JP3558683B2 - 5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミドの製造方法 - Google Patents

5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミドの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミドの製造方法に関する。この物質はカルバマゼピンの一般名で治療に使用される。カルバマゼピンは有用な生理学的特性を有する。カルバマゼピンは、中枢神経系統の多くの病気の治療に役立つ。
【0002】
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
カルバマゼピンの合成には多くの方法が公知である。カルバマゼピンは、
− イミノスチルベンをホスゲンで5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボン酸塩化物に変換し、続いてアンモニアを加えて遊離化合物にするか、あるいは反応混合物を得る(US−PS 2948718、DD−PS 297962および298508ならびにEP 423679)か、あるいは
− 10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピンをホスゲン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、炭酸カリウムおよびアンモニアで順次変換する(GB−PS 1245606)か、あるいは
− イミノスチルベンをアシルイソシアナートで5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−(N−アシル)−カルボキサミドに変換し、続いて加水分解する(DE−OS 2307174)か、あるいは
− 5−(メチルイソチオカルバモイル)−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−ヨウ化水素酸塩をアルカリで変換する(DE−OS 2637666)か、あるいは
− 5−シアノ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピンを酸またはアルカリで加水分解する(EP 029409)
ことにより製造することができる。
【0003】
これらの公知の方法は一連の欠点を有する。例えば、上記方法の多くの場合、毒性の高いホスゲンないしハロゲンシアンの使用が必要である。DE−OS 2307174による合成では、入手困難なアシルイソシアナートを必要としている。DE−OA 2637666による製造では副生成物として毒性のメチルメルカプタンが生じる。
【0004】
カルバマゼピンはさらに、
− イミノスチルベンを、有機溶剤または溶剤混合物中、酸性媒体の存在下で、シアン酸で変換することにより製造できる(EP 277095)。酸性媒体は反応に触媒としてのみ関与し、イミノスチルベンとシアン酸の変換速度を高めるのに役立つ。変換に必要なシアン酸は気体状で反応混合物中に導入されるが、シアン酸は、シアン酸塩の酸処理によって得ることもできる。
【0005】
シアン酸は、水、アルコールおよびアミンと好ましくない副反応を起こすので、変換を非プロトン性の高い条件下、すなわち水、アルコールおよびアミンをできるだけ含まない有機溶剤中で、水蒸気を排除して行う。
【0006】
これらの条件により、全体的な反応操作が難しくなり、追加の材料および技術的な手間がかかる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の目的は、上記の欠点が無い、技術的に簡単に操作できるカルバマゼピンの製造方法を開発することである。
【0008】
この目的は驚くべきことに、本発明により、酢酸、酢酸−水または酢酸−アルコール混合物中でイミノスチルベンをアルカリシアン酸塩で変換することにより達成される。
【0009】
シアン酸ナトリウムまたはカリウムの様なアルカリシアン酸塩によるイミノスチルベンの変換は、20〜約100℃の温度範囲で実行することができる。本発明の方法の好ましい実施態様では、60℃で、イミノスチルベンを酢酸混合物中に分散させた液に、攪拌しながら、アルカリシアン酸塩を徐々に加えるが、その際、シアン酸塩はイミノスチルベンに対して約50モル%過剰にする。
【0010】
本発明の方法では、酢酸−水混合物は20重量%までの水を含むことができる。本発明の変換を酢酸−アルコール混合物中で行う場合、10重量%までのアルコールを含むことができる。好ましくは、メタノールやエタノールの様なアルコールを反応に使用する。
【0011】
アルカリシアン酸塩を徐々に加える操作は、その固体を少量ずつ加えることにより実行することもできる。しかし、特に水に溶解し易いシアン化カリウムを使用する場合、アルカリシアン酸塩の水溶液を滴下するのが有利である。アルカリシアン酸塩の水溶液を滴下できるので、本発明の方法は技術的に特に簡単に実行することができる。
【0012】
アルカリシアン酸塩によるイミノスチルベンの変換に使用した溶剤混合物は、反応混合物から留別した後、本発明の変換にさらに使用することができる。
【0013】
本発明の方法の成果は、多くの点で驚くべきことである。文献からは、ある種の芳香族第1アミンは、酢酸水溶液中でアルカリシアン酸塩により、対応する尿素誘導体に変換され得ることが分かっている。その際、例えばKurzer(Org. Synth. Coll. Vol. IV, 49頁)は、1:10〜1:1の比率の酢酸−水混合物で処理している。しかし、これらの反応条件下では、イミノスチルベンの、つまり第2ジアリールアミンのアルカリシアン酸塩による変換は成功しない。一方では、イミノスチルベンが上記の芳香族第1アミンと比較して塩基性が非常に乏しく、他方、イミノスチルベンの酢酸中での溶解性がこのアミンよりはるかに小さいためである。この僅かな溶解性は、水およびアルコールの添加によりさらに低下する。
【0014】
EP 277095の説明により、当業者は、空気中に含まれる様な微量の水分でも望ましい変換に悪影響を与える、ないし変換を妨害することが分かる筈である。
【0015】
したがって、総溶剤量に対して20重量%までの水を含む酢酸混合物中で、アルカリシアン酸塩によるイミノスチルベンの変換が容易に、非常に良好〜良好な収率で行われることは予期せぬことであろう。同様に、本発明により得られる、酢酸−アルコール混合物中における変換の高収率も驚くべきことであった。本発明の変換を酢酸混合物中で行い、その際、この混合物中に5〜10%の水またはアルコールが存在する中で非常に良好な収率が得られることは非常に有利である。
【0016】
【実施例】
下記の実施例により本発明の方法をより詳細に説明する。
実施例1
イミノスチルベン100gを酢酸1000mlに分散させ、攪拌しながら60℃に加熱する。次いで160分以内に、90%シアン化ナトリウム54gを11回に分けて加える。反応の過程で、カルバマゼピンの析出が開始する前に、イミノスチルベンはほとんど完全に溶解する。シアン化ナトリウムの添加が終了した後、反応混合物をさらに60℃で20分間攪拌する。続いて18〜20℃に冷却し、この温度で2時間攪拌する。沈殿したカルバマゼピンを吸引分離し、無水酢酸60mlで洗浄し、乾燥させる。
収量107.8g(理論値の87.9%)、融点193〜194℃
母液から水流ポンプ真空中で酢酸を留別する。残留物から酢酸ナトリウムを水で溶解させ、カルバマゼピンを吸引分離し、乾燥させ、トルエンから再結晶化させる。これによって、さらに融点191〜193℃のカルバマゼピン9.8g(8.0%)が得られる。総収量は95.9%になる。
実施例2
イミノスチルベン100gを、無水酢酸900mlおよび水100mlからなる混合物に分散させ、攪拌しながら60℃に加熱する。次いで2.75時間以内に、90%シアン化ナトリウム58.3gを16回に分けて加える。2時間反応させた後、短時間80℃に加熱して少量の未溶解イミノスチルベンを溶解させる。シアン化ナトリウムの添加が終了した後、反応混合物を18〜20℃に冷却し、この温度で0.5時間攪拌する。沈殿したカルバマゼピンを吸引分離し、酢酸63mlと水9mlの混合物70mlで洗浄し、乾燥させる。
収量110.1g(理論値の89.8%)、融点191〜195℃
母液から溶剤を留別する。残留物から酢酸ナトリウムを水で溶解させ、カルバマゼピンを吸引分離し、乾燥させ、トルエンから再結晶化させる。これによって、さらに融点188〜190℃のカルバマゼピン5g(4.1%)が得られる。総収量は93.9%になる。
実施例3
イミノスチルベン30gを、酢酸225mlおよび水45mlからなる混合物に分散させ、攪拌しながら60℃に加熱する。次いで2.75時間以内に、90%シアン化ナトリウム17.5gを16回に分けて加える。1.5時間反応させた後、短時間80℃に加熱して少量の未溶解イミノスチルベンを溶解させる。シアン化ナトリウムの添加が終了した後、反応混合物を60℃でさらに10分間保持する。その後、18〜20℃に冷却し、この温度で1時間攪拌する。沈殿したカルバマゼピンを吸引分離し、酢酸−水混合物(6:1)20mlで洗浄し、乾燥させる。収量32.9g(理論値の89.2%)、融点189〜191℃
母液から溶剤をすべて留別する。残留物から酢酸ナトリウムを水で溶解させ、カルバマゼピンを吸引分離し、乾燥させ、トルエンから再結晶化させる。これによって、さらに融点191〜193℃のカルバマゼピン1.8g(4.8%)が得られる。総収量は94%になる。
実施例4
イミノスチルベン60gを、酢酸600mlに分散させ、攪拌しながら60℃に加熱する。次いで98%シアン化カリウム40gおよび水66mlからなる溶液を調製し、2時間かけて滴下する。この間に反応混合物を短時間80℃に加熱して未溶解イミノスチルベンを溶解させる。シアン化カリウムの添加が終了した後、反応混合物を室温に冷却し、沈殿したカルバマゼピンを吸引分離し、乾燥させる。融点190〜193℃の生成物33g(理論値の89.9%)が得られる。
【0017】
母液から、実施例3と同様にして、さらに3.3gが得られる。これによって総収量は93.2%になる。
実施例5
イミノスチルベン100gを、酢酸1000mlおよび水150mlからなる混合物に分散させ、攪拌しながら60℃に加熱する。次いで5時間以内に、98%シアン化カリウム60.8gを13回に分けて加える。シアン化カリウムの添加が終了した後、反応混合物をさらに30分間攪拌し、次いで18〜20℃に冷却する。沈殿した結晶を吸引分離し、酢酸60mlおよび水400mlで洗浄し、乾燥させる。
収量11.2g(理論値の90.9%)、融点191〜193℃
母液から溶剤を留別し、残留物から酢酸カリウムを水で溶解させる。カルバマゼピンを吸引分離し、水洗し、トルエンから再結晶化させ、乾燥させる。この様にして、さらに融点190〜192℃のカルバマゼピン7.5g(理論値の6.1%)が得られる。総収量は97%になる。
実施例6
イミノスチルベン3kgを、酢酸28.5リットルおよび水1.5リットルからなる混合物に入れ、攪拌しながら60℃に加熱する。2時間以内に、98%シアン化カリウム1.66kgを加え、15℃に冷却し、この混合物を20〜15℃でさらに2時間保持し、吸引分離し、酢酸2リットルで洗浄し、乾燥させる。
収量3.39kg(理論値の92.5%)、融点190〜192℃
酢酸22リットルを留別し、残留物に水10リットルを加え、短時間攪拌し、吸引分離し、水5リットルで洗浄し、乾燥させることにより、さらに生成物0.28kgが沈殿する。トルエンから再結晶化することにより、融点191〜194℃の生成物0.23kg(理論値の6.3%)が得られる。総収量は98.8%になる。
実施例7
イミノスチルベン30gを、酢酸360mlおよびエタノール50mlに入れ、攪拌しながら60℃に加熱し、この温度で1.5時間以内に、98%シアン化ナトリウム20gを加える。短時間80℃に加熱し、60℃でさらに1時間攪拌し、15℃に冷却し、吸引分離し、酢酸20mlで洗浄し、乾燥させる。
収量29.4g(理論値の80.3%)、融点189〜192℃
母液にシアン化ナトリウム1gを加え、母液を蒸留し、残留物に水を加え、乾燥生成物をトルエンから再結晶化させることにより、融点190〜193℃のカルバマゼピンがさらに4.9g(理論値の13.4%)得られる。総収量は93.7%になる。

Claims (6)

  1. 酢酸、酢酸−水混合物、または酢酸−アルコール混合物中においてイミノスチルベンをアルカリシアン酸塩で変換することを特徴とする、5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミドの製造方法であって、
    前記アルカリシアン酸塩を水溶液の形態で加える、方法。
  2. 酢酸−水混合物が20重量%までの水を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 酢酸−アルコール混合物が10重量%までのアルコールを含む、請求項1に記載の方法。
  4. アルコールとしてメタノールまたはエタノールを使用する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. アルカリシアン酸塩を徐々に反応混合物に加える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. アルカリシアン酸塩として、シアン化ナトリウムまたはシアン化カリウムを使用する、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
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