JP3568653B2 - 半導体封止用エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

半導体封止用エポキシ樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種金属材料(42合金、銅、シリコン、銀、金)や有機基材、特にポリイミドやポリメチルメタアクリレート(以下、PMMAという)に良好に密着するために耐半田クラック性等の耐湿信頼性に優れ、しかもボイドが少なく成形性が良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC本体を機械的、化学的作用から保護するために、エポキシ樹脂組成物は開発、生産されてきた。これに要求される項目としては、封止されるICパッケージの構造によって変化する。軽薄短小化、かつ多ピン化の傾向のため、パッケージ構造は複雑多岐に変化している。パッケージの内部構造に存在する各種基材を列挙してみると、リードフレームの基材としての42合金、銅、アセンブリに必要な基材としての金、銀、チップの基材としてのアルミニウム、シリコン、窒化珪素、シリコン、その他の有機構成材料としてのポリイミド、PMMA等と多岐にわたっている。これらの材料と封止用樹脂組成物は良好な密着力を発揮する必要がある。しかし、従来の密着性付与の手法ではこれら有機基材に対する密着性改善は十分ではなかった。
密着性改善によく用いられる手法としては、カップリング剤を封止樹脂組成物に配合することである。例えば、特公昭59−43062号公報によると、エポキシシランカップリング剤とメルカプトシランカップリング剤を併用すると、各種基材への密着力が改善され耐湿信頼性も改善できると記載されている。
【0003】
しかし、これらのカップリング剤は、一部の金属に対しては密着力が改善されるが、他の金属や有機基材への密着力改善には効果がなかった。これら有機基材に対する密着性改善の試みが種々なされてきたが、未だ有効な手段は見つかっていなかった。しかし、これらの手法で改善されるのは上記基材の極一部に対してのみであり、これらを全て改善できる手法は見つかっていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、各種金属材料、有機基材に良好に密着し、耐半田性が向上し、更にボイド性、硬化性を改善し、かつ良好な成形性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)融点50〜150℃の結晶性エポキシ樹脂、(B)式(1)に示す可撓性硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)全組成物中に75〜92重量%含有された無機充填材、(E)式(2)に示す不飽和二重結合含有のシランカップリング剤、及び(F)式(3)及び/又は式(4)の離型剤を必須成分とし、前記(E)式(2)に示す不飽和二重結合含有のシランカップリング剤が全カップリング剤中の20重量%以上含まれる半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。
【0006】
【化5】
Figure 0003568653
【0007】
【化6】
Figure 0003568653
【0008】
【化7】
Figure 0003568653
【0009】
【化8】
Figure 0003568653
【0010】
【発明の実施の態様】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、融点50〜150℃の結晶性エポキシ樹脂である。結晶性エポキシ樹脂は、分子構造的には低分子で平面的な構造の骨格を有するエポキシ化合物であり、常温では結晶化している結晶固体であるが、昇温することにより、融点以上の温度域では急速に融解して低粘度(0.1〜10ポイズ近辺)の液状に変化するものである。示差走査熱量計で融解挙動を測定すると、結晶性エポキシ樹脂は鋭い融解ピークを発現する。
結晶性エポキシ樹脂の融点は50〜150℃であり、50℃未満だと、常温にて溶融しており、作業性の問題や樹脂組成物とした時の常温保管特性の低下が懸念される。150℃を越えると、混練時に充分融解せず、均一分散できないので硬化性が低下して成形性が低下し、更に不均一な成形品となり、強度が各部によって異なるために半導体パッケージの性能が低下する。
これらの条件を満たすエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。耐湿信頼性向上のために、これらのエポキシ樹脂中に含有される塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは極力少ないことが望ましい。また、エポキシ当量は100〜350が好ましい。100未満であると反応点が増えることにより樹脂組成物の吸水率が高くなり、耐半田クラック特性が低下する。350を越えると反応性が低下して成形性が悪くなる。
【0011】
本発明で用いられる硬化剤は、式(1)で示される可撓性硬化剤である。この可撓性硬化剤は、従来のフェノールノボラック樹脂硬化剤と比べて成形品の吸水率を顕著に低下せしめ、成形品の耐半田クラック特性が向上することが判明している。分子量等について特に限定するものではない。また、この硬化剤はシリコーン変性されていても問題ない。更に、耐湿信頼性向上のため、不純物として含有される塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは極力少ないことが望ましい。
無機充填材の配合量としては、全樹脂組成物に対し、75〜92重量%が望ましい。75重量%未満であると、樹脂の吸水率が高くなって耐半田クラック性が低下する。92重量%を越えると球状フィラーを利用しても樹脂組成物の溶融粘度が高くなり過ぎ成形できない。
【0012】
本発明で用いられる無機充填材としては、溶融シリカ粉末、球状シリカ粉末、結晶シリカ粉末、2次凝集シリカ粉末、アルミナ等が挙げられ、特に封止樹脂組成物の流動性の向上という観点から球状シリカ粉末が望ましい。球状シリカ粉末の形状は、流動性改善のために粒子自体の形状は限りなく真球状であることが望ましく、更に粒度分布がブロードであるることが望ましい。また、耐湿性の向上のためにアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン等のイオン性不純物を出来るだけ含まないことが望まれる。
また、無機充填材は、不飽和二重結合含有のシランカップリング剤やその他のシラン系、チタン系、その他の表面処理剤によって予め表面処理されていてもなんら問題はない。
本発明で用いられる硬化促進剤は、エポキシ基とフェノール性水酸基の化学反応を促進させるものであれば特に限定しない。一般によく使用されるものとしては、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、テトラフェニルホスホニウム・テトラボレート塩、2−メチルイミダゾール等が挙げられる。樹脂組成物の耐湿性向上のために、イオン性不純物が極力低いことが望ましい。又、潜在性触媒的な作用をする硬化促進剤であれば、更に好ましい。
【0013】
本発明で用いる式(2)の不飽和二重結合含有のシランカップリング剤は、本発明の技術的重要ポイントであるので以下に詳細に説明する。
分子中にC=C結合が存在しているために、このカップリング剤はパッケージ内部の有機構成材料に化学的な親和性を有する。特にC=C結合が表面に多く残っているものには化学的に反応し、化学結合により強固な界面密着性を発現することができる。特に、このシランカップリング剤を用いると金属一般との密着性が向上することが判明した。C=C結合はむろん金属と反応性がなく、この基を有するシランカップリング剤が、金属との密着性改善に効果あるとは考えられていなかった。しかし、実験により金属一般への密着性の改善に大きな効果を示すことが判明した。しかも驚くべきことに、従来密着が極めて困難であった金、銀等の非常に反応性の低い安定な金属に対しても良好な密着性を示すことが判明した。このシランカップリング剤を配合することによって金属との密着性が改善されるのか定かではないが、親水、疎水のバランスが取れていることに起因するものと推測される。
C=C結合を有するシランカップリング剤は、樹脂組成物中に分散させることによって金属や有機構成材料への密着性改善ができるが、更にシリカ等の無機充填材の表面を予め処理することによっても密着性改善に効果がある。
本発明のカップリング剤は、他の要求性能とのバランスを取るために他の種類のカップリング剤と併用することができる。本発明のシランカップリング剤は、全カップリング剤中の20重量%以上であることが好ましい。20重量%未満であると良好な密着性が発現されない。
【0014】
本発明で用いる離型剤は、式(3)及び式(4)で示される。
本発明では、各基材に対する密着性を改善のために、式(2)のシランカップリング剤を用いるので離型性が顕著に低下する。式(3)及び式(4)は、離型性改善に効果があり、かつ密着性の低下も引き起こさない特徴がある。この離型剤は、アルキル基の疎水基部分と、−COO−結合もしくは−NHCO−結合の親水基部分との親水/疎水のバランスがよく取れており、樹脂組成物から適度にブリードアウトするため、離型性の改善に最適であり、式(2)のような密着性の良好なカップリング剤と併用すると非常に優れた効果を示すことが判明した。
【0015】
本発明の組成物は前述の原料以外に、必要に応じてカーボンブラック等の着色剤、ブロム化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコーンオイル、ゴム等の低応力成分を添加することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、可撓性硬化剤、無機充填材、硬化促進剤、シランカップリング剤、離型剤、その他添加剤をミキサーにて常温混合し、ロール、押し出し機等の一般混練機にて混練し、冷却後粉砕し成形材料とすることができる。
【0016】
以下本発明を実施例にて具体的に説明する。
Figure 0003568653
をミキサーにて常温混合し、100℃で二軸ロールにて混練し、冷却後粉砕し成形材料とした。得られた成形材料の各種基材への密着性、耐半田クラック特性、流動性、型汚れ性を評価した。
【0017】
評価方法
基材への密着性:図1に示す成型品を成形する。金型温度175℃、成形時間2分で成形し、その後ポストキュアとして175℃で8時間処理した後、引張り試験器にて図2の様にして評価する。評価した基材は、42合金、銅、42合金の表面にポリメチルメタアクリレートを主成分とするソルダーレジストを塗布したもの。単位は、kgf/mm
耐半田クラック性:80pQFP(厚み2mm、チップサイズ9mm×9mm)を成形する。成形温度175℃,硬化時間2分、ポストキュアは175℃、8時間。パッケージ8個を85℃、85%相対湿度、72時間処理した後、IRリフロー処理(240℃)を行う。処理後の内部の剥離、クラックの状況を超音波探傷機で観察し、不良パッケージの個数をカウントした。
スパイラルフロー:EMMI−I−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
型汚れ:80pQFPを成形したときに、成形品の表面状態を目視で観察した。成型品に型汚れがなければ○、有れば×とした。
【0018】
実施例2〜12
表1、表2の処方に従って配合し、実施例1と同様にして成形材料を得、同様に評価した。
なお、実施例9で用いる処理シリカAは、球状シリカ(平均粒径15μm)80.0重量部と、シランカップリング剤(S−1)0.5重量部をハイスピードミキサーで混合後、125℃、10時間処理したもの。実施例10で用いる処理シリカBは、球状シリカ(平均粒径15μm)80.0重量部と、シランカップリング剤(S−2)0.5重量部を上記と同一の条件で処理する。
比較例1〜7
表3の処方に従って配合し、実施例1と同様にして成形材料を得、同様に評価した。
実施例、比較例で用いた材料は、以下の通りである。
【0019】
【化9】
Figure 0003568653
【0020】
【化10】
Figure 0003568653
【0021】
【化11】
Figure 0003568653
【0022】
【化12】
Figure 0003568653
【0023】
【化13】
Figure 0003568653
【0024】
【化14】
Figure 0003568653
【0025】
【表1】
Figure 0003568653
【0026】
【表2】
Figure 0003568653
【0027】
【表3】
Figure 0003568653
【0028】
【発明の効果】
本発明に従うと、各種金属及び有機基材に良好に密着し、各種基材を有する複雑な形状のパッケージに対しても良好な密着性を示すため、耐湿信頼性や機械的強度に優れる良好な半導体パッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材と封止材料を一体成形した成形品の概略図。
【図2】成形品の引張り試験を示す概略図。

Claims (1)

  1. (A)融点50〜150℃の結晶性エポキシ樹脂、(B)式(1)に示す可撓性硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)全組成物中に75〜92重量%含有された無機充填材、(E)式(2)に示す不飽和二重結合含有のシランカップリング剤、及び(F)式(3)及び/又は式(4)の離型剤を必須成分とし、前記(E)式(2)に示す不飽和二重結合含有のシランカップリング剤が全カップリング剤中の20重量%以上含まれることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 0003568653
    Figure 0003568653
    Figure 0003568653
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