JP3562557B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両におけるステアリング機構の操舵アシスト量を電子制御するパワーステアリング装置、とくに、油圧により操舵アシストを行わせるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧により操舵アシストを行わせる従来の電子制御式パワーステアリング装置は、特開平7−10022号公報に例示されているように、車両におけるステアリングホイールの操作力(以下、操舵力という)をアシストする油圧シリンダと、ステアリングホイール及びピニオンギヤの相対的回動量に応じて上記油圧シリンダの作動油圧(以下、パワーステアリング油圧という)を制御するロータリバルブと、上記相対的回動量を抑制するための反力プランジャと、ソレノイドにより軸力が調整されて上記反力プランジャに作用する油圧を制御することにより、操舵力のアシスト量を制御する油圧制御バルブとをそなえ、車速や路面摩擦係数等の大小に従ってソレノイドの励磁電流を制御し、路面状況に応じた操舵アシスト量が得られるようにしている。
【0003】
一方、トラック等においては、積荷時と空車時とでは車重に大きな差があり、しかも、定常の積荷時(以下、定積時という)と、荷台の前方に片寄って荷物が積載された場合(以下、前荷時という)とでは、車両の重心位置が前後に大きく移動して前軸荷重が変化するため操舵力も大きく変動し、また、積荷時の制動中に操舵した場合には操舵力が急増することとなるので、前記従来装置の制御方式による操舵アシスト量では必ずしも好適な操舵フィーリングがえられるとは限らなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、積荷状態が変化する車両において、常に適切な操舵アシスト量が設定され、好適な操舵フィーリングがえられるパワーステアリング装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明にかかるパワーステアリング装置は、油圧により車両の操舵力をアシストしてその操舵アシスト量を電子制御するパワーステアリング装置において、パワーステアリング油圧を検出する第1手段と、車両前軸付近の横加速度を検出する第2手段と、上記第1手段により検出された上記パワーステアリング油圧が大きいほど操舵アシスト量を増大させ、かつ、上記第2手段により検出された上記横加速度が大きいほど操舵アシスト量を減少させる補正手段とを有し、上記補正手段は、
K=(P−C 1 )/(G−C 2 )(ただし、P:上記第1手段により検出され た上記パワーステアリング油圧、G:上記第2手段により検出された上記横加 速度、C 1 、C 2 :定数)
で求めたKの値に応じて上記操舵アシスト量を増減補正している。
【0006】
すなわち、補正手段は、第1手段により検出されたパワーステアリング油圧P及び第2手段により検出された車両前軸付近の横加速度Gに対し、K=(P−C 1 )/(G−C 2 )(ただし、C 1 、C 2 :定数)で求めたKの値に応じて、パワーステアリング油圧が大きいほど操舵アシスト量を増大させ、かつ、横加速度が大きいほど操舵アシスト量を減少させているので、車両における積荷状態、及びまたは、車両が走行する路面の状況に対応して常に適切な操舵アシスト量を設定することができ、従って、好適な操舵フィーリングが容易にえられることとなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す本発明の実施形態例について説明する。
図1において、車両用電子制御式パワーステアリング装置のパワーステアリング機構1は、図示しないステアリングホイールからの操舵力がスタブシャフト2に伝達され、スタブシャフト2とウォームシャフト3とがトーションバー4を介して結合されていて、ウォームシャフト3とボールナット5間のねじ溝には多数のスチールボール6がつめられ、ギヤボックス7内に形成されたシリンダ8にボールナット5がピストンとして摺動自在に収容され、ボールナット5及びシリンダ8により油圧シリンダ9が構成されている。
【0008】
また、セクタシャフト10がボールナット5のラック11とかみ合って、パワーステアリング機構1の出力軸となっており、セクタシャフト10に図示しないピットマンアームが固定されている。
【0009】
一方、油圧シリンダ9に作用するパワーステアリング油圧を制御するロータリバルブ20は、バルブハウジング21、スプール22及びスリーブ23により構成され、スプール22はスタブシャフト2に、スリーブ23はウォームシャフト3にそれぞれピン24、25で連結され、ステアリングホイールの操作に基づくトーションバー4のねじれによって、ロータリバルブ20が開閉される。
【0010】
ロータリバルブ20は、図2に示されているように、バルブ感度の高い第1制御弁26とバルブ感度の低い第2制御弁27とからなり、第1制御弁26が油圧シリンダ9に接続されると共に、第2制御弁27の下流側に可変絞り弁28が設けられ、可変絞り弁28は比例ソレノイド29に負荷される励磁電流値により開度が制御される。
なお、可変絞り弁28及び比例ソレノイド29はバルブハウジング21と一体的に設置されている。
【0011】
上記装置において、比例ソレノイド29に対する励磁電流が増大すればするほど、可変絞り弁28の開度が小さくなって、第1制御弁26と可変絞り弁28を含む第2制御弁27との合成等価開度が減少することにより、油圧シリンダ9による操舵アシスト量が増加するので、所要操舵力が減少してステアリングホイールの操作が比較的軽くなり、また逆に、比例ソレノイド29に対する励磁電流が減少すればするほど、可変絞り弁28の開度が大きくなって、第1制御弁27と可変絞り弁28を含む第2制御弁27との合成等価開度が増大することにより、油圧シリンダ9による操舵アシスト量が減少するので、所要操舵力が増加してステアリングホイールの操作が比較的重くなる。
【0012】
他方、車両に装備された車速センサ30が車速vを検出して、その信号がコントローラ31へ送られると共に、油圧ポンプ32から第1制御弁26を介して油圧シリンダ9へ供給されるパワーステアリング油圧Pが油圧センサ33により検出されて、その信号がコントローラ31へ送られ、また、図示しない車両前軸上もしくは車両前軸上方の車両フレームに取り付けられた横加速度センサ34がその位置での車体横加速度(以下、前軸上横加速度という)Gを検出して、その信号がコントローラ31へ送られ、これらの信号等に基づき後記のようにコントローラ31が比例ソレノイド29に対する励磁電流の大きさを制御する。
【0013】
ここで、発明者が実験結果等により解明したパワーステアリング油圧Pと横加速度Gとの関連性について説明すると、図3に示されているように、パワーステアリング油圧Pと横加速度Gとの間には、積荷のない空車時I、定積時II、及び、前荷時III の場合にそれぞれ勾配Kを異にした略直線状に変化する相関関係がみられ、しかも、各線I、II、III は図3上で仮想的なほぼ一点(Po 、Go )を指向するので、パワーステアリング油圧Pと横加速度Gとの大きさから車両の積荷状態をほぼ判別できることが判明した。
【0014】
次に、コントローラ31による比例ソレノイド29への励磁電流制御について、図4に基づき説明する。
先ず、ステップS1で車速センサ30が車速vを検出して、その検出信号がコントローラ31へ送られ、ステップS2において、図5の曲線Xから車速vに対応する励磁電流値Av を読み出す。
【0015】
また、ステップS3で油圧センサ33がパワーステアリング油圧Pを検出すると共に、横加速度センサ34が前軸上横加速度Gを検出して、各検出信号がコントローラ31へ送られ、ステップS4において、制御係数(上記勾配)Kが次式から計算される。
【0016】
K=(P−Po )/(G−Go )
ただし、Po 、Go :定数
【0017】
この制御係数Kの大きさから車両における積荷の状態、すなわち、空車、定積時、前荷時等が直ちに検出できることとなる。
【0018】
次のステップS5では図6に基づき制御係数Kの値から励磁電流補正量dAk が読み出され、ステップS6において、励磁電流値Av 及び励磁電流補正量dAk の和である励磁電流Aがコントローラ31により算出され、コントローラ31の指示により比例ソレノイド29へ励磁電流Aが負荷される。
【0019】
従って、図5の曲線Xが示すように、停車時、または、車両の低速時には励磁電流値Av が比較的大きくて、油圧シリンダ9による操舵アシスト量が大きいので、所要操舵力が減少してステアリングホイールの操作が比較的軽くなり、また、中高速時には励磁電流値Av が比較的小さくて、油圧シリンダ9による操舵アシスト量が小さいので、所要操舵力が増加してステアリングホイールの操作が比較的重くなり、いずれの場合も操舵安定性が向上して操舵フィーリングが良くなるが、さらに、励磁電流値Av に励磁電流補正量dAk が加えられた励磁電流Aが比例ソレノイド29へ負荷されて、前荷時には車速の全範囲にわたり励磁電流Aが高めに補正され、油圧シリンダ9による操舵アシスト量が増加して所要操舵力が減少し、その結果ステアリングホイールの軽い操作が保持され、また、空車時には車速の全範囲にわたって励磁電流Aが低めに補正され、油圧シリンダ9による操舵アシスト量が減少して所要操舵力が増加し、その結果ステアリングホイールの操作が重くなるように修正されるため、いずれの場合も操舵フィーリングをさらに向上させることができる。
なお、図5におけるX1 、X2 は、それぞれ車速vに対する励磁電流Aの上限値、下限値を示している。
【0020】
さらに、車両の制動中に操舵された場合、車両前軸には前荷時と同様に荷重が加えられることとなるので、コントローラ31によって上記のように比例ソレノイド29へ負荷される励磁電流Aが制御され、油圧シリンダ9による操舵アシスト量の増加により所要操舵力を軽減し、操舵フィーリングを上記の場合と同様に向上させることもできる。
【0021】
また、図7に示されているように、一定車速及び一定の積荷状態で操舵を開始して、時間tまで操舵角を増加させ、時間t以降は操舵角を一定に保った場合、横加速度Gは時間の経過に従って次第に増加し、時間t以降で一定となるのに対し、パワーステアリング油圧Pは図示しないステアリングリンク系のジョイント、ブッシュ等の摩擦力とタイヤの復元トルクとの和に比例し、時間の経過に従って次第に増加するが、時間tで上記ジョイント、ブッシュ等の作動が停止するため上記摩擦力相当部分だけ減少し、時間t以降で一定となる。
【0022】
従って、制御係数Kは時間tで減少するので、比例ソレノイド29に対する励磁電流補正量dAk の減少により励磁電流Aが減少して、ステアリングホイールの操作が時間t以降重くなり、これにより、図8において2点鎖線で示されている従来の操舵ヒステリシス曲線に対し、実線のように上下のヒステリシス幅が減少するため、操舵感を確実に向上させることができる利点がある。
【0023】
次に、発明者が実験結果等により解明したパワーステアリング油圧Pと横加速度Gとの別の関連性について説明すると、図9に示されているように、パワーステアリング油圧Pと横加速度Gとの間には、車両が走行する路面の状況、すなわち、車輪の接地力が小さい圧雪路IV、及び、車輪の接地力が大きい乾燥したアスファルト路Vの場合にそれぞれ勾配Kを異にした略直線状に変化する相関関係がみられ、しかも、各線IV、Vは図9上で仮想的なほぼ一点(P1 、G1 )を指向するので、パワーステアリング油圧Pと横加速度Gとの大きさから路面の摩擦係数をほぼ判定できることが判明した。
【0024】
このため、車両の積荷状態に対応して比例ソレノイド29への励磁電流を制御した上記の場合と全く同様に、コントローラ31は制御係数(上記勾配)Kを次式から計算する。
【0025】
K=(P−P1 )/(G−G1)
ただし、P1 、G1 :定数
【0026】
さらに、車両の積荷状態に対応して比例ソレノイド29への励磁電流を制御した上記の場合と全く同様に、コントローラ31は車速vに対応した励磁電流値Av を、制御係数Kの大小に従ってそれぞれ増減する励磁電流補正量dAk で補正して、励磁電流値Aを算出し、その励磁電流Aを比例ソレノイド29へ負荷させることにより、車輪が比較的滑りにくい路面での走行時には車速の全範囲にわたり励磁電流Aが高めに補正され、油圧シリンダ9による操舵アシスト量が増加して所要操舵力が減少し、その結果ステアリングホイールの軽い操作が保持され、また、車輪が比較的滑りやすい路面での走行時には車速の全範囲にわたって励磁電流Aが低めに補正され、油圧シリンダ9による操舵アシスト量が減少して所要操舵力が増加し、その結果ステアリングホイールの操作が重くなるように修正されるため、いずれの場合も操舵フィーリングをさらに向上させることができる。
【0027】
なお、仮想点(Po 、Go )及び仮想点(P1 、G1 )は非常に近いので、これらを一致させて上記と同様に制御係数Kを算出し、車速vに対応した励磁電流値Av を、制御係数Kの大小に従ってそれぞれ増減する励磁電流補正量dAk で補正するようにすれば、車両の積荷状態及び車両の走行路面状況に対応して油圧シリンダ9による操舵アシスト量を同時に制御し、操舵フィーリングを簡単に向上させることができるので、大層便利である。
【0028】
しかも、上記装置は、車速センサ30及び油圧センサ33の数少ないセンサ類によって、車両がおかれた色々な状況に対応させることができ、また、複雑な制御則を使用しなくてすむため、所要コストを容易に低く抑制することができる大きな特色がある。
【0029】
【発明の効果】
本発明にかかるパワーステアリング装置にあっては、第1手段により検出されたパワーステアリング油圧及び第2手段により検出された車両前軸付近の横加速度に対し、一定の数式に従って操舵アシスト量を増減補正することにより、車両における積荷状態、及びまたは、車両が走行する路面の状況に対応して常に適切な操舵アシスト量を設定できるので、好適な操舵フィーリングが容易にえられる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態例における要部縦断面図。
【図2】上記実施形態例の概略配置図。
【図3】車両の特性図。
【図4】上記実施形態例の制御フローチャート。
【図5】上記実施形態例の作用説明図。
【図6】上記実施形態例の作用説明図。
【図7】上記実施形態例の作用説明図。
【図8】上記実施形態例の作用説明図。
【図9】車両の特性図。
【符号の説明】
1 パワーステアリング機構
9 油圧シリンダ
20 ロータリバルブ
26 第1制御弁
27 第2制御弁
28 可変絞り弁
29 比例ソレノイド
30 車速センサ
31 コントローラ
33 油圧センサ
34 横加速度センサ

Claims (1)

  1. 油圧により車両の操舵力をアシストしてその操舵アシスト量を電子制御するパワーステアリング装置において、パワーステアリング油圧を検出する第1手段と、車両前軸付近の横加速度を検出する第2手段と、上記第1手段により検出された上記パワーステアリング油圧が大きいほど操舵アシスト量を増大させ、かつ、上記第2手段により検出された上記横加速度が大きいほど操舵アシスト量を減少させる補正手段とを有し、上記補正手段は、
    K=(P−C 1 )/(G−C 2 )(ただし、P:上記第1手段により検出され た上記パワーステアリング油圧、G:上記第2手段により検出された上記横加 速度、C 1 、C 2 :定数)
    で求めたKの値に応じて上記操舵アシスト量を増減補正するパワーステアリング装置。
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