JP3562865B2 - 感光性樹脂版の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はダンボ−ル印刷、フィルム印刷、プレプリント印刷、ラベル印刷のような凸版印刷用の感光性樹脂版の製造方法に関わるものであり、特に感光性樹脂版の版厚精度を改良する為の方法に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この液状感光性樹脂を用いて印刷版を製造するには、先ず図1のように、下部透明基版1の上にネガフィルム3及びカバーフィルム4を真空等の手段により密着して置き、その上に感光性樹脂層5を積層し、これにベースフィルム6とマスキングフィルム7を重ねる。その後、感光性樹脂版の厚みを決めるためにセットされたスペーサー8の上に置かれた上部透明基板2を通して活性光を照射してレリーフ部分の基部を形成させるためのマスキング露光を行い、次にレリーフ部分の画像を形成させるために下部透明基板1側からネガフィルム3を介して活性光を照射してレリーフ露光を行なった後、図2のようにマスキングフィルム7を取り除いて、形成されたレリーフ部A,Bをベースフィルム6に安定的に固定させるためのバック露光を上部透明基板2側から行なう。
【0003】
次に、適当な洗剤で未硬化部分を洗い出して現像し、後露光及び乾燥処理を施せば、印刷版が得られる。
または、マスキングフィルムを使用しないで、下部透明基版1の上にネガフィルム3及びカバーフィルム4を密着して置き、その上に感光性樹脂層5を積層し、これにベースフィルム6を重ねる。その後、感光性樹脂版の厚みを決めるためにセットされたスペーサー8の上に置かれた上部透明基板2を通して活性光を照射して版の基部を形成させるためのバック露光を行い、次に下部透明基板1側からネガフィルム3を介して活性光を照射してレリーフ露光を行ない、現像、後露光及び乾燥処理して版を得る方法も広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の技術で得られる印刷版には、通常版面画像面積すなわち印刷時に被印刷物と接触する部分の面積の異なるレリーフ部分がふくまれるが、このようなレリーフ部分においては、図3に示す断面図のように版面画像面積の小さいレリーフ部分B(以下小面積レリーフ部と略記)が版面画像面積の大きいレリーフ部分A(以下大面積レリーフ部と略記)よりも版厚が高くなる傾向がみられ、また大面積レリーフ部においては、その中心部が周囲部よりも低く、陥没した状態になる傾向がある。この現象は感光性樹脂が光硬化する際に発生する熱による透明基板の熱変形及び感光性樹脂が硬化する際の収縮に起因する。そして、このような各レリーフ部分間の版厚の高低や同一レリーフ部分の画像に凹凸を生じると、これを用いて印刷したときに大面積レリーフ部の中心部等で印刷インキの着肉及び転移が不十分になり、その結果、鮮明な印刷画像が得られ難くなり、また印刷インキの着肉及び転移を十分にするために印圧を増加すると小面積レリーフ部が変形するため、印刷ゲイン(原稿に対する画像の太り)が大きくなるのを免れない。
【0005】
従来、このような欠点を克服するために、硬化時の収縮の少ない感光性樹脂組成の開発が行われてきたが、特殊な化合物を用いたり、印刷版ごとに適合する組成物を用意する必要がある上に、効果上の限界があり、必ずしも満足のしうるものではなかった。
そこで本発明はこのような従来方法における欠点を克服し、小面積レリーフ部の高さが大面積レリーフ部の高さと同じで、かつ大面積レリーフ部における中心部と周囲部との高低差のない版面を形成させることにより、鮮明でしかも印刷ゲインの小さい印刷画像を与える印刷用凸版を製造する方法を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、下部透明基板の上にネガフィルム、カバーフィルム、液状感光性樹脂、ベースフィルム、マスキングフィルム、上部透明基板をこの順序に積層し、先ず上部透明基板を通してマスキング露光を行ない、次いで下部透明基板を通してレリーフ露光を行ない、更にマスキングフィルムを除去した上で、上部透明基板を通してバック露光を行なった後、未硬化の液状感光性樹脂を除去して感光性樹脂版を作成する方法であって、マスキング露光とレリーフ露光との間に2分以上、レリーフ露光待時間を設ける感光性樹脂版の製造方法であり、または、下部透明基板の上にネガフィルム、カバーフィルム、液状感光性樹脂、ベースフィルム、上部透明基板をこの順序に積層し、先ず上部透明基板を通してバック露光を行ない、次いで下部透明基板を通してレリーフ露光を行なった後、未硬化の液状感光性樹脂を除去して感光性樹脂版を作成する方法であって、バック露光とレリーフ露光との間に2分以上、レリーフ露光待時間を設ける感光性樹脂版の製造方法である。さらには、マスキング露光中又はレリーフ露光待時間中の少なくとも一方の間に、2枚の透明基板間距離を減少させる請求項1または2に記載の感光性樹脂版の製造方法である。
【0007】
すなわち、本願発明の製造方法は、感光性樹脂を成型・露光するに際して、第1次露光である背面露光(マスキング露光又はバック露光)の後に2分以上、好ましくは3分以上の待時間を入れた後にレリーフ露光することを特徴とするものである。
以下、本願発明をさらに詳細に説明する。
【0008】
本願発明の製造方法においては、感光性樹脂、例えば特公昭52−7761号、特開昭60−191237号、特開昭63−88555号、特開平1−245245号公報等で示される液状感光性樹脂を使用する事ができる。
通常版厚が4mm以上のいわゆる厚手版を製造する場合は、先ず図1のように、透明基板1の上にネガフィルム3及びカバーフィルム4を重ねて置き、透明基板1に加工された穴・溝及び真空配管によりネガフィルムを透明基板1に真空密着する。その上に感光性樹脂層5を積層し、これにベースフィルム6とマスキングフィルム7を重ねる。その後、感光性樹脂版の厚みを決めるためにセットされたスペーサー8の上に透明基板2を乗せ、この透明基板2を通して活性光を照射してレリーフ部分の基部を形成させるための背面露光(マスキング露光)を行い、次に分以上、好ましくは分以上の全く露光を行わない時間、言わば「レリーフ露光待時間」を設け、しかる後に画像のレリーフ部分を形成させるために透明基板1側からネガフィルム3を介して活性光を照射するレリーフ露光を行なう。次にマスキングフィルム7を取り除いて、形成されたレリーフ部A・Bとベースフィルム6とを固定させるためのバック露光を透明基板2側から行なう。
【0009】
次に、適当な洗剤で未硬化の感光性樹脂を洗浄除去し、後露光及び乾燥処理を施す事により、印刷版が得られる。
又、通常版厚が4mm未満の比較的薄い版を製造する場合には、上記したマスキングフィルム7を使用しないで、先ず透明基板2を通して版全面にレリーフ部分の基部を形成させるための背面露光(バック露光)を行ない、次いで画像のレリーフ部分を形成させるために透明基板1側からレリーフ露光を行なう方法が行なわれる。この場合にも、背面露光(バック露光)とレリーフ露光の間に分以上、好ましくは分以上の「レリーフ露光待時間」を設ける。
【0010】
このようにして得られた印刷版は、従来の方法によって製造された版に比べて、特に大面積レリーフ部における中心部と周囲部との厚み差が少なく、更には小面積レリーフ部と大面積レリーフ部の厚さがほぼ同一であって、鮮明でしかもゲインの小さい、原稿に対して高度の再現性を有する印刷画像を与えることができる。
レリーフ露光待ち時間としては、通常2分以上、好ましくは3分から7分の間の時間が前記画像間の厚み差が極小化でき、しかも従来に比べての製版時間の延長が過大とならない、有効性・実用性の高い条件である。
更に、露光中又はレリーフ露光待ち時間中の少なく共一方の間に、2枚の透明基板間距離を適当量減少させる事により、より厚み精度の向上した版を製造する事ができる。
【0011】
この製版に使用される透明基板としては、ガラス及びアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂などのプラスチックや透明セラミックが用いられる。
本発明によれば、マスキング露光の後、レリーフ露光前に全く露光しない時間を設ける事により、この待ち時間中に、マスキング露光中に樹脂の硬化によって発生した熱による上下の透明基板の変形が回復し、更には両透明基板間に拘束されている感光性樹脂の硬化に伴なう収縮によって発生する未硬化樹脂の流動が停止し、樹脂層の厚みが平準化する事によって、画像部間の厚み差が極小化した版を製造する事ができる。
更に、露光中又はレリーフ露光待時間中の少なくとも一方の間に、感光性樹脂の硬化収縮率に見合った量だけ、2枚の透明基板間距離を減少させる事により、露光中の樹脂層の厚みの平準化が一層促進され、より厚み精度の向上した版を製造する事ができる。
【0012】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。なお、各実施例における版厚精度△T及び大面積レリーフ内版厚差△tは次のように定める。
(1)版厚精度△T;全体のレリーフ部の版厚を、50mm以上150mm以下の間隔の格子状に配設された個所で測定し、その最小値と最大値の差。
(2)大面積レリーフ内版厚差△t;最も大きい版面画像面積のレリ−フ部の中心部と外周部の版厚の差。
【0013】
【実施例1】
高精度に研磨されたパイレックスガラス製下部硬質透明基板の上にネガフィルム及びカバーフィルムを介して液状感光製樹脂APR(登録商標) Fー47(旭化成工業株式会社製)を積層して厚さ7mm(カバーフィルム・ベースフィルム含む)の感光性樹脂層を形成させ、その上にポリエステルベースフィルム及びマスキングフィルムを介して高精度に研磨されたパイレックスガラス製上部硬質基板を載置した。2枚の硬質基板の間隔はスペーサにより保持した。次いで上下硬質基板より真空吸引して、ネガフィルム及びマスキングフィルムの密着性を保ちながら3分保持した後、上部透明基板及びマスキングフィルムを透して活性光を照射してマスキング露光を150秒行なった後に、5分間全く露光しない時間を設けた。その後、下部透明基板及びネガフィルムを透して活性光を照射するレリーフ露光を120秒行ない、マスキングフィルムを除去した。次に、上部透明基板を透して活性光を照射するバック露光を25秒行ない画像形成露光を完了した。
【0014】
次に、このようにして露光処理した感光層を常法に従って洗浄液で洗い出し、現像したのち、後露光し、乾燥することにより、版厚7mmの印刷版を得た。
この版の版厚精度△T及び大面積レリーフ内版厚差△Tを表1に示す。
【0015】
【比較例1】
実施例1において、マスキング露光の後に待ち時間を設けず、続けてレリーフ露光を行なった以外は、実施例1と全く同様にして7mmの印刷版を得た。結果を表1に示す。
【0016】
【実施例2】
実施例1と同様の製造方法で、マスキング露光中に、上下の透明基板の間隔を0.04mm縮小させる条件で版厚7mmの印刷版を得た。その結果を表2に示す。
【0017】
【実施例3】
実施例1と同様の製造方法で、マスキング露光中に、上下の透明基板の間隔を0.1mm縮小させ、更にレリ−フ露光待ち時間5分のうちの初めの2分、上部透明基板からの真空吸引を中断する条件で版厚7mmの版を得た。その結果を表2に示す。
【0018】
【表1】
Figure 0003562865
【0019】
【表2】
Figure 0003562865
【0020】
【発明の効果】
本発明により、版面画像面積の大小に関係なく良好なインキの着肉性及び転移性を示し、全体にわたって鮮明でしかも小画像部におけるゲインが小さい、原稿に対する忠実度の高い印刷画像を与える感光性樹脂版が、装置の部品精度等性能を上げる事なく、また作業者の負担を増す事なく簡単に得られるので、ダンボール印刷用、フィルム印刷用、プレプリント印刷用、ラベル印刷用などの印刷版の製版方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】感光性樹脂版の露光工程の説明用断面図(マスキング露光とレリーフ露光を終えた状態。)
【図2】バック露光を終えた状態の断面図。
【図3】従来の製造方法で得られる感光性樹脂版の断面図。
【図4】本発明の製造方法により得られる感光性樹脂版の断面図。
【符号の説明】
1.下部透明基板
2.上部透明基板
3.ネガフィルム
4.カバーフィルム
5.感光性樹脂層
6.ベースフィルム
7.マスキングフィルム
8.スペーサー
9.スペーサー
10.スポンジテープ
11.スポンジテープ
A.大面積レリーフ部
B.小面積レリーフ部

Claims (3)

  1. 下部透明基板の上にネガフィルム、カバーフィルム、液状感光性樹脂、ベースフィルム、マスキングフィルム、上部透明基板をこの順序に積層し、先ず上部透明基板を通してマスキング露光を行ない、次いで下部透明基板を通してレリーフ露光を行ない、更にマスキングフィルムを除去した上で、上部透明基板を通してバック露光を行なった後、未硬化の液状感光性樹脂を除去して感光性樹脂版を作成する方法であって、マスキング露光とレリーフ露光との間に2分以上、レリーフ露光待時間を設ける感光性樹脂版の製造方法。
  2. 下部透明基板の上にネガフィルム、カバーフィルム、液状感光性樹脂、ベースフィルム、上部透明基板をこの順序に積層し、先ず上部透明基板を通してバック露光を行ない、次いで下部透明基板を通してレリーフ露光を行なった後、未硬化の液状感光性樹脂を除去して感光性樹脂版を作成する方法であって、バック露光とレリーフ露光との間に2分以上、レリーフ露光待時間を設ける感光性樹脂版の製造方法。
  3. マスキング露光中又はレリーフ露光待時間中の少なくとも一方の間に、2枚の透明基板間距離を減少させる請求項1または2に記載の感光性樹脂版の製造方法。
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