JP3561550B2 - 新規抗腫瘍性抗生物質 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ストレプトミセス(Streptomyces)属に属する微生物が生産する新規なアントラサイクリン系抗生物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
アントラサイクリン系抗生物質としては、従来から放線菌の培養液から得られるダウノマイシン(米国特許第3,616,242号)およびアドリアマイシン(米国特許第3,590,028号)が知られており、これらの化合物は、実験腫瘍に対して広い抗癌スペクトルを有し、癌化学療法剤として臨床的にも広く利用されている。しかし、ダウノマイシンおよびアドリアマイシンはかなり強力な抗癌作用を示すが決して満足できるものではない。そのため発酵法、半合成法、微生物変換法など各種の手段により種々の類縁化合物を創製する試みが行われており、さらにいくつかのアントラサイクリン抗生物質、例えばアクラシノマイシンAおよびB(特公昭51−34915号)、4−デメトキシ−11−デオキシダウノマイシン(特開昭57−26494号)、ロドマイシン群抗生物質(特開昭56−15299号)などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
抗腫瘍剤としてのアントラサイクリン抗生物質は、上述したように、各種の類縁化合物が提案され、すでに一部は臨床的にも広く利用されているものもあり、また臨床試験に供されているものもある。しかし、毒性、抗癌作用双方について共に満足できるものはない。しかも抗腫瘍剤は、試験管内試験、動物試験の結果が必ずしも人間の抗癌作用として反映できないため、多角的な研究が要求される。そのため、抗腫瘍剤として一応の評価がされているアントラサイクリン系抗生物質について、さらに新たな部類に属する化合物の提案が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、より有用なアントラサイクリン抗生物質またはその合成中間体となり得る新規化合物を提案するため鋭意研究を重ねたところ、ストレプトミセス属に属する微生物の培養液中より文献未載の新規なアントラサイクリン抗生物質の単離に成功し、また該化合物が実験腫瘍に対して増殖阻止作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0005】
本発明により提供される新規アントラサイクリン抗生物質は、下記の理化学的性質を有する抗生物質である。
(1)外観:赤色粉末
(2)融点:193〜195℃(分解)
(3)比旋光度:[α]D 20 −674゜(c 0.02、CHCl3)
(4)FABマススペクトル(m/z):896((M+H)+)、895((M−H)−)
(5)UV吸収スペクトル:90%メタノール溶液中で測定した極大吸収は下記のとおりである(単位:nm)。
λmax(E1cm 1%):239(144)、257(sh、134)、295(sh、112)、511(96)
(6)IR吸収スペクトル(KBr):特徴的な吸収は、下記のとおりである(単位:cm−1)。
νmax:1715、1613、1582
【0006】
(7)1H−NMRスペクトル(400MHz、CDCl3):主要な吸収は、下記のとおりである。
δTMS(ppm):1.07(3H,t,J=7.33Hz),1.37(3H,d,J=6.59Hz),1.55(1H,dd,J=14.29Hz &J=3.66Hz),1.63(1H,m,J=7.33Hz),1.76(1H,m,J=7.33Hz),1.90(1H,d,J=14.29Hz),2.02(1H,td,J=13.19Hz & J=3.30Hz),2.14(1H,dd,J=14.66Hz & J=4.03Hz),3.00(1H,d,J=18.69Hz),3.15(1H,br d,J=11.73Hz),3.27(1H,d,J=19.06Hz),3.65(1H,br s),4.01(3H,s),4.24(1H,br s),4.29(1H,q,J=6.60Hz),4.66(1H,s),5.33(1H,br s),5.67(1H,d,J=3.29Hz),7.24(1H,t,J=4.77Hz),7.33(1H,t,J=8.42Hz),7.68(2H,d,J=5.13Hz),7.74(1H,t,J=8.06Hz),7.88(1H,d,J=7.69Hz)
【0007】
本発明者らは、該抗生物質をDR40と命名した。以後、本明細書において該化合物を上記名称を用いて説明する。抗生物質DR40は、その理化学的性質、特にNMRスペクトルからダウノマイシン骨格を有するアントラサイクリン系抗生物質であることは明らかであり、培養白血病細胞L1210に対して増殖阻止作用を有し、それ自体制癌剤として有用である。
【0008】
(マウス白血病L1210培養細胞に対する増殖阻害作用)
10%仔牛血清を含むRPMI1640培地(ローズウエルバーグ研究所)へL1210細胞を5×104個/ml接種し、同様に本発明の物質を0.001〜10μg/mlの濃度で添加し、37℃にて炭酸ガス培養器中で培養し、対照区に対する50%増殖阻害濃度を求めた。DR40のマウス白血病L1210培養細胞に対する50%増殖阻害濃度(IC50)は0.25μg/mlであった。なお、本発明の化合物は、0.02M酢酸(pH3.0)中に1mg/ml濃度で溶解した後、Dulbecco PBS(−)(日水製薬株式会社製)で希釈し、添加した。
【0009】
本発明の化合物DR40の製造は、ストレプトミセスに属し、該化合物を生産する能力を有する菌株を適当な栄養源からなる培地に培養することにより行うことができる。これらの生産菌株のうち具体的なものとしては、アントラサイクリン系抗生物質ダウノマイシン(ダウノルビシン)生産菌として知られるストレプトミセス・コエルレオルビダス(Streptomyces coeruleorubidus)3T−373株を挙げることができる。該菌株は、昭和57年7月13日付で工業技術院微生物工業技術研究所(現、工業技術院生命工学工業技術研究所)にFERM BP−165として国際寄託されている。
【0010】
以下に3T−373株の菌学的性状を示す。
(1)形態
分枝した基中菌糸より直線状あるいは鉤状の気中菌糸を形成し、輪生枝は認められない。成熟した胞子鎖は10個以上で、胞子の大きさは0.4〜0.8×1.2〜2.0μm位であり、胞子の表面はほとんど平滑である。時に一部の胞子の表面に刺状突起の痕跡様の突起が僅かに認められることがある。
【0011】
(2)各種培地における生育状態(28℃)
色の記載について( )内に示す標準は、H.D.Tresner & E.J.Backus,System of color wheels for Streptomycete taxonomy(J.Appl.Microbiol.vol.11,335〜338(1963))を用い、補足的に日本色彩研究所出版の「色の標準」を用いた。
【0012】
(2−1)シュークロース・硝酸塩寒天培地
うす橙あるいはにぶ橙、ないしは明るい茶(4ea〜4gc)の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素はほとんど認められない。
(2−2)グルコース・アスパラギン寒天培地
灰黄あるいは明るいオレンジ黄、ないしはうす橙(3ec〜3ea〜4ea)の発育をする。気中菌糸は、ほとんど形成されず、可溶性色素もほとんど生成されない。
(2−3)グリセリン・アスパラギン寒天培地
うす橙(4ea)あるいは橙、ないしは暗い橙の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素は僅かに橙色を帯びる。
(2−4)スターチ・無機塩寒天培地
明るい橙黄あるいはうす橙(3ea〜4ea)、ないしは赤味橙の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素はピンクを、あるいは僅かに橙色を帯びる。
(2−5)チロシン寒天培地
うす橙(4ea)あるいは黄茶、ないしは赤味橙の発育上に、紫を帯びた白(13ba)ないしは灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素はほとんど認められない。培養長期(約20日)に及ぶと橙色を帯びる。
【0013】
(2−6)栄養寒天培地
赤ないし暗い赤の発育上に灰黄味ピンク(5cb)ないし極うすい紫(11ca)の気中菌糸を着生し、可溶性色素はピンクを帯びる。
(2−7)イースト・麦芽寒天培地
にぶ橙(4gc)あるいは黄茶、ないしは赤味茶の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸をはじめはうっすらと、培養後14日目頃より豊富に着生し、可溶性色素は橙色を僅かに帯びる。
(2−8)オートミール寒天培地
明るい赤茶(5gc)あるいは赤茶、ないしは茶の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素は極僅かにピンクを帯びる。
(2−9)グルコース・ペプトン・ゼラチン培地
黄茶ないしは暗い茶の発育上にうすく白色の気中菌糸を僅かに着生し、可溶性色素は僅かに茶色を帯びる。
(2−10)脱脂牛乳培地
表面に発育し、カゼインは凝固しないが、ペプトン化を生ずる。可溶性色素は茶色味を呈する。
【0014】
(3)生理的性質
(3−1)生育温度範囲:イースト・麦芽寒天培地を使用し、pH6.0において、20℃、25℃、30℃、37℃、46℃、50℃の各温度で実験したところ、20℃から37℃までの各温度で生育が認められ、46℃および50℃では生育しなかった。最適温度は30℃〜37℃付近と思われる。
(3−2)ゼラチンの液化:グルコース・ペプトン・ゼラチン培地を使用し、20℃で培養したところ、陽性であった。
(3−3)スターチの加水分解:スターチ・無機塩寒天培地を使用して培養したところ、陽性であった。
(3−4)脱脂牛乳の凝固、ペプトン化:凝固はほとんどしないが、ペプトン化する。
(3−5)メラニン様色素の生成:トリプトファン・イースト・ブロス培地およびペプトン・イースト・鉄・寒天培地では、明らかにメラニン様色素が生成する。チロシン寒天培地ではメラニン様色素はほとんど生成しないか、あるいは痕跡程度生成する。
【0015】
(4)各種炭素源の利用性:フリドハム・ゴトリーブ寒天培地上に各種の炭素源を加え、生育を見たところ、L−アラビノース、D−キシロース、D−グルコース、D−フルクトース、シュークロース、イノシトール、D−マンニットのいずれの炭素源も利用することができた。L−ラムノース、ラフィノースの利用は僅かで疑わしい。
【0016】
本発明の抗生物質を生産する菌株の培養は、放線菌の栄養源として通常使用されそれ自体公知の培地組成物中で行うことができる。例えば、炭素源としては、グルコース、グリセリン、シュークロース、澱粉、マルトース、動植物油などが使用でき、窒素源としては、大豆粉、肉エキス、酵母エキス、ペプトン、コーンステープリカー、綿実粕、魚粉などの有機物、ならびに硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸アンモニウムなどの無機態窒素が使用できる。また必要に応じて食塩、塩化カリウム、リン酸塩、その他Mg++、Ca++、Co++、Zn++、Fe++、Cu++、Mn++あるいはNi++などの二価金属塩類、さらにはアミノ酸やビタミン類などを添加することができる。また発酵中の発泡を抑制するため、例えばシリコーン−KM75(商品名:信越化学株式会社製)などの消泡剤を添加することができる。
【0017】
温度、pH、通気撹拌および発酵時間などの発酵条件は、使用する菌株が最大量の該化合物を蓄積するように選択すればよい。例えば温度は、20〜40℃、好ましくは28℃、pHは5〜9、好ましくは6〜7において、発酵時間は1〜10日間、好ましくは6日間で発酵を行うのが有利である。
【0018】
該培養物から抗生物質DR40を単離、採取するには、発酵終了後の培養物を遠心分離によるか、珪藻土のような適当な濾過助剤の存在下で濾過することにより、菌体と上澄みまたは濾液に分離する。上澄みからはpH7〜9でクロロホルム、トルエン、酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出する。菌体からは、必要により、アセトン、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの有機溶媒を用いて抽出する。それぞれ濃縮乾固して赤色の粗粉末を得る。これを吸着担体、例えば非イオン性の多孔性スチレン系樹脂、シリカゲルを用いたクロマトグラフィーにより処理するか、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂を用いる処理などを単独あるいは適宜組合せて使用することにより、抗生物質DR40を純粋な形で採取できる。
【0019】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
【実施例】
実施例1
ストレプトミセス・コエルレオルビダス(Streptomyces coeruleorubidus)3T−373株(FERM BP−165)のYS(酵母エキス0.3%、可溶性澱粉1.0%、寒天1.5%、pH7.2)斜面培養より1白金耳を採り、種母培地(可溶性澱粉0.5%、グルコース0.5%、エスサンミート(商品名:味の素株式会社製)1.0%、酵母エキス0.1%、食塩0.1%、第二リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム・7水和物0.1%、pH7.4に調整、120℃、15分加熱殺菌)100mlを含む500ml三角フラスコに接種した。これを28℃にて2日間振とう培養して種母を作成した。
【0021】
次いで生産培地(台湾酵母5.0%、可溶性澱粉7.5%、酵母エキス0.3%、食塩0.2%、炭酸カルシウム0.3%、ミネラル混液0.125%、pH8.0に調整、120℃、15分加熱殺菌)を100lに入れた200l容タンクに上記種母2l添加接種した。但し、ミネラル混液は、CuSO4・5H2Oを2.8g、FeSO4・7H2Oを0.4g、MnCl2・4H2Oを3.2g、ZnSO4・2H2Oを0.8gを蒸留水500mlに溶解したものである。
【0022】
通気量50l/分、攪拌100rpm、28℃で6日間振とう培養すると生産物のため培養液は濃赤褐色を呈するので、発酵を中止し培養液を集め、水で4倍希釈し、リン酸でpH2.0とした後、遠心分離により菌体と上澄に分離した。上澄中の生産物をダイヤイオンHP−20(合成吸着樹脂、三菱化成株式会社製)10lのカラムに通した。pH2の酸性水で洗浄し、次いで60%アセトン水(pH2.0)で溶出した。溶出液をおよそ1/2量まで濃縮し、pHを4N水酸化ナトリウムを用いてpH8.5に調整し、20lのクロロホルムで抽出した。クロロホルム層に0.1N酢酸20lを加え、酸転し、水層をクロロホルム10lで洗浄した。水層のpHをpH8.5に調整し、再び20lのクロロホルムで抽出し、少量まで濃縮した後、n−ヘキサンを添加して沈殿を得た。この沈殿をクロロホルムに溶解後、生産物とほぼ等モル量となるように1N塩酸−メタノールを徐々に添加した。沈殿を除去し、上澄を濃縮乾固し、抗生物質DR40の粗粉末を92g得た。
【0023】
得られた粗粉末の92gをpH2.5に調整した水8lに溶解し、ダイヤイオンHP−20(合成吸着樹脂、三菱化成株式会社製)3lのカラムに通し、吸着させた。これをメタノール−クエン酸緩衝液(0.1N、pH3.5)(40:60〜70:30)および60%アセトン水(pH2.5)で段階的に溶出させることにより、抗生物質DR40を含む画分を得た。得られた画分をpH8.0に調整した後、クロロホルムで抽出し、濃縮乾固することにより抗生物質DR40の部分精製粉末0.59gを得た。
【0024】
得られた抗生物質DR40の部分精製粉末0.59gをシリカゲルカラム(ワコーゲルC−200(和光純薬株式会社製)、50g)に吸着させ、クロロホルム−メタノール−ギ酸−水(100:5:0.2:0.1および100:10:0.2:0.1)で段階的に溶出させ、抗生物質DR40を含む画分を得た。この画分を1%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、濃縮乾固した。
【0025】
これを分取用シリカゲル薄層プレート(PF254、20×20cm:メルク社製)を用い、溶媒系としてクロロホルム−メタノール−濃アンモニア水(5:1:0.1)を用いて精製した。抗生物質DR40に相当する赤色バンドををかき取り、クロロホルム−メタノール(5:1)で抽出し、水洗後、溶媒層を濃縮乾固した。
【0026】
この乾固物を35%アセトニトリル水(pH2.0、リン酸でpH調整)に溶解し、この溶媒を移動相として、分取用高速液体クロマトグラフィー(本体:LC−908、日本分析工業株式会社製;カラム:カプセルパック C18(φ30×250mm)、資生堂株式会社製)を用いて分取を行い、抗生物質DR40の画分を得た。抗生物質DR40の画分をクロロホルムで抽出し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、少量まで減圧濃縮した。これに過剰のn−ヘキサンを添加して生成した沈殿を濾過集積し、真空乾燥して抗生物質DR40の精製粉末27mgを得た。
【0027】
なお、精製中における抗生物質DR40の分析は、下記する高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。このときDR40の保持時間は、39.8分であった。
(高速液体クロマトグラフィー条件)
カラム:Zorbax TMS(φ4.6×250mm)
移動相:水−アセトニトリル−メタノール−リン酸(540:290:170:2)1lにSDS1gを溶解し、2N水酸化ナトリウムでpH3.6に調整する。
流速:1.5ml/分
【0028】
以下に本発明の抗生物質DR40の理化学的性状を示す。
(1)外観:赤色粉末
(2)融点:193〜195℃(分解)
(3)比旋光度:[α]D 20 −674゜(c 0.02、CHCl3)
(4)FABマススペクトル(m/z):896(ポジティブ)、895(ネガティブ)
(5)UV吸収スペクトル:90%メタノール溶液中で測定した極大吸収は下記のとおりである(単位:nm)。
λmax(E1cm 1%):239(144)、257(sh、134)、295(sh、112)、511(96)
(6)IR吸収スペクトル(KBr):特徴的な吸収は、下記のとおりである(単位:cm−1)。
νmax:1715、1613、1582
【0029】
(7)1H−NMRスペクトル(400MHz、CDCl3−CD3OD(20:1)):主要な吸収は、下記のとおりである。
δTMS(ppm):1.07(3H,t,J=7.33Hz),1.37(3H,d,J=6.59Hz),1.55(1H,dd,J=14.29Hz &J=3.66Hz),1.63(1H,m,J=7.33Hz),1.76(1H,m,J=7.33Hz),1.90(1H,d,J=14.29Hz),2.02(1H,td,J=13.19Hz & J=3.30Hz),2.14(1H,dd,J=14.66Hz & J=4.03Hz),3.00(1H,d,J=18.69Hz),3.15(1H,br d,J=11.73Hz),3.27(1H,d,J=19.06Hz),3.65(1H,br s),4.01(3H,s),4.24(1H,br s),4.29(1H,q,J=6.60Hz),4.66(1H,s),5.33(1H,br s),5.67(1H,d,J=3.29Hz),7.24(1H,t,J=4.77Hz),7.33(1H,t,J=8.42Hz),7.68(2H,d,J=5.13Hz),7.74(1H,t,J=8.06Hz),7.88(1H,d,J=7.69Hz)
(8)13C−NMRスペクトル(100MHz、CDCl3−CD3OD(20:1)):主要な吸収は、下記のとおりである。
δTMS(ppm):6.48,16.88,24.89,28.49,28.99,31.00,33.19,35.08,45.89,56.82,66.20,68.49,70.30,70.94,72.51,101.81,110.70,111.12,111.34,111.39,115.47,118.69,119.71,119.81,120.50,124.85,132.92,134.34,134.64,135.22,135.90,136.28,137.29,140.03,155.14,155.59,156.29,156.97,161.01,162.05,185.44,186.39,187.00,189.94,212.31
【産業上の利用分野】
本発明は、ストレプトミセス(Streptomyces)属に属する微生物が生産する新規なアントラサイクリン系抗生物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
アントラサイクリン系抗生物質としては、従来から放線菌の培養液から得られるダウノマイシン(米国特許第3,616,242号)およびアドリアマイシン(米国特許第3,590,028号)が知られており、これらの化合物は、実験腫瘍に対して広い抗癌スペクトルを有し、癌化学療法剤として臨床的にも広く利用されている。しかし、ダウノマイシンおよびアドリアマイシンはかなり強力な抗癌作用を示すが決して満足できるものではない。そのため発酵法、半合成法、微生物変換法など各種の手段により種々の類縁化合物を創製する試みが行われており、さらにいくつかのアントラサイクリン抗生物質、例えばアクラシノマイシンAおよびB(特公昭51−34915号)、4−デメトキシ−11−デオキシダウノマイシン(特開昭57−26494号)、ロドマイシン群抗生物質(特開昭56−15299号)などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
抗腫瘍剤としてのアントラサイクリン抗生物質は、上述したように、各種の類縁化合物が提案され、すでに一部は臨床的にも広く利用されているものもあり、また臨床試験に供されているものもある。しかし、毒性、抗癌作用双方について共に満足できるものはない。しかも抗腫瘍剤は、試験管内試験、動物試験の結果が必ずしも人間の抗癌作用として反映できないため、多角的な研究が要求される。そのため、抗腫瘍剤として一応の評価がされているアントラサイクリン系抗生物質について、さらに新たな部類に属する化合物の提案が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、より有用なアントラサイクリン抗生物質またはその合成中間体となり得る新規化合物を提案するため鋭意研究を重ねたところ、ストレプトミセス属に属する微生物の培養液中より文献未載の新規なアントラサイクリン抗生物質の単離に成功し、また該化合物が実験腫瘍に対して増殖阻止作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0005】
本発明により提供される新規アントラサイクリン抗生物質は、下記の理化学的性質を有する抗生物質である。
(1)外観:赤色粉末
(2)融点:193〜195℃(分解)
(3)比旋光度:[α]D 20 −674゜(c 0.02、CHCl3)
(4)FABマススペクトル(m/z):896((M+H)+)、895((M−H)−)
(5)UV吸収スペクトル:90%メタノール溶液中で測定した極大吸収は下記のとおりである(単位:nm)。
λmax(E1cm 1%):239(144)、257(sh、134)、295(sh、112)、511(96)
(6)IR吸収スペクトル(KBr):特徴的な吸収は、下記のとおりである(単位:cm−1)。
νmax:1715、1613、1582
【0006】
(7)1H−NMRスペクトル(400MHz、CDCl3):主要な吸収は、下記のとおりである。
δTMS(ppm):1.07(3H,t,J=7.33Hz),1.37(3H,d,J=6.59Hz),1.55(1H,dd,J=14.29Hz &J=3.66Hz),1.63(1H,m,J=7.33Hz),1.76(1H,m,J=7.33Hz),1.90(1H,d,J=14.29Hz),2.02(1H,td,J=13.19Hz & J=3.30Hz),2.14(1H,dd,J=14.66Hz & J=4.03Hz),3.00(1H,d,J=18.69Hz),3.15(1H,br d,J=11.73Hz),3.27(1H,d,J=19.06Hz),3.65(1H,br s),4.01(3H,s),4.24(1H,br s),4.29(1H,q,J=6.60Hz),4.66(1H,s),5.33(1H,br s),5.67(1H,d,J=3.29Hz),7.24(1H,t,J=4.77Hz),7.33(1H,t,J=8.42Hz),7.68(2H,d,J=5.13Hz),7.74(1H,t,J=8.06Hz),7.88(1H,d,J=7.69Hz)
【0007】
本発明者らは、該抗生物質をDR40と命名した。以後、本明細書において該化合物を上記名称を用いて説明する。抗生物質DR40は、その理化学的性質、特にNMRスペクトルからダウノマイシン骨格を有するアントラサイクリン系抗生物質であることは明らかであり、培養白血病細胞L1210に対して増殖阻止作用を有し、それ自体制癌剤として有用である。
【0008】
(マウス白血病L1210培養細胞に対する増殖阻害作用)
10%仔牛血清を含むRPMI1640培地(ローズウエルバーグ研究所)へL1210細胞を5×104個/ml接種し、同様に本発明の物質を0.001〜10μg/mlの濃度で添加し、37℃にて炭酸ガス培養器中で培養し、対照区に対する50%増殖阻害濃度を求めた。DR40のマウス白血病L1210培養細胞に対する50%増殖阻害濃度(IC50)は0.25μg/mlであった。なお、本発明の化合物は、0.02M酢酸(pH3.0)中に1mg/ml濃度で溶解した後、Dulbecco PBS(−)(日水製薬株式会社製)で希釈し、添加した。
【0009】
本発明の化合物DR40の製造は、ストレプトミセスに属し、該化合物を生産する能力を有する菌株を適当な栄養源からなる培地に培養することにより行うことができる。これらの生産菌株のうち具体的なものとしては、アントラサイクリン系抗生物質ダウノマイシン(ダウノルビシン)生産菌として知られるストレプトミセス・コエルレオルビダス(Streptomyces coeruleorubidus)3T−373株を挙げることができる。該菌株は、昭和57年7月13日付で工業技術院微生物工業技術研究所(現、工業技術院生命工学工業技術研究所)にFERM BP−165として国際寄託されている。
【0010】
以下に3T−373株の菌学的性状を示す。
(1)形態
分枝した基中菌糸より直線状あるいは鉤状の気中菌糸を形成し、輪生枝は認められない。成熟した胞子鎖は10個以上で、胞子の大きさは0.4〜0.8×1.2〜2.0μm位であり、胞子の表面はほとんど平滑である。時に一部の胞子の表面に刺状突起の痕跡様の突起が僅かに認められることがある。
【0011】
(2)各種培地における生育状態(28℃)
色の記載について( )内に示す標準は、H.D.Tresner & E.J.Backus,System of color wheels for Streptomycete taxonomy(J.Appl.Microbiol.vol.11,335〜338(1963))を用い、補足的に日本色彩研究所出版の「色の標準」を用いた。
【0012】
(2−1)シュークロース・硝酸塩寒天培地
うす橙あるいはにぶ橙、ないしは明るい茶(4ea〜4gc)の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素はほとんど認められない。
(2−2)グルコース・アスパラギン寒天培地
灰黄あるいは明るいオレンジ黄、ないしはうす橙(3ec〜3ea〜4ea)の発育をする。気中菌糸は、ほとんど形成されず、可溶性色素もほとんど生成されない。
(2−3)グリセリン・アスパラギン寒天培地
うす橙(4ea)あるいは橙、ないしは暗い橙の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素は僅かに橙色を帯びる。
(2−4)スターチ・無機塩寒天培地
明るい橙黄あるいはうす橙(3ea〜4ea)、ないしは赤味橙の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素はピンクを、あるいは僅かに橙色を帯びる。
(2−5)チロシン寒天培地
うす橙(4ea)あるいは黄茶、ないしは赤味橙の発育上に、紫を帯びた白(13ba)ないしは灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素はほとんど認められない。培養長期(約20日)に及ぶと橙色を帯びる。
【0013】
(2−6)栄養寒天培地
赤ないし暗い赤の発育上に灰黄味ピンク(5cb)ないし極うすい紫(11ca)の気中菌糸を着生し、可溶性色素はピンクを帯びる。
(2−7)イースト・麦芽寒天培地
にぶ橙(4gc)あるいは黄茶、ないしは赤味茶の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸をはじめはうっすらと、培養後14日目頃より豊富に着生し、可溶性色素は橙色を僅かに帯びる。
(2−8)オートミール寒天培地
明るい赤茶(5gc)あるいは赤茶、ないしは茶の発育上に灰黄味ピンク(5cb)の気中菌糸を着生し、可溶性色素は極僅かにピンクを帯びる。
(2−9)グルコース・ペプトン・ゼラチン培地
黄茶ないしは暗い茶の発育上にうすく白色の気中菌糸を僅かに着生し、可溶性色素は僅かに茶色を帯びる。
(2−10)脱脂牛乳培地
表面に発育し、カゼインは凝固しないが、ペプトン化を生ずる。可溶性色素は茶色味を呈する。
【0014】
(3)生理的性質
(3−1)生育温度範囲:イースト・麦芽寒天培地を使用し、pH6.0において、20℃、25℃、30℃、37℃、46℃、50℃の各温度で実験したところ、20℃から37℃までの各温度で生育が認められ、46℃および50℃では生育しなかった。最適温度は30℃〜37℃付近と思われる。
(3−2)ゼラチンの液化:グルコース・ペプトン・ゼラチン培地を使用し、20℃で培養したところ、陽性であった。
(3−3)スターチの加水分解:スターチ・無機塩寒天培地を使用して培養したところ、陽性であった。
(3−4)脱脂牛乳の凝固、ペプトン化:凝固はほとんどしないが、ペプトン化する。
(3−5)メラニン様色素の生成:トリプトファン・イースト・ブロス培地およびペプトン・イースト・鉄・寒天培地では、明らかにメラニン様色素が生成する。チロシン寒天培地ではメラニン様色素はほとんど生成しないか、あるいは痕跡程度生成する。
【0015】
(4)各種炭素源の利用性:フリドハム・ゴトリーブ寒天培地上に各種の炭素源を加え、生育を見たところ、L−アラビノース、D−キシロース、D−グルコース、D−フルクトース、シュークロース、イノシトール、D−マンニットのいずれの炭素源も利用することができた。L−ラムノース、ラフィノースの利用は僅かで疑わしい。
【0016】
本発明の抗生物質を生産する菌株の培養は、放線菌の栄養源として通常使用されそれ自体公知の培地組成物中で行うことができる。例えば、炭素源としては、グルコース、グリセリン、シュークロース、澱粉、マルトース、動植物油などが使用でき、窒素源としては、大豆粉、肉エキス、酵母エキス、ペプトン、コーンステープリカー、綿実粕、魚粉などの有機物、ならびに硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸アンモニウムなどの無機態窒素が使用できる。また必要に応じて食塩、塩化カリウム、リン酸塩、その他Mg++、Ca++、Co++、Zn++、Fe++、Cu++、Mn++あるいはNi++などの二価金属塩類、さらにはアミノ酸やビタミン類などを添加することができる。また発酵中の発泡を抑制するため、例えばシリコーン−KM75(商品名:信越化学株式会社製)などの消泡剤を添加することができる。
【0017】
温度、pH、通気撹拌および発酵時間などの発酵条件は、使用する菌株が最大量の該化合物を蓄積するように選択すればよい。例えば温度は、20〜40℃、好ましくは28℃、pHは5〜9、好ましくは6〜7において、発酵時間は1〜10日間、好ましくは6日間で発酵を行うのが有利である。
【0018】
該培養物から抗生物質DR40を単離、採取するには、発酵終了後の培養物を遠心分離によるか、珪藻土のような適当な濾過助剤の存在下で濾過することにより、菌体と上澄みまたは濾液に分離する。上澄みからはpH7〜9でクロロホルム、トルエン、酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出する。菌体からは、必要により、アセトン、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの有機溶媒を用いて抽出する。それぞれ濃縮乾固して赤色の粗粉末を得る。これを吸着担体、例えば非イオン性の多孔性スチレン系樹脂、シリカゲルを用いたクロマトグラフィーにより処理するか、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂を用いる処理などを単独あるいは適宜組合せて使用することにより、抗生物質DR40を純粋な形で採取できる。
【0019】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
【実施例】
実施例1
ストレプトミセス・コエルレオルビダス(Streptomyces coeruleorubidus)3T−373株(FERM BP−165)のYS(酵母エキス0.3%、可溶性澱粉1.0%、寒天1.5%、pH7.2)斜面培養より1白金耳を採り、種母培地(可溶性澱粉0.5%、グルコース0.5%、エスサンミート(商品名:味の素株式会社製)1.0%、酵母エキス0.1%、食塩0.1%、第二リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム・7水和物0.1%、pH7.4に調整、120℃、15分加熱殺菌)100mlを含む500ml三角フラスコに接種した。これを28℃にて2日間振とう培養して種母を作成した。
【0021】
次いで生産培地(台湾酵母5.0%、可溶性澱粉7.5%、酵母エキス0.3%、食塩0.2%、炭酸カルシウム0.3%、ミネラル混液0.125%、pH8.0に調整、120℃、15分加熱殺菌)を100lに入れた200l容タンクに上記種母2l添加接種した。但し、ミネラル混液は、CuSO4・5H2Oを2.8g、FeSO4・7H2Oを0.4g、MnCl2・4H2Oを3.2g、ZnSO4・2H2Oを0.8gを蒸留水500mlに溶解したものである。
【0022】
通気量50l/分、攪拌100rpm、28℃で6日間振とう培養すると生産物のため培養液は濃赤褐色を呈するので、発酵を中止し培養液を集め、水で4倍希釈し、リン酸でpH2.0とした後、遠心分離により菌体と上澄に分離した。上澄中の生産物をダイヤイオンHP−20(合成吸着樹脂、三菱化成株式会社製)10lのカラムに通した。pH2の酸性水で洗浄し、次いで60%アセトン水(pH2.0)で溶出した。溶出液をおよそ1/2量まで濃縮し、pHを4N水酸化ナトリウムを用いてpH8.5に調整し、20lのクロロホルムで抽出した。クロロホルム層に0.1N酢酸20lを加え、酸転し、水層をクロロホルム10lで洗浄した。水層のpHをpH8.5に調整し、再び20lのクロロホルムで抽出し、少量まで濃縮した後、n−ヘキサンを添加して沈殿を得た。この沈殿をクロロホルムに溶解後、生産物とほぼ等モル量となるように1N塩酸−メタノールを徐々に添加した。沈殿を除去し、上澄を濃縮乾固し、抗生物質DR40の粗粉末を92g得た。
【0023】
得られた粗粉末の92gをpH2.5に調整した水8lに溶解し、ダイヤイオンHP−20(合成吸着樹脂、三菱化成株式会社製)3lのカラムに通し、吸着させた。これをメタノール−クエン酸緩衝液(0.1N、pH3.5)(40:60〜70:30)および60%アセトン水(pH2.5)で段階的に溶出させることにより、抗生物質DR40を含む画分を得た。得られた画分をpH8.0に調整した後、クロロホルムで抽出し、濃縮乾固することにより抗生物質DR40の部分精製粉末0.59gを得た。
【0024】
得られた抗生物質DR40の部分精製粉末0.59gをシリカゲルカラム(ワコーゲルC−200(和光純薬株式会社製)、50g)に吸着させ、クロロホルム−メタノール−ギ酸−水(100:5:0.2:0.1および100:10:0.2:0.1)で段階的に溶出させ、抗生物質DR40を含む画分を得た。この画分を1%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、濃縮乾固した。
【0025】
これを分取用シリカゲル薄層プレート(PF254、20×20cm:メルク社製)を用い、溶媒系としてクロロホルム−メタノール−濃アンモニア水(5:1:0.1)を用いて精製した。抗生物質DR40に相当する赤色バンドををかき取り、クロロホルム−メタノール(5:1)で抽出し、水洗後、溶媒層を濃縮乾固した。
【0026】
この乾固物を35%アセトニトリル水(pH2.0、リン酸でpH調整)に溶解し、この溶媒を移動相として、分取用高速液体クロマトグラフィー(本体:LC−908、日本分析工業株式会社製;カラム:カプセルパック C18(φ30×250mm)、資生堂株式会社製)を用いて分取を行い、抗生物質DR40の画分を得た。抗生物質DR40の画分をクロロホルムで抽出し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、少量まで減圧濃縮した。これに過剰のn−ヘキサンを添加して生成した沈殿を濾過集積し、真空乾燥して抗生物質DR40の精製粉末27mgを得た。
【0027】
なお、精製中における抗生物質DR40の分析は、下記する高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。このときDR40の保持時間は、39.8分であった。
(高速液体クロマトグラフィー条件)
カラム:Zorbax TMS(φ4.6×250mm)
移動相:水−アセトニトリル−メタノール−リン酸(540:290:170:2)1lにSDS1gを溶解し、2N水酸化ナトリウムでpH3.6に調整する。
流速:1.5ml/分
【0028】
以下に本発明の抗生物質DR40の理化学的性状を示す。
(1)外観:赤色粉末
(2)融点:193〜195℃(分解)
(3)比旋光度:[α]D 20 −674゜(c 0.02、CHCl3)
(4)FABマススペクトル(m/z):896(ポジティブ)、895(ネガティブ)
(5)UV吸収スペクトル:90%メタノール溶液中で測定した極大吸収は下記のとおりである(単位:nm)。
λmax(E1cm 1%):239(144)、257(sh、134)、295(sh、112)、511(96)
(6)IR吸収スペクトル(KBr):特徴的な吸収は、下記のとおりである(単位:cm−1)。
νmax:1715、1613、1582
【0029】
(7)1H−NMRスペクトル(400MHz、CDCl3−CD3OD(20:1)):主要な吸収は、下記のとおりである。
δTMS(ppm):1.07(3H,t,J=7.33Hz),1.37(3H,d,J=6.59Hz),1.55(1H,dd,J=14.29Hz &J=3.66Hz),1.63(1H,m,J=7.33Hz),1.76(1H,m,J=7.33Hz),1.90(1H,d,J=14.29Hz),2.02(1H,td,J=13.19Hz & J=3.30Hz),2.14(1H,dd,J=14.66Hz & J=4.03Hz),3.00(1H,d,J=18.69Hz),3.15(1H,br d,J=11.73Hz),3.27(1H,d,J=19.06Hz),3.65(1H,br s),4.01(3H,s),4.24(1H,br s),4.29(1H,q,J=6.60Hz),4.66(1H,s),5.33(1H,br s),5.67(1H,d,J=3.29Hz),7.24(1H,t,J=4.77Hz),7.33(1H,t,J=8.42Hz),7.68(2H,d,J=5.13Hz),7.74(1H,t,J=8.06Hz),7.88(1H,d,J=7.69Hz)
(8)13C−NMRスペクトル(100MHz、CDCl3−CD3OD(20:1)):主要な吸収は、下記のとおりである。
δTMS(ppm):6.48,16.88,24.89,28.49,28.99,31.00,33.19,35.08,45.89,56.82,66.20,68.49,70.30,70.94,72.51,101.81,110.70,111.12,111.34,111.39,115.47,118.69,119.71,119.81,120.50,124.85,132.92,134.34,134.64,135.22,135.90,136.28,137.29,140.03,155.14,155.59,156.29,156.97,161.01,162.05,185.44,186.39,187.00,189.94,212.31
Claims (1)
- 下記の理化学的性質を有する抗生物質DR40。
(1)外観:赤色粉末
(2)融点:193〜195℃(分解)
(3)比旋光度:[α]D 20 −674゜(c 0.02、CHCl3)
(4)FABマススペクトル(m/z):896((M+H)+)、895((M−H)−)
(5)UV吸収スペクトル:90%メタノール溶液中で測定した極大吸収は下記のとおりである(単位:nm)。
λmax(E1cm 1%):239(144)、257(sh、134)、295(sh、112)、511(96)
(6)IR吸収スペクトル(KBr):特徴的な吸収は、下記のとおりである(単位:cm−1)。
νmax:1715、1613、1582
(7)1H−NMRスペクトル(400MHz、CDCl3):主要な吸収は、下記のとおりである。
δTMS(ppm):1.07(3H,t,J=7.33Hz),1.37(3H,d,J=6.59Hz),1.55(1H,dd,J=14.29Hz &J=3.66Hz),1.63(1H,m,J=7.33Hz),1.76(1H,m,J=7.33Hz),1.90(1H,d,J=14.29Hz),2.02(1H,td,J=13.19Hz & J=3.30Hz),2.14(1H,dd,J=14.66Hz & J=4.03Hz),3.00(1H,d,J=18.69Hz),3.15(1H,br d,J=11.73Hz),3.27(1H,d,J=19.06Hz),3.65(1H,br s),4.01(3H,s),4.24(1H,br s),4.29(1H,q,J=6.60Hz),4.66(1H,s),5.33(1H,br s),5.67(1H,d,J=3.29Hz),7.24(1H,t,J=4.77Hz),7.33(1H,t,J=8.42Hz),7.68(2H,d,J=5.13Hz),7.74(1H,t,J=8.06Hz),7.88(1H,d,J=7.69Hz)
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