JP3563009B2 - 流体中の物体の共振防止装置およびその方法 - Google Patents
流体中の物体の共振防止装置およびその方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体中の物体と該物体の下流に発生するカルマン渦との共振を防止するための共振防止装置及び共振防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体中に物体を置いた場合、その物体の下流側にカルマン渦が発生する。このカルマン渦の周波数が物体の固有振動周波数に近づいた場合、一種の共振が生じてしまう。従来はこの共振を防止するために、例えば、流体の流れ中にワイヤメッシュを配置する装置が提案されている(例えば、特開平6−174390号公報参照)。
【0003】
図10にこの装置の概略を示す。図に示すように、ダクト101において、多孔部材であるワイヤメッシュ104が、管群102,102の間に位置している。ダクト101の両側の内壁面101aには1対の固定片105が取り付けられている。ワイヤメッシュ104は、1対の固定辺105の間に流体の流れを横切るようにして配置されている。このワイヤメッシュ104の設置によって、流体粒子の振動に抵抗が与えられる。その結果、流れ方向のモードの共振の発生が防止される。
【0004】
【発明が解決しょうとする課題】
しかし、上記共振防止装置のように流体の流れの中にワイヤメッシュ104を配すると、流れに対して大きな抵抗を作ることになってしまう。そのことは、例えば流体が冷却液であれば、冷却効率を低下させることにもなる。
【0005】
また、流体中の適当な箇所にワイヤメッシュ104を取り付けるためのスペースがない場合もある。さらに、管群102のような物体に共振が生ずることが発覚した後に、その対処のためにダクト101内にワイヤメッシュ104による共振防止装置を設置しようとすると、ダクト101の分解などの煩雑な作業を必要とする。
【0006】
本発明は、流体の流れに大きな抵抗を生ぜしめることなく、しかも、流体中に大きな構造物を設置する必要がないような共振防止装置およびその方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願に係る共振防止装置は、流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、該制御手段は、検知された流速が、該物体の固有振動周波数より小さい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、該固有振動周波数より小さい第1の周波数の弾性振動波を流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、検知された流速が、該物体の固有振動周波数より大きい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、該固有振動周波数より大きい第2の周波数の弾性振動波を流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動する(請求項1)。
また、上記目的を達成するため、本願に係る共振防止方法は、流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避する共振防止方法であって、該物体近傍の流体の流速を直接的又は間接的に検知し、該検知した流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与え、該弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、該検知された流速が、該物体の固有振動周波数より小さい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、該固有振動周波数より小さい第1の周波数の弾性振動波を流体に与え、検知された流速が、該物体の固有振動周波数より大きい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、該固有振動周波数より大きい第2の周波数の弾性振動波を流体に与える(請求項7)。
かかる装置・方法によると、流体に与えられた弾性振動波の周波数にカルマン渦の周波数がロックインされる。よって、カルマン渦の周波数は励振周波数にならない。よって、物体の共振が起きない。流体中の物体近傍には大きな構造物を置く必要もないので、流体抵抗を生じないし、かかる装置を設置することも容易である。
また、流体の流速に応じて、よりロックインしやすい周波数にカルマン渦の周波数を導くことができる。
【0008】
上記共振防止装置において、該第1の周波数が、該物体の固有振動周波数の70%以上90%以下の周波数であり、該第2の周波数が、該物体の固有振動周波数の110%以上130%以下の周波数であることが好ましい。
また、上記共振防止方法において、該第1の周波数が、該物体の固有振動周波数の70%以上90%以下の周波数であり、該第2の周波数が、該物体の固有振動周波数の110%以上130%以下の周波数であることが好ましい。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本願に係る共振防止装置は、流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、該弾性振動波付与手段が、一の又は複数のスピーカで構成される(請求項2)。
かかる装置によると、流体に与えられた弾性振動波の周波数にカルマン渦の周波数がロックインされる。よって、カルマン渦の周波数は励振周波数にならない。よって、物体の共振が起きない。流体中の物体近傍には大きな構造物を置く必要もないので、流体抵抗を生じないし、かかる装置を設置することも容易である。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本願に係る共振防止装置は、流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、該弾性振動波付与手段が、対向して配置された第1の弾性振動波付与要素と第2の弾性振動波付与要素とで構成され、該第1の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波と該第2の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波とが、該流体の粒子速度がカルマン渦の発生位置近傍において最大となるように干渉する(請求項3)。
また、上記目的を達成するため、本願に係る共振防止方法は、流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避する共振防止方法であって、該物体近傍の流体の流速を直接的又は間接的に検知し、該検知した流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与え、該弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、対向して配置された第1の弾性振動波付与要素と第2の弾性振動波付与要素とによって該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与え、該第1の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波と該第2の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波とが、該流体の粒子速度がカルマン渦の発生位置近傍において最大となるように干渉する(請求項8)。
かかる装置・方法によると、流体に与えられた弾性振動波の周波数にカルマン渦の周波数がロックインされる。よって、カルマン渦の周波数は励振周波数にならない。よって、物体の共振が起きない。流体中の物体近傍には大きな構造物を置く必要もないので、流体抵抗を生じないし、かかる装置を設置することも容易である。
また、カルマン渦発生位置を含む流体粒子の粒子速度の大きな領域を広くすることができる。よって、弾性振動波の周波数にカルマン渦の周波数をロックインさせるという作用の及ぶ領域が広くなり、弾性振動波の周波数にカルマン渦の周波数を確実にロックインさせることができる。
【0011】
上記共振防止装置において、該第1の弾性振動波付与要素と該第2の弾性振動波付与要素とが、カルマン渦の発生位置を中心として該発生位置から等距離となるように配置され、該第1の弾性振動波付与要素と該第2の弾性振動波付与要素とは同振幅でかつ逆位相の弾性振動波を発生するようにしてもよい。
また、上記共振防止方法において、該第1の弾性振動波付与要素と該第2の弾性振動波付与要素とが、カルマン渦の発生位置を中心として該発生位置から等距離となるように配置され、該第1の弾性振動波付与要素と該第2の弾性振動波付与要素とは同振幅でかつ逆位相の弾性振動波を発生するようにしてもよい。
【0012】
また、上記共振防止装置において、該第1の弾性振動波付与要素と該第2の弾性振動波付与要素とが、いずれもスピーカであってもよい。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本願に係る共振防止装置は、流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、該弾性振動波付与手段が共鳴機構を有する(請求項4)。
かかる装置によると、流体に与えられた弾性振動波の周波数にカルマン渦の周波数がロックインされる。よって、カルマン渦の周波数は励振周波数にならない。よって、物体の共振が起きない。流体中の物体近傍には大きな構造物を置く必要もないので、流体抵抗を生じないし、かかる装置を設置することも容易である。
また、共鳴の作用によって効率的に弾性振動波を流体に与えることができる。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本願に係る共振防止装置は、流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、該弾性振動波付与手段の外周に遮音機構を設ける(請求項5)。
かかる装置によると、流体に与えられた弾性振動波の周波数にカルマン渦の周波数がロックインされる。よって、カルマン渦の周波数は励振周波数にならない。よって、物体の共振が起きない。流体中の物体近傍には大きな構造物を置く必要もないので、流体抵抗を生じないし、かかる装置を設置することも容易である。
また、弾性振動波を外部に騒音として放出することを極力防止できる。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本願に係る共振防止装置は、流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、流体中に発生したカルマン渦の周波数を検知する検知手段を備え、該制御手段は、該検知手段からの信号を受け、検知された周波数が該物体の固有振動周波数近傍の周波数である場合に、流体に与える弾性振動波の振幅を増加させるように該弾性振動波付与手段を駆動する(請求項6)。
また、上記目的を達成するため、本願に係る共振防止方法は、流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避する共振防止方法であって、該物体近傍の流体の流速を直接的又は間接的に検知し、該検知した流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与え、該弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、流体中に発生したカルマン渦の周波数を検知し、検知された周波数が該物体の固有振動周波数近傍の周波数である場合に、流体に与える弾性振動波の振幅を増加させる(請求項9)。
かかる装置・方法によると、流体に与えられた弾性振動波の周波数にカルマン渦の周波数がロックインされる。よって、カルマン渦の周波数は励振周波数にならない。よって、物体の共振が起きない。流体中の物体近傍には大きな構造物を置く必要もないので、流体抵抗を生じないし、かかる装置を設置することも容易である。
また、カルマン渦の周波数が、物体の固有振動周波数近傍の周波数から外れるようになるまで弾性振動波の振幅が増加される。よって、確実にカルマン渦の周波数を弾性振動波の周波数にロックインさせることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態たる共振防止装置の構成を、この装置が適用されたダクト1と共に示す図であり、(a)はダクト1の縦断面図、(b)は(a)のI−I矢視断面図である。この共振防止装置によって本発明の実施形態たる共振
防止方法が実施される。図2は、図1の共振防止装置の一部構成を示す斜観透視図である。ダクト1の中には流速Uを有する流体が流れている。図1(a)のダクト1中の矢印は、流体の流れ方向を示すものである。この流体の流れの中にプレート21が配置されている。プレート21の左右端は、ダクト1の左右の内壁面に固着されている。図1(a)からわかるように、プレート21の長手方向に直交する断面の形状は、前後端が半円状であり、その中間部が前後方向に一定の厚さを有するような形状である。つまり、プレート21は流体の流れ方向における前後端面が丸まった形状に形成されている。流体の流れによって、プレート21の下流側にはカルマン渦が発生する。
【0022】
図1(a)からわかるように、ダクト1の上壁には第1の弾性振動波付与要素たるスピーカ4aが設置されており、ダクト1の下壁には第2の弾性振動波付与要素たるスピーカ4bが設置されている。両スピーカ4a,4bは対向して配置されており、互いに対向する2のスピーカ4a,4bによってスピーカ対4が構成されている。ここではこのスピーカ対4によって弾性振動波付与手段が構成されている。カルマン渦の発生位置は、スピーカ4aとスピーカ4bとに挟まれている。カルマン渦の発生位置からスピーカ4aまでの距離と、スピーカ4bまでの距離とは略等しい。
【0023】
図1(b)からわかるように、かかるスピーカ対4は、ダクト1の幅方向に等間隔で並ぶように3対配設されている。また、この流体の流れの中において、プレート21の上流側であって、プレート21近傍の位置に、流体の流速Uを検知する第1の検知手段たる流速センサー5が配設されている。3対のスピーカ対4及び流速センサー5は図示されない制御装置に接続されている。
【0024】
また、ダクト1の外壁面には、3つのスピーカ対4の外周を覆うように、遮音機構たるスピーカキャビネット7が設けられている。このスピーカキャビネット7によって、スピーカ対4の音が外部に漏出することが防止される。すなわち、外部への騒音の漏出を防止しているのである。
【0025】
図3は、図1の共振防止装置の制御系統の構成を示す機能ブロック図である。図3を参照して説明する。流速センサー5は流体の流速を検知するためのものである。制御装置6は、演算処理器8と、信号発生器9と、増幅器10とで構成されている。演算処理器8は、例えばCPU等で構成されている。演算処理器8は、流速センサー5で検知された流速に応じた指令を、信号発生器9に対して出力する。信号発生器9は、演算処理器8から出力された指令に従って、所定の信号を出力する。増幅器10は、信号発生器9からの信号を増幅して、スピーカ4a,4bに供給する。スピーカ4aとスピーカ4bとは、増幅器10からの信号を弾性振動波たる音波に変換して流体中に放出する。
【0026】
スピーカ4aとスピーカ4bとは、増幅器10に対する極性が互いに逆になるように接続されている。つまり、例えばスピーカ4aは増幅器10に対して正極性で接続されており、スピーカ4bは増幅器10に対して逆極性で接続されている。よって、スピーカ4aが出力する音波とスピーカ4bが出力する音波とは、同振幅であって、互いに逆位相である。
【0027】
共振防止装置は以上のように構成されている。以下にその動作を説明する。
【0028】
図4は、カルマン渦のロックイン現象を示すグラフ図であり、図5は本発明に係る共振防止装置がこのロックイン現象を利用してプレート21の共振を防止する原理を示すグラフ図である。
【0029】
まず、図4を用いてカルマン渦のロックイン現象を説明する。図4は、図1のようにダクト1中にプレート21が存在する状態でダクト1中を流れる流体の流速Uと、この流体中で発生するカルマン渦の周波数との関係を示す図である。また、図4は共振防止装置が作動しない状態での流速Uとカルマン渦の周波数との関係を示すものである。図4の横軸は流体の流速Uを、縦軸は周波数fを示す。
【0030】
ダクト1内において流体の流れの中に存在するプレート21が、流体の流速Uがどのように変化しても全く振動することがないと仮定すると、プレート21の下流に発生するカルマン渦の周波数は、一点鎖線St’に示すように、流体の流速Uに対して概略比例した関係を示す。
【0031】
しかし実際にはプレート21は固有振動周波数を有しており、カルマン渦の放出周波数とプレート21の固有振動周波数とが概略一致すると、プレート21はその固有振動周波数で共振する。そのため、流体の流速Uに対してカルマン渦の周波数は、図中の実線Stのように変化する。
【0032】
ここでは、プレート21の固有振動周波数と概略一致することによってプレート21をその固有振動周波数で共振させてしまうようなカルマン渦の放出周波数を励振周波数と呼ぶ。励振周波数には一般に下限と上限とがあるが、励振周波数の下限を下限励振周波数、上限を上限励振周波数と呼ぶ。プレート21を下限励振周波数未満の周波数で起振しても、プレート21は共振を起こさない。また、プレート21を上限励振周波数を越える周波数で起振しても、プレート21は共振を起こさない。プレート21を下限励振周波数以上で且つ上限励振周波数以下の周波数で起振すると、プレート21は共振を起こす。図1、2に示す系においては、プレート21の固有振動周波数の値はf3であり、下限励振周波数の値はf2であり、上限励振周波数の値はf4である。f2、f3、f4の大小関係は、(f2<f3<f4)である。
【0033】
図4を参照しつつ、ダクト1中の流体の流速Uが0から徐々に大きくなっていったときに、プレート21の下流に発生するカルマン渦の周波数がどのように変化するかを、図中の実線Stに沿って説明する。
【0034】
ダクト1中の流体の流速Uが0近傍の値であるとき、カルマン渦の周波数も0近傍の値となる。流体の流速Uが徐々に大きくなると、それに比例するようにしてカルマン渦の周波数も大きくなってゆく。この傾向は、流体の流速Uの値がu2になるまで続く。
【0035】
流体の流速Uがu2に達すると、カルマン渦の周波数はf2になる。f2は、下限励振周波数の値である。よって、流体の流速Uがu2に達した時点で、プレート21は固有振動周波数(=f3)で振動を開始する。すなわち、共振し始めるのである。すると、カルマン渦の周波数は急にf2からf3に引き込まれる。
【0036】
そして、さらに流速Uを増大させていっても、カルマン渦の周波数はf3に維持されたままの状態となる。この状態は、流速Uがu4の値となるまで続く。つまり、流速がu2からu4になるまでの間、プレート21はその固有振動周波数(=f3)で共振を続け、カルマン渦の周波数はf3に維持されるのである。
【0037】
そして、流速Uがu4を越えると、カルマン渦の周波数は急に上限励振周波数の値であるf4を越える値となり、それと同時にプレート21の共振は停止する。
【0038】
さらに、流速がu4よりも徐々に大きくなっていくと、それに比例するようにしてカルマン渦の周波数も大きくなってゆく。
【0039】
このように、流速Uがu2以上でu4以下となる範囲でカルマン渦の周波数がプレート21の固有振動周波数に一致するのは、カルマン渦がプレート21の固有振動周波数f3に引き込まれるからである。
【0040】
このような現象は、ダクト1中の流体の流速Uが0から徐々に大きくなっていくときのみならず、逆に流速Uがu4より大きな値からu2より小さな値にまで徐々に小さくなっていくような場合も同様に生ずる。つまり、流速Uがu2以上でu4以下となる範囲ではカルマン渦の周波数がプレート21の固有振動周波数(=f3)に引き込まれ、それ以外の流速範囲においてはカルマン渦の周波数は流速に概略比例する。
【0041】
このような現象、つまり、流体に振動を与える起振源の周波数にカルマン渦の周波数が引き込まれて一致してしまう現象は、一般にロックイン現象と呼ばれている。ロックイン現象が生じているときは、プレート21とカルマン渦とが互いに共振していることになる。以上の現象は、共振のみならず共鳴においても同様に生ずる。
【0042】
次に、図5を参照しつつ、共振防止装置が作動するときの状態を説明する。共振防止装置は、共鳴現象に基づくロックイン現象を利用してプレート21とカルマン渦との共振を回避するものである。共振防止装置が作動している状態では、カルマン渦の周波数は図5の太線Sfに示されるように変化する。図1、図3、図5を参照して説明すると、共振防止装置は流速センサー5によって流体の流速Uを検出している。制御装置6の演算処理器8には、u1という値と、u3という値と、u5という値とが記憶されている。
【0043】
u1は、0よりも大きく、かつ、下限励振周波数の値であるf2の周波数のカルマン渦を発生させる流速u2よりも小さな値である。流速u1で発生するカルマン渦の周波数はf1である。f1は、プレート21の固有振動周波数の値であるf3の70%以上90%以下の値であることが望ましい。
【0044】
u3は、プレート21の固有振動周波数f3に一致する周波数のカルマン渦を発生させる流速である。
【0045】
u5は、上限励振周波数の値であるf4の周波数のカルマン渦を発生させる流速u4よりも大きな値である。流速u5で発生するカルマン渦の周波数はf5である。f5は、プレート21の固有振動周波数の値であるf3の110%以上130%以下の値であることが望ましい。
【0046】
そして、演算処理器8は流速センサー5で検出された流速Uを受け、この流速Uを上記したu1、u3、u5と比較する。
【0047】
もしも検出した流速Uがu1よりも小さい場合には、演算処理器8は信号発生器9に対して、何らの信号も発生しないように指令を発する。よって、スピーカ4a,4bからは音波は出力されない。流速Uがu1よりも小さいということは、カルマン渦の周波数が励振周波数以外の周波数であるということなので、プレート21は共振を起こさない。
【0048】
もしも検出した流速Uがu1以上かつu3以下であれば、演算処理器8は信号発生器9に対して、f1の周波数の信号を発生するように指令を発する。よって、スピーカ4a,4bからはf1の周波数の音波が出力される。すると、カルマン渦の周波数は、スピーカ4a,4bから発せられる音波の周波数であるf1にロックインされる。つまり、流速Uがu2からu3までの範囲であっても、カルマン渦の周波数はf1に維持され、励振周波数にはならない。よって、プレート21は共振を起こさない。
【0049】
もしも検出した流速Uがu3より大きくかつu5以下であれば、演算処理器8は信号発生器9に対して、f5の周波数の信号を発生するように指令を発する。よって、スピーカ4a,4bからはf5の周波数の音波が出力される。カルマン渦の周波数は、スピーカ4a,4bから発せられる音波の周波数であるf5にロックインされる。つまり、流速Uがu3からu4までの範囲であっても、カルマン渦の周波数はf5に維持され、励振周波数にはならない。よって、プレート21は共振を起こさない。
【0050】
もしも検出した流速Uがu5よりも大きい場合には、演算処理器8は信号発生器9に対して、何らの信号も発生しないように指令を発する。よって、スピーカ4a,4bからは音波は出力されない。流速Uがu5よりも大きいということは、カルマン渦の周波数が励振周波数以外の周波数であるということなので、プレート21は共振を起こさない。
【0051】
このように、流体の流速がいかなる値であろうと、カルマン渦の周波数は励振周波数にはならない。よって、プレート21は共振を起こさない。
【0052】
上記の説明からわかるように、演算処理器8が検出した流速Uが、プレート21の固有振動周波数f3より小さな周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、その固有振動周波数より小さい周波数f1の音波がスピーカ4a,4bから出力される。また、演算処理器8が検出した流速Uが、プレート21の固有振動周波数f3より大きな周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、その固有振動周波数より大きい周波数f5の音波がスピーカ4a,4bから出力される。このようにして、カルマン渦がよりロックインしやすいように、スピーカ4a,4bの音波の周波数を切り替えているのである。
【0053】
なお、演算処理器8は、所定時間間隔毎に流速Uを検出し、上記のような比較判断や指令を、流速Uを検出する度に行っている。この所定時間間隔を短く設定すると、流体の流速変化が急激に生ずる可能性のある系においても、その流速変化に追随してプレート21の共振を確実に回避することができる。
【0054】
上記の装置において、プレート21の共振をより確実に防止するために、フィードバック制御を行っても良い。具体的な構成を説明すると、流体中のカルマン渦発生位置近傍にプローブを設置し、このプローブの出力信号を演算処理器8に送出するのである。そして、その信号によって流体中に発生したカルマン渦の周波数を検知し、検知した周波数がプレート21の固有振動周波数の近傍の周波数である場合に、スピーカ4a,4bから出力される音波の振幅をわずかに増大させるのである。そしてこのような処理を、カルマン渦の周波数がスピーカ4a,4bからの音波の周波数と略同一するようになるまで繰り返すのである。このようにすると、プレート21の共振をより確実に防止することができる。
【0055】
次に、図1、図2の系におけるプレート21を、図6に示すようなプレート22に取りかえたような系に、本発明の共振防止装置を適用した場合について説明する。図1、図2に示されるプレート21の長手方向に直交する断面の形状は、前後端が半円状であり、その中間部が前後方向に一定の厚さを有するような形状であったが、図6のプレート22の長手方向に直交する断面の形状は長方形である。つまり、流体の流れ方向における前後端面が、流れ方向に対して直交する平面状に形成されている。このように前後端の形状が異なることにより、カルマン渦の発生状態が、図1、2のプレート21の場合と異なる。
【0056】
図7は、図1のようなダクト1中にプレート22が存在する状態での、ダクト1中を流れる流体の流速Uと、この流体中で発生するカルマン渦の周波数との関係を示すものである。また、図7は共振防止装置が作動していない状態での流速Uとカルマン渦の周波数との関係を示すものである。図7の横軸は流体の流速Uを、縦軸は周波数を示す。
【0057】
ダクト1内において流体の流れの中に存在するプレート22が、流体の流速Uがどのように変化しても全く振動することがないと仮定すると、プレート22の下流に発生するカルマン渦の周波数は、図7の点線St’に示すように、流体の流速Uに対して概略比例した関係を示す。点線St’によって示されるように、流速Uの値がu7のときカルマン渦の周波数はf7となり、流速Uの値がu9のときカルマン渦の周波数はf9となる。
【0058】
しかし実際にはプレート22は固有振動周波数を有しているので、ある周波数範囲のカルマン渦によってプレート22は共振する。すなわち、プレート22が励振される。この系では、プレート22の固有振動周波数の値がf7であり、下限励振周波数の値がf7であり、上限励振周波数の値がf9である。このように、プレート22の固有振動周波数の値と下限励振周波数の値とが一致している。この系では、流体の流速Uに対して、カルマン渦の周波数は図中の実線Stのように変化する。このように、流速Uがu7以上でu9以下となる範囲では、カルマン渦がプレート22の固有振動周波数f7にロックインされる。
【0059】
次に、共振防止装置が作動するときの状態を、図8を用いて説明する。図8の太線Sfは、共振防止装置が作動しているときの、カルマン渦の周波数の変化を示すものである。以下、この太線Sfに沿って、共振防止装置の動作を説明する。
【0060】
共振防止装置の演算処理器8には、u6という値と、u8という値と、u10という値とが記憶されている。
【0061】
u6は、0よりも大きく、かつ、下限励振周波数の値であるf7の周波数のカルマン渦を発生させる流速u7よりも小さな値である。流速u6で発生するカルマン渦の周波数はf6である。
【0062】
u8は、下限励振周波数の値であるf7の周波数のカルマン渦を発生させる流速u7よりも大きく、かつ、上限励振周波数の値であるf9の周波数のカルマン渦を発生させる流速u9よりも小さな値である。
【0063】
u10は、上限励振周波数の値であるf9の周波数のカルマン渦を発生させる流速u9よりも大きな値である。流速u10で発生するカルマン渦の周波数はf10である。
【0064】
そして、演算処理器8は流速センサー5で検出された流速Uを受け、この流速Uを上記したu6、u8、u10と比較する。
【0065】
もしも検出した流速Uがu6よりも小さい場合には、演算処理器8は信号発生器9に対して、何らの信号も発生しないように指令を発する。よって、スピーカ4a,4bからは音波は出力されない。流速Uがu6よりも小さいということは、カルマン渦の周波数が励振周波数以外の周波数であるということなので、プレート22は共振を起こさない。
【0066】
もしも検出した流速Uがu6以上かつu8以下であれば、演算処理器8は信号発生器9に対して、f6の周波数の信号を発生するように指令を発する。よって、スピーカ4a,4bからはf6の周波数の音波が出力される。すると、カルマン渦の周波数は、スピーカ4a,4bから発せられる音波の周波数であるf6にロックインされる。つまり、流速Uがu7からu8までの範囲であっても、カルマン渦の周波数はf6に維持され、励振周波数にはならない。よって、プレート22は共振を起こさない。
【0067】
もしも検出した流速Uがu8より大きくかつu10以下であれば、演算処理器8は信号発生器9に対して、f10の周波数の信号を発生するように指令を発する。よって、スピーカ4a,4bからはf10の周波数の音波が出力される。カルマン渦の周波数は、スピーカ4a,4bから発せられる音波の周波数であるf10にロックインされる。つまり、流速Uがu8からu9までの範囲であっても、カルマン渦の周波数はf10に維持され、励振周波数にはならない。よって、プレート22は共振を起こさない。
【0068】
もしも検出した流速Uがu10よりも大きい場合には、演算処理器8は信号発生器9に対して、何らの信号も発生しないように指令を発する。よって、スピーカ4a,4bからは音波は出力されない。流速Uがu10よりも大きいということは、カルマン渦の周波数が励振周波数以外の周波数であるということなので、プレート22は共振を起こさない。
【0069】
このように、流体の流速がいかなる値であろうと、カルマン渦の周波数は励振周波数にはならない。よって、プレート22は共振を起こさない。
【0070】
以上、図1〜8に基づいて、本願発明の実施形態たる共振防止装置・方法を説明した。
【0071】
上記共振防止装置・方法では、スピーカ4a,4bを対向して配置しているが、その理由は次の通りである。すなわち、スピーカ4aからカルマン渦の発生位置までの距離と、スピーカ4bからカルマン渦の発生位置までの距離とが等しくなるようにスピーカ4a,4bは配置されている。前述したようにスピーカ4aとスピーカ4bからは、同振幅で逆位相の音波が出力されている。よって、スピーカ4aからの音波とスピーカ4bからの音波とは、カルマン渦発生位置において、互いにその音圧を打ち消し合うように作用する。換言すれば、カルマン渦発生位置において、音波による粒子速度が最大となるように干渉し合うのである。つまり、カルマン渦をスピーカ4a,4bの出力する音波の周波数にロックインさせるという作用の及ぶ範囲が、より広くなるのである。このように、粒子を大きく振動させることによって、また、粒子が大きく振動する領域を広くすることによって、カルマン渦をその周波数(スピーカからの音波の周波数)に確実にロックインさせることができるのである。このことを、図9を参照して説明する。
【0072】
図9は、流体中にプレートPを置きその流体にスピーカSによって弾性振動波たる音波を与えたとき、流体の粒子速度がどのような値となるのかをシミュレーション計算した結果を示す図であり、図9(a)は、上側のスピーカSのみを駆動したときの結果であり、図9(b)は上下のスピーカSを同振幅逆位相で駆動したときの結果である。図中の斜線領域は、粒子速度のY方向成分がある値以上となる領域である。(a)と(b)との比較から明らかなように、同一の駆動力でスピーカを駆動しても、粒子速度がある値以上となる範囲は(a)と(b)とで大きく異なる。特に、(b)ではプレートPの前後端近傍において粒子速度の大きな領域が広くなっており、スピーカSからの音波の影響をカルマン渦に与えやすくなることがわかる。
【0073】
上記共振防止装置・方法では、カルマン渦の発生位置から2台のスピーカ4a,4bまでの距離が等しく、また、2台のスピーカ4a,4bからは同振幅で逆位相の音波が出力される。しかし、対向する2台のスピーカからの音波を干渉させて、音波による粒子速度がカルマン渦発生位置において最大となるようにするには、必ずしもそのように等距離、同振幅、逆位相とする必要はない。例えば、図1の系において、プレート21がもっと下方に配置されているような場合、すなわち、プレート21からスピーカ4bまでの距離が、プレート21からスピーカ4aまでの距離よりも短くなるように配置されている場合であっても、音波による粒子速度がカルマン渦発生位置において最大となるように、スピーカ4a、4bからの音波を干渉させることもできる。つまり、両スピーカ4a,4bから出力させる音波の位相差を調整することによって、カルマン渦発生位置(すなわちプレート21の後方の位置)において音圧が互いにうち消し合うようにすればよいのである。このように、対向する2台のスピーカの出力する音波の振幅や位相差を調整することによって、カルマン渦の発生位置から2台のスピーカまでの距離が等しくない場合においても、音波による粒子速度がカルマン渦発生位置において最大となるようにすることができる。
【0074】
また、上記共振防止装置・方法では、スピーカ4a,4bを1台の増幅器10で駆動するようにしたが、スピーカ4a用の増幅器とスピーカ4b用の増幅器とを別個に用意してもよい。この場合、2台の増幅器への入力信号を逆位相として、それぞれの増幅器に対するスピーカの接続を両方とも正極性としてもよい。
【0075】
なお、上記共振防止装置では、スピーカ4a,4bを対向して配置しているが、必ずしも複数のスピーカを対向配置する必要はない。要するに、カルマン渦発生位置において、スピーカからの音波による粒子の運動が生ずるようにすればよいのである。よって、複数のスピーカを同一の向きに配置してもよいし、一のスピーカのみを配置してもよい。
【0076】
また、上記共振防止装置・方法では、検出した流速Uに応じて、スピーカ4a,4bから出力させる音波の周波数をf1とf5とに切り替えたり、f6とf10とに切り替えるようにしている。このように、スピーカ4a,4bから出力する音波の周波数を流速によって切り替えているのは、スピーカ4a,4bからの音波の周波数をよりカルマン渦がロックインしやすいものとするためである。
【0077】
つまり、例えば図1、2の系において、流速Uがu2の値であるときには、流体中に何らの起振源がなければカルマン渦の周波数はf2になる。f1はf5よりもf2に近いので、流速Uがu2の値であるときには、カルマン渦はf5よりもf1の起振源によりロックインされやすいのである。流速Uがu2であるときにカルマン渦の周波数をf5にロックインしようとすればスピーカ4a,4bからの出力を比較的大きくしなければならないが、f1にロックインしようとするのであればスピーカ4a,4bからの出力は比較的小さくてすむ。
【0078】
なお、スピーカ4a,4bからの音波の周波数を上記のように切り替えることなく、スピーカを動作させるべき全流速範囲において、一定の周波数の音波をスピーカから出力させるようにしてもよい。例えば図1、2の系において、検出した流速Uがu1以上かつu5以下となる全範囲で、スピーカ4a,4bからf1の周波数の音波を出力するようにしてもよい。ただし、流速Uがu5のときにもカルマン渦をf1の周波数にロックインさせることが必要となるので、スピーカ4a,4bから出力を比較的大きくする必要がある。
【0079】
また、上記共振防止装置・方法では、流体中に流速センサーを設置し、このセンサーによって流体の流速を検知した。しかし、このように直接的に流速を検出するだけでなく、より間接的に検出してもよい。例えば、ある駆動源、例えばモータによって流体に流れを生じさせているのであれば、このモータに供給する電圧によって流体の流速は変化するはずである。このモータに供給する電圧を検知することによって間接的に流体の流速を検知してもよい。つまり、直接的に流速を検出しなくとも、流速と相関のある物理量を検出すればよいのである。
【0080】
なお、上記の説明では、弾性振動波として音波を用いたが、プレートの固有振動周波数に応じて超音波等、可聴周波数以外の周波数の弾性振動波を用いても良い。
【0081】
また、上記では、ダクト中にプレートが置かれる場合を説明したが、流体はダクトを流れるものに限られるものではない。例えば、地表面近傍を流れる空気に適用することもできる。また、流体中に置かれる物体はプレートに限定されるものではなく、カルマン渦を生じさせるものであればいかなるものであっても、本発明を適用することができる。例えば一端がダクトの内壁面に固定された柱状物であってもよい。なお、流体中に置かれる物体としては、これに限定されるのではないが、例えば整流板、スプリッタ型吸音板、温度計などがある。
【0082】
また、上記共振防止装置・方法では、弾性振動波付与手段としてスピーカを用いたが、スピーカを音響管やヘルムホルツ共鳴器などの共鳴機構と組み合わせて用いても良い。かかる構成とすると、スピーカからの音波を共鳴させて、より強い音波を効率よく流体に与えることができる。
【0083】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
(1)本願に係る共振防止装置・方法によると、流体中の物体近傍に大きな構造物を置くことなく、流体中の物体の共振を回避できる。よって、流体抵抗を生じないし、物体近傍に装置を設置することも容易である。
(2)検知された流速が、物体の固有振動周波数より小さい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合には、その固有振動周波数より小さい第1の周波数の弾性振動波を流体に与え、検知された流速が、物体の固有振動周波数より大きい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合には、その固有振動周波数より大きい第2の周波数の弾性振動波を流体に与えるようにすると、流体の流速に応じて、よりロックインしやすい周波数にカルマン渦の周波数を導くことができる。
(3)第1の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波と第2の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波とを、流体の粒子速度がカルマン渦の発生位置近傍において最大となるように干渉させると、弾性振動波の周波数にカルマン渦の周波数を確実にロックインさせることができる。
(4)弾性振動波付与手段が共鳴機構を有するように構成すると、共鳴の作用によって効率的に弾性振動波を流体に与えることができる。
(5)弾性振動波付与手段の外周に遮音機構を設けると、弾性振動波を外部に騒音として放出することを極力防止できる。
(6)流体中に発生したカルマン渦の周波数を検知して、その周波数が物体の固有振動周波数近傍の周波数である場合に、流体に与える弾性振動波の振幅を増加させるようにすると、確実にカルマン渦の周波数を弾性振動波の周波数にロックインさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る共振防止装置の構成を示す図であり、(a)はダクトの縦断面図、(b)は(a)のI−I矢視断面図である。
【図2】図1の共振防止装置の一部構成を示す斜観透視図である。
【図3】図1の共振防止装置の制御系統の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】流体の流速とカルマン渦の周波数との関係を示す図である。
【図5】流体の流速とカルマン渦の周波数との関係を示す図である。
【図6】プレートの形状を示す斜視図である。
【図7】流体の流速とカルマン渦の周波数との関係を示す図である。
【図8】流体の流速とカルマン渦の周波数との関係を示す図である。
【図9】流体中にプレートを置きその流体にスピーカによって弾性振動波たる音波を与えたときの、流体の粒子速度のシミュレーション計算の結果を示す図であり、(a)は、上側のスピーカのみを駆動したときの結果を示す図であり、(b)は上下のスピーカを同振幅逆位相で駆動したときの結果を示す図である。
【図10】流体中の物体の共振を防止する従来の装置を示す図である。
【符号の説明】
1 ダクト
4 スピーカ対
4a、4b スピーカ
5 流速センサー
7 スピーカキャビネット
6 制御装置
8 演算処理器
9 信号発生器
10 増幅器
21、22 プレート
S スピーカ
P プレート
Claims (9)
- 流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、
弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、
該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、
該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、
該制御手段は、検知された流速が、該物体の固有振動周波数より小さい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、該固有振動周波数より小さい第1の周波数の弾性振動波を流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、検知された流速が、該物体の固有振動周波数より大きい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、該固有振動周波数より大きい第2の周波数の弾性振動波を流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動する、共振防止装置。 - 流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、
弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、
該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、
該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、
該弾性振動波付与手段が、一の又は複数のスピーカで構成された、共振防止装置。 - 流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、
弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、
該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、
該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、
該弾性振動波付与手段が、対向して配置された第1の弾性振動波付与要素と第2の弾性振動波付与要素とで構成され、
該第1の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波と該第2の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波とが、該流体の粒子速度がカルマン渦の発生位置近傍において最大となるように干渉する、共振防止装置。 - 流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、
弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、
該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性 振動波付与手段を駆動し、
該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、
該弾性振動波付与手段が共鳴機構を有する、共振防止装置。 - 流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、
弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、
該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、
該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、
該弾性振動波付与手段の外周に遮音機構を設けた、共振防止装置。 - 流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避するための共振防止装置であって、
弾性振動波を該流体に与える弾性振動波付与手段と、制御手段とを備え、
該制御手段は、該物体近傍の流体の流速を直接的に又は間接的に検知し、検知された流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与えるように該弾性振動波付与手段を駆動し、
該弾性振動波付与手段によって弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、
流体中に発生したカルマン渦の周波数を検知する検知手段を備え、
該制御手段は、該検知手段からの信号を受け、検知された周波数が該物体の固有振動周波数近傍の周波数である場合に、流体に与える弾性振動波の振幅を増加させるように該弾性振動波付与手段を駆動する、共振防止装置。 - 流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避する共振防止方法であって、
該物体近傍の流体の流速を直接的又は間接的に検知し、該検知した流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与え、
該弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、
該検知された流速が、該物体の固有振動周波数より小さい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、該固有振動周波数より小さい第1の周波数の弾性振動波を流体に与え、検知された流速が、該物体の固有振動周波数より大きい周波数のカルマン渦を発生させる流速である場合は、該固有振動周波数より大きい第2の周波数の弾性振動波を流体に与える、共振防止方法。 - 流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避する共振防止方法であって、
該物体近傍の流体の流速を直接的又は間接的に検知し、該検知した流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与え、
該弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、
対向して配置された第1の弾性振動波付与要素と第2の弾性振動波付与要素とによって該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与え、
該第1の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波と該第2の弾性振動波付与要素によって発生する弾性振動波とが、該流体の粒子速度がカルマン渦の発生位置近傍において最大となるように干渉する、共振防止方法。 - 流体中に置かれた物体と該物体の下流に生ずるカルマン渦との共振を回避する共振防止方法であって、
該物体近傍の流体の流速を直接的又は間接的に検知し、該検知した流速で発生するカルマン渦の周波数が該物体を該物体の固有振動周波数で共振させる励振周波数であるとき、該励振周波数以外の周波数の弾性振動波を該流体に与え、
該弾性振動波を該流体に与えることにより、カルマン渦の周波数を該弾性振動波の周波数にロックインさせ、
流体中に発生したカルマン渦の周波数を検知し、検知された周波数が該物体の固有振動周波数近傍の周波数である場合に、流体に与える弾性振動波の振幅を増加させる、共振防止方法。
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