JP3562627B2 - ダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、各種耐熱性繊維よりなるバグフィルター用ろ布において、ダスト目詰まりがなく、ダスト払い落とし性が良好で、長期安定して排ガス中のダストろ過が行える、高ろ過性バグフィルター用フェルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石炭焚きボイラー、都市ゴミ焼却炉、産業廃棄物焼却炉等から排出される排ガス中には煤塵のみならずダイオキシン等の有害物質も含まれており、大気汚染防止として各種排ガス集塵は非常に重要である。また、ダイオキシン生成抑制および排出抑制の観点からもバグフィルターによる排ガスろ過が大きく期待されている。また、大きなろ過速度で目詰まりなく長期運転できれば、ろ過面積やバグフィルター設置面積を小さくできコストダウンにもつながる。
【0003】
ダスト剥離性が良好でダストによる目詰まりが小さく、排気濃度も小さく、なおかつ長期安定して排ガス処理を行う方法として、様々な方法が検討されている。例えば、不織布あるいは織物のろ過面にPTFEからなる細孔径が約2μm程度のメンブレンを接着させダスト払い落とし性を向上させたもの。また、特開平1―75169号報広報ではろ過層の厚み方向の中央部にスリットを入れたフィルムを形成させ、ダスト漏れを防ぐ方法。さらに、特開平9―57026号広報ではニードルパンチングによる刺針密度を大きくして緻密化させる方法等が検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなPTFEメンブレンをろ布に接着したものでは、パルスジェット方式によるダスト払い落とし性は優れるが、他素材との接着性が悪いというPTFEのもつ特性から長期に渡るパルスジェット払い落とし操作によりメンブレン自体がろ過面から剥がれたり、逆洗方式の設備においては、メンブレンはシワがつきやすく、逆洗によるろ布の折れ曲がりがシワのできた個所に集中しメンブレンが破れダストが進入し、いずれは破損にいたるという問題がある。また、メンブレン加工コストが非常に高く、現在あるバグフィルター用フェルトとして最も高いものとなっている。特開平1―75169号報広報では、ろ過層内部のフィルムによりろ布を通過しようとしたダストを捕捉することができるが、繊維からなるろ過層自体の空隙率が大きいため、目詰まりを起こし長期安定して排ガスろ過を行えないと言う問題がある。また、特開平9―57026号報広報では空隙率を小さくして緻密化させようとすると、ニードル針によりろ布内部の支持層がダメージを受け強力低下を引き起こしたり、ろ過層の繊維自体を傷つけてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術のバグフィルター用ろ布の持つ問題点に対し、特に、メンブレンを使用しなくても、ニードルパンチによりろ布を傷つけなくても、各種耐熱性繊維のろ過層と支持層からなるバグフィルター用フェルトにおいて、ダスト剥離性が良好で目詰まりやダスト漏れもなく、メンブレンに対して低価格にて加工でき、長期安定して排ガスろ過が行えるバグフィルター用フェルトを提案する事を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、各種耐熱性繊維からなる支持層とろ過層を一体化処理したバグフィルター用フェルトにおいて、そのろ過面にフッ素系繊維からなるバットを積層し、一体化処理をすることを特徴とするダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルトを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は下記の構成からなる。
1.支持層とろ過層が積層一体化した耐熱性繊維からなるバグフィルター用フェルトにおいて、前記ろ過層の表層側に0.1〜20デニールの範囲内でデニール分布をもつフッ素系繊維からなるダスト剥離層を配してなることを特徴とするダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
2.フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする上記第1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
3.ろ過層の内層側にポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、m−アラミド繊維及びガラスのいずれか1種類以上の繊維から選ばれてなる高効率ろ過層を配してなることを特徴とする上記第1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
4.高効率ろ過層の見かけの空隙率が60〜90%であることを特徴とする上記第1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
5.耐熱性繊維がポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、m−アラミド繊維及びガラスのいずれか1種類以上の繊維から選ばれてなることを特徴とする上記第1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
6.ろ過層を構成するダスト剥離層と高効率ろ過層がニードリパンチ又はウオーターパンチにより積層一体化されてなることを特徴とする上記第1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
7.ダスト剥離層を構成するフッ素系繊維が溶融圧着されてなることを特徴とする上記第1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
【0008】
また本発明のろ過層と支持層が耐熱性繊維からなり、ろ過面にフッ素系繊維バットが積層一体化されたバグフィルター用フェルトは、バグフィルター用フェルトとして各種特性を満足させるために、150℃〜350℃での高温熱処理や、加熱ロールによる熱プレスや電熱バーへの接触溶融を施すことを特徴とするダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
【0009】
上記構成からなる本発明のダスト剥離性に優れるバグフィルター用ろ布は、ポリテトラフルオロエチレンのメンブレンを使用しなくても、排ガス中のろ過において、ダスト剥離性が良好で、目詰まりがなく、ダスト漏れも小さく、さらに、パルスジェット方式や逆洗方式のダスト払い落とし操作において長期安定した優れた特性を示すことができる。
【0010】
以下本発明を詳述する。
各種耐熱性繊維からなるろ過層と支持層からなるバグフィルター用フェルトで、メンブレンを使用しなくとも、ダスト剥離性が良好で、目詰まりがなく、ダスト漏れも小さく、長期安定して排ガスろ過が行えるダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルトを得るには、耐熱性繊維からなりフェルトの見かけの空隙率が60〜90%のバグフィルター用フェルトのろ過面にフッ素系短繊維からなるバットを積層しニードルパンチあるいはウオーターパンチにより積層一体化させる必要がある。見かけの空隙率が60〜90%の高ろ過効率ろ過層の表層側にフッ素繊維からなるバットを配することにより、微細ダストの侵入や目詰まりを防ぐだけでなく、ダスト剥離性にも優れるバグフィルター用フェルトを得ることができる。
【0011】
本発明に用いるフッ素系繊維としては、好ましくは90%以上がフッ素原子を主鎖または側鎖に1個以上有する繊維であればよいが、フッ素繊維の比率が高いものほど好ましい。なかでもポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0012】
本発明に用いるフッ素系繊維は、0.1〜20デニールの範囲内でデニール分布をもつものが好ましい。
【0013】
ろ過面を形成するフッ素系短繊維からなるバットは、ろ過層と支持層からなるフェルト重量に対し、0.1〜50重量%の範囲内での使用が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%が好ましい。
【0014】
ろ過層の内層側の高効率ろ過層の見かけの空隙率は60〜90%が好ましく、見かけの空隙率を90%にすることにより高効率なろ過層を得る事ができる。なお、見かけの空隙率は次式により求めた。バグフィルター用フェルトを2.5cm×10cmにカットし、60(g/cm2)荷重のダイヤルゲージで厚さt(cm)を測定し、サンプル重量w(g)を秤量し、繊維の比重ρから見かけの空隙率εを求めた。
ε=(1−w・t・ρ/25)・100
【0015】
本発明に用いるバグフィルター用フェルトのろ過層を構成する好適な耐熱性繊維としては、用途や使用条件によって適時選択され使用できるが、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、m−アラミド、ガラス、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、単独、あるいは各種耐熱性繊維との混綿、積層等によりバグフィルター用フェルトを形成することができる。また、ろ過層を形成する耐熱性短繊維は0.1〜20デニールの範囲内で使用され、0.5〜5デニールが好ましい。さらに、繊維断面形状については、丸形、三角、トライローバル、ランダム等あるが、特に限定されるものではなく、微粒子の捕捉という面から考えると同じ繊度に対して比表面積がより大きくなるものが好ましい。
【0016】
支持層に用いる耐熱性繊維は、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、m−アラミド、ガラス、ポリテトラフルオロエチレン等から1種類以上が適時選択され、マルチイラメント、モノフィラメント、紡績糸が使用される。支持体は、織物あるいは編物としての状態で使用することができる。
【0017】
ろ過面を形成するフッ素系繊維バットと耐熱性フェルトの一体化は、ニードルパンチあるいはウオーターパンチによることを特徴としている。また、ろ過層と支持層の一体化も同様にニードルパンチあるいはウオーターパンチによることができる。
【0018】
本発明に用いる熱処理や、カレンダーロールによる熱プレスは、バグフィルター用フェルトの空隙率や通気度の調整、さらには収縮やクリープを適正な値にするために行うことができる。熱処理としては、150℃〜350℃の熱風処理ができ、その他には、高温スチーム処理や、赤外や遠赤外による熱処理をすることもできる。さらに、フッ素系繊維からなるろ過面を電熱バーに接触させ熱プレスし、ろ過面をさらに緻密化しすることもできる。
【0019】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
ろ過性評価は、図1のような東洋紡績(株)製フィルターバグ用ろ過試験機にて評価した。ダストはフライアッシュ10種を用い、ろ過面積0.04(m2)、ろ過速度3.0(m/min)、ダスト濃度18(g/m3)、圧力損失150(mmH2O)にて、パルスジェット払い落としをパルス圧3(kgf/cm2)で300回行った。そして、第一回目のダスト保持量と最終回のダスト保持量とからダスト保持率(%)=(最終回ダスト保持量/第一回目のダスト保持量)×100を測定した。また、吹き漏れ量は粉塵濃度計(柴田科学社製/粉塵濃度計)して測定した。排ガス処理の実運転では、ゴミの種類や燃焼条件によって、ダストの粒径は異なり、1μm以下の非常に微細なダストが主成分になる場合もある。このような場合にフェルトを用いる時は、少なくともフェルトろ過面の空隙率よりも大きいサイズの粒子でプレコート層を形成させるが、今回は、プレコートなしで直接ダストろ過を行った。
【0021】
(実施例1)
バグフィルター用フェルトは一般的なニードルパンチ加工工程により作成した。ろ過層として用いたポリイミド繊維(東洋紡績(株)製、P84)は、2デニール、51mmのランダムな異形断面をした短繊維であり、支持層には同じく960デニール480フィラメントのポリイミド繊維をタテ・ヨコ12本/inchで平織りにして用いた。また、フェルトろ過面に積層するフッ素系繊維はポリテトラフルオロエチレン繊維(レンチング社製、平均2.4デニール、60mm)であり、もともと0.5〜7デニールの繊度分布を持つ繊維である。まず、ろ過層に用いる短繊維は、まず予備開繊を行った後ローラーカードに供しこまかな開繊・繊維配列を行った。そして、クロスレイヤーによりバットを積層し、プレニ−パン、仕上げニーパンを経てろ過層を得た。このろ過層を上記支持層の上下にさらにニードルパンチ工程により一体化させ、460(g/m2)のフェルトを得た。ろ過面に積層するポリテトラフルオロエチレン短繊維はカードに供され約50(g/m2)のバットとし、ニードルパンチにより上記フェルトのろ過面に一体化させた。その後、320℃×30秒の熱風処理を行い、240℃、35(kg/cm2)のカレンダーロールにて熱プレスし、厚さ2.2mm、目付508(g/m2)のバグフィルター用フェルトを得た。ダスト保持量は65%と良好で、捕集効率も99.9996%と良好な結果を示した。
【0022】
(実施例2)
実施例1と同様なろ過層形成用ポリイミド短繊維、支持層用ポリイミドマルチフィラメント糸、ろ過面形成用ポリテトラフルオロエチレン短繊維を用いて、実施例1と同様なフェルトを得た。そして、実施例1と同様に320℃×30秒の熱風処理を施した。その後、ろ過面に配したポリテトラフルオロエチレンを電熱バーに接触させ、即座に240℃、35(kg/cm2)の熱カレンダー処理を行い、ろ過面のポリテトラフルオロエチレン繊維が一部溶融したフェルトが得られた。厚みは2.3mm、目付543(g/m2)であり、実施例1と同様にろ過特性を測定すると、ダスト保持量は73%で、捕集効率は99.9999%を得、非常に良好な結果が得られた。
【0023】
(比較例1)
実施例1と同様なポリイミド短繊維、支持層を用いて、ニードルパンチ工程によりトータル目付が約500(g/m2)になるように、ポリイミド100%からなるフェルトを得た。そして、実施例1と同様に、320℃×30秒の熱風処理を行い、240℃、35(kg/cm2)のカレンダーロールにて熱プレスし、厚さ2.1mm、目付532(g/m2)のバグフィルター用フェルトを得た。実施例1と同様にろ過性能を評価したところ、ダスト保持量は41%と低く、捕集効率は99.9989%と良好な結果を示した。
【0024】
(比較例2)
比較例1と同様なポリイミド短繊維、支持層を用いて、ニードルパンチ工程にて目付が500(g/m2)になるようにポリイミドフェルトを得た。そして、細孔2μm、厚さ20μmのPTFEメンブレンをポリイミドフェルトのろ過面に熱接着させ、厚さ2.2mm、トータル目付が501(g/m2)のメンブレンフェルトを得た。実施例と同様にろ過性能を評価すると、ダスト保持量は78%で、捕集効率は99.9999%であった。
【0025】
(比較例3)
ポリテトラフルオロエチレン繊維100%からなるフェルトをニードルパンチ工程にて作成した。ろ過層を形成する短繊維は、2.4デニール、60mm、(レンチング社製)であり、支持層には400デニールのモノフィラメントを、平織りにて織密度25/25(本/inch)にて用いた。そして、実施例1と同様に、320℃×30秒の熱風処理を行い、240℃、35(kg/cm2)のカレンダーロール処理を行い、厚み1.5mm、トータル目付723(g/m2)のフェルトを得た。実施例と同様にろ過特性を評価すると、ダスト保持量は35%、捕集効率は99.9985%であった。
【0026】
以上の結果を表1に示す。比較例1に見られるように、中位径4.8〜5.7μmのフライアッユを3(m/min)にてろ過性能を評価すると、初期のダスト保持量は大きいものの、徐々にフェルトの空隙にダストが侵入し目詰まりを起こした。その結果、300回ダスト払い落とし後のダスト保持率は41%と低いものになっている。比較例2のメンブレンフェルトでは、ダスト保持率は78%と最も高いものになっているが、初期の段階から圧損が高く、300回後では最も高い圧損を示している。また、PTFE100%よりなる比較例3では、フェルトの空隙に徐々にダストが侵入し比較例1と同様に目詰まりを起こし、300回後の圧損が非常に大きく、ダスト保持量も小さいものになっている。しかし、フェルトろ過面にPTFE短繊維からなるバットが配された実施例1、2では、ダスト保持率が65%、73%と非常に高くダスト剥離性が良好であり、ダスト保持量も非常に高い事がわかる。300回後の圧損についてもメンブレンろ布に比べて低いレベルを示しており、長期にわたり安定してダストろ過が行えることが明らかとなった。
【0027】
【表1】
【発明の効果】
本発明によれば、メンブレンを使用しなくとも、長期安定してダスト払い落としができ目詰まりが小さい、長期にわたりろ過特性が安定したバグフィルター用フェルトを提供することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルターバグ用ろ過試験器
1:スクリューフィーダー、2:フライアッシュ10種、3:オーバーフローフィルター、4:テストサンプル、5:パルスエアー、6:粉塵濃度計、7:排気ダストトラップ用フィルター、8:流量計、9:吸引ポンプ、10:ガスメーター、11:排気、12:ダスト吸引
Claims (7)
- 支持層とろ過層が積層一体化した耐熱性繊維からなるバグフィルター用フェルトにおいて、前記ろ過層の表層側に0.1〜20デニールの範囲内でデニール分布をもつフッ素系繊維からなるダスト剥離層を配してなることを特徴とするダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
- フッ素系繊維がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
- ろ過層の内層側にポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、m−アラミド繊維及びガラスのいずれか1種類以上の繊維から選ばれてなる高効率ろ過層を配してなることを特徴とする請求項1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
- 高効率ろ過層の見かけの空隙率が60〜90%であることを特徴とする請求項1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
- 耐熱性繊維がポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、m−アラミド繊維及びガラスのいずれか1種類以上の繊維から選ばれてなることを特徴とする請求項1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
- ろ過層を構成するダスト剥離層と高効率ろ過層がニードリパンチ又はウオーターパンチにより積層一体化されてなることを特徴とする請求項1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
- ダスト剥離層を構成するフッ素系繊維が溶融圧着されてなることを特徴とする請求項1記載のダスト剥離性に優れるバグフィルター用フェルト。
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