JP3564071B2 - フルフェースヘルメット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二輪車に乗る際に頭部及び顔面を保護するために被るフルフェースヘルメットに関する。
【0002】
【従来背景】
フルフェースヘルメットの保護範囲は頭部から顎まであって比較的安全性が高い反面、顎ガード部の存在により、着用者の下方の視界が狭くなったり、走行時における開放感に欠ける他、飲食や喫煙時にはその都度ヘルメットを脱がなければならないし、顔面の大部分が覆われて顔の識別が難しいことから、最近では防犯上、コンビニエンスストアなどの商店ではフルフェースヘルメットを脱ぐことが義務付けられている例もあり、フルフェースヘルメットの着用者はある程度の不自由さを感じている。
逆に、ハーフタイプやオープンフェイスタイプのヘルメットでは、顔面のほぼ全部が露出しているので前記したような不自由さはないものの、フルフェースヘルメットから比べると顎部の保護機能という点において低いことは否めない。
又、現在では、顎ガード部がシールドごと開閉し、開いた状態において顔面のほぼ全部が露出するシステムヘルメットも存在するが、走行中の開放感ということに関しては通常のフルフェースヘルメットと同じである。
さらに、顎ガード部を帽体に対して回動可能に支持する構造が必要であるため、支持構造によって生じる重量増、この重量増によるバランスの崩れの可能性があるし、顎ガード部と帽体が一体ではないことから、通常のフルフェースヘルメットに比べて顎部の保護機能が低いことは否めない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、フルフェースヘルメットの基本的な構造及び保護機能を備えた上で、ハーフタイプやオープンフェイスタイプのヘルメットのような顔の識別性、利便性、高い視界性、良好な開放感を備えたフルフェースヘルメットの提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために本発明が採用した技術的手段は、一体式の顎ガード1を備え、開閉可能なシールド2を有する二輪乗車用のフルフェースヘルメットAにおいて、繊維強化樹脂材又は熱可塑性樹脂材等からなる帽体3の前面に開設される窓孔4を、着用者の頭部B1が垂直に保たれた状態において窓孔4を正面外側から見たとき、着用者の眉B2から顎部B3部分までの顔Bの略全体を確認できる範囲で開口し、顎ガード1の周面を全長に亘り、その帽体断面上で外方に突出する方向に湾曲させたリブ構造とする手段を採用した。(請求項1)
【0005】
請求項1の発明によれば、フルフェースヘルメットAを着用した状態で着用者の顔Bの眉B2から顎部B3部分までが窓孔4から露出する。
顎ガード1と帽体3は一体であるとともに、顎ガード1自体の強度を確保してあるので、顎部の保護機能が発揮されて、フルフェースヘルメットの基本的な構造及び保護機能を確保することができる。
したがって、基本的な構造及び保護機能が確保されたフルフェースヘルメットAを着用した状態で、オープンフェースヘルメットと同様に、他人に対して着用者の顔Bを識別させることができると共に、喫煙、飲食を行うことができる。
しかも、下方への視界が広がるので、走行中の開放感もオープンフェースヘルメットとほぼ同様の開放感が得られる。
【0006】
さらに、顎ガード1の周面を全長に亘り、その帽体断面上で外方に突出する方向に湾曲させたリブ構造としたことによれば、下記の方法において顎ガード1試験を行った結果、スネル規格に適合する数値が確認された。
試験方法は、スネルM2000ヘルメット規格のE5顎ガード試験に沿って行う。
具体的には、ヘルメットは、顎ガードが上向きとなり、参照平面が水平から65±5゜の角度となるように剛性基盤にしっかりと固定する。
そして、最小面積0.01mの平面型打撃面をもつ5±0.2kgの質量を、誘導落下により衝撃速度3.5±0.2m/秒で顎ガードの中心部に落下させたとき、顎ガードの下方への最大たわみ量が60mmを超えず、いかなる部品も着用者に危害をもたらすような故障があってはならないものである。
試験に用いたフルフェースヘルメットは、顎ガードの中心部の幅が33mmのものであり、このヘルメットを前記した試験方法により測定した結果、最大たわみ量が38mmであり、各部位の部品も着用者に危害をもたらすような故障は認められなかった。
この結果については、顎ガードの中心部の幅が33mmの結果であるが、このものにおける最大たわみ量からみれば、顎ガードの中心部の幅がこれ以下のものでも必要な強度が確保できるものと思われる。
ちなみに、本出願人は特公平6−99844号公報において、顎ガードに補強部材を、顎ガードに沿わせて埋設することによって、顎ガードの上下方向の幅を通常よりも縮小できるフルフェースヘルメットを提案しているが、請求項4の発明は、顎ガード1を構成する素材のみで必要な強度を確保することができるので、部品(補強部材)の削減によるヘルメット全体の軽量化及びコストの低減が実現し、その上で顎部Bへの保護機能を発揮させることができるという、前記公報で提案しているフルフェースヘルメットにはない特有の優れた効果を有する発明である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のフルフェースヘルメットは、レース用やオフロード用を除き、一般のライダーが公道を走行するときに用いられるオンロード用のものを対象とする。
本発明のフルフェースヘルメットAは、通常使用されるサイズのものとすることによって、着用時において着用者に対して違和感を与えることなく、目的を達成することができる。
現在使用されているフルフェースヘルメットの標準的サイズは、窓孔の上側縁から顎ガード部の下側縁までの最大長が約170mm乃至190mm、窓孔より上面における帽体の最大周長が約800mm乃至910mmである。
顔Bの略全体を確認できる範囲は、着用者ごとに個人差は有るものの、少なくとも約130mm以上であり、さらに好適には、約140mm乃至150mmであれば不特定多数の着用者に対応可能である。
【0008】
通常使用されているフルフェースヘルメットの窓孔は、通常着用者の眉付近から目のやや下までが見える程度の最大開口幅であり、割合でいうと、帽体に装備される付加部品を除いた帽体の正面上下中心線上で、窓孔の上側縁から顎ガード部の下側縁までの最大長に対して、約55%乃至58%の最大開口幅である。
本発明では、帽体3に装備される付加部品を除いた帽体3の正面上下中心線L上で、窓孔4の上側縁41から顎ガード1の下側縁51までの最大長aに対して、窓孔4の上側縁41から下側縁42までの上下方向の最大開口幅bを75%以上とすることにより、窓孔4の開口幅を顔Bの略全体を確認できる範囲とした。(請求項2)
前記標準的サイズのフルフェースヘルメットを用いる場合、窓孔4の最大開口幅が約140mm乃至150mmとなるように、前記最大長aに対する最大開口幅bの割合を75%以上の範囲で決定するが、例えば、最大長aが170mmのフルフェースヘルメットAであれば、約82.4%の割合とすることによって最大開口幅bが約140mmとなるので、着用した状態で顔Bの略全体を確認することができる。
【0009】
さらに本発明では、帽体3に装備される付加部品を除いた帽体3の正面上下中心線L上で、窓孔4の上側縁41から顎ガード1の下側縁51までの最大長aに対して、窓孔4の上側縁41から下側縁42までの上下方向の最大開口幅bを75%以上とし、窓孔4の下側縁42から顎ガード1の下側縁51までの上下方向の最小幅cを、前記最大開口幅bの36%未満とすることによって、 窓孔4の開口幅を顔Bの略全体を確認できる範囲とした。(請求項3)
顎ガード1の最小幅cは、顎ガード1自体の強度を確保することができる範囲において30mm乃至50mmである。
顎ガードの最小幅cは、図2に示すように、顎ガード1を正対方向から見た際の幅であり、顎ガード1の配設角度にもよるが、必ずしも、この最小幅cと前記最大開口幅bとの和が前記最大長aと同長になるものではない。
例えば、前記標準的サイズのフルフェースヘルメットを用いる場合、窓孔4の最大開口幅が約140mm乃至150mmとなるように、前記最大長aに対する最大開口幅bの割合を75%以上の範囲で決定し、最小幅cを30mm乃至50mmの範囲で、且つ顎ガード1の下側縁51の位置が前記最大長aを超えないように、最大開口幅bに対する最小幅cの割合を36%未満の範囲で決定する。
したがって、請求項3によっても、着用した状態で顔Bの略全体を確認することができると共に、顎ガード1の強度を確保することができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、図1乃至図3は、窓孔4を顔Bの略全体を確認できるように開口したフルフェースヘルメットAを示している。
本実施例のフルフェースヘルメットAは、繊維強化樹脂材又は熱可塑性樹脂材等を用いて顎ガード1を一体として形成された帽体3の前面に窓孔4を有し、その窓孔4を開閉するシールド2を備え、帽体3の内側には、発泡スチロール、又は、これと同様の衝撃吸収性能を有する素材を用いて構成された衝撃吸収ライナー(図示せず)と、その衝撃吸収ライナーの内側に配設されるウレタン材に代表されるクッション材でなる内装体(図示せず)とを備えて構成してある。
【0011】
窓孔4は、着用者の頭部B1が垂直に保たれた状態において窓孔4を正面外側から見たとき、着用者の眉B2から顎部B3部分まで顔Bの略全体を確認できる範囲で開口してある。
顎ガード1は、帽体3における左右頬部31,32を側面視先端に向かって幅狭にし、その先端から最も狭い幅の状態として、左右頬部31,32間を掛け渡すように形成されている
又、顎ガード1は、周面を全長に亘り、外方に突出する方向に湾曲させてリブ構造を構成しており、このリブ構造によってその強度を確保して顎部B3に対する必要な保護機能を発揮している。(図3参照)
この顎ガード1の形状による強度の確保については、前記したスネルM2000ヘルメット規格のE5顎ガード試験によって、必要な強度を確保できることが証明されている。
シールド2は、窓孔4を全てを塞ぐことが可能な面積、且つ形状を有する周知の素材を用いたものであり、帽体3に対する支持構造については周知の構造であるので説明は省略する。
【0012】
次に、本実施例のフルフェースヘルメットAの窓孔4の最大開口幅b及び顎ガード1の最小幅cを説明する。
フルフェースヘルメットAのサイズは、帽体3に装備される付加部品を除いた帽体3の正面上下中心線L上で、窓孔4の上側縁41から顎ガード1の下側縁51までの最大長aを約175mm、窓孔4より上面における帽体3の最大周長dを約850mmとするものである。
このフルフェースヘルメットAの窓孔4の最大開口幅bは、帽体3に装備される付加部品を除いた帽体3の正面上下中心線L上で、窓孔4の上側縁41から下側縁42までが148mmであり、前記最大長aに対する割合が約84.6%である。
又、顎ガード1の最小幅cは、帽体3に装備される付加部品を除いた帽体3の正面上下中心線L上で、窓孔4の上側縁41から顎ガード1の下側縁51まで33mmであり、前記最大開口幅bに対する割合が約22.3%である。
したがって、本実施例のフルフェースヘルメットAは、現在使用されるサイズのものにおいて、図1に示すように、着用者の顔Bの略全体を正面外側から確認できると共に、着用者に対する保護機能も備えることができる。
【0013】
尚、帽体3に装備される付加部品とは、シールド2及びシールドカバー21L,21R、窓孔4の周縁及び帽体3の下部開口周縁に取り付けられる縁ゴム5,6、帽体3の頭部に設けられる換気機構(図示せず)等である。
又、本発明のフルフェースヘルメットAは、実施例で示した数値に限定されるものではなく、請求項2及び請求項3で記載した数値の範囲内で、着用者の顔Bの略全体を正面外側から確認できる範囲の数値であればよい。
【0014】
【発明の効果】
本発明は以上説明した通り、基本的な構造及び保護機能が確保されたフルフェースヘルメットを着用した状態で、オープンフェースヘルメットと同様に、他人に対して着用者の顔Bを識別させることができると共に、シールドを上げさえすれば喫煙、飲食を行うことができ、しかも、下方への視界が広がるので、走行中の開放感もオープンフェースヘルメットとほぼ同様の開放感が得られるものである。
又、請求項4では、顎ガードを構成する素材のみで必要な強度を確保することができるので、部品(補強部材)の削減によるヘルメット全体の軽量化及びコストの低減が実現し、その上で顎部Bへの保護機能を発揮させることができるという優れた効果を有する。
したがって、フルフェースヘルメットの基本的な構造及び保護機能を備えた上で、ハーフタイプやオープンフェイスタイプのヘルメットのような顔の識別性、高い視界性及び利便性、良好な開放感を備えたフルフェースヘルメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフルフェースヘルメットの正面図。
【図2】本発明のフルフェースヘルメットの側面図。
【図3】図1の中心線に沿う顎ガードのみの拡大縦断面図。
【符号の説明】
A:フルフェースヘルメット 1:顎ガード
2:シールド 3:帽体
4:窓孔 41:上側縁
42:下側縁 51:下側縁
a:最大長 b:最大開口幅
c:最小幅 B:顔
B1:頭部 B2:眉
B3:顎部 L:中心線

Claims (3)

  1. 一体式の顎ガードを備え、開閉可能なシールドを有する二輪乗車用フルフェースヘルメットにおいて、繊維強化樹脂材又は熱可塑性樹脂材等からなる帽体の前面に開設の窓孔を、着用者の頭部が垂直に保たれた状態において窓孔を正面外側から見たとき、着用者の眉から顎部部分までの顔の略全体を確認できる範囲で開口し、前記顎ガードを顎ガードの周面を全長に亘り、その帽体断面上で外方に突出する方向に湾曲させたリブ構造としていることを特徴とするフルフェースヘルメット。
  2. 請求項1において、帽体に装備される付加部品を除いた帽体の正面上下中心線上で、窓孔の上側縁から顎ガード部の下側縁までの最大長に対して、窓孔の上側縁から下側縁までの上下方向の開口幅を75%以上としていることを特徴とするフルフェースヘルメット。
  3. 請求項1において、帽体に装備される付加部品を除いた帽体の正面上下中心線上で、窓孔の上側縁から顎ガード部の下側縁までの最大長に対して、窓孔の上側縁から下側縁までの上下方向の開口幅を前記最大長の75%以上とし、窓孔の下側縁から顎ガードの下側縁までの上下方向の最小幅を、前記最大開口幅の36%未満としていることを特徴とするフルフェースヘルメット。
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