JP3561237B2 - ベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオウ−炭素結合の反応性に基づく広範囲の化学変換が可能なベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体の効率的な製造方法に関するものである。これらの化合物は、例えば、ホルモン、性フェロモン、昆虫類の食餌抑制剤、その他生理活性化合物の合成中間体として広く用いられている。
【0002】
【従来の技術】
ベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体の合成法としては、従来、アセチレンカルボン酸誘導体にチオール類を作用させる方法、ベータケト酸エステルにチオールを作用させる方法等が知られているが、特定のものを除けば、アセチレンカルボン酸誘導体やベータケト酸エステルの合成自身が容易ではなく、工業的に有利な方法とは到底考えられない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き現状に鑑みなされたもので、入手容易な、或いは簡単な操作で合成可能な出発原料を用いて、容易に且つ効率的にベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体を製造することが出来るベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体の新規な製造方法と、これによって得られる新規なベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属錯体触媒の存在下に、一般式(II)
C≡CH (II)
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい複素環基又は置換基を有していてもよいシリル基を示す。)で表されるアセチレン化合物を、一般式(III)
ArSCOOR (III)
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、Arは置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表されるチオ炭酸エステルと反応させることを特徴とする、一般式(I)
(ArS)C=CHCOOR (I)
(式中、R、R及びArは前記と同じ。)で表されるベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体の製造方法に関する。
【0005】
また、本発明は、一般式(I’)
(ArS)C=CHCOOR (I’)
(式中、R は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいシリル基又は置換アリール基を示し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、Arは置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表されるベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体に関する。
【0006】
即ち、本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、金属錯体触媒、殊にパラジウムやロジウム等の遷移金属錯体触媒の存在下に、チオ炭酸エステルがアセチレン結合に容易に付加する事実を見出し、入手容易なアセチレン化合物と簡単な操作で合成可能なチオ炭酸エステルとを金属錯体触媒の存在下に反応させる本発明を完成させるに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
一般式(I)及び(II)において、Rで示される置換基を有していてもよいアルキル基のアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
また、置換基を有していてもよいシクロアルキル基のシクロアルキル基としては、例えば、炭素数3〜30、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜10の単環、多環又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられ、より具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、前記した炭素数2以上のアルキル基に1個以上の二重結合などの不飽和基を有するものが挙げられ、より具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基のシクロアルケニル基としては、前記したシクロアルキル基に1個以上の二重結合などの不飽和基を有するものが挙げられ、より具体的には、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、例えば、炭素数6〜30、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜14の単環、多環又は縮合環式の芳香族炭化水素基が挙げられ、より具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアラルキル基のアラルキル基としては、例えば、炭素数7〜30、好ましくは7〜20、より好ましくは7〜15の単環、多環又は縮合環式のアラルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0008】
これらアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基及びアラルキル基の置換基としては、例えば、水酸基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、例えば塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子、シアノ基、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、シリル基、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の置換シリル基、例えばt−ブチルジメチルシロキシ基のシロキシ基等が挙げられる。
【0009】
置換基を有していてもよい複素環基の複素環基としては、環中に少なくとも1個以上の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有し、1個の環の大きさが5〜20員、好ましくは5〜10員、より好ましくは5〜7員であって、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はアリール基などの炭素環式基と縮合していてもよい飽和又は不飽和の単環、多環又は縮合環式のものが挙げられ、より具体的には、例えば、ピリジル基、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、ピペリジル基、ピペラジル基、モルホリノ基、イミダゾリル基、インドリル基、キノリル基、ピリミジニル基等が挙げられる。また、複素環基の置換基としては、例えば、アルキル基、水酸基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、例えば塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子、シアノ基、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、シリル基、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の置換シリル基、例えばt−ブチルジメチルシロキシ基のシロキシ基等が挙げられる。
置換シリル基としては、シリル基の水素原子の1〜3個がアルキル基、アリール基等に置き換わったものが挙げられ、中でもトリ置換体が好ましく、より具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0010】
一般式(I)及び(III)において、Rで示される置換基を有していてもよいアルキル基のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基のアリール基、及び置換基を有していてもよいアラルキル基のアルキル基としては、それぞれ上記Rにおけるアルキル基、アリール基、アラルキル基と同じものが挙げられる。また、これらの置換基も上記Rにおけるそれらと同じものが挙げられる。一般式(I)及び(III)において、Arで示される置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、例えば、炭素数6〜30、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜14の単環、多環又は縮合環式の芳香族炭化水素基が挙げられ、より具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられ、置換基としては上記Rにおけるアリール基の置換基と同じものが挙げられる。
【0011】
一般式(I’)において、R で示される置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい複素環基及び置換基を有していてもよいシリル基としては、上記Rにおけるそれらと全く同じものが挙げられる。また、置換アリール基としては、例えば、水酸基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、例えば塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子、シアノ基、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、シリル基、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の置換シリル基、例えばt−ブチルジメチルシロキシ基のシロキシ基等の官能基を有する、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0012】
一般式(II)で表されるアセチレン化合物と、一般式(III)で表されるチオ炭酸エステルとの反応における両者のモル比は、特に制約はないが、通常は1:1であり、これより大きくても小さくても、反応の生起を阻害するものではないが、高価なアセチレン化合物を基準に収率を考える場合には、チオ炭酸エステルをアセチレンに対して過剰に用いるのが好ましい。
【0013】
本発明の反応を効率よく進行させるには、金属錯体触媒、就中、遷移金属錯体触媒の存在は不可欠であり、触媒が存在しない場合には、反応が進行しないか非常に遅くなる。触媒としては種々の構造のものを用いることができるが、好適なものは、いわゆる低原子価のものであり、各種配位子を配位した遷移金属錯体を用いることが出来る。特に好ましい遷移金属としてはパラジウム及びロジウムが挙げられる。パラジウム触媒については、3級ホスフィンや3級ホスファイトを配位子とするゼロ価錯体、また、ロジウム錯体については、一価の錯体が更に好ましい。また、反応系中で容易に低原子価錯体に変換される適当な前駆体錯体を用いることも好ましい態様である。更に、3級ホスフィンや3級ホスファイトを配位子として含まない遷移金属錯体と3級ホスフィンや3級ホスファイトとを併用し、反応系中で3級ホスフィン又は3級ホスファイトを配位子とする低原子価錯体を形成させる方法も好ましい態様である。これら何れの方法においても有利な性能を発揮する配位子としては、種々の3級ホスフィンや3級ホスファイトが挙げられる。
【0014】
好適に用いることができる配位子を例示すると、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリメチルホスファイト、トリフェニルホスファイトなどが挙げられる。これに組み合わせて用いられる、3級ホスフィンや3級ホスファイトを配位子として含まない錯体としては、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム錯体、酢酸パラジウム錯体、(π−シクロペンタジエニル)(π−アリル)パラジウム錯体、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム錯体、クロロ(ノルボルナジエン)ロジウム錯体、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム錯体[Rh(acac)(CO)]などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、好適に用いられるホスフィン錯体又はホスファイト錯体としては、ジメチルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体[PdMe(PPh]、ジメチルビス(トリメチルホスフィン)パラジウム錯体[PdMe(PMe]、ジメチルビス(ジフェニルメチルホスフィン)パラジウム錯体、ジメチルビス(フェニルジメチルホスフィン)パラジウム錯体[PdMe(PPhMe]、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム錯体[Pd(PCy]、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体[Pd(PPh]、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム錯体[RhCl(PPh]、カルボニルクロロビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム錯体[RhCl(CO)(PPh]、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)(トリフェニルホスフィン)ロジウム錯体[RhCl(cod)(PPh)]などが挙げられる。
これらの遷移金属触媒は、反応に応じて好適なものを1種又は2種以上適宜選択して用いられる。
【0015】
これらの遷移金属錯体の使用量はいわゆる触媒量で良く、アセチレン化合物に対して20モル%以下であり、通常は5モル%以下で十分である。
【0016】
反応は特に溶媒を用いなくてもよいが、必要に応じて溶媒中で実施することもできる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、若しくは、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等が一般的に用いられる。反応温度は、アセチレン化合物の構造にもよるが一般には50℃以上に加熱するのが好ましく、通常は80〜200℃の範囲から選ばれる。本反応は空気中等の酸素の存在下でも進行するが、反応中間体が酸素にやや敏感であるため、窒素やアルゴン、メタン等の不活性ガス雰囲気で反応させるのが好ましい。反応混合物からの生成物の単離、精製は、クロマトグラフィー、蒸留又は再結晶等この分野において通常行われる自体公知の単離、精製法により容易に達成される。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0018】
実施例1
Pd(PCy (0.04ミリモル)、S−フェニルO−メチルチオカーボナート(1.2ミリモル)をオクタン(2ml)に加えると、淡赤色の溶液が生成した。ここへ1−オクチン(1.0ミリモル)を加え、窒素雰囲気下、110℃で20時間加熱した。反応液を冷却後、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、(Z)−3−フェニルチオ−2−ノネン酸メチル及びアセチレン結合へのフェニルチオ基とエステル基の付加の方向が逆の位置異性体が合計86%の収率で生成し、その両者の異性体比は98:2であった。反応液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサンで展開)を行うことにより、単離収率71%で、(Z)−3−フェニルチオ−2−ノネン酸メチル(生成物3a)が得られた。
本化合物は文献未収載の新規化合物であり、その性状、物性値およびスペクトルデータ等は以下の通りであった。
無色液体;沸点135℃ (0.25 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.54−7.51(m, 2H), 7.38−7.33(m, 3H), 5.83(s, 1H, C=CH),
3.73(s, 3H, OCH), 2.08(t, 2H, J = 7.7 Hz),
1.34−1.00(m, 8H), 0.78(t, 3H, J=7.1Hz)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.6(COOCH), 162.6(C=CH), 135.9, 130.7, 129.3, 129.0,
111.1(C=CH), 51.1(COOCH), 36.6, 31.2, 29.2, 28.4,
22.3, 13.9。
IR (液膜)
2954, 2932, 2862, 1707, 1582, 1439, 1197, 1025, 752 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
278(M, 11), 247(9), 219(5), 208(35), 147(24), 134(100),
110(57), 67(39), 59(41)。
元素分析(C1622Sとして)
計算値: C, 69.07; H, 7.91; S, 11.53。
実測値: C, 69.34; H, 8.17; S, 11.42。
【0019】
実施例2〜13
実施例1と同様の方法で種々のアセチレン類を反応させた結果を表1に纏めて示す。但し、特記しない限り、トルエンとオクタンの1:3混合溶媒を用いた。
【0020】
【表1】
Figure 0003561237
【0021】
これらの実施例で得られる生成物の内、新規化合物の分光学及び/又は元素分析データは以下の通りであった。
【0022】
生成物3b:(Z)−3−フェニルチオ−2−ヘプテン酸メチル
無色液体;沸点110℃ (0.15 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.55−7.52(m, 2H), 7.39−7.33(m, 3H), 5.84(s, 1H, C=CH),
3.74(s, 3H, OCH), 2.08(t, 2H, J=7.7Hz), 1.36−1.24(m, 2H),
1.09−1.02(m, 2H), 0.67(t, 3H, J=7.3 Hz)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.7(COOCH), 162.6(C=CH), 136.0, 130.6, 129.3, 129.0,
111.1(C=CH), 51.2(COOCH), 36.3, 31.3, 21.9, 13.5。
IR (液膜)
2932, 2862, 1707, 1582, 1439, 1180, 1021, 752 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
250(M, 16), 219(15), 208(43), 189(24), 175(3), 147(28),
134(100), 110(71), 65(36), 59(39)。
元素分析(C1418Sとして)
計算値: C, 67.20; H, 7.20; S, 12.80。
実測値: C, 67.35; H, 6.99; S, 12.42。
【0023】
生成物3c:(Z)−3−フェニルチオ−2−ブテン酸メチル
無色液体;沸点50℃ (0.15 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.56−7.53(m, 2H), 7.41−7.34(m, 3H),
5.85(q, 1H, J=1.0Hz, C=CH), 3.74(s, 3H, OCH),
1.81(d, 3H, J=1.0Hz)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.6(COOCH), 158.7(C=CH), 136.1, 130.8, 129.5, 129.1,
111.5(C=CH), 51.2(COOCH), 25.1。
IR (液膜)
1705, 1593, 1441, 1197, 1046, 754 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
208(M, 23), 193(1), 177(28), 149(100), 134(31), 110(56),
65(43), 59(58)。
元素分析(C1112Sとして)
計算値: C, 63.46; H, 5.77; S, 15.38。
実測値: C, 63.36; H, 6.00; S, 14.97。
【0024】
生成物3d:(Z)−4, 4−ジメチル−3−フェニルチオ−2−ペンテン酸メチル
無色液体;沸点100℃ (0.15 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.31−7.14(m, 5H), 6.23(s, 1H, C=CH), 3.32(s, 3H, OCH),
1.29(s, 9H)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.0(COOCH), 161.4(C=CH), 136.6, 129.4, 128.8, 126.2,
119.6(C=CH), 51.1(COOCH), 39.9, 29.2。
IR (液膜)
2972, 2870, 1734, 1611, 1481, 1439, 1195, 1172, 745, 688 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
250(M, 17), 219(8), 193(18), 149(25), 135(26), 109(38),
101(34), 81(39), 65(24), 57(100)。
元素分析(C1418Sとして)
計算値: C, 67.20; H, 7.20; S, 12.80。
実測値: C, 66.86; H, 7.15; S, 12.84。
【0025】
生成物3e:(Z)−7−t−ブチルジメチルシロキシ−3−フェニルチオ−2−ヘプテン酸メチル
無色液体;沸点160℃ (5.2 ×10−4 Torr)。
H NMR (C) δppm
7.34−7.31(m, 2H), 6.93−6.88(m, 3H), 5.98(s, 1H, C=CH),
3.47(s, 3H, OCH), 3.24(t, 2H, J=6.2Hz) 1.98(t, 2H, J=7.5Hz),
1.37−1.13(m, 4H), 0.93(s, 9H), −0.008(s, 6H)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.7(COOCH), 162.3(C=CH), 135.9, 130.6, 129.3, 129.0,
111.2(C=CH), 62.5, 51.2(COOCH), 36.4, 31.9, 25.9, 25.6,
18.3, −5.32。
IR (液膜)
2952, 2860, 1711, 1582, 1197, 1100, 835, 777 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
365(M−Me, 1), 349(2), 323(70), 291(51), 217(12), 189(24),
147(23), 109(15), 89(100), 75(55), 59(37)。
元素分析(C2032SSiとして)
計算値: C, 63.16; H, 8.42。
実測値: C, 62.92; H, 8.57。
【0026】
生成物3f:(Z)−4−メトキシ−3−フェニルチオ−2−ブテン酸メチル
無色液体;沸点100℃ (0.2 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.58−7.55(m, 2H), 7.41−7.33(m, 3H), 6.13(s, 1H, C=CH),
3.76(s, 3H), 3.71(s, 2H), 3.16(s, 3H)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.7(COOCH), 155.8(C=CH), 135.9, 131.2, 129.6, 129.1,
110.8(C=CH), 73.5, 58.4, 51.4。
IR (液膜)
2932, 1707, 1597, 1439, 1313, 1195, 1123, 752 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
238(M, 13), 206(56), 191(63), 176(4), 147(38), 134(20),
110(100), 101(25), 91(21), 69(73), 59(36)。
元素分析(C1214Sとして)
計算値: C, 60.50; H, 5.88; S, 13.40。
実測値: C, 60.28; H, 5.73; S, 13.09。
【0027】
生成物3g:(Z)−4−ヒドロキシ−4−メチル−3−フェニルチオ−2−ペンテン酸メチル
無色液体;沸点85℃ (0.15 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.35−7.17(m, 5H), 6.59(s, 1H, C=CH), 3.39(s, 3H, OCH),
2.20(s, 1H), 1.52(s, 6H)。
13C NMR (CDCl) δppm
165.8(COOCH), 158.1(C=CH), 135.3, 129.6, 129.0, 126.7,
120.9(C=CH), 174.9, 51.3(COOCH), 29.1。
IR (液膜)
3436, 2980, 2953, 1715, 1618, 1481, 1462, 1296, 1178, 1025,
745, 690 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
252(M, 9), 237(1), 221(2), 194(34), 163(22), 135(100),
117(12), 85(14), 65(9), 59(33)。
元素分析(C1316Sとして)
計算値: C, 61.89; H, 6.35; S, 12.72。
実測値: C, 61.54; H, 6.66; S, 12.57。
【0028】
生成物3h:(Z)−6−クロロ−3−フェニルチオ−2−ヘキセン酸メチル
無色液体;沸点100℃ (0.2 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.55−7.52(m, 2H), 7.45−7.36(m, 3H), 5.90(s, 1H, C=CH),
3.75(s, 3H, OCH), 3.30(t, 2H, J=6.3Hz),
2.31(t, 2H, J=7.4Hz), 1.77(m, 2H)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.4(COOCH), 160.0(C=CH), 135.8, 130.3, 129.5, 129.2,
112.4(C=CH), 51.3(COOCH), 43.4, 33.6, 31.5。
IR (液膜)
3062, 2952, 1707, 1582, 1439, 1199, 1025, 752, 692 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
270(M, 10), 239(5), 211(20), 189(17), 176(9), 161(24),
147(29), 134(30), 110(100), 97(9), 77(19), 65(67), 59(51)。
元素分析(C1315ClOSとして)
計算値: C, 57.67; H, 5.54; S, 11.83。
実測値: C, 57.60; H, 5.74; S, 12.12。
【0029】
生成物3i:(Z)−6−シアノ−3−フェニルチオ−2−ヘキセン酸メチル
無色液体;沸点130℃ (0.2 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.54−7.25(m, 5H), 5.89(s, 1H, C=CH), 3.75(s, 3H, OCH),
2.30(t, 2H, J=7.4Hz), 2.13(t, 2H, J=7.1Hz), 1.65(m, 2H)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.2(COOCH), 158.8(C=CH), 135.6, 130.1, 129.7, 129.4,
118.7(CN), 113.1(C=CH), 51.4(COOCH), 35.1, 24.5, 16.1。
IR (液膜)
2952, 2250, 1705, 1582, 1439, 1201, 754, 694 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
261(M, 15), 230(14), 202(45), 189(39), 161(13), 147(18),
134(20), 128(7), 120(72), 110(100), 92(26), 65(69)。
元素分析(C1415NOSとして)
計算値: C, 64.36; H, 5.75; N, 5.36; S, 12.26。
実測値: C, 64.42; H, 5.78; N, 5.38; S, 12.08。
【0030】
生成物3j:(Z)−4−フェニル−3−フェニルチオ−2−ブテン酸メチル
無色液体;沸点120℃ (0.2 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.41−6.86(m, 10H), 5.74(s, 1H, C=CH), 3.74(s, 3H), 3.43(s, 2H)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.5(COOCH), 160.6(C=CH), 136.9, 136.2, 130.1, 129.4,
128.9, 128.7, 128.4, 126.7, 113.5(C=CH), 51.2, 43.0。
IR (液膜)
1705, 1582, 1437, 1174, 1025, 748, 694 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
284(M, 8), 252(50), 174(17), 115(100), 91(26), 69(5)。
【0031】
生成物3j’:(E)−4−フェニル−3−フェニルチオ−3−ブテン酸メチル
無色液体;沸点120℃ (0.2 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.49−7.27(m, 10H), 7.01(s, 1H, C=CH), 3.69(s, 3H), 3.45(s, 2H)。
13C NMR (CDCl) δppm
170.9(COOCH), 163.0(C=CH), 136.1, 135.0, 132.0, 130.2,
129.2, 128.5, 128.3, 127.7, 127.6, 52.2, 37.7。
IR (液膜)
1742, 1603, 1477, 1170, 748, 694 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
284(M, 41), 253(4), 210(40), 191(11), 167(25), 147(24),
115(100), 91(34), 69(20)。
元素分析 ( 3j と 3j’の混合物)(C1716Sとして)
計算値: C, 71.83; H, 5.63; S, 11.26。
実測値: C, 72.12; H, 6.12; S, 11.06。
【0032】
生成物3l:(Z)−3−フェニルチオ−p−メトキシ桂皮酸メチル
無色液体;沸点120℃ (0.15 Torr)。
H NMR (CDCl) δppm
7.16−6.60(m, 9H), 6.07(s, 1H, C=CH), 3.78(s, 3H, OCH),
3.68(s, 3H, OCH)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.2(COOCH), 159.8(C=CH), 158.8, 133.5, 132.8, 130.6,
130.1, 128.4, 127.5, 115.4(C=CH), 113.2, 55.1, 51.4(COOCH)。
IR (KBr)
3004, 2950, 1702, 2840, 1707, 1605, 1582, 1508, 1253, 1166,
1025, 832, 748, 690 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
300(M, 11), 269(8), 240(25), 191(100), 151(42), 135(54),
117(27), 108(61), 89(54), 65(25), 59(68)。
元素分析(C1716Sとして)
計算値: C, 68.00; H, 5.33; S, 10.67。
実測値: C, 67.82; H, 5.36; S, 10.40。
【0033】
生成物3m:(Z)−3−フェニルチオ−p−フルオロ桂皮酸メチル
mp 91−92℃。
H NMR (CDCl) δppm
7.15−7.03(m, 7H), 6.81−6.75(m, 2H), 6.06(s, 1H, C=CH),
3.81(s, 3H, OCH)。
13C NMR (CDCl) δppm
166.1(COOCH), 162.5(d, JC−F=249.1Hz), 158.4(C=CH),
134.3(d,C−F=3.3Hz), 134.0, 132.1,
130.5(d,C−F=8.3Hz), 128.5, 127.9, 115.9(C=CH),
114.9(d, C−F=21.8Hz), 51.5(COOCH)。
IR (KBr)
1709, 1603, 1506, 1170, 1023, 833 cm−1
GC−MS m/z (相対強度)
288(M, 14), 257(62), 229(62), 179(19), 165(10), 139(41),
120(28), 109(51), 59(100)。
元素分析(C1613FOSとして)
計算値: C, 66.65; H, 4.51; S, 11.11。
実測値: C, 66.23; H, 4.08; S, 10.84。
【0034】
実施例14〜25
溶媒としてトルエンを用い、種々の触媒を用いて実施例1と同様の条件下に反応させた結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
Figure 0003561237
【0036】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、医薬・農薬等の合成に有用なベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体を、入手容易なチオ炭酸エステルとアセチレンから安全に且つ効率的に合成することができ、その単離、精製も容易である。従って、本発明は工業的に多大の効果をもたらす。

Claims (8)

  1. 金属錯体触媒の存在下に、一般式(II)
    C≡CH (II)
    式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基(これらアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基及びアラルキル基の置換基は、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ジアルキルアミノ基、シリル基、置換シリル基又はシロキシ基である。)、置換基を有していてもよい複素環基(置換基は、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ジアルキルアミノ基、シリル基、置換シリル基又はシロキシ基)又は置換基を有していてもよいシリル基(置換基はアルキル基又はアリール基)を示す。で表されるアセチレン化合物を、一般式(III)
    ArSCOOR (III)
    式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基(これらアルキル基、アリール基及びアラルキル基の置換基は、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ジアルキルアミノ基、シリル基、置換シリル基又はシロキシ基である。)を示し、Arは置換基を有していてもよいアリール基(置換基は、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ジアルキルアミノ基、シリル基、置換シリル基又はシロキシ基)を示す。で表されるチオ炭酸エステルと反応させることを特徴とする、一般式(I)
    (ArS)C=CHCOOR (I)
    (式中、R、R及びArは前記と同じ。)で表されるベータアリールチオアクリル酸エステル誘導体の製造方法。
  2. 金属錯体触媒が遷移金属錯体触媒である請求項1に記載の製造方法。
  3. 遷移金属がパラジウムまたはロジウムである請求項2に記載の製造方法。
  4. 遷移金属錯体触媒が低原子価の錯体触媒である請求項2又は3に記載の製造方法。
  5. 遷移金属錯体触媒が、3級ホスフィン又は3級ホスファイトを配位子とするパラジウムのゼロ価錯体である請求項2に記載の製造方法。
  6. 遷移金属錯体触媒が、3級ホスフィン又は3級ホスファイトを配位子とするロジウムの一価の錯体である請求項2に記載の製造方法。
  7. 遷移金属錯体触媒が、反応系中で容易に低原子価錯体に変換し得る前駆体錯体である請求項2又は3に記載の製造方法。
  8. 遷移金属錯体触媒が、3級ホスフィン又は3級ホスファイトを配位子として含まない遷移金属錯体と、3級ホスフィン又は/及び3級ホスファイトとを併用し、反応系中で形成させた3級ホスフィン又は/及び3級ホスファイトを配位子とする低原子価錯体である請求項2又は3に記載の製造方法。
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