JP3562608B2 - ターボ分子ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ターボ分子ポンプに関し、特にターボ分子ポンプの電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ターボ分子ポンプのポンプ本体は、ロータ,ステータ,ロータを駆動するモータ,ロータを支持する軸受等を備え、また、ターボ分子ポンプを駆動する電源装置は、モータを駆動するインバータ部,および軸受が磁気軸受の場合には磁気軸受制御部等を備えている。このようなターボ分子ポンプは、その排気速度に応じて種々の機種のポンプ本体と、該ポンプ本体に対応した専用電源装置が設けられ、両者は共用化された1種の接続ケーブルで接続している。
【0003】
図10は、従来のポンプ本体と電源装置との接続を説明するための図であり、ポンプ本体2Aは専用電源装置3Aと機種識別用の信号線41を含む接続ケーブル4によって接続し(図10(a))、ポンプ本体2Bは専用電源装置3Bと機種識別用の信号線41を含む接続ケーブル40によって接続し(図10(b))というように、ポンプ本体と専用電源装置とを共通の接続ケーブルを介して接続している。
【0004】
接続ケーブルが共用化されているため、ポンプ本体に異なる機種用の電源装置を誤って接続する可能性がある。そのため、ポンプ本体と電源装置との接続の誤りを検出してアラーム等を表示する必要がある。従来、ポンプ本体の機種の識別を行うために、接続ケーブルに機種識別用の複数本の信号線を設け、この信号線間の短絡パターンによってポンプ本体の機種の識別を行っている。
【0005】
図11は、従来のポンプ本体の機種識別を説明するための図である。ポンプ本体側の信号線41の接続端の一部を短絡し、その短絡パターンをポンプ本体の機種毎に異ならせることによって、電源装置からポンプ本体の機種識別を行う。例えば、図11(a)はポンプ本体2Aと専用の電源装置3Aとを接続した場合であり、ポンプ本体2A側の接続端a,bを短絡しておく。電源装置3Aは、信号線41の接続端a’,b’から接続端a,bの短絡を検出することによって、ポンプ本体の機種が2Aであることを識別することができる。同様に、ポンプ本体2B,2Cについても、異なる短絡パターンを形成しておくことによって、電源装置側3B,3Cからポンプ本体の機種の識別を行うことができる(図11(b),(c))。また、図11(d)に示すように、機種の異なるポンプ本体が接続されている場合には、電源装置側は短絡信号を検出しないことによって、ポンプ本体の機種が異なることを検出することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のように、接続ケーブルに信号線を設け、該信号線の短絡検出を行うことによって、電源装置側からポンプ本体の機種識別を行う方法では、ポンプ本体の機種識別のための信号線を設けたり、ポンプ本体側で機種に応じた短絡パターンを検出する必要があり、さらに、接続ケーブルの信号線はポンプ本体の機種の増加に伴って増加させる必要もある。
また、信号線の接続誤りや信号線の断線等によって、ポンプ本体の機種識別に誤りが発生する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は前記した従来のターボ分子ポンプの問題点を解決し、信号線等の部品を設けることなく、ポンプ本体の機種識別を行うことができるターボ分子ポンプを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のターボ分子ポンプは、ロータおよびロータを駆動するモータを有したポンプ本体と、モータを駆動する駆動回路を有しモータへの電力供給を接続ケーブルを通して行う外部電源装置とを備えたターボ分子ポンプにおいて、回転開始時における所定の加速指令に対応する所定機種の基準加速特性を有し、該加速指令に従ってモータへ電力供給を行ってモータの実加速特性を求め、該実加速特性と基準加速特性との比較によってポンプ本体の機種識別を行う機能を駆動回路に持たせ、これによって、信号線等の部品を新たに設けることなくポンプ本体の機種識別を行うことができる。
【0009】
ポンプ本体が備えるロータは、機種毎に大きさが異なり、例えば排気速度が大きいほど大型で大重量となる。ロータのイナーシャ(回転軸回りの慣性モーメント)は、このロータの大きさや重量に比例して機種毎に異なり、同一の機種では一定となる。通常、ターボ分子ポンプのモータの回転開始時の加速特性は、主にロータのイナーシャに依存するため、ポンプ本体の機種毎に異なり、同一機種では一定特性となる。本発明のターボ分子ポンプは、この回転開始時の加速特性がポンプ本体の機種に対応する点を利用し、所定の加速指令でモータを駆動して実加速特性を求め、この実加速特性と加速指令に対応した所定機種の基準加速特性とを比較することによって、ポンプ本体の機種識別を行うことができる。
【0010】
本発明の第1の実施態様は、所定の加速指令によるモータへの電力供給として、一定電流の供給あるいは一定電圧の供給を行うものであり、このときのモータの実速度変化と、所定機種のモータに一定電流あるいは一定電圧を供給したときの速度変化とを比較し、これによって、ポンプ本体の機種識別を行うものである。
【0011】
また、本発明の第2の実施態様は、所定の加速指令によるモータへの電力供給として、モータの回転速度があらかじめ定めた加速特性となるよう電流制御を行うものであり、このときのモータへの実供給電流と、所定機種のモータを回転速度があらかじめ定めた加速特性となるよう電流制御したときの基準供給電流とを比較し、これによって、ポンプ本体の機種識別を行うものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のターボ分子ポンプの一実施の形態を説明するための概略ブロック図である。図1において、ターボ分子ポンプ1は、ポンプ本体2と電源装置3と接続ケーブル5を備える。ポンプ本体2は、図示しないロータ,ステータ,ロータを駆動するモータ,およびロータを支持する軸受を備え、モータは電源装置3から接続ケーブル5を通して供給される電力によって駆動される。
【0013】
電源装置3は、モータを駆動するための駆動回路4を備え、駆動回路4中のインバータ41によってポンプ本体1中のモータへの電力供給制御を行う。なお、電源装置3は、ロータの軸受が磁気軸受の場合には、磁気軸受制御部を備える。さらに、本発明の電源装置3中の駆動回路4は、比較演算部42と基準加速特性テーブル43を備える。
【0014】
比較演算部42は、回転開始時に所定の加速指令をインバータ41に対して行い、該加速指令により駆動されたモータの回転速度やモータ電流をインバータ41から受け取り、基準加速特性テーブル43中のデータと比較して、ポンプ本体の機種識別を行う。基準加速特性テーブル43は、ポンプ本体の機種識別を行うためのデータを格納する部分であり、加速特性テーブル43aあるいは規定電流値テーブル43bを備える。加速特性テーブル43aは、モータに一定電圧あるいは一定電流を供給して回転開始させた場合の、回転開始時点からの経過時間に対するモータ速度のデータを格納する記憶手段であり、また、規定電流値テーブル43bは、モータを所定の速度増加率で加速する場合のモータに流れる電流値を格納する記憶手段である。
【0015】
本発明のターボ分子ポンプによる第1の機種識別は、基準加速特性テーブル43として加速特性テーブル43aを用いるものであり、モータに一定電圧あるいは一定電流を供給して回転開始させ、このときのモータ速度の変化特性を基準速度変化と比較して機種識別を行う。また、第2の機種識別は、基準加速特性テーブル43として規定電流値テーブル43bを用いるものであり、モータを所定の加速特性となるように制御し、そのときの電流値を基準電流値と比較して機種識別を行う。
【0016】
以下、本発明のターボ分子ポンプによる第1の機種識別を図2〜図5を用いて説明し、第2の機種識別を図6〜図9を用いて説明する。
はじめに、本発明のターボ分子ポンプによる第1の機種識別について説明する。この場合には、基準加速特性テーブル43として加速特性テーブル43aを用いる。図2はモータの回転開始を一定電圧あるいは一定電流の供給によって行う場合の速度変化を示す図である。ターボ分子ポンプのモータの回転開始時の加速特性は、主にロータのイナーシャに依存するため、回転開始時の速度変化は、図2中のA,B,Cに示すようにポンプ本体の機種毎に一定の加速特性となる。なお、図中に示す一加速特性の上限曲線は各ポンプ内が真空の場合の加速特性を示し、下限曲線は各ポンプ内が大気の場合の加速特性を示しており、通常両曲線ではさまれる斜線部分内の速度となる。
【0017】
従って、例えば一定電流あるいは一定電圧を供給して回転を開始した場合、回転開始から経過時間T後の速度vA,vB,vCを検出し、図2中の加速特性と比較することによって、電源装置と接続しているポンプ本体の機種A,B,Cを識別することができる。
また、接続されているポンプ本体の機種があらかじめ予定されている場合に、検出した速度と、予定しているポンプ本体の速度との比較によって、予定されているポンプ本体であるか否かの判定を行うこともできる。
さらに、図2において、検出した速度がいずれの機種にも当てはまらない場合には、ポンプ本体の異常を検出することができる。
【0018】
以下、図3〜図5を用いて、予定されているポンプ本体であるか否かの判定を行う場合の駆動例について説明する。図3は第1の機種識別を行う場合のポンプ本体の判定を行うフローチャートであり、図4,5は第1の機種識別を行う場合の加速特性図である。なお、加速特性テーブルは、ポンプ本体の機種毎の加速特性を備えている。
【0019】
はじめに、ポンプを回転開始させるスタート信号を入力し(ステップS1)、比較演算部42はインバータ41に対して一定電流あるいは一定電圧をポンプ本体2のモータに供給する加速指令を出力する(ステップS2)。この加速指令を受けたインバータ41は、接続ケーブル5を通してモータに一定電流あるいは一定電圧を供給して、回転を開始する(ステップS3)。
【0020】
回転開始してから所定の時間が経過した後(ステップS4)、インバータ41は、モータの回転速度を検出して比較演算部42に送る(ステップS5)。比較演算部42は、加速特性テーブル43aが備える各機種の加速特性の中から予定しているポンプ本体の加速特性を選び、経過時間に対応した速度データを読み出し、前記ステップS5で得たモータの実回転速度と比較して(ステップS6)、実回転速度が加速特性の範囲内(以下許容範囲内という)であるか否かの判定を行う(ステップS7)。
【0021】
ステップS7で許容範囲内とする判定が、合計して正常規定回数Nを超えた場合には予定しているポンプ本体が接続されているものと判断し(ステップS8)、比較演算部42は通常の加速指令をインバータ41に出力し(ステップS9)、インバータ41はポンプ本体2を通常運転する(ステップS10)。
【0022】
前記ステップS7において、実回転速度が加速特性の範囲外である場合には、エラーカウンタを1増加させ(ステップS11)、このエラーカウンタの値がエラー規定回数Mを超えた場合には予定しているポンプ本体が接続されていないものと判断して(ステップS12)、比較演算部42は加速中止の指令をインバータ41に出力するとともに(ステップS13)、アラーム表示を行う(ステップS14)。
【0023】
なお、エラー規定回数Mは、ポンプ本体の機種と電源装置の機種との不一致や接続誤りを判断するための評価値であり、例えば5回程度に設定することができ、また、正常規定回数Nは、ポンプ本体の機種と電源装置の機種との一致を判断するための評価値であり、例えば10回程度に設定することができる。
【0024】
図4,図5は、正常規定回数Nとして6回を設定し、エラー規定回数Mとして3回を規定した場合の例であり、図4は通常運転を行う場合を示し、図5はアラーム表示を行う場合を示している。また、図4,5中の×印は所定時間毎の速度を示している。図4は、回転開始から3回目の速度が許容範囲をはずれ、その他の速度は許容範囲内である例を示しており、アラーム表示が行われる前に、7回目の測定時において、許容範囲内の速度の合計回数が正常規定回数(ここでは6回とする)以上となり、通常加速指令がオンとなる。
【0025】
また、図5は、回転開始から3回目以降の速度が許容範囲をはずれ、その他の速度は許容範囲内である例を示しており、通常加速指令がオンされる前に、5回目の測定時において、許容範囲外の速度の合計回数がエラー規定回数(ここでは3回とする)以上となり、アラーム表示のオンとなる。
【0026】
次に、本発明のターボ分子ポンプによる第2の機種識別について説明する。この場合には、基準加速特性テーブル43として規定電流値テーブル43bを用いる。図6はモータを所定の加速特性となるよう加速制御を行う場合の電流変化を示す図である。ターボ分子ポンプのモータを一定の速度増加率で加速を行う場合には、図6のA,B,Cに示すように流れる電流はほぼ一定となり、ポンプ本体の機種毎に一定の電流特性となる。
【0027】
従って、モータを一定の速度増加率となるよう制御しながら回転を開始した場合、回転開始から経過時間T後の電流値IA,IB,ICを検出し、図6中の電流特性と比較することによって、電源装置と接続しているポンプ本体の機種A,B,Cを識別することができる。
【0028】
また、接続されているポンプ本体の機種があらかじめ予定されている場合に、検出した電流値と、予定しているポンプ本体の電流値との比較によって、予定されているポンプ本体であるか否かの判定を行うこともできる。
さらに、図6において、検出した電流値がいずれの機種にも当てはまらない場合には、ポンプ本体の異常を検出することができる。
【0029】
以下、図7〜図9を用いて、予定されているポンプ本体であるか否かの判定を行う場合の駆動例について説明する。図7は第2の機種識別を行う場合のポンプ本体の判定を行うフローチャートであり、図8,9は第2の機種識別を行う場合の加速特性図である。なお、規定電流値テーブルは、ポンプ本体の機種毎の電流特性を備えている。
【0030】
はじめに、ポンプを回転開始させるスタート信号を入力し(ステップS21)、比較演算部42はインバータ41に対して一定の速度増加率で加速を行う加速指令を出力する(ステップS22)。この加速指令を受けたインバータ41は、接続ケーブル5を通してモータに電力を供給して、加速指令の速度変化率となるよう制御を行いながら回転を開始する(ステップS23)。
【0031】
回転開始してから所定の時間が経過した後(ステップS24)、インバータ41は、モータに流れる電流値を検出して比較演算部42に送る(ステップS25)。比較演算部42は、規定電流値テーブル43bが備える各機種の電流特性の中から予定しているポンプ本体の電流特性を選び、経過時間に対応した電流値データを読み出し、前記ステップS25で得たモータの実電流値と比較して(ステップS26)、実電流値が電流特性の範囲内(以下許容範囲内という)であるか否かの判定を行う(ステップS27)。
以下、ステップS28からステップS34において、前記した第1の機種識別において、ステップS8からステップS14で説明した処理と同様の処理を行い、通常運転あるいはアラーム表示を行う。
【0032】
図8,図9は、正常規定回数Nとして6回を設定し、エラー規定回数Mとして3回を規定した場合の例であり、図8は通常運転を行う場合を示し、図9はアラーム表示を行う場合を示している。また、図8,9中の×印は所定時間毎の電流値を示している。図8は、回転開始から1,4回目の電流値が許容範囲をはずれ、その他の電流値は許容範囲内である例を示しており、アラーム表示が行われる前に、8回目の測定時において許容範囲内の電流値の合計回数が正常規定回数(ここでは6回とする)以上となり、通常加速指令がオンとなる。
【0033】
また、図9は、回転開始から3,および6回目以降の電流値が許容範囲をはずれ、その他の電流値は許容範囲内である例を示しており、通常加速指令がオンされる前に、7回目の測定時において許容範囲外の電流値の合計回数がエラー規定回数(ここでは3回とする)以上となり、アラーム表示のオンとなる。
【0034】
本発明の実施形態によれば、電源装置の駆動回路による機種識別機能を用いることによって、ロータを支持するベアリングの転がり抵抗が劣化により大きくなるなどのポンプ本体の異常状態を、所定機種との不一致により検出することも可能となる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のターボ分子ポンプによれば、信号線等の部品を設けることなく、ポンプ本体の機種識別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のターボ分子ポンプの一実施の形態を説明するための概略ブロック図である。
【図2】モータの回転開始を一定電圧あるいは一定電流の供給によって行う場合の速度変化を示す図である。
【図3】本発明の第1の機種識別を行う場合のポンプ本体の判定を行うフローチャートである。
【図4】本発明の第1の機種識別を行う場合の加速特性図である。
【図5】本発明の第1の機種識別を行う場合の加速特性図である。
【図6】モータを所定の加速特性となるよう加速制御を行う場合の電流変化を示す図である。
【図7】本発明の第2の機種識別を行う場合のポンプ本体の判定を行うフローチャートである。
【図8】本発明の第2の機種識別を行う場合の加速特性図である。
【図9】本発明の第2の機種識別を行う場合の加速特性図である。
【図10】従来のポンプ本体と電源装置との接続を説明するための図である。
【図11】従来のポンプ本体の機種識別を説明するための図である。
【符号の説明】
1…ターボ分子ポンプ、2…ポンプ本体、3…電源装置、4…駆動回路、5…接続ケーブル、41…インバータ、42…比較演算部、43…基準加速特性テーブル、43a…加速特性テーブル、規定電流値テーブル43b

Claims (1)

  1. ロータおよびロータを駆動するモータを有したポンプ本体と、モータを駆動する駆動回路を有しモータへの電力供給を接続ケーブルを通して行う外部電源装置とを備えたターボ分子ポンプにおいて、
    前記駆動回路は、回転開始時における所定の加速指令に対応する基準加速特性を有し、該加速指令に従ってモータへ電力供給を行ってモータの実加速特性を求め、該実加速特性と基準加速特性との比較によってポンプ本体の機種識別を行うことを特徴とするターボ分子ポンプ。
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