JP3567247B2 - アルキルモノアザチアクラウンエーテル及びアルキルモノアザオリゴチオエチレングリコール - Google Patents

アルキルモノアザチアクラウンエーテル及びアルキルモノアザオリゴチオエチレングリコール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規化合物であるアルキルモノアザチアクラウンエーテル及びアルキルモノアザオリゴチオエチレングリコール及びその水銀イオン抽出試薬としての用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
クラウンエーテル、カリックスアレンを始めとする種々の包接化合物は、イオン、分子認識機能を持つために抽出試薬としての応用を広く検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水銀イオン選択的抽出試薬として有用な新規化合物を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、文献未記載の新規化合物であるアルキルモノアザチアクラウンエーテル及びアルキルモノアザオリゴチオエチレングリコールが、水銀イオンに対して選択性を示す抽出試薬であることを見いだした。
【0005】
すなわち、本発明は、以下の化合物及び抽出試薬を提供するものである。
項1.一般式[1]
【0006】
【化3】
Figure 0003567247
【0007】
〔式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、nは0〜5の整数である〕で表されるアルキルモノアザチアクラウンエーテル。
項2.一般式[2]
【0008】
【化4】
Figure 0003567247
【0009】
〔式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、Rは水素、炭素数1〜5のアルキル基を示し、nは0〜5の整数である〕
で表されるアルキルモノアザオリゴチオエチレングリコール。
項3.項1に記載のアルキルモノアザチアクラウンエーテル及び/又は項2に記載のアルキルモノアザオリゴチオエチレングリコールを含有する水銀イオン抽出試薬。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のアルキルモノアザチアクラウンエーテル及びアルキルモノアザオリゴチオエチレングリコールは、文献未記載の新規化合物であり、水銀イオンを選択的に抽出するため、水銀イオン抽出試薬として有用なものである。
【0011】
上記一般式[1]及び[2]において、Rは、直鎖状または分枝状の炭素数1〜20のアルキル基を示す。好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル等を例示できる。さらに好ましくは炭素数6〜15のアルキル基である。
【0012】
上記一般式[2]において、Rは、水素、炭素数1〜5のアルキル基を示し、好ましくは水素、炭素数1〜3のアルキル基を示す。
【0013】
また、一般式[1]及び[2]において、nは0〜5の整数であり、好ましくは0〜3の整数である。
【0014】
本発明の水銀イオン抽出試薬は、従来の水銀イオン抽出試薬の代替品として使用できる。例えば、環境水や排水中の水銀イオンの定量を簡易に測定できる。また、溶液中に含まれる水銀イオンのセンシング物質として使用することができる。
【0015】
また、本発明の水銀イオン抽出試薬により水銀イオン抽出処理される被処理液は、酸性又は中性であることが好ましい。被処理液がアルカリ性の場合には、被処理液のpHを適当なpH調整剤で酸性又は中性に調整してから水銀抽出することが望ましい。
【0016】
以下、本発明化合物の製造法を説明する。
【0017】
下記反応式に従ってビス(クロロエチル)アミンとオリゴチオエチレングリコール誘導体を反応させてモノアザチアクラウンエーテルを合成する。
【0018】
【化5】
Figure 0003567247
【0019】
〔式中、nは、0〜5の整数を示す〕
この反応に使用される溶媒としては、特に制限されないが、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、エタノール、ベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒が例示され、好ましくは脱水THFが例示される。
【0020】
また、この反応におけるビス(クロロエチル)アミン及びオリゴチオエチレングリコール誘導体の使用量は、ビス(クロロエチル)アミン1モルに対してオリゴチオエチレングリコール誘導体を0.5〜2モル程度、好ましくは両者を等モル程度反応させればよい。この反応は、窒素雰囲気下で行うことが望ましい。
【0021】
また、この反応の反応温度は、25〜100℃程度、好ましくは70〜80℃程度とすればよい。反応時間は1〜3日程度とすればよい。
【0022】
この反応は、触媒として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩などを任意に用いて行うことができる。好ましくはアルカリ金属水酸化物、さらに好ましくは水酸化リチウムが使用される。
【0023】
また、下記反応式に従ってビス(クロロエチル)アミンとオリゴチオエチレングリコール誘導体を反応させてモノアザオリゴチオエチレングリコールを合成する。
【0024】
【化6】
Figure 0003567247
【0025】
〔式中、Rは水素、炭素数1〜5のアルキル基を示し、nは、0〜5の整数を示す〕
この反応に使用される溶媒としては、特に制限されないが、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒が例示され、好ましくはエタノールが例示される。
【0026】
また、この反応におけるビス(クロロエチル)アミン及びオリゴチオエチレングリコール誘導体の使用量は、ビス(クロロエチル)アミン1モルに対してオリゴチオエチレングリコール誘導体を1〜5モル程度、好ましくは3モル程度とすればよい。この反応は、窒素雰囲気下で行うことが望ましい。
【0027】
また、この反応の反応温度は、25〜100℃程度、好ましくは70〜80℃程度とすればよい。反応時間は1〜12時間程度とすればよい。この反応は、触媒としてナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩等の塩基性化合物などを任意に用いて行うことができる。好ましくはアルカリ金属水酸化物、さらに好ましくはナトリウムエトキシドが使用される。
【0028】
上記のようにして、得られたモノアザチアクラウンエーテル及びモノアザオリゴチオエチレングリコールを、下記反応式のように、ハロゲン化アルキルと反応させることによって本発明の一般式[1]で表されるアルキルモノアザチアクラウンエーテル及び一般式[2]アルキルモノアザオリゴチオエチレングリコールを得ることができる。
【0029】
【化7】
Figure 0003567247
【0030】
〔式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは0〜5の整数である。〕
【0031】
【化8】
Figure 0003567247
【0032】
〔式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、Rは水素、炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは0〜5の整数である。〕
この反応に使用されるRXで示されるハロゲン化アルキルのXとしては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子が例示される。
【0033】
この反応に使用される溶媒としては、特に制限されないが、アセトニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン等の有機溶媒が例示され、好ましくはアセトニトリルが例示される。
【0034】
この反応は、触媒としてトリエチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の塩基性化合物、好ましくは炭酸ナトリウムを任意に用いて行うことができる。
【0035】
また、この反応におけるモノアザチアクラウンエーテル及びモノアザオリゴチオエチレングリコールに対するハロゲン化アルキルの使用量は、前者1モルに対してハロゲン化アルキルを1モル程度以上、好ましくは1.5〜2モル程度とすればよい。触媒の使用量は、モノアザチアクラウンエーテル及びモノアザオリゴチオエチレングリコール1モルに対して1モル程度以上、好ましくは2〜3モル程度とすればよい。
【0036】
また、この反応の反応温度は、0〜120℃程度、好ましくは80℃程度とすればよい。反応時間は半日から3日程度とすればよい。
【0037】
このようにして得られる本発明化合物は、慣用されている分離精製手段に従って反応混合物から容易に単離、精製できる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
ドデシルモノアザチア−12−クラウン−4(RT12C4)の合成
(1)モノアザチア−12−クラウン−4の合成
【0040】
【化9】
Figure 0003567247
【0041】
三つ口フラスコ(300ml)に窒素雰囲気下、脱水THF150ml、LiOH288mg(12mmol)、ビス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩357mg(2mmol)、ジチオエチレングリコール308mg(2mmol)を入れ、24〜72時間加熱還流した。反応液を放冷した後、クロロホルム200mlと水200mlを加えてクロロホルム相を分離した。さらに水相をクロロホルム200mlを用いて抽出した。クロロホルムを留去し、そのまま次の反応に用いた。
(2)ドデシルモノアザチア−12−クラウン−4の合成
【0042】
【化10】
Figure 0003567247
【0043】
三つフラスコ(100ml)に窒素雰囲気下、粗モノアザチア−12−クラウン−4を446mg(2mmol)、NaCO530mg(5mmol)、ブロモドデカン747mg(3mmol)、アセトニトリル50mlを入れ48時間加熱還流した。放冷後、反応液にクロロホルム100mlと5wt%NaOH水溶液100mlを加え、クロロホルム相を分離した。クロロホルムを留去し、目的物をGPCを用いて白色固体として単離した。収率6%。
2041NS、M=391
H−NMR(CDCl);δ=0.88(3H、t、CH)、1.2〜1.3(18H、m、(CH)、1.48(2H、m、NCH CH CH)、2.4〜2.5(2H、m、NCH CHCH)、2.6〜2.9(16H、m、NCH、SCH)。
【0044】
実施例2
ドデシルモノアザチア−15−クラウン−5(RT15C5)の合成
(1)モノアザチア−15−クラウン−5の合成
【0045】
【化11】
Figure 0003567247
【0046】
三つ口フラスコ(300ml)に窒素雰囲気下、脱水THF150ml、LiOH288mg(12mmol)、ビス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩357mg(2mmol)、トリチオエチレングリコール428mg(2mmol)を入れ、24〜72時間加熱還流した。反応液を放冷した後、クロロホルム200mlと水200mlを加えてクロロホルム相を分離した。さらに水相をクロロホルム200mlを用いて抽出した。クロロホルムを留去し、そのまま次の反応に用いた。
(2)ドデシルモノアザチア−15−クラウン−5の合成
【0047】
【化12】
Figure 0003567247
【0048】
三つ口フラスコ(100ml)に窒素雰囲気下、粗モノアザチア−15−クラウン−5を506mg(2mmol)、NaCO530mg(5mmol)、ブロモドデカン747mg(3mmol)、アセトニトリル50mlを入れ48時間加熱還流した。放冷後、反応液にクロロホルム100mlと5wt%NaOH水溶液100mlを加え、クロロホルム相を分離した。クロロホルムを留去し、目的物をGPCを用いて白色固体として単離した。収率25%。
2245NS、M=451
H−NMR(CDCl);δ=0.88(3H、t、CH)、1.2〜1.3(18H、m、(CH)、1.45(2H、m、NCH CH CH)、2.50(2H、t、NCH CHCH)、2.6〜2.9(20H、m、NCH、SCH)。
【0049】
実施例3
ドデシルモノアザジチオエチレングリコールジエチルエーテル(RTDE)の合成
(1)モノアザジチオエチレングリコールジエチルエーテルの合成
【0050】
【化13】
Figure 0003567247
【0051】
三つ口フラスコ(500ml)に窒素雰囲気下、エタノール200mlを入れ、Na4.60g(200mmol)を溶かした後、エタンチオール7.44g(120mmol)を加え、加熱還流した。ビス(クロロエチル)アミン塩酸塩7.14g(40mmol)をエタノール100mlに溶かした溶液を窒素雰囲気下にて滴下し、さらに2時間加熱還流した。放冷後、反応液にクロロホルム100mlと5wt%NaOH水溶液500mlを加え、クロロホルム相を分離し、水相をさらにクロロホルム100mlで抽出した。クロロホルムを留去し、減圧蒸留により目的物を単離した。
(2)ドデシルモノアザジチオエチレングリコールジエチルエーテルの合成
【0052】
【化14】
Figure 0003567247
【0053】
三つ口フラスコ(100ml)に窒素雰囲気下、モノアザジチオエチレングリコールジエチルエーテル386mg(2mmol)、NaCO530mg(5mmol)、ブロモドデカン747mg(3mmol)、アセトニトリル50mlを入れ48時間加熱還流した。放冷後、反応液にクロロホルム100mlと5wt%NaOH水溶液100mlを加え、クロロホルム相を分離した。クロロホルムを留去し、目的物をGPCを用いて透明液体として単離した。収率56%。
2043NS、M=361
H−NMR(CDCl);δ=0.88(3H、t、CH)、1.2〜1.3(24H、m、(CH、SCH CH )、1.54(2H、m、NCH CH CH)、2.58(4H、q、SCH CH)、2.6〜2.9(10H、m、NCH、SCH)。
【0054】
実施例4
ドデシルモノアザテトラチオエチレングリコールジエチルエーテル(RTTE)の合成
(1)モノアザテトラチオエチレングリコールジエチルエーテルの合成
【0055】
【化15】
Figure 0003567247
【0056】
三つ口フラスコ(500ml)に窒素雰囲気下、エタノール250mlを入れ、Na5.75g(250mmol)を溶かした後、モノエチルチオエチレングリコール18.30g(150mmol)を加え、加熱還流した。ビス(クロロエチル)アミン塩酸塩8.925g(50mmol)をエタノール150mlに溶かした溶液を窒素雰囲気下にて滴下し、さらに4時間加熱還流した。放冷後エタノールを留去し、クロロホルム100mlと5wt%NaOH水溶液500mlを加え、クロロホルム相を分離し、水相をさらにクロロホルム100mlで抽出した。クロロホルムを留去し、減圧蒸留(100℃)により低沸点成分を留去し、そのまま次の反応に用いた。
(2)ドデシルモノアザテトラチオエチレングリコールジエチルエーテルの合成
【0057】
【化16】
Figure 0003567247
【0058】
三つ口フラスコ(100ml)に窒素雰囲気下、粗モノアザテトラチオエチレングリコールジエチルエーテル626mg(2mmol)、NaCO530mg(5mmol)、ヨードドデカン888mg(3mmol)、アセトニトリル50mlを入れ18時間加熱還流した。放冷後、反応液にクロロホルム100mlと5wt%NaOH水溶液100mlを加え、クロロホルム相を分離した。クロロホルムを留去し、目的物をGPCを用いて透明液体として単離した。収率12%。
2451NS、M=481
H−NMR(CDCl);δ=0.88(3H、t、CH)、1.2〜1.3(24H、m、(CH、SCH CH )、1.43(2H、m、NCH CH CH)、2.58(4H、q、SCH CH)、2.4〜2.8(18H、m、NCH、SCH)。
【0059】
実施例5
錯形成測定
上記のようにして合成したアルキルモノアザチアクラウンエーテル及びアルキルモノアザオリゴチオエチレングリコールの錯形成能を、イオンスプレー式質量分析計を用いて検討した。アルキルモノアザチアクラウンエーテルまたはアルキルモノアザオリゴチオエチレングリコール、硝酸銀(一価)、硝酸タリウム(一価)、硝酸水銀(二価)を5×10−5モルずつ含むアセトニトリル溶液を調製し、イオンスプレー式質量分析計を用いて相対的錯形成能を測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0003567247
【0061】
【発明の効果】
表1に示されるように本発明のアルキルモノアザチアクラウンエーテル、アルキルモノアザオリゴチオエチレングリコールが水銀イオンと錯形成する一方で銀イオンとは多少錯形成するがタリウムイオンとは全く錯形成しないという高い水銀イオン選択性を有することが明らかになり、水銀イオン抽出試薬として有用であることが示された。

Claims (2)

  1. 一般式[1]
    Figure 0003567247
    〔式中、R1は炭素数1〜20のアルキル基を示し、nは1又は2である〕
    で表されるアルキルモノアザチアクラウンエーテル。
  2. 請求項1に記載のアルキルモノアザチアクラウンエーテルを含有する水銀イオン抽出試薬。
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