JP3562794B2 - 磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の製造方法に関し、より詳しくは、表面が均質で、且つ表面欠陥が少なく、また表面粗さが極端に低いスムーズな表面を有する磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板を生産できる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク記録装置の大容量化に伴って、記録密度向上のために磁気ヘッド浮上量の低減が図られており、その低減のためには表面平滑性に優れており、しかも表面欠陥の少ない磁気記録媒体用基板が必要とされている。
表面平滑性に優れた磁気記録媒体用基板としては、従来は、アルミニウム合金にNi−Pメッキを施し、そのメッキした主表面を多段階で研磨して得た基板が主として使用されている。
【0003】
しかし、近年は、ノート型パソコン等の携帯できるパソコンにも磁気ディスク記録装置が採用されてきており、それで携帯に伴う衝撃にも耐えることのできる磁気記録媒体用基板が必要とされてきており、また、磁気ディスク記録装置の応答速度を高めるために磁気記録媒体用基板を10000rpm以上で高速回転させる必要から高強度な磁気記録媒体用基板が必要とされてきており、これらの必要性を満たすものとしてガラス基板が用いられてきている。
【0004】
このような磁気記録媒体用ガラス基板として、表面化学強化によって強度アップした表面化学強化ガラス基板、及び溶融成形して得られたガラス基板を600〜800℃の高温に長時間保持することによって結晶相を部分的に析出させた結晶化ガラス基板が主として採用されている。
【0005】
表面化学強化ガラス基板は、例えば、溶融成形して得られた表面化学強化性ガラス基板を研削、研磨加工した後、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の溶融塩中に浸漬することにより表面に圧縮応力層を形成して破壊強度を高めた表面化学強化ガラス基板である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような表面化学強化性ガラス基板の研削、研磨加工工程、特に仕上げ研磨工程において、周知技術、即ちスエードタイプの軟質研磨布と平均粒径が0.5〜2μm程度のCeO2 系の研磨材を数質量%程度含有する研磨液を用いて研磨すると、研磨布に起因する刷毛目状の線状凹凸が発生し、不均一な表面しか得られない。また、達成される表面粗さは表面化学強化性ガラス基板で3.5オングストローム程度が限度であり、磁気記録媒体用ガラス基板に要求される3オングストローム以下の表面粗さを得ることは極めて困難である。
【0007】
本発明の課題は、研磨された表面が均質で、表面欠陥が少なく且つ表面粗さが極端に低いスムーズな表面を有する磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板を効率よく生産できる製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題について鋭意検討した結果、従来周知の方法に従って磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板を所定の板厚になるようにラッピング加工し、必要に応じてポリッシング加工した後の仕上げポリッシング工程において、研磨布、好ましくは発泡ポリウレタン製の硬質研磨布を用い、極微細なCeO2 系研磨材を極低濃度で含有する研磨液を用いて研磨を行うと、予想外にも、刷毛目状の線状凹凸の無い均質な表面で表面欠陥が少なく且つ表面粗さが3オングストローム以下の表面化学強化性ガラス基板を容易に生産できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明の磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の製造方法は、磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の仕上げポリッシング工程において、平均粒径D50が0.5μm以下のCeO2 系研磨材を0 . 005〜0 . 5質量%含有する研磨液及び研磨布を用いて研磨することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法によって磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板を製造するのに用いる被加工ガラス基板は表面化学強化処理によって磁気記録媒体用基板に必要な強度を与えることのできるものであればいかなる表面化学強化性ガラス基板でもよい。このような表面化学強化性ガラス基板の表面化学強化処理は一般的には仕上げポリッシング工程の後で実施されるが、仕上げポリッシング工程の前に実施することもできる。
【0011】
本発明の製造方法において仕上げポリッシングで用いる研磨材は平均粒径D50が0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.2μm以下のCeO2 系微粒子である。平均粒径が0.5μmよりも大きい研磨材を含有する研磨液を用いて表面化学強化性ガラス基板を研磨すると表面粗さが大きくなり、本発明で目的としているような表面欠陥が少なく且つ表面粗さが極端に低いスムーズな表面を有する表面化学強化性ガラス基板を生産することができない。
【0012】
本発明の製造方法において仕上げポリッシングで使用できるCeO2 系研磨材として、高純度のCeO2 、CeO2 と希土類元素酸化物との混合物、CeO2 とSiO2 との混合物、米国特許第5, 766, 279号明細書に開示されているような酸化セリウムと酸化ケイ素とからなる固溶体等を挙げることができる。このような固溶体は所望の極微細粒子として市販品として入手でき、且つ水中への分散性が良好であるので本発明で用いるのに特に適している。このような固溶体は酸化セリウム100質量部と酸化ケイ素0.1〜10質量部とからなる固溶体であることが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法において仕上げポリッシングで使用する研磨液は、上記のCeO2 系研磨材を1質量%以下,好ましくは0.005〜0.5質量%含有するものである。CeO2 系研磨材の濃度が1質量%を超える研磨液を用いて表面化学強化性ガラス基板を研磨すると、表面粗さが大きくなり、本発明で目的としているような表面欠陥が少なく且つ表面粗さが極端に低いスムーズな表面を有する表面化学強化性ガラス基板を生産することができない。CeO2 系研磨材の濃度を極めて低くした研磨液を用いて研磨することにより表面化学強化性ガラス基板表面の表面粗さが極端に低くなる理由については、現時点では解明にまでは至っていないが、おそらく、研磨加工に有効に作用するのに必要な研磨材の濃度は実際には非常に低く、しかも研磨液中に過剰量の研磨材が存在すると表面粗さを悪くする方に作用するためであると考えられる。
【0014】
本発明の製造方法においては、研磨液中の研磨材の濃度が低いため研磨中の研磨抵抗、加工抵抗が大きくなるが、それらの抵抗を下げるために、従来技術と同様に研磨液に高分子添加剤や界面活性剤を含有させることができる。このような高分子添加剤としてセルロース、グリセリン等を用いることができ、また界面活性剤としてアニオン系、カチオン系、非イオン系の界面活性剤を用いることができ、好ましくは脂肪酸系界面活性剤を用いることができる。この場合には、単に研磨抵抗、加工抵抗が低下するだけでなく、表面粗さが極端に低いスムーズな表面を有する表面化学強化性ガラス基板の生産が更に容易になる。
【0015】
本発明の製造方法における仕上げポリッシングにおいては、公知の両面研磨機を用い、公知の研磨布を用いて表面化学強化性ガラス基板を研磨する。使用する研磨布は特には限定されないが、研磨の際、メカノ−ケミカル作用のうちメカノ作用を高めるため、硬めの研磨布を用いることが好ましく、このような硬めの研磨布としては、従来、粗研磨(一次ポリッシング)工程で用いられていた発泡ポリウレタン製の硬質研磨布を用いることが好ましい。この発泡ポリウレタン製の硬質研磨布の硬度については数段階の表示があり、どの段階の硬度のものでも良好に使用できるが、表面化学強化性ガラス基板の端面ダレを防止する観点から、より硬度の高いものが好ましい。また、研磨液の流れを容易にする目的で発泡ポリウレタン製の硬質研磨布の研磨側表面に30〜50mm間隔で1mm幅1mm深さの溝を設けておくことが好ましい。更に、研磨布の厚さについては0.5〜1.5mm程度であることが好ましい。
【0016】
前記したように、スエードタイプの軟質研磨布と平均粒径が0.5〜2μm程度のCeO2 系の研磨材を数質量%程度含有する研磨液を用いて研磨すると、研磨布に起因する刷毛目状の方向性のある線状凹凸が発生し、不均一な表面しか得られないが、平均粒径D50が0.5μm以下のCeO2 系研磨材を1質量%以下含有する研磨液を用いることにより研磨布に起因する刷毛目状の線状凹凸の発生が抑制され、更に、このような研磨液と上記のような発泡ポリウレタン製の硬質研磨布とを併用することにより研磨布に起因する刷毛目状の線状凹凸の発生が防止される。このような研磨布に起因する刷毛目状の線状凹凸は、表面化学強化性ガラス基板の通常の外観目視検査では認識できないくらい微小な段差であるが、磁性膜を製膜すると明瞭に目視できるようになる。なお、研磨布に起因する刷毛目状の線状凹凸は硬質な研磨布と平均粒径が0.5〜2μm程度の通常のCeO2 系の研磨剤を含有する研磨液とを併用することにより減少するが、この場合には微小な表面欠陥が発生することになる。
【0017】
本発明の製造方法において、上記以外の研磨条件、例えば研磨圧力、回転数、研磨時間については、普通に研磨加工が可能である限りは特には制限されない。しかしながら、研磨圧力が高過ぎるとキシミ音が発生したり、表面化学強化性ガラス基板の破損が発生したりすることもあるので、好ましくは100g/cm2 未満、より好ましくは80g/cm2 以下で実施する。回転数については遅過ぎるとキシミ音が発生することがあり、早過ぎると研磨抵抗、加工抵抗が大きくなり過ぎることがあるので、15〜60rpm程度であることが好ましい。また、研磨時間については、回転数と関連するが、短過ぎると表面粗さの改善が不十分である傾向があり、長くなってもそれに見合った効果が得られないので、研磨時間(分)×回転数(rpm)で150〜1000程度になることが好ましい。
【0018】
以下に、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
通常の磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の作製手順に従って、表面化学強化可能なアルミノシリケートガラス基板(旭テクノグラス株式会社製:AH−1)を内外径加工し、ラッピング加工して、外径65mm、内径20mm、板厚0.68mmの多数のドーナツ状基板を作製した。
【0019】
次に、上記のドーナツ状基板100枚を浜井株式会社製の16B両面研磨機にセットし、研磨材として三井金属鉱業株式会社製のミレーク801(CeO2 系研磨材、平均粒径D50=1.5μm)を用い、研磨布としてロデールニッタ製のMHC15A(発泡ウレタン)を用いて削減厚さが片面15μmとなるように研磨して、本発明で研磨処理する表面化学強化性ガラス基板を作製した。
【0020】
上記で得た表面化学強化性ガラス基板100枚を浜井株式会社製の16B両面研磨機にセットし、研磨材として三井金属鉱業株式会社製のCEP(酸化セリウム100質量部と酸化ケイ素1質量部とからなる固溶体、平均粒径D50=0.2μm)を用い、この研磨材を0.5質量%含有する研磨液を用い、研磨布としてロデールニッタ製のMHC14E(発泡ウレタン)を用い、研磨圧力60g/cm2 、回転数30rpm、研磨時間20分間の研磨条件で表面化学強化性ガラス基板の両面を研磨した。研磨後の表面化学強化性ガラス基板の表面の表面粗さ(Ra 及びRmax )をA.F.M.で2μm×2μmの面積で観察した。その結果を第1表に示す。なお、その表面には刷毛目状の線状凹凸は一切認められなかった。
【0021】
比較例1
実施例1で用いたCEP研磨材の代わりに三井金属鉱業株式会社製のミレークSO(平均粒径D50=1.0μm;CeO2 70%)を用い、MHC14E(発泡ウレタン)の代わりに鐘紡(株)製のスエードタイプN0038を用いた以外は、実施例1と同様の処理を施し、研磨後の表面化学強化性ガラス基板の表面の表面粗さを実施例1と同様に観察した。その結果を第1表に示す。なお、その表面には刷毛目状の線状凹凸が認められた。
【0022】
【0023】
第1表のデータからも明らかなように、従来、普通に用いられている平均粒径1.0μmよりも小さい(D50が0.5μm以下の)CeO2 系研磨材を低濃度(1質量%以下)で用いて研磨することにより表面化学強化性ガラス基板表面の表面粗さを充分に低くすることができる。
【0024】
実施例2〜9
実施例1で用いた研磨条件(研磨時間、研磨圧力、回転数)を第2表に示すように変更した以外は、実施例1と同様の処理を施し、研磨後の表面化学強化性ガラス基板の表面の表面粗さを実施例1と同様に観察した。その結果を第2表に示す。
【0025】
【0026】
実施例10〜15及び比較例2
実施例1で用いたCEP研磨材の濃度を第3表に示すように変更し、また添加剤として脂肪酸石鹸(協同油脂製;MKP−98)を第3表に示す濃度で添加した(無添加の場合もある)以外は、実施例1と同様の処理を施し、研磨後の表面化学強化性ガラス基板の表面の表面粗さを実施例1と同様に観察した。その結果を実施例1のデータと共に第3表に示す。
【0027】
【0028】
第3表のデータからも明らかなように、研磨液中の研磨材の濃度が1質量%よりも高い場合には、研磨後の表面化学強化性ガラス基板の表面の表面粗さが悪いが、極めて低濃度であるときには研磨後の表面化学強化性ガラス基板表面の表面粗さを低くすることができ、また、添加剤として脂肪酸石鹸を加えるとその潤滑作用により更に表面粗さを低くすることができる。
【0029】
実施例16〜18
実施例1で用いたCEP研磨材の濃度を0.005質量%とし、また添加剤として脂肪酸石鹸(協同油脂製;MKP−98)を1質量%の濃度で添加し、研磨布を第4表に示すもの(MHC14E及びSubaはロデールニッタ製、N0038は鐘紡(株)製のスエードタイプ)に変更した以外は、実施例1と同様の処理を施し、研磨後の表面化学強化性ガラス基板の表面の表面粗さを実施例1と同様に観察した。その結果を実施例15のデータと共に第4表に示す。
【0030】
第4表のデータからも明らかなように、硬い研磨布を用いて研磨した方が、表面化学強化性ガラス基板の表面粗さを低くすることができる。
【0031】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の製造方法に従って表面化学強化性ガラス基板を研磨することにより、表面粗さが極めて低いスムーズな表面を有する磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板を容易に得ることができる。
Claims (5)
- 磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の仕上げポリッシング工程において、平均粒径D50が0.5μm以下のCeO2 系研磨材を0.005〜0.5質量%含有する研磨液及び研磨布を用いて研磨することを特徴とする磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の製造方法。
- 平均粒径D50が0.3μm以下のCeO2 系研磨材を含有する研磨液を用いることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の製造方法。
- CeO2 系研磨材が酸化セリウム100質量部と酸化ケイ素0.1〜10質量部とからなる固溶体であることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の製造方法。
- 研磨液が添加剤として脂肪酸石鹸を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の製造方法。
- 研磨布が硬質の発泡ウレタンであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の磁気記録媒体用表面化学強化性ガラス基板の製造方法。
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