JP3561422B2 - 大気圧イオン源 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、質量分析装置で用いられる大気圧イオン源に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、大気圧下でイオンを生成し、そのイオンを真空中に導入して質量分析する大気圧イオン化質量分析計が広く使われている。その例として、図1について説明する。
【0003】
図1は、エレクトロスプレー、あるいはナノエレクトロスプレー(低流量エレクトロスプレー)と呼ばれている大気圧イオン化質量分析計のイオン源と質量分析計を結ぶインターフェイス部を示している。内側に試料溶液1が注入されているニードル細管2に500〜5000Vの直流電圧を印加し、形成された電界中に試料溶液を噴霧すると、溶液中の試料は電界によってイオン化される。生成したイオン3は、対向電極4のオリフィス5に向かい、大気圧中を移動する。イオン3は、対向電極4に設けられた数百ミクロン程度のオリフィス5から真空中にサンプリングされ、高真空中(10−5Torr以下)に配置されている質量分析部6により分析される構造になっている。
【0004】
尚、対向電極4には、質量分析部6が四重極型の場合、0〜数百V程度、磁場型の場合、数千V程度の直流電圧が印加される。
【0005】
以上はエレクトロスプレー法と呼ばれる大気圧イオン源であるが、これ以外の大気圧でイオンを生成する方法としては、大気圧化学イオン化法(APCI)や誘導結合高周波プラズマ法(ICP)なども普及している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような構成において、大気圧イオン化質量分析法の最大の問題点は、イオンの生成が大気圧中で行なわれるのに対して、イオンの分析を高真空中で行なわなければならない点である。大気圧中で生成したイオンを高真空領域まで導かなければならないため、数百ミクロン程度の内径の細孔あるいは細管を用いて、測定部の真空度を保たなければならない。
【0007】
例えば図1では、大気圧領域で生成し徐々に拡散していくイオンのごく一部しかオリフィス5を介して真空中にサンプリングされず、ほとんどのイオンは大気圧中で拡散し、器壁に衝突するなどして消滅してしまう。
【0008】
その結果、このオリフィス5の外側から内側に入る過程で、イオン量が数千分の一から数百万分の一程度に大きく減少してしまい、質量分析計6の検出感度を向上させることができなかった。
【0009】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、大気圧下で生成したイオンの高真空領域へのサンプリング効率を高めた大気圧イオン化質量分析装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明にかかる大気圧イオン源は、交流電圧と直流電圧を同時に印加でき、かつ、平面内に穴を有する2枚の平板電極をほぼ平行に配置すると共に、該平板電極の外側に、直流電圧を印加できる平板電極をほぼ平行に配置し、大気圧下で生成するイオンを前記2枚の平板電極間にトラップさせて、質量分析計に導くようにしたことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図2は、本発明にかかる大気圧イオン源と質量分析計のインターフェイス部を示した図である。
【0012】
図中、ニードル細管2は、内径が1〜200μm、外径が3〜800μmで、材質は金属、非金属を問わない。細管内には、試料溶液1が注入されていて、外壁には500〜5000Vの直流電圧が印加されている。また、対向電極4には、直径50〜500μmのオリフィス5が中央に開いていて、四重極型質量分析計の場合で0〜数百V程度、磁場型質量分析計の場合で数千V程度の直流電圧が印加されている。6は質量分析部である。本発明では、ニードル細管2と対向電極4との間に、4枚の電極板(トラップ電極)A、B、C、Dを配置する。ニードル細管2からの試料溶液の噴霧によって生成したイオン3は、この4枚の平行平板電極の中央付近にトラップされる。そして、トラップされたイオン3は、拡散することなく、オリフィス5へ吸引される大気の流れに乗って、徐々にオリフィス5から真空中に導入され、質量分析される。
【0013】
電極部の詳細を図3に示す。中央の2枚の電極B、Cには、対向電極4の電位以上の適宜な電位を中心とした、適当な大きさの交流電圧(数百V)を加える。この場合の交流電源の周波数は、数十から数百Hz程度である。電極B、Cには、中央に丸穴7が開けられていて、電極B、Cの上下両方向から、電極BとCで挟まれた空間に、電極A、Dによって発生される直流の電界を直接印加することができるようになっている。そして、上端の電極A、下端の電極Dに、それぞれ適当な直流電圧(0〜1000V)を印加すれば、中心部(BとCとの間)には四重極交流電場が形成され、イオンは電極B、C間で往復動されるため、その間に安定に蓄積される。
【0014】
尚、電極A、Dに印加する電圧を適宜選定すれば、重力あるいは外部電場の影響をキャンセルすることも可能となる。例えば、重力の影響を抑えるためには、下端の電極Dに、より大きな電位を印加すれば良い。
【0015】
また、図4に示すように、トラップ電極A、B、Cを対向電極4と平行に配置し、それに対して直角方向からイオンを導入しても良い。この場合、ニードル細管には500〜5000Vの直流電圧、電極Aには0〜1000Vの直流電圧、電極B及びCには数百Vの交流電圧と0〜1000Vの直流電圧、対向電極4には四重極型質量分析計の場合で0〜数百V程度、磁場型質量分析計の場合で数千V程度の直流電圧が印加され、対向電極4は、図3のトラップ電極Dに相当した役割を担うことになる。そして、生成したイオン3は、電極Cに設けられた丸穴7を通って対向電極4のオリフィス5に導入される。
【0016】
尚、以上の説明は、大気圧イオン源から生成するイオンが正イオンであることを前提としているが、もし、負イオンを質量分析する場合は、図1〜図4の中に書かれた直流電源の極性をすべて反転させればよい。
【0017】
また、上記の例では、電界噴霧(エレクトロスプレー)によるイオン生成系に基づいて本発明の特徴を説明したが、これ以外の大気圧でイオンを生成する方法としては、大気圧化学イオン化法(APCI)、誘導結合高周波プラズマ法(ICP)などにも応用ができ、同様の効果を得ることが期待できる。
【0018】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明の大気圧イオン源によれば、大気圧下で生成したイオンが大気中に拡散してしまうことがないので、イオンを高効率で質量分析部にサンプリングすることができ、大気圧イオン化質量分析装置の検出感度を飛躍的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の大気圧イオン化質量分析計を示す図である。
【図2】本発明の大気圧イオン化質量分析計の一実施例を示す図である。
【図3】本発明の大気圧イオン化質量分析計の一実施例を示す図である。
【図4】本発明の大気圧イオン化質量分析計の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
1・・・試料溶液、2・・・スプレー細管、3・・・イオン、4・・・対向電極、5・・・オリフィス、6・・・質量分析部、7・・・丸穴、A・・・トラップ電極、B・・・トラップ電極、C・・・トラップ電極、D・・・トラップ電極。
Claims (1)
- 交流電圧と直流電圧を同時に印加でき、かつ、平面内に穴を有する2枚の平板電極をほぼ平行に配置すると共に、該平板電極の外側に、直流電圧を印加できる平板電極をほぼ平行に配置し、大気圧下で生成するイオンを前記2枚の平板電極間にトラップさせて、質量分析計に導くようにしたことを特徴とする大気圧イオン源。
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