JP3559605B2 - チューブダイヤフラムポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、チューブダイヤフラムポンプに関し、更に詳しくは、構造が簡単で小型化可能なチューブダイヤフラムポンプに関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
ダイヤフラムポンプは、高粘度の液体やスラリーにも使用可能で漏洩が少ない優れた特長を有するポンプである。
【0003】
しかしながら、従来のダイヤフラムポンプにおいては、流体の吸引および排出を行うポンプ室内の容積変化を、一枚の、例えば円形の膜の変化により発生させていたので、液体の吸引および排出を有効に行わせるには、プランジャーやピストンの径より大きいサイズのダイヤフラムが必須であった。このようなダイヤフラムの存在により、送液能力を低下させない限りポンプを小型化できないという問題を有していた。
【0004】
また、腐食性を有する液体を扱う場合には、ダイヤフラムのみならずポンプ室の内壁をも耐腐食性の材質により形成しなければならないのでコストダウンを図ることができないという問題点もあった。さらに、ダイヤフラムの有効径が大きいことから、ポンプ室内の流速が低く、例えば沈降性の固液混合流体すなわちスラリーを吸引吐出する場合にはポンプ室内において沈降が発生するなどの不都合もあった。
【0005】
近年、図5に示すような、円盤状のダイヤフラムとチューブとを組み合わせてなるダイヤフラムポンプが提案された。
【0006】
このダイヤフラムポンプ50は、ピストン51と、液圧室52と、前記液圧室52とはダイヤフラム53により区画され、かつ送液すべき流体とは耐薬品性筒体54により隔絶された圧力伝達室55と、この圧力伝達室55内に充填された腐食性のない圧力伝達媒体とを有する。
【0007】
このダイヤフラムポンプ50においては、前記液圧室52内の液を介してピストン51の往復動により生じるダイヤフラム53の変形が、前記腐食性のない圧力伝達媒体を介して前記耐薬品性筒体54に伝達される。そして、前記耐薬品性筒体54が収縮と膨張とを繰り返すことにより、前記耐薬品性筒体54内への液体の吸引と前記耐薬品性筒体54内からの液体の排出とが繰り返され、送液が行われていた。
【0008】
このダイヤフラムポンプ50は、ダイヤフラム53に耐薬品性筒体54を組み合わせることにより、耐腐食性の材質で形成すべき壁面を大幅に減少させた点で、従来のダイヤフラムポンプよりも優れているといえる。
【0009】
しかしながら、このダイヤフラムポンプ50においても、小型化を図ることができないという問題点については解決されていない。すなわち、ある程度の送液能力を確保するためには、前記耐薬品性筒体54を一定程度以上収縮または膨張させることが必要であり、一定程度以上の収縮膨張を起こさせるには、大型のダイヤフラム53が必須である。この大型のダイヤフラム53を有する限り、ポンプの小型化は達成できなかった。
【0010】
さらに、このダイヤフラムポンプ50は、前記ダイヤフラム53の過剰変形を防止するために、中央部が湾曲して凹状をなし、かつ圧力伝達媒体が流通可能な複数の貫通孔を有する一対の構造体56a,56bが、互いに凹状部を対向させて設けられており、このような構造体の存在は、さらに、ダイヤフラムポンプの小型化を困難にしていた。
【0011】
この発明は、このような事情に基づいて完成された。すなわち、この発明の目的は前記課題を解決することにある。この発明の目的は、構造が簡単で小型化の可能なチューブダイヤフラムポンプを提供することにある。この発明の目的は、腐食性の強い液体、沈降性の液体およびスラリーにも使用することができるチューブダイヤフラムポンプを提供することにある。また、この発明の目的は、耐久性に優れ、安定して高精度の送液を行うことができるチューブダイヤフラムポンプを提供することにある。さらに、この発明の目的は、送液能力に優れ、小型化可能であるチューブダイヤフラムポンプを提供することにある。
【0012】
【前記課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための前記請求項1に記載の発明は、液圧室と、液圧室内の液を吸引押圧する吸引押圧手段と、この吸引押圧手段により吸引押圧された液圧室内の液によって可動するダイヤフラムにより、液導入口から流体を吸引し、液導出口より流体を排出するポンプ室とを備え、前記ダイヤフラムは、液圧に応じた収縮膨張により流体の吸引吐出を行う内部空間を形成する耐薬品性筒体と、その耐薬品性筒体の外部を囲繞する弾性筒体と、前記耐薬品性筒体と弾性筒体との間に装填された圧力伝達媒体とを備えてなり、前記耐薬品性筒体と弾性筒体との間に、前記耐薬品性筒体および弾性筒体の過剰変形を防止する筒状の第1保護部材を介装してなることを特徴とするチューブダイヤフラムポンプであり、
前記請求項に記載の発明は、前記弾性筒体が、強化材で強化された弾性筒体である前記請求項1に記載のチューブダイヤフラムポンプであり、
前記請求項に記載の発明は、前記強化材が編織物または不織布である前記請求項に記載のチューブダイヤフラムポンプであり、
前記請求項に記載の発明は、前記弾性筒体の外側に、弾性筒体の過剰変形を防止する筒状の第2保護部材を介装してなる前記請求項1〜3のいずれか1項に記載のチューブダイヤフラムポンプである。
【0013】
【作用】
請求項1に記載の発明は、以下のように作用する。
【0014】
吸引押圧手段により液圧室内の液が押圧されると、それに応じて弾性筒体が収縮する。この弾性筒体の収縮により、前記弾性筒体と耐薬品性筒体との間に装填された圧力伝達媒体に圧力が印加される。すなわち、前記弾性筒体が断面円形に近い初期の形状から断面楕円または断面不定形の形状に変化するように収縮することにより、周長を変化させることなく内面積(弾性筒体の軸線に直交する方向における弾性筒体の断面積)を縮小してその内容積を減少させることによって前記圧力伝達媒体の圧力を上昇させる。圧力の印加された前記圧力伝達媒体は、前記耐薬品性筒体の外周面を押圧し、これにより前記耐薬品性筒体が同様に変化し、その内部空間すなわちポンプ室内の容積が減少し、前記ポンプ室内に存在する流体は、ポンプ室外に押し出される。
【0015】
一方、吸引押圧手段により液圧室内の液が吸引されると、それに応じて弾性筒体が膨張し、弾性筒体の軸線に直交する方向での断面形状が円形に近くなる。この弾性筒体の膨張により、前記弾性筒体と耐薬品性筒体との間に装填された圧力伝達媒体の圧力が減少する。圧力伝達媒体の圧力減少に伴い耐薬品性筒体の内部空間の容積が増大し、これによりポンプ室内に流体が吸引導入される。
【0016】
このような液圧室内の液を吸引押圧手段により吸引押圧し、この吸引押圧を交互に繰り返すことにより、ポンプ室内の流体の排出および流体の吸引が繰り返され、流体の送液が実現される。
【0017】
ダイヤフラムポンプにおいては一般に液補充手段が通常に付設されていてその液補充手段により液圧室内の液が補充されるようになっており、また一般に安全弁が通常に付設されていて液圧室内の液を吸引押圧手段により吸引押圧している内に発生する気泡を液と共に液圧室内から除去することができるようになっている。
【0018】
そこで、前記弾性筒体と前記耐薬品性筒体との間に筒状の保護部材が介装されていると、液圧室内への液の過補給等により前記液圧室内の液量が過大になっても、前記弾性筒体はある程度収縮したところで前記筒状の保護部材に接触し、これにより、前記弾性筒体は、それ以上の変形を起こさない。この時には、液圧室内の圧力が上昇し、液圧室に通常に付設されている安全弁より過剰の液が放出されることにより前記弾性筒体の変形の進行が止む。したがって、圧力伝達媒体を介して引き起こされる前記耐薬品性筒体の収縮も所定の範囲内に制限される。また、前記過剰の液が排出されることにより前記弾性筒体の変形は正規の範囲内で行われ、前記保護部材への過度の接触は以後起こらない。
【0019】
また、前記弾性筒体が強化材たとえば編織物または不織布で強化されてなると、液圧室内の液量が過少となった場合であっても、前記弾性筒体は所定の範囲内でのみ変形し、前記耐薬品性筒体の変形も所定の範囲内に制限される。
【0020】
つまり、強化材で強化された前記弾性筒体は弾性変形がある程度制限されている。液圧室内の液量が適切であるときには、そのような弾性筒体は、液圧室内が減圧になったとしても、過大な引張力を受けることなく、しかも周長を変えることなく、弾性筒体の形状変形により、内容積を変えることができる。液圧室内の液量が過少であるときには、液圧室内は大きく減圧になるのであるが、そのような大きな減圧による大きな引張力が前記弾性筒体に負荷するにもかかわらず、前記弾性筒体は強化材を有する故に、大きな弾性変形が防止される。しかも、弾性筒体が大きく弾性変形しないことにより、液圧室の内圧が更に下がろうとしても、液圧室に通常に付設されている油補給手段における油補給弁が開いて液圧室内に液が補給され、液圧室内の更なる圧力の低下が防止される。
【0021】
このように、前記耐薬品性筒体の変形が所定の範囲内に制限されることにより、前記耐薬品性筒体に吸引導入される液量または排出される液量が多過ぎたり、少な過ぎたりすることなく、安定した送液が実現される。また、前記耐薬品性筒体に過剰の弾性変形が発生しないことにより、前記耐薬品性筒体の長寿命化が達成される。
【0022】
【実施例】
以下、この発明について実施例を参照しながら詳細に説明する。なお、この発明は、この実施例により何ら限定されず、この発明の要旨の範囲内で適宜に設計変更をすることができることは言うまでもない。
【0023】
(実施例1)
図1は、この発明の一実施例であるチューブダイヤフラムポンプの概略を示す断面図である。
【0024】
チューブダイヤフラムポンプ1aは、両端開口部から中央部に向かうに従って拡大する内周面を有する円筒状のポンプ本体2と、前記ポンプ本体2の中心軸線を囲繞するように設けられ、内部に液体の吸引吐出用空間を形成する耐薬品性筒体3と、前記耐薬品性筒体3の外部を囲繞するように設けられた弾性筒体4と、前記耐薬品性筒体3および弾性筒体4を前記ポンプ本体2の両端開口部において固定するための固定部材5とを備えてなる。
【0025】
前記ポンプ本体2は、前記ポンプ本体2の前記内周面において開口するピストン挿入孔6が内部に形成されたシリンダー部7を有する。前記ピストン挿入孔6には、ピストン8が前記ピストン挿入孔6の内周面に摺動しつつ往復動可能に収容されている。
【0026】
前記耐薬品性筒体3は、断面円形の筒体であり、内部に液体の吸引吐出用空間すなわちポンプ室を形成するように前記ポンプ本体2に前記固定部材5によって装着されている。この耐薬品性筒体3は、耐薬品性を有する素材で形成され、または内表面に耐薬品性を付与する処理が施されてなる。この耐薬品性筒体3を形成する材質としては、PVC、ポリエチレン、ポリプロピレン、EPDM、PTFE等を挙げることができ、これらの中でも特にPTFEが好ましい。前記耐薬品性を付与する処理としては、PTFE等の耐薬品性を有する物質またはそのような素材により形成されたシート等を筒体の内表面に塗布ないし貼付する方法等を挙げることができる。この耐薬品性筒体3は、前記固定部材5による固定を解除することにより容易に取り外すことができ、したがって容易に交換できるようになっている。
【0027】
前記弾性筒体4は、前記耐薬品性筒体3の外径よりも大きい内径を有し、かつ中心軸線を前記耐薬品性筒体3と共有する断面円形の筒体である。前記弾性筒体4の両端部は、前記固定部材5により前記ポンプ本体2の両端開口部に固定されている。この弾性筒体4の材質としては、液圧室に充填される液体と前記圧力伝達媒体とを隔離することができ、かつ弾性を有する限り特に制限はなく、例えば天然ゴムや、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムを好適に使用することができる。
【0028】
前記弾性筒体4は、強化材により強化されているのが好ましい。強化材としては、弾性筒体4を強化することができる限りどのような材質が用いられても良く、また、どのような態様により弾性筒体4を強化するものであっても良い。強化材で強化された弾性筒体4としては、ゴム中に繊維を分散してなる弾性筒体、筒状に形成された編織物あるいは不織布の内側面あるいは外側面にゴムをコーティングしてなる弾性筒体、筒状に形成されたゴムチューブの内部に編織物あるいは不織布を埋設してなる弾性筒体等を挙げることができる。
【0029】
この実施例においては、前記弾性筒体4は、編織物をゴムと一体成型してなる弾性筒体であり、編織物がゴムを強化するという点で好適である。また、前記圧力伝達媒体として油を使用する場合には、前記ゴムの中でも、優れた耐油性を有するNBRが好ましい。
【0030】
このチューブダイヤフラムポンプ1aは、前記固定部材5として、前記ポンプ本体2の導出口側の開口部において前記弾性筒体4および前記耐薬品性筒体3を固定する導出側固定部材と、前記ポンプ本体2の導入口側の開口部において前記弾性筒体4および前記耐薬品性筒体3を固定する導入側固定部材とを有する。さらに、前記導出側固定部材は第1固定部材5aと第2固定部材5bを有し、導入側固定部材は、第1固定部材5cと第2固定部材5cとを有する。
【0031】
これらの固定部材5により、前記弾性筒体4および前記耐薬品性筒体3は、ポンプ本体2に固定される。前記弾性筒体4の両側の端部開口部には、その端部開口部の周縁部を内径とするリング状の装着部9が形成されている。この装着部9を、前記ポンプ本体2の導出口側の開口部において、前記ポンプ本体2の端面と前記第1固定部材5aとで挟持することにより、また、前記ポンプ本体2の導入口側の開口部においては、前記ホンプ本体2の端面と前記第1固定部材5cとで挟持することにより、前記弾性筒体4はポンプ本体2に固定される。
【0032】
一方、前記耐薬品性筒体3の両側の端部開口部にも、その端部開口部の周縁部を内径とするリング状の装着部10が形成されている。この装着部10を、前記ポンプ本体2の導出口側の開口部においては、前記第1固定部材5aと内部に液体導出用孔11を備えた第2固定部材5bとで挟持することにより、また、前記ポンプ本体2の導入口側の開口部においては、前記第1固定部材5cと内部に液体導入用孔12を備えた第2固定部材5dとで挟持することにより、前記耐薬品性筒体3はポンプ本体2に固定される。
【0033】
前記第1固定部材5aは、ポンプ本体2の端部に接着される。前記第2固定部材5bは、排出路形成部材13の固定部14と共に、前記第1固定部材5aと固定用リング15とに挟持されている。前記排出路形成部材13は、液排出路16を備えると共に、前記第2固定部材5bの液導出路の開口部を、液体の排出時には開放し、液体の導入時には覆蓋する球体17を内部に備えてなる。すなわち、前記第2固定部材5bの液体導出用孔11の開口部および前記球体17は、液体が導出されるのを許容し、液体がポンプ室内に吸引導入されるのを阻止する逆止弁を構成している。
【0034】
一方、前記第1固定部材5cは、ポンプ本体2の端部に接着され、前記第2固定部材5dは、導入路形成部材18の固定部19と共に、前記第1固定部材5cと固定用リング18とに挟持されている。前記第2固定部材5dは、液導入路20を備えると共に、前記導入路形成部材18の液導出路20の開口部を、液体の導入時には開放し、液体の排出時には覆蓋する球体21を内部に備えてなる。すなわち、前記導入路形成部材18の液導入路20の開口部および前記球体21は、液体がポンプ室内に導入されるのを許容し、液体がポンプ室外に導出ないし排出されるのを阻止する逆止弁を構成している。
【0035】
この実施例においては、このようにポンプ本体2に固定された弾性筒体4の外周面と前記ポンプ本体2の内周面22との間に液圧室が形成される。すなわち、この弾性筒体4の外周面と前記ポンプ本体2の内周面22との間に形成された空間内には液体が充填される。
【0036】
吸引押圧手段は前記液圧室内の液体を吸引押圧する機能を有し、この実施例においては、吸引押圧手段がピストン挿入孔6、ピストン8を含んで形成される。この実施例における液圧室内の液体は、この液圧室内に開口する前記ピストン挿入孔6内のピストン8を前後進運動することにより、押圧吸引される。
【0037】
液圧室内に充填される液体としては、ギヤ油、油圧作動油、およびトルクコンバータ油等の油類、水等を挙げることができる。これらの中でも特に、腐食性がなく油滑性に富む油圧作動油を好ましく使用することができる。
前記耐薬品性筒体3と弾性筒体4との間には、圧力伝達媒体が充填される。この圧力伝達媒体は、弾性筒体4に印加される圧力を耐薬品性筒体3に印加することのできる非圧縮性媒体であれば良く、具体的には、油、水等を使用することができる。通常の場合、この圧力伝達媒体としては、耐薬品性筒体が破損した場合における送液すべき液体との混合を考慮し、水を用いるのが良い。
【0038】
また、この圧力伝達媒体として水を採用した場合には、この水の物理的または化学的性質、例えば電気伝導度を監視することにより、前記弾性筒体または耐薬品性筒体の破損を検知することができる。前記弾性筒体または耐薬品性筒体が破損した場合には、液圧室内の液および/または送液すべき液体と前記圧力伝達媒体としての水とが混合することにより、この水の物理的または化学的性質を変化させるからである。
【0039】
この実施例においては、前記耐薬品性筒体と弾性筒体と圧力伝達媒体とでダイヤフラムとしての機能が達成される。
【0040】
この実施例においては、この前記弾性筒体4と前記耐薬品性筒体3との間に形成される空間内に、さらに弾性筒体4および耐薬品性筒体3の過剰変形を防止する筒状の保護部材23が設けられている。この実施例における保護部材は、金網を円筒状に巻いてなる保護部材であるが、この発明における保護部材としては、前記弾性筒体4が収縮してこれに接触した場合に、前記弾性筒体4の変形を抑制することができ、かつ前記圧力伝達媒体の移動を不可能にしない限り、特にその構成、材質等に制限はない。例えば、周側面に貫通孔を有する金属または樹脂製の筒体であっても良い。
【0041】
なお、この実施例においては、液圧室には、液圧室内の液圧が過剰になったときに液圧室内の液を外部に放出させる安全弁(図示せず。)と、液圧室内の液量が不足したときに自動的に液圧室内に液が補充されるようにしくまれたところの、液補給弁を有する液補給手段(図示せず。)が付設されている。
【0042】
このチューブダイヤフラムポンプの作用について説明する。
【0043】
前記ピストン挿入孔9内をピストン8が液圧室に向かって前進すると、液圧室内の液体が押圧され、その押圧力により前記弾性筒体4が収縮変形する。この弾性筒体4の収縮変形により、前記弾性筒体4と耐薬品性筒体3との間に装填された圧力伝達媒体の圧力が増加し、この前記圧力伝達媒体の圧力増加に伴って耐薬品性筒体3も収縮する。耐薬品性筒体3が収縮し、耐薬品性筒体3の内部空間24の容積が減少することにより、前記内部空間24内に存在する流体は前記第2固定部材5bの液体導出用孔11からポンプ本体2の外部へと押し出される。
【0044】
一方、前記ピストン8が後退すると、液圧室内の液体が吸引される。液圧室内の液体が吸引されると、前記弾性筒体4が膨張する。弾性筒体4の膨張により、前記弾性筒体4と耐薬品性筒体3との間に装填された圧力伝達媒体の圧力が減少する。これにより前記耐薬品性筒体3の内部空間24の容積が増加し、前記内部空間24内に流体が吸引導入される。
【0045】
前記ピストン8の前進および後退が繰り返されることにより、前記耐薬品性筒体3の内部空間24からの流体の排出および内部空間24への液体の吸引導入が繰り返され、流体の送液が実現される。
【0046】
さらに、液体の過補給等により前記液圧室内の液体が過剰量となった場合には、前記弾性筒体4に、これを通常より大きく収縮させようとする力が加わることがある。しかし、この実施例のチューブダイヤフラムポンプ1aには、耐薬品性筒体3と弾性筒体4との間に保護部材23が設けられており、前記弾性筒体4はある程度収縮したところで保護部材23に接触する。これにより、付属の安全弁(図示しない。)が働き、前記弾性筒体4の更なる収縮は阻止され、前記耐薬品性筒体4の過剰な収縮は発生しない。
【0047】
図2に、耐薬品性筒体3、保護部材23および弾性筒体4の配置関係を断面図で示し、図3に、前記弾性筒体4が保護部材23により過剰の収縮を阻止している状態を示した。図3に示されるように、液圧室内の液体が押圧されることにより収縮した弾性筒体4の一部は保護部材23に密着するが、弾性筒体4の他の一部は保護部材23から離れた状態にある。そして、圧力伝達媒体は、弾性筒体4の圧縮変形によってもその容積が変わらないので、耐薬品性筒体3が収縮する。
【0048】
このように前記弾性筒体4の過剰な収縮が保護部材23により阻止される。この場合、押圧吸引手段におけるピストン8により液圧室内の液体が更に押圧されると、液圧室内部の圧力が急上昇する。この圧力の急上昇により安全弁(図示しない。)が開放され、液圧室内から液量調整管25を通じて液体の過剰な分が排出される。
【0049】
また、前記液圧室内の液体をピストン8により吸引した場合に、前記弾性筒体4に、これを通常より大きく膨張させようとする力が加わることがある。しかし、前記弾性筒体4は繊維により強化されてなることから、前記弾性筒体4には、ある程度までは容易に膨張するが、それ以上は容易に変形しないという所定の変形量が存在する。前記弾性筒体4は所定の範囲内でのみ膨張し、したがって前記耐薬品性筒体3の膨張も所定の範囲内に制限される。そして、液圧室内の液圧が急速に低下することにより、液体補給弁(図示しない。)が開き、液量調整管25を通じて液体が液圧室内に補給される。これにより、液圧室内の液体量は適正量に調整される。
【0050】
このように、前記耐薬品性筒体3の変形が所定の範囲内に制限されることにより、前記耐薬品性筒体3に吸引導入される液量または排出される液量が多過ぎたり、少な過ぎたりすることなく、安定した送液が実現される。また、前記耐薬品性筒体3に過剰変形が発生しないことにより、前記耐薬品性筒体3の寿命が長期化する等の利点もある。
【0051】
(実施例2)
図4は、前記請求項4に記載の発明の一実施例であるチューブダイヤフラムポンプの概略を示す一部断面図である。
【0052】
チューブダイヤフラムポンプ1bは、両端開口部から中央部に向かうに従って拡大する内周面22を有する円筒状のポンプ本体2と、前記ポンプ本体2の中心軸線を囲繞するように設けられ、内部に液体の吸引吐出用空間すなわちポンプ室を形成する耐薬品性筒体3と、前記耐薬品性筒体3の外側を囲繞するように設けられた第1保護部材26と、前記耐薬品性筒体3の内側に設けられた筒状の第2保護部材27と、前記耐薬品性筒体3、第1保護部材26および第2保護部材27を前記ポンプ本体2に固定するための固定部材28a,28bとを備えてなる。
【0053】
前記ポンプ本体2は、前記ポンプ本体2の前記内周面22に開口するピストン挿入孔6が内部に形成されたシリンダー部7を有する。前記ピストン挿入孔6には、ピストン8が摺動可能に収容されている。
【0054】
前記耐薬品性筒体3は、断面円形の筒体であり、内部に液体の吸引吐出用空間を形成するように前記ポンプ本体2に前記固定部材28a,28bによって装着されている。この耐薬品性筒体3の材質としては、上記実施例1における耐薬品性筒体3の材質として示したものを採用することができる。この耐薬品性筒体3は、前記固定部材28a,28bによる固定を解除することにより容易に取り外すことができ、容易に交換できるようになっている。
【0055】
前記第1保護部材26および第2保護部材27は、いずれも、その中心軸線を前記耐薬品性筒体3と共有する断面円形の筒体であり、その両端部は、前記固定部材28a,28bにより前記ポンプ本体の両端開口部に固定されている。 第1保護部材26は、前記耐薬品性筒体3の外径とほぼ等しい内径を有する編織物よりなる筒体である。
【0056】
前記第2保護部材27は、ステンレス鋼等の耐食性金属で形成された網を前記耐薬品性筒体3の内径よりも小さい外径を有する円筒状に巻いてなる筒体である。この第2保護部材27の材質は、この実施例における耐食製金属に限定されることなく、この発明のチューブダイヤフラムポンプで送液すべき液体の性質に応じて適宜に決定することができる。好ましくは、送液すべき液体に応じて、その液体により腐食されず、かつ変質されない材質を採用する。例えば、ステンレス鋼、ハステロイ、チタン、カーペンター、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等を好適に採用することができる。
【0057】
前記耐薬品性筒体3には、端部開口部の周縁部を内径とするリング状の装着部10が形成されている。
【0058】
前記固定部材の内導出側の固定部材28aは前記ポンプ本体2の導出側開口部において、前記固定部材の内導入側の固定部材28bは前記ポンプ本体2の導入側開口部において、それぞれ前記ポンプ本体2の開口部端面との間に前記耐薬品性筒体3の装着部10を挟持することにより、前記耐薬品性筒体3を固定している。
【0059】
前記第1保護部材26は、前記耐薬品性筒体3の外周面に接触しこれを囲繞するように設けられている。
前記導出側固定部材28aは、液体の導出される方向に向かうに従って径が縮小する液体導出路29を有し、前記導入側固定部材28bは、液体の導入される方向に向かうに従って径が拡大する液体導入路30を有する。そして、前記第2保護部材27は、前記導出側固定部材28aの液体導出路29および前記導入側固定部材28bの液体導入路30に挟持される。
【0060】
前記ポンプ本体2の導出側開口部には、液体が導出されるのを許容し、液体が吸引導入されるのを阻止する図示しない逆止弁が設けられている。一方、ポンプ本体の導入側開口部には、液体が導入されるのを許容し、液体が導出ないし排出されるのを阻止する逆止弁31が設けられている。
【0061】
この実施例においては、ポンプ本体2に固定された耐薬品性筒体3の外周面と前記ポンプ本体2の内周面22との間に液圧室が形成される。この液圧室内の液体は、上記実施例1におけるのと同様に、ピストン8の前後進駆動により押圧吸引されるように構成されている。この液圧室内に充填される液体も実施例1におけるのと同様である。
【0062】
このチューブダイヤフラムポンプ1bの作用について説明する。
【0063】
この実施例における液圧室内の液圧の増減およびこれによる前記耐薬品性筒体3の収縮膨張は、前記ピストン8の前後進駆動により行われる。
【0064】
液体の過補給等により前記液圧室内の液体が過剰量となった場合には、前記耐薬品性筒体3に、これを通常より大きく収縮させようとする力が加わることがある。この実施例においては、前記耐薬品性筒体3はある程度収縮したところで前記第2保護部材の外周面に接触し、これにより、前記耐薬品性筒体3の過剰な収縮は発生しない。
【0065】
前記液圧室内の液体が過少となった場合には、前記耐薬品性筒体3に、これを通常より大きく膨張させようとする力が加わることがある。この実施例においては、前記耐薬品性筒体3の外周面にはこれを囲繞するように第1保護部材が設けられており、これが前記耐薬品性筒体3の膨張を押さえることにより、前記耐薬品性筒体3の膨張は所定の範囲内に制限される。
【0066】
このようにして、前記耐薬品性筒体3の変形が所定の範囲内に制限されることにより、前記耐薬品性筒体3に吸引導入される液量または排出される液量が多過ぎたり、少な過ぎたりすることがない。したがって、液体の送液量で安定する。また、前記耐薬品性筒体3流体に過剰変形が発生しないことにより、前記耐薬品性筒体3ひいてはチューブダイヤフラムポンプ1b自体の寿命が長期化する等の利点もある。
【0067】
【発明の効果】
この発明によると、従来の技術と発明が解決しようとする課題の欄に示した従来の問題点あるいは不都合を解決することができる。
【0068】
この発明によると、構造が簡単で、小型化も容易なチューブダイヤフラムポンプを提供することができる。この発明によると、腐食性の強い液体や、沈降性の液体やスラリーにも使用することができるチューブダイヤフラムポンプを提供することができる。また、この発明によると、耐久性に優れ、安定して高精度の送液を達成することができるチューブダイヤフラムポンプを提供することができる。さらに、この発明によると、送液能力に優れ、小型化可能であると共に長寿命なチューブダイヤフラムポンプを提供することができる。
【0069】
この発明によると、液圧室内の液量に変動が生じても、安定した送液量を維持することができるチューブダイヤフラムポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施例であるチューブダイヤフラムポンプの概略を示す断面図である。
【図2】図2は、実施例1のチューブダイヤフラムポンプにおける耐薬品性筒体、保護部材および弾性筒体の配置関係を示す図である。
【図3】図3は、実施例1のチューブダイヤフラムポンプにおいて、前記弾性筒体が保護部材により収縮を規制されている状態を示す図である。
【図4】図4は、前記請求項4に記載の発明の一実施例であるチューブダイヤフラムポンプの概略を示す一部断面図である。
【図5】図5は、従来のダイヤフラムポンプの一例の概略を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1・・・チューブダイヤフラムポンプ、2・・・ポンプ本体、3・・・耐薬品性筒体、4・・・弾性筒体、5・・・固定部材、5a・・・第1固定部材、5b・・・第2固定部材、5c・・・第1固定部材、5d・・・第2固定部材、6・・・ピストン挿入孔、7・・・シリンダー部、8・・・ピストン、9・・・弾性部材の装着部、10・・・耐薬品性筒体の装着部、11・・・液体排出用孔、12・・・液体導入用孔、13・・・排出路形成部材、14・・・固定部、15・・・固定用リング、16・・・液排出路、17・・・球体、18・・・導入路形成部材、19・・・固定部、20・・・液導入路、21・・・球体、22・・・ポンプ本体の内周面、 23・・・保護部材、24・・・内部空間、25・・・液量調整管、26・・・第1保護部材、27・・・第2保護部材、28a・・・導出側固定部材、28b・・・導入側固定部材、31・・・逆止弁、53・・・ダイヤフラム。

Claims (4)

  1. 液圧室と、液圧室内の液を吸引押圧する吸引押圧手段と、この吸引押圧手段により吸引押圧された液圧室内の液によって可動するダイヤフラムにより、液導入口から流体を吸引し、液導出口より流体を排出するポンプ室とを備え、前記ダイヤフラムは、液圧に応じた収縮膨張により流体の吸引吐出を行う内部空間を形成する耐薬品性筒体と、その耐薬品性筒体の外部を囲繞する弾性筒体と、前記耐薬品性筒体と弾性筒体との間に装填された圧力伝達媒体とを備えてなり、
    前記耐薬品性筒体と弾性筒体との間に、前記耐薬品性筒体および弾性筒体の過剰変形を防止する筒状の第1保護部材を介装してなる
    ことを特徴とするチューブダイヤフラムポンプ。
  2. 前記弾性筒体が、強化材で強化された弾性筒体である前記請求項1に記載のチューブダイヤフラムポンプ。
  3. 前記強化材が編織物または不織布である前記請求項に記載のチューブダイヤフラムポンプ。
  4. 前記弾性筒体の外側に、弾性筒体の過剰変形を防止する筒状の第2保護部材を介装してなる前記請求項1〜3のいずれか1項に記載のチューブダイヤフラムポンプ。
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