JP3568000B2 - 延伸ポリスチレン系フィルム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はシンジオタクチックポリスチレン系フィルム、さらに詳しく言えば、コーティング加工後の平面性およびコピー機の通過性に優れた延伸ポリスチレン系フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シンジオタクチックポリスチレン系二軸延伸フィルムは耐熱性、電気特性、透明性などに優れたものが開発され(特開平1−110122号、同1−168709号、同1−182346号、同2−279731号、同3−74437号、同3−109453号、同3−99828号、同3−124427号、同3−131644号、同3−131843号など)、磁気テープ用、コンデンサー用、包装用等、各種のフィルム用途に展開が期待されている。特に耐熱性、透明性を活かした液晶表示用途やOHP用フィルム、写真フィルム等への展開が期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらシンジオタクチックポリスチレン系のフィルムは、他の素材(例えば偏光板、ゼラチン乳剤、コピー用トナー)との接着性が悪いという欠点があった。そこで、後加工、即ち、易接着性向上等を目的としたコーティングを施す必要があるが、これまでのシンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムにおいては、コーティングや蒸着を施した後に平面性が損なわれるという問題があった。
本発明は、コーティング加工後の平面性およびコピー機の通過性に優れた延伸ポリスチレン系フィルムを提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリスチレン系フィルムはシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなるフィルムで、フィルムの幅方向における長手方向の弾性率の最大値(Emax)と最小値(Emin)の差がEmaxの10%以下であることを特徴とするコーティング加工後の平面性およびコピー機の通過性に優れた延伸ポリスチレン系フィルムを提供するものである。
【0005】
本発明に用いられる立体規則性がシンジオタクチック構造であるポリスチレン系重合体は、側鎖であるフェニル基又は置換フェニル基が核磁気共鳴法により定量されるタクティシティがダイアッド(構成単位が2個)で85%以上、ペンタッド(構成単位が5個)で50%以上のシンジオタクチック構造であることが望ましい。
【0006】
該ポリスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−、m−又はo−メチルスチレン)、ポリ(2,4−、2,5−、3,4−又は3,5−ジメチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)などのポリ(アルキルスチレン)、ポリ(p−、m−又はo−クロロスチレン)、ポリ(p−、m−又はo−ブロモスチレン)、ポリ(p−、m−又はo−フルオロスチレン)、ポリ(o−メチル−p−フルオロスチレン)などのポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(p−、m−又はo−クロロメチルスチレン)などのポリ(ハロゲン置換アルキルスチレン)、ポリ(p−、m−又はo−メトキシスチレン)、ポリ(p−、m−又はo−エトキシスチレン)などのポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(p−、m−又はo−カルボキシメチルスチレン)などのポリ(カルボキシアルキルスチレン)ポリ(p−ビニルベンジルプロピルエーテル)などのポリ(アルキルエーテルスチレン)、ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)などのポリ(アルキルシリルスチレン)、さらにはポリ(ビニルベンジルジメトキシホスファイド)などが挙げられる。
【0007】
本発明においては、前記ポリスチレン系重合体のなかで、特にポリスチレン、ポリアルキルスチレンおよびこれらの共重合体が好適である。また、本発明で用いるシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体は、必ずしも単一化合物である必要はなく、シンジオタクティシティが前記範囲内であればアタクチック構造やアイソタクチック構造のポリスチレン系重合体との混合物や、共重合体及びそれらの混合物でもよい。
【0008】
また本発明に用いるポリスチレン系重合体は、重量平均分子量が10,000以上、更に好ましくは50,000以上である。重量平均分子量が10,000未満のものでは、強伸度特性や耐熱性に優れたフィルムを得ることができない。重量平均分子量の上限については、特に限定されるものではないが、1,500,000 以上では延伸張力の増加に伴う破断の発生などが生じるため余り好ましくない。
【0009】
本発明に用いられるシンジオタクチックポリスチレン系重合体には必要に応じて、公知の酸化防止剤、帯電防止剤、滑り性を付与するための微粒子等を適量配合したものを用いることができる。配合量はシンジオタクチックポリスチレン系重合体100 重量%に対して10重量%以下が望ましい。10重量%を越えると延伸時に破断を起こしやすくなり、生産安定性不良となるので好ましくない。
【0010】
そして、フィルムの幅方向における長手方向の弾性率の最大値(Emax)と最小値(Emin)は、フィルムの製膜条件により調整される。フィルムの幅方向における長手方向の弾性率の最大値(Emax)と最小値(Emin)の差および弾性率の最小値(Emin)が所定の範囲に入るならば製造条件は特に限定されないが、縱方向に多段に延伸した後更に多段に横方向に延伸する方法や横延伸と熱固定処理の間に冷却ゾーンを設ける方法、横延伸時のフィルムの幅方向の温度に分布を着ける方法等が挙げられる。熱収縮率を所定の範囲に入れるためには熱固定処理、縦弛緩処理、横弛緩処理などを施すことが必要である。また、蒸着層の接着特性等を向上するために、インラインコートやオフラインコートにより接着層を設けたり、コロナ処理や火炎プラズマ処理等を行うことができる。
【0011】
本発明のポリスチレン系延伸フィルムの幅方向における長手方向の弾性率の最大値(Emax)と最小値(Emin)の差はEmaxの10%以下、好ましくは8%以下、更に好ましくは5%以下である。フィルムの幅方向における長手方向の弾性率の最大値(Emax)と最小値(Emin)の差がEmaxの10%より大きい場合コーティング加工後の平面性やコピー機の通過性が不良となる。
【0012】
また本発明のポリスチレン系延伸フィルムの幅方向における長手方向の弾性率の最小値(Emin)は300kg/mm2以上、好ましくは320kg/mm2以上、更に好ましくは350kg/mm2以上である。ポリスチレン系延伸フィルムの幅方向における長手方向の弾性率の最小値(Emin)が300kg/mm2より低い場合コーティング加工後の平面性やコピー機の通過性が不良となりやすい。
【0013】
更に、150℃における熱収縮率は2%以下、好ましくは1.8%以下、更に好ましくは1.5%以下である。150℃における熱収縮率が2%より大きいとコーティング後の平面性やコピー機通過性が不良となりやすい。
【0014】
実施例
以下に実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、フィルムの評価方法を以下に示す。
【0015】
(1)フィルムの幅方向における長手方向の弾性率
フィルムの幅方向に等間隔になるように5箇所から幅10mmのサンプルを切り出した。得られたサンプルを東洋ボールドウイン社製の引張り試験機(テンシロンUMT−(II)− 500型)を用い、チャック間長さが100mmとなるようにセットし、引張り速度100mm/minで、23℃×65%RHの環境下で測定した。
【0016】
(2)150℃における熱収縮率
無張力の状態で150℃の雰囲気中に30分間放置し、放置前後の寸法変化を読み取り、フィルムの熱収縮率を求めた。
【0017】
(3)コーティング後の平面性
竹本油脂(株)製TIE51を10番手のワイヤーバーを用いてハンドコートし、150℃の雰囲気下で乾燥した。得られたフィルムを次の基準に従い、1級〜5級のランク付けを行った。
1級;強い張力をかけても波打ち全面にあり
2級;強い張力をかけても波打ち一部あり
3級;強い張力をかけると波打ちなし
4級;弱い張力をかけると波打ちなし
5級;張力をかけなくても波打ちなし
【0018】
(4)コピー機通過性
コートしたフィルムをB5サイズにカットし、(株)リコー製RICOPY FT6960内部を通過させた。得られたフィルムを次の基準に従い、1級〜5級のランク付けを行った。
1級;コピー機につまる等のトラブルあり
2級;フィルムにしわが入る
3級;平坦な場所に置いた場合に浮く部分がある
4級;平坦な場所に置いた場合に浮く部分がないが、定規で測定すると寸法変化が認められる
5級;外観、寸法共に変化無し
【0019】
実施例1
シンジオタクチックポリスチレン(重量平均分子量250,000)を乾燥し、290℃で溶融し、1500μmのリップギャップのT ダイから押し出し、50℃の冷却ロールに静電印荷法により密着・冷却固化し、厚さ1000μmの無定形シートを得た。
該無定形シートを先ず金属ロールにより95℃に予熱し、表面温度600℃の反射した赤外線がフィルムに垂直に当たる様に調製したステンレス製の傘を有する直径10mmの棒状窒化硅素製赤外線ヒータ3本で更に加熱し縱方向に1.3倍延伸し、引き続き100℃に加熱したシリコンゴムロールにフィルムを接触させ更に表面温度600℃の前記赤外線ヒータで加熱し縱方向に1.5倍延伸し、引き続き130℃に加熱したセラミックロールを用い縦方向に1.8倍延伸した。次いで、テンターでフィルムを110℃に予熱し、横方向に延伸温度110℃で1.9倍延伸し、更に120℃で横方向に2倍延伸した後、80℃に冷却し、その後230℃で20秒熱固定処理し、200℃で1%横弛緩処理し、更に170℃で2%横弛緩処理を行った。得られたフィルムの厚みは75μm、幅は厚みの均一な部分が500mmであった。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0020】
実施例2
縦延伸を金属ロールにより95℃に予熱し表面温度650℃の前記赤外線ヒータで更に加熱し縱方向に3.5倍延伸した。次いで、テンターでフィルムを110℃に予熱し、横方向に延伸温度115℃で横方向に3.8倍延伸した以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは75μm、幅は厚みの均一な部分が500mmであった。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0021】
実施例3
熱固定処理を210℃で20秒とした以外は実施例2と同様に行った。得られたフィルムの厚みは75μm、幅は厚みの均一な部分が500mmであった。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0022】
比較例1
横延伸後に80℃に冷却しなかった冷却以外は実施例2と同様に行った。得られたフィルムの厚みは75μm、幅は厚みの均一な部分が500mmであった。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0023】
比較例2
シンジオタクチックポリスチレン(重量平均分子量250,000)を乾燥し、290℃で溶融し、1500μmのリップギャップのTダイから押し出し、50℃の冷却ロールに静電印荷法により密着・冷却固化し、厚さ880μmの無定形シートを得た。
該無定形シートを先ずシリコンゴムロールにより120℃に予熱し縱方向に3倍延伸し、次いでテンターでフィルムを120℃に予熱し、横方向に延伸温度120℃で3倍延伸し、更にシリコンゴムロールにより120℃に予熱し縱方向に1.3倍延伸した。その後230℃で20秒熱固定処理し、200℃で1%横弛緩処理し、更に170℃で2%横弛緩処理を行った。得られたフィルムの厚みは75μm、幅は厚みの均一な部分が500mmであった。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0024】
表より、実施例1、2
表より、実施例1、2、3で得られたフィルムはコーティング加工後の平面性やコピー機の通過性に優れたものであることが分かる。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
以上、記載のとおり、本発明は前記特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用することにより、コーティング加工後の平面性やコピー機の通過性に優れたポリスチレン系延伸フィルムが提供され、従って、本発明の工業的価値は大である。
Claims (3)
- シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなるフィルムで、フィルムの幅方向における長手方向の弾性率の最大値(Emax)と最小値(Emin)の差がEmaxの10%以下であることを特徴とする延伸ポリスチレン系フィルム。
- フィルムの幅方向における長手方向の弾性率の最小値(Emin)が300kg/mm2以上であることを特徴とする請求項1記載の延伸ポリスチレン系フィルム。
- 150℃における熱収縮率が2%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の延伸ポリスチレン系フィルム。
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