JP3558684B2 - ピロリジルチオカルバペネム誘導体の乾燥方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、残留溶媒を減少させるためのピロリジルチオカルバペネム誘導体の乾燥方法、ならびに溶解性に優れた、該ピロリジルチオカルバペネム誘導体の結晶およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
次式で示される構造を有する、(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(3S,5S)−5−スルファモイルアミノメチル−1−ピロリジン−3−イル]チオ−1−メチル−1−カルバ−2−ペネム−3−カルボン酸(または(4R,5S,6S)−3−[[(3S,5S)−5−(スルファモイルアミノメチル)ピロリジン−3−イル]チオ]−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0.]ヘプト−2−エン−2−カルボン酸)(以下、本明細書中では、S−4661という)は、ピロリジルチオカルバペネム誘導体であり、抗菌剤として有用な化合物である。
【0003】
【化1】
【0004】
上記S−4661は特開平5−294970号公報に記載されている。S−4661は結晶または非晶質の状態で精製される。このS−4661の精製工程には、有機溶媒、水またはその混合溶媒が用いられる。例えば、有機溶媒、水またはその混合溶媒で粗製のS−4661を洗浄したり、あるいはこれらの溶媒を用いて、再結晶などの手段でS−4661を精製したりする工程が行われる。しかし、このような工程を経て得られたS−4661を乾燥して、残留有機溶媒を所望の基準値以下まで減少させることは困難であった。すなわち、通常の減圧乾燥法を用いて乾燥した場合、残留有機溶媒含量は0.4%が限界であった。また超臨界抽出法を用いても、残留有機溶媒含量を減少させる顕著な効果はなかった。従って、S−4661の精製の際に、残留有機溶媒を効果的に除去する方法はいまだ見いだされていない。
【0005】
上記S−4661の原薬または製品は、結晶の方が非晶質に比べて保存安定性、溶解性、操作性などに優れるため好ましく、さらに安定性、溶解性を高めるための添加剤を多量に使用する必要がないため好ましい。しかし、S−4661の安定性および溶解性の高い結晶を効率的に得るのに適した方法はいまだ見いだされていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的は、残留有機溶媒を減少させるためのピロリジルチオカルバペネム誘導体の乾燥方法、ならびに溶解性や安定性などに優れた、該ピロリジルチオカルバペネム誘導体の結晶およびその製造方法に関する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のS−4661の乾燥方法は、加湿ガスを用いてS−4661を処理する工程を包含する。この工程を本明細書中では一次乾燥工程という。一次乾燥工程は、処理されるS−4661を加湿ガスと接触させることにより行い得る。このS−4661と加湿ガスとの接触は任意の常法によって行われ、例えば流動乾燥法により行われる。
【0008】
上記一次乾燥工程において加湿ガスとして用いられるガスは、空気またはS−4661に悪影響を及ぼさない任意の不活性ガスであり、このような不活性ガスとしては窒素、アルゴンなどが挙げられる。好ましくは、加湿ガスは加湿窒素または加湿空気であり、より好ましくは加湿窒素である。この加湿ガスは、相対湿度が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、相対湿度が70%以上、さらに好ましくは85%以上である。
【0009】
一次乾燥工程における上記加湿ガスの温度は特に重要ではないが、S−4661の安定性の面からは、約10〜40℃が好ましく、より好ましくは20〜30℃である。
【0010】
一次乾燥工程における上記加湿ガスの圧力は、約10〜75cmHgであり得る。好ましくは、一次乾燥工程において、上記加湿ガスの圧力の幅は10〜40cmHg、好ましくは10〜15cmHgの範囲内で変動し得る。実際に一次乾燥工程を行う圧力は、用いる溶媒の種類、残留量などの種々の条件により異なるが、例えば、10〜20、20〜30、30〜40、または60〜75cmHgの減圧下で一次乾燥工程を行い得る。
【0011】
上記一次乾燥工程で処理されるS−4661は、粗結晶、結晶または非晶質のいずれであってもよいが、好ましくは結晶である。上記一次乾燥工程で処理されるS−4661の溶媒および水分の初期含有量は特に重要ではないが、水分の含有量が多く、そして溶媒の含有量が少ない方が、比較的、脱溶媒しやすい傾向にある。
【0012】
上記一次乾燥工程によって、水分含量は一旦増大するが、残留有機溶媒の含有量を100ppm以下にまで減少させることができる。一次乾燥により除去され得る溶媒としては、低級アルコール、ジクロルメタン、酢酸エチル、アセトンなどが例示される。
【0013】
本発明のS−4661の乾燥方法は、上記一次乾燥工程に加えて、さらにS−4661を乾燥する工程を包含し得る。この工程を本明細書中では二次乾燥工程という。上記一次乾燥工程の目的が主として残留有機溶媒の除去であるのに対して、この二次乾燥工程の目的は主として脱水である。
【0014】
上記二次乾燥工程としては、例えば、減圧乾燥、乾燥ガスによる乾燥などの任意の公知の乾燥方法が用いられ得る。好ましくは乾燥ガスによる乾燥が用いられる。あるいは上記のような公知の乾燥方法を組み合わせて用いてもよく、好ましくは、乾燥ガスを用いた減圧乾燥法である。
【0015】
上記二次乾燥工程に用いられる乾燥ガスは空気またはS−4661に悪影響を及ぼさない任意の不活性ガスであり得、このような不活性ガスとしては窒素、アルゴンなどが挙げられる。好ましくは、乾燥ガスは乾燥窒素または乾燥空気であり、より好ましくは乾燥窒素である。この乾燥ガスは、相対湿度が1%以下であることが好ましい。
【0016】
S−4661の結晶としては少なくとも2種類の異なる結晶形が存在することが判明している。この2種類の結晶形を以下、各々I型およびII型という。I型結晶およびII型結晶は、粉末X線回折で得られる特徴的なピークにより識別される。以下に各結晶形の特徴的な主ピークの回折角度(2θ)を示す。
【0017】
I型:7.32、14.72、18.62、20.42、21.1、22.18、23.88、および29.76(度)
II型:6.06、12.2、14.56、17.0、18.38、20.68、24.38、24.60、25.88、および30.12(度)
(X線回折測定条件:CuKα線、1.54オングストローム(モノクロメーター)、管電圧40kV、管電流40mA)。
【0018】
本発明の乾燥方法を用いてS−4661を乾燥すると、I型結晶、II型結晶、あるいはそれらの混合物のいずれを用いた場合であっても、得られる結晶は大部分が上記II型結晶であることが見いだされた。このように、本発明の製造方法はS−4661のII型結晶を選択的に製造する方法であるといえる。従って、本発明の、S−4661のII型結晶の製造方法は、加湿ガスを用いてS−4661を処理する工程を包含する。この工程は上記一次乾燥工程と同様である。以下、この工程も一次乾燥工程という。
【0019】
本発明の製造方法は、上記一次乾燥工程に加えて、さらにS−4661を乾燥する工程を包含し得る。この工程は上記本発明の乾燥方法における二次乾燥工程と同様である。以下この工程も二次乾燥工程という。
【0020】
上記のように、本発明の乾燥方法を用いてS−4661を処理するとII型結晶が選択的に得られることから、本発明の乾燥工程中にS−4661の結晶構造の変換が起こることが判明した。すなわち、S−4661のI型結晶がII型結晶に変換される。従って、本発明の製造方法は、S−4661のI型結晶をII型結晶に変換する工程を包含する。
【0021】
I型結晶のII型結晶への変換は、一次乾燥により、水分含量を増大させつつ脱有機溶媒させることにより起こる。一次乾燥工程において、残留有機溶媒の含有量が約500ppm付近まで下がるとI型結晶からII型結晶への変換が起こり始めると推定されている。残留有機溶媒の含有量が約200ppm以下になれば、ほぼ100%、II型結晶へと変換する。
【0022】
なお、I型およびII型の結晶のX線回折パターンにおける特徴的なピークについては、回折角度(2θ)は、水分および/または有機溶媒の含有量にかかわらずそれぞれ変化しないが、その強度は必ずしも一定ではない。従って、各結晶を、単に、水分および/または有機溶媒の含有率で区別するのは困難である。
【0023】
本発明に従って一次および二次乾燥工程を行えば、例えば、水分含量が約6%前後のII型結晶を得ることができる。しかしII型結晶でも付着水の増加により室温下で約10%前後の含水率で安定することもある。また、I型結晶は、室温下、約0〜5.0%の含水率で安定する傾向にある。よって、単に溶媒含量を調節するだけでは、II型結晶を選択的に得ることは不可能であり、本発明の製造法の有用性が裏付けられる。
【0024】
本発明のS−4661のII型結晶はI型結晶と比較して、水への溶解速度が大きい。例えば、100mgのS−4661に水1mLを加えて1分間静置し、1分経過後振り混ぜると、I型結晶はアメ状になって水と分離するが、II型は約10秒で澄明に溶解する。従って、S−4661の結晶を例えば凍結乾燥させるか注射剤などに使用する場合には、II型結晶の方がI型結晶に比べて好ましい。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を参考例および実施例に基づき説明する。
【0026】
(参考例1)
S−4661をメタノール/水混合溶媒より晶析させ、グラスフィルターで濾過した。得られた結晶は、粉末X線回折測定の結果および水溶解性から、大部分がI型である結晶多形と判明した。ガスクロマトグラフィーによる残留溶媒量測定およびカール・フィッシャー法による水分量測定を行ったところ、メタノール30.5%および水8.2%を含有していた。
【0027】
(実施例1)
一次乾燥工程:水中を通して加湿した後、温度を27〜30℃に調節した加湿窒素(相対湿度:85〜95%)を、20〜30cmHgの減圧下、約0.88L/分の速度で、参考例1で得られた、有機溶媒約30%と水分約8%を含んでいるグラスフィルター中のS−4661結晶層(7.87g)に、2時間通した。処理後、結晶を一部取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶媒量を測定したところ、メタノール含量は0.01%以下であった。粉末X線回折測定の結果、この結晶はII型に変換されていることが判明した。
【0028】
二次乾燥工程:上記一次乾燥工程で用いた結晶層に、27〜30℃に調節した乾燥窒素(相対湿度0%)を、20〜30cmHgの減圧下、約0.88L/分の速度で、さらに2時間通した。乾燥後、5.24gの結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定したところ、メタノール含量は0.01%以下(すなわち100ppm以下)、水分含量は8.48%であった。この結晶もII型であった。
【0029】
(参考例2)
S−4661をメタノール/水混合溶媒より晶析させ、グラスフィルターで濾過した。粉末X線回折測定の結果および水溶解性から、大部分がI型である結晶多形と判明した。ガスクロマトグラフィーによる残留溶媒量測定およびカール・フィッシャー法による水分量測定を行ったところ、メタノール17.3%および水9.8%を含有していた。
【0030】
(実施例2)
一次乾燥工程:水中を通して加湿した後、温度を27〜30℃に調節した加湿窒素(相対湿度:85〜95%)を、20〜30cmHgの減圧下、約0.88L/分の速度で、参考例2で得られた、有機溶媒約17%と水分約10%を含んでいるグラスフィルター中のS−4661結晶層(5.95g)に、2時間通した。処理後、結晶を一部取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶媒量を測定したところ、メタノール含量は0.01%以下であった。粉末X線回折測定の結果、この結晶はII型に変換されていることが判明した。
【0031】
二次乾燥工程:上記一次乾燥工程で用いた結晶層に、27〜30℃に調節した乾燥窒素(相対湿度0%)を、20〜30cmHgの減圧下、約0.88L/分の速度で、さらに3時間通した。乾燥後、4.67gの結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定したところ、メタノール含量は0.01%以下(すなわち100ppm以下)、水分含量は7.97%であった。この結晶もII型であった。
【0032】
(参考例3)
S−4661をエタノール/水混合溶媒より晶析させ、グラスフィルターで濾過した。粉末X線回折測定の結果および水溶解性から、大部分がI型である結晶多形と判明した。ガスクロマトグラフィーによる残留溶媒量測定およびカール・フィッシャー法による水分量測定を行ったところ、エタノール4.98%および水19.3%を含有していた。
【0033】
(実施例3)
一次乾燥工程:水中を通して加湿した後、温度を27〜30℃に調節した加湿窒素(相対湿度:85〜95%)を、15〜17cmHgの減圧下、約0.88L/分の速度で、参考例3で得られた、有機溶媒約5%と水分約19%を含んでいるグラスフィルター中のS−4661結晶層(4.75g)に、3時間通した。処理後、結晶を一部取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶媒量を測定したところ、エタノール含量は0.01%以下であった。粉末X線回折測定の結果、この結晶はII型に変換されていることが判明した。
【0034】
二次乾燥工程:上記一次乾燥工程で用いた結晶層に、27〜30℃に調節した乾燥窒素(相対湿度0%)を、15〜17cmHgの減圧下、約0.88L/分の速度で、さらに3時間通した。乾燥後、3.61gの結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定したところ、エタノール含量は0.01%以下(すなわち100ppm以下)、水分含量は2.50%であった。この結晶もII型であった。
【0035】
(参考例4)
S−4661をエタノール/水混合溶媒より晶析させ、グラスフィルターで濾過した。粉末X線回折測定の結果および水溶解性から、大部分がI型である結晶多形と判明した。ガスクロマトグラフィーによる残留溶媒量測定およびカール・フィッシャー法による水分量測定を行ったところ、エタノール23.1%および水13.3%を含有していた。
【0036】
(実施例4)
一次乾燥工程:水中を通して加湿した後、温度を27〜30℃に調節した加湿窒素(相対湿度:85〜95%)を、15〜17cmHgの減圧下、約0.88L/分の速度で、参考例4で得られた、有機溶媒約23%と水分約13%を含んでいるグラスフィルター中のS−4661結晶層(5.54g)に、2時間通した。処理後、結晶を一部取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶媒量を測定したところ、エタノール含量は0.01%以下であった。粉末X線回折測定の結果、この結晶はII型に変換されていることが判明した。
【0037】
二次乾燥工程:上記一次乾燥工程で用いた結晶層に、27〜30℃に調節した乾燥窒素(相対湿度0%)を、15〜17cmHgの減圧下、約0.88L/分の速度で、さらに4時間通した。乾燥後、3.61gの結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定したところ、エタノール含量は0.01%以下(すなわち100ppm以下)、水分含量は3.80%であった。この結晶もII型であった。
【0038】
(参考例5)
S−4661をメタノール/水混合溶媒より晶析させ、グラスフィルターで濾過した。粉末X線回折測定の結果および水溶解性から、大部分がI型である結晶多形と判明した。ガスクロマトグラフィーによる残留溶媒量測定およびカール・フィッシャー法による水分量測定を行ったところ、メタノール0.20%および水4.7%を含有していた。
【0039】
(実施例5)
一次乾燥工程:水中を通して加湿した後、温度を27〜30℃に調節した加湿窒素(相対湿度:85〜93%)を、70〜75cmHgの減圧下、約4L/分の速度で、参考例5で得られた、有機溶媒約0.2%と水分約5%を含んでいるグラスフィルター中のS−4661結晶層(3.20g)に、2時間通した。処理後、結晶を一部取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶媒量を測定したところ、メタノール含量は0.01%以下であった。粉末X線回折測定の結果、この結晶はII型に変換されていることが判明した。
【0040】
二次乾燥工程:上記一次乾燥工程で用いた結晶層に、27〜30℃に調節した乾燥窒素(相対湿度0%)を、30〜35cmHgの減圧下、約4L/分の速度で、さらに3時間通した。乾燥後、3.14gの結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定したところ、メタノール含量は0.01%以下(すなわち100ppm以下)、水分含量は4.49%であった。この結晶もII型であった。
【0041】
(参考例6)
S−4661をメタノール/水混合溶媒より晶析させ、グラスフィルターで濾過した。粉末X線回折測定の結果および水溶解性から、大部分がI型である結晶多形と判明した。ガスクロマトグラフィーによる残留溶媒量測定およびカール・フィッシャー法による水分量測定を行ったところ、メタノール22.0%および水10.5%を含有していた。
【0042】
(実施例6)
一次乾燥工程:水中を通して加湿した後、温度を27〜30℃に調節した加湿窒素(相対湿度:84〜88%)を、30〜35cmHgの減圧下、約4L/分の速度で、参考例6で得られた、有機溶媒約22%と水分約10%を含んでいるグラスフィルター中のS−4661結晶層(4.03g)に、3時間通した。処理後、結晶を一部取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶媒量を測定したところ、メタノール含量は0.01%以下であった。粉末X線回折測定の結果、この結晶はII型に変換されていることが判明した。
【0043】
二次乾燥工程:上記一次乾燥工程で用いた結晶層に、27〜30℃に調節した乾燥窒素(相対湿度0%)を、30〜35cmHgの減圧下、約4L/分の速度で、さらに3時間通した。乾燥後、2.85gの結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定したところ、メタノール含量は0.01%以下(すなわち100ppm以下)、水分含量は4.47%であった。この結晶もII型であった。
【0044】
(参考例7)
S−4661をエタノール/水混合溶媒より晶析させ、グラスフィルターで濾過した。粉末X線回折測定の結果および水溶解性から、大部分がI型である結晶多形と判明した。ガスクロマトグラフィーによる残留溶媒量測定およびカール・フィッシャー法による水分量測定を行ったところ、エタノール13.6%および水21.1%を含有していた。
【0045】
(実施例7)
一次乾燥工程:水中を通して加湿した後、温度を27〜30℃に調節した加湿窒素(相対湿度:85〜90%)を、14〜19cmHgの減圧下、約2L/分の速度で、参考例7で得られた、有機溶媒約14%と水分約21%を含んでいるグラスフィルター中のS−4661結晶層(4.47g)に、3時間通した。処理後、結晶を一部取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶媒量を測定したところ、エタノール含量は0.01%以下であった。粉末X線回折測定の結果、この結晶はII型に変換されていることが判明した。
【0046】
二次乾燥工程:上記一次乾燥工程で用いた結晶層に、27〜30℃に調節した乾燥窒素(相対湿度0%)を、14〜19cmHgの減圧下、約2L/分の速度で、さらに3時間通した。乾燥後、3.03gの結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定したところ、エタノール含量は0.01%以下(すなわち100ppm以下)、水分含量は3.71%であった。この結晶もII型であった。
【0047】
(参考例8)
S−4661をエタノール/水混合溶媒より晶析させ、グラスフィルターで濾過した。粉末X線回折測定の結果および水溶解性から、大部分がI型である結晶多形と判明した。ガスクロマトグラフィーによる残留溶媒量測定およびカール・フィッシャー法による水分量測定を行ったところ、エタノール2.9%および水17.3%を含有していた。
【0048】
(実施例8)
一次乾燥工程:水中を通して加湿した後、温度を27〜30℃に調節した加湿窒素(相対湿度:80〜90%)を、36〜38cmHgの減圧下、約8L/分の速度で、参考例8で得られた、有機溶媒約3%と水分約17%を含んでいるグラスフィルター中のS−4661結晶層(3.12g)に、1時間通した。処理後、結晶を一部取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶媒量を測定したところ、エタノール含量は0.01%以下であった。粉末X線回折測定の結果、この結晶はII型に変換されていることが判明した。
【0049】
二次乾燥工程:上記一次乾燥工程で用いた結晶層に、27〜30℃に調節した乾燥窒素(相対湿度0%)を、36〜38cmHgの減圧下、約8L/分の速度で、さらに1時間通した。乾燥後、2.58gの結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定したところ、エタノール含量は0.01%以下(すなわち100ppm以下)、水分含量は3.40%であった。この結晶もII型であった。
【0050】
(参考例9)
S−4661をイソプロパノール/水混合溶媒より晶析させ、グラスフィルターで濾過する。粉末X線回折測定によればI型とII型の結晶多形が得られることがわかる。この結晶は、イソプロパノール約5%および水約20%を含有する。(実施例9)
一次乾燥工程:水中を通して加湿した後、温度を27〜30℃に調節した加湿空気(相対湿度:75〜85%)を、20〜30cmHgの減圧下、約0.95L/分の速度で、参考例9で得られる、グラスフィルター中のS−4661結晶層(5.00g)に、2時間通す。処理後、結晶を一部取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶媒量を測定すると、メタノール含量は0.01%以下である。粉末X線回折測定の結果、この結晶はII型に変換されていることがわかる。
【0051】
二次乾燥工程:上記一次乾燥工程で用いた結晶層に、27〜30℃に調節した乾燥空気(相対湿度3%)を、30〜40cmHgの減圧下、約0.90L/分の速度で、さらに3時間通す。乾燥後、約4.0gの結晶を得る。この結晶をガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定すると、メタノール含量は0.01%以下(すなわち100ppm以下)、水分含量は約10%である。この結晶もII型である。
【0052】
(比較例)
エタノール約16%と水約9%を含有するS−4661結晶の約300gを通常の減圧乾燥法で乾燥した。乾燥条件は、温度25〜27℃、圧力0.5〜1cmHgとした。95分の減圧乾燥の後、ガスクロマトグラフィーおよびカール・フィッシャー法で測定したところ、エタノール含量は約0.4%、水分含量は約0.2%であった。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、残留有機溶媒を効率的に減少し得る、ピロリジルチオカルバペネム誘導体の乾燥方法が提供される。さらに本発明によれば、溶解性および安定性に優れた、該ピロリジルチオカルバペネム誘導体の結晶およびその製造方法が提供される。この製造方法により、該ピロリジルチオカルバペネム誘導体の結晶のうち、より溶解性および安定性に優れた結晶形であるII型が選択的に得られ得る。
Claims (8)
- 加湿ガスを用いて(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(3S,5S)−5−スルファモイルアミノメチル−1−ピロリジン−3−イル]チオ−1−メチル−1−カルバ−2−ペネム−3−カルボン酸を処理する工程を包含する、
該(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(3S,5S)−5−スルファモイルアミノメチル−1−ピロリジン−3−イル]チオ−1−メチル−1−カルバ−2−ペネム−3−カルボン酸の乾燥方法。 - さらに乾燥ガスを用いて前記処理後の(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(3S,5S)−5−スルファモイルアミノメチル−1−ピロリジン−3−イル]チオ−1−メチル−1−カルバ−2−ペネム−3−カルボン酸を乾燥する工程を包含する、請求項1に記載の乾燥方法。
- 前記加湿ガスが加湿窒素または加湿空気である、請求項1または2に記載の乾燥方法。
- 前記乾燥ガスが乾燥窒素または乾燥空気である、請求項2に記載の方法。
- 粉末X線回折による回折パターンが回折角度(2θ)=6.06、12.2、14.56、17.0、18.38、20.68、24.38、24.60、25.88、および30.12(度)に主ピークを有する、(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(3S,5S)−5−スルファモイルアミノメチル−1−ピロリジン−3−イル]チオ−1−メチル−1−カルバ−2−ペネム−3−カルボン酸のII型結晶の製造方法であって、
加湿ガスを用いて(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(3S,5S)−5−スルファモイルアミノメチル−1−ピロリジン−3−イル]チオ−1−メチル−1−カルバ−2−ペネム−3−カルボン酸を処理する工程を包含する、
製造方法。 - さらに乾燥ガスを用いて前記処理後の(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(3S,5S)−5−スルファモイルアミノメチル−1−ピロリジン−3−イル]チオ−1−メチル−1−カルバ−2−ペネム−3−カルボン酸を乾燥する工程を包含する、請求項5に記載の製造方法。
- 粉末X線回折による回折パターンが回折角度(2θ)=7.32、14.72、18.62、20.42、21.1、22.18、23.88および29.76(度)に主ピークを有する、(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(3S,5S)−5−スルファモイルアミノメチル−1−ピロリジン−3−イル]チオ−1−メチル−1−カルバ−2−ペネム−3−カルボン酸のI型結晶を前記II型結晶に変換する工程を包含する、請求項5または6に記載の製造方法。
- I型結晶をII型結晶に変換する前記工程が、加湿ガスでI型結晶を処理することにより行われる、請求項7に記載の製造方法。
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