JP3559916B2 - 複数の転てつ機の転換制御方法とその装置 - Google Patents

複数の転てつ機の転換制御方法とその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、長尺のトングレールを用いた分岐器などにおいて、そのポイント,可動レールを複数個の転てつ機を用いて転換する複数の転てつ機の転換制御方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道の分岐器におけるポイントや可動レールを転換鎖錠する転換鎖錠装置においては、1組のポイント又は可動レールを転換するために1台の転てつ機を配置していた。
【0003】
転てつ機は、分岐器のポイント(トングレール)部分やクロッシング(可動レール)部分の可動部分を駆動し、ある定められた位置に達したことを検知し、この状態を保持する機能を有するものである。
【0004】
分岐器には、トングレールを転換して振り分ける角度が小さいものから大きなものまで様々な種類のものがあり、これを番数という数値をもって表わしている。番数が小さい分岐器は、大きい振り分け角度をもち、番数が大きな分岐器は小さな振り分け角度をもっている。したがって、番数が小さい分岐器は設置面積は少なくてすむが、列車の通過速度は大きく制約されることになる。
【0005】
したがって、番数が小さい分岐器は、主として列車が低速運転される駅の構内に使用される。番数の大きい分岐器は、小さな振り分け角度をもち、大きさが大きく、設置面積が広くなるが、列車の通過速度はあまり制約されない。
【0006】
したがって、番数の大きい分岐器は本線上で使用され、例えば、在来線の本線では8番から20番のものが従来より使われており、電気転てつ機は、この中で一番大きな番数の分岐器を駆動できるように製作されている。これは、番数の大きい分岐器ほど、トングレールが長く、その転換に大きな力を必要とするからである。
【0007】
新幹線、例えば東海道新幹線の列車速度は、在来線の急行列車速度の2倍以上もあるので、新幹線の本線に使用するレールも分岐器も在来線には見られない新設計のものが用いられている。レールは60Kレール,分岐器は18番,弾性ヒール,ノーズ可動式である。トングレールは非常に長大で、従来のごとくトングレールの先端のみを転てつ機で引いたのでは中間部が引きのこる恐れがあるため、先端及び中間の2個所にエスケープクランクを置き、これを共通の転換操作杆(リンク)で連結して1台の電気転てつ機により転換する方式となっている。この方式に使用する電気転てつ機をTS形電気転てつ機という。TS形電気転てつ機では動作杆の動作は縦方向、鎖錠杆の動作は横方向となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の番数より大きな分岐器が開発されるようになると、ポイントも長大化し、重量が増し、トングレールの対間をつなぐ転てつ棒の数と、転てつ棒を取付ける範囲とが増大する。然るにこのようなポイントを1台の転てつ機によって転換する従来の方式では、転てつ棒ごとにクランクを配置し、各クランクをロッド類(転換操作杆)でつなぎ、この転換操作杆を1台の転てつ機で駆動して転換動作を行うことになるが、ポイントが長く、また重量が大きいため、ポイントの転換には強力な転換力を必要とする。
【0009】
しかし、転てつ機の転換力を増強すると、転てつ機の最大転換力が増加することとなり、強大な転換力をもってトングレールが転換されると、基本レールとトングレール間に異物が挾まった場合に、無理が生じてトングレールが変形し、また、クランク類にも無理が生じてこれが変形し、あるいは取付けが緩み、これが微小移動して転換鎖錠ができないという事態を生ずる。また、転てつ棒の数と、転てつ棒が取付けられる範囲の増大に伴って、クランクと転てつ機間を結ぶ転換操作杆の総ロッド長が長くなり、外気温度変化に伴う総ロッド長の伸縮量が無視できない程に大きくなり、温度による伸縮変化量を補償するためのコンペンセータが必要となる。
【0010】
もっとも、2台以上の転てつ機を用い、各々転てつ機にトングレール又は可動レールの転換に要する転換力を分担させれば、各々の転てつ機の負荷は軽減できる。
【0011】
しかし、複数の転てつ機の内の1台あるいは数台が故障したとき、また、特定の転てつ機が転換を分担する区域のトングレールと基本レール間に異物が介在して転換不能となったときに、正常な転てつ機は、異常が生じた転てつ機とは無関係に転換動作が行われるため、正常な転てつ機が分担しているトングレールの部分又は可動レールの部分と、異常な転てつ機が分担しているトングレールの部分又は可動レールの部分との境界間で移動差を生じ、その移動差の量が大きいと、境界間のトングレール又は可動レールを永久変形させてしまう恐れがある。変形したトングレール又は可動レールをそのまま使用していることは列車の走行にとって極めて危険である。
【0012】
本発明の目的は、長大なトングレール又は可動レールを有する分岐器の転換動作の際に、ポイント又は可動レールに変形を生じさせることなく複数の転てつ機をもって分岐器を転換駆動する制御方法とその装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による転てつ機の転換制御方法においては、
複数の転てつ機を用いて鉄道の1組の分岐器におけるトングレール,可動レールを転換する複数の転てつ機の転換制御方法であって、複数の転てつ機は、長大のトングレールまたは可動レール全体を転換するに要する力を分担して駆動するものであり、転換駆動に要する全ストローク範囲内で予め定位置に設定された2以上のそれぞれのチェック点で各転てつ機の転換時のストローク変位をそれぞれ別個のスイッチで検知し、各チェック点での転換ストローク変位の検知時機が許容時間の範囲内のときには転換動作を継続し、各々のチェック点の検知時機に相対的に許容範囲以上の時間のずれが生じたときには、各転てつ機に駆動停止指令を出力するものである。
【0014】
また、各転てつ機の転換ストロークの変位をトングレール又は可動レールの定位又は反位転換時に直線方向に変位する転換操作杆の移動変位をもって検知するものである。
【0015】
また、定位転換時及び反位転換時の位置及び転換途中における転換操作杆の同一ストロークの変位位置を地上の定位置に定められたチェック点で検知して電気信号を出力し、各検知信号の検知時機に一定の許容時間を定め、許容時間内に各転てつ機の転換操作杆が同一ストローク位置を検知したときには、転てつ機の転換駆動動作を継続するものである。
【0016】
また、本発明による複数の転てつ機の転換制御装置においては、複数の駆動機構と、制御機構とを有する複数の転てつ機の転換制御装置であって、各駆動機構は、トングレール又は可動レールの長さ方向の一定範囲毎に分担して定位から反位へ又は反位から定位へ変換駆動するものであり、転てつ機とストローク検知器との組を有し、転てつ機は、転換操作杆を直線方向に変位させ、転換操作杆に取付けられたエスケープクランプを介し、トングレール又は可動レールを駆動して転換させるものであり、ストローク検知器は、定位又は反位転換時に転換操作杆のストロークの変位位置を2以上のチェック点で検知して制御機構に正規信号又は異常信号をスイッチにより出力するものであり、制御機構は、各駆動機構のストローク検知器で検知された正規信号と異常信号とを判定し、異常信号と判定したときに転てつ機に駆動停止指令を出力するものであり、正規信号は、各チェック点での各駆動機構の転換操作杆の全てのストローク検知時機が許容された時間の範囲内であることを示すものであり、異常信号は、各チェック点での各駆動機構の少なくとも1つの転換操作杆のストローク検知時機が相対的に許容された時間の範囲以上にずれを生じたことを示すものである。
【0017】
また、ストローク検知器は、定位又は反位転換時における各転換操作杆のストローク変位位置を2以上のチェック点においてそれぞれ検知するスイッチを有し、
スイッチは、地上側に設置され、
各ストローク検知器のスイッチは、それぞれのチェック点毎に直列に結線され、1つの直列回路に含まれるスイッチの少なくとも一つが予め定められた時間内に転換操作杆のストロークの変位位置を検知しないときに異常信号を制御機構に出力するものである。
【0018】
また、制御機構はタイマーを有し、
タイマーは、各ストローク検知器のスイッチの少なくとも一つが特定のチェック点において、同時に全ての転換操作杆のストロークの変位位置を検知しないときに動作し、転てつ機の駆動停止指令出力の発生時機に時間遅れを生じさせるものである。
【0019】
【作用】
チェック点は、転換操作杆の定位,反位位置と、転換途中の少なくとも1点に設定される。以下の説明では、定位より反位転換時にストローク検知器が検知するチェック点を順に第1チェック点,第2チェック点,…と定めている。
【0020】
分岐器の転換時には、各駆動機構の転てつ機に同時に電源が投入され、各転てつ機は、同時に運転を開始し、各転てつ機の駆動に同期してそれぞれの転換操作杆が同時に同一方向に同じストロークで直線変位し、それぞれの転換操作杆は、定位位置の第1のチェック点から順に第2,第3,…のチェック点で検知される。
【0021】
各々の転換操作杆の移動変位のチェック点が検知された後、転換操作杆の変位が次のチェック点で検知されるまでの間、制御機構は、各転てつ機の電源回路を一定時間自己保持し、転てつ機は転換動作を継続する。転てつ機の電源回路の自己保持期間が許容時間である。許容時間の範囲内に各転換操作杆の変位の次のチェック点が同時に検知されれば、各ストローク検知器より正規信号を出力され、制御機構は、転換が正規に行われていると判断して各転てつ機の駆動を継続し、許容時間の範囲内に次のチェック点が同時に検知されなければ、各ストローク検知器より異常信号が出力され、制御機構は、転換動作に異常が発生したものと判断して各転てつ機に駆動停止の指令を出力し、分岐器への列車の進入を停止させる。
【0022】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図によって説明する。図1に分岐器の基本構成を示す。分岐器1は、ポイント部2,リード部3,クロッシング部4からなり、ポイント部2は、基本レール5,トングレール6,タイバー(転てつ棒)7,床板などで構成され、転てつ機(転換装置)によって基準線側及び分岐線側に転換できる構造になっている。分岐器1は、常時開通している方向が定位であり、その反対の方向に開通したときを反位と称し、基準線側が本線,分岐線側が側線としたときには、本線の方向を定位と定められている。
【0023】
本発明を適用する分岐器1は、長大な長さのトングレール6を有する分岐器、例えばポイント部が20m以上に達する長さを有する分岐器である。トングレールの長さが40mにもなると、列車が分岐線から基準線に進入するとき、あるいは基準線から分岐線に進入するときに走行速度を落とさずに時速160kmの速さのままで進入することができる。
【0024】
図2に本発明の構成を示す。ポイント部2の基本レール5の一側に沿って3組の駆動機構8a〜8cが直列に設置されている。駆動機構8a〜8cは転てつ機と、ストローク検知器10a〜10cとの組合せからなっている。各駆動機構9は基本的に同一構造のため、分岐器の先端部分を駆動する駆動機構を第1の駆動機構8aとしてその構成を説明し、第2,第3の駆動機構8a,8bにおける同一構成部分には同一符号に添字b,cを付してその説明を省略する。
【0025】
転てつ機9aの転換操作杆11aは、基本レール5と平行に延び、転換操作杆11aの要所に接続されたエスケープクランク12aには、スイッチアジャスタ13aが転換操作杆11aと直交する方向に延び、各スイッチアジャスタ13aは、両トングレール6,6をつなぐタイバー7に連結されている。
【0026】
転てつ機9aは、ポイントのトングレール6を定位から反位へ、又は反位から定位へ転換させ、転換終了時に、トングレール6の状態を照査,確認してその状態のままを維持(鎖錠)する機能を有するものである。ポイントの転換鎖錠を電気の駆動力をもって行うのが電気転てつ機である。
【0027】
エスケープクランク12aは、転てつ機9aの直線方向の運動方向を直角方向の運動方向に変換し、スイッチアジャスタ13aに常に一定の運動量だけを伝達し、転換終了後は、その位置に鎖錠するものである。また、スイッチアジャスタ13aは、エスケープクランク12aとタイバー7とをつなぐものであり、エスケープクランク12aから伝達されるストロークをポイントストロークに代え、ポイントを転換し、一方の定位又は反位転換時にトングレール6を基本レール5の一方に密着させるものである。図2は反位転換時の状態を示している。
【0028】
ストローク検知器10aは、転てつ機9aの転換動作によって直線方向に変位する転換操作杆11aの移動変位を検知するものであり、転換操作杆11aの端末に配置されている。図3にストローク検知器10aの構造を示す。ストローク検知器10aは、ロッド14と複数のスイッチ15と、ドグ16との組合せをケース17内に有するものである。ケース17は、地上の定位置に据付けられ、ロッド14は、ケース17に両端末を張り出して摺動可能に横架され、ロッド14の一端が転換操作杆11aに継手18を介して連結されている。
【0029】
ケース17内には、転換操作杆11aの移動ストロークの方向に沿って第1のチェック点A,第2のチェック点B,…の順に複数のチェック点を設定し、各チェック点にそれぞれスイッチ15を装着する。実施例は、第1〜第4のチェック点A〜Dを設定した例を示している。
【0030】
なお、第1〜第4チェック点A〜Dの順序は分岐器が定位より反位に転換する場合について、転換操作杆11aの移動方向順に区別したものであり、分岐器1が反位より定位に戻るときには逆に第4〜第1チェック点に移動することになるが、説明の都合上、図3において、転換操作杆11aに近い側で定位鎖錠位置を第1のチェック点A,転換操作杆に遠い側の反位鎖錠位置を第4のチェック点Dと定義して説明する。
【0031】
要するに、第1のチェック点Aは、転換開始時に検知する位置であり、途中の第2,第3のチェック点B,Cは、第1のチェック点Aで転換操作杆11aを検知した後、転換操作杆11aが移動したときにその移動量が転換途中で検知される位置である。第4のチェック点Dは、反位に転換されたときに検知する位置である。ドグ16は、動作部分に一定の長さを有し、転換操作杆11aに取付けられ、各チェック点A〜Dでそれぞれのスイッチ15を一定時間動作させるものである。
【0032】
第2の駆動機構8b,第3の駆動機構8cは、機構としては第1の駆動機構8aと同じであり、分岐器1のポイント部2の一部を分担してそれぞれ転換駆動し、いずれも転てつ機とストローク検知器との組合せを有し、ストローク検知器には、全ての駆動機構について共通に設定された第1〜第4のチェック点を検知するスイッチを内蔵している。ストローク検知器10b内のチェック点をA〜D,ストローク検知器10c内のチェック点をA〜Dとして説明する。図4に動作要領を示す。
【0033】
図4において、転てつ機9a〜9cは、別個に駆動され、ストローク検知器10a〜10cの出力は、制御機構19に入力され、制御機構19の出力指令をもって転てつ機9a〜9cの駆動制御が行われる。
【0034】
ストローク検知器10a〜10cの第1のチェック点A〜A,第2のチェック点B〜B,第3のチェック点C〜C,第4のチェック点D〜Dは、それぞれの転換操作杆11a〜11cの同一ストローク変位位置に設定されたものである。図5ではこれらのストローク変位位置をスイッチ15の接点として示している。図5に制御機構19の回路を示す。図5において、各チェック点のスイッチの接点A,A,Aと、B,B,Bと、C,C,Cと、D,D,Dとはそれぞれ直列に接続され、その並列回路がリレーARの電源回路に接続され、リレーARの電源回路には、さらにタイマーTMRと、制御リレーTMPRとが並列に接続されている。リレーARは、タイマーTMRの制御用であり、制御リレーTMPRは、各転てつ機9a〜9cの制御用リレーである。
【0035】
転てつ機9a〜9cの電源回路には、定位転換用の電磁開閉器MC1と反位転換用の電磁開閉器MC2との接点(MC),(MC)を有している。両電磁開閉器MC1,MC2は、てこスイッチの手動操作によるN又はR接点の投入により電源に接続され、その転てつ機9a〜9cの電源が投入され、制御リレーTMPRの励磁によって、接点(TMPR)が開放されたときに通電が断たれるようになっている。
【0036】
実施例において、分岐器を定位より反位に転換するときには、まず、制御回路の電源スイッチSWを投入し、また、てこスイッチを扱い、接点(R)を閉じて電磁開閉器MC2を電源に接続する。電磁開閉器MC2が励磁されると、その接点(MC2)が閉じて各転てつ機9a〜9cが起動し、転てつ機9a〜9cが同時に転換動作を開始してそれぞれの転換操作杆11a〜11cが一方向に直線変位し、各ストローク検知器10a〜10cは、各転換操作杆11a〜11cのストロークの変位を定位位置の第1チェック点A〜Aから第2チェック点B〜B,第3チェック点C〜Cの順で順次検知し、最後に反位位置の第4チェック点D〜Dを検知し、分岐器は反位に転換鎖錠される。
【0037】
各チェック点は、転換操作杆11a〜11cの各ドグ16が同時にスイッチ15を閉じている時間だけ検知される。各チェック点をそれぞれのドグ16が通過すると図3に示す各スイッチ15が開放され、リレーARが消磁し、その接点(AR)が閉じ、タイマーTMRが導通してタイマーTMRの設定時間経過後、その接点(TMR)を開く。制御リレーTMPRは、タイマーTMRの常開接点(TMR)と直列に結線されている。
【0038】
電磁開閉器MC2は、制御リレーTMPRの常閉接点(TMPR)と直列に結線されており、タイマーTMRの設定時間が経過するまでは通電状態を保ち、その接点(MC2)を通じて転てつ機9a〜9cに給電し、各転てつ機9a〜9cは転換動作を継続する。タイマーTMRの設定時間が経過する以前に各スイッチ15が各転換操作杆11a〜11cの次のチェック点を同時に検知したときには、これが正規信号となってリレーARが励磁し、その接点(AR)が開放され、タイマーTMRは消磁してリセットされ、転てつ機9a〜9cの転換動作は継続される。
【0039】
一方、タイマーTMRの設定時間が経過しても次のチェック点の内のいずれか一つが検知されないときには、これが異常信号となって、設定時間を経過後、その接点(TMR)を閉じ、制御リレーTMPRが励磁してその接点(TMPR)が開放され、電磁開閉器MC2を消磁する。このため、その接点(MC2)が開き、転てつ機9a〜9cへの通電が断たれ、各転てつ機9a〜9cは転換動作を停止する。
【0040】
図6は、第1及び第2駆動機構8a,8bのストローク検知器10a,10bがタイマーの設定時間T以内の時間t(t<T)内で第1〜第4チェック点を正常に検知し、第3駆動機構8cのストローク検知器10cは、第1〜第3のチェック点A〜Cを検知し、第4チェック点Dを検知しなかった例を示すタイムチャートである。このときには、第4チェック点D〜Dで各転てつ機9a〜9cの駆動が停止されることになる。転てつ機9a〜9cの転換動作が停止すれば、分岐器1への列車の進入不許可が保持される。
【0041】
各駆動機構の転てつ機が正常に動作し、各転換操作杆のドグが第1〜第4のチェック点をタイマーの設定時間T以内の時間間隔で順次検知する限り転換は正規に行われ、分岐器1は、定位より反位に転換して鎖錠される。
【0042】
逆に、分岐器1を反位より定位に転換するときには、スイッチSWを投入し、電磁開閉器MC1を手動で扱って接点(N)を接続すると各転てつ機9a〜9cは逆方向に駆動され、各転てつ機9a〜9cの転換操作杆11a〜11cには、逆方向に直線移動し、それぞれのドグが第4,第3,第2のチェック点を順次検知しつつ第1のチェック点に戻り、分岐器1は定位に戻る。もし、この間にいずれかのストローク検知器からタイマーの設定時間T間で1つでもチェック点の検知信号が出力されないときには、転てつ機9a〜9cへの給電が停止され、直ちに転てつ機9a〜9cの駆動が停止される要領は、先の反位転換時と同じである。
【0043】
以上、実施例では、3台の転てつ機をもって分岐器のトングレールを転換駆動し、また、転換前後並びに転換途中に4個所のチェック点を設定した例について説明したが、本発明はトングレールに限らず、分岐器のクロッシングや、列車遷移のために用いられる可動レールについても全く同様に適用できる。設定する駆動機構の組の数は、トングレール又は可動レールの長さによって決定され、さらに長大なトングレール又は可動レールを転換するときには3以上の組を用いることがある。
【0044】
ストローク検知器内に設定するチェック点の数は、転換操作杆の移動速度を考慮して転換不能の事態が発生したときにレールに無理な力が加わって、永久変形が生じない間隔で設定すればよいが、分岐器のトングレールの場合には、少なくとも定位鎖錠の位置と転換途中の少なくとも1個所にそれぞれチェック点を設定するのが好ましい。
【0045】
【発明の効果】
以上のように本発明によるときには、分岐器のトングレールその他の可動レールの転換動作を2台以上の転てつ機に分担させ、鎖錠時と転換途中の動作を検知し、少なくとも1台の転てつ機の動作に異常が発生したときには、全ての転てつ機の駆動を停止させるため、トングレールの部分又は可動レール部分と基本レール部分との境界面での変形量を軽減して、その永久変形を未然に防止することができる。
【0046】
また、各転てつ機の転換動作の正否は、転てつ機の転換動作に応動して直線方向に移動変位する転換操作杆のストロークの変位位置を、複数のチェック点においてタイマーの設定時間内の許容時間内で検知するため、各転てつ機の運転の同期に多少ずれがあっても、支障なく転換でき、逆にタイマーの設定時間を越えていずれかのストローク検知器から検知信号が発せられないときにこれを異常発生と判定して直ちに転換動作を停止できる。
【0047】
さらに、チェック点の検知については、各ストローク検知器の同じチェック点のスイッチを直列に結線してこれをリレーARの電源回路に並列に接続するのみであるため、チェック点の数の設定,増設は容易であり、チェック点検知用スイッチを地上側の定位置に設置するため、設置後チェック点に位置ずれが生ずることはない。
【0048】
本発明によれば、複数の転てつ機に負荷を分担させて支障なく1組のポイント又は可動レールを転換することが可能となり、各々転てつ機の最大転換力を小さな力で済ませることができるため、基本レールとトングレール間に異物が挾まった場合にもトングレールには、これを変形させるほどの力が加わらず、また、クランク類の変形や取付けに弛みを生じさせることがない。さらに本発明によれば、転てつ機とクランクとの接続に全長が短いロッドが使用できるため、外気温度変化に伴うロッドの温度伸縮量を無視でき、したがって、コンペンセータによる温度伸縮の補償は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】分岐器の基本構成を示す図である。
【図2】本発明装置を適用した分岐器の平面図である。
【図3】ケースの上蓋を除いたストローク検知器の平面図である。
【図4】制御装置の制御回路を示す図である。
【図5】チェック点検知要領を示す図である。
【図6】チェック点の検知と、電動機への給電停止の動作の一例のタイムチャートを示す図である。
【符号の説明】
1 分岐器
2 ポイント部
3 リード部
4 クロッシング部
5 基本レール
6 トングレール
7 タイバー(転てつ棒)
8a〜8c 駆動機構
9a〜9c 転てつ機
10a〜10c ストローク検知器
11a〜11c 転換操作杆
12a〜12c エスケープクランプ
13a〜13c スイッチアジャスタ
14 ロッド
15 スイッチ
16 ドグ
17 ケース
18 継手
19 制御機構
AR リレー
TMR タイマー
TMPR 制御リレー
MC1,MC2 電磁開閉器

Claims (6)

  1. 複数の転てつ機を用いて鉄道の1組の分岐器におけるトングレール,可動レールを転換する複数の転てつ機の転換制御方法であって、
    複数の転てつ機は、長大のトングレールまたは可動レール全体を転換するに要する力を分担して駆動するものであり、転換駆動に要する全ストローク範囲内で予め定位置に設定された2以上のそれぞれのチェック点で各転てつ機の転換時のストローク変位をそれぞれ別個のスイッチで検知し、各チェック点での転換ストローク変位の検知時機が許容時間の範囲内のときには転換動作を継続し、各々のチェック点の検知時機に相対的に許容範囲以上の時間のずれが生じたときには、各転てつ機に駆動停止指令を出力することを特徴とする複数の転てつ機の転換制御方法。
  2. 各転てつ機の転換ストロークの変位をトングレール又は可動レールの定位又は反位転換時に直線方向に変位する転換操作杆の移動変位をもって検知することを特徴とする請求項1に記載の複数の転てつ機の転換制御方法。
  3. 定位転換時及び反位転換時の位置及び転換途中における転換操作杆の同一ストロークの変位位置を地上の定位置に定められたチェック点で検知して電気信号を出力し、各検知信号の検知時機に一定の許容時間を定め、許容時間内に各転てつ機の転換操作杆の同一ストロークの変位位置を検知したときには、転てつ機の転換駆動動作を継続することを特徴とする請求項2に記載の複数の転てつ機の転換制御方法。
  4. 複数の駆動機構と、制御機構とを有する複数の転てつ機の転換制御装置であって、各駆動機構は、トングレール又は可動レールの長さ方向の一定範囲毎に分担して定位から反位へ又は反位から定位へ変換駆動するものであり、転てつ機とストローク検知器との組を有し、転てつ機は、転換操作杆を直線方向に変位させ、転換操作杆に取付けられたエスケープクランプを介し、トングレール又は可動レールを駆動して転換させるものであり、ストローク検知器は、定位又は反位転換時に転換操作杆のストロークの変位位置を2以上のチェック点で検知して制御機構に正規信号又は異常信号をスイッチにより出力するものであり、制御機構は、各駆動機構のストローク検知器で検知された正規信号と異常信号とを判定し、異常信号と判定したときに転てつ機に駆動停止指令を出力するものであり、正規信号は、各チェック点での各駆動機構の転換操作杆の全てのストローク検知時機が許容された時間の範囲内であることを示すものであり、異常信号は、各チェック点での各駆動機構の少なくとも1つの転換操作杆のストローク検知時機が相対的に許容された時間の範囲以上にずれを生じたことを示すものであることを特徴とする複数の転てつ機の転換制御装置。
  5. ストローク検知器は、定位又は反位転換時における各転換操作杆のストロークの変位位置を2以上のチェック点においてそれぞれ検知するスイッチを有し、スイッチは、地上側に設置され、各ストローク検知器のスイッチは、それぞれのチェック点毎に直列に結線され、1つの直列回路に含まれるスイッチの少なくとも一つが予め定められた時間内に転換操作杆のストロークの変位位置を検知しないときに異常信号を制御機構に出力するものであることを特徴とする請求項4に記載の複数の転てつ機の転換制御装置。
  6. 制御機構はタイマーを有し、タイマーは、各ストローク検知器のスイッチの少なくとも一つが特定のチェック点において、同時に全ての転換操作杆のストローク位置を検知しないときに動作し、転てつ機の駆動停止指令出力の発生時機に時間遅れを生じさせるものであることを特徴とする請求項5に記載の複数の転てつ機の転換制御装置。
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