JP3559529B2 - ステンレス鋼短繊維及びそれを用いた焼結多孔体 - Google Patents

ステンレス鋼短繊維及びそれを用いた焼結多孔体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アスペクト比のばらつきを抑制しうるステンレス鋼短繊維,及びその短繊維を用いることにより空孔特性を安定化しうる焼結多孔体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼短繊維は、例えばステンレス鋼繊維を所定長さに切断することで得られ、その中でも特にその径dに対する長さLの比(アスペクト比L/d)を調整された範囲にした短繊維では、これを充填し所定形状に成した場合に各短繊維をランダム方向に配向させることができ、その内部には立体的な微細空孔が分布形成された焼結多孔体にすることができる。かかる多孔体は、高い空孔精度、空孔率を具えるとともに、その内部には立体的な複雑流路が形成できることから、微細空孔でありながらも圧力損失を低く抑えることが可能となる。したがってこのような多孔体を各種流体の濾過材料、エアー緩衝用部材として用いた場合、低圧損、かつ目詰まりなどを抑え長寿命のものとすることができる。
【0003】
本出願人は、このような短繊維について特公昭63−63645号公報によって、繊維径2〜20μmのステンレス鋼の繊維材料(所謂トウ)を出発材料として、この繊維材料に結晶粒調整化熱処理と粒界腐食処理とを施すことによって所定長さのステンレス鋼短繊維をうることを提案している。この提案のものでは,端部に切断ダレがなく、かつアスペクト比も2〜50程度の柱状の短繊維を生産しうる。
【0004】
また前記提案のステンレス鋼短繊維を用いてなる焼結多孔体について、本出願人は特公平3−33370号公報によって、前記焼結多孔体により形成される濾過材を提案しているが、この濾過材は、空隙率が50%以上になし得る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前者公報によるステンレス鋼短繊維は、前記長尺の金属フィラメントの結晶を各粒界で分断することにより得られるものであり、前記結晶粒の調整化熱処理の条件制御によって結晶の大きさを調整することで種々アスペクト比の短繊維をうることができるとしている。しかしながら、金属フィラメントが細径となるときは、その結晶粒の大きさに基づく長さが大となるため、細径となるほどアスペクト比が大きく、またそれにつれてばらつきも大きくなりやすいという傾向があることが判明した。
【0006】
その理由としては、特に微細径のステンレス鋼短繊維では、太径繊維に比べて熱の吸収が早く結晶粒の成長も急激なものとなることから、わずかな処理条件の違いでも得られる短繊維のアスペクト比には大きく影響することによると推察される。
【0007】
ちなみに、前者提案のものも、その実施例である繊維径12〜4μmの場合において、例えば12μmのときにはアスペクト比が3程度、繊維径8μmでは7程度、さらに4μmの微細繊維では同比9.5とアスペクト比が徐々に大となることが記載されている。さらに、そのばらつきも約4倍程度に増大したものとなっている。
【0008】
他方、近年の、例えば半導体製造ガス用で求められる、0.05μm以下の超微粒子を99.9999999%以上という高精度で効率よく除去する濾過材をうるには、理論上、例えば繊維径2μm以下と極めて細くすることが必要と推察されるが、このようなステンレス鋼短繊維では、前述の点より、アスペクト比がさらに増大し、かつばらつきも増すことが想定され、前記特性の濾過材をうるには細径化とともにアスペクト比、そのばらつきを抑制することが求められる。
【0009】
すなわち、アスペクト比の大きいステンレス鋼短繊維を焼結成形した焼結多孔体では、その内部で各短繊維は比較的平面的にしか分布させることができず、それに伴って内部空孔も平面的となって重なり合い空孔率も低いものとなる。この為かかる濾過材は、圧損が大きく寿命的にも満足なものとはなりえず、ゆえに、前記用途に採用しうる濾過材としてふさわしいものとは言い難い。
【0010】
本発明は、ステンレス鋼短繊維のアスペクト比は、その繊維材料の結晶粒度と深い関係にあることを知得し、その制御手段として繊維材料中の微細化元素を調整することが有効であることを見出し完成したものであって、特に10μm以下と細径の短繊維でありながらも希望のアスペクト比のばらつきに抑制しうるステンレス鋼短繊維,及びその短繊維を用いることにより空孔特性の安定化を果たしうる焼結多孔体の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1の発明は、端部に切断ダレを有しない柱状、かつ繊維径(d)を10μm以下、しかもその径(d)と長さ(L)とのアスペクト比(L/d)の平均値が2〜20であるステンレス鋼短繊維であって、該短繊維中におけるN量を0.02〜0.50wt%の範囲に調整することにより、前記平均アスペクト比を前記所定範囲に抑制したことを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、端部に切断ダレを有しない柱状の形態を持ち、かつ繊維径(d)を10μm以下、しかもその径(d)と長さ(L)とのアスペクト比(L/d)の平均値が2〜20であるステンレス鋼短繊維であって、該短繊維中のTi,Nb,Zr,BまたはVから選択される元素の少なくとも1種の量を0.005〜0.30wt%の範囲に調整することにより前記平均アスペクト比を前記所定範囲に抑制したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記短繊維の繊維径(d)が、0.1〜5μmであることを特徴とし、かつ請求項4記載の発明は、前記平均アスペクト比が5〜12、かつそのばらつき(S)の変動係数が25%以下であることを特徴としている。
【0014】
また請求項5の発明は、前記ステンレス鋼短繊維が、オーステナイト系ステンレス鋼からなり、かつ請求項6の発明は、このようなステンレス鋼短繊維をランダム方向に配向した多孔質構造体に加圧し焼結によって一体化した焼結多孔体であることを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のステンレス鋼短繊維1は、図1に略示するように、端部aに切断ダレを有しない柱状形態をなし、特に繊維径(d)を10μm以下と細くしたものでありながらも、その径(d)と長さ(L)との比であるアスペクト比(L/d)の平均値を2〜20とするものであって、請求項1の発明では、ステンレス鋼短繊維中におけるN量を0.02〜0.50wt%の範囲に、請求項2の発明ではステンレス鋼短繊維中のTi,Nb,Zr,BまたはVから選択される元素の少なくとも1種の量を0.005〜0.30wt%の範囲に調整することとし、それによって前記アスペクト比の調整を図ることとしている。
【0016】
ステンレス鋼短繊維1として、Ni系、Cr系など種々ステンレス鋼を使用しうるが、特にオーステナイト系ステンレス鋼は熱処理での再結晶によって横断角単一の結晶粒で形成することができ、容易に短繊維化できるとともに、耐食性や機械的特性、耐熱特性に優れ、濾過材などとして好適に利用しうるものであり、SUS304系,SUS316系などとともに、SUS201,SUS205,SUS302,SUS305、SUS310,SUS317などを用い得る。
【0017】
またステンレス鋼短繊維1は、「端部に切断ダレを形成しない柱状」とする。これにより、所定金型内に充填する際に各短繊維同士の絡み合いを防いで自由方向に配向させることができ、それによって微細空孔で高い空孔率、幅の狭い孔径分布の多孔体にすることができ、かつ濾過性能を高め得る。又このように「端部に切断ダレを形成しない柱状」を有する短繊維を得るには、例えば前記した提案、即ち特公昭63−63645号公報が記載する熱処理による結晶粒界の長さを調整、粒界腐食の工程を含む製造方法により生産できる。
【0018】
本発明において繊維径(d)を10μm以下とする理由は、それを越えるような太い短繊維については、前記従来技術での条件調整などの方法で好ましいアスペクト比とばらつきを有するものにできることから、本発明ではその上限を10μmとしており、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm未満の細さのものを対象とする。また、その下限については特に限定するものではないが、近年の集束伸線法によるステンレス鋼繊維の製造技術によれば、例えば0.3μm程度の細い繊維材料まで達成されており、そのような細いものであっても十分に適用可能である。
【0019】
ところでこの繊維径について、短繊維が例えば断面真円な円柱状のものの場合はその直径をもって示すことができるが、前記集束伸線法などによる繊維材料では微視的には断面真円ではなく、周面に微小凹凸を持った不規則断面を有するものであることから、その測定においてしばしば困難を伴う。しかしながら、本発明が対象とするような微細繊維では、その凹凸程度は極めて小さく実質的に無視できるものであり、またその測定時においても、その一点のみを取り出して断面形状や平均繊維径を求めることは容易ではない。さらに、この短繊維は、通常の場合その一群として用いられるものである。
【0020】
こうしたことから、このような不定形断面の短繊維の場合の繊維径については、各短繊維毎の個別測定値ではなく、単一ロット内における複数の短繊維の一群を平均化した平均繊維径を用いることができるものとし、例えば投影器測定面上にランダムに置かれた数点の短繊維について実測した透過直径の平均値で示すこととする。このような平均法を用いても各短繊維が持っている最大径と最小径との差を相殺し平均化することができる。
【0021】
またそのアスペクト比についても、全ての短繊維が同一アスペクト比を有するように製造することは理想ではあるが、目視困難な大きさでもあり、ある程度のばらつきが存在するものである。したがって、その場合のアスペクト比についても、前記繊維径の場合と同様に一群の平均値でもって代用することとし、その算出方法は、各短繊維(例えば100点程度)についての実測繊維長さ(L)を前記平均繊維径(d)で除したものをその短繊維のアスペクト比とし、本発明ではその平均値を2〜20とするものである。
【0022】
そして、その範囲を2〜20とする理由は、その値が20を越える程大きい短繊維では、多孔体とした場合に孔径分布の幅が大きくなるとともに押圧圧力によって短繊維分布が平面的になりやすいことから高精度濾材とはなりにくい。一方、その値が2を下回るものでは、その形状は一般的な粉末に近いものであることから空孔率を高めることができないことによるものであって、好ましくは2〜15、さらに好ましくは5〜12程度とする。
【0023】
またアスペクト比については前記したように、一群の短繊維の中にはある程度のばらつきは許容できるものであり、その程度についても、用いる成形体としての用途や求められる特性、成形方法などによって種々異なる。例えば、通常の濾過特性を得ようとする用途では、ばらつきの変動係数(CV)として30%以下程度にするのがよく、また、例えば前記半導体用ガスを濾過処理するような精密さが求められる用途では、例えば繊維径2μm未満で平均アスペクト比5〜12とし、さらにそのばらつきの変動係数を25%以下にするのがよい。
【0024】
なお、前記変動係数(CV)については、次式による標準偏差(S)を試料数で除した係数でもって求めることができる。
標準偏差(S)=√{(A1−A)+(A2−A)+ … +(An−A)}/n
変動係数(CV)=S/n×100(%)
ここで、A1,A2,Anは各短繊維毎のアスペクト比の測定値であり、Aはその平均値、またnは測定試料数であって、その大きさは例えば数十〜100点程度とする。
【0025】
本発明ではステンレス鋼短繊維1における、アスペクト比、及びそのばらつきを観測するために、請求項1の発明ではN量を、また請求項2記載の発明では、Ti,Nb,Zr,BまたはVから選択される元素の少なくとも1種の量を前記所定範囲になるように調整することとしている。
【0026】
このような元素は、ステンレス鋼においてその結晶粒を微細にして、粒界腐食により切断される短繊維としての長さを減じ、アスペクト比の比較的小さいステンレス鋼短繊維1をうることができるが、特にNは、容易に結晶格子内に侵入でき、生地強化を図って結晶粒をより微細にできるため、好適に利用できる。なお、Ti,Nb,Zr,BまたはVも結晶の微細化についてNと同様の働きを有する。
【0027】
従って、このような微細元素を所定の比率範囲で調整することにより、微細径の繊維であっても、ステンレス鋼短繊維の長さ(L)を低減し、その結果、アスペクト比(L/d)を小とするとともに、そのばらつきを抑制しうる。
【0028】
このような作用を発揮させる為には、前記Nでは少なくとも0.02%以上にする必要があり、一方、通常組成のステンレス鋼で含有できる量は、多くとも0.5%に留まり、それを越えると伸線加工性や繊維製造段階における生産性を損なうなど新たな問題を生じさせるため、N量を0.02〜0.50wt%の範囲、より好ましくは0.05〜0.25wt%とするのがよい。なお熱処理炉を窒素、アルゴンの混合雰囲気とするときなどのように製造の過程で、Nが浸入して増加する場合があり、かかる場合には、増加するN量を見込んで前記値を設定するのがよい。
【0029】
例えば繊維径の0.5μm程度の短繊維の平均アスペクト比を2〜8程度とする場合には、N量は0.1〜0.3wt%とやや多くし、一方、アスペクト比が8〜15程度の短繊維をうるには、例えば0.08wt%以下程度とその量を減じるのがよい。しかしながら、熱処理条件によっても結晶粒径は変化するため、前記値は目安であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
また、Ti,Nb,Zr,B又はVについても、基本的にはNの場合と同様と考え得るが、特にTiやNbなどの元素は耐粒界腐食性を高める作用もあることから、粒界腐食方法によってステンレス鋼短繊維1を得る場合には、粒界の切断性を損ない、その作業性を低下させる可能性もあり、また他のZr、B、Vについても多量添加させることは困難で生産並びにその特定をさせることからNの場合よりもやや少の0.005〜0.30wt%、好ましくは0.02〜0.20wt%の範囲としている。
【0031】
なおTi,Nbなどを用いる場合において、粒界腐食をより促進させかつ効率的に短繊維化するには、例えばその金属繊維材料としてSUS304やSUS302,SUS316,SUS201などの高C材(0.05wt%以上)を用いることにより粒界においてCr−Cを析出させて分断を容易とすることもできる。
【0032】
また本発明では前記Ti,Nb,Zr,BまたはVから選択される元素の少なくとも1種の量を0.005〜0.30wt%の範囲に調整するが、Nを含めて前記Ti,Nb,Zr,BまたはVの複数のものを夫々前記各範囲として併用することもできる。
【0033】
一方、ステンレス鋼短繊維1を生産するためのフィラメント、即ち金属繊維材料には、例えば集束複合線を伸線加工する方法(例えば特開昭47−26367号公報)によるものが好ましく利用でき、目標径に伸線加工して、最後に外装材のみを除去することにより生産しうる。この方法において、伸線加工と熱処理とを適宜調整しながら繰り返し行うことによって、例えば0.1μm程度のステンレス鋼繊維のトウとすることもできる。
【0034】
このような集束伸線法により得られた金属繊維材料は、その加工方法に由来して非平滑、しかも断面不規則形状の外表面bを備えるとともに、かかる金属繊維材料を粒界腐食によって短繊維化するときには、各短繊維の端部aには切断ダレなどを持たない柱状を有するものとすることができ、しかも前記のように、N、Ti,Nb,Zr,B又はV量の調整や、熱処理条件、伸線条件などの設定により当業者は容易に所望のアスペクト比を持つステンレス鋼短繊維1を生産しうる。このような非平滑の外表面aを有する短繊維からなる多孔体を焼結した焼結多孔体3は、多孔体内部において比表面積が増加することにより粒子捕捉性能に優れる高精度の濾過材とすることができる。
【0035】
なお前記熱処理については、用いるステンレス鋼繊維の伸線加工歪を解消して、繊維横断面を単結晶にするとともに結晶粒を所定大きさに成長させる為のものであって、例えば18Cr−8Niであるオーステナイト系ステンレス鋼では、温度900〜1400℃、時間0.5〜2時間程度とする非酸化雰囲気中(例えばアルゴンガスなどの不活性雰囲気中)で実施され、一方、Cr系ステンレス鋼についても前記オーステナイト系の場合と同様に予め熱処理条件と結晶粒との関係付けを行っておくことによりその最適条件を選択すべきである。
【0036】
また本発明では前記したように結晶粒の微細化調整の為にN、Ti、Nbなどの前記微細化元素を調整したステンレス鋼を用いているため、熱処理に伴う急激な結晶成長を抑えることができ、したがってその処理条件について厳密な管理の必要がなく、作業者の手間を省いて負担軽減できるという利点もある。一方、その後に行う粒界の選択腐食処理についても前記した公報が開示するのと同様な方法で実施できる。使用する酸性溶液としては、例えば硝酸や塩酸、フッ酸等の無機酸の他、硫酸銅等の金属塩であっても、またこれらの混合溶液であってもよく、フッ酸と硝酸との混合溶液は比較的容易に用いられる。
【0037】
また処理条件としては、例えば液温20〜50℃とした前記溶液中に浸漬し、5〜30分程度の処理で行われ、こうして得られた短繊維は、用いた繊維材料と実質的に同じ繊維径を有する単結晶粒子であり、腐食に対して極めて安定した特性を有する。このようにして、ステンレス短繊維の繊維径(d)が、10μm以下で、平均アスペクト比が2〜20、かつそのばらつき(S)を抑制した短繊維にすることができる。
【0038】
図2は、前記短繊維による焼結多孔体3を例示するものであって、ステンレス鋼短繊維1をランダム方向に配向した多孔質構造体に加圧し、焼結することにより一体化している。又アスペクト比の比較的小さい各短繊維1が自由な方向に分布することによって立体的な空孔4を形成していることが分かる。
【0039】
また本発明では10μm以下というステンレス鋼短繊維1を対象としているが、ステンレス鋼短繊維1が細径化するに従い、アスペクト比が20を越える程大きいものでは、このステンレス鋼短繊維1をランダム方向に配向させようとしても所定圧力での加圧によって方向性が変化したり押し曲げられ、濾過特性が当初予想したものとは異なるものとなりやすい。そのため、その上限を20以下としておりこのアスペクト比は、加圧力や得られる空孔精度、空孔率などと相関させて選択することにより、通常の試行により好ましい濾過特性を焼結多孔体3を得ることができる。
【0040】
なお、焼結多孔体3としては、ディスク形状、ブロック形状、円柱形状などさまざまの形成にすることができその成形方法についてもその形状の型内に一定量のステンレス鋼短繊維1を充填するとともに、押型によって指定圧力で加圧し、さらに焼結処理するなど、従来から製品に応じて種々提案されてきた方法が採用できる。
【0041】
又焼結条件についても、ステンレス鋼短繊維1を用いることから、例えば温度800〜1100℃程度の不活性雰囲気中で、10分〜2時間程度の時間放置することで処理され、その結果、各短繊維は相互に結合し強固な焼結多孔体3となる。なおこの場合、該短繊維以外に他の粉末や繊維などと混合させたり積層したものとすることができ、またその用途としては前記濾過材とし、あるいは流速を減じる緩衝用、さらには断熱材など巾広く用いることができるなど、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々展開できる。
【0042】
【実施例1】
表1に示す組成のステンレス鋼線(線径0.12mm)の各々に外装材を覆せたた複数本を用意し、それを集束外装材で被覆して複合線体となし、これを伸線加工と熱処理をくり返し行うことによって細径化した。
【0043】
【表1】
Figure 0003559529
【0044】
この線体を弗硝酸で処理し500本の集束繊維を得たが、その表面は非平滑で不定形状の横断面を有するものであり、平均繊維径は約2〜2.5μmの細さであった。
【0045】
つぎに、この繊維を1100℃、1時間の不活性ガス雰囲気中で熱処理したのち、3%の弗酸と、20%の硝酸でなる弗硝酸溶液に浸漬して粒界腐食処理を行った。その結果得られた短繊維粉末点数100ケについて、平均アスペクト比とそのばらつきである変動係数(CV)を求めた。結果は表2の通りであり、また試料Bと試料Fの分布ヒストグラムを図3に示す。
【0046】
【表2】
Figure 0003559529
【0047】
【実施例2】
前記実施例1の試料A,C、Fの複合線体について、さらに伸線加工と熱処理とを繰り返し行うことで繊維径0.5μmの超極細繊維とし、この繊維材料を温度1000℃の不活性雰囲気中に50分と100分間にわたってセットし熱処理を行った。この処理により、繊維の結晶はゆっくりと成長していき、前記実施例1と同様の溶液で粒界腐食処理を行って次の短繊維を得た。
【0048】
【表3】
Figure 0003559529
【0049】
【実施例3】
前記試料Dの短繊維粉末を、外径30mm、厚さ2mmの成形型内に充填するとともに、次の条件で焼結処理を行った。
焼結温度 1100℃
焼結時間 1時間
雰囲気 アルゴンガスによる不活性雰囲気
加圧圧力 100N/cm
【0050】
得られた焼結多孔体について、顕微鏡で観察したところ、各短繊維はランダム方向に配向するとともに強固な結合をしており、またその空孔特性は次の通りであった。
【0051】
試料No,D(繊維径:2μm)
空孔径 2.6μm
空孔率 63%
【0052】
【発明の効果】
このように、請求項1の発明は、端部に切断ダレを有しない柱状をなし、かつNの添加により、繊維径(d)、アスペクト比、そのばらつきを調整しているため、空孔特性に優れた多孔体を生産しうる。また結晶粒を微細化する働きをもつ調整元素を用いているため、その処理工程中での急激な結晶成長を抑えることができ、作業時の管理負担を軽減できる利点がある。
【0053】
請求項2の発明は、端部に切断ダレを有しない柱状をなし、かつTi,Nb,Zr,BまたはVから選択される少なくとも1つの元素の添加により、繊維径(d)、アスペクト比、そのばらつきを調整しているため、その処理工程中での急激な結晶成長を抑えることができることから、細径でありながらもアスペクト比を小さくでき、かつ作業時の管理負担を軽減できる利点がある。
【0054】
請求項3,4の発明は、その構成の採用により、より均質化したステンレス鋼短繊維となり、濾過特性がより向上した焼結多孔体を得ることができる。
【0055】
前記ステンレス鋼短繊維として、オーステナイト系ステンレス鋼を用いるため、耐食性や機械的特性、耐熱特性に優れ、濾過材などの多孔体として好適に利用しうる
【0056】
請求項6の焼結多孔体は、前記請求項1〜5のいずれかに記載のステンレス鋼短繊維をランダム方向に配向した多孔質構造体に加圧し、焼結によって形成しているため、空孔特性に優れた焼結多孔体とすることができる。
【0057】
また本発明では、前記したように調整元素としていずれも結晶粒を微細化する働きをもつものを対象としたことから、その処理工程中での急激な結晶成長を抑えることができることから、作業時の管理負担を軽減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】短繊維の外観を示す平面図である。
【図2】焼結多孔体を例示する斜視図である。
【図3】本発明によるステンレス鋼短繊維のアスペクト比のばらつきを示すヒストグラムである。
【符号の説明】
1 ステンレス鋼短繊維
3 焼結多孔体
4 空孔

Claims (6)

  1. 端部に切断ダレを有しない柱状、かつ繊維径(d)を10μm以下、しかもその径(d)と長さ(L)とのアスペクト比(L/d)の平均値が2〜20であるステンレス鋼短繊維であって、
    該短繊維中におけるN量を0.02〜0.50wt%の範囲に調整することにより、前記平均アスペクト比を前記所定の範囲に抑制したことを特徴とするステンレス鋼短繊維。
  2. 端部に切断ダレを有しない柱状の形態を持ち、かつ繊維径(d)を10μm以下、しかもその径(d)と長さ(L)とのアスペクト比(L/d)の平均値が2〜20であるステンレス鋼短繊維であって、
    該短繊維中のTi,Nb,Zr,BまたはVから選択される元素の少なくとも1種の量を0.005〜0.30wt%の範囲に調整することにより前記平均アスペクト比を前記所定の範囲に抑制したことを特徴とするステンレス鋼短繊維。
  3. 前記短繊維の繊維径(d)が、0.1〜5.0μmであることを特徴とする請求項1、又は2に記載のステンレス鋼短繊維。
  4. 前記平均アスペクト比が5〜12、かつそのばらつきの変動係数(CV)が25%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼短繊維。
  5. 前記ステンレス鋼短繊維は、オーステナイト系ステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1、2、又は4に記載のステンレス鋼短繊維。
  6. 前記請求項1〜5のいずれかに記載のステンレス鋼短繊維をランダム方向に配向した多孔質構造体に加圧し、かつ焼結によって一体化したことを特徴とする焼結多孔体。
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