JP3558765B2 - レンズシートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は紫外線等の活性エネルギー線により硬化する樹脂を利用したレンズシートの製造方法に関し、特に、プロジェクションテレビ等の投写スクリーンに使用されるフレネルレンズシートやレンチキュラーレンズシートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プロジェクションテレビ等の投写スクリーンに使用されるフレネルレンズシートやレンチキュラーレンズシートの製造方法としては、メタアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂等の透明樹脂を用いて射出成型する方法、レンズ金型とメタアクリル樹脂等の透明性樹脂板とを当接させ加熱してプレス成型する方法、樹脂板を直接切削する方法等が知られている。また、最近は、2P成型法といって、成形型上に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂膜上に活性エネルギー線透過性のベース板またはベースフィルムを積層し、この活性エネルギー線透過性ベース板等を通して紫外線等の活性エネルギー線を照射し、硬化させた後、上記成形型から活性エネルギー線硬化性樹脂層が設けられた活性エネルギー線透過性ベース板等を離形することによりレンズシートを製造する方法が開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の技術のうち、射出成型法では、大型化することや、肉薄を薄くすることが困難であり、比較的小さなサイズのレンズシートの成型にしか利用できない。また、加熱プレス成型法では生産設備が大きく高額なものになり、また、加熱冷却工程を含むため生産時間の短縮化には限界がある。さらに、製造中にトラブルが生じた場合に金型自体に損傷を与える危険性が高い。
【0004】
一方、2P成型法は、成型時間を短縮でき生産性が向上できるが、活性エネルギー線硬化性樹脂を成形型に注入しベース板を積層する際に気泡を巻き込み、不良品が発生することが多い。特に、同心円状のレンズパターンを有するフレネルレンズを製造する際には、レンズの溝部に気泡が閉じ込められやすく、気泡が一旦発生するとこれを取り除くことが困難であり製品上の欠点となる。
【0005】
この問題を解決するために、種々の方法が開発されている。例えば、特開平1−192529号公報、特開平1−285332号公報、特開平6−201903号公報等に記載されているように、まず低粘度の第1の樹脂液を塗布し、次いで比較的高粘度の第2の樹脂液を注入した後に透明樹脂基板を重ね合わせ、脱泡しながら樹脂液を展延し、その後、活性エネルギー線を照射し、硬化後に離型する方法が開発されている。しかしながら、この方法では、成形型に塗布した第1の樹脂液の気泡は除去されるが、第2の樹脂液の気泡を完全に押し出すことは困難である。また、この方法では活性エネルギー線硬化性樹脂を工程別に使い分けをする必要があり、活性エネルギー線硬化性樹脂の管理が必要である。
【0006】
また、成形型の端部より加圧ロールによって活性エネルギー線透過性ベース部材を均しながら活性エネルギー線硬化樹脂を積層する方法が開発されている(特開平1−192529号公報、特開平1−86102号公報、特開平5−220771号公報等参照)。しかし、この方法では、最初に成形型の全面に活性エネルギー線硬化樹脂の樹脂溜まりを形成し、次に端部に樹脂溜まりを形成するため、第一の全面塗布時に噛み込んだ気泡を次の端部樹脂溜まりにより閉じ込めることがあり、脱泡を妨げ、不良品の発生に繋がることがあるという課題が発生する。また、スタート時に発生する気泡を完全に排出することができず、大型製品になればなるほど製品収率が悪くなる、さらに、成形型とベース板の噛み込み状態が、それ以後の積層状態を決定づけるため、ベース板の角度ズレ、噛み込みズレにより泡噛み不良に繋がることがあるという課題が発生する。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、活性エネルギー線硬化樹脂を成形型に注入する際に発生する気泡や、ベース部材を介して活性エネルギー線硬化性樹脂を加圧展延し、上記活性エネルギー線硬化樹脂を上記成形型上に均しながら積層する時に発生する気泡を効率良く脱泡することができるレンズシートの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する本発明のレンズシートの製造方法は、レンズパターンが形成された成形型の端部に第1の活性エネルギー線硬化樹脂の樹脂溜まりを形成する第1の樹脂塗布工程と、中央部に樹脂溜まりが形成された成形型の全面に第1の活性エネルギー線硬化樹脂と同一の第2の活性エネルギー線硬化樹脂を塗布し樹脂膜を形成する第2の樹脂塗布工程と、活性エネルギー線硬化樹脂中の気泡を、活性エネルギー線硬化樹脂および成形型を真空下に置くかまたは加熱することにより除去する脱気工程と、活性エネルギー線透過性ベース部材の進入角度を10〜30度に保持しながら上記活性エネルギー線硬化樹脂膜上にベース部材を載せ、上記ベース部材を介して活性エネルギー線硬化性樹脂を加圧展延して、上記活性エネルギー線硬化樹脂を上記成形型上に均しながら積層する均し積層工程と、活性エネルギー線を上記ベース部材を通して上記活性エネルギー線硬化樹脂に照射し硬化させる樹脂硬化工程と、上記成形型から上記活性エネルギー線硬化樹脂膜が積層されたベース部材を離形する離形工程とから構成されることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明においては、レンズパターン型が形成された成形型の端部に注液装置を用いて、第1の活性エネルギー線硬化樹脂を気泡を噛ませることなくゆっくりとリボン状の樹脂溜まりに塗布し、その後、成形型の全面に第2の活性エネルギー線硬化樹脂の膜を、例えば、フローコート法によって塗布する。すなわち、第2の活性エネルギー線硬化樹脂の塗布時に噛み込んだ気泡は第1の活性エネルギー線硬化樹脂の上に存在し、脱気されやすくなる。ここで、上記第1の活性エネルギー線硬化樹脂は予備脱気しておくことが好ましい。
【0010】
活性エネルギー線硬化樹脂を塗布した後、上記の活性エネルギー線硬化樹脂中の気泡を除去する工程は、例えば、活性エネルギー線硬化樹脂および成形型を真空下に置くことで実施でき、真空脱気条件は、例えば0〜60Torrで1〜5分間であり、好ましくは2〜10Torrで1〜2分間である。
【0011】
また別の方法としては、上記のように活性エネルギー線硬化樹脂が塗布された成形型の真上から加熱することで気泡を上記の樹脂膜の表層にまで浮上させてもよい。加熱条件としては、例えば、50〜80℃の熱風を塗布面に吹き付け活性エネルギー線硬化樹脂膜の上層に残る気泡をはじけさせることが好ましい。50〜80℃の熱風に代えて、150〜200℃の熱盤を用いても良い。また、上記の真空脱気法と組み合わせても良い。
【0012】
このように脱泡した活性エネルギー線硬化性樹脂の塗布面に、成形型に対して進入角度が15〜30度の範囲になるように活性エネルギー線透過性の板またはフィルムからなるベース部材を端部から緩やかにセットする。ここで、例えばニップロールを用いて、ベース部材の接触時にベース板と上記活性エネルギー線硬化性樹脂との間に発生した気泡を他の一方の端に押しながら上記活性エネルギー線硬化性樹脂膜を均一に展延する。ベース部材の進入角度が10度未満では気泡の噛み込みが多くなり、押し出し切れないことがある。また、進入角度が30度を超えるとニップロールの径に制限が必要となり設備化が困難となることがある。ニップロールの周速としては、0.2〜1.0m/分が良い。ニップロールの周速が0.2m/分未満では、生産能率が悪く実用的でないことがある。また、周速が1.0m/分を超えると一部の気泡の送り速度より速くなり、その気泡が取り残されることがある。ニップロールの周速は、0.3〜0.5m/分であることが好ましい。なお、ニップロールの周速は使用する活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度に基づいて定めることが好ましい。
【0013】
なお、活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度差を利用する従来の技術では、液の温度、組成、成形型の温度、塗布量等を管理する必要があるが、本発明においては、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂と第2の活性エネルギー線硬化性樹脂とが同一である。また、活性エネルギー線硬化樹脂中に、例えば、添加剤(消泡剤、レベリング剤)、拡散剤(ガラス、シリカ、アルミナ、架橋ビーズ等)を添加しても良い。
【0014】
【実施例】
(実施例1)
フレネルレンズ状のレンズパターンが形成された成形型の端部に注液装置を用いて紫外線硬化樹脂をゆっくりと滴下し、0.1〜0.5cc/cmのリボン状の樹脂溜まりを形成する。塗布方法としては、ラム式定量フィダー法が好ましい。次いで、上記成形型の全面に紫外線硬化樹脂を0.1〜0.2mmの厚さになるように塗布し樹脂膜を形成する。塗布方法としては、フローコート法、エアレススプレー塗装法などが好ましい。塗布後、上記の紫外線硬化樹脂中の気泡を除去する工程は、紫外線硬化樹脂および成形型を真空下に置くことで実施でき、真空脱気条件として、上記のように、2〜10Torrで1〜2分間行うことが好ましい。
【0015】
その後、塗布した紫外線硬化樹脂上に、紫外線透過性を有するポリカーボネート板またはMS(メチルメタクリレートとスチレンとのコポリマー)板からなるベース部材(厚さ1.9mm)を進入角度20度で静かに載せ、ニップロールを用いて、ベース部材を介して活性エネルギー線硬化性樹脂を加圧展延した。展延速度としては、約0.5m/分が好ましい。このようにベース部材をセットすることで、紫外線硬化樹脂中に噛み込んだ気泡を成形型の端部より他端に送り出し、同時に、ほぼ均一な紫外線硬化性樹脂の塗布厚みとすることができた。紫外線照射装置(80W/cmの高圧水銀灯)を用いて、上記紫外線硬化性樹脂に上記のベース板部材を通して、例えば積算光量で700〜1000mJ/cm2 の紫外線の照射を行い紫外線硬化樹脂を硬化させた。その後、上記紫外線樹脂からなる層が形成されたベース部材を上記の成形型から手動によりまたは自動的に離形した。これによりフレネルレンズのレンズシートを製造した。製造されたレンズシートに気泡の残留は認められなかった。
【0016】
(実施例2)
実施例1と同様にしてレンズパターンが形成された成形型に紫外線硬化樹脂を塗布する。紫外線硬化樹脂中の気泡を除去する工程では、紫外線硬化樹脂が塗布された成形型の真上から50〜80℃の熱風を0.5mm幅のスリットより塗布面に吹き付け、紫外線硬化樹脂の上層に残る気泡をはじけさせた。ここで、周辺のゴミ等の混入を防止して気泡の除去を行った。これ以降の工程は、実施例1と同様にしてフレネルレンズのレンズシートを製造した。
【0017】
(実施例3)
実施例1と同様にしてレンズパターンが形成された成形型に紫外線硬化樹脂を塗布する。紫外線硬化樹脂中の気泡を除去する工程では、150〜200℃の熱盤を紫外線硬化樹脂が塗布された成形型の真上で約30mm高さにセットしたまま、約1分間保持し、紫外線硬化樹脂の上層に残る気泡をはじけさせた。ここで、周辺のゴミ等の混入を防止して気泡の除去を行った。これ以降の工程は、実施例1と同様にしてフレネルレンズのレンズシートを製造した。
【0018】
【発明の効果】
本発明のレンズシートの製造方法によれば、活性エネルギー線硬化性樹脂を成形型に注入する際の気泡の発生を抑えることができ、生産性を高めることができる。
Claims (2)
- レンズパターンが形成された成形型の端部に第1の活性エネルギー線硬化樹脂の樹脂溜まりを形成する第1の樹脂塗布工程と、端部に樹脂溜まりが形成された成形型の全面に第1の活性エネルギー線硬化樹脂と同一の第2の活性エネルギー線硬化樹脂を塗布し樹脂膜を形成する第2の樹脂塗布工程と、活性エネルギー線硬化樹脂中の気泡を、活性エネルギー線硬化樹脂および成形型を真空下に置くことにより除去する脱気工程と、活性エネルギー線透過性ベース部材の進入角度を10〜30度に保持しながら上記活性エネルギー線硬化樹脂膜上にベース部材を載せ、上記ベース部材を介して活性エネルギー線硬化性樹脂を加圧展延して、上記活性エネルギー線硬化樹脂を上記成形型上に均しながら積層する均し積層工程と、活性エネルギー線を上記ベース部材を通して上記活性エネルギー線硬化樹脂に照射し硬化させる樹脂硬化工程と、上記成形型から上記活性エネルギー線硬化樹脂膜が積層されたベース部材を離形する離形工程とから構成されることを特徴とするレンズシートの製造方法。
- レンズパターンが形成された成形型の端部に第1の活性エネルギー線硬化樹脂の樹脂溜まりを形成する第1の樹脂塗布工程と、端部に樹脂溜まりが形成された成形型の全面に第1の活性エネルギー線硬化樹脂と同一の第2の活性エネルギー線硬化樹脂を塗布し樹脂膜を形成する第2の樹脂塗布工程と、活性エネルギー線硬化樹脂中の気泡を、活性エネルギー線硬化樹脂および成形型を加熱することにより除去する脱気工程と、活性エネルギー線透過性ベース部材の進入角度を10〜30度に保持しながら上記活性エネルギー線硬化樹脂膜上にベース部材を載せ、上記ベース部材を介して活性エネルギー線硬化性樹脂を加圧展延して、上記活性エネルギー線硬化樹脂を上記成形型上に均しながら積層する均し積層工程と、活性エネルギー線を上記ベース部材を通して上記活性エネルギー線硬化樹脂に照射し硬化させる樹脂硬化工程と、上記成形型から上記活性エネルギー線硬化樹脂膜が積層されたベース部材を離形する離形工程とから構成されることを特徴とするレンズシートの製造方法。
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JPH09174704A JPH09174704A (ja) | 1997-07-08 |
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