JP3563492B2 - 養魚用水処理剤及びその製造方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、例えば養殖用の水槽や観賞魚用水槽の内部、若しくは養殖生け簀の内部に存在させ、水が腐敗したり水質低下するのを防止する様にした養魚用水処理剤及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、観賞魚用水槽等の水槽内の水が腐敗したり水質低下するのを抑制するには、水槽内の水をポンプで連続的に循環させ、その循環経路に濾過装置を設けて魚糞等を物理的に除去したり、或いは分解性バクテリアを担持した粒状物を水処理剤として水槽内、或いは上記濾過装置の内部に設けて有機物からなる汚染成分を分解性バクテリアで分解する方法が採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水槽内の魚体が健全に育成される限り、常にほぼ一定量の魚糞が排出されるので、前記従来の方法では、濾過装置の濾過フィルターに魚糞などがすぐに集まって堆積し、濾過フィルターを閉塞するため水槽内の水の循環が損なわれないように濾過フィルターの洗浄や取り替えを頻繁に行う必要があった。また、水槽内の内壁等への藻類の付着を抑制する作用が十分でなく、特に観賞魚用水槽では付着した藻類が内部の色彩豊かな魚類を観賞することを妨げるため、定期的に水槽の内壁を洗浄して藻類を除去する必要があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記した従来の欠点に鑑み提案されたもので、抗菌性ゼオライト粒体の表面に光触媒反応機能を有する二酸化チタンを組成の一部とする皮膜を形成したことを特徴とする養魚用水処理剤、及びその製造方法に関するものである。
【0005】
上記本発明の養魚用水処理剤に用いる抗菌性ゼオライト粒体は、一般細菌や黴などに対して優れた抗菌力を有する銀(Ag)イオンや銅(Cu)イオンをゼオライトの骨格構造内に取り込んだ(担持させた)粒体であり、既に広く市場に供給されている。また、その粒径は用途に応じて設定すればよく、特に限定するものではないが通常0.5〜10mmのものが用いられる。
尚、ゼオライトは周知のようにアルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介して網目のように結合し、結晶内に無数の細孔(1万分の2μm〜1千分の1μm)を有するため、所謂「分子ふるい」という機能を備え、物質の吸着分離性能に利用する試みも行われている。このように、この抗菌性ゼオライト粒体は、抗菌効果を有することは勿論であるが、アンモニアイオンを選択的に吸収するので不快な臭気を吸着する脱臭機能、浄化(浄水)機能をも有する。また、構成成分のアルミニウムやケイ素の一部若しくは全部を他の元素に置き換えて合成した合成ゼオライトも既に市場に供給されているが、本発明には天然ゼオライトは勿論、上記の合成ゼオライトに抗菌性を有する金属イオンを担持させて用いても良い。
次に、抗菌力を有する金属イオンの担持方法の一例を示す。まず、大量の水に硝酸銀(AgNO3)を溶解し、天然ゼオライト粒体を投入してゆっくり撹拌しながら6時間以上反応させる。その後、水でよく洗浄し、ゼオライト粒体の表面の銀(Ag)イオンを取り除き、乾燥して製品(この場合、銀イオンを担持したゼオライト粒体)を得る。
上記の抗菌性ゼオライト粒体の抗菌メカニズムはまだ完全に解明されていないのであるが、微生物細胞の呼吸系、電子伝達系等の基本代謝系の酵素阻害或いは細胞膜の物質移動阻害によって抗菌性を発現すると考えられ、藻類等に広範囲に抗菌効果を発揮する。しかもゼオライト粒体に担持された金属イオンは水中に溶解(溶出)することがないので、半永久的にその抗菌効果が作用する。さらに、この抗菌性ゼオライト粒体は、無毒性が高く、無機物であるから耐熱性も優れている。
【0006】
また、光触媒反応機能を有する二酸化チタンは、従来顔料等の用途に用いられてきた数μm単位の二酸化チタンではなく、0.01〜0.1μmの超微粒子であり、既に広く且つ安定に市場に供給されている。この二酸化チタンは、紫外線を受けると電子(−)と正孔(+)に分かれ、できた正孔が空気中の酸素を活性酸素(OHラジカル)に変え、この活性酸素が難分解性といわれる多くの化学物質や有機物を水素と二酸化炭素に分解する。したがって、この超微粒子の二酸化チタンは、水槽中の水に浮遊、或いは溶解している汚損成分(有機物)を分解して水質を清浄化する機能を有する。尚、この二酸化チタンも水溶性ではなく、半永久的にその効果を維持する。
【0007】
上記の各成分を基本成分とする本発明の養魚用水処理剤は、以下のように製造することができる。
まず、前記の光触媒反応機能を有する二酸化チタンを樹脂エマルジョンと均一に混合したスラリーを作製する。上記樹脂エマルジョンは、希釈水が水であるから火災の心配がなく(多くの引火性を有する有機溶剤と比較して)、低毒性で、有機溶剤の不快臭がなく、乾燥も速く、さらにその塗膜は耐アルカリ性及び水蒸気透過率が大きいという特徴を有するが、具体的には例えば酢酸ビニル系(エチレン−酢酸ビニル共重合系、或いは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系などの共重合系が好ましい)エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン、アクリル系エマルジョンなどから適宜に選択して用いることができる。尚、一般に酢酸ビニル(共重合)系エマルジョンは耐水性、耐水洗性等に優れ、スチレン−ブタジエン系エマルジョンは耐アルカリ性、耐水性に優れ、さらに浸透性が少なく、アクリル系エマルジョンは耐候性、耐摩耗性に優れるという特徴を有し、用途に応じて適宜に選定すれば良いが、常に水槽の水が接触していることを考慮すると、耐水性に優れたものを用いることが望ましい。
次に、上記の混合スラリーを前記の抗菌性ゼオライト粒体の表面にまぶす等して付着させる。
そして、70℃以下の温度で乾燥処理すると、樹脂エマルジョン中の樹脂成分がバインダー(結合材)となって光触媒反応機能を有する二酸化チタンを組成の一部とする皮膜が抗菌性ゼオライト粒体の表面に形成される。70℃以上の温度で乾燥すると、樹脂エマルジョン中の樹脂が軟化溶融して光触媒反応機能を有する二酸化チタンの表面、或いは抗菌性ゼオライト粒体の表面を覆い、抗菌性等の効果が充分に表われなくなる。
【0008】
上記のように得られる本発明の養魚用水処理剤は、用いた抗菌性ゼオライト粒体の比重が水より大きい場合には、水槽の底部に砂の代わり、或いは砂と共に敷設するようにしてもよいし、用いた抗菌性ゼオライト粒体の比重が水より小さい場合には、水槽内の水面に浮遊させておくようにしても良い。或いは水槽内の水を循環させるようにし、適当な収納容器に上記の水処理剤を充填したものをその循環経路に設けるようにしてもよく、適宜方法で適用することができる。尚、本発明の水処理剤を微細な粒状にした場合には、魚類が餌と間違って食べる可能性もあるが、無毒であり、むしろ消化器官の障害防止等に役立つことが見込まれるが、魚体の大きさ等を考慮して水処理剤の粒度や適用方法を設定することが好ましい。また、本発明の水処理剤は、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ等の他の水処理剤と併用してもよい。
【0009】
例えば水槽底部に敷設された本発明の養魚用水処理剤は、抗菌性を有するゼオライト粒体、及びその表面に付着させた光触媒反応機能を有する二酸化チタンがそれぞれ前述の効果を果たす。即ち、抗菌性を有するゼオライト粒体は藻類等に広範囲に抗菌効果を発揮する。光触媒反応機能を有する二酸化チタンは紫外線で光触媒反応機能が作用し、水槽中の水に浮遊、或いは溶解している汚損成分(有機物)を分解して水質を清浄化する。
また、抗菌性を有するゼオライト粒体は魚糞等に含まれるアンモニアを選択吸収するほか、窒素酸化物等のその他の物質をも吸着するが、この抗菌性ゼオライト粒体が吸着した物質は二酸化チタンの光触媒反応や抗菌性ゼオライト粒体に担持された金属イオンの光触媒反応により分解される。したがって、その相乗効果により養魚用水槽内の水が腐敗したり水質低下するのを防止して清浄な状態に半永久的に維持することができ、水槽の内壁も清浄に維持できる。
【0010】
また、抗菌性を有するゼオライト粒体も光触媒反応機能を有する二酸化チタンも無機物であるため、例えば定期的に新たな養魚用水処理剤と取り替え敷設する等の必要がなく半永久的にその効果を存続することができ、経済性等、その実用的価値は極めて高い。
【0011】
したがって、本発明の水処理剤を用いた養魚用水槽は、内部の水、及び水槽の内壁も清浄に維持されるので、内部の魚類をよく観察することができ、洗浄する手間も大幅に軽減することができる。
さらに、前記従来の水処理方法と併用すると、濾過装置の濾過フィルターの交換(或いは洗浄)間隔を長期化することができる。
【0012】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
【0013】
〈養魚用水処理剤の製造〉
(実施例1)
まず、オールアクリルタイプ一液架橋型樹脂エマルジョン100gと、光触媒反応機能を有する二酸化チタン(商品名『Titanium DioxideP25』日本エアロジル株式会社製)50gと、水150gとを混合し、均一な混合スラリーを作製した。
次に、0.5〜10mmの抗菌性ゼオライト(商品名『Zeomic AC』株式会社シナネンゼオミック製)1kgに、二酸化チタンを含有する前記の混合スラリーをまぶし、65℃で乾燥して粒状とした。これを実施例1の水処理剤とする。
【0014】
〈水処理効果の確認〉
(試験方法)
容積10リットルの水槽に、水10リットル及び観賞魚5種を10匹入れて試験用水とした。
上記の試験用水に、前記のように得られた水処理剤500gと活性炭100gとを混合して水槽の底部に敷設し、適当な飼料を定期的に供給すると共に酸素等を適当な濃度に維持しながら、25℃で水の汚損状況、並びに水槽内壁の汚損状況を観察した。
尚、比較のために、水処理剤を用いない(活性炭のみ)以外は全く同様にしたものを比較例とした。
(試験結果)
前記の実施例1の水処理剤を敷設したものは、3週間経過後、透明な清浄な水質を維持し、水槽の内壁も美麗であった。不快な臭気もなかった。
一方、活性炭のみの比較例では、3週間経過後、緑色が深い水質となり、水槽の内壁にも藻類が繁殖していた。また、不快な臭気も発生していた。
【0015】
以上本発明の実施例を示したが、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の養魚用水処理剤は、抗菌性を有するゼオライト粒体の表面に、光触媒反応機能を有する二酸化チタンを組成の一部とする皮膜を形成した構成であるから、抗菌性を有するゼオライトは藻類等に広範囲に抗菌効果を発揮する。その表面に保持された光触媒反応機能を有する二酸化チタンは水槽中の水に浮遊、或いは溶解している汚損成分(有機物)を分解して水質を清浄化する。
また、抗菌性を有するゼオライト粒体は、魚糞等に含まれるアンモニアを選択吸収するほか、窒素酸化物等のその他の物質をも吸着し、この抗菌性ゼオライト粒体が吸着した物質は二酸化チタンの光触媒反応や抗菌性ゼオライト粒体に担持された金属イオンの光触媒反応により分解される。したがって、その相乗効果により養魚用水槽内の水が腐敗したり水質低下するのを防止して清浄な状態に半永久的に維持することができ、水槽の内壁も清浄に維持できる。
【0017】
さらに、抗菌性を有するゼオライト粒体も光触媒反応機能を有する二酸化チタンも無機物であるため、例えば定期的に新たな養魚用水処理剤と取り替え敷設する等の必要がなく半永久的にその効果を存続することができ、経済性等、その実用的価値は極めて高い。
【0018】
したがって、本発明の水処理剤を用いた水槽は、内部の水、及び水槽の内壁も清浄に維持されるので、内部の魚類をよく観察することができ、洗浄する手間も大幅に軽減することができる。
例えば、頻繁に手入れをする時間がないような利用者や長期の出張があるような単身者などが観賞魚を育成する場合にも、本発明の養魚用水処理剤を用いると共に水槽内に安定に飼料を供給できる機構を装備させておくだけで、水槽内の水が腐敗したり水質低下するのを防止して清浄な状態に半永久的に維持することができ、留守中に観賞魚が死滅したり、付着した藻類が内部の色彩豊かな魚類を観賞することを妨げることもない。
さらに、前記従来の水処理方法と併用することにより、濾過装置の濾過フィルターの交換(或いは洗浄)間隔を長期化することができる。
Claims (2)
- 抗菌性ゼオライト粒体の表面に光触媒反応機能を有する二酸化チタンを組成の一部とする皮膜を形成したことを特徴とする養魚用水処理剤。
- 抗菌性ゼオライト粒体の表面に光触媒反応機能を有する二酸化チタンと樹脂エマルジョンとを含むスラリーを付着させ、前記スラリーを70℃以下の温度で乾燥処理して光触媒反応機能を有する二酸化チタンを組成の一部とする皮膜を形成する様にしたことを特徴とする養魚用水処理剤の製造方法。
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1995
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