JP3568744B2 - 酸化物超電導ケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力輸送用、超電導マグネット、電流リード、発電機、医療機器などとしての応用開発が進められている酸化物超電導体および酸化物超電導ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、酸化物超電導ケーブルの一例として、図4に示すように、超電導導体1を銅などからなるパイプ2の周囲に螺旋状に巻回してなる超電導ケーブル3が知られてる。
この超電導導体1は、酸化物超電導コア4が銀などからなるシース5により覆われて形成され、該超電導導体1をパイプ2に対して複数層巻回することにより形成されている。
このような超電導ケーブル3にあっては、図4に示すように、パイプ2の表面に巻回される超電導導体1の一層目6が、いわゆるSより(右より)の方向に巻回され、かつ、該一層目6に巻回される超電導導体1の二層目7が、いわゆるZより(左より)の方向に巻回されるような、各層毎に逆方向に巻回するS−Z方向のスパイラル巻きや、また、Sよりの方向に重ねて巻回するようなS−S方向のスパイラル巻き等が利用されて、複数の積層状態の超電導導体積層8が形成されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のように超電導導体が各層毎に巻かれるような層状構造を持つ酸化物超電導ケーブルの場合、該酸化物超電導ケーブルの自己磁場の影響から、ケーブル最外層の超電導導体に多くの電流が流れ、内側層に向かって実際の電流は小さくなる層間電流勾配が発生することがさけられず、臨界電流密度が低下する傾向があるという問題があった。
そのため、多くの場合、各層の超電導導体に別々に電流を流し込み、各層間の電流のバランスがとれるように層間に抵抗もしくはコンデンサー、コイル等を介在することにより上記問題の解決を図っていたが、これらの方法では、実質的に抵抗が0であるという超電導の特性を充分に生かし切れないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
▲1▼各超電導導体に流れる電流の値と自己磁場から受ける影響との均等化を図り、超電導導体の層間電流勾配の解消を図ること。
▲2▼臨界電流密度の増大と交流通電時に発生する渦電流損失の低減とを図り、酸化物超電導ケーブルの大容量化を図ること。
▲3▼簡単な構造の酸化物超電導ケーブルを提供すること。
▲4▼製造コストを削減すること。
【0005】
【課題を解決するための手段】
酸化物超電導コアをシースで覆って形成された超電導導体を素線絶縁し、それらがパイプ状のフォーマの周囲に、複数配された酸化物超電導ケーブルであって、前記超電導導体からなる超電導撚線がフォーマに巻回されたことにより超電導撚線層が形成され、各超電導導体が、自己磁場の影響を均等にするために前記超電導撚線層の表層側と内層側とに交互に位置するよう撚り合わされる。
超電導撚線が、略断面矩形の超電導導体を複数撚り合わされて略断面矩形のブロック状に形成され、該超電導撚線の幅方向が、フォーマの径方向に向けられて巻回される。ここで、撚り合わされる超電導導体が奇数本とされることが好ましく、より好ましくは9本とされる。
超電導導体のコアがBiSrCaCu(Bi2212相),BiSrCaCu(Bi2223相),Bi1.6Pb0.4SrCaCu,TlBaCaCu,などで示される組成を持つものとされ、特に、Bi系2223相またはBi系2212相のBi系酸化物超電導材料が選択されることが好ましい。
シースがAg,Pt,Au等の貴金属とされることが好ましい。
超電導導体の撚りピッチが、該超電導導体の線径の400倍〜1000倍が好ましく、より好ましくは、400倍に設定される。
超電導撚線がフォーマへ巻回される2次ピッチが、該超電導導体の線径の500倍〜5000倍が好ましく、より好ましくは、1000倍に設定される。
フォーマの内部は、液体窒素等の冷却媒体の流路とされ、超電導導体の冷却が行われる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る酸化物超電導ケーブルの一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1ないし図3において、符号10は酸化物超電導ケーブル、20は超電導導体、30は超電導撚線、40はフォーマである。
【0007】
酸化物超電導ケーブル10は、図1に示すように、パイプ状のフォーマ40の周囲に、表面を素線絶縁した超電導導体20が複数配されて例えば円筒状の超電導撚線層11が形成される。
超電導撚線層11は、超電導導体20が撚り合わされた略断面矩形の超電導撚線30により略断面矩形のブロック状に形成され、該超電導撚線30がその幅方向をフォーマ40の径方向に向けてフォーマ40に巻回されることにより形成される。
酸化物超電導ケーブル10の外側には、図示しない半導体層、絶縁層およびまたは密閉層が形成される。
【0008】
超電導導体20は、幅0.5〜2mm程度、厚さ0.05〜0.7mm程度の範囲のものとされ、例えば、幅1mm、厚さ0.7mmとされて、図1ないし図3に示すように、酸化物超電導コア21をシース22で覆って形成され、例えば厚さ1μm〜20μm程度のエナメル層からなる絶縁層23で覆われている。
酸化物超電導コア21は、BiSrCaCu(Bi系2212相),BiSrCaCu(Bi系2223相),Bi1.6Pb0.4SrCaCu,TlBaCaCu,などで示される組成を持つものとされ、例えば、Bi系酸化物超電導物質のうち、Bi系2223相またはBi系2212相により形成される。
シース22は、Ag,Pt,Au等の貴金属あるいはそれらの合金とされ、例えば、銀シースとされる。
【0009】
超電導撚線30は、図1ないし図3に示すように、超電導撚線層11の厚さになるように、例えば9本の超電導導体20を撚り合わせて略断面矩形に形成される。このとき、超電導導体20の撚りピッチが、該超電導導体20の線径(幅)の400倍〜1000倍、好ましくは、400倍程度に設定され、例えば0.4mとされる。
超電導撚線30は、図1に示すように、その略矩形とされた横断面における長辺方向(幅方向)をフォーマ40の径方向に向け、前記横断面における短辺方向(厚み方向)をフォーマ40の周方向に向けてフォーマ40に巻回される。このとき、例えば70本の超電導撚線30がフォーマ40の周囲にスパイラル巻き状に巻回され、この際、超電導撚線30がフォーマ40の周囲に巻回する際の2次ピッチが、超電導導体20の線径(幅)の500倍〜5000倍、好ましくは、1000倍程度に設定されて例えば1mとされる。
【0010】
フォーマ40は、図1に示すようにパイプ状とされ、例えば内径32mm、外径35mの寸法とされる。フォーマ40の内部は、例えば液体窒素等の冷却媒体の流路とされて、超電導導体20の冷却が行われれる。
【0011】
上記のような構成であると、各超電導導体20が撚り合わされて超電導撚線30とされ、かつ、該超電導撚線30がフォーマ40に巻回されていることにより、超電導導体20は、撚りピッチ毎に超電導撚線層11の半径方向の位置が、最内側位置から最外側位置まで繰り返して経由しながら酸化物超電導ケーブル10の軸線方向に延在することになる。
したがって、酸化物超電導ケーブル10に電流を流した場合には、該酸化物超電導ケーブル10の半径方向に強さが異なる自己磁場が発生するが、1本の超電導導体20がこの自己磁場から受ける影響は、各撚りピッチ毎に酸化物超電導ケーブル10の半径方向の位置変化に対応して変化して、超電導撚線30ごとに相殺される。
そのため、それぞれの超電導導体20においては、酸化物超電導ケーブル10の軸線方向に前記自己磁場から受ける影響が均等化する。その結果、各々の超電導導体20には、等しい値の電流を流すことが可能となり、超電導撚線層11の半径方向の電流勾配が解消される。
【0012】
また、各超電導撚線30の周囲に発生する磁場が、図3においてBBで示すように、隣接する超電導撚線30ごとに打ち消し合うために、その結果、交流通電磁に発生する渦電流損失を低減することができる。
【0013】
〔実施例〕
Bi系2223相からなるBi系酸化物超電導物質を酸化物超電導コアとして、該酸化物超電導コア19心とし、Agをシース線材とし、厚さ10μmのエナメルを絶縁層とした、幅1mm、厚さ0.7mmの超電導導体9本により、撚りピッチを0.4mとして超電導撚線を形成し、該超電導撚線70本を、外径35mm、内径32mmのステンレス鋼製のフォーマに1mの2次ピッチとして巻回し、酸化物超電導ケーブルを作成した。
この酸化物超電導ケーブルに以下の条件で測定実験を行った。
外部磁場:0T
温度:77K
1本の超電導導体の臨界電流値:5A
1本の超電導撚線の臨界電流値:45A
酸化物超電導ケーブルの臨界電流値:3150A
1本の超電導導体の電流値:4.5A
1本の超電導撚線の電流値:40.5A
酸化物超電導ケーブルの電流値:2835A
この結果、各超電導導体には、臨界電流値の90%程度の電流が流れることが測定された。
【0014】
また、上述の酸化物超電導ケーブルにおいて、超電導導体の撚りピッチを変化させたものを作成し、測定実験を行った。その結果を表1に示す。
【0015】
【表1】
Figure 0003568744
【0016】
この結果、超電導導体の撚りピッチLが、超電導導体の線径(幅)の400倍〜4000倍、好ましくは、400倍程度に設定されることにより、流れる電流値の向上が図られることが測定された。
【0017】
【発明の効果】
本発明の酸化物超電導ケーブルによれば、以下の効果を奏する。
(1)超電導導体により超電導撚線を形成して、超電導撚線の幅方向を酸化物超電導ケーブルの径方向に向けたことにより、超電導導体が超電導撚線層の最内側と最外側とに交互に位置するようにしたので、各超電導導体を流れる電流の値と自己磁場から受ける影響との均等化を図ることができる。
(2)各超電導導体において流れる電流と自己磁場から受ける影響とが等しいため、超電導撚線層における電流勾配を解消して、内側に位置する超電導導体にも電流を流すとともに、臨界電流密度の増大と交流通電時に発生ずる渦電流損失の低減とを図り、酸化物超電導ケーブルの大容量化を図ることができる。
(3)、超電導導体の層毎に生じる電流勾配をコンデンサ、抵抗等により均一化する必要がないため、各超電導導体を流れる電流の値と自己磁場から受ける影響との均等化を図ること、および、超電導撚線層における電流勾配を解消して酸化物超電導ケーブルの大容量化を図ることを維持したまま、簡単な構造の酸化物超電導ケーブルを提供することができる。
(4)上記により製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る酸化物超電導ケーブルの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の酸化物超電導ケーブルにおける超電導撚線を示す拡大斜視図である。
【図3】図1の超電導撚線層における渦電流損失低減を示す模式断面図である。
【図4】従来の酸化物超電導ケーブルを示す斜視図である。
【符号の説明】
10…酸化物超電導ケーブル,11…超電導撚線層,20…超電導導体,21…酸化物超電導コア,22…シース,23…絶縁層,30…超電導撚線,40…フォーマ

Claims (2)

  1. 酸化物超電導コアをシースで覆って形成された超電導導体を素線絶縁し、それらがパイプ状のフォーマの周囲に、複数配された酸化物超電導ケーブルであって、前記超電導導体からなる略断面矩形の超電導撚線をフォーマに巻回して超電導撚線層が形成され、各超電導導体が、自己磁場の影響を均等にするために前記超電導撚線層の最外層側と最内層側とに交互に位置するよう撚り合わされ
    超電導導体の撚りピッチが、該超電導導体の線径の400倍〜1000倍に設定されたことを特徴とする酸化物超電導ケーブル。
  2. 超電導撚線の幅方向が、フォーマの径方向に向けられてなることを特徴とする請求項1記載の酸化物超電導ケーブル。
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