JP3559993B2 - 水分蒸散量測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被験者の皮膚から蒸発して拡散した水分の蒸散量を局所的に測定するための水分蒸散量測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、皮膚を柔軟に保つ働きをする角質層は、皮膚を自由に働かせるために必要な保湿性機能を有しており、この保湿性機能が低下すると、皮膚の乾燥や肌荒れなどの症状が生じることが知られている。そのため、角質層を通して蒸散される水分量を測定することによって、角質層の水分含有状態を調べるための水分蒸散量測定手段が開発されている。この水分蒸散量測定手段として、従来、例えば特開昭52−99684号公報に記載されている「拡散放出量測定方法」がある。
【0003】
上記従来の「拡散放出量測定方法」によれば、本体に一体的に形成されたプローブ(保護カプセル)を被験者の腕の皮膚に直接、接触させることによって、皮膚から蒸散された水分量を測定するものである。図4は、上記プローブ50の縦断面図である。プローブ50は円筒型を成し、皮膚SKに接触する端面及びその反対側端面が開放されているとともに、内部空間に二つの湿度センサ51a,51bと、二つの温度センサ52a,52bとが2段階に配設されている。湿度センサ51aはプローブ50の内部空間における皮膚SKに近い領域で皮膚SKからの蒸散水分の湿度を検知し、温度センサ52aは同領域での気温を検知するものである。また、湿度センサ51bは皮膚SKから遠い領域で皮膚SKからの蒸散水分の湿度を検知し、温度センサ52bは同領域での気温を検知するものである。
【0004】
上記湿度センサ51a,51b及び温度センサ52a,52bは、図示していない本体に内蔵されている測定回路に接続されており、湿度センサ51a,51b及び温度センサ52a,52bから出力された湿度検知信号及び温度検知信号が測定回路に入力されると、測定回路はそれぞれの検知信号に基づいてプローブ50の内部空間における前述の二つの上下領域での蒸散水分の圧力差を演算したうえ、その圧力差に基づいて皮膚から蒸散された水分量を演算する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記「拡散放出量測定方法」の場合、プローブ50は、皮膚SKに接触する端面及びその反対側端面が開放されており、皮膚SKから蒸散された水分を含む気体がプローブ50の内部空間を縦方向に通過し、上方の開放面から排出される過程で、同気体の湿度及び温度が湿度センサ51a,51b及び温度センサ52a,52bにより検出される。
【0006】
上述のように、皮膚SKから蒸散された水分を含む気体がプローブ50の内部空間を通過し、上方の開放面から排出される過程で検出された気体の湿度及び温度に基づいて皮膚から蒸散された水分量を演算するため、皮膚から蒸散された水分量の測定値がプローブ50の周囲の空気の流れ具合などの影響を受けて変化する。そのため、プローブ50の周囲の空気の流れが、例えばエアコンディショナーの作動により変化するような場合、皮膚SKから蒸散された水分量を正確に測定することが出来ない場合がある。
【0007】
そこで本発明では、プローブの周囲の空気の流れ具合などの影響を受けずに被験者の皮膚から蒸散された水分量を正確に測定することができる水分蒸散量測定装置を提供することを解決すべき課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、特許請求の範囲の欄に記載した水分蒸散量測定装置により解決することができる。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、被験者の皮膚から蒸散された水分の蒸散量を測定する場合、プローブを被験者の皮膚に押し当てると、プローブに内装されているハウジングがスプリングの弾性力により皮膚方向に押圧されるため、当該ハウジングの皮膚方向端面に交換可能に着接されている皮膚接触部材が被験者の皮膚に密着される。これにより、プローブの周囲の空気の流れ具合などの影響を受けずに被験者の皮膚から蒸散された水分量を正確に測定することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、被験者の皮膚SKにプローブ2を密着させて皮膚SKから蒸散された水分量を測定する水分蒸散量測定装置1の全体的な構成を示した系統図である。また、図2は、プローブ2の構成を示した断面図であり、図3は図2に示したプローブ2のA−A矢視断面図である。
プローブ2に設けられた混合室3は、プローブ2が被験者の皮膚SKに密着された状態で、皮膚SKから蒸散された水分及び後述のコンプレッサ6(図1参照)から供給された自然空気を導入し、当該水分と自然空気とを混合させるために設けられている。また、混合室3のハウジング3aの下端面3bとテーパ状に形成された内径面2aとに接するように柔軟性の合成樹脂から成るリング状の皮膚接触部材4が上記内径面2aに沿って移動可能に、且つ、交換し易いように装着されている。この皮膚接触部材4は、それぞれの被験者の皮膚SKに密着されるものであるため、それぞれの被験者の水分蒸散量測定毎に予め洗浄されたものに交換されると、それぞれの被験者の水分蒸散量を衛生的に測定することができる。また、リング状の皮膚接触部材4を凹凸のある皮膚SKに押圧させ、密着させるために混合室3のハウジング3aを皮膚方向に弾性力で付勢するスプリング25がプローブ2に形成されているスプリング室24に弾着されている。
【0011】
プローブ2には、混合室3の導入口28aから前述の自然空気を導入するためのフレキシブルパイプ28と、皮膚SKから蒸散された水分及び前述の自然空気が混合された混合気湿を混合室3の排出口29aから外部に排出するためのフレキシブルパイプ29とが設けられている。
【0012】
図1に示すように、水分蒸散量測定装置1の本体1aにはコンプレッサ6が設けられている。このコンプレッサ6は自然空気を吸入したうえ、自然空気を一定の圧力で送出する。そして、コンプレッサ6から送出された自然空気はタンク7で一定流量にされたあと、パイプ8を通って前記フレキシブルパイプ28からプローブ2の混合室3に供給される。
【0013】
プローブ2が皮膚SKに密着された状態で、コンプレッサ6から送出された自然空気が上述のようにフレキシブルパイプ28からプローブ2の混合室3に供給されると、この自然空気は、皮膚SKから蒸散された水分と混合され、混合気湿となって、前記フレキシブルパイプ29を通って排気通路5に流れる。この排気通路5にはハウジング9が設けられており、排気通路5を流れた混合気湿はハウジング9を介して大気中に排気される。
【0014】
コンプレッサ6から送出された自然空気の絶対湿度を検知するための絶対湿度センサ10が前記タンク7の内部に配設されている。また、排気通路5に形成されているハウジング9を通過する前記混合気湿の絶対湿度を検知するための絶対湿度センサ11がハウジング9に配設されている。
【0015】
上記絶対湿度センサ10,11は、周囲温度を検知する温度センサを内蔵し、前記自然空気及び混合気湿の相対湿度を検知温度に基づいて絶対湿度に変換したうえ、その絶対湿度検知信号を出力する。
【0016】
上記絶対湿度センサ10,11は、それぞれフィルタ回路F1,F2と電気的に接続されており、フィルタ回路F1,F2は、絶対湿度センサ10,11から出力された上記絶対湿度検知信号を入力すると、各絶対湿度検知信号に含まれる雑音成分を除去したあと、所定の増幅率で各絶対湿度検知信号を増幅する。
【0017】
フィルタ回路F1の出力側は差動増幅器DAの反転入力端子(−)に接続されている。また、フィルタ回路F2の出力側は差動増幅器DAの非反転入力端子(+)に接続されている。この構成により、差動増幅器DAは、絶対湿度センサ10により検知された自然空気の絶対湿度に対応した信号と絶対湿度センサ11により検知された混合気湿の絶対湿度に対応した信号との差の信号を出力する。従って差動増幅器DAから出力される信号は、皮膚SKからプローブ2の混合室3に蒸散された水分量に対応している。
【0018】
差動増幅器DAから出力された信号が計測回路13に入力されると、計測回路13は、その入力信号に基づいて皮膚SKからプローブ2の混合室3に蒸散された水分量を計算する。そして、表示部14は、計算された水分量をアナログ又はディジタル表示するため、測定者は、被験者の蒸散水分量を定量的に知ることができる。
【0019】
尚、水分蒸散量測定装置1は、外部のパーソナルコンピュータ等に対して、計測回路13から計測信号を出力できるように構成されている。これにより、計測されたデータはパーソナルコンピュータ等に伝送され、被験者の皮膚の保湿性機能等の評価データとして総合的に使用することができる。
【0020】
次に、水分蒸散量測定装置1の使用例について説明する。
最初に、プローブ2を被験者の例えば腕の皮膚SKに密着させる。この状態で、混合室3の下端面3aに装着されているリング状の皮膚接触部材4は、スプリング25の弾性力により皮膚SKに押圧される。
【0021】
次に、コンプレッサ6からタンク7、パイプ8、フレキシブルパイプ28を介して一定流量の自然空気をプローブ2の混合室3に供給する。尚、上記一定流量の自然空気が前述のタンク7を通過するとき、絶対湿度センサ10は自然空気の絶対湿度を検知したうえ絶対湿度検知信号を出力する。
【0022】
プローブ2の混合室3において、自然空気と皮膚SKから蒸散された水分とが混合された混合気湿は、フレキシブルパイプ29、パイプ5、及びハウジング9を通り、大気中に排気される。この混合気湿がハウジング9を通過するとき、絶対湿度センサ11は混合気湿の絶対湿度を検知したうえ、絶対湿度検知信号を出力する。
【0023】
フィルタ回路F1,F2は、絶対湿度センサ10,11から出力された上記絶対湿度検知信号を入力すると、それぞれの絶対湿度検知信号に含まれる雑音成分を除去したあと、所定の増幅率で絶対湿度検知信号を増幅する。
【0024】
差動増幅器DAは、フィルタ回路F1からの出力信号と、フィルタ回路F2からの出力信号とを入力し、その差の信号を出力する。差動増幅器DAから出力される信号は、絶対湿度センサ10により検知された自然空気の絶対湿度と絶対湿度センサ11により検知された混合気湿の絶対湿度との差に対応する。従って、差動増幅器DAから出力された信号は、皮膚SKからプローブ2の混合室3に蒸散された水分量に対応している。
【0025】
差動増幅器DAから出力された信号が計測回路13に入力されると、計測回路13は、その入力信号に基づいて皮膚SKからプローブ2の混合室3に蒸散された水分量を計算する。そして、表示部14は、皮膚SKからの蒸散水分量をアナログ又はディジタル表示するため、測定者は、その水分量を測定することによって、被験者の皮膚の保湿性機能等を評価することができる。
【0026】
前述のように、水分蒸散量測定装置1は、外部のパーソナルコンピュータ等に対して、計測回路13から計測信号を出力できるように構成されている。これにより、計測されたデータはパーソナルコンピュータ等に伝送され、被験者の皮膚のデータとして総合的に使用することができる。
【0027】
尚、以上説明した実施の形態の水分蒸散量測定装置1は一つの例であり、例えばプローブ2の構成は図2、図3に示したものに限らない。また、図1に示した電子回路も一例であり、この電子回路をソフトウエアで構成してもよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、プローブの周囲の空気の流れ具合などの影響を受けずに皮膚から蒸散された水分量を正確に測定することができるため、その測定値に基づいて、被験者の皮膚の機能を正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水分蒸散量測定装置の全体的な構成を示した系統図である。
【図2】プローブの縦断面図である。
【図3】図2のプローブのA−A矢視断面図である。
【図4】従来の技術を説明するためのプローブ断面図である。
【符号の説明】
1 水分蒸散量測定装置
2 プローブ
3 混合室
4 皮膚接触部材
5 排気通路
6 コンプレッサ
7 タンク
10 絶対湿度センサ
11 絶対湿度センサ
13 計測回路
14 表示部
F1 フィルタ回路
F2 フィルタ回路
DA 差動増幅器
25 スプリング
Claims (1)
- 開口部が被験者の皮膚に密着された状態で皮膚から蒸散された水分を導入するとともに当該水分と外部から供給された所定流量の自然空気とを混合させた混合気湿を生成するプローブと、前記自然空気の絶対湿度を検知する第1の絶対湿度検知手段と、前記混合気湿の絶対湿度を検知する第2の絶対湿度検知手段と、前記第1の絶対湿度検知手段で検知された前記自然空気の絶対湿度と前記第2の絶対湿度検知手段で検知された前記混合気湿の絶対湿度の差に基づいて前記水分の蒸散量を計測する計測手段とを備えた水分蒸散量測定装置であって、
前記プローブには、当該プローブの内径面に沿って摺動可能なハウジングが内装されており、このハウジングは、被験者の皮膚から蒸散された水分と外部から供給された所定流量の自然空気とを混合させる混合室が形成されているとともにスプリングの弾性力により皮膚方向に押圧されており、更に、前記プローブが被験者の皮膚に密着された状態で前記混合室における混合気湿が当該プローブの周囲の空気の流れ具合などの影響を受けないようにするための柔軟材から成る皮膚接触部材が当該ハウジングの皮膚方向端面に交換可能に着接されており、この皮膚接触部材は、基端部の直径が先端部の直径より大きいテーパ状外形に形成されているとともに、基端部端面が前記ハウジングの皮膚方向端面に着接され、プローブのテーパ状に形成された端部内径面に沿って形成されていることを特徴とする水分蒸散量測定装置。
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