JP3563749B2 - 多層射出成形方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、無機粉体を混合した熱可塑性合成樹脂(以後樹脂と略称する)によって調製した多孔質集合塊(以後コンパウンドと称する)に、水性媒体と、必要により少量の分解型発泡剤等を添加した原料を用いて成形した発泡層を内部層とする多層射出成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多層射出成形において、主に成形後の樹脂の収縮に起因するヒケ等を防止することを目的として、特公昭50−28464号公報記載の方法に代表される射出成形方法が行われている。
【0003】
この方法による射出成形は、冷却したキャビティの中に先ず外部層用の樹脂を所定量射出し、次いで、分解型発泡剤を混入し、シリンダー内で加熱混練しながら発泡剤を分解して発泡ガスを生成させた内部層用の樹脂を外部層樹脂と同一のゲートからキャビティ内に所定量射出しながら、シリンダー内で圧縮されていた内部層樹脂中のガスをキャビティ内で膨張発泡させ、その内部層樹脂の発泡ガス圧と射出圧によって外部層樹脂を押し広げてキャビティ内面に圧着し、同時に冷却固化させることによって製品を得る。その場合の内部層樹脂の最終発泡倍率は1.5倍程度以下の範囲で実施されている。
【0004】
また、成形品を構成する原料を少なくして成形品の重量を軽くすることを主たる目的とする場合には、ガスアシスト法を用い、外部層用の原料をキャビティ内に所定量射出した後、続いて高圧のガスを外部層中に圧入して外部層をキャビティ内に送り込みつつキャビティ内面に圧着して冷却固化させ、圧入した高圧ガスをガス注入口から回収または放散させ、必要によりガス注入口を外部層と同じ樹脂で封栓する方法が行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の分解型発泡剤を用いた内部層発泡による多層成形においては、加熱混練により溶融または軟化させた外部層原料を、内部層原料の注入圧力と発泡圧力で外部層樹脂の粘性による流動抵抗を越えて外部層原料をキャビティ内に進行させ、さらに外部層原料をキャビティ内面に十分な圧力をもって圧着できる程度のガス圧を生成させるため、高価な分解型発泡剤を、最終的に得られる発泡倍率に比較して過剰に使用している。
【0006】
また、外部層樹脂を高圧のガスで突き破るのを防止するため、内部層用の樹脂を倍率1.5倍程度以下になるように調整して射出し、さらに、該成形品の内部層の発泡ガスは、一旦発生すると成形品を冷却しても成形品の温度による気体の膨張分しか体積減少しないから、成形品を型から取り出した後、その成形品に残っているガスで成形品が発泡(以下後発泡と称する)しないように、且つ該後発泡に起因する変形(以下後変形と称する)を起こさないように、成形品をキャビティ内で十分冷却する必要があり、その冷却のための時間を多くとる必要があった。
【0007】
また、成形品の原料を減らし、成形品を軽量化するには、前記ガスアシスト法等の内部を空洞化する成形方法が用いられているが、この方法では高圧ガスを注入された成形品内部に内部層原料が全く無く、内部層相当部分が完全に空洞となることから、特に外力に対する抵抗強度を必要とする成形品においては十分な強度が得にくく、そのため特公昭61−53208号公報に記載されているようなノズル内の溶融樹脂流れ制御部品を使用することにより、ガス流動特性を利用して樹脂壁内の空洞にリブを形成させる等の改良を行ったり、高圧ガス注入口を複数用い、多点から高圧ガスの注入を行って内部空間中に補強壁を残したり、止むを得ず外部層の射出樹脂量を多くして外部層の厚さを大きくしたりして強度補強を行わざるを得なかった。さらに、成形品を安定させたり、製品劣化を防止するために、内部層に一旦導入した高圧ガスを抜き取る必要もあった。
【0008】
本発明は上記従来の各射出成形方法における問題点に鑑みて提案されたもので、成形冷却後の内部層のガス圧を、ガス抜き等の特別な処理を行うことなく成形品の冷却だけに依存して低下させ、後発泡を防止することにより冷却時間を短縮して成形サイクルを短かくし、且つ成形品の形状の安定化と製品の強度を保ちつつ、成形品の軽量化を実現する。さらに、水性媒体を使用することにより多量の分解型発泡剤の使用を不要とし、また、軽量化を目的としたガスアシスト成形法において要求されるような高圧ガスの抜き取り工程が要らない多層射出成形方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る多層射出成形方法は、少なくとも内部層に、熱可塑性合成樹脂原料に無機粉体を微分散した多孔質集合塊を用い、少なくとも内部層が発泡層である多層射出成形品を作る方法であって、その内部層の発泡剤として、水性媒体を0.01〜2重量%と、そのほかに、分解型発泡剤または常温で気体の発泡ガスの少なくともいずれか一方を、上記熱可塑性合成樹脂100リットル当たり、発生ガス量として、0゜C、1気圧に換算して10〜200リットルの割合で配合して使用することを特徴とする。
【0010】
本発明は、樹脂(熱可塑性合成樹脂を指す)に無機粉体を混合分散溶融し、粉砕して製造したコンパウンド(多孔質集合塊を指す)を、少なくとも内部層の原料として用いる多層射出成形品の製造方法であって、その内部層のコンパウンドに0.01〜2重量%の水性媒体を添加混合して成形する方法、さらには本発明方法を用いて内部発泡倍率を高くする成形を行う場合に、冷却時または冷却後、水蒸気の凝縮により内部空間のガス圧力が大気圧より大きく低下することにより発生し得る成形品の変形やひけ等を防止するため、必要により、冷却時に発生する内部層空間の減圧を補填することができる程度に調整された量の、分解型発泡剤をコンパウンドに予め加えて成形する。またはシリンダー中で混練溶融しつつガスまたは液状の発泡剤を圧入して成形する成形方法である。
【0011】
この発泡剤の量は、溶融混練時に分解して発生したガス量が、成形品の冷却時に内部層の気泡中で略大気圧と同等になる程度に添加されることが好ましいが、成形品の後発泡を生じない、または過剰な加圧、または減圧により成形サイクル時間に影響を与えない範囲であれば、適宜添加量を調整し、大気圧に比較して多少低圧または高圧となっても差し支えない。これに用いる発泡剤としてはプラスチックの発泡剤として使用できるものであればすべて使用することができる。さらに、例えば重曹のように水と反応する発泡剤であっても、添加した水性媒体は、そのほとんどが原料樹脂の微小孔に吸着されていることから水を含有させた原料と重曹の混合時にはほとんど反応を起こさず、特に問題なく使用することができる。
【0012】
また、成形品内部層の発泡に加え、外部層の表面の風合いを変えたり成形品の重量をより軽減する等の目的で、外部層原料に少量の分解型発泡剤を加えた合成樹脂、または内部層より発泡率を小さくした、水性媒体または/及び分解型発泡剤を混合した内部層と同様の処理をしたコンパウンド原料により、製品を成形することも可能である。さらにまた、高圧ガス、または常温で液体の発泡剤を圧入混練する装置を付設した射出成形装置であれば、分解型発泡剤の代わりに高圧ガス、または常温で液体の発泡剤を所定量混入する方法も選択することができる。
【0013】
本発明方法で使用される熱可塑性合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、等のポリオレフィン類及びその重合体、ポリ塩化ビニルエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート等のビニル重合体類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンオキザレート等の芳香族並びに脂肪族ポリエステル類、6ナイロン、66ナイロン等のポリアミド類、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアミドイミド類等のいわゆるエンジニアリング樹脂と呼ばれる合成樹脂等ほとんどすべての射出成形可能な熱可塑性合成樹脂、及びこれらの樹脂で成形され、使用済み成形物から再生されたリサイクル熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0014】
また、これらの共重合物、ブレンド物、ポリマーアロイ等を用いることができることはいうまでもないが、ポリエステル類を用いるときには若干の注意を要する。すなわち、ポリエステル類に水性媒体を接触せしめて、高温で長時間保持する時は、ポリエステル類の分子量低下をきたし、物性低下を招くことが知られているので、この場合は水性媒体の量を少な目に使用する。ポリエステル類の分子量の高いものを予め選んで用いる、物性低下しにくい材料とブレンド、またはアロイ化して使用する等の工夫が必要である。これら合成樹脂の分子量または流動性について特に制限はなく、射出成形が可能であればいかなる分子量のものでも使用可能である。
【0015】
上記の樹脂に微分散される無機粉体としては、通常無機フィラーとして用いられているものから選ぶことができる。具体的にはタルク、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ等のほか、鉄粉、酸化鉄粉、酸化チタン等も用いられるが、苛性ソーダや塩化カルシウムのように反応性や潮解性のものは、たとえ絶乾状態の粉体であっても、本発明の目的には不適当である。これらの無機粉体は、大部分親水性であり、水性媒体と十分になじみ得るが、ときには無機粉体の表面をより親水性とするための各種表面活性物質を、予め無機粉体に適用するか、後で述べるコンパウンドの製造工程中に添加するかして、結果的に無機粉体表面の水分保持力を向上させることができる。
【0016】
このような表面活性物質の例としては、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、シュガーエステル等の非イオン界面活性剤、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、アルキルサルフェート、アルキルフォスフェート等のアニオン界面活性剤、アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、脂肪酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、ポリビニルアルコール等、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0017】
無機粉体の平均粒径は通常0.1〜50μm、好ましくは0.2〜20μm、さらに好ましくは0.3〜10μmのものが本発明の目的に合致しており、また、樹脂に対する使用量は特に制限はないが、通常は樹脂100重量部に対し無機粉体0.1〜500部、望ましくは1〜300部、さらに好ましくは5〜200部を用いる。
【0018】
なお、これらの熱可塑性樹脂に対しては、通常用いられる各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、難燃化剤、各種顔料等を加えて用い得ることは当然である。
【0019】
水性媒体としては、一般に水が使用されるが、該媒体の沸点や蒸気圧の調整、コンパウンドへの親和性、分散性の向上等の目的で、水に界面活性剤、水溶性ポリマーや多価アルコール類、水混和性有機溶媒等を適宜添加することができる。
【0020】
また、水溶性ポリマー及び多価アルコール類としては、例えば、重合度が約50〜2000で鹸化度が85%以上のポリビニルアルコール、数平均分子量が400までのモノもしくはポリエチレングリコール、グリセリン等が包括され、これらは水に対して一般に1〜100g/l、好ましくは10〜50g/lの濃度で添加することができる。
【0021】
さらに、用いる水混和性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類ジエチルエーテル、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられ、水に対し、一般に1〜100g/l、好ましくは10〜50g/lの濃度で配合することができる。上記水性媒体の使用量は、成形品の形状、大きさ、成形条件、所望する発泡倍率等によって広範に亘って変えることができるが、一般に樹脂100重量部当たり0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜1重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%の割合とすればよい。
【0022】
分解型発泡剤としては、一般に有機系と無機系のものが挙げられ、例えば、有機系としてはアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラリン、4,4,オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド、パラトルエンスルホニルヒドラジッド等が挙げられる。無機系としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、ソジウムボロンハイドライド、シリコンオキシハイドライド等を使用樹脂に応じて適宜選択して単独または複数種類混合して使用出来る。
【0023】
これらを水性媒体と併用する場合、成形品の形状、大きさ、成形条件等によって、広範に亘りその使用量を変えることができるが、一般に樹脂100リットル当たり、発生ガス量として、0゜C、1気圧に換算して10〜200リットル、好ましくは20〜100リットルの割合で配合することができる。
【0024】
常温で気体の発泡ガス、または常温で液体の発泡剤としては、一般に低沸点の液体、または液化ガス等が使用でき、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、チッソガス、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン等が挙げられる。これらも、水性媒体と併用する場合、成形品の形状、大きさ、成形条件等によって広範に亘ってその使用量を変えることができるが、一般に樹脂100リットル当たり発生ガス量として、0゜C、1気圧に換算して10〜200リットル、好ましくは20〜100リットルの割合で配合することができる。
【0025】
本発明の多孔質集合塊よりなる樹脂コンパウンドとは、従来の樹脂中に固体微粉末が練り込まれて、樹脂中に埋没分散した構造と異なり、固体微粉末が樹脂粉粒体表面に部分的に埋め込まれて樹脂表面に付着した状態で樹脂粉粒体表面を覆い、且つその被覆された樹脂粉粒体が部分的に融着して多孔性集合塊を形成している構造のものである。この構造の差異は、顕微鏡下で見ると断面、表面共に明らかであるが、固体微粉末の表出とその多孔性集合塊を表す数値的指標として、水蒸気の吸着率を使用する。しかして「水蒸気の吸着率」とは、温度25゜C、相対湿度30%、圧力1気圧の恒温恒湿室に24時間保持した後の重さW1 gの多孔性集合塊を、温度105゜Cの乾燥炉に3分間置き、直ちに秤量し、その重さをW2 gとした場合、下記の数式により算出される値をいう。
【0026】
【数1】
【0027】
本発明の多孔性集合塊は非常に高い水蒸気の吸着率を有しており、その値は一般に0.01%以上、好ましくは0.05%以上であり、さらに好ましくは0.1%以上である多孔質集合塊よりなる樹脂コンパウンドをいう。この熱可塑性樹脂に無機粉体を充填するコンパウンドの製造方法としては、溶融樹脂と固体微粉末との混合物が極めて高粘性で、混合に非常に大きな動力を必要とするため、ミキシングロール、バンバリーミキサー、強力双腕ニーダー、あるいはDSM(株式会社日本製鋼所製)、FCM(株式会社神戸製鋼所製)等の大きい混練分散装置が使用されている。しかし、樹脂を溶融し、固体微粉末を混練分散するため、多孔質集合塊になりにくい。そこでこのような場合には、アトマイザー等を用いて1mm以下、好ましくは0.5mm以下の粒径に微粉砕し、このものが軽く連なっている状態を作り出せばよい。
【0028】
本発明の目的に最も適する多孔質集合塊よりなる樹脂コンパウンドの調整方法としては、高速混合ミキサー、例えばヘンシェルミキサーやスーパーミキサーを用いて高速回転混合中で樹脂の溶融温度以上の温度に加熱しつつ、高速で混合し、固体微粉末で被覆された熱可塑性樹脂粉粒体が部分的に溶着した多孔質集合塊が生成した時点で直ちに冷却固化して樹脂コンパウンドにする特公昭63−28455号公報記載の方法が最適である。
【0029】
【発明の作用及び効果】
上記の方法により多層インジェクション発泡成形物を製造すると、キャビティ内で発泡成形された成形物の気泡内の圧力が、成形品冷却時の水蒸気の液体化を伴う温度低下による蒸気圧低下と、気体の熱膨張率の和の分低下し、通常のガス発泡の成形品の温度に依存した発泡気泡内の気体の熱膨張率のみに依存するガス圧力低下による減圧に比べ、効果的に減圧が行われる。その結果、成形品の温度が比較的高い状態のままでも成形品を取り出すことができるようになり、結果として成形サイクル時間を短縮することができる。
【0030】
同時に、比較的成形品の内部層の発泡倍率を高く設定した場合に、内部層原料の温度が高く水蒸気圧が高い間は、発泡圧力による外部層のキャビティ内への送り込みができるにも関わらず、冷却時には内部層樹脂の温度の低下によって水蒸気圧が効果的に低下するため、通常の分解型発泡剤による発泡のように多量の高圧ガスが成形品内に残留せず、結果として成形品の変形等の問題を引き起こすおそれが防止される。
【0031】
また、発泡倍率の高倍率設定、外部層厚みの薄化、冷却時間の短縮等を行った場合、上記の効果の過剰作用として水蒸気がほぼ全部液化して、内部層の気泡内圧力が大気圧以下になり、該気泡内圧力の低下によるひけの発生や、局部的な変形を生ずる場合があるが、その場合は内部層の原料内に少量の分解型発泡剤を水性媒体と併用して混練成形し、過剰に減圧する水蒸気圧分を分解型発泡剤から発生した少量のガスで補填することによって、ひけや変形の発生が防止される。この成形方法により、内部層に発泡空隙を持つ樹脂構造体を構成することができるため、成形品の軽量化と同時に強度保持を実現することができる。
【0032】
更に、本発明の内部層構造体は、成形品の強度保持が一つの目的であるため、必ずしも独立気泡の発泡構造を得る必要はない。従って内部層用樹脂の原料樹脂の熱流動特性が均質である必要はそれほど無く、現在ごみとして問題となっているリサイクルプラスチック原料を用いたコンパウンド原料を使用することもできる。特にリサイクル原料は、熱履歴によるメルトインデックスの低下を生じる傾向があり、これをメルトインデックスの低い原料と混合してコンパウンド原料を作成して内部層発泡成形を行うと、発泡構造体が連続気泡化する傾向が見られ、柱状または壁状の樹脂構造体となり易く、外部層が薄い成形品を製造する場合にはより高い補強効果を得られる場合がみられた。
【0033】
【実施例】
以下実施例により本発明の意図するところを更に具体的に説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものでないことは当然である。
【0034】
実施例 1
160オンス2層射出成形機(日精樹脂工業製、型締め力460トン)を用いて、外層はポリプロピレン(三菱化成製、7510AG、メルトインデックス9g/10min)に炭酸カルシウム(竹原化学製 SL800)20重量%及び酸化チタン1重量%、内層はポリプロピレン(三井東圧 BEBG)とタルク(日本タルク社製 MSタルク)50重量%のコンパウンドに水0.1重量%とアゾジカルボンアミド(永和化成工業社製 ビニホールAC)0.1重量%を加えて、以下の手順により折畳みいすの脚部を射出成形した。
【0035】
外層は、射出成形機シリンダー温度220゜C、内層は240゜Cで混練溶融させ、外層原料を射出圧力850kg/cm2 で600mlを型内に注入し、2秒後に内層原料350mlを810kg/cm2 で続けて型内に注入し、更に外層原料180mlを注入し、15゜Cに温度調節された金型内で120秒間の冷却により、いすの脚部を成形した。この成形品は重量1.2kg、反り量0.4mm、ひけ量0.1mmで、残存ガス圧力による後変形(ふくれ)もなく、美麗な成形品であった。
【0036】
比較例 1
内層原料の発泡剤としてアゾジカルボンアミド0.5重量%を使用し、他は実施例1と同一条件とし、成形品を得た。得られた成形品は、重量1.2kgで、金型から取り出し後、残存ガス圧による後発泡に起因する変形を生じ、反り量、ひけ量を測定することはできなかった。
【0037】
実施例 2
外層原料は実施例1と同様、内層原料として実施例1のコンパウンドにエチレンプロピレンラバー(日本合成ゴム製 EPR)を5重量%、水を0.08重量%、アゾジカルボンアミドを0.1重量%添加し、冷却時間を90秒とし、それ以外の条件は実施例1と同様にして成形品を得た。この成形品は、重量、反り量、ひけ量及び残存ガス圧による変形も実施例と実質的に差異が無かった。
【0038】
比較例 2
実施例2から水を除いてアゾジカルボンアミドを0.5重量%添加し、それ以外の条件は実施例2と同様にして成形品を得た。この成形品は重量1.2kgで、金型から取り出し後、残存ガス圧による後発泡に起因する変形を生じ、製品として使用するには不適切なものであった。
【0039】
実施例 3
外層にポリスチレン(住友化学製 スミブライトM584 HiPS メルトインデックス3g/10min)に酸化チタン1重量%、内層は、外層と同様のHiPSに炭酸カルシウム25重量%を含んだコンパウンドに、水0.05重量%とアゾジカルボンアミド(永和化成製 ビニホールAC)0.1重量%を加えて、外層は射出成形機シリンダー200゜C、内層はシリンダー温度220゜Cの条件で、テーブルセンターを射出成形した。外観、ひけ及びそりも変形(ふくれ)もない美麗な成形品が得られた。
【0040】
実施例 4
外層は実施例1と同じ、内層はポリスチレンペーパー製トレーの回収品をペレットにし、内層の材料とした。メルトインデックスは1.0g/10minであった。この回収ペレットで炭酸カルシウム(竹原化学製 SL800)25重量%を含んだコンパウンドを作成し、スチレンブタジエンゴム(日本合成ゴム製 TR−2000)を5重量%添加し、発泡剤として水0.05重量%、アゾジカルボンアミド(永和化成製 ビニホールAC)0.1重量%を加え、外層は、シリンダー温度220゜Cでテーブルセンターを射出成形した。外観はひけ、及びそり、変形(ふくれ)等のない美麗な成形品が得られた。
Claims (1)
- 少なくとも内部層に、熱可塑性合成樹脂原料に無機粉体を微分散した多孔質集合塊を用い、少なくとも内部層が発泡層である多層射出成形品を作る方法であって、その内部層の発泡剤として、水性媒体を0.01〜2重量%と、そのほかに、分解型発泡剤または常温で気体の発泡ガスの少なくともいずれか一方を、上記熱可塑性合成樹脂100リットル当たり、発生ガス量として、0゜C、1気圧に換算して10〜200リットルの割合で配合して使用することを特徴とする多層射出成形方法。
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JP16426093A JP3563749B2 (ja) | 1993-06-08 | 1993-06-08 | 多層射出成形方法 |
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JPH06344379A JPH06344379A (ja) | 1994-12-20 |
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- 1993-06-08 JP JP16426093A patent/JP3563749B2/ja not_active Expired - Lifetime
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