JP3565811B2 - 操舵翼の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、航空機の操舵翼を揺動させてその揺動角を制御する操舵翼の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、航空機の操舵翼11(昇降舵、方向舵等)は、例えば、図5、6に示すように航空機の機体12(主翼、尾翼等)にピン13を介して揺動可能に支持されているが、このような操舵翼11は、航空機が飛行している際、パイロットからの指示に基づき必要角度だけ揺動される。
【0003】
従来、このような操舵翼11の揺動角を制御する制御装置としては、信頼性が高く、しかも、単位容積当たりの出力が大きな直線駆動式の油圧サーボシリンダ14が用いられており、このようなシリンダ14を複数、ここでは2本並列に設置するとともに、これらシリンダ14のヘッド側端を機体12にピン15を介して回動可能に連結し、一方、そのピストンロッド16の先端を操舵翼11の揺動中心近傍から突出する固定リンク17の先端にピン18を介して回動可能に連結している。
【0004】
そして、前記シリンダ14のピストンロッド16の直線運動を固定リンク17を用いて回動運動に変換し、これにより、操舵翼11をピン13(揺動中心)を中心に揺動させるようにしている。なお、19は操舵翼11、機体12から突出している固定リンク17、シリンダ14をカバーするフェアリングであり、該フェアリング19は機体12側に固定された機体側フェアリング19aと、操舵翼11側に固定された翼側フェアリング19bとから構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の操舵翼の制御装置にあっては、操舵翼11、機体12から突出する部位(固定リンク17、シリンダ14)が存在するため、これらをカバーするフェアリング19が必要となるが、このようなフェアリング19は飛行時に大きな空気抵抗となり、特に、近年、航空機の高速化に伴い前記空気抵抗が飛躍的に大きくなり、これにより、燃費効率が大きく低下してしまうという問題点がある。
【0006】
この発明は、飛行時における空気抵抗を小さくすることで燃費効率を向上させることができる操舵翼の制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、航空機の操舵翼に揺動力を付与し、該操舵翼を揺動中心回りに揺動させることで操舵翼の揺動角を制御する操舵翼の制御装置であって、前記航空機の機体にその最終出力軸が操舵翼の揺動中心と同軸となるよう取付けられた揺動型アクチュエータを備え、前記操舵翼にその揺動中心近傍において凹みを設けるとともに、該凹みに前記揺動型アクチュエータを収納し、該揺動型アクチュエータの最終出力軸と操舵翼とを連結することにより達成することができる。
【0008】
この発明では、最終出力軸が操舵翼の揺動中心と同軸である揺動型アクチュエータを用いて操舵翼を揺動するようにしているので、従来のように直線運動を回動運動に変換するための変換機構(固定リンク等)が不要となり、この結果、この変換機構をカバーするフェアリングも不要となる。これにより、航空機の飛行時における空気抵抗が小さくなって燃費効率が向上するのである。また、この発明では、機体側における取付けスペースを小さくすることができ、航空機の軽量化、小型化を達成することができる。
【0009】
さらに、駆動モータと歯車減速機からなる揺動型アクチュエータを複数設けた場合には、いずれかの揺動型アクチュエータにおいて歯車減速機の歯車同士が固着すると、該故障した揺動型アクチュエータの最終出力軸は回転が拘束されるため、他の正常な揺動型アクチュエータによる操舵翼の揺動が阻害される。このため、請求項に記載のものではクラッチを設け、前述のように揺動型アクチュエータが故障したとき、該揺動型アクチュエータの最終出力軸をクラッチによって固定側から切り離し実質上フリー回転させるようにしている。これにより、操舵翼は他の正常な揺動型アクチュエータによって揺動することができ、継続して制御が可能となる。
【0010】
また、請求項に記載のように構成すれば、歯車同士の固着、即ち故障を容易に検出することができるとともに、前記故障が修復されたとき、そのまま操舵翼の制御を行うこともできる。
さらに、請求項に記載のように構成すれば、クラッチの連結位置、即ち、固定爪、回転爪の配置位置を回転中心から大きく離すことができるため、クラッチの結合力を大きくすることができる。
また、請求項に記載のように構成すれば、複数の揺動型アクチュエータの全てが故障したときにおける操舵翼のフラッタを防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、2、3において、21は航空機の機体、例えば主翼、尾翼であり、これら機体21の後端部には矩形の凹み22が形成され、これら凹み22内にはそれぞれ該凹み22より若干小型の操舵翼23、例えば昇降舵、方向舵が配置されている。
【0012】
24は前記操舵翼23に揺動力を付与することで該操舵翼23をその前端部に位置する揺動中心回りに揺動させ、これにより、該操舵翼23の揺動角を制御する制御装置であり、この制御装置24は前記操舵翼23の揺動中心に沿って互いに離れた複数、ここでは2個の揺動型アクチュエータ25を有し、これら揺動型アクチュエータ25は操舵翼23の揺動中心近傍(前端部)に形成された矩形の凹み26に収納されている。これにより、機体21側における取付けスペースを小さくすることができ、航空機の軽量化、小型化を達成することができる。
【0013】
また、前記揺動型アクチュエータ25は図示していない制御手段により作動が制御される電動モータ等の駆動モータ27と、該駆動モータ27に固定された歯車減速機28とから構成されている。ここで、これら歯車減速機28は複数の連結アーム29が形成されたケース30を有し、これらの連結アーム29は前方に向かって延びるとともに、その先端部はピン31を介して機体21に連結されている。
【0014】
32は駆動モータ27に近接するケース30の一側に収納された遊星歯車式の第1段減速機構であり、該第1段減速機構32の入力軸33の一端と前記駆動モータ27の出力軸34の他端とは直結されている。前記第1段減速機構32は入力軸33の他端に設けられた外歯車からなる太陽歯車35を有し、これらの太陽歯車35には周方向に等角度離れた複数の外歯車からなる遊星歯車36が噛み合っている。37は遊星歯車36に遊嵌された複数の軸部38を有するキャリアであり、該キャリア37は遊星歯車36と軸部38との間に配置された軸受39を介して遊星歯車36を回転可能に支持する。
【0015】
41はケース30の内周に軸受42を介して回転可能に支持された円筒状の内歯車であり、該内歯車41の一側部には前記遊星歯車36が噛み合っている。そして、この内歯車41が後述するクラッチにより固定側、ここではケース30に固定されているとき、駆動モータ27の出力軸34から入力軸33に回転が伝達されると、遊星歯車36が内歯車41に噛み合いながら太陽歯車35の周囲を低速で公転するが、この低速公転が回転としてキャリア37に出力される。前述した入力軸33、太陽歯車35、遊星歯車36、キャリア37、内歯車41は全体として、入力軸33に入力された回転を減速してキャリア37に出力する前述した第1段減速機構32を構成する。
【0016】
44は駆動モータ27から離隔するケース30の他側に収納された遊星歯車式の第2段減速機構であり、該第2段減速機構44の入力軸45の一端と前記キャリア37とは直結されている。前記第2段減速機構44は入力軸45の他側に設けられた外歯車からなる太陽歯車46を有し、これらの太陽歯車46には周方向に等角度離れた複数の外歯車からなる遊星歯車47が噛み合っている。そして、これら遊星歯車47は前記遊星歯車36と同様に内歯車41の他側に噛み合っている。48は遊星歯車47に遊嵌された複数の軸部49を有する最終出力軸としてのキャリアであり、該キャリア48は遊星歯車47と軸部49との間に配置された軸受50を介して遊星歯車47を回転可能に支持する。
【0017】
前述した内歯車41、入力軸45、太陽歯車46、遊星歯車47、キャリア48は全体として、前記第1段減速機構32と同様に作動することで、入力軸45に入力された回転を減速してキャリア48に出力する前述した第2段減速機構44を構成する。また、前述したケース30と、第1、第2段減速機構32、44に共通する内歯車41と、該内歯車41内に収納され、該内歯車41に直接、間接に噛み合う複数の歯車からなる歯車群51、即ち、太陽歯車35、遊星歯車36、太陽歯車46、遊星歯車47は全体として、駆動モータ27の回転を減速して最終出力軸であるキャリア48に出力する前記歯車減速機28を構成する。
【0018】
前記キャリア48には後方に向かって延びる複数の出力アーム53が形成され、これら出力アーム53の先端部はピン54を介して操舵翼23の前端部に連結されている。この結果、前記キャリア48が回転すると、操舵翼23は該キャリア48と共に揺動中心回りに揺動するが、この操舵翼23の揺動中心は前記キャリア48の回転軸と同軸である。
【0019】
このようにいずれの揺動型アクチュエータ25もそのキャリア48(最終出力軸)が操舵翼23の揺動中心と同軸となるよう機体21に取付けられるとともに、キャリア48と操舵翼23とは出力アーム53を介して互いに連結されている。これにより、従来のように直線運動を回動運動に変換するための変換機構(固定リンク等)が不要となり、この結果、この変換機構をカバーするフェアリングも不要となる。このようなことから航空機の飛行時における空気抵抗が小さくなり、燃費効率を向上させることができる。
【0020】
また、前述のように揺動型アクチュエータ25のケース、ここでは歯車減速機28のケース30を機体21に連結し、一方、揺動型アクチュエータ25のキャリア48(最終出力軸)を操舵翼23に連結して、機体21と操舵翼23との間に揺動型アクチュエータ25を介装するようにすれば、操舵翼23を機体21に揺動可能に支持するためのピンを省略することができ、これにより、構造を簡単とし軽量化を図ることもできる。
【0021】
ここで、前述のように駆動モータ27と歯車減速機28からなる揺動型アクチュエータ25を複数設けた場合には、いずれかの揺動型アクチュエータ25において歯車減速機28の歯車同士が固着(ジャミング)すると、該故障した揺動型アクチュエータ25のキャリア48(最終出力軸)は回転が拘束されるため、他の正常な揺動型アクチュエータ25による操舵翼23の揺動が阻害される。
【0022】
このような場合に対処するため、各揺動型アクチュエータ25にクラッチ56を設け、いずれかの揺動型アクチュエータ25に前述のような故障が発生したとき、該クラッチ56により故障した揺動型アクチュエータ25のキャリア48(最終出力軸)を固定側から切り離して実質上フリー回転させるようにし、これにより、操舵翼23を他の正常な揺動型アクチュエータ25によって揺動させ、継続した制御を可能としている。
【0023】
ここで、前記クラッチ56は各入力軸33の一側部に外嵌されたスライダ58を有し、これらのスライダ58は入力軸33に軸方向に移動可能に支持されるとともに、スライダ58と入力軸33との間に配置された軸受59により入力軸33に回転可能に支持されている。各スライダ58はその軸方向他端部に半径方向外側に向かって延びる支持円板60を有し、該支持円板60の半径方向外端には前記内歯車41の全歯に噛み合っている外歯61が形成されている。この結果、前記スライダ58は内歯車41に軸方向に移動可能に連結されていることになる。
【0024】
前記支持円板60の半径方向外端部でその一側面には周方向に等角度離れた複数の回転爪64が形成され、一方、回転爪64に対向するケース30の一側壁の内面には周方向に等角度離れた複数の固定爪65が形成されている。この結果、該スライダ58が軸方向一側に移動すると、回転爪64と固定爪65とが噛み合って、スライダ58、内歯車41の回転がケース30により規制される一方、スライダ58が軸方向他側に移動すると、回転爪64が固定爪65から離脱して、スライダ58、内歯車41のフリー回転が可能となる。
【0025】
前記スライダ58の軸方向一端部には円板状のアーマチュア68が設けられ、このアーマチュア68は前記入力軸33と出力軸34との連結部を囲むケース30の一端部内周に形成された環状溝69内に挿入されている。ここで、前記環状溝69の幅は前記アーマチュア68の肉厚より若干広く、この結果、アーマチュア68の両側面と環状溝69の両側面との間には若干の間隙が形成される。
【0026】
70は前記環状溝69内に収納されたリング状の永久磁石であり、この永久磁石70の両側の環状溝69内には非磁性体からなるリング体71、72が収納されている。ここで、これら永久磁石70、リング体71、72の内径はアーマチュア68の外径より若干大きく、また、アーマチュア68と永久磁石70とはほぼ軸方向に重なり合って配置されている。
【0027】
そして、前記スライダ58、アーマチュア68が軸方向一側に移動すると、アーマチュア68の一側側面と環状溝69の一側側面との間の間隔がアーマチュア68の他側側面と環状溝69の他側側面との間の間隔より小となるため、アーマチュア68には永久磁石70から軸方向一側に向かうより大きな磁気力が作用し、この結果、スライダ58、アーマチュア68は軸方向一側に移動した状態を維持する。
【0028】
逆に、スライダ58、アーマチュア68が軸方向他側に移動した場合には、アーマチュア68の他側側面と環状溝69の他側側面との間の間隔がアーマチュア68の一側側面と環状溝69の一側側面との間の間隔より小となるため、アーマチュア68には永久磁石70から軸方向他側に向かうより大きな磁気力が作用し、この結果、スライダ58、アーマチュア68は軸方向他側に移動した状態を維持する
【0029】
75はリング体72より一側のケース30内に収納された電磁コイルであり、この電磁コイル75に通電されると、磁束が発生してアーマチュア68に永久磁石70より大きな磁気力が付与される。このため、電磁コイル75への通電電流の方向を前記制御手段により制御すれば、スライダ58、アーマチュア68を軸方向一側あるいは軸方向他側に移動させることができ、このような移動後、電磁コイル75に対する通電を遮断すると、スライダ58、アーマチュア68は移動した側で停止する。
【0030】
前述したアーマチュア68、永久磁石70、電磁コイル75および磁路を構成する永久磁石70近傍のケース30は全体として、スライダ58を軸方向に移動させる移動機構77を構成する。また、前記スライダ58、回転爪64、移動機構77は全体として、各揺動型アクチュエータ25に設けられ、歯車減速機28の歯車同士が固着したとき、キャリア48(最終出力軸)を固定側から切り離して実質上フリー回転させる前記クラッチ56を構成する。
【0031】
このようにクラッチ56を、固定爪65に係脱可能な回転爪64を有するスライダ58と、移動機構77とから構成した場合には、クラッチ56の連結位置、即ち、回転爪64、固定爪65の配置位置を揺動型アクチュエータ25の回転中心から半径方向外側に大きく離すことができるため、クラッチ56の結合力を大きくすることができる。
【0032】
80は各歯車減速機28のケース30の他端に固定されたエンコーダ、レゾルバ、シンクロトランスミッター等の検出センサであり、これらの検出センサ80は前記キャリア48(最終出力軸)の回転位置、即ち、操舵翼23の揺動角を検出し、検出結果を前記制御手段に出力する。このように操舵翼23の揺動角を検出センサ80によって常時検出するようにすれば、駆動モータ27に対して通電が行われている(通常は、電流値をモニターし過大電流が継続して流れると故障と判断する等の処理が行われる)にも拘わらず、操舵翼23の揺動が停止したとき、歯車減速機28を構成するいずれの歯車同士が固着して揺動型アクチュエータ25に故障が発生したことを容易に検出することができる。また、前述のような固着が外れて揺動型アクチュエータ25が正常に復帰したときにも、復帰時点での操舵翼23の揺動角が検出されているため、そのまま操舵翼23の制御を行うことができる。
【0033】
次に、この発明の一実施形態の作用について説明する。
航空機の飛行中に操縦装置を操作すると、この操縦装置からの制御信号に基づいて制御手段は各揺動型アクチュエータ25の駆動モータ27に対する通電を制御し、出力軸34を所定方向に所定回数だけ回転させる。このとき、クラッチ56のスライダ58は軸方向一側に移動した状態を維持しているため、回転爪64、固定爪65同士は噛み合っており、スライダ58、内歯車41はケース30によりその回転が規制されている。
【0034】
この結果、前述した出力軸34の回転は、第1段減速機構32および第2段減速機構44によって次々と大幅に減速された後、最終出力軸であるキャリア48から出力アーム53に伝達される。これにより、操舵翼23に揺動力が付与され、該操舵翼23は最終出力軸と同軸である揺動中心回りに揺動して、その揺動角が制御される。このときのキャリア48の回転(操舵翼23の揺動)は検出センサ80により検出されるが、これらの検出結果は制御手段に出力され、駆動モータ27がフィードバック制御される。
【0035】
次に、いずれかの揺動型アクチュエータ25において、異物混入等の理由により歯車減速機28を構成する歯車同士、例えば太陽歯車35と遊星歯車36とが固着すると、該歯車減速機28を構成する歯車全体が一体化するが、これら歯車にはケース30により回転が規制された内歯車41も含まれているため、キャリア48は回転が強力に拘束される。この結果、他の正常な揺動型アクチュエータ25によって操舵翼23の揺動角を制御しようとしても、前述の故障した揺動型アクチュエータ25によって操舵翼23の制御が阻害され、操舵翼23を全く揺動させることができない。
【0036】
このような場合には、故障した揺動型アクチュエータ25の駆動モータ27に対して通電が行われているにも拘わらず、操舵翼23の揺動が停止するため、検出センサ80からの検出信号に基づき制御手段は該揺動型アクチュエータ25に故障が発生したと判断して駆動モータ27に対する通電を遮断する。これと同時に、制御手段は電磁コイル75に対し所定方向の電流を短時間だけ通電し、電磁コイル75から発生した磁束によりアーマチュア68に磁気力を付与してクラッチ56のスライダ58を、図4に示すように軸方向他側に移動させる。そして、このようにスライダ58が軸方向他側に移動すると、その後は前述した理由により、スライダ58はこの軸方向他側に移動した状態を維持する。
【0037】
このようなスライダ58の軸方向他側への移動により回転爪64が固定爪65から離脱し、内歯車41、スライダ58はケース30から切り離される。この結果、少なくともキャリア48、ここでは揺動型アクチュエータ25の回転側全体(キャリア、歯車、駆動モータ27の回転子)が固定側であるケース30から切り離れ、該回転側は実質上フリー回転可能となる。ここで、実質上としたのは、回転側が比較的大きな慣性質量を有すること、軸受に摩擦抵抗が存在すること等により、完全なフリー回転でない場合を含むことを意味する。このようにして故障した揺動型アクチュエータ25の回転側をフリー回転可能とすることで、残った正常な揺動型アクチュエータ25により操舵翼23の揺動角制御を継続する。
【0038】
ここで、前述の故障した揺動型アクチュエータ25において歯車の固着が外れ、該揺動型アクチュエータ25が正常に復帰したときには、復帰時点での操舵翼23の揺動角が検出センサ80によって検出されているため、該正常に復帰した揺動型アクチュエータ25をそのまま操舵翼23の制御に用いることができる。
【0039】
また、万一、正常であった残り揺動型アクチュエータ25の全部において歯車に固着が発生したような場合には、全ての揺動型アクチュエータ25の回転側が前述と同様にフリー回転可能となるが、このような状態となると、操舵翼23に何等の拘束力も付与されないため、該操舵翼23にフラッタが発生し、航空機の操縦が極めて困難となる。
【0040】
このため、このように全ての揺動型アクチュエータ25において故障が発生したときには、制御手段により少なくとも1個の揺動型アクチュエータ25の電磁コイル75に通電してスライダ58を軸方向一側に移動させ、これにより、該揺動型アクチュエータ25の回転爪64、固定爪65同士を噛み合わせてクラッチ56を結合状態とする。これにより、該揺動型アクチュエータ25の回転側の回転が規制されて操舵翼23は現在の揺動角で固定され、フラッタが防止される。
【0041】
なお、歯車の固着以外の原因、例えば駆動モータ27の電源の故障等で全ての揺動型アクチュエータ25が故障したときにも、前述と同様に少なくとも1個の揺動型アクチュエータ25においてクラッチ56を結合状態とする。このとき、空力負荷によって操舵翼23、キャリア48に付与された回転は歯車減速機28によって増速された後、駆動モータ27の回転子に伝達されるため、該駆動モータ27は起電力を発生するが、この起電力は操舵翼23に抵抗として作用する。この結果、該操舵翼23にダンピング力が付与された状態となり、この場合にも操舵翼23のフラッタが防止される。
【0042】
なお、前述の実施形態においては、駆動モータ27として電動モータを用いたが、この発明においては、油圧モータ、空気圧モータを用いてもよい。また、前述の実施形態においては、歯車減速機28として遊星歯車式減速機を用いたが、偏心揺動型減速機、ハーモニックドライブ等の他の形式の歯車減速機を用いてもよい。さらに、前述の実施形態においては、クラッチ56を回転可能な内歯車41とケース30との間に設け、これらを互いに結合、解除するようにしたが、この発明においては、最終出力軸の途中あるいは最終出力軸と操舵翼との間に市販のクラッチを設け、これらを互いに結合、解除するようにしてもよい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、飛行時における空気抵抗を小さくすることで燃費効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示す操舵翼近傍の平面図である。
【図2】図1のI−I矢視断面図である。
【図3】図2のII−II矢視断面図である。
【図4】クラッチが解除されたときの図3と同様の断面図である。
【図5】従来の操舵翼の制御装置の一例を示す操舵翼近傍の平面図である。
【図6】図5のIII−III矢視断面図である。
【符号の説明】
21…機体 22…凹み
23…操舵翼 24…制御装置
27…駆動モータ 28…歯車減速機
30…ケース 41…内歯車
48…最終出力軸 51…歯車群
56…クラッチ 58…スライダ
64…回転爪 65…固定爪
77…移動機構 80…検出センサ

Claims (5)

  1. 航空機の操舵翼に揺動力を付与し、該操舵翼を揺動中心回りに揺動させることで操舵翼の揺動角を制御する操舵翼の制御装置であって、前記航空機の機体にその最終出力軸が操舵翼の揺動中心と同軸となるよう取付けられた揺動型アクチュエータを備え、前記操舵翼にその揺動中心近傍において凹みを設けるとともに、該凹みに前記揺動型アクチュエータを収納し、該揺動型アクチュエータの最終出力軸と操舵翼とを連結したことを特徴とする操舵翼の制御装置。
  2. 前記操舵翼の揺動中心に沿って揺動型アクチュエータを互いに離して複数個設けるとともに、各揺動型アクチュエータを駆動モータと、該駆動モータの回転を減速して最終出力軸に出力する歯車減速機とから構成し、かつ、各揺動型アクチュエータに、歯車減速機の歯車同士が固着したとき、最終出力軸を固定側から切り離し実質上フリー回転させるクラッチを設けた請求項1記載の操舵翼の制御装置。
  3. 前記歯車減速機に操舵翼の揺動角を検出する検出センサを取付けた請求項記載の操舵翼の制御装置。
  4. 前記歯車減速機をケースと、該ケースの内周に回転可能に支持された円筒状の内歯車と、該内歯車内に収納され、前記内歯車に噛み合う複数の歯車からなる歯車群とから構成したとき、前記クラッチを、内歯車に軸方向に移動可能に連結され、軸方向一側に移動したとき、ケースに形成された固定爪に噛み合う一方、軸方向他側に移動したとき、前記固定爪から離脱する回転爪を有するスライダと、該スライダを軸方向に移動させる移動機構とから構成した請求項記載の操舵翼の制御装置。
  5. 前記複数の揺動型アクチュエータの全てが故障したとき、少なくとも1個の揺動型アクチュエータにおけるクラッチを結合状態とし、操舵翼のフラッタを防止するようにした請求項記載の操舵翼の制御装置。
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