残りの蓄熱式予熱器から当該タンディッシュ内に投入された不活性ガスを吸引するタンディッシュの無酸化保熱装置であって、前記各蓄熱式予熱器とタンディッシュとの接続部にシール装置を介装し、当該シール装置は、シールを必要とする面間に伸縮性と耐熱性とを有するシール部材を介装し、且つこのシールを必要とする何れか一方又は双方の面を前記シール部材に所定の押圧力で押圧する押圧装置を設けて構成されることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のうち請求項2に係るタンディッシュの無酸化保熱装置は、内壁に残鋼を生じたタンディッシュを再使用するにあたり、当該タンディッシュに接続された複数の蓄熱式予熱器のうちの何れかから加熱した不活性ガスを当該タンディッシュ内に投入し、残りの蓄熱式予熱器から当該タンディッシュ内に投入された不活性ガスを吸引するタンディッシュの無酸化保熱装置であって、前記各蓄熱式予熱器とタンディッシュとの接続部にシール装置を介装し、当該シール装置は、シールを必要とする面間に伸縮性と耐熱性とを有するシール部材を介装し、且つこのシールを必要とする何れか一方又は双方の面の半体面に、当該シールを必要とする何れか一方又は双方の面を前記シール部材に所定の弾性力で押圧する弾性耐熱部材を配設して構成されることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のうち請求項3に係るタンディッシュの無酸化保熱装置は、前記シール装置の周囲を不活性ガスでパージすることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、先に述べたような再使用タンディッシュの鋳込み可能温度確保に関する従来の諸問題を解決する方策として、前述のようなタンディッシュ内での燃焼を伴わないで当該タンディッシュを再使用する、即ち無予熱無酸化再使用プロセスの実現に向けて種々の実験を重ねつつ検討を続けてきた。
【0016】
本発明者等の実験によると、通常、鋳造中のタンディッシュ内表面温度は溶鋼温度とほぼ等しい1540〜1570℃程度まで上昇するが、鋳造終了と同時に温度降下が始まり、そのまま待機させると、例えば70tのタンディッシュの場合には凡そ6時間経過後に1100℃を下回り、14時間経過後には850℃以下になってしまう。
【0017】
このタンディッシュ内表面温度850℃以下の温度では、例えノズル下方から酸素を吹き込んで当該ノズルを連通状態にするための酸素洗浄を行っても、取鍋からタンディッシュに移した溶鋼を当該タンディッシュ底部のノズルから鋳型に注入することは困難である。また、待機中のタンディッシュの温度が低下すると、タンディッシュに溶鋼を注入した際の溶鋼温度の降下量が大きくなるので、鋳造初期の溶鋼温度を確保するには、当該注入時の溶鋼温度を高くするために転炉出鋼温度を高くする必要が生じる。しかし、出鋼温度を高くすることは転炉炉壁寿命の低下につながる不都合もさりながら、このように溶鋼温度を高くすると、鋳造後期にタンディッシュの温度が上昇し過ぎて連続鋳造での必要以上に溶鋼温度が高くなり過ぎ、鋳造速度の低下を余儀なくされて生産性の低下を来したり、ブレークアウトの発生原因になったりする。このため、実際上850℃が待機中のタンディッシュの再使用温度下限であることも同時に実験で確認された。
【0018】
しかも、温度低下に伴ってタンディッシュ内圧力が減少し、これにより外部の空気(大気)が侵入すると、タンディッシュ内酸素濃度が増加することになる。タンディッシュの再使用にあたって残鋼の酸化を防止するには、待機中のタンディッシュ内酸素濃度を、基本的に“0”にする必要のあることが分かっている。そのため、不活性ガスでタンディッシュ内をパージすることなく、待機中のタンディッシュ温度低下を伴う酸素侵入を防止するには、タンディッシュをほぼ完全密閉にしておかなければならない。前述した待機中タンディッシュの温度降下のデータは、この密閉状態での値である。
【0019】
しかし、完全密閉といっても、温度降下に伴って収縮を続けるタンディッシュ内への外部からの空気の侵入を“0”にすることは実際問題として不可能であるから、このタンディッシュ密閉のみでの完全無酸化の達成は困難である。その対応策としては、不活性ガス(例えばN2 )の連続パージでタンディッシュ外部からの酸素侵入を防止することが考えられる。その可能性を検討すべく、同じく70tタンディッシュについて行った本発明者等の実験によると、120Nm3 /Hの割合で連続的にN2 をタンディッシュ内に供給しながら待機させた場合の温度降下は、先のパージ無しの場合よりも急激であり、凡そ3時間で1100℃、8〜9時間には850℃に低下してしまう上、タンディッシュ内のO2 濃度も1〜2%までしか低減できないことが判明した。
【0020】
こうした結果を踏まえて、本発明者等は、タンディッシュを再使用するにあたり、タンディッシュ外で予め加熱した不活性ガスで当該タンディッシュ内をパージし続けることにより、当該タンディッシュ内表面温度を前記鋳込み可能温度の下限である850℃以上に保てば、従来のタンディッシュ内燃焼ガスによる予熱を省いて、無予熱で且つ酸化を防止しつつタンディッシュを再使用に供することが可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
このタンディッシュ外部に設けられ且つ燃焼排ガスや大気をタンディッシュ内部に送給することのない加熱手段としては、種々のものが考えられるが、本発明者等は特に蓄熱式予熱器は少量の燃焼ガスを用いながら、効率よく不活性ガスを加熱することができることに着目したものである。即ち、複数の蓄熱式予熱器をタンディッシュに接続し、何れかの蓄熱式予熱器で不活性ガスを加熱しながらタンディッシュ内にそれを投入し、残りの蓄熱式予熱器でタンディッシュ内の不活性ガスを吸引(リサイクル)しながら燃焼バーナで蓄熱体を加熱するようにすれば、燃焼排ガスや大気がタンディッシュ内に流れ込むことがなく、従って残鋼の酸化を確実に抑制防止しながら、各蓄熱式予熱器のバーナ容量を小さくすることができるから、これを小型化して常時タンディッシュに取付けておくことも可能となる。
【0022】
また、この複数の蓄熱式予熱器を交互に燃焼させて不活性ガスの投入/吸引を行うタンディッシュの無酸化保熱装置において、特に不活性ガスを投入する際に、ガス流が周りの大気を巻き込んでしまう,所謂エジェクター効果が発生する虞れがあるから、当該蓄熱式予熱器から突設された接続管をタンディッシュの開口部の内部まで挿入することにより、このエジェクター効果による大気の流れ込みを抑制防止して、タンディッシュ内の残鋼の酸化をより一層抑制防止することが可能となる。
【0023】
また、例えばシールしたい面間に介装した伸縮性耐熱性シール部材を押圧装置や弾性部材で当該シールしたい面に押圧したりして構成されるシール装置を、前記蓄熱式予熱器とタンディッシュとの接続部に介装してやることで、前述のようなタンディッシュ内への大気の流れ込みを抑制防止して、タンディッシュ内の残鋼の酸化をより一層抑制防止することが可能となる。
【0024】
また、前述のようなシール装置の周囲を不活性ガスでパージすることにより、万が一、当該シール装置によるシール効果が低減したときにも、不活性ガスがタンディッシュ内に流れ込むだけで大気の流れ込みは抑制防止されるから、タンディッシュ内の残鋼の酸化をより一層抑制防止することが可能となる。
【0025】
【実施例】
次に本発明に係るタンディッシュの無酸化保熱方法及びその装置の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
まず、図1に本実施例のタンディッシュの無酸化保熱方法を実施化した無酸化保熱装置の全体構成を示す。タンディッシュ1には、その蓋1aの開口部1b,1cの夫々に、蓄熱式予熱器2A,2Bを連結する。これらの蓄熱式予熱器2A,2Bには、例えば伝熱面積を大きくするために、球状やパイプ状にしたセラミックスや金属等からなる蓄熱体を充填した蓄熱室3A,3Bと、この蓄熱室3A,3Bの蓄熱体を加熱するための燃焼室4A,4Bとを互いに隣接して一連に備え、挿入管(接続管)7A,7Bを介して各燃焼室4A,4Bを前記タンディッシュ1の開口部1b,1cに夫々連結し、各燃焼室4A,4B内にはメインバーナ5A,5B及びパイロットバーナ6A,6Bを配設する。なお、前記挿入管7A,7Bと前記タンディッシュ1の各開口部1b,1cとの間には、タンディッシュ1内部を無酸化状態にするために、後述するシール装置50A,50Bが介装されている。また、タンディッシュ底部の各ノズルは図示を省略している。
【0027】
次に互いに類似する前記各蓄熱式予熱器2A,2Bへの配管状態を説明するために、このうちの一方の蓄熱式予熱器2Aを用いて説明すると、まず当該蓄熱式予熱器2Aの燃焼室4Aには、当該燃焼室4A内の温度を検出する燃焼室内温度検出器31Aと、当該燃焼室4A内の圧力を検出する燃焼室内圧力検出器33Aとが取付けられている。また、当該蓄熱式予熱器2Aの蓄熱室3Aの出側には、当該蓄熱室3Aの出側温度を検出する蓄熱室出側温度検出器37Aが取付けられ、当該蓄熱室出側温度検出器37Aの出力に基づいて作動する温度スイッチ(TS)39Aが設けられている。
【0028】
そして、前記メインバーナ5Aは、Mガス弁8A,Mガス遮断弁52A,Mガス流量調整弁9A及びMガスオリフィス10Aを介して、図示されないMガス供給源に連結すると共に、同じくMガス弁8A,Mガスパージ用N2 遮断弁11A及びN2 減圧弁12を介して図示されないN2 供給源に連結されている。ここで、Mガスとは燃料ガスであり、例えば転炉で発生する転炉(LD)ガスとコークス炉で発生するコークス炉(C)ガスとの混合ガスや、Cガスと高炉で発生する高炉(B)ガスとの混合ガスのことである。また、これらに代えて、LPG等の燃料ガス又は液体燃料を用いることも可能である。また、都市ガス,粉体燃料等であっても構わない。なお、このMガスが供給されるオリフィス10Aには、Mガス流量検出器26Aが設けられている。また、前記Mガス弁8AとMガス遮断弁52A又はMガスパージ用N2 遮断弁11Aとの間の配管には放散弁51Aが分岐接続され、その反分岐接続端は大気開放されている。
【0029】
また、前記メインバーナ5Aは、空気弁13A,空気流量調整弁14A,空気オリフィス15Aを介して空気供給ファン16に連結されている。この空気供給ファン16から燃焼空気が供給される空気オリフィス15Aには空気流量検出器29Aが設けられている。
【0030】
また、前記パイロットバーナ6Aは、前記パイロットバーナ用Mガス遮断弁54を介して前記Mガス供給源に連結されると共に、前記パイロットバーナ用N2 遮断弁53及びN2 減圧弁12を介して前記N2 供給源に接続されている。
【0031】
一方、前記蓄熱室3Aは、N2 弁17A,N2 流量調整弁19,N2 オリフィス18及び前記N2 減圧弁12を介して前記N2 供給源に接続されると共に、前記N2 弁17A,H2 弁72,H2 流量調整弁71,H2 オリフィス70を介して図示されないH2 供給源に接続され、更に排気弁20A及び排気流量又は圧力調整弁21Aを介して排気ファン22に接続されている。そして、前記N2 オリフィス18には前記N2 供給源から供給されるN2 の流量を検出するN2 流量検出器42が設けられ、前記H2 オリフィス70には前記H2 供給源から供給されるH2 の流量を検出するH2 流量検出器73が取付けられている。また、前記蓄熱室3Aと排気弁20Aとの間には当該蓄熱室3Aからの排気流量を検出する排気流量又は圧力検出器35Aが取付けられ、更に前記排気流量又は圧力調整弁21Aと排気ファン22との間には排気温度を検出する排気温度検出器38Aが取付けられ、この排気温度検出器38Aの出力に基づいて作動する温度スイッチ40Aが設けられている。また、前記蓄熱室3Aと排気弁20Aとの間の配管にはダイリューション弁23Aが分岐接続され、その反分岐接続端は、手動又は自動の流量調節バルブ24Aを介して大気開放されている(実際の制御上では、後述するように、蓄熱室3Aからの排気が行われているときにだけダイリューション弁23Aが開操作されるために、当該蓄熱室3Aの排気が前記手動又は自動の流量調節バルブ24Aを介して大気開放されることはない)。なお、前記排気弁20Aと排気流量又は圧力調整弁21Aとの間に接続された排気ガス分析器41Aは、当該排気内のCO濃度等を分析検出するためのものである。
【0032】
そして、前記Mガス流量調整弁9AのMガス流量はMガス流量指示調節計(FIC)27Aにより、また前記空気流量調整弁14Aの空気流量は空気流量指示調節計(FIC)30Aによって夫々流量制御されるが、両FIC27A,30Aは互いに情報の授受を可能とし、従って前記MガスFIC27Aは、前記Mガス流量検出器26Aからの出力に応じたMガス流量検出値及び燃焼室内温度検出器31Aからの出力に応じた燃焼室内温度検出値及び空気FIC30Aからの制御情報に応じて後述のようにMガス流量調整弁9AのMガス流量制御を行い、一方、前記空気FIC30Aは前記空気流量検出器29Aからの出力に応じた空気流量検出値及び前記MガスFIC27Aの制御情報に応じて後述のように空気流量調整弁14Aの空気流量制御を行う。
【0033】
また、前記排気流量又は圧力制御弁21Aの排気流量又は圧力は、前記燃焼室内圧力検出器33Aからの出力に応じた燃焼室内圧力検出値及び前記排気流量又は圧力検出器35Aからの出力に応じた排気流量又は圧力検出値を読込んだ排気流量又は圧力指示調節計(F/PIC)34Aによって後述のように流量又は圧力制御される。
【0034】
なお、前記蓄熱室出側温度検出器37Aからの出力に応じて作動する温度スイッチ39Aの出力は、図示されないシステム全体の制御装置に取込まれ、後述する蓄熱式予熱器2A,2Bの切替え制御や、後述する不活性ガスであるN2 ガスの前記N2 流量調整弁9Aによる投入流量制御等に使用される。また、前記排気ファン22の近傍に設けられた排気温度検出器38Aからの出力に応じて作動する温度スイッチ40Aの出力も、図示されないシステム全体の制御装置に取込まれ、排気中に大気を取込む前記流量調節弁24A(自動制御の場合のみ)の開度調整制御等に使用される。また、前記各開閉弁,例えばMガス弁8A,空気弁13A,N2 弁17A,排気弁20A,ダイリューション弁23A,H2 弁72等には、夫々の開閉端で作動する図示されないリミットスイッチが設けられており、当該リミットスイッチの出力も、図示されないシステム全体の制御装置に取込まれ、後述するシーケンス制御に用いられる。
【0035】
一方、他方の蓄熱式予熱器2B側に関しても、前述の蓄熱式予熱器2Aと同様に構成され、即ち、メインバーナ5Bは、Mガス弁8BやMガス流量調節弁9B等を介して前記Mガス供給源に接続されると共に、Mガスパージ用N2 遮断弁11Bや前記N2 減圧弁12等を介して前記N2 供給源に接続される。また、パイロットバーナ6Bは、前記パイロットバーナ用Mガス遮断弁54等を介して前記Mガス供給源に接続されると共に、前記パイロットバーナ用N2 遮断弁53や前記N2 減圧弁12等を介して前記N2 供給源に接続される。また、燃焼室4Bは、空気弁13Bや空気流量調整弁14B等を介して前記空気供給ファン16に接続される。また、前記蓄熱室3Bは、N2 弁17Bや前記N2 流量調整弁19やN2 減圧弁12等を介して前記N2 供給源に接続されると共に、排気弁20Bや排気流量/圧力調整弁21B等を介して前記排気ファン22に接続され、この排気系にはダイリューション弁23Bや手動弁24Bが分岐接続される。その他の詳細な構成についても、前記一方の蓄熱式予熱器2A側と同様であるため、同様の構成要素には同一符号にサフィックスBを附して、その詳細な説明を省略する。
【0036】
次に、前記蓄熱式予熱器2A,2B及びそれらとタンディッシュ1の開口部1b,1cとの間に介装されたシール装置50A,50Bについて、図2を用いながら説明する。この蓄熱式予熱器2A,2Bやシール装置50A,50Bは、互いに同等の構成を有するものであるから、ここでは前記他方の蓄熱式予熱器2B及びそれとタンディッシュ1の開口部1cとの間に介装されたシール装置50Bに代表して、その構成を説明する。
【0037】
同図において、蓄熱式予熱器2B(2A)内に設けられた前記蓄熱室3B(3A)及び燃焼室4B(4A)の周囲は、共に高い耐熱性や断熱性を有するが互いに素材の異なる複数の壁部材が積層されており、同図のハッチングの違いがそれらの壁部材の違いを表示している。また、蓄熱室3B(3A)内の符号301が前記蓄熱体であり、ここでは蓄熱体301を球状に形成している。この蓄熱体301は、前記した蓄熱室3B(3A)の配管接続部303の上方に斜めに配設された耐熱性網部材302の上方に多数蓄積されており、蓄熱式予熱器2B(2A)が図示の状態にあるときは、これらの蓄熱体301の上面は、その安息角に従って同図の二点鎖線aで示すような状態になる。しかしながら、本実施例の蓄熱式予熱器2B(2A)は、排滓時にタンディッシュ1と共に同図の矢印方向に傾転されるために、前記球状の蓄熱体301は自重で転がって同図の二点鎖線bで示す安息角で安定する。このため、本実施例の蓄熱式予熱器2B(2A)の蓄熱室3B(3A)には、同図のような堰304,305が形成されている。ちなみに、この蓄熱室3B(3A)出側(図中TCA(TCB))の許容上限温度は、主として前記耐熱性網部材302の耐熱上限温度に依存する。
【0038】
一方、この蓄熱室3B(3A)に隣接する燃焼室4B(4A)には、前述のようにメインバーナ5B(5A)のバーナ口が開口され、これに前記Mガスと燃焼空気とが供給される。また、このメインバーナ5B(5A)のバーナ口には、パイロットバーナ6B(6A)のバーナ口が開口され、このパイロットバーナ6B(6A)に供給されるMガス火炎を種火として、前記メインバーナ5B(5A)を点火する。
【0039】
さて、前記燃焼室4B(4A)から下方に延設された挿入管7B(7A)の先端部は、前記タンディッシュ1の蓋1aの開口部1c(1b)の内部まで挿入され、この開口部1c(1b)の周囲で且つ蓋1aの上面と前記挿入管7B(7A)の周囲で且つ燃焼室4B(4A)の下面との間に、シール装置50B(50A)としてリング上に形成された耐熱性チューブ501が介装されている。この耐熱性チューブ501にはN2 給気口502が設けられ、このN2 給気口502からN2 を加圧供給することで当該耐熱性チューブ501が膨らんで、前記燃焼室4B(4A)の下面とタンディッシュ1の蓋1aの上面とに密着し、もって挿入管7B(7A)とタンディッシュ1の開口部1c(1b)との気密性,ひいては燃焼室4B(4A)とタンディッシュ1内部との気密性を維持する。なお、503は、前記耐熱性チューブ501内のN2 気圧を検出するための検出孔であり、この検出孔503で当該耐熱性チューブ501の内圧を監視又は制御する。また、図中の504は防熱リングであり、蓄熱式予熱器2B(2A)とタンディッシュ1との不必要な熱の授受を抑制防止する。また、前記挿入管7B(7A)の先端部を開口部1c(1b)の内部まで挿入していないと、万が一、前記耐熱性チューブ501からなるシール装置50B(50A)による挿入管7B(7A)とタンディッシュ1の開口部1c(1b)との気密性(シール性)が低下したとき、燃焼室4B(4A)から加熱されたN2 をタンディッシュ1内部に吹き込む際に、その気体流に沿って生じるエジェクター効果でO2 成分を含む大気がタンディッシュ1内部に流れ込み、もってタンディッシュ1内部を無酸化状態に維持できなくなる虞れがある。そこで、本実施例では挿入管7B(7A)の先端部を開口部1c(1b)の内部まで挿入することにより、N2 気体流のエジェクター効果による大気の流れ込みを抑制防止できるようにしている。また、上記開口部1c(1b)への挿入は、挿入管7B(71)の先端部を開口部1c(1b)内に臨ませればよいが、好ましくは挿入管7B(7A)と開口部1c(1b)との間隙量よりも多く内部まで挿入することにより確実に大気の流れ込みを抑制することができる。
【0040】
次に、前記N2 流量調整弁19の開度制御に関するN2 の投入流量とリサイクル流量との設定手法について説明する。
まず、図3は前記配管系のうち排気に係る蓄熱式予熱器周辺を抜粋したものであるが、同図において、前記燃焼室内温度検出器31A,31Bで検出される燃焼室内温度をT1 、前記蓄熱室出側温度検出器37A,37Bで検出される蓄熱室出側温度をT2 としたとき、この蓄熱式予熱器の燃焼時に蓄熱体に蓄えられる熱エネルギーとして、当該蓄熱体の単位時間当たりの受熱量QG は下記4式で表わされる。
【0041】
QG =(V1 +V2 )×CPG×(T1 −T2 ) ……… (4)
但し、
CPG:燃焼排ガスとリサイクルN2 ガスとの混合ガス(排ガス)の比熱
V1 :燃焼排ガスの流量
V2 :リサイクルN2 の流量
である。
【0042】
また、同図において蓄熱室から外部への単位時間当たりの放散熱量はQ1 であるから、実質の蓄熱体の単位時間当たりの蓄熱量Q’ G は下記5式で表れる。
Q’ G =(V1 +V2 )×CPG×(T1 −T2 )−Q1 ……… (5)
さて、不活性ガスである前記N2 投入時の投入流量を設定する際、前述のように蓄熱体に蓄えられた熱量をN2 と全量、熱交換しなければ、例えば前記蓄熱体301の下方の耐熱性網部材302等、蓄熱体の下部温度が上昇して、装置構造の耐熱上の問題が生じる。一方、N2 量を必要以上投入することは、当該投入N2 ガス温度の低下を招き、加熱目的としてのガス供給に支障をきたす,つまり加熱物が加熱されないという問題が発生する。以上より、熱交換上で投入N2 の温度TN は前記燃焼室内温度T1 以下となるから、熱交換前のN2 温度をTN0とすると、最も有効な投入N2 流量VN は下記6式を満足すればよく、従って前記3式を用いて整理すると下記7式のようになる。ここで、燃焼排ガス流量V1 は燃焼室の温度によって制御されるため、下記7式はリサイクルN2 流量V2 と投入N2 流量VN の設定値を決める際の制約条件になる。
【0043】
Q’ G =VN ×CPN×(T1 −TN0) ……… (6)
∴VN =(VG ×CPG×(T1 −T2 )−Q1 )/(CPN×(T1 −TN0))……… (7)
但し、
CPN:N2 の比熱
である。
【0044】
次に、前記ロジックにおける通常燃焼時間における排ガス流量調整弁21A,21Bの開度制御に関する排ガス流量設定手法について説明する。
まず、図4も前記配管系のうち排気に係る蓄熱式予熱器周辺を抜粋したものであるが、同図において、前記燃焼室内圧力検出器31A,31Bで検出される燃焼室内圧力をP1 ,前記排気流量/圧力検出器35A,35Bで検出される排気圧力(同図では配管内圧力)をP3 ,前記ダイリューション弁23A,23Bから希釈ガスとして用いられる空気の供給圧(即ち,大気圧)をP0 とし、更に図示されないタンディッシュ内圧力検出器等で検出されるタンディッシュ内圧力(同図では炉内又はT/D内圧力)をP2 としたとき、排ガス流量Vは、燃焼排ガス流量V1 とリサイクルN2 流量V2 と希釈ガス(ダイリューション)流量V3 との総和,つまりV=V1 +V2 +V3 となり、このうち、燃焼排ガス流量V1 は下記8式で表わされる。
【0045】
V1 =Vm(G0 +(m−1)A0 ) ……… (8)
但し、
Vm:総燃料ガス流量
G0 :理論燃焼ガス量
A0 :理論空気量
m :空気比
である。
【0046】
また、前記希釈ガス(ダイリューション)流量V3 は希釈ガス供給圧(大気圧)P0 と排気圧力(配管内圧力)P3 との差圧(P0 −P3 )で決定するから、例えば図5に示すように予め希釈ガス供給圧(=大気圧)P0 及び排気圧力(配管内圧力)P3 の差圧(P0 −P3 )と希釈ガス(ダイリューション)流量V3 との関係を調査しておき、前記検出されたそのときの希釈ガス供給圧(大気圧)P0 及び排気圧力(配管内圧力)P3 の差圧(P0 −P3 )から前記希釈ガス(ダイリューション)流量V3 を得ることができる。
【0047】
一方、前述したようにリサイクルN2 流量V2 と投入N2 流量VN との関係は前記7式によって決定されるから、この投入N2 流量VN を決めるとリサイクルN2 流量V2 は求まる。ここで、投入N2 流量VN はタンディッシュの加熱に必要な熱量から決まるから、例えば下記9式及び10式で表される熱バランス式から下記11式を導出して当該投入N2 流量VN を設定することができる。
【0048】
QTD=ATD×α×(TGOUT−TTD) ……… (9)
但し、
QTD :タンディッシュの受熱量
ATD :タンディッシュの内表面積
α :タンディッシュ内表面と投入N2 間の熱伝達係数
TGOUT:投入N2 がタンディッシュから出るときの温度
TTD :タンディッシュ内表面温度
QG =VN ×CP ×(TGIN −TGOUT) ………(10)
但し、
QG :投入N2 がタンディッシュに放出した熱量
CP :投入N2 の平均比熱
TGIN :投入N2 の温度
ここで、QTD=QG であることから、
VN =ATD×α×(TGOUT−TTD)/(CP ×(TGIN −TGOUT))………(11)
このようにして得られた各流量V1 〜V3 の総和から排ガス流量Vを設定し、この排ガス流量Vが達成されるように前記制御時間の排ガス流量又は圧力調整弁21A,21Bの開度を制御すればよい。
【0049】
なお、前記リサイクルN2 流量V2 は以下のようにして設定することもできる。即ち、前述のようにタンディッシュ内圧力P2 を検出することができれば、このタンディッシュ内からのリサイクルN2 流量を確保するための必要十分条件は、タンディッシュ内圧力P2 と燃焼室内圧力P1 との差圧(P2 −P1 )が正値であることになる。ここで、タンディッシュ内圧力P2 及び燃焼室内圧力P1 の差圧(P2 −P1 )とリサイクルN2 流量V2 とは、同等の温度及び圧力下で、一意の関係にあり、従って例えば図6に示すように予め当該タンディッシュ内圧力P2 及び燃焼室内圧力P1 の差圧(P2 −P1 )とリサイクルN2 流量V2 との関係を調査しておき、前記検出されたタンディッシュ内圧力P2 及び燃焼室内圧力P1 の差圧(P2 −P1 )を満足するように当該燃焼室内圧力P1 を制御するために前記リサイクルN2 流量V2 を設定するようにしてもよく、これに応じて前記前記排ガス流量Vを設定すると共に前記前記制御時間の排ガス流量又は圧力調整弁21A,21Bの開度を制御すればよい。
【0050】
このような各気体の流量制御を行うことで、少なくとも定常的なN2 投入/「燃焼+N2 リサイクル」モードにおけるタンディッシュ内圧力を正圧に保持することが可能となろう。しかしながら、N2 投入/「燃焼+N2 リサイクル」モードの切替え時には、当該タンディッシュ内圧力を正圧に保持することができなくなる可能性がある。即ち、例えば前記Mガス弁8Aの閉からMガス弁8Bの開までの切替え所要時間では燃焼排ガス流量V1 は理論的に“0”であり、従って著しい場合には前記リサイクルN2 流量V2 =(排ガス流量V−ダイリューション流量V3 )になってしまう虞れがあり、そのような場合に前記投入N2 流量VN や排ガス流量Vを前記N2 投入/「燃焼+N2 リサイクル」モードの定常時と同様に設定していたのでは、タンディッシュ内圧力が負圧となって、燃焼排ガスや大気をタンディッシュ内に吸引してしまう。
【0051】
そこで、このようなN2 投入/「燃焼+N2 リサイクル」モードの切替え時には、前述のようにN2 流量調整弁19の開度を開いて投入N2 流量VN を増加させたり、排気流量又は圧力調整弁21A,21Bの開度を閉じて排ガス流量Vを減少させたりすることで、タンディッシュ内圧力を正圧に保持する。より具体的に、例えば投入N2 流量VN を増加させる際の増加投入N2 流量ΔVN の設定手法について説明すると、例えばN2 投入/「燃焼+N2 リサイクル」のモード切替え時に燃焼ガス流量V1 が“0”となるため、当該切替え時におけるリサイクルN2 流量V2Cは、定常時のリサイクルN2 流量V2Sに対して下記12式で表される。
【0052】
V2C=V1 +V2S ………(12)
一方、タンディッシュ内の圧力はタンディッシュ開口部(排滓口、ノズル口等)からの放散N2 流量VW に依存する(VW が多いほどタンディッシュ内の圧力は高くできる)。従ってこの放散N2 流量VW は下記13式で表される。
【0053】
VW =VN −V2S ………(13)
従って、この放散N2 流量VW を切替え時に一定にするためには、前記12式及び13式を等号で結んで、整理すれば明らかなように、基本的には燃焼ガス流量V1 分だけ投入N2 流量VN を増加すればよい。実際には、定常運転時のリサイクルN2 流量V2Sはタンディッシュ内圧が余裕をもって正圧になるように、限界値よりも小さい値が設定される。従って、定常運転時に設定可能なリサイクルN2 流量の上限値を「V2S上限」とし、両者の関係を予め調査しておけば、増加リサイクルN2 流量ΔV2 を用いて下記14式が成立する。
【0054】
V2S上限=V2S+ΔV2 ………(14)
但し、ΔV2 >0
また、タンディッシュ内圧を正圧とするために最低限必要な放散N2 流量の下限値「VW 下限」は下記15式で表される。
【0055】
VW 下限=VN −V2S上限 ………(15)
従って、前記14式及び15式から下記16式を得、この16式と前記12式とから下記17式を得る。
【0056】
VW 下限=VN −(V2S+ΔV2 ) ………(16)
VW 下限=VN −(V2C−V1 )−ΔV2
=VN −V2C+V1 −ΔV2 ………(17)
従って、この17式から、タンディッシュの内圧を正圧にするためには、少なくとも「V1 −ΔV2 」だけ投入N2 流量VN を増加してやればよいから、この関係は下記18式を満足するように増加投入N2 流量ΔVN を設定してやればよい。
【0057】
ΔVN ≧V1 −ΔV2 =V1 −(V2S上限−V2S) ………(18)
なお、この切替え時に排ガス流量を減少した場合には、前記増加投入N2 流量ΔVN を更に小さくすることができる。このことは、排ガス流量の減少分をV1 減少分と考えれば明らかである。
【0058】
本実施例では、投入N2 流量VN の増加と排ガス流量Vの減少とが上記の条件を同時に満足するようにバランス良く同時に行われることで、前記タンディッシュ内圧力P2 が確実に正圧保持されるように設定している。勿論、当該タンディッシュ内圧力P2 を前述のように検出可能な場合には、前記投入N2 流量VN の増加量や排ガス流量Vの減少量を変更設定することが可能となる。
【0059】
前述のような制御内容を組合わせて実施することで、タンディッシュ内への燃焼排ガスや大気の吸引を抑制防止することができるから、残鋼の更なる酸化は確実に抑制防止することができる。ところで、本実施例では、更に前記タンディッシュ内を還元雰囲気にすることによって、残鋼酸化を殆ど皆無にしようとする。
【0060】
ここで、例えばタンディッシュ内を還元雰囲気にするための還元性ガスにH2 を用いたときに、当該H2 が酸化鉄Fe3 O4 やFeOのO成分と結合して鉄を還元したり、或いはH2 OのO成分が鉄を酸化して酸化鉄Fe3 O4 やFeOになったりする状態を、H2 濃度及びH2 O濃度と温度とに依存する酸化還元平衡曲線として図7に示す。
【0061】
この酸化還元平衡曲線をH2 /H2 O濃度比に置換し、温度に依存する鉄の酸化還元平衡曲線として図8に示す。また、同図には、同じく還元雰囲気を達成可能な還元性ガスとしてCOを用いた場合に、このCO/CO2 濃度比の温度に依存する鉄の酸化還元平衡曲線も合わせて示す。この場合、タンディッシュの保熱目標温度は凡そ1000℃以上であるから、このような高温の前記N2 雰囲気では、同図から、鉄を還元可能なH2 /H2 O濃度非は約1.5程度であることが分かる。従って、還元性ガスとしてH2 を用いる方がH2 の投入量が少量でもよいことから、後述するように投入される還元性ガス濃度を爆発限界(可燃限界)濃度以下に抑制する上で有利であることが伺われる。
【0062】
ここで、既知のように空気中にリークした場合におけるH2 の可燃限界は4%程度以下であることから、当該H2 の添加条件について考察する。
今、タンディッシュ内の平均O2 濃度をCO ,タンディッシュ内への前記投入N2 流量をVN ,同じくタンディッシュ内への添加H2 流量をVH としたとき、タンディッシュ内へ侵入したO2 と反応するH2 量(=生成するH2 O量)VH20 は下記19式で与えられる。
【0063】
VH20 =2×VN ×CO ………(19)
従って、タンディッシュ内に点火されたH2 のうち、Oと反応しないH2 量VHrは下記20式で与えられる。
【0064】
VHr=VH −VH20 =VH −2×VN ×CO ………(20)
従って、ここで生成されるH2 O量VH2O に対する実際の投入H2 量VHrの濃度比H2 /H2 Oは下記21式の左辺で表されることから、これが前記所定濃度比1.5以上となればよいことになり、これを解いて得られる必要な平均O2 濃度CO ,投入N2 流量VN ,添加H2 流量VH の関係が22式となる。
【0065】
(VH −2×VN ×CO )/(2×VN ×CO )≧1.5 ………(21)
∴VH ≧5×VN ×CO ………(22)
一方、前記投入N2 流量VN における添加H2 流量VH の可燃限界範囲は下記23式で表れるから、これを解いて得られる投入N2 流量VN ,添加H2 流量VH の関係が24式となる。
【0066】
VH /(VN +VH )≦0.04 ………(23)
∴VH ≦VN /24 ………(24)
この24式の関係を図9にH2 可燃下限曲線として実線で示し、更にこのH2 可燃下限曲線の上下に、前記22式で与えられる平均O2 濃度CO をパラメータとしたN2 投入量−H2 添加量の関係を二点鎖線で示す。これより、前記H2 可燃下限曲線より上方が、本実施例のN2 雰囲気H2 ガス(図ではHNガス)の可燃範囲になるため、このH2 可燃下限曲線より上方になるような平均O2 濃度≧0.7%では安全上の問題が発生する。更に、前述のようにして設定された投入N2 流量VN 下で、タンディッシュ内への燃焼排ガスや大気の吸引がなく、かつ効率よく酸化鉄の還元が促進されれば、前記H2 添加は極めて微量でよく、例えば本実施例のN2 投入量1000Nm3 /Hにおいて、添加H2 の流量VH はわずか10Nm3 /H程度でよいことが判明している。
【0067】
さて、このようにして実施された本実施例の作用について説明する。まず、前記N2 投入/「燃焼+N2 リサイクル」モードの切替え時に、前記燃焼排ガスパージ時間を最適に設定したり、前記投入N2 流量VN を一時的に増加したり、前記ダイリューション流量調整弁24A,24Bの開度を調整したりすることにより(ここでは前記還元性ガスH2 の添加は行っていない)、本実施例では図10aに示すようにタンディッシュ(T/D)内圧力を常時“0”より高い、即ち正圧に保持することができた。これに対して、N2 投入/「燃焼+N2 リサイクル」モードの切替え時に前記燃焼排ガスパージ時間を最適に設定したり、投入N2 流量VN を一時的に増加したり、ダイリューション流量を調整したりすることのない従来例では、図10bに示すようにタンディッシュ(T/D)内圧力が一時的にではあるが“0”より低い、所謂負圧になってしまい、従って前述のように燃焼排ガスや大気がタンディッシュ内に吸引されてしまうことが想定される。
【0068】
また、このようにN2 投入/「燃焼+N2 リサイクル」モードの切替え時に、前記燃焼排ガスパージ時間を最適に設定したり、前記投入N2 流量VN を一時的に増加したり、前記ダイリューション流量調整弁24A,24Bの開度を調整したりすることによる(ここでも前記還元性ガスH2 の添加は行っていない)本実施例のタンディッシュ内(T/D)内酸素濃度を図11aに示す。同図から明らかなように、当該タンディッシュ内酸素濃度は、前記初回のN2 投入/リサイクルモード切替え時に若干のピークが表れるものの、その他は安定して目標上限値以下に保たれていることが分かる。一方、このような制御態様が全く行われない従来例によるタンディッシュ(T/D)内酸素濃度は図11bに示すように、各N2 投入/リサイクルモード切替え時毎にピークが表れ、それは常に目標上限値を上回ってしまっていることが分かる。
【0069】
更に、前述のようなN2 投入/「燃焼+N2 リサイクル」モードの切替え時に、前記燃焼排ガスパージ時間を最適に設定したり、前記投入N2 流量VN を一時的に増加したり、前記ダイリューション流量調整弁24A,24Bの開度を調整したりすることにより(ここでも前記還元性ガスH2 の添加は行っていない)図12に示すようにタンディッシュ内平均O2 濃度を従来から大幅に低減することができ、従って残鋼の酸化量を大幅に低減することができた。ちなみに、前記図11aや図12に示すタンディッシュ内酸素濃度は、前述の還元性ガスH2 の添加を行わない場合のものであり、実際に還元性ガスH2 を添加した場合のタンディッシュ内酸素濃度は常時“0”(ガス分析計の測定可能限界以下)となることが分かっている。
【0070】
そして、このようにしてほぼ完全な無酸化状態で且つ残鋼の酸化量も大幅に低減された状態で保熱されたタンディッシュを実際の鋳造に供したところ、図13に示すように、1Ch(チャージ)目の鋳造における総ホットヘゲ発生率は、従来を100としたとき、還元性ガスH2 を添加しない場合で凡そ32.0程度、還元性ガスH2 を添加した場合には凡そ3.5程度まで減少させることができ、また、再使用タンディッシュによる鋳造開始直後の1本目と2本目のスラブでの総ホットヘゲ発生率は、従来を100としたとき、還元性ガスH2 を添加しない場合で凡そ27.9程度、還元性ガスH2 を添加した場合には凡そ1.1程度まで減少させることができた。
【0071】
勿論、図14に示すように、本実施例のN2 蓄熱式予熱器(図ではバーナ)を用いることにより、タンディッシュ(T/D)内温度を前記開孔限界以上に保持する鋳込み終了からの経過時間を、従来から大幅に長じることができ、連連数を大幅に延長することができた。
【0072】
次に、前記蓄熱式予熱器2A,2B及びそれらとタンディッシュ1の開口部1b,1cとの間に介装されたシール装置50A,50Bの他の実施例について、図15を用いながら説明する。この蓄熱式予熱器2A,2Bそのものの構造は前記図2の実施例のものと同様又はほぼ同様であるから、同等の構成部材については同等の符号を附して、その詳細な説明を省略する。またここでも、蓄熱式予熱器2A,2Bやシール装置50A,50Bは、互いに同等の構成を有するものであるから、ここでは前記他方の蓄熱式予熱器2B及びそれとタンディッシュ1の開口部1cとの間に介装されたシール装置50Bに代表して、その構成を説明する。
【0073】
本実施例でも、前記燃焼室4B(4A)から下方に延設された挿入管7B(7A)の先端部は、前記図2の実施例と同様に、後述するシール装置50B(50A)のシール性をサポートし且つ投入N2 による大気エジェクター効果を抑制防止するために、前記タンディッシュ1の蓋1aの開口部1c(1b)の内部まで挿入されており、この開口部1c(1b)の周囲で且つ蓋1aの上面と前記挿入管7B(7A)の周囲で且つ燃焼室4B(4A)の下面との間に、シール装置50B(50A)が介装されている。このシール装置50B(50A)は、大きく押圧装置510とシール部材層511とに分割される。まず、このシール部材層511は、比較的軟質で伸縮性のある比較的肉厚のシート状のリング状耐熱性シール部材512を複数重ね合わせ、その最下層のシール部材512を、当該リングの内側を通って最上層に折り返して構成され、これが前記タンディッシュ1の蓋1aの開口部1c(1b)の周囲で且つ当該蓋1aの上面に載置する。なお、前記耐熱性シール部材512は、断熱材や耐火物で構成される。一方、前記押圧装置510は、前記燃焼室4B(4A)の下面513から所定距離だけ離間した下方で且つ内孔内に前記挿入管7B(7A)を緊密に挿通して当該挿入管7B(7A)の周囲に配設された円板状の押圧ディスク514を備え、前記燃焼室4B(4A)の下面513から突設されたボルト部材515に押圧スプリング516を被嵌し、当該ボルト部材515の下方先端部を前記押圧ディスク514に貫通してその下方まで突出させ、更に当該ボルト部材515の押圧ディスク514から突出する下方端部にダブルナット517を螺合締付けて当該押圧ディスク514を位置決めするように構成されている。なお、前記燃焼室4B(4A)の下面513と押圧ディスク514との間の空間の周囲は周壁515で覆われ、ある程度の気密性が維持されるようにしてあると共に、この周壁515にN2 給気口519が配設されている。
【0074】
従って、前記押圧装置510の押圧ディスク514の下面を前記シール部材層511の上面に当接し、この状態で前記蓄熱式予熱器2B(2A)ごと押圧ディスク514をシール部材層511の上面に押付けると、前記押圧スプリング516が収縮し、その変位に応じた弾性力が前記押圧ディスク514をシール部材層511に押圧する押圧力として作用する。このとき、前述のように伸縮性を有するシール部材512はこの押圧力で弾性変形し、シール部材層511全体が前記押圧ディスク514の下面とタンディッシュ1の蓋1aの上面とに密着し、もって挿入管7B(7A)とタンディッシュ1の開口部1c(1b)との気密性,ひいては燃焼室4B(4A)とタンディッシュ1内部との気密性を維持する。また、このときスライドする押圧ディスク514と周壁518との間の気密性は前述のように完全ではないために、前記N2 給気口519から、前記押圧ディスク514と燃焼室4B(4A)の下面との間の空間に、不活性ガスであるN2 を供給し、当該空間をN2 でパージすることにより、前記押圧ディスク514と周壁518との間の隙間を通って、更に押圧ディスク514と挿入管7B(7A)との隙間からタンディッシュ1内に流れ込もうとする大気を遮断することができる。また、万が一、前記シール装置50B(50A)のシール性が低下した場合にも、当該シール装置50B(50A)の周囲が不活性ガスであるN2 でパージされているために、タンディッシュ1内への大気の流れ込みは抑制される。なお、所望するシール面,特に前記タンディッシュ1の蓋1aの上面に多少の異物があった場合でも、前記シール部材512が軟質で且つ伸縮性を有するために、この異物を覆い込むように変形することにより当該シール面にシール部材が密着して気密性を確保する。また、この異物が大きい場合で且つシール部材512の変形だけでは気密性(シール性)を確保し切れないような場合でも、前記押圧スプリング516の収縮により押圧ディスク514が傾斜し、適切な押圧力をシール部材512からなるシール部材層511に付与してシール性を確保可能とする。
【0075】
次に、前記蓄熱式予熱器2A,2B及びそれらとタンディッシュ1の開口部1b,1cとの間に介装されたシール装置50A,50Bの更に他の実施例について、図16を用いながら説明する。ここでも、図2の蓄熱式予熱器2A,2Bと同等の構成部材については同等の符号を附して、その詳細な説明を省略する。また、前記他方の蓄熱式予熱器2B及びそれとタンディッシュ1の開口部1cとの間に介装されたシール装置50Bに代表して、その構成を説明する。
【0076】
本実施例でも、前記燃焼室4B(4A)から下方に延設された挿入管7B(7A)の先端部が前記タンディッシュ1の蓋1aの開口部1c(1b)の内部まで挿入されている点と、その効果は前述と同様である。そして、この開口部1c(1b)の周囲で且つ蓋1aの上面と前記挿入管7B(7A)の周囲で且つ燃焼室4B(4A)の下面との間に介装されたシール装置50B(50A)は、前記図15の説明と同様に、大きく押圧部520とシール部材層521とに分割される。そして、本実施例のシール部材層521は、比較的軟質で伸縮性のある断熱材や耐火物からなる比較的肉厚のシート状のリング状耐熱性シール部材522を複数重ね合わせ、その上下面間にセットしたエキスパンドメタル等の耐熱性網部材523間にボルト部材524を挿通し、その上下突出端部にナットを螺合締付けて構成され、これが前記タンディッシュ1の蓋1aの開口部1c(1b)の周囲で且つ当該蓋1aの上面に載置する。一方、前記押圧部520は、前記図15の説明と同様に、前記燃焼室4B(4A)の下面513から所定距離だけ離間した下方で且つ内孔内に前記挿入管7B(7A)を緊密に挿通して当該挿入管7B(7A)の周囲に配設された円板状の押圧ディスク514を備え、この押圧ディスク514の上面と前記燃焼室4B(4A)の下面13との間の空間にも、伸縮性を有する肉厚のリング状耐熱シール部材525を積層し、前記燃焼室4B(4A)の下端面513から突設されたボルト部材515の下方先端部を前記押圧ディスク514に貫通してその下方まで突出させ、更に当該ボルト部材515の押圧ディスク514から突出する下方端部にダブルナット517を螺合締付けて当該押圧ディスク514及び積層された耐熱性シール部材525を位置決めするように構成されている。また、前記図15の説明と同様に、前記燃焼室4B(4A)の下端面513と押圧ディスク514との間の空間の周囲は周壁515で覆われ、ある程度の気密性が維持されるようにしてあると共に、この周壁515にN2 給気口519が配設されている。更に、前記図2の説明と同様に、前記周壁515の下方端部には防熱リング504が配設されている。
【0077】
従って、前記押圧部520の押圧ディスク514の下面を前記シール部材層521の上面に当接し、この状態で前記蓄熱式予熱器2B(2A)ごと押圧ディスク514をシール部材層521の上面に押付けると、前記伸縮性を有する耐熱性シール部材525が収縮し、その変位に応じた弾性力が前記押圧ディスク514をシール部材層521に押圧する押圧力として作用する。従って、この押圧力により前記エキスパンドメタル等からなる耐熱性網部材523から押し出された伸縮性を有するシール部材522の積層からなるシール部材層521全体が前記押圧ディスク514の下面とタンディッシュ1の蓋1aの上面とに密着し、もって挿入管7B(7A)とタンディッシュ1の開口部1c(1b)との気密性が維持され、同時に前記積層されたシール部材525が押圧ディスク514の上面と燃焼室4B(4A)の下面513とに密着して挿入管7B(7A)と当該燃焼室4B(4A)の下面513との気密性が維持されるため、全体としては燃焼室4B(4A)とタンディッシュ1内部との気密性を維持する。また、前記図15の説明と同様に、前記N2 給気口519から、前記押圧ディスク514と燃焼室4B(4A)の下面との間の空間に、不活性ガスであるN2 を供給し、当該空間をN2 でパージすることにより、前記押圧ディスク514と周壁518との間の隙間を通って、更に押圧ディスク514と挿入管7B(7A)との隙間からタンディッシュ1内に流れ込もうとする大気を遮断することができる。また、万が一、前記シール装置50B(50A)のシール性が低下した場合にも、当該シール装置50B(50A)の周囲が不活性ガスであるN2 でパージされているために、タンディッシュ1内への大気の流れ込みは抑制される。
【0078】
なお、前記実施例では不活性ガスとしてN2 ,タンディッシュ内の還元性ガスとしてH2 を用いた場合及びそれを用いることの優位性についてのみ詳述したが、不活性ガスとしてAr,還元性ガスとして前述のCOを始めとする各種の炭酸ガスや重炭化水素を用いることも勿論可能である。但し、このような炭素C系の還元性ガスを用いる場合には、前述のような可燃範囲に入ってしまう可能性があるため、別途安全対策を講じる必要があるばかりでなく、固体Cの遊離,即ちすすの発生を抑制防止する必要があり、これを判定するために熱力学的な検討等を細かく実施して炭素C系の還元性ガス添加流量を設定しなければならない点に留意したい。
【0079】
また、前記実施例では、不活性ガスであるN2 の供給配管に還元性ガスであるH2 を供給する場合についてのみ詳述したが、前述のように酸素濃度が極めて低い場合の投入H2 流量は極く微量でよいから、これを大幅に加熱することなく、前記蓄熱式予熱器やタンディッシュそのものの内部に直接供給してもよく、これによってタンディッシュの温度降下に殆ど影響のないことも発明者等は実験によって確認している。
【0080】
また、前記還元性ガスとしてH2 等を添加する場合には、N2 等の不活性ガスが投入される側の予熱器のパイロットバーナを消火することにより、更に高いレベルの還元状態を得易くなる。即ち、実施例におけるタンディッシュ加熱の場合には、パイロットバーナの燃焼排ガス流量は、投入するN2 +H2 (不活性ガス+還元性ガス)の1%以下であり、CO2 やH2 O等の酸化性ガス成分が0.2%程度になるため、パイロットバーナを消火しなくとも実用上の問題はないが、前記投入するN2 +H2 (不活性ガス+還元性ガス)の流量が少ない場合には、それら投入側の予熱器のパイロットバーナを消火することにより、高いレベルの無酸化又は還元状態を得ることができる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のタンディッシュの無酸化保熱装置によれば、複数の蓄熱式予熱器を交互に燃焼させて不活性ガスの投入/吸引を行うタンディッシュの無酸化保熱装置において、シールしたい面間に介装した伸縮性耐熱性シール部材を押圧装置や弾性部材で当該シールしたい面に押圧したりして構成されるシール装置を、前記蓄熱式予熱器とタンディッシュとの接続部に介装してやることで、前述のようなタンディッシュ内への大気の流れ込みを抑制防止して、タンディッシュ内の残鋼の酸化をより一層抑制防止することが可能となる。
【0083】
また、前述のようなシール装置の周囲を不活性ガスでパージすることにより、万が一、当該シール装置によるシール効果が低減したときにも、不活性ガスがタンディッシュ内に流れ込むだけで大気の流れ込みは抑制防止されるから、タンディッシュ内の残鋼の酸化をより一層抑制防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタンディッシュの無酸化保熱方法を実施化したタンディッシュ無酸化保熱装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の蓄熱式予熱器及びシール装置の一例を示す断面図である。
【図3】投入N2 流量を設定するための説明図である。
【図4】排ガス流量を設定するための説明図である。
【図5】排ガス流量の設定のために用いられる希釈ガス流量の説明図である。
【図6】排ガス流量の設定のために用いられるリサイクルN2 流量の説明図である。
【図7】H2 −H2 O雰囲気における鉄の酸化還元平衡の説明図である。
【図8】鉄の酸化還元平衡の説明図である。
【図9】H2 の添加条件の説明図である。
【図10】タンディッシュ内圧力の説明図である。
【図11】タンディッシュ内酸素濃度の説明図である。
【図12】タンディッシュ内残鋼酸化量の説明図である。
【図13】ホットヘゲ発生率の説明図である。
【図14】タンディッシュ内温度の説明図である。
【図15】図1の蓄熱式予熱器及びそのシール装置の他の例を示す断面図である。
【図16】図1の蓄熱式予熱器及びそのシール装置の更に他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1はタンディッシュ
2A,2Bは蓄熱式予熱器(加熱手段)
3A,3Bは蓄熱室
4A,4Bは燃焼室
5A,5Bはメインバーナ
6A,6Bはパイロットバーナ
7A,7Bは挿入管
8A,8BはMガス弁(燃料ガス弁)
9A,9BはMガス流量調整弁(燃料ガス流量調整弁)
13A,13Bは空気弁
14A,14Bは空気流量調整弁
16は空気供給ファン
17A,17BはN2 弁(不活性ガス弁)
19はN2 流量調整弁(不活性ガス流量調整弁)
20A,20Bは排気弁
21A,21Bは排気流量調整弁
22は排気ファン
23A,23Bはダイリューション弁
50A,50Bはシール装置
71はH2 流量調整弁(還元性ガス流量調整弁)
72はH2 弁(還元性ガス弁)
301は蓄熱体
302は耐熱性網部材
501は耐熱性チューブ
502はN2 給気口(不活性ガス給気口)
510は押圧装置
511はシール部材層
512はシール部材
513は燃焼室下面
514は押圧ディスク
518は周壁
519はN2 給気口(不活性ガス給気口)
520は押圧部
521はシール部材層
522はシール部材
523は耐熱性網部材
525はシール部材
Claims (3)
- 内壁に残鋼を生じたタンディッシュを再使用するにあたり、当該タンディッシュに接続された複数の蓄熱式予熱器のうちの何れかから加熱した不活性ガスを当該タンディッシュ内に投入し、残りの蓄熱式予熱器から当該タンディッシュ内に投入された不活性ガスを吸引するタンディッシュの無酸化保熱装置であって、前記各蓄熱式予熱器とタンディッシュとの接続部にシール装置を介装し、当該シール装置は、シールを必要とする面間に伸縮性と耐熱性とを有するシール部材を介装し、且つこのシールを必要とする何れか一方又は双方の面を前記シール部材に所定の押圧力で押圧する押圧装置を設けて構成されることを特徴とするタンディッシュの無酸化保熱装置。
- 内壁に残鋼を生じたタンディッシュを再使用するにあたり、当該タンディッシュに接続された複数の蓄熱式予熱器のうちの何れかから加熱した不活性ガスを当該タンディッシュ内に投入し、残りの蓄熱式予熱器から当該タンディッシュ内に投入された不活性ガスを吸引するタンディッシュの無酸化保熱装置であって、前記各蓄熱式予熱器とタンディッシュとの接続部にシール装置を介装し、当該シール装置は、シールを必要とする面間に伸縮性と耐熱性とを有するシール部材を介装し、且つこのシールを必要とする何れか一方又は双方の面の半体面に、当該シールを必要とする何れか一方又は双方の面を前記シール部材に所定の弾性力で押圧する弾性耐熱部材を配設して構成されることを特徴とするタンディッシュの無酸化保熱装置。
- 前記シール装置の周囲を不活性ガスでパージすることを特徴とする請求項1又は2に記載のタンディッシュの無酸化保熱装置。
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