JP3568198B2 - 異常プリオンタンパク質の検出方法 - Google Patents

異常プリオンタンパク質の検出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質の検出方法及びその検出手段に関する。特に本発明は、異常プリオンタンパク質の検出方法及びその検出手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
牛海綿状脳症(狂牛病)やクロイツフェルト・ヤコブ症(CJD)などの致死性の神経疾患(プリオン病)は、異常プリオンタンパク質(以下、異常プリオンという。)に起因すると考えられている。プリオンとは、病気を伝播させるタンパク様感染性粒子であり、正常プリオンタンパク質(PrP;以下、正常プリオンという。)と異常プリオン(PrPSC)が存在する。正常プリオンは通常、健康な個体の細胞質内に存在するが、これが何らかの原因で異常プリオンとなり、この異常プリオンが脳に沈着することによりプリオン病が生じると考えられている。プリオン病には、ヒトのクールー、CJD、ゲルストマン=ストロイスラー=シャインカー症候群(GSS)、ならびにヒツジのスクレイピー、それがミンク、ウシ及びネコに伝播した伝播性ミンク脳症、牛海綿状脳症、猫海綿状脳症などが含まれる。感染性異常プリオンは、臓器移植等の外科手術、輸血や血液製剤の投与、又は汚染食物の経口摂取などにより感染する。プリオン病に感染した宿主では、脳組織を中心に異常プリオンがアミロイドとして沈着し、最終的に死に至る。プリオン病の有効な予防法及び治療法は現状では存在せず、唯一の対策としては、医薬品や食品等への感染性プリオンの混入を防止することである。
【0003】
異常プリオンの検出には、現在、ウエスタンブロッティング法やELISA法、イムノPCR法、キャピラリー電気泳動法等が用いられているが、検出感度はng〜pgオーダーであるため十分とは言えず、迅速性や再現性にも問題がある。このような抗原抗体反応を利用する方法においては、従来の抗体では極微量のプリオンを定量的に検出することはできない。
従って、感染動物の早期診断や医薬品・食品等の安全性確保の観点から、サンプル中の異常プリオンを高感度かつ定量的に検出する方法が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、サンプル中のタンパク質、特に異常プリオンタンパク質を高感度かつ定量的に検出する方法及び検出手段を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、従来のプリオン検出方法に用いられていた抗体の欠点を明らかにし、その欠点を改善するため鋭意研究を重ねた結果、プリオンに対する一価抗体との反応を利用することによってサンプル中の異常プリオンを高感度かつ定量的に検出できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
また本発明者らは、上記の一価抗体との反応を利用する検出方法の原理を種々のタンパク質検出方法に応用することによって、タンパク質を高感度かつ定量的に検出できることを見出した。
すなわち、本発明は、検出の目的タンパク質と、該目的タンパク質に対する一価抗体とを反応させることを特徴とする、サンプル中の該目的タンパク質の検出方法である。ここで、目的タンパク質としては、ホルモン、サイトカイン、ウイルス抗原等が挙げられる。また、一価抗体はFabフラグメント、Fab’フラグメント又はFvフラグメントでありうる。
【0007】
さらに上記方法において、目的タンパク質はプリオンタンパク質でありうる。また、目的タンパク質が異常プリオンタンパク質である場合には、一価抗体と反応させる前にサンプルをプロテイナーゼKで処理する必要がある。
【0008】
また上記プリオンタンパク質は、哺乳動物に由来するものでありうる。例えば、ヒツジ、ウシ、ヒト、ヤギ、マウス、ハムスター等に由来するものが挙げられる。サンプルとしては、体液、医薬品又は食品などを対象とすることができる。検出は、抗原抗体反応を検出しうる任意の方法により行いうるが、フローサイトメトリーで行うことが好ましい。
【0009】
また本発明は、プリオンタンパク質に対する一価抗体である。ここで、プリオンタンパク質及び一価抗体は上記と同様である。
さらに本発明は、上記一価抗体を含むことを特徴とする試薬キットである。該試薬キットはさらにプロテイナーゼK及び/又はプリオンペプチド固相化ビーズを含んでもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、従来のプリオン検出方法の欠点が、抗原結合部位が2カ所存在する抗体を用いることであり、そのため、プリオン検出の際にプリオン2分子又は1分子のみと反応した2種類の抗体が混在して生成され、これにより極微量のプリオンを正確に検出することができないと考え、この欠点を改善するため研究を重ねた結果、本発明は完成された。
【0012】
従って、本発明のプリオン検出方法は、異常プリオンと、プリオンに対する一価抗体とを反応させることを特徴とするものである。一価抗体であるFabフラグメント、Fab’フラグメント及びFvフラグメント等は抗原結合部位が1カ所であるため、このような抗プリオン一価抗体との反応を利用すると、従来の方法よりも数十倍〜数万倍の感度で定量的にプリオンを検出することができる。また、本発明の方法は、プリオンに限らず、その他あらゆるタンパク質の検出・定量に応用することができる。以下、本発明の概要を説明する。
【0013】
1.一価抗体の作製
本発明の検出方法では、まず一価抗体を調製する。「一価抗体」とは、1分子当たり1個の抗原結合部位しかもたない抗体であり、例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、Fvフラグメント等がある。
【0014】
(i) 抗原の調製
本発明の一価抗体を作製するために、まず抗原を調製する。本発明では、検出及び定量が望まれるタンパク質(以下、目的タンパク質という。)を抗原として使用しうる。目的タンパク質としては、限定するものではないが、ホルモン、サイトカイン、ウイルス抗原等を例示することができる。具体的には、インシュリン、成長ホルモン、インターロイキン、インターフェロン、HIV envタンパク質等が挙げられる。特に、高感度の検出が望まれている異常プリオンが好ましい。
【0015】
上述した目的タンパク質は、当技術分野で公知の手法を用いて供与源から単離・精製して調製することができるし、あるいは、当該タンパク質のアミノ酸配列が公知であれば、遺伝子工学的手法により微生物で産生させて精製して調製してもよい。
【0016】
本発明により検出することが好ましいプリオンは、正常プリオンと異常プリオンとの間でアミノ酸配列に違いはないため、哺乳動物に常在する正常プリオンのアミノ酸配列を利用して抗原を調製することができる。正常プリオンをコードするプリオン遺伝子は、ヒト、ヒツジ、ヤギ、ウシ、マウス、ハムスターなど多くの動物種で同定されており、そのアミノ酸配列は90%以上の相同性を示し、高度に保存されていることが知られている。
【0017】
本発明で使用しうるプリオンのアミノ酸配列は、DDBJ/EMBL/GenBank nucleotide sequence databasesより、例えばヒツジプリオンのアミノ酸配列(Accession number U67922)が入手可能であるが、プリオンのアミノ酸配列であれば特に限定されない。
なお、本発明においては、精製されたタンパク質全体のみならず、その部分断片も使用することができる。「部分断片」という用語は、目的タンパク質のアミノ酸配列を含む限り、特に長さに関係なく使用する。
【0018】
部分断片は、ペプチド断片として通常のペプチド合成等により調製することができる。ペプチドの化学合成は常法手段を採用することができる。例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC 法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれでもよい。なお、本発明においては、市販の自動ペプチド合成装置(例えば島津製作所社の自動ペプチド合成装置PSSM−8)を使用して合成することもできる。
【0019】
本発明で使用するのに適したペプチド断片は、配列番号1に示すアミノ酸配列又はその部分断片を有するものが挙げられるが、これに限定されるものではない。ペプチド部位は、例えば、タンパク質の表層にあること、αへリックス構造をとらないこと、リピート配列等の単純な配列を含まないこと、などを考慮して決定しうる。
また、免疫に用いるペプチド配列は、哺乳動物間で非常に類似している可能性があるため、KLH、BSA等の当技術分野で公知のキャリアタンパク質と該ペプチド配列とを結合することにより免疫原性を高めて免疫を行うことが好ましい。
【0020】
(ii) 抗体の作製
本発明において「抗体」とは、抗原である目的タンパク質又はその部分断片に結合し得る抗体分子を意味し、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。本発明において、抗体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体)は例えば以下の手法により製造することができる。
【0021】
(iia) モノクローナル抗体
前記のようにして作製したタンパク質又はその断片を抗原として、哺乳動物、例えばラット、マウス、ウサギなどに投与する。必要に応じてフロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)等のアジュバントを用いることもできる。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内に注入することにより行われる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、1〜10回の免疫を行う。そして、最終の免疫日から1〜60日後に抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられる。
【0022】
ハイブリドーマを得るため、抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。ミエローマ細胞としては、例えば P3X63−Ag.8.U1(P3U1)、NS−Iなどのマウスミエローマ細胞株が挙げられる。
【0023】
次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを混合し(抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞比5:1が好ましい)、細胞融合促進剤(例えばポリエチレングリコール等)の存在のもとで融合反応を行う。また、エレクトロポレーションを利用した市販の細胞融合装置を用いて細胞融合させることもできる。
【0024】
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。例えば、細胞懸濁液をウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上にまく。各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。その結果、選択培地で培養開始後、14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
【0025】
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的タンパク質に反応する抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、例えば酵素免疫測定法、放射性免疫測定法等を採用することができる。 融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、目的のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを樹立する。
【0026】
樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。
上記抗体の採取方法において抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
【0027】
(iib) ポリクローナル抗体の作製
ポリクローナル抗体を作製する場合は、前記と同様に動物を免疫し、最終の免疫日から6〜60日後に、酵素免疫測定法(ELISA(enzume−linked immunosorbent assy)又は EIA(enzyme immunoassay))、放射性免疫測定法(RIA;radioimmuno assay)等で抗体価を測定し、最大の抗体価を示した日に採血し、抗血清を得る。その後は、抗血清中のポリクローナル抗体の反応性をELISA法などで測定する。
【0028】
(iii) 一価抗体の作製
本発明の一価抗体は、上述のようにして得られた抗体をプロテアーゼで処理することにより得ることができる。本発明において使用しうる一価抗体としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント及びFvフラグメントが挙げられる。
【0029】
Fabフラグメントは、上記抗体をパパインで処理することにより得ることができる。またFab’フラグメントは、上記抗体をペプシン消化して生じるF(ab’)フラグメントを2−メルカプトエタノールなどの試薬を用いて還元し、続いてモノヨード酢酸を用いてアルキル化することにより得ることができる。あるいは、これらの一価抗体をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させることにより一価抗体を得てもよい。同様に、Fvフラグメントは、抗体可変領域であるVとVのみをコードする遺伝子をリンカーペプチドをコードする塩基配列で連結した融合遺伝子を作製し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させることにより得ることができる。
【0030】
2.タンパク質の検出
本発明では、上記のようにして作製された一価抗体と目的タンパク質とを反応させ、得られる反応産物から該目的タンパク質を定量的に検出する。
本発明で対象とするサンプルとしては、検出が望まれる目的タンパク質を含有する可能性があるものなら特に限定されない。異常プリオンの検出では、異常プリオンが混入している可能性のある体液、医薬品、食品などが検出の対象となる。例えば、プリオン病感染が疑われるか又はプリオン病への非感染を証明しようとする家畜の組織、及び血液、血清、血漿、乳汁等の体液;肉骨粉等の家畜飼料に用いられる材料;家畜等で産生された物質を使用した医薬品及び食品などを例示することができる。
【0031】
異常プリオンの検出では、上述したように、正常プリオンと異常プリオンとの間のアミノ酸配列に違いがないため、上記一価抗体は正常及び異常プリオンの両者を認識することに注意する。本発明の検出方法では、異常プリオンの検出を目的とするため、プロテイナーゼKに対する耐性を有する異常プリオンの性質を利用する。従って、プロテイナーゼKを用いてサンプルを処理する。その結果、正常プリオンは分解され、異常プリオンが存在する場合には、異常プリオンのみがサンプル中に存在することになる。プロテイナーゼKによる処理は、例えば、プロテイナーゼKを終濃度が25μg/mlとなるようにサンプルに添加し、37℃にて60分間インキュベートする。
【0032】
本発明の検出方法は、一価抗体とサンプル中の目的タンパク質との抗原抗体反応を利用するものであり、抗原抗体反応を検出することができる免疫学的手法を用いてサンプル中の目的タンパク質を検出することができる。抗原抗体反応を検出することができる手法としては、限定するものではないが、フローサイトメトリーを利用する方法、免疫電気泳動法、免疫蛍光法、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイなどが挙げられる。本発明では、フローサイトメトリーを利用する方法が好ましい。
【0033】
フローサイトメトリーは、粒子懸濁液を高速で細管中に流し、浮遊している粒子を1個ずつ分別し、各粒子にレーザー光を照射して、レーザー光の粒子による散乱や、レーザー光によって励起される粒子の蛍光発光などを検出・測定する分析方法である。
【0034】
本発明のフローサイトメトリーを利用する検出方法は次のようにして行う:
(1) サンプルと一価抗体とを反応させる。これによりサンプル中に含まれる目的タンパク質(抗原)の量と相関して一価抗体が消費される。
(2) ペプチド固相化ビーズを加える。これにより未反応の一価抗体とビーズとが結合する。
(3) ビーズを洗浄する。未反応の一価抗体と結合したビーズ及び未結合ビーズが残る。
(4) 蛍光標識2次抗体を加える。この蛍光標識2次抗体は未反応の一価抗体と反応し、未反応一価抗体と結合したビーズが蛍光標識される。
(5) 蛍光標識されたビーズをフローサイトメトリーにより検出する。
(6) 添加した一価抗体量と検出された蛍光量から、間接的にサンプル中の目的タンパク質量を推定する。
【0035】
上記の工程(1)においては、サンプルと一価抗体とを反応させるが、サンプル中に存在しうる目的タンパク質に対し、過剰の一価抗体を添加する必要がある。サンプルと一価抗体の量は、当業者であれば容易に決定することができるが、抗体量が多すぎると感度が低くなり、少なすぎると検出が困難になるため、陽性反応を明確に識別しうる(平均蛍光強度100程度)必要最少量の抗体量を予め調べておく必要がある。
【0036】
工程(2)に記載されている「ペプチド固相化ビーズ」とは、未反応の一価抗体と反応させるために添加するものであって、固相化するペプチドは検出目的のタンパク質の断片でありうる。例えばプリオンに対する一価抗体と反応させる場合には、プリオンペプチドを固相化する。ビーズとしては、フローサイトメトリーに適した当技術分野で公知のあらゆる粒子を用いることができ、例えば、ラテックスビーズ、ポリスチレンビーズ等が挙げられるが、特にラテックスビーズが好ましい。ペプチドをビーズに固相化する方法は、当技術分野で公知である。ペプチド固相化ビーズの添加量は、約5×10個/サンプル、すなわち、フローサイトメトリーにおいて10個のビーズを測定するのに十分な量である。
【0037】
工程(3)においては、当業者に公知の手法によりビーズを洗浄する。例えば、プリオン検出においてラテックスビーズを用いる場合には、2000g、室温にて30秒間遠心分離して洗浄する。
【0038】
工程(4)において加える蛍光標識2次抗体は、工程(3)の洗浄後に残っている、未反応一価抗体が結合したビーズと未結合ビーズのうち、未反応一価抗体と反応する。すなわち、未反応一価抗体が結合したビーズを蛍光標識する。蛍光標識2次抗体は、未反応一価抗体と反応するものであり、未反応一価抗体がウサギにおいて生成されたものであれば、2次抗体は抗ウサギ抗体である。使用しうる蛍光標識としては、限定するものではないが、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、フィコエリスリン−シアニン5(PE−Cy5)等が挙げられる。また、2次抗体を直接標識するだけではなく、間接的に2次抗体を標識してもよい。例えば、ビオチン標識2次抗体に対し、蛍光標識したストレプトアビジンを結合させることにより2次抗体を間接的に蛍光標識することもできる。
【0039】
工程(5)において、フローサイトメーターにより、上述のように蛍光標識したビーズを検出する。検出は、例えば、EPICS Elite XLフローサイトメーターにより、FS=300V, 2.0 Gain、SS=260V, 2.0 Gain、FL2=930V, 1.0 GainのDetector感度設定で行うことができる。
【0040】
最後に、工程(6)において、工程(5)で測定された蛍光量からサンプル中の目的タンパク質量を算出する。予め既知濃度のタンパク質を含有するサンプルを用いて検量線を作成しておくことが望ましい。
【0041】
以上のようにして、サンプル中のタンパク質量を定量的に求めることができる。本発明によると、極微量のタンパク質であっても検出することができる。図1に、IgG抗体又は一価抗体とタンパク質抗原分子との結合反応を模式化して示す。IgG抗体は抗原結合部位を2カ所有するため、極微量の抗原分子存在下では、抗原2分子と結合した抗体、抗原1分子とのみ反応した抗体、又はこれら両抗体が混在して存在し得るため、抗原量と結合抗体量は必ずしも比例しない。この2価抗体の特性が微量タンパク質検出の障害になっていると考えられる。一方、本発明の一価抗体は抗体1分子につき1個の結合部位しかないため、抗原分子量と結合抗体量は比例する。従って、本発明の検出方法では、サンプル中の極微量のタンパク質を高感度かつ定量的に検出することができる。
【0042】
さらに、本発明の異常プリオン検出方法は、試薬キットを用いて非常に容易に実施することができる。ここで、試薬キットは、少なくともプリオンに対する一価抗体を含んでいる。また、該試薬キットは、さらにプロテイナーゼK、プリオンペプチド固相化ビーズ、蛍光標識2次抗体等を含んでもよい。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
<実施例1> 抗プリオンFabフラグメントの作製
(1)抗プリオンペプチド抗体の作製
ヒツジプリオンタンパク質のアミノ酸配列(DDBJ/EMBL/GenBank nucleotide sequence databases;Accession number U67922として公開されている)を元にペプチドを設計した。すなわち、スクレイピープリオン(PrPsc)のコアフラグメントP27−30のN末端配列にCysを付加した20アミノ酸からなるペプチド(NH−CGQGGSHSQWNKPSKPKTNM−COOH;配列番号1)を合成した。さらにこのペプチドにキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を付加したものを抗原としてウサギに免疫した。数回のブースト免疫後、抗血清を回収し、プロテインAカラムを用いてIgG抗体を精製した。
(2)Fabフラグメントの作製
精製IgG抗体をパパイン結合カラムに通すことにより、IgG分子をFc部とFab部に切断した。次にプロテインAビーズと混合することによって未消化IgG分子とFc部を除去した。抗体のFab化はSDS電気泳動で確認した。
【0044】
<実施例2> プリオンペプチド固相化担体ビーズの作製
カルボキシル化ラテックスマイクロビーズ(直径10μm、ポリサイエンス社製)に上記プリオンペプチドを固相化した。すなわち、ビーズのカルボキシル基を活性化させた後、ペプチドと一晩混合した。遠心して上清を除去した後、エタノールアミンを加えてビーズの未反応基をブロックした。遠心洗浄後、BSA溶液を加え、ビーズの非特異的タンパク結合部位をブロックした。
【0045】
<実施例3> フローサイトメトリーによる検出
既知濃度のプリオンペプチドを含む試料(102.4fg〜40ng/10μl)と、抗プリオンペプチドFabフラグメント(1μg/10μl)又は対照としてIgG抗体とを混合し、4℃で20分間反応させた。10個/5μlのビーズを添加して混合した後、さらに4℃で20分間反応させた。ビーズを遠心洗浄後、ビオチン標識抗ウサギIgG抗体(2次抗体)を反応させた。遠心洗浄後、フィコエリスリン標識ストレプトアビジンで染色した。蛍光反応はEPICS Elite XLフローサイトメーター(ベックマン・コールター社製)を用いて検出し、ビーズ一個あたりの平均蛍光強度(MFI)を算出した。
【0046】
図2AにIgG抗体を用いてプリオンペプチドを検出した結果を示す。IgG抗体を添加しない陰性対照(NCで示す)ではビーズのバックグラウンド蛍光のみのためMFI値は低い(<10)。一方、ペプチドを添加せずにIgG抗体を反応させた陽性対照ではMFI値は約110を示した。ペプチドを添加したサンプルではおよそ12.8pgから40ngの範囲でほぼ直線的にMFIが減少し、この範囲内でプリオンペプチドの検出に定量性があることがわかる。しかしながら12.8pg以下の濃度ではMFI値はほぼプラトーになり、またバラつきも大きく定量性はない。
【0047】
図2BにFabフラグメントを用いて同様に解析した結果を示す。ペプチド量が102.4fgから40ngまでほぼ直線的にMFI値が減少し、この広い濃度範囲でプリオン抗原を定量的に検出できることが判明した。
従来法のプリオンの検出限界は、ウェスタンブロッティング法で約3ng、キャピラリー電気泳動法で約64pg、ELISAで約60pg及びイムノPCR法で約6pgであり、これらの方法と比較すると本検出方法は数十倍から数万倍の検出感度を有することがわかる。
【0048】
<実施例4> 感染脳乳剤からの異常プリオンの検出
正常マウス脳及びヒツジスクレイピー接種マウス脳を用いて1%ホモジェネートを作製し、リンタングステン酸法でプリオンタンパクを粗精製しプロテアーゼ(Proteinase K)処理した。サンプルを1/50000〜1/50倍に希釈し、Fabフラグメントと反応させる本検出方法によりプロテアーゼ耐性の異常プリオンの検出を行った。図3に示すように、正常脳由来のサンプルでは各希釈段階でほぼ一定のMFI値(A)及び陽性率(B)を示した。それに対して、スクレイピー感染脳由来サンプルでは、希釈率が下がるにつれてMFI値及び陽性率が減少し、1/5000〜1/50倍希釈サンプルでは、正常マウス脳と比較して低いMFI値及び陽性率を示した。これは、本検出方法のFabフラグメントが異常プリオンと反応していることを示す。従って、本検出方法により、スクレイピー感染脳乳剤から異常プリオンを検出可能であると考えられる。
【0049】
【発明の効果】
本発明により、サンプル中のタンパク質を高感度かつ定量的に検出する方法が提供される。本発明の検出方法は、高感度な検出が望まれている異常プリオンタンパク質の検出において特に有用であり、異常プリオンタンパク質混入サンプルを検出することによってプリオン病の感染を回避することができる。
【0050】
【配列表】
Figure 0003568198
【0051】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:合成ペプチド
【図面の簡単な説明】
【図1】IgG抗体又は一価抗体とプリオン抗原分子との結合反応の模式図である。
【図2】抗プリオンペプチドIgG抗体(A)及び抗プリオンペプチドFabフラグメント(B)を用いて既知濃度のプリオンペプチドを検出した結果である。
【図3】抗プリオンペプチドIgG抗体及び抗プリオンペプチドFabフラグメントを用いて、正常マウス脳及びヒツジスクレイピー接種マウス脳中の異常プリオンを検出した結果である。

Claims (11)

  1. プリオンタンパク質と、該プリオンタンパク質に対する一価抗体とを反応させることを特徴とする、サンプル中のプリオンタンパク質の検出方法。
  2. 一価抗体がFabフラグメント、Fab'フラグメント又はFvフラグメントである、請求項1記載の方法。
  3. 一価抗体と反応させる前にサンプルをプロテイナーゼKで処理する請求項1又は2記載の方法。
  4. プリオンタンパク質が異常プリオンタンパク質である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. プリオンタンパク質が哺乳動物に由来するものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. サンプルが、体液、医薬品又は食品である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. フローサイトメトリーにより検出を行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の検出方法。
  8. プリオンタンパク質に対する一価抗体を含むことを特徴とする試薬キット。
  9. プリオンタンパク質が哺乳動物に由来するものである、請求項8記載の試薬キット。
  10. 一価抗体がFabフラグメント、Fab'フラグメント又はFvフラグメントである、請求項8又は9記載の試薬キット。
  11. プロテイナーゼK及び/又はプリオンペプチド固相化ビーズをさらに含む請求項8〜10のいずれか1項に記載の試薬キット。
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