JP3567174B2 - 新規白血病細胞増殖阻害剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メチルスルフィニルアルキルイソチオシアナート、特に十字花科植物由来のメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを有効成分とした、正常細胞に対し低毒性の新規なアポトーシス誘導性ヒト白血病細胞増殖阻害剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
白血病は、骨髄の白血球細胞が自律増殖する疾患、いわゆる血液のがんであって、貧血、白血球増多症、血小板減少症などを起こし、しばしば肝、脾、リンパ節などの他の臓器に二次的浸潤病巣(転移)又は二次的造血病巣をつくることが知られている。
【0003】
このような白血病の治療薬としては、これまで種々の合成物質、抗生物質、天然由来物質、あるいはインターフェロン、インターロイキン、TNF(腫瘍壊死因子)、CSF(コロニー形成刺激因子)抑制物質などのバイオテクノロジー製品が開発されている。これらは、白血病細胞に作用して、その増殖を阻害したり、壊死すなわちネクローシスを起こさせて、疾病を治療するものである。しかしながら、上記ネクローシスによる細胞死は、往々にして病態細胞のみでなく、周囲の正常細胞にも及び新たな疾患を惹起するという重大な欠陥がある。
したがって、周囲の正常細胞に影響を与えずに、病態細胞のみに作用し、その増殖を阻害又は壊死させる治療薬が望ましい。
【0004】
最近、このような要求を満たす治療薬として、アポトーシス誘導性の白血病細胞増殖阻害剤が見出され、これまで、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)の果肉から抽出されたレクチンタンパク質、トウアズキ(Abrus precatorius)の種子から分離されたレクチンタンパク質、ヒノキ科植物から抽出されるヒノキチオールなどが提案されている。
ここで、アポトーシスとは、修復することが困難な障害をもたらされた細胞がそのまま存続することが不利である場合、その細胞が一連のプログラムに沿って積極的に自己消化する生命現象のことであり、アポトーシス誘導性の白血病細胞増殖阻害剤を用いれば、血液中の白血病細胞が選択的に自己消化するため、正常細胞に対する影響が少ない状態で白血病治療を行うことができる。
【0005】
ところで、十字花科植物の組織を摩砕するとその中に含まれているグルコシノレートから刺激性の強い香味成分として、メチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートが生成する。そして、この中のいくつかについては、実験的にニトロソアミンにより誘導されるラットの食道ガン、前胃ガンや7,12‐ジメチルベンズ[a]アントラセン又はベンゾ[a]ピレンにより誘導されるヒト胃ガン、乳ガン、肺ガンなどを抑制する作用を有することが知られているが、白血病細胞に対してどのような作用を有するかは知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、容易に入手可能な原料から製造しうる、正常細胞に対し低毒性の新規なアポトーシス誘導性ヒト白血病細胞増殖阻害剤を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、白血病細胞増殖阻害作用を有する物質について種々研究を重ねた結果、十字花科植物の組織中から抽出されるメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートが、白血病細胞に対し、優れたアポトーシス誘導性の増殖阻害作用を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式
【化2】
(式中のnは3〜6の整数である)
で表わされるメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを有効成分としてなる、正常細胞に対し低毒性のアポトーシス誘導性ヒト白血病細胞増殖阻害剤を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において有効成分として用いる前記一般式(I)のメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートは、合成品を用いてもよいが、天然資源の有効利用及びコスト面から十字花科植物、例えば沢わさび(Eutrema wasabi Maxim.)やブロッコリー(Brassica oleracea italica)の組織から抽出したものを用いるのが好ましい。これらの植物組織からメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを抽出するには、植物組織を摩砕し、エチルアルコールを加えて静置してエチルアルコール溶解分を除去したのち、残留分を乾燥し、水による抽出処理を行い、次にこの抽出液を必要に応じ加熱して酵素失活させ、遠心分離により沈殿物を除去し、上清液より限界濾過により分子量5,000以下の画分を捕集し、凍結乾燥する。
【0010】
次いで、このようにして得た乾燥物を蒸留水に溶かし、常法に従い、ゲル濾過し、必要に応じ高速液体クロマトグラフィーで活性成分を分画し、凍結乾燥する。このようにしてブロッコリーからは4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートを主体とするメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートが、また沢わさびからは、6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートを主体とするメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを得ることができる。
【0011】
また、メチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートは、公知方法(例えば「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」,第89巻,第2399ページ参照)により、一般式
CH3S−(CH2)n−N=C=S (II)
(式中のnは前記と同じ意味をもつ)
を酸化剤、例えば硝酸、過酸化水素などで処理することにより合成することができる。
【0012】
このようにして得られたメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートがアポトーシス誘導による白血病細胞増殖阻害作用を示すことは、例えばこのメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを蛍光標識したのち、蛍光標識の株化細胞との結合の形態及び細胞質内における挙動を共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡により追跡し、かつアポトーシスに特徴的な細胞の形態変化を追跡することにより、確認することができる。また、顕微鏡観察では捉えることができない初期段階のアポトーシス発現は、白血病細胞膜構成成分の変化をフローサイトメトリー法で定量することにより、検出することができる。
【0013】
本発明の白血病細胞増殖阻害剤は、非経口的に投与される。その投与量は、白血病の程度により増減されるが、通常1日当り0.01〜10mg/kgの範囲内で選ばれる。このものは、アポトーシス誘導による白血病細胞増殖阻害作用を示すため、他の細胞増殖阻害剤よりも少ない量の投与で十分な効果が得られる。このものは、0.1〜10%濃度の水性溶液として製剤化されるが、所望に応じ溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、安定剤、保存剤、無痛化剤など注射液に慣用されている添加剤を併用することもできる。
【0014】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
実施例1
急性リンパ性白血病由来のT細胞系ジャーカット(Jurkat)をRPM1−1640培地(10%牛胎仔血清、1%グルタミン及び抗生物質としてストレプトマイシン及びペニシリンを含む)に接種し、5%CO2気相下、37℃で培養し、株化細胞を調製した。
上記株化細胞を2.22×105個/mlの培養液とし、その90μlを96穴マイクロウェルプレートに播種後、4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナート又は6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの15.6μg/ml溶液10μlを添加し、20時間後に細胞を回収してDNAを抽出した。次にこのDNAを1.5重量%アガロースゲルを用いて電気泳動後、エチジウムブロミドで染色し、紫外線を照射してその断片化を観察した。その結果を図1に示す。
図中の1はラダーマーカー、2はコントロール、3はキャスパーゼインヒビター(100μM)を添加したコントロール、4は4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナート、5はキャスパーゼインヒビター(100μM)を添加した4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナート、6は6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナート、7はキャスパーゼインヒビター(100μM)を添加した6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートをそれぞれ示す。なお、キャスパーゼインヒビターとは、カルボベンゾキシ‐Asp‐CH2‐ジクロロベンゾイルオキシメタンのことである。
【0016】
実施例2
実施例1と同様にして得た株化細胞2.22×105個/mlを含む培養液90μlを同じ条件で24時間培養後、濃度が1〜50μg/mlの範囲の所定の値になるように4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートのリン酸緩衝液に溶かして、各10μlずつを添加したのち、5%CO2気相下、37℃でさらに20時間培養した。
各濃度で培養した培養液100μlに含まれる細胞のミトコンドリア脱水素酵素の活性をテトラゾリウム塩を用いた毒性試験法に従って測定し、その値を指標にして細胞生存率を求めた。
このようにして得た4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を図2にグラフとして示す。
なお、4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートとしては、ブロッコリーから抽出し、精製したものを用いた。
【0017】
次に、急性リンパ性白血病由来のジャーカット(Jurkat)の代わりに、急性リンパ性白血病由来のT細胞系のモルト−4(MOLT−4)、急性リンパ性白血病由来のB細胞系のナルム−6(NALM−6)及び同じB細胞系のバルム−1(BALM−1)をそれぞれ用いて同様の操作を行った。4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナート濃度と細胞生存率との関係を図2にグラフとして示す。
【0018】
実施例3
実施例2における4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの代わりに、沢わさびから抽出した6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートを用い、実施例1と同様にしてジャーカット(Jurkat)、モルト−4(MOLT−4)、ナルム−6(NALM−6)及びバルム−1(BALM−1)に対する6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率の関係を調べ、その結果を図3にグラフとして示す。
【0019】
参考例1
実施例2におけるジャーカット細胞の代わりに、3人の健常人由来の正常なリンパ球細胞ノーマル−O(normal−O)、ノーマル−A(normal−A)及びノーマル−B(normal−B)を用いて実施例2と同様にして4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの細胞生存率の濃度依存性を調べ、その結果を図4にグラフとして示す。なお、図4には比較のためにジャーカット(Jurkat)についてのグラフも示した。
【0020】
参考例2
実施例3におけるジャーカット(Jurkat)の代わりに、3人の健常人由来の正常なリンパ球細胞ノーマル−O(normal−O)、ノーマル−A(normal−A)及びノーマル−B(normal−B)を用いて、実施例3と同様にして6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの細胞生存率の濃度依存性を調べ、その結果を図5にグラフとして示す。なお、図5には比較のためにジャーカット(Jurkat)についてのグラフも示した。
【0021】
以上の図2、図3と図4、図5とを対比すれば分かるように、本発明の白血病細胞増殖阻害剤は、正常なリンパ球細胞に対しては白血病細胞に対するよりも細胞毒性の効果が著しく低いことから、白血病の治療薬として好適である。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、白血病細胞に対しては強い毒性効果を示すが、正常細胞に対しては低い毒性効果を示す白血病の治療に好適に用いうる白血病細胞増殖阻害剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートと6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートで処理したジャーカット細胞からのDNA断片化の状態を示す写真。
【図2】種々の白血病細胞に関する、4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を示すグラフ。
【図3】種々の白血病細胞に関する、6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を示すグラフ。
【図4】3人の健常人由来の正常なリンパ球細胞及びジャーカット細胞に関する、4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を示すグラフ。
【図5】3人の健常人由来の正常なリンパ球細胞及びジャーカット細胞に関する、6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を示すグラフ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、メチルスルフィニルアルキルイソチオシアナート、特に十字花科植物由来のメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを有効成分とした、正常細胞に対し低毒性の新規なアポトーシス誘導性ヒト白血病細胞増殖阻害剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
白血病は、骨髄の白血球細胞が自律増殖する疾患、いわゆる血液のがんであって、貧血、白血球増多症、血小板減少症などを起こし、しばしば肝、脾、リンパ節などの他の臓器に二次的浸潤病巣(転移)又は二次的造血病巣をつくることが知られている。
【0003】
このような白血病の治療薬としては、これまで種々の合成物質、抗生物質、天然由来物質、あるいはインターフェロン、インターロイキン、TNF(腫瘍壊死因子)、CSF(コロニー形成刺激因子)抑制物質などのバイオテクノロジー製品が開発されている。これらは、白血病細胞に作用して、その増殖を阻害したり、壊死すなわちネクローシスを起こさせて、疾病を治療するものである。しかしながら、上記ネクローシスによる細胞死は、往々にして病態細胞のみでなく、周囲の正常細胞にも及び新たな疾患を惹起するという重大な欠陥がある。
したがって、周囲の正常細胞に影響を与えずに、病態細胞のみに作用し、その増殖を阻害又は壊死させる治療薬が望ましい。
【0004】
最近、このような要求を満たす治療薬として、アポトーシス誘導性の白血病細胞増殖阻害剤が見出され、これまで、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)の果肉から抽出されたレクチンタンパク質、トウアズキ(Abrus precatorius)の種子から分離されたレクチンタンパク質、ヒノキ科植物から抽出されるヒノキチオールなどが提案されている。
ここで、アポトーシスとは、修復することが困難な障害をもたらされた細胞がそのまま存続することが不利である場合、その細胞が一連のプログラムに沿って積極的に自己消化する生命現象のことであり、アポトーシス誘導性の白血病細胞増殖阻害剤を用いれば、血液中の白血病細胞が選択的に自己消化するため、正常細胞に対する影響が少ない状態で白血病治療を行うことができる。
【0005】
ところで、十字花科植物の組織を摩砕するとその中に含まれているグルコシノレートから刺激性の強い香味成分として、メチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートが生成する。そして、この中のいくつかについては、実験的にニトロソアミンにより誘導されるラットの食道ガン、前胃ガンや7,12‐ジメチルベンズ[a]アントラセン又はベンゾ[a]ピレンにより誘導されるヒト胃ガン、乳ガン、肺ガンなどを抑制する作用を有することが知られているが、白血病細胞に対してどのような作用を有するかは知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、容易に入手可能な原料から製造しうる、正常細胞に対し低毒性の新規なアポトーシス誘導性ヒト白血病細胞増殖阻害剤を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、白血病細胞増殖阻害作用を有する物質について種々研究を重ねた結果、十字花科植物の組織中から抽出されるメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートが、白血病細胞に対し、優れたアポトーシス誘導性の増殖阻害作用を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式
【化2】
(式中のnは3〜6の整数である)
で表わされるメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを有効成分としてなる、正常細胞に対し低毒性のアポトーシス誘導性ヒト白血病細胞増殖阻害剤を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において有効成分として用いる前記一般式(I)のメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートは、合成品を用いてもよいが、天然資源の有効利用及びコスト面から十字花科植物、例えば沢わさび(Eutrema wasabi Maxim.)やブロッコリー(Brassica oleracea italica)の組織から抽出したものを用いるのが好ましい。これらの植物組織からメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを抽出するには、植物組織を摩砕し、エチルアルコールを加えて静置してエチルアルコール溶解分を除去したのち、残留分を乾燥し、水による抽出処理を行い、次にこの抽出液を必要に応じ加熱して酵素失活させ、遠心分離により沈殿物を除去し、上清液より限界濾過により分子量5,000以下の画分を捕集し、凍結乾燥する。
【0010】
次いで、このようにして得た乾燥物を蒸留水に溶かし、常法に従い、ゲル濾過し、必要に応じ高速液体クロマトグラフィーで活性成分を分画し、凍結乾燥する。このようにしてブロッコリーからは4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートを主体とするメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートが、また沢わさびからは、6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートを主体とするメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを得ることができる。
【0011】
また、メチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートは、公知方法(例えば「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」,第89巻,第2399ページ参照)により、一般式
CH3S−(CH2)n−N=C=S (II)
(式中のnは前記と同じ意味をもつ)
を酸化剤、例えば硝酸、過酸化水素などで処理することにより合成することができる。
【0012】
このようにして得られたメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートがアポトーシス誘導による白血病細胞増殖阻害作用を示すことは、例えばこのメチルスルフィニルアルキルイソチオシアナートを蛍光標識したのち、蛍光標識の株化細胞との結合の形態及び細胞質内における挙動を共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡により追跡し、かつアポトーシスに特徴的な細胞の形態変化を追跡することにより、確認することができる。また、顕微鏡観察では捉えることができない初期段階のアポトーシス発現は、白血病細胞膜構成成分の変化をフローサイトメトリー法で定量することにより、検出することができる。
【0013】
本発明の白血病細胞増殖阻害剤は、非経口的に投与される。その投与量は、白血病の程度により増減されるが、通常1日当り0.01〜10mg/kgの範囲内で選ばれる。このものは、アポトーシス誘導による白血病細胞増殖阻害作用を示すため、他の細胞増殖阻害剤よりも少ない量の投与で十分な効果が得られる。このものは、0.1〜10%濃度の水性溶液として製剤化されるが、所望に応じ溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、安定剤、保存剤、無痛化剤など注射液に慣用されている添加剤を併用することもできる。
【0014】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
実施例1
急性リンパ性白血病由来のT細胞系ジャーカット(Jurkat)をRPM1−1640培地(10%牛胎仔血清、1%グルタミン及び抗生物質としてストレプトマイシン及びペニシリンを含む)に接種し、5%CO2気相下、37℃で培養し、株化細胞を調製した。
上記株化細胞を2.22×105個/mlの培養液とし、その90μlを96穴マイクロウェルプレートに播種後、4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナート又は6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの15.6μg/ml溶液10μlを添加し、20時間後に細胞を回収してDNAを抽出した。次にこのDNAを1.5重量%アガロースゲルを用いて電気泳動後、エチジウムブロミドで染色し、紫外線を照射してその断片化を観察した。その結果を図1に示す。
図中の1はラダーマーカー、2はコントロール、3はキャスパーゼインヒビター(100μM)を添加したコントロール、4は4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナート、5はキャスパーゼインヒビター(100μM)を添加した4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナート、6は6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナート、7はキャスパーゼインヒビター(100μM)を添加した6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートをそれぞれ示す。なお、キャスパーゼインヒビターとは、カルボベンゾキシ‐Asp‐CH2‐ジクロロベンゾイルオキシメタンのことである。
【0016】
実施例2
実施例1と同様にして得た株化細胞2.22×105個/mlを含む培養液90μlを同じ条件で24時間培養後、濃度が1〜50μg/mlの範囲の所定の値になるように4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートのリン酸緩衝液に溶かして、各10μlずつを添加したのち、5%CO2気相下、37℃でさらに20時間培養した。
各濃度で培養した培養液100μlに含まれる細胞のミトコンドリア脱水素酵素の活性をテトラゾリウム塩を用いた毒性試験法に従って測定し、その値を指標にして細胞生存率を求めた。
このようにして得た4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を図2にグラフとして示す。
なお、4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートとしては、ブロッコリーから抽出し、精製したものを用いた。
【0017】
次に、急性リンパ性白血病由来のジャーカット(Jurkat)の代わりに、急性リンパ性白血病由来のT細胞系のモルト−4(MOLT−4)、急性リンパ性白血病由来のB細胞系のナルム−6(NALM−6)及び同じB細胞系のバルム−1(BALM−1)をそれぞれ用いて同様の操作を行った。4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナート濃度と細胞生存率との関係を図2にグラフとして示す。
【0018】
実施例3
実施例2における4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの代わりに、沢わさびから抽出した6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートを用い、実施例1と同様にしてジャーカット(Jurkat)、モルト−4(MOLT−4)、ナルム−6(NALM−6)及びバルム−1(BALM−1)に対する6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率の関係を調べ、その結果を図3にグラフとして示す。
【0019】
参考例1
実施例2におけるジャーカット細胞の代わりに、3人の健常人由来の正常なリンパ球細胞ノーマル−O(normal−O)、ノーマル−A(normal−A)及びノーマル−B(normal−B)を用いて実施例2と同様にして4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの細胞生存率の濃度依存性を調べ、その結果を図4にグラフとして示す。なお、図4には比較のためにジャーカット(Jurkat)についてのグラフも示した。
【0020】
参考例2
実施例3におけるジャーカット(Jurkat)の代わりに、3人の健常人由来の正常なリンパ球細胞ノーマル−O(normal−O)、ノーマル−A(normal−A)及びノーマル−B(normal−B)を用いて、実施例3と同様にして6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの細胞生存率の濃度依存性を調べ、その結果を図5にグラフとして示す。なお、図5には比較のためにジャーカット(Jurkat)についてのグラフも示した。
【0021】
以上の図2、図3と図4、図5とを対比すれば分かるように、本発明の白血病細胞増殖阻害剤は、正常なリンパ球細胞に対しては白血病細胞に対するよりも細胞毒性の効果が著しく低いことから、白血病の治療薬として好適である。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、白血病細胞に対しては強い毒性効果を示すが、正常細胞に対しては低い毒性効果を示す白血病の治療に好適に用いうる白血病細胞増殖阻害剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートと6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートで処理したジャーカット細胞からのDNA断片化の状態を示す写真。
【図2】種々の白血病細胞に関する、4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を示すグラフ。
【図3】種々の白血病細胞に関する、6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を示すグラフ。
【図4】3人の健常人由来の正常なリンパ球細胞及びジャーカット細胞に関する、4‐メチルスルフィニルブチルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を示すグラフ。
【図5】3人の健常人由来の正常なリンパ球細胞及びジャーカット細胞に関する、6‐メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナートの濃度と細胞生存率との関係を示すグラフ。
Claims (3)
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35308499A JP3567174B2 (ja) | 1999-12-13 | 1999-12-13 | 新規白血病細胞増殖阻害剤 |
US09/733,947 US6465512B2 (en) | 1999-12-13 | 2000-12-12 | Leukemic cell growth inhibiting method |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35308499A JP3567174B2 (ja) | 1999-12-13 | 1999-12-13 | 新規白血病細胞増殖阻害剤 |
Publications (2)
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