JP3567425B2 - タワークレーン用の水平控 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として高層建築に用いるタワークレーンを建築物に支持するために用いる、タワークレーン用の水平控に関する。
【0002】
【従来の技術】
主として高層建築に用いるタワークレーンTは、図6に示すように、マスト110の上部に、本体115Aと上部昇降フレーム115Bと下部昇降フレーム115Cとを含むクレーン115が備えられ、建築物130の高さが高くなるにつれて、マスト110を継ぎ足すと共にクレーン115がクライミングして、その塔高を変更するようになっている。
ここで、マスト110が自立する塔高は、マスト110の断面性能により決まっているため、塔高がそれ以上になった場合には、マスト110と建築物130とを壁つなぎであるステー材120で接続して、タワークレーンTを建築物130に支持し、マスト110の最下部に作用する力を低減させる必要がある。
この場合においては、マスト110の外周を取り囲む枠体及び作業足場からなる水平枠141をマスト110の外周に設け、その水平枠141と建築物130とをステー材120を介して接続する「水平控」を採るのが一般的である。
【0003】
かかる水平控を特に円筒形のマスト110に設ける場合は、以下の方法による。なお、円筒形のマスト110は、その周壁の対向する二箇所に軸方向に沿って穿設され、クレーン115をマスト110に支持するためのカンヌキ(図示外)が出入りするカンヌキ孔110aを有する。
▲1▼マスト110の最下部において、マスト110の外周を取り囲むように、水平枠141を地組する。
▲2▼ウインチ等により、地組された水平枠141をマスト110に沿って所定の高さまで引き上げる。
▲3▼マスト110の内部を通った作業員が、カンヌキ孔110aから這い出し、引き上げられた水平枠141の作業足場に乗り移る。
▲4▼作業足場に乗っている作業員が、上方のカンヌキ孔110aや下部昇降フレーム115Cを利用して、水平枠141をマスト110に固定する。
▲5▼タワークレーンTにより、ステー材120を吊り上げ、建築物130と水平枠141とをステー材120を介して接続し、タワークレーンTを建築物130に支持する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記のような方法で水平枠を円筒形マストに設ける場合には、以下のような問題があった。
(1)二段以上の水平枠を円筒形マストに取り付ける場合において、図6に示すように、既設の水平枠141Aが円筒形マストに取り付けられていると、新たな水平枠141Bを地組して引き上げる際に既設の水平枠141Aが障害となるため、新たな水平枠141Bを既設の水平枠141Aよりも上方に設けることができない。
(2)作業員が水平枠の作業足場に乗り移る場合において、円筒形マストの内部を通って狭いカンヌキ孔(一般的にφ380以下)から這い出さなければならないが、鋼管構造の円筒形マストには(トラス構造の角形マストと違って)足がかりがないため、その乗り移りが容易でなく危険を伴う。
【0005】
そこで、本発明は、既設の水平枠よりも上方に設けることができ、作業員が作業足場に容易かつ安全に乗り移ることができるような、タワークレーン用の水平控を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を達成すべく提供されるものであり、その請求項1に係る発明は(例えば図1及び図2参照)、『円筒形マスト10の上部にクレーン15を備えるタワークレーンTを、ステー材20を介して建築物30に支持する際に用いる、タワークレーン用の水平控であって、/クレーン15の下部昇降フレーム15Cより下方に向けて取り付けられ、作業員が昇降するための昇降設備40と、/円筒形マスト10に取り付けられる第一枠42Aと第二枠42Bを有し、それぞれ円筒形マスト10の外周を取り囲んで一体となり、ステー材20を取り付けるための枠体42、並びに、第一枠42Aの下方に支持される第一足場45Aと、第二枠42Bの下方に支持される第二足場45Bとを有し、それぞれ円筒形マスト10の外周を取り囲んで一体となり、作業員が足場として使用するための作業足場45と、を含む水平枠41と、/を含むことを特徴とするタワークレーン用の水平控』である。
【0007】
かかるタワークレーン用の水平控によれば、(1)第一枠42A及び第一足場45Aからなる第一水平枠41Aと、第二枠42B及び第二足場45Bからなる第二水平枠41Bと、に分割して形成される水平枠41を含むので、両者を分割状態のままで引き上げ、両者をその後に接合することで、既設の水平枠よりも上方に新たな水平枠を設けることができ、(2)下部昇降フレーム15Cに取り付けられる昇降設備40を含むので、作業員が作業足場45に容易かつ安全に乗り移ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るタワークレーン用の水平控における好適な実施の形態に関し、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0009】
1.タワークレーン用の水平控の構成
まず、タワークレーン用の水平控の構成について、(1)前提構成と(2)特徴構成に分けて説明する。
【0010】
(1)前提構成
タワークレーン用の水平控は、図1及び図2に示すように、円筒形マスト10の上部にクレーン15を備えるタワークレーンTを、ステー材20を介して建築物30に支持する際に用いるものである。
【0011】
円筒形マスト10は、図1及び図2に示すように、クレーン15を支持するものであり、所定長さの中空鋼管が施工対象である建築物30の高さに応じて適宜接合されてなる。
この円筒形マスト10は、その周壁の対向する二箇所に軸方向に沿って穿設され、クレーン15を円筒形マスト10に支持するためのカンヌキ(図示外)が出入りするカンヌキ孔10aを有し、またその周壁の等間隔の四箇所に軸方向に沿って付設され、円筒形マスト10に作用する力を水平枠41のインナー材43に伝達するためのガイドアングル10bを有し、さらにその内部に、作業員が地上とクレーン本体との間を往来するためのマスト内エレベータ10cを有する。
【0012】
クレーン15は、円筒形マスト10の上部に備えられ、ジブ,ブーム,クライミングジャッキ,上下の昇降フレーム等を有する。ここでは図1に示すように、クレーン15の最下部にある下部昇降フレーム15Cが、円筒形マスト10の上部に位置している。
【0013】
ステー材20は、図1及び図2に示すように、建築物30と水平枠41とを接続し、タワークレーンTを建築物30に支持するためのものである。
このステー材20は、その上面に、作業員が建築物30と水平枠41との間を往来するための歩廊20aを有し、その両側面に、作業員の安全を確保するための手摺20bを有する。
【0014】
(2)特徴構成
タワークレーン用の水平控は、図1及び図2に示すように、▲1▼昇降設備40と、▲2▼枠体42並びに作業足場45を含む水平枠41と、を含むものである。
【0015】
▲1▼昇降設備40は、図1に示すように、クレーン本体の下部昇降フレーム15より下方に向けて取り付けられ、作業員が昇降するためのものである。
この昇降設備40は、作業員が昇降するためのステップ40aと、作業員の安全を確保するためのカゴ40bと、昇降設備40を下部昇降フレーム15Cに固着するためのブラケット40cと、からなる。
【0016】
▲2▼水平枠41の枠体42は、図1及び図2に示すように、円筒形マスト10のカンヌキ孔10aに取り付けられる第一枠42Aと第二枠42Bを有し、それぞれ円筒形マスト10の外周を取り囲んで一体となり、ステー材20が取り付けられるものである。この実施の形態では、第一枠42Aと第二枠42Bは、それぞれ1/2ずつ円筒形マスト10の外周を取り囲んで一体となるように構成されているので、両者はほぼ同様の構成を有する。従って、以下においては、第一枠42Aについてのみ説明する。
【0017】
この第一枠42Aは、図2に示すように、鋼材により平面視で「コ」字状を成すように形成され、その両端部には、第二枠42Bを接合するための接合板42aを有し、その両折曲部の外側には、ステー材20を接続するための接合板42bを有する。
この第一枠42Aの両折曲部の内側には、図1及び図2に示すように、アングル材により形成され、ガイドアングル10bに当接し、円筒形マスト10に作用する力を枠体42を介してステー材20に伝達するためのインナー材43,43が取り付けられている。
また一対のインナー材43,43の間には、図1及び図2に示すように、鋼材により形成され、インナー材43,43同士を接続するための継ぎ材44が取り付けられている。この継ぎ材44は、図3(b)及び図5に示すように、その中央部に、カンヌキ孔10aと嵌合する突起部44aを有し、また突起部44aの先端に、カンヌキ孔10aと嵌合する際に手鉤を引っかけて突起部44aを引き込むための吊り環44bを有し、さらにカンヌキ孔10aと嵌合した後に突起部44aの先端に取り付けられるカンザシ金物44cを有する。
【0018】
水平枠41の作業足場45は、図1及び図4に示すように、第一枠42Aの下方に支柱45cを介して支持される第一足場45Aと、第二枠42Bの下方に支柱45cを介して支持される第二足場45Bとを有し、それぞれ円筒形マスト10の外周を取り囲んで一体となり、作業員が足場として使用するためのものである。この実施の形態では、第一足場45Aと第二足場45Bも、それぞれ1/2ずつ円筒形マスト10の外周を取り囲んで一体となるように構成されているので、両者はほぼ同様の構成を有する。従って、以下においては、第一足場45Aについてのみ説明する。
この第一足場45Aは、作業員が作業を行うための足場45aと、作業員の安全を確保するための手摺45bと、第一足場45Aを第一枠42Aの下方に吊り下げて支持するための支柱45cと、からなる。
【0019】
なお、水平枠41は、取り付けの便宜のために、第一枠42Aと第一足場45Aとを予め一体化してなる第一水平枠41Aと、第二枠42Bと第二足場45Bとを予め一体化してなる第二水平枠41Bと、に分割して形成するのが好ましい。
【0020】
2.タワークレーン用の水平控の取り付け
次に、タワークレーン用の水平控の取り付けについて、各手順に分けて説明する。
【0021】
(1)昇降設備40の取り付け
▲1▼クレーンにより、玉掛けされた昇降設備40を吊り上げる。
▲2▼図1に示すように、下部昇降フレーム15Cにブラケット40cを介して昇降設備40を取り付ける。
▲3▼取り付け後に、昇降設備40の玉掛けを取り外す。
【0022】
(2)第一水平枠41Aの取り付け
▲1▼円筒形マスト10の最下部において、第一枠42Aと第一足場45Aとを予め一体化して、第一水平枠41Aを地組する。
▲2▼図3(a)に示すように、クレーンにより、玉掛けされた第一水平枠41Aを吊り上げる。ここで第一水平枠41Aは、円筒形マスト10を囲繞していないため、既設の水平枠を回避でき、また水平枠41の1/2であるため、重量が軽く吊り上げが容易である。
▲3▼マスト内エレベータ10c(図5)の屋上に乗っている作業員甲が、図3(b)に示すように、吊り環44bに手鉤を引っかけてカンヌキ孔10aに突起部44aを引き込み、突起部44aの先端にカンザシ金物44cを取り付ける。
▲4▼作業員乙が、昇降設備40を利用して第一水平枠41Aに乗り移る。ここで作業員乙は、昇降設備40を利用することにより、容易かつ安全に第一水平枠41Aに乗り移ることができる。
▲5▼第一水平枠41Aに乗っている作業員乙が、図1に示すように、下部昇降フレーム15Cにチェーンブロック16を介して第一水平枠41Aを支持する(これにより、図4及び図5の実線で示す状態になる)。
▲6▼取り付け後に、第一水平枠41Aの玉掛けを取り外す。
【0023】
(3)第二水平枠41Bの取り付け
▲1▼円筒形マスト10の最下部において、第二枠42Bと第二足場45Bとを予め一体化して、第二水平枠41Bを地組する。
▲2▼クレーンにより、玉掛けされた第二水平枠41Bを吊り上げる。ここで第二水平枠41Bも、円筒形マスト10を囲繞していないため、既設の水平枠を回避することができ、また水平枠41の1/2であるため、重量が軽く吊り上げが容易である。
▲3▼マスト内エレベータ10c(図5)の屋上に乗っている作業員甲が、図3(b)に示すように、吊り環44bに手鉤を引っかけてカンヌキ孔10aに突起部44aを引き込み、突起部44aの先端にカンザシ金物44cを取り付ける。
▲4▼作業員乙が、第一水平枠41Aから第二水平枠41Bに乗り移る。
▲5▼第二水平枠41Bに乗っている作業員乙が、下部昇降フレーム15Cにチェーンブロック16を介して第二水平枠41Bを支持すると共に、枠体42の接合板42a同士をピンで接合することにより、第一水平枠41Aと第二水平枠41Bとを一体化し、水平枠41を形成する(これにより、図4及び図5の実線及び点線で示す状態になる)。
▲6▼取り付け後に、第二水平枠41Bの玉掛けを取り外す。
【0024】
(4)ステー材20の取り付け
▲1▼クレーンにより、玉掛けされたステー材20を吊り上げる。
▲2▼水平枠41に乗っている作業員乙が、枠体42の接合板42bとステー材20とをピンで接合し、建築物30側にいる作業員丙が、建築物30の鉄骨とステー材20とをピンで接合し、建築物30と水平枠41とをステー材20を介して接続して、タワークレーンTを建築物30に支持する(これにより図1及び図2に示す状態になる)。
▲3▼取り付け後に、ステー材20の玉掛けを取り外す。
【0025】
以上のように構成される水平控においては、円筒形マスト10に作用する力は、ガイドアングル10b→水平枠41(インナー材43→枠体42)→ステー材20という経路を経て建築物30に伝達されるので、円筒形マスト10の最下部に作用する力を低減することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように構成される本発明に係るタワークレーン用の水平控によれば、(1)第一枠及び第一足場からなる第一水平枠と、第二枠及び第二足場からなる第二水平枠と、に分割して形成される水平枠を含むので、両者を分割状態のままで引き上げ、両者をその後に接合することで、既設の水平枠よりも上方に新たな水平枠を設けることができ、(2)下部昇降フレームに取り付けられる昇降設備を含むので、作業員が作業足場に容易かつ安全に乗り移ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るタワークレーン用の水平控を示す正面図である。
【図2】本発明に係るタワークレーン用の水平控を示す平面図である。
【図3】(a)は第一水平枠を吊り上げている状態を示す斜視図であり、(b)はカンヌキ孔と突起部との嵌合状態を示す平面図である。
【図4】本発明に係るタワークレーン用の水平控の取り付けを示す拡大側面図である。
【図5】本発明に係るタワークレーン用の水平控の取り付けを示す拡大平面図である。
【図6】従来のタワークレーンを示す正面図である。
【符号の説明】
T タワークレーン
10 円筒形マスト
15 クレーン
15C 下部昇降フレーム
20 ステー材
30 建築物
40 昇降設備
41 水平枠
41A 第一水平枠
41B 第二水平枠
42 枠体
42A 第一枠
42B 第二枠
45 作業足場
45A 第一足場
45B 第二足場

Claims (1)

  1. 円筒形マストの上部にクレーンを備えるタワークレーンを、ステー材を介して建築物に支持する際に用いる、タワークレーン用の水平控であって、
    前記クレーンの下部昇降フレームより下方に向けて取り付けられ、作業員が昇降するための昇降設備と、
    前記円筒形マストに取り付けられる第一枠と第二枠を有し、それぞれ該円筒形マストの外周を取り囲んで一体となり、前記ステー材を取り付けるための枠体、並びに、前記第一枠の下方に支持される第一足場と、前記第二枠の下方に支持される第二足場とを有し、それぞれ前記円筒形マストの外周を取り囲んで一体となり、作業員が足場として使用するための作業足場、を含む水平枠と、
    を含むことを特徴とするタワークレーン用の水平控。
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