JP3563439B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、空気入りラジアルタイヤ、中でも汎用の乗用車用空気入りタイヤにおける、ベルト構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のタイヤのベルト構造は、カーカス上に少なくとも2層のベルト層をそのコードが上下層間で交差する配置の下に積層してなる、いわゆる交差ベルトが通例である。この交差ベルト構造は、特に高速域での耐久性に劣るところから、以下に示すように、種々の改良が提案されている。
【0003】
一方、近年の省エネルギーの観点から、自動車の重量を軽減して燃費を向上することが急務になり、ここにタイヤの軽量化に対する要求も強く、特に汎用の乗用車用空気入りタイヤにおいては重要な課題となっている。
【0004】
例えば、特開昭53−104907号公報には、コードをタイヤの赤道面(トレッドの中央周線を通りタイヤの回転軸と直交する面)に対して0〜10°の角度で配列したブレーカ層および同様に10〜35°の角度で配列したブレーカ層の組み合わせによって、高速耐久性を向上するとともに、異常磨耗を抑制することが提案されている。
【0005】
また、特開昭62−152904号公報には、重荷重用タイヤにおいて、コードをタイヤの赤道面に対して0°に近いコード角でらせん状に配列した少なくとも1層の主ベルト層と、タイヤの赤道面に対して20°以上40°未満のコード角で配列した単一層の副ベルト層との組み合わせになるベルト構造が提案され、耐久性の向上がコーナリングパワー特性および軽量化と併せて実現されている。
【0006】
さらに、特開平4−103212号公報には、単一のスチールベルト層を、トレッドセンター域で単一層かつ両ショルダー域で二層としたベルトカバー層で覆う構造にて、高速耐久性のほかに、ユニフォーミティの向上と軽量化を達成することが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
いずれのベルト構造も、図1に示すように、カーカス1のタイヤ径方向外側に、タイヤ赤道面に対して傾いた向きに延びるコードによる傾斜ベルト層2とタイヤ赤道面に沿って延びるコードによる周方向ベルト層3とを配置してなるが、このベルト構造に共通する問題として、カーカスプライの破断によるタイヤの破壊がある。
【0008】
すなわち、タイヤに荷重が加わると、図2に示すように、カーカス1はその荷重に応じて変形するが、カーカス1の周方向ベルト層3に覆われた領域は、剛性が高いために変形量は小さいのに対して、周方向ベルト層3から外れたカーカス1の領域は剛性が低いため、路面側に倒れ込むように変形する。この変形が繰り返し起こると、図3に示すように、カーカスプライを構成するコードは、周方向ベルト層3の端縁付近を支点とする曲げ入力を受けることになる。そして、このカーカスプライの変形挙動が繰り返されると、傾斜ベルト層2の周方向ベルト層3の端縁付近を構成するコードがカーカス1の被覆ゴム内に徐々に進入し、最終的に、傾斜ベルト層2のコードとカーカスプライのコードが接触する位置までコードが埋没する。そして、傾斜ベルト層2のコードおよびカーカスプライのコードが相互に接触する状態にて曲げ変形が繰り返されると、両者の接触によって磨耗が進行し、結局はコードの破断につながることになる。
【0009】
なお、傾斜ベルト層のコードとカーカスプライのコードとの間のゴムを厚くすることによって、両者の接触を回避することができるが、タイヤの軽量化を阻害し、またコスト増をまねくため、解決策とはならない。
【0010】
そこで、この発明は、上記した軽量化ベルト構造に共通の問題である、周方向ベルト層の端縁付近で発生するカーカスプライのコード破断を回避する手段について提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、1対のビードコア間にわたってトロイド状をなして跨がるカーカスのタイヤ径方向外側に、ベルトおよびトレッドを順次に配置した空気入りラジアルタイヤであって、ベルトは、タイヤ赤道面に対して傾いて延びる多数本のコードを配列した傾斜ベルト層の単一層と、この傾斜ベルト層のタイヤ径方向外側に配置した、タイヤ赤道面に沿って延びる多数本のコードを配列した周方向ベルト層の少なくとも1層とを有し、傾斜ベルト層は、周方向ベルト層の端縁を中心としてその幅方向両側にそれぞれ周方向ベルト層幅の 0.5 5.0 %を占める領域に対応する部分において、コードの輪郭形状をへん平化したことを特徴とする空気入りラジアルタイヤである。
【0013】
また、実施に当たり、傾斜ベルト層は、少なくとも3本のフィラメントからなるコードで構成されること、周方向ベルト層は、有機繊維コードで構成されること、が有利に適合する。
【0014】
さて、図4にこの発明に従う空気入りタイヤの具体例を図解し、1は1対のビードコア4間に跨がって延びる、図示例で1枚のカーカスプライからなるカーカスを示し、このカーカス1のタイヤ径方向外側には、傾斜ベルト層2および周方向ベルト層3からなるベルトと、トレッド5を順次に配置してなる。
【0015】
ベルトは、タイヤの赤道面に対して傾斜して、好ましくは25〜45°の傾斜角度で延びる多数本のコードを配列した単一の傾斜ベルト層2および赤道面に沿って延びる多数本のコードを配列した少なくとも1層の周方向ベルト層3をタイヤ径方向外側に順に配置した、図示例で2層構造になる。
【0016】
傾斜ベルト層2は、互いに平行に配置した多数本のコード6をゴム被覆したプライからなり、図5に示すように、その上に積層した周方向ベルト層3の端縁を中心としてその幅方向両側にそれぞれ周方向ベルト層幅の 0.5 〜5%を占める領域Rにおいて、コードの輪郭形状をへん平化することを特徴とする。
【0017】
すなわち、傾斜ベルト層2を1×5構造のスチールコードで構成した場合を例に説明すると、周方向ベルト層3の領域R以外に配置したスチールコードは、コード軸方向に対して垂直な断面において、図6(a) に示す円形の輪郭形状であり、周方向ベルト層3の領域Rでのみ、図6(a) のコードをへん平化して図6(b)に示す楕円状の輪郭形状にする。ちなみに、図1〜3において、傾斜ベルト層2のコード断面が楕円で示されているのは、本来円形断面を有するコードを斜めに切断した面を示した為である。
【0018】
なお、傾斜ベルト層2を構成するコードは、スチールコードおよび有機繊維コードのいずれもが適合し、さらに有機繊維のモノフィラメントを適用することも可能である。
【0019】
さらに、傾斜ベルト層2は周方向ベルト層3よりも広い幅にわたって、具体的には周方向ベルト層幅の1.03〜1.10倍の幅で設けることが好ましい。ここで、周方向ベルト層3の幅は、規定内圧および規定荷重下における設置幅以上であることが好ましい。
【0020】
また、周方向ベルト層3は、複数本(または1本)のコードをゴムに埋設した帯状体を、ベルトの幅方向にらせん状に巻き回して配置することによって、コードをタイヤの赤道面とほぼ平行に配置したものが好適である。なお、図示例では、周方向ベルト層3を1層としたが、より優れた高速耐久性確保の要求に基づくトレッドの半径方向外側へのせり出し抑制などの要請に応じて2層以上を設けてもよい。
【0021】
【作用】
周方向ベルト層および傾斜ベルト層の単一層の組み合わせになるベルトを配置したタイヤにおいて、そのカーカスプライにコード破断が発生するのは、タイヤの負荷転動に伴ってカーカスに生じる曲げ変形によって、傾斜ベルト層のコードがカーカスのコード被覆ゴム中に埋没し、両コードが相互に接触して磨耗することに起因しているのは、既に述べた通りである。
従って、カーカスプライのコード破断を抑制するには、傾斜ベルト層のコードがカーカスの被覆ゴム中に埋没するのを回避すること、また両コードが相互に接触しても簡単には破断させないこと、が肝要になる。
【0022】
この発明では、カーカスに大きな曲げ変形が生じる領域、つまり周方向ベルト層の領域Rに限定して、傾斜ベルト層のコードの輪郭形状をへん平化し、この領域Rでのコード間隔を他の領域でのそれよりも小さくして、図7(a) に示す通常のコード間隔での場合と比較して、図7(b) に示すように、コード間におけるカーカスの被覆ゴムの通過抵抗を増加し、被覆ゴム中にコードが埋没するのを抑制する。なお、図7はコード軸方向に直交する断面で示してある。さらに、傾斜ベルト層のコードの輪郭形状をへん平化することによって、該コードとカーカスプライのコードとの接触は線接触から面接触になって接触圧力が低下するため、磨耗による破断までの時間が大幅に延長される。
【0023】
ここで、傾斜ベルト層のコードのへん平化は、へん平化していないコードの径dに対して、1.1 〜1.3 倍の径Dになるように行うことが好ましい。なぜなら、へん平化が径比1.1 倍未満では、上記したコードの被覆ゴム中への埋没を回避する効果が少なくなり、カーカスプライのコード破断の抑制が不十分になり、一方径比1.3 倍をこえるには、コードのへい平化作業にかかるコストが上昇するため、不利である。例えば、コードのへい平化にステッチャーを使用する場合は、コードを部分的にへん平化する工程でのステッチャー圧力を大きくする必要があり、新たな設備投資が必要になる。
【0024】
ところで、傾斜ベルト層の全てのコードをへん平化することも考えられるが、特に傾斜ベルト層の端部域では、へん平化によるコード間隔が縮小されると、該ベルト端面で発生する亀裂が容易にコード間でつながり、それが周上で進展してセパレーションとなるため、この発明では、コードのへん平化領域を曲げ変形の集中する上記の範囲に限定したのである。
この領域Rの範囲は、上記したように、周方向ベルト層幅の0.5 〜5%であるが、これはカーカスプライのコード破断位置が周方向ベルト層の端部にほぼ限定され、タイヤ周上の破断位置の分布を測定してみると周方向ベルト層端部から幅方向内側に最大でも周方向ベルト層幅の0.05倍に収まっていることから設定した。したがって、領域Rは周方向ベルト端部から幅方向内側で広く、また幅方向外側で狭く設定してもよい。さらに、後述のコードへん平化工程の精度が十分である場合は、コートへん平化領域Rを周方向ベルト端部から幅方向内側のみとしても良い。
【0025】
なお、傾斜ベルト層のコードを部分的にへん平化するには、ベルトの成形工程において、傾斜ベルト層のプライをカーカスプライ上に巻き付けたのち、周方向ベルト層の領域Rに相当する部分にステッチャーを押し当てながら成形ドラムを回転することによって、傾斜ベルト層のコードを部分的につぶすことができる。
【0026】
【実施例】
図4に示した構造に従う、サイズ195/65R14の空気入りラジアルタイヤを、図5に示したように、傾斜ベルト層のコードを、幅:140mm の周方向ベルト層の端部を中心とする幅方向内側に3mm、幅方向外側に1mmの領域でへん平化したタイヤを、そのコード径のへん平比を表1に示すように種々に変化して、試作した。この傾斜ベルト層コードの部分的へん平化は、その領域にステッチャー処理を施して行った。なお、傾斜ベルト層のへん平化していない部分のコード径は、10本のサンプリングによる平均値で0.63mmであった。
【0027】
ここで、傾斜ベルト層は、コード構造:1×5×0.23mmのスチールコードを打ち込み数:37本/50mmで配列して形成した。また、周方向ベルト層は、コード構造:1500d/2 、撚り数:14×14のポリエチレンテレフタレート製コードの5本をゴム引きした帯状体を、傾斜ベルト層上に、打ち込み数が50本/50mmとなるように、らせん状に巻き回して形成した。
【0028】
さらに、従来例として、上記スチールコードによる傾斜ベルト層のコードをへん平化しないで、それ以外は上記と同様に配置したベルトをそなえるタイヤ、そして比較例として、傾斜ベルト層のコードを全てへん平化したタイヤも試作した。
【0029】
かくして得られた供試タイヤを規定サイズのリムに組み込み後に、内圧:2.0kgf/cmを充填した後、400 kgの荷重を負荷して回転ドラム上で90km/hで走行させて、カーカスプライの破断によるタイヤ破壊が発生するまでの走行距離を測定した。なお、100000kmまで破壊しないものは、そこで試験を終了した。これらの測定結果は、従来タイヤの結果を100 としたときの指数で表1に示した。
【0030】
また、コーナリングフォース:180kgfに相当する負荷を与えて、上記と同様のドラム走行試験を5000kmまで行った。この試験終了後に、タイヤを解剖して、傾斜ベルト層のコード端を起点とした亀裂のタイヤ周方向の合計長さを測定した。この結果を、傾斜ベルト層端部のタイヤ周方向長さに対する比として、セパレーションを評価した結果について表1に併記する。従って、亀裂がタイヤ周方向の全周にわたって繋がっていれば100 に、それ以外は100 未満となるわけである。
【0031】
【表1】
Figure 0003563439
【0032】
【発明の効果】
この発明によれば、周方向ベルト層および単一の傾斜ベルト層の組み合わせになるベルトにおいて不可避に生じていたカーカスプライの破断が抑制されるため、耐久性を犠牲にすることなしに、この種ベルトの特性を活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来タイヤの負荷転動時の挙動を示す模式図である。
【図2】従来タイヤの負荷転動時の挙動を示す模式図である。
【図3】従来タイヤの負荷転動時の挙動を示す模式図である。
【図4】この発明に従うタイヤの構造を示す模式図である。
【図5】この発明に従う傾斜ベルト層および周方向ベルト層の配置を示す図である。
【図6】傾斜ベルト層におけるコードの断面形状を示す図である。
【図7】傾斜ベルト層のコードのカーカス被覆ゴムに対する挙動を示す図である。
【符号の説明】
1 カーカス
2 傾斜ベルト層
3 周方向ベルト層
4 ビードコア
5 トレッド
6 コード

Claims (3)

  1. 1対のビードコア間にわたってトロイド状をなして跨がるカーカスのタイヤ径方向外側に、ベルトおよびトレッドを順次に配置した空気入りラジアルタイヤであって、ベルトは、タイヤ赤道面に対して傾いて延びる多数本のコードを配列した傾斜ベルト層の単一層と、この傾斜ベルト層のタイヤ径方向外側に配置した、タイヤ赤道面に沿って延びる多数本のコードを配列した周方向ベルト層の少なくとも1層とを有し、傾斜ベルト層は、周方向ベルト層の端縁を中心としてその幅方向両側にそれぞれ周方向ベルト層幅の 0.5 5.0 %を占める領域に対応する部分において、コードの輪郭形状をベルトの幅方向にへん平化したことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
  2. 傾斜ベルト層は、少なくとも3本のフィラメントからなるコードで構成される請求項1に記載のタイヤ。
  3. 周方向ベルト層は、有機繊維コードで構成される請求項1に記載のタイヤ。
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